(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
F22B 1/02 20060101AFI20241121BHJP
F22B 1/28 20060101ALI20241121BHJP
F22B 3/02 20060101ALI20241121BHJP
F24V 30/00 20180101ALI20241121BHJP
C01B 4/00 20060101ALI20241121BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F22B1/02 Z
F22B1/28 Z
F22B3/02
F24V30/00 302
C01B4/00 Z
C01B3/00 A
C01B3/00 B
(21)【出願番号】P 2021555951
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2020038870
(87)【国際公開番号】W WO2021095430
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019207481
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020126761
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(73)【特許権者】
【識別番号】512261078
【氏名又は名称】株式会社クリーンプラネット
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和之
(72)【発明者】
【氏名】石崎 信行
(72)【発明者】
【氏名】井上 一信
(72)【発明者】
【氏名】山本 英貴
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特許第6448074(JP,B2)
【文献】特開平05-196201(JP,A)
【文献】特開昭56-137089(JP,A)
【文献】特開平02-110263(JP,A)
【文献】特開平07-279758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/02
F22B 1/28
F22B 3/02
F24V 30/00
C01B 4/00
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
内部に前記発熱体が設けられ、空気よりも比熱の高いガスを内部に充満できる容器と、を備え、
前記発熱体が発する熱
が前記ガスを介して水を加熱
して蒸気を発生するボイラであって、
前記ガスが循環する経路として、前記容器内を一部として含む循環経路と、
前記ガスが前記容器内に供給された状況下において前記発熱体の発熱量を制御するコントローラ
と、を備え
、
前記コントローラは、外部へ供給する前記蒸気の圧力が適正範囲に収まるように、前記循環経路における前記ガスの循環量を調節して前記発熱量を制御することを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記発熱体により加熱された前記ガスまたは当該ガスと熱交換された熱媒体が加熱側を通り、前記水と熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器に設けられる圧力センサと、を備え、
前記コントローラは、前記圧力センサの検出値が適正範囲に収まるように、前記循環経路における前記ガスの循環量を調節して前記発熱量を制御することを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記ガスは水素系ガスであり、
前記発熱体は、
水素吸蔵金属類からなる金属ナノ粒子が表面に設けられており、
前記金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され過剰熱を発生させる反応体であることを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記反応体を加熱するヒータを備え、
前記コントローラは、前記循環経路における前記ガスの循環量、又は前記ヒータの温度を調節することにより、前記発熱量を制御することを特徴とする請求項3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記発熱体が発する熱により加熱される伝熱管を備え、当該伝熱管を通ることにより前記水が加熱される請求項1に記載のボイラであって、
前記伝熱管は前記容器の側壁を形成するように、又は、前記容器の内部において、前記発熱体を囲んで配置されていることを特徴とするボイラ。
【請求項6】
前記循環経路は、前記容器および当該容器の外部に配置されたガス経路を含み、
前記熱交換器は、前記ガス経路に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のボイラ。
【請求項7】
前記循環経路には、ガスフィルタが備えられていることを特徴とする請求項1、2又は5に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラが、工業用や商業用を含め様々な用途に広く利用されている。ボイラにおいては供給される水や熱媒体といった流体を加熱するための発熱手段が設けられるが、この発熱手段の一形態として、容器内部に発熱体を設けたものが挙げられる。
【0003】
