(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】杭材料
(51)【国際特許分類】
E02D 3/08 20060101AFI20241121BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20241121BHJP
E02D 5/46 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E02D3/08
E02D3/10 103
E02D5/46
(21)【出願番号】P 2022003560
(22)【出願日】2022-01-13
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竹史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-022410(JP,A)
【文献】特開2013-163776(JP,A)
【文献】特開2000-054362(JP,A)
【文献】特開2005-139633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00-3/115
E02D 5/22-5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に打設して地盤改良する杭材料であって、
バイオマス材料と粒状材とを混合して成
り、
前記バイオマス材料として粒状の竹チップ又は粒状の木材チップを用いることを特徴とする杭材料。
【請求項2】
請求項1記載の杭材料であって、
前記バイオマス材料として粒状の竹チップを用い、前記粒状材として粒状のリサイクル材を用いることを特徴とする杭材料。
【請求項3】
請求項2記載の杭材料であって、
前記粒状の竹チップと前記粒状のリサイクル材としてのコンクリート再生砕石とを混合して成ることを特徴とする杭材料。
【請求項4】
請求項2記載の杭材料であって、
前記粒状の竹チップと前記粒状のリサイクル材としてのスラグとを混合して成ることを特徴とする杭材料。
【請求項5】
請求項1記載の杭材料であって、
前記バイオマス材料として粒状の木材チップを用い、前記粒状材として粒状のリサイクル材を用いることを特徴とする杭材料。
【請求項6】
請求項5記載の杭材料であって、
前記粒状の木材チップと前記粒状のリサイクル材としてのコンクリート再生砕石とを混合して成ることを特徴とする杭材料。
【請求項7】
請求項5記載の杭材料であって、
前記粒状の木材チップと前記粒状のリサイクル材としてのスラグとを混合して成ることを特徴とする杭材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の二酸化炭素を削減するためのカーボンストック(炭素貯留)に寄与する杭材料に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカーボンストック用の杭材料として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載の杭材料は、丸太の側面の軸方向に排水溝を複数形成してなる木杭である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のカーボンストック用木杭では、ある程度の太さで真っ直ぐな木材が必要となる。そのため、曲がった木、幹が細い木、枝分かれしている木等は、木杭にすることができない。即ち、木杭として利用できる木の種類や樹齢の範囲が限られる。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、再生可能な有機資源を使用し、地盤中への炭素貯留ができる杭材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地盤中に打設して地盤改良する杭材料であって、バイオマス材料と粒状材とを混合して成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、再生可能な有機資源を使用し、地盤中への炭素貯留ができる杭材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の杭材料を用い、竹チップ杭を造成した状態を示す簡略図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の杭材料を用い、木材チップ杭を造成した状態を示す簡略図である。
【
