(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/06 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H01B7/06
(21)【出願番号】P 2022020557
(22)【出願日】2022-02-14
(62)【分割の表示】P 2020204209の分割
【原出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】393010318
【氏名又は名称】エレコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】横山 敦之
(72)【発明者】
【氏名】門田 若葉
(72)【発明者】
【氏名】林 聞旭
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073034(JP,A)
【文献】実開平05-077818(JP,U)
【文献】特開平07-147113(JP,A)
【文献】特開2003-281943(JP,A)
【文献】特開平01-221807(JP,A)
【文献】実開昭59-166313(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の導体からなる芯材と、
該芯材の外周を被覆して最外層を構成するとともに、熱可塑性樹脂を含む被覆層と、を備え、スマートフォンの接続に用いられる
USB端子を含むケーブルであって、
前記熱可塑性樹脂は
、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹
脂であり、
スパイラル状に巻き取り可能な巻き癖が付けられていて、
一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他端側に100gの錘を装着した状態において、前記天板との固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上となっており、
一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他端側に100gの錘を装着して60分保持した後に、前記錘を他端側から取り外した状態において、前記天板との固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下となっている、
ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関する。より詳しくは、本発明は、例えば、パソコンとスマートフォンを接続するため、または、壁などに設けられたコンセントとスマートフォンとを接続するために用いられるケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器どうしを接続するため、または、壁などに設けられたコンセントと電子
機器とを接続するために用いられるケーブルとして、両端にコネクタ(接続端子)を備え
たものが知られている(例えば、特許文献1)。前記ケーブルは、通常、線状の導体から
なる芯材の外周を、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で被覆して構成されている。
【0003】
このようなケーブルは、通常、携帯可能な長さ(例えば、50cm~200cm程度)
を有するように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように形成されているケーブルを鞄などに収容して持ち運ぶ場合、該ケーブルは
、通常、巻き取った状態で収容される。
しかしながら、前記ケーブルは、通常は、巻き取った状態を維持することができず、鞄
などの中で広がってしまうという問題がある。
すなわち、収容時における使い勝手が悪いという問題がある。
【0006】
巻き取った状態を維持する観点から、固定電話の電話機本体と受話器とを接続するケー
ブルのごとく、引っ張っていない状態において、ケーブルをスパイラル状(螺旋状)の巻
き癖が付いたものに構成することも考えられる。
しかしながら、ケーブルを上記のようなスパイラル状の巻き癖が付いたものに構成した
場合には、電子機器どうし、または、壁などに設けられたコンセントと電子機器とを接続
するに際して、前記ケーブルの両端側を手で掴んで離間する方向に引っ張っただけでは、
ある程度の長さを確保できるまでケーブルを伸ばし難く、かつ、伸ばした状態を維持する
ことができないので、接続作業がし難くなる。
そのため、このような構成においては、使用時における使い勝手が悪くなるという問題
がある。
【0007】
しかしながら、収容時及び使用時の両方において、使い勝手が良いケーブルについて、
未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は、収容時及び使用時の両方において、使い勝手が良いケーブルを提供
することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討したところ、熱可塑性樹脂を含む被覆層を備え、かつ、特定の物
性を有するように構成されたケーブルが、収容時及び使用時の両方において、使い勝手が
良くなることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0010】
即ち、本発明に係るケーブルは、
線状の導体からなる芯材と、
該芯材の外周を被覆して最外層を構成するとともに、熱可塑性樹脂を含む被覆層と、を備え、スマートフォンの接続に用いられるケーブルであって、
前記熱可塑性樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂またはオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂のいずれかであり、
スパイラル状に巻き取り可能な巻き癖が付けられていて、
一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他端側に100gの錘を装着した状態において、前記天板との固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上となっており、