また、このような発熱手段の具体的形態は種々挙げられるが、その一例として、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金からなる複数の金属ナノ粒子が表面に形成された発熱体(反応体)を容器内部に設けたものが、発熱システムとして特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、この発熱システムにおいて、発熱に寄与する水素系ガスが容器内に供給されることで金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され、過剰熱を発することが記載されている。
【0004】
なお特許文献1においても説明されているとおり、パラジウムで作製した発熱体を容器内部に設け、この容器内部に重水素ガスを供給しつつ、容器内部を加熱することによって発熱反応が生じた旨の発表がなされている。また、水素吸蔵金属または水素吸蔵合金を利用して過剰熱(入力エンタルピーより高い出力エンタルピー)を発生させる発熱現象に関し、過剰熱を発するメカニズムの詳細については各国の研究者の間で議論されており、発熱現象が発生したことが報告されている。なお本技術分野に関する文献としては、特許文献1の他、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6448074号公報
【文献】米国特許第9,182,365号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容器内部に発熱体を設けた発熱手段により流体を加熱するボイラにおいては、発熱体が発する熱を効率良く利用可能としつつ、種々の状況に応じて流体が適度に加熱されるようにすることが重要である。例えば、外部からボイラに要求される蒸気量(蒸気負荷)が変動する場合、蒸気負荷が比較的小さい状況下では水の加熱が抑制され、蒸気負荷が比較的大きい状況下では水の加熱が促進されるようにする必要がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、容器内部に発熱体を設けた発熱手段により流体を加熱するものであって、発熱体が発する熱を効率良く利用可能としつつ、種々の状況に応じて流体が適度に加熱されるようにすることが可能となるボイラの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るボイラは、発熱体と、内部に前記発熱体が設けられ、空気よりも比熱の高いガスを内部に充満できる容器と、を備え、前記発熱体が発する熱を用いて流体を加熱するボイラであって、前記ガスが前記容器内に供給された状況下において前記発熱体の発熱量を制御するコントローラを備えた構成とする。本構成によれば、容器内部に発熱体を設けた発熱手段により流体を加熱するものであって、発熱体が発する熱を効率良く利用可能としつつ、種々の状況に応じて流体が適度に加熱されるようにすることが可能となる。また上記構成としてより具体的には、前記ガスが循環する経路として、前記容器内を一部として含む循環経路を備えた構成としても良い。
【0009】
また上記構成としてより具体的には、前記ガスは水素系ガスであり、前記発熱体は、水素吸蔵金属類からなる金属ナノ粒子が表面に設けられており、前記金属ナノ粒子内に水素原子が吸蔵され過剰熱を発生させる反応体である構成としても良い。なお本願における水素系ガスは、重水素ガス、軽水素ガス、或いはこれらの混合ガスのことである。また本願での「水素吸蔵金属類」は、Pd,Ni,Pt,Ti等の水素吸蔵金属、或いはこれらを1種以上含む水素吸蔵合金を意味する。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記反応体を加熱するヒータを備え、前記コントローラは、前記循環経路における前記ガスの循環量、又は前記ヒータの温度を調節することにより、前記発熱量を制御する構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記流体である水を加熱して発生させた蒸気を外部へ供給するボイラであって、前記コントローラは、外部へ供給する前記蒸気の圧力に基づいて前記発熱量を制御する構成としても良い。本構成によれば、蒸気圧力を適正化するように発熱体の発熱量を制御することが容易となる。また上記構成としてより具体的には、前記流体である熱媒体を加熱して外部へ供給するボイラであって、前記コントローラは、前記加熱された熱媒体の温度に基づいて前記発熱量を制御する構成としても良い。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、前記発熱体が発する熱により加熱される伝熱管を備え、当該伝熱管を通ることにより前記水が加熱されるボイラであって、前記伝熱管は前記発熱体を囲んで配置されている構成としても良い。本構成によれば、発熱体が発する熱を加熱対象の水へ非常に効率良く伝えることが可能となる。
【0013】
また上記構成として前記発熱体により加熱された前記ガスまたは当該ガスと熱交換された熱媒体が加熱側を通り、前記流体である水と熱交換する熱交換器を備え、前記コントローラは、前記熱交換器から外部へ供給する蒸気の圧力に基づいて、前記発熱体の発熱量を調節する構成としても良い。また前記熱交換器は、前記容器および当該容器の外部に配置された、前記循環経路のガス経路に設けられる構成としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るボイラによれば、容器内部に発熱体を設けた発熱手段により流体を加熱するものであって、発熱体が発する熱を効率良く利用可能としつつ、種々の状況に応じて流体が適度に加熱されるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るボイラ1の概略的な構成図である。