図3】試験土槽内で打設した竹チップ杭の杭芯での貫入試験結果を他の材料と比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の第1実施形態の杭材料を用い、竹チップ杭を造成した状態を示す簡略図である。
【0011】
図1に示すように、地盤T中にケーシングパイプKで打設して地盤改良する際に用いる杭材料1は、細断した粒状の竹チップ(バイオマス材料)2と、粉砕したコンクリート再生砕石(粒状材として粒状のリサイクル材)3とを混合して成る。
【0012】
粒状の竹チップ2は、そのままでは、カビによる腐敗や乳酸菌による発酵が起こる。この腐敗・発酵を防止するために、杭材料1を粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3との混合材料とした。即ち、コンクリート再生砕石3は、コンクリートが母材であるため、アルカリ性であり、そのアルカリ性で竹チップ2の腐敗・発酵を止める。さらに、コンクリート再生砕石3は、建設副産物である廃コンクリートからのリサイクル材であり、そのものに二酸化炭素を吸収できる要素を含んでいる。尚、竹チップ2だけを杭材料として地盤中に打設した場合、地下水位以下の打設であれば、竹チップ2は腐敗することはない。
【0013】
図1に示すように、竹チップ2とコンクリート再生砕石3の混合材である杭材料1を用いて地盤改良するには、まず、例えば、コンパクション工法により、ケーシングパイプKに一定量の杭材料1を投入し、ケーシングパイプKを回転させながら地盤T中に所定深度まで貫入する。次に、ケーシングパイプKを所定の高さに引き上げながら、ケーシングパイプK内の杭材料1を地盤T中に排出する。次に、ケーシングパイプKを打戻し、排出した杭材料1と周囲の地盤を締固める。そして、ケーシングパイプKの引き上げと打戻しを順次繰り返して拡径することで、地盤T中に竹チップ杭10を造成して地盤改良する。尚、ドレーン工法により、竹チップ杭10を造成しても良い。
【0014】
以上、第1実施形態によれば、竹チップ2のバイオマス材料とコンクリート再生砕石3のリサイクル材を混合した杭材料1を地盤T中に打ち込むことで、地盤改良とカーボンストック(炭素貯留)が同時にできる。また、バイオマス材料によって杭自体の透水性が向上するので、地盤改良の効果が向上する。特に、砂杭に比べ、排水効果が高く、地震時の水圧を消散できる。さらに、バイオマス材料とリサイクル材料を用いるので、環境にも優しく、また、竹害対策として里山の再生が可能となる。即ち、SDGs(持続可能な開発目標)の実現が可能となり、地球温暖化対策として大気中の二酸化炭素を削減でき、地盤中への炭素貯留効率を高めることができる。
【0015】
尚、前記第1実施形態では、粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3を体積比1:1で混合したものを使用したが、混合比率は、使用目的に応じて適宜設定される。例えば、バイオマス材料を100%にすると、締固め効果は小さくなるが、炭素貯留効果は最大限になる。また、コンクリート再生砕石3の代わりにスラグや石炭灰のフライアッシュ、クリンカアッシュ等のリサイクル材を粒状の竹チップ2に混合しても良い。
【0016】
図2は本発明の第2実施形態の杭材料を用い、木材チップ杭を造成した状態を示す簡略図である。
【0017】
図2に示すように、地盤T中にケーシングパイプKで打設して地盤改良する際に用いる杭材料11は、細断した粒状の木材チップ(バイオマス材料)12と、粉砕したコンクリート再生砕石(粒状材として粒状のリサイクル材)13とを混合して成る。
【0018】
粒状の木材チップ12は、そのままでは、カビによる腐敗や乳酸菌による発酵が起こる。この腐敗・発酵を防止するために、杭材料11を粒状の木材チップ12と粉砕したコンクリート再生砕石13との混合材料とした。即ち、コンクリート再生砕石13は、コンクリートが母材であるため、アルカリ性であり、そのアルカリ性で木材チップ12の腐敗・発酵を止める。さらに、コンクリート再生砕石13は、建設副産物である廃コンクリートからのリサイクル材であり、そのものに二酸化炭素を吸収できる要素を含んでいる。尚、木材チップ12だけを杭材料として地盤中に打設した場合、地下水位以下の打設であれば、木材チップ12は腐敗することはない。
【0019】
図2に示すように、木材チップ12とコンクリート再生砕石13の混合材である杭材料11を用いて地盤改良するには、まず、例えば、コンパクション工法により、ケーシングパイプKに一定量の杭材料11を投入し、ケーシングパイプKを回転させながら地盤T中に所定深度まで貫入する。次に、ケーシングパイプKを所定の高さに引き上げながら、ケーシングパイプK内の杭材料11を地盤T中に排出する。次に、ケーシングパイプKを打戻し、排出した杭材料11と周囲の地盤を締固める。そして、ケーシングパイプKの引き上げと打戻しを順次繰り返して拡径することで、地盤T中に木材チップ杭20を造成して地盤改良する。尚、ドレーン工法により、木材チップ杭20を造成しても良い。