【
図2】ボイラ1の伝熱管を通る水の進路に関する説明図である。
【
図3】第1実施形態に係るコントローラの動作に関するフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係るボイラ2の概略的な構成図である。
【
図5】第2実施形態に係るコントローラの動作に関するフローチャートである。
【
図6】第3実施形態に係わるボイラ3の概略的な構成図である。
【
図7】第4実施形態に係るボイラ4の概略的な構成図である。
【
図8】第5実施形態に係るボイラ5の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の各実施形態に係るボイラについて、各図面を参照しながら以下に説明する。
【0017】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るボイラ1の概略的な構成図である。本図に示すようにボイラ1は、容器11、反応体12、ヒータ13、ガス経路14、ガス受入部15、ガスポンプ16、ガスフィルタ17、セパレータ21、流体経路22、水受入部23、水ポンプ24、圧力センサ25、およびコントローラ26を備えている。
【0018】
なお、
図1(後述する
図4、
図6、
図7および
図8も同様)における容器11およびその内部の様子は、容器11を概ね上下方向に二分するように切断した場合の概略的な断面図として表されており、上下左右の方向(上下方向は鉛直方向に一致する)は本図に示すとおりである。また、
図1(
図4、
図6および
図7も同様)に示す一点鎖線は、伝熱管22a(水管ともいう)の配置を概略的に示している。
【0019】
容器11は、全体的に見て上下を軸方向とする上下両端に底を有する円筒状に形成されており、内部に気体を密閉させ得るように形成されている。より具体的に説明すると、容器11は、後述する伝熱管22aにより形成された円筒状の側壁11aを有するとともに、側壁11aの上側は上底部11bにより閉じられており、側壁11aの下側は下底部11cにより閉じられている。なお本実施形態では一例として、容器11の側壁11aを円筒状としているが、その他の筒状に形成されても構わない。また、側壁11aの外周に缶体カバーを設置してもよく、側壁11aと当該缶体カバーの間には断熱材を設けるようにしてもよい。
【0020】
反応体12は、全体が細かい網目状に形成されている担持体の表面に、多数の金属ナノ粒子を設けて構成されている。この担持体は、素材として水素吸蔵合金類(水素吸蔵金属、或いは水素吸蔵合金)が適用されており、上下を軸方向とする上下両端に底を有する円筒状に形成されている。反応体12の上面はガス経路14に連接しており、反応体12の網目状の隙間を介してその内部に流入したガスを、ガス経路14内に送出することが可能となっている。本実施形態の例では容器11の内部において、3個の反応体12が左右方向へ並ぶように設けられている。
【0021】
ヒータ13は、有底円筒形状に形成された反応体12の側面に螺旋状に巻かれており、供給される電力を用いて発熱するように形成されている。ヒータ13としては、例えばセラミックヒータが採用され得る。ヒータ13が発熱することにより反応体12を加熱し、後述する過剰熱を発生させるための反応が生じ易い所定の反応温度まで、反応体12の温度を上昇させることができる。なおコントローラ26は、ヒータ13への供給電力を制御することにより、ヒータ13の温度調節が可能である。
【0022】
コントローラ26によるヒータ13への供給電力の制御は、ヒータ13の温度を目標値へ近づけるように行われても良い。例えば、コントローラ26はヒータ13の温度を検出し、この検出値が目標値よりも低い場合には、ヒータ13への供給電力を増やし、この検出値が目標値よりも高い場合には、ヒータ13への供給電力を減らすようにしても良い。
【0023】
ガス経路14は、容器11の外部に設けられ、容器11の内部を一部として含むガスの循環経路を形成するものであり、一方の端部は各反応体12の上面に連接し、他方の端部は容器11の内部に連接している。より詳細に説明すると、各反応体12の上面に連接したガス経路14の部分それぞれは容器11内で合流し、一本の経路となって上底部11bを貫通した上で、ガス受入部15、ガスポンプ16、およびガスフィルタ17を介して下底部11cを更に貫通し、容器11の内部に繋がっている。
【0024】
ガス受入部15は、外部の供給元から水素系ガス(重水素ガス、軽水素ガス、或いはこれらの混合ガス)の供給を受けるようになっており、供給された水素系ガスをガス経路15内へ流入させる。例えば、水素系ガスを予め貯留したタンクからガス受入部15へ水素系ガスが供給される場合、このタンクが水素系ガスの供給元となる。
【0025】
ガスポンプ16は、例えばインバータ制御により回転数が制御され、この回転数に応じた流量で、ガス経路14内のガスが上流側から下流側へ(すなわち、
図1に点線矢印で示す方向へ)流れるようにする。なおコントローラ26は、ガスポンプ16の回転数を制御することにより、ガス経路14を含む循環経路でのガスの循環量を調節することが可能である。
【0026】
コントローラ26による当該回転数の制御は、この循環経路でのガスの循環量を目標値へ近づけるように行われても良い。例えば、コントローラ26は当該循環量を検出し、この検出値が目標値よりも低い場合には、ガスポンプ16の回転数を上げて当該循環量を増やし、この検出値が目標値よりも高い場合には、ガスポンプ16の回転数を下げて当該循環量を減らすようにしても良い。
【0027】
ガスフィルタ17は、ガス経路14内のガスに含まれる不純物(特に、反応体12における過剰熱を発生させる反応の阻害要因となるもの)を除去する。セパレータ21は、伝熱管22a(具体的には、水管)を通る際に水(流体の一例)が加熱されて生じた蒸気を受け入れ、この蒸気に対して気水分離(当該蒸気に含まれるドレンの分離)がなされるようにする。セパレータ21において気水分離された蒸気は、ボイラ1の外部へ供給することが可能である。
【0028】
流体経路22は、水受入部23からセパレータ21まで繋がる水の経路である。流体経路22の一部は、先述した側壁11aを形成する伝熱管22aとなっている。また流体経路22の途中には、水受入部23の下流側直近の位置において水ポンプ24が配置されている。なお流体経路22のうち、伝熱管22aよりも上流側の経路では、水受入部23から供給された液体の水が流れ、伝熱管22aよりも下流側の経路(容器11とセパレータ21の間)では、伝熱管22aで加熱されて気化した水(蒸気)が流れることになる。
【0029】
水受入部23は、外部から蒸気の元となる水の供給を適宜受けるようになっており、供給された水を流体経路22内へ流入させる。水ポンプ24は、流体経路22内の水を上流側から下流側へ向けて(すなわち、
図1に実線矢印で示す方向へ)流すようにする。
【0030】
伝熱管22aは、容器11の筒状の側壁11aを形成するように、下底部11cから上底部11bに向けて螺旋状に延びている。すなわち伝熱管22aは、上下に隣合う伝熱管22aの部分同士の間に隙間が無いように、筒状の側壁11aの軸方向(上下方向)へ進むように螺旋状に延びている。なお本実施形態の例では、伝熱管22aの内壁の断面形状を四角形としているが、円形或いはその他の形状としても構わない。
【0031】
圧力センサ25は、セパレータ21から外部へ供給される蒸気の圧力(以下、「蒸気圧力」と称する)を継続的に検出する。なお、外部から要求される蒸気量(蒸気負荷)に対して、ボイラ1からの蒸気の供給量が多い状況下では、圧力センサ21aの検出値(蒸気圧力の値)は高くなり、逆にボイラ1からの蒸気の供給量が少ない状況下では、圧力センサ21aの検出値は低くなる。圧力センサ25の検出値の情報は、継続的にコントローラ26へ伝送される。
【0032】
コントローラ26は演算処理装置などを備えており、圧力センサ25の検出値に基づいて反応体12の発熱量を制御する。コントローラ26の具体的な動作内容については、改めて詳細に説明する。
【0033】
次に、ボイラ1の動作について説明する。ボイラ1では、外部の供給元からガス受入部15へ水素系ガスが供給され、容器11の内部とガス経路14を含むガスの循環経路に水素系ガスが充満される。充満された水素系ガスはガスポンプ16の作用により、この循環経路において
図1に点線矢印で示す方向へ循環する。
【0034】
このとき容器11の内部においては、水素系ガスが反応体12の網目状の隙間を介してその内部に流入した後、反応体12の上部に連接しているガス経路14内に送出される。またこれと同時に、ヒータ13の作用によって反応体12が加熱されるようになっている。このように、水素系ガスを容器11の内部に供給された状態でヒータ13により反応体12を加熱すると、反応体12に設けた金属ナノ粒子に水素原子が吸蔵され、反応体12はヒータ13による加熱温度以上の過剰熱を発生させる。このように反応体12は、過剰熱を発生させる反応が行われることにより、発熱体として機能する。この過剰熱を発生させる反応の原理は、例えば特許文献1に開示された過剰熱を発生させる反応の原理と同様である。
【0035】
容器11内部を含む循環経路内の水素系ガスは、ガスフィルタ17を通る際に不純物が除去される。そのため、不純物が除去された純度の高い水素系ガスが、容器11内部へ継続的に供給される。これにより、純度の高い水素系ガスを反応体12へ安定的に与え、過剰熱の出力を誘発し易い状態を維持して、反応体12を効果的に発熱させることが可能となっている。
【0036】
また、上記の反応体12を発熱させる動作と並行して、外部から水受入部23へ水が供給される。この供給された水は、水ポンプ24の作用により、流体経路22内を
図1に実線矢印で示す方向へ流される。
【0037】
流体経路22内を流れる水は、容器11の側壁11aを形成する伝熱管22aを通る際に、反応体12が発する熱によって加熱される。すなわち反応体12の発する熱は、容器11内の水素系ガスによる対流(熱伝達)、熱伝導および輻射によって伝熱管22aへ伝わり、これにより高温となった伝熱管22aによってその内部を流れる水が加熱される。
【0038】
図2は、伝熱管22aを通る水の進路を実線矢印で概略的に示している。本図に示すように、伝熱管22aの入口α(伝熱管22aの最下部)から伝熱管22a内に進入した水は、螺旋状に延びた伝熱管22a内の通路に沿って進み、伝熱管22aの出口β(伝熱管22aの最上部)から蒸気としてセパレータ21に向けて排出される。この際に伝熱管22aを通る水は、反応体12の発する熱により加熱された伝熱管22a(容器の側壁11a)からの熱が伝わり、温度が上昇する。
【0039】