【0020】
以上、第2実施形態によれば、木材チップ12のバイオマス材料とコンクリート再生砕石13のリサイクル材を混合した杭材料11を地盤T中に打ち込むことで、地盤改良とカーボンストック(炭素貯留)が同時にできる。また、バイオマス材料によって杭自体の透水性が向上するので、地盤改良の効果が向上する。特に、砂杭に比べ、排水効果が高く、地震時の水圧を消散できる。さらに、バイオマス材料とリサイクル材料を用いるので、環境にも優しい。即ち、SDGs(持続可能な開発目標)の実現が可能となり、地球温暖化対策として大気中の二酸化炭素を削減でき、地盤中への炭素貯留効率を高めることができる。
【0021】
尚、前記第2実施形態では、粒状の木材チップ12と粉砕したコンクリート再生砕石13を体積比1:1で混合したものを使用したが、混合比率は、使用目的に応じて適宜設定される。例えば、バイオマス材料を100%にすると、締固め効果は小さくなるが、炭素貯留効果は最大限になる。また、コンクリート再生砕石13の代わりにスラグや石炭灰のフライアッシュ、クリンカアッシュ等のリサイクル材を粒状の木材チップ12に混合しても良い。
【0022】
また、前記各実施形態によれば、再生可能な有機資源であるバイオマス材料として竹チップや木材チップを用いたが、木杭を製造する際に廃棄される枯葉や樹皮等をバイオマス材料として用いても良い。
【実施例】
【0023】
[1.事前室内試験]
静的締固め施工をするために必要なデータとして、締固め試験を行う。この際、ランマー及びモールドを使用する。杭材料1は、粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3を体積比1:1でブレンドして成る。締固め試験によって、最大湿潤密度を測定し、含水比から最大乾燥密度を算出し、以後の体積変化率の計算に使用する。ホッパー模型による杭材料1の通過性試験を行い、杭材料1の適用性を確認する。
【0024】
[2.施工現場での材料搬入・混合]
施工現場に粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3をそれぞれ搬入する。次に、同体積の粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3をバックホーで混合し、体積比1:1のブレンド材を製造する。
【0025】
[3.中詰め材料のキャリブレーション]
初期状態の密度を計測するため、計量枡(0.05m3)に中詰め材料としての杭材料1を入れ、重量を計測する。体積変化率を計測するために、計量枡6杯分(0.3m3)をケーシングパイプK内に投入し、砂面を計測した。その後、30秒間ケーシングパイプKを回転しながら給気(0.4MPa)し、停止後、再度砂面を計測し、体積変化率を算出した。
【0026】
[4.杭の打設]
粒状の竹チップ2と粉砕したコンクリート再生砕石3を体積比1:1でブレンドして成る杭材料1を用い、静的締固め施工機で地盤T中に竹チップ杭10を造成する。詳述すると、タイヤショベルで杭材料1を移動バケットに投入し、この移動バケットからホッパーH(
図1参照)に投入する。次に、ホッパーHからケーシングパイプK内に杭材料1を投入し、ケーシングパイプKを回転させながら地盤T中に貫入し、規定深度に到達後、ケーシングパイプKの引抜きを開始し、ケーシングパイプKから杭材料1を地盤T中に排出する。そして、ケーシングパイプKの打戻しと引抜きを順次繰り返して、杭材料1を直径700mm相当に圧縮・拡径することで、地盤T中に竹チップ杭10を造成する。
【0027】
[5.打設の貫入試験結果]
図3は試験土槽内で打設した竹チップ杭10の杭芯での貫入試験結果を他の材料と比較したグラフである。
図3において、符号Aは、竹チップ杭10の深度(m)とN値(地盤の硬さ)の関係を示し、符号Bは、コンクリートの再生砕石杭の深度(m)とN値の関係を示す。また、符号Cは、単粒砕石杭の深度(m)とN値の関係を示し、符号Dは、山砂杭の深度(m)とN値の関係を示す。
【0028】
図3に示すように、コンクリートの再生砕石杭のN値が大きいが、竹チップ杭10と単粒砕石杭及び山砂杭のN値は同程度となった。
【符号の説明】
【0029】
1 杭材料
2 粒状の竹チップ(バイオマス材料)
3 粒状のコンクリート再生砕石(粒状材として粒状のリサイクル材)
11 杭材料
12 粒状の木材チップ(バイオマス材料)
13 粒状のコンクリート再生砕石(粒状材として粒状のリサイクル材)
T 地盤