このようにして、流体経路22を流れる水は伝熱管22aを通る際に加熱されて温度が上昇し、最終的には蒸気となる。この蒸気はセパレータ21に送り込まれ、気水分離により乾き度が高められた後、ボイラ1の外部へ供給されることになる。
【0040】
セパレータ21から外部へ供給される蒸気の量は、例えば外部からの蒸気の要求量に応じて調整可能となっている。またボイラ1においては、外部へ蒸気を供給した分だけ、つまり水が減少した分だけ水受入部23へ逐次水が供給されるようになっており、継続的に蒸気を発生させて外部へ供給することが可能である。
【0041】
ここで反応体12の発熱量は、ヒータ13の温度、および水素系ガスの循環量によって変動する。すなわちヒータ13の温度が高いほど、反応体12における過剰熱を発生させる反応が促進され、反応体12の発熱量が増大することになる。また、水素系ガスの循環量が多いほど、容器11内のより多くの水素系ガスが反応体12に作用し、過剰熱を発生させる反応が促進されて反応体12の発熱量が増大することになる。また、反応体12の発熱量が増大するほど、伝熱管22a内の水の加熱が促進されてより多くの蒸気が発生し、蒸気圧力が高くなる。
【0042】
このことを利用して、コントローラ26は、蒸気圧力が適正となるように(圧力センサ25の検出値が予め設定された適正範囲に収まるように)、反応体12の発熱量を制御する。コントローラ26の動作の具体例について、
図3に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0043】
コントローラ26は、圧力センサ25の検出値の最新情報を取得し、この検出値が適正範囲に収まっているか否かを継続的に監視する(ステップS1~S3)。この適正範囲は、ボイラ1の仕様や蒸気負荷等に応じて、予め適切に設定されることが望ましい。
【0044】
そして検出値が適正範囲を超えていた場合には(ステップS2のYes)、コントローラ26は、ヒータ13の温度を所定値A1だけ下げるよう調節し(ステップS11)、水素系ガスの循環量を所定値A2だけ減少させるよう調節し(ステップS12)、ステップS1の動作に戻る。
【0045】
なお上記の各値A1、A2は、反応体12の発熱量を適度に変化させ得るように設定されることが望ましい。ステップS11~S12の調節が実行されることにより反応体12の発熱量が減少し、蒸気圧力が下がって適正範囲に近づくことになる。
【0046】
一方、検出値が適正範囲を下回っていた場合には(ステップS3のYes)、コントローラ26は、ヒータ13の温度を所定値B1だけ上げるよう調節し(ステップS21)、水素系ガスの循環量を所定値B2だけ増大させるよう調節し(ステップS22)、ステップS1の動作に戻る。
【0047】
なお上記の各値B1、B2は、反応体12の発熱量を適度に変化させ得るように設定されることが望ましい。ステップS21~S22の調節が実行されることにより反応体12の発熱量が増大し、蒸気圧力が上がって適正範囲に近づくことになる。
図3に示した一連の動作を実行することにより、蒸気圧力が適正となるように反応体12の発熱量を制御することが可能である。
【0048】
ステップS11およびS21の調節(ヒータ13の温度調節)は、ヒータ13への供給電力を適宜変えることにより実現され得る。またステップS12およびS22の調節(水素系ガスの循環量調節)は、ガスポンプ16の回転数を適宜変えることにより実現され得る。
【0049】
また、
図3に示した一連の動作では、圧力センサ25の検出値に応じて、ヒータ13の温度、および水素系ガスの循環量の両方の項目を調節するようになっている。これにより、両方の項目をバランス良く変化させて反応体12の発熱量を制御することができる。但し種々の事情に応じて、上記の両方の項目を調節する代わりに、どちらか一方の項目のみを調節するようにしても良い。また、これらの項目のうちの何れを調節するかについて、任意に設定可能としても良い。
【0050】
更に、当該各項目の値に許容範囲を設けておき、コントローラ26の動作は、この許容範囲を逸脱しないように実行されても良い。例えば、ヒータ13の温度が既に許容範囲の上限に達している状況下では、圧力センサ25の検出値が適正範囲を下回っていた場合(ステップS3のYes)であってもヒータ13の温度を上げる調節(ステップS21)が省略され、水素系ガスの循環量を増大させる調節(ステップS22)のみが行われるようにしても良い。このようにすれば、ヒータ13の温度が上がり過ぎることによる弊害(ヒータ13の故障等)を未然に防ぐことが可能となる。
【0051】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、発熱体の形態およびこれに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0052】
図4は、第2実施形態におけるボイラ2の概略的な構成図である。第1実施形態のボイラ1では発熱体として反応体12が採用されていたが、第2実施形態ではその代わりに、一般的な発熱素子12aが採用されている。なおここでの発熱素子12aは、一例として、電力が供給されることにより発熱するハロゲンヒータであるとする。また、発熱素子12aの形状および寸法は便宜上、反応体12と同様であるとする。発熱体として発熱素子12aを適用する場合は、第1実施形態のように過剰熱を発生させる必要は無く、ヒータ13に相当するものは不要であるため設置が省略されている。
【0053】
ボイラ2では、反応体12の代わりに発熱素子12aから発せられる熱により伝熱管22aが加熱され、伝熱管22aを通る水は、伝熱管22a(容器の側壁11a)からの熱が伝わり温度が上昇することになる。またこの形態では、先述した過剰熱を発生させるための反応は不要であり、電力制御によって発熱素子12aの温度を直接的に制御することにより、適度に水を加熱して蒸気を発生させることができる。
【0054】
またボイラ2においては、コントローラ26は、発熱素子12aへの供給電力を調節することにより、発熱素子12a(発熱体)の発熱量を制御することが可能である。第2実施形態におけるコントローラ26の動作の具体例について、
図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0055】
コントローラ26は、圧力センサ25の検出値の最新情報を取得し、この検出値が適正範囲に収まっているか否かを継続的に監視する(ステップS1~S3)。この適正範囲は、ボイラ2の仕様や蒸気負荷等に応じて、予め適切に設定されることが望ましい。
【0056】
そして検出値が適正範囲を超えていた場合には(ステップS2のYes)、コントローラ26は、発熱素子12aの温度を所定値A4だけ下げるよう調節し(ステップS14)、ステップS1の動作に戻る。なお上記の値A4は、発熱素子12aの発熱量を適度に変化させ得るように設定されることが望ましい。ステップS14の調節が実行されることにより発熱素子12aの発熱量が減少し、蒸気圧力が下がって適正範囲に近づくことになる。
【0057】
一方、検出値が適正範囲を下回っていた場合には(ステップS3のYes)、コントローラ26は、発熱素子12aの温度を所定値B4だけ上げるよう調節し(ステップS24)、ステップS1の動作に戻る。なお上記の値B4は、発熱素子12aの発熱量を適度に変化させ得るように設定されることが望ましい。ステップS24の調節が実行されることにより発熱素子12aの発熱量が増大し、蒸気圧力が上がって適正範囲に近づくことになる。
図5に示した一連の動作を実行することにより、蒸気圧力が適正となるように発熱素子12aの発熱量を制御することが可能である。
【0058】
以上に説明した各実施形態のボイラ1,2は、発熱体と、内部にこの発熱体が設けられた容器11とを備え、供給された水を加熱して蒸気を発生させるものである。更に各ボイラ1,2では、空気よりも比熱の高いガス(本実施形態の例では水素系ガス)が容器11の内部に充満した環境下において、前記発熱体が発する熱により加熱される伝熱管22a、を備えており、伝熱管22aを通る水(蒸気の元となる水)が加熱されるようになっている。なお例えば200℃で1atmの条件下において、空気の比熱が約1,026J/Kg℃であるのに対し、水素の比熱は約14,528J/Kg℃となっており、空気の比熱よりも非常に高くなっている。また発熱体として、ボイラ1では反応体12が採用され、ボイラ2では発熱素子12aが採用されている。
【0059】
各ボイラ1,2によれば、容器11内部に発熱体を設けた発熱手段により水を加熱して蒸気を発生させるものでありながら、当該発熱体が発する熱を効率良く当該水に伝えることが可能である。その結果、発熱体が発する熱を蒸気の元となる水へ効率良く伝えることが可能である。
【0060】
更に、容器11の内部に空気より比熱の高いガスが充満されるため、一般的な空気が充満される場合と比較して熱伝達が良好になされ、発熱体が発する熱を蒸気の元となる水へ効率良く伝えることができる。また、比熱が高いためガスの温度が変動し難く、当該水へ
より安定的に熱を伝えることが可能である。
【0061】
また伝熱管22aは、筒状に形成された側壁11aの全周を形成しているため、発熱体が発する熱を蒸気の元となる水へ効率良く伝えることが可能である。特に本実施形態での伝熱管22aは、発熱体を囲んで配置されていることから、側壁11aの全周のほぼ全ての領域を網羅し、発熱体が発する熱を極力無駄なく蒸気の元となる水へ伝えることが可能である。なお上記の各実施形態では、伝熱管は螺旋状に伸びて発熱体を囲んで配置されているが、発熱体を囲む形態はこれに限られず、例えば、鉛直方向に伸びる複数本の伝熱管(水管)が発熱体を囲んで配置する形態等が採用されても良い。この場合、複数本の伝熱管の上下の端には、上部ヘッダおよび下部ヘッダがそれぞれ設けられている。上部ヘッダは複数本の伝熱管からの蒸気を集合させており、上部ヘッダからセパレータを介し、あるいは、介さずに不可に蒸気が供給される。下部ヘッダは給水を受け入れ、複数本の伝熱管と連通されている。この形態において、蒸気圧力は上部ヘッダ内の圧力あるいはセパレータが設置されていればセパレータ内の圧力により測定される。
【0062】
また上記の各実施形態では、容器11内にガスを密閉するための側壁11aが伝熱管22aにより形成されているが、その代わりに側壁11aを伝熱管22aとは別に設けておき、側壁11aの内側に(すなわち、容器11の内部に)伝熱管22aを設けるようにしても良い。この場合においても、空気よりも比熱の高いガスが容器11の内部に充満した環境下において、発熱体が発する熱により伝熱管22aを加熱することが可能である。またこの場合には、伝熱管22aは側壁11aとしての役割を果たす必要は無いが、上下に隣合う伝熱管22aの部分同士の間に隙間があると発熱体からの熱を更に受けやすく好ましい。
【0063】
また各ボイラ1,2では、容器11内を一部として含む循環経路において、前記ガスを循環させるようになっている。これにより、容器11内のガスの動きを活発化させて、当該ガスから側壁11aへの熱伝達がより効果的になされる効果が期待される。なお、過剰熱を発生させる反応を要しない第2実施形態のボイラ2においては、容器内11内のガスを循環させる機構を省略してもよく、その代わりに、容器11内へガスを供給して充満させる機構を備えるようにしても良い。また、ボイラ2においては過剰熱を発生させる反応を要しないため、上述した空気よりも比熱の高いガスとして、水素系ガス以外のガスを採用しても良い。
【0064】
また各ボイラ1,2では、発熱体の発熱量を制御するコントローラ26を備えているため、種々の状況に応じて水が適度に加熱されるようにすることが可能である。特に上記の各実施形態では、蒸気圧力(外部へ供給する蒸気の圧力)に基づいて当該発熱量を制御するため、蒸気圧力を適正化するように当該発熱量を制御することが容易となっている。但し本発明に係る発熱体の発熱量の制御は、蒸気圧力に基づく制御には限られず、その他種々の情報に基づいた制御としても良い。
【0065】
なお、上記の各実施形態では、伝熱管22aを含む流体経路22に蒸気の元となる水を流すようにしているが、その代わりに、流体経路22には熱媒体(熱媒体用の流体)を流すようにし、この熱媒体を用いて蒸気の元となる水を加熱することも可能である。このように構成したボイラの模式的な構成図を
図6に例示する。
【0066】
3.第3実施形態
図6に示すボイラ3では、ボイラ1および2のセパレータ21の代わりに熱交換器30が設けられており、熱交換器30には、熱媒体(流体の一例)が流れる流体経路22の一部が配置されるとともに、蒸気の元となる水が供給される。なお熱媒体は、本図に実線矢印で示すように、伝熱管22aを含む流体経路22を循環するようになっている。これにより、反応体12(発熱体)により加熱された熱媒体を熱交換器30へ送り込み、供給された水を当該熱媒体により加熱して蒸気を発生させ、外部へ供給することが可能である。なお熱交換器30は、水を加熱して蒸気を生成する構成の他、温水を生成する構成としても良い。
【0067】
熱交換器30としては、例えば、プレート式やシェルアンドチューブ式の熱交換器を採用しても良く、各種形態のスチームジェネレータを採用しても良い。このスチームジェネレータの一例としては、供給された水を貯留する貯留スペースと、当該貯留スペース内に配置された熱媒体を通す管状体を有し、熱媒体の熱が当該管状体を介して貯留した水に伝わる構成のものが挙げられる。
図6に示すボイラ3については、コントローラ26は、熱交換器30において検出される蒸気圧力に基づいて、第1実施形態の場合と同様に発熱体の発熱量を制御すれば良い。
【0068】
また、本発明に係るボイラは熱媒ボイラとすることも可能であり、この場合には熱媒体の温度に基づいて、発熱体の発熱量が制御されるようにすれば良い。このように構成したボイラの一例を、第4実施形態に係るボイラ4として以下に説明する。
【0069】
4.第4実施形態
次に本発明の第4実施形態について説明する。なお以下の説明では第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
図7は、第4実施形態におけるボイラ4の概略的な構成図である。ボイラ4は、熱媒体(流体の一例)を負荷Zへ供給する熱媒ボイラとして構成されており、第1実施形態における水の供給や蒸気の生成に関する各部21~25の代わりに、熱媒体を流す熱媒経路40が設けられている。なお熱媒経路40は、第1実施形態の伝熱管22aと同じ構成であって熱媒体を流すことのできる伝熱管40aを含んでおり、伝熱管40aは容器11の下底部11cから上底部11bに向けて螺旋状に延びている。
【0070】
熱媒経路40には、伝熱管40aよりも下流側に配置された熱媒流出口25a、および伝熱管40aよりも上流側に配置された熱媒流入口25bが設けられており、熱媒流出口25aと熱媒流入口25bの間に負荷Zを接続することが可能となっている。なお負荷Zとしては、例えば、熱媒体の熱を利用する各種装置などが採用され得る。熱媒流出口25aから流出した熱媒体は負荷Zを通った後、熱媒流入口25bへ流入するようになっている。これにより負荷Zが接続されたボイラ4においては、
図7に実線矢印で示すように、熱媒経路40と負荷Zを含む循環経路にて熱媒体を循環させることができ、反応体12(発熱体)が発する熱を継続的に負荷Zへ供給することが可能である。
【0071】
またボイラ4においては、コントローラ26は、温度センサ等によって把握される熱媒体の温度の検出値に基づいて、反応体12の発熱量を制御することが可能である。本実施形態の例では、熱媒流出口25aにおける熱媒体の温度(熱媒体の出口温度)が検出されるようになっており、コントローラ26はこの温度に基づいて反応体12の発熱量を制御する。
【0072】
より具体的に説明すると、コントローラ26は、第1実施形態におけるステップS1~S3の動作(
図3を参照)の代わりに、熱媒体の温度の検出値の最新情報を取得し、この検出値が適正範囲に収まっているか否かを継続的に監視する。この適正範囲は、例えばボイラ4の仕様や負荷Zの仕様等に応じて、予め適切に設定されることが望ましい。本実施形態では、熱媒体の温度が適正範囲を超えていれば、ヒータ13の温度を下げるとともに水素系ガスの循環量を減少させ、逆に適正範囲を下回っていれば、ヒータ13の温度を上げるとともに水素系ガスの循環量を増大させることで、熱媒体の温度が適正となるように反応体12の発熱量を制御することが可能である。
【0073】
なお、熱媒体の温度に基づいて反応体12の発熱量を制御する具体的形態は、上述したものには限定されない。一例としては、熱媒流入口25bにおける熱媒体の温度(熱媒体の戻口温度)が検出されるようにしておき、コントローラ26はこの温度に基づいて反応体12の発熱量を制御するようにしても良い。また他の例としては、コントローラ26は、熱媒流出口25aにおける熱媒体の温度と熱媒流入口25bにおける熱媒体の温度との差に基づいて、反応体12の発熱量を制御するようにしても良い。
【0074】
5.第5実施形態
次に本発明の第5実施形態について説明する。なお以下の説明では第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
図8は、第5実施形態に係るボイラ5の概略的な構成図である。ボイラ5は、第1実施形態のボイラ1と異なり、流体経路22(伝熱管22aを含む)を備えていない。また、ボイラ5のガス経路14には熱交換器50が設けられ、ガス経路14内を流通するガスと熱交換器50に供給された水との熱交換により蒸気を発生させる構成となっている。
【0075】
図8に示すようにボイラ5は、容器11、反応体12、ヒータ13、ガス経路14、ガス受入部15、ガスポンプ16、ガスフィルタ17、熱交換器30、および圧力センサ51などを備えている。容器11は、円筒状の側壁11aを有するとともに、側壁11aの上側は上底部11bにより閉じられており、側壁11aの下側は下底部11cにより閉じられている。なお本実施形態では一例として、容器11の側壁11aを円筒状としているが、その他の筒状に形成されても構わない。また、側壁11aの外周に缶体カバーを設置してもよく、側壁11aと当該缶体カバーの間には断熱材を設けるようにしてもよい。
【0076】
熱交換器50は、ガス経路14の一部分(ガス受入部15より上流側の一部分)が配置されるとともに、蒸気の元となる水が供給されるように構成されている。これにより熱交換器50は、ガス経路14内のガスと供給された水を熱交換することにより、当該水を加熱して蒸気を発生させ、当該蒸気をボイラ1の外部へ供給することが可能である。なお本実施形態の熱交換器50は、水を加熱して蒸気を生成する仕様となっているが、その代わりに、水を加熱して温水を生成する仕様のものが採用されても良い。
【0077】
熱交換器50としては、例えば、プレート式やシェルアンドチューブ式の熱交換器を採用しても良く、各種形態のスチームジェネレータを採用しても良い。このスチームジェネレータの一例としては、供給された水を貯留する貯留スペースと、当該貯留スペース内に配置されたガス経路14を有し、ガス経路14内のガスの熱が貯留した水に伝わる構成のものが挙げられる。
【0078】
圧力センサ51は、熱交換器50から外部へ供給される蒸気の圧力(蒸気圧力)を継続的に検出する。なお、外部から要求される蒸気量(蒸気負荷)に対して、熱交換器50からの蒸気の供給量が多い状況下では、圧力センサ51の検出値(蒸気圧力の値)は高くなり、逆に熱交換器50からの蒸気の供給量が少ない状況下では、圧力センサ51の検出値は低くなる。
【0079】
ボイラ5において、熱交換器50から外部へ供給する蒸気の量は、圧力センサ51の検出値の情報に基づいて調整可能としても良い。このような調整は、圧力センサ51の検出値が適正値より小さいときは、反応体12の発熱量を増大させて蒸気の発生量を増やし、圧力センサ51の検出値が適正値より大きいときは、反応体12の発熱量を減少させて蒸気の発生量を減らすことで実現され得る。
【0080】
なお反応体12の発熱量は、ヒータ13の温度または先述したガスの循環量の調節により制御可能であり、ヒータ13の温度を上げるほど、或いは当該循環量を増やすほど、反応体12の発熱量を増大させることができる。また熱交換器50においては、外部へ蒸気を供給した分だけ、つまり水が減少した分だけ逐次水が供給されるようになっており、継続的に蒸気を発生させて外部へ供給することが可能である。
【0081】
以上のようにボイラ5は、反応体12と、内部に発熱体12が設けられ、空気よりも比熱の高いガス(水素系ガス)を内部に充満できる容器11と、当該水素系ガスが循環する経路として、容器11およびガス経路14を含む循環経路と、ガス経路14内における水素系ガスとの熱交換により水を加熱して蒸気を発生させる熱交換器50と、を備える。そのためボイラ5によれば、循環させるガスが保有する熱を水の加熱に効率良く利用することができ、当該熱をより有効に活用することが可能である。
【0082】
また更に、熱交換器50を経由する際にガス経路14内のガスの温度が下がるため、その分、熱交換器50より下流側に配置された装置(本実施形態の例では、ガスポンプ16やガスフィルタ17)を通る際のガスの温度を低くすることができる。そのため、当該装置に要求される耐熱温度(要求耐熱温度)を下げることも可能となっている。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、本発明に係るボイラは、上記実施形態のような蒸気を発生させるボイラの他、温水ボイラや熱媒ボイラ等にも適用可能である。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、各種用途のボイラに利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1、2、3、4、5 ボイラ
11 容器
11a 側壁
11b 上底部
11c 下底部
12 反応体
12a 発熱素子
13 ヒータ
14 ガス経路
15 ガス受入部
16 ガスポンプ
17 ガスフィルタ
21 セパレータ
22 流体経路
22a 伝熱管
23 水受入部
24 水ポンプ
25 圧力センサ
25a 熱媒流出口
25b 熱媒流入口
26 コントローラ
30 熱交換器
40 熱媒経路
40a 伝熱管
50 熱交換器
51 圧力センサ