一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他端側に100gの錘を装着して60分保持した後に、前記錘を他端側から取り外した状態において、前記天板との固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下となっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収容時及び使用時の両方において、使い勝手が良いケーブルを提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るケーブルを示す図。(a)は、全体構成を示す図。(b)は、ケーブルの延在方向と垂直方向に切断した断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るケーブルをスパイラル状に巻き取った状態を示す図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るケーブルの製造方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態ともいう)について説明する。
【0014】
図1(a)及び(b)に示したように、本実施形態に係るケーブル10は、線状の導体
からなる芯材1と、芯材1の外周を被覆して最外層を構成する被覆層2と、を備える。
本実施形態に係るケーブル10では、被覆層2は熱可塑性樹脂を含んでいる。
本実施形態に係るケーブル10は、
図1(a)に示したように、スパイラル状に巻き取
り可能な巻き癖が付けられている。なお、スパイラル状とは、一巻きが複数連なった形状
を意味する。
本実施形態に係るケーブル10は、一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他
端側に100gの錘を装着した状態において、前記天板との固定位置から他端側の先端位
置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上となっている
。
本実施形態に係るケーブル10は、一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他
端側に100gの錘を装着して60分保持した後に、前記錘を他端側から取り外した状態
において、前記天板との固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ば
した状態における直線距離の46%以上90%以下となっている。
【0015】
ケーブル10が、電子機器どうし、または、壁などに設けられたコンセントと電子機器
とを接続するためのケーブルとして用いられる場合、ケーブル10の長さ(直線状に伸ば
した状態における直線距離)は、例えば、50cm以上200cm以下(0.5m以上2
m以下)の範囲内の長さとされる。
【0016】
芯材1の導体としては、例えば、銅線などが挙げられる。芯材1は、一本の導体から構
成されたものであってもよいし、複数本の導体から構成されたものであってもよい。芯材
1が複数本の導体から構成される場合、芯材1は、複数本の導体を撚り合わせて構成され
たものであってもよい。
また、複数本の導体のそれぞれは、外周がポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物などで
被覆されたものであってもよい。
複数本の導体を撚り合わせて芯材1を構成することにより、芯材1は、可撓性に優れる
ものとなる。
【0017】
電子機器どうし、または、壁などに設けられたコンセントと電子機器とを接続するため
のケーブルとして用いられる場合、ケーブル10の太さは、3.0mm以上5.0mm以
下であることが好ましい。
ケーブル10の太さは、マイクロゲージを用いて測定することができる。
具体的には、ケーブル10の延在方向の任意の5点について、マイクロゲージを用いて
太さを測定し、これらの測定値を算術平均することにより求めることができる。
【0018】
また、ケーブル10が電子機器どうし、または、壁などに設けられたコンセントと電子
機器とを接続するためのケーブルとして用いられる場合、芯材1の太さは、2.3mm以
上4.8mm以下であることが好ましい。
芯材1の断面形状が円形状の場合、芯材1の太さは、円の直径(外径)を意味し、芯材
1の断面形状が正多角形状(例えば、正方形状、正六角形状、正八角形状)の場合、芯材
1の太さは、前記正多角形に外接する外接円の直径(外径)を意味する。
なお、断面とは、ケーブル10の延在方向と垂直方向に切断して得られる断面を意味す
る。
【0019】
本実施形態に係るケーブル10では、被覆層2の厚さは、0.2mm以上0.7mm以
下であることが好ましい。
被覆層2の厚さとは、断面におけるケーブル10の最大長から芯材の太さを減じた値を
2で除した値を意味する。
被覆層2の厚さは、マイクロゲージを用いて測定することができる。
具体的には、ケーブル10の延在方向における任意の5点で切断した断面のそれぞれに
ついて、任意の10箇所についてマイクロゲージを用いて被覆層2の厚さを測定し、これ
らの測定値を算術平均することにより求めることができる。
【0020】
被覆層2は、前記熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂またはオレフィン系熱可塑
性エラストマー樹脂のいずれかを含んでいることが好ましい。
【0021】
オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、ハードセグメントたるオレフィン系樹脂中
に、ソフトセグメントたるゴム成分が微分散されて構成されている。
前記オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)など
が挙げられる。
これらの中でも、前記オレフィン系樹脂として、ポリプロピレン(PP)を用いること
が好ましい。
前記ゴム成分としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピ
レンゴム(EPM)、エチレン-ブテン共重合体(EBM)、ブチルイソブチエンイソプ
レンゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ニ
トリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACR)などが挙げられる。
これらの中でも、前記ゴム成分として、水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)を用
いることが好ましい。
すなわち、本実施形態においては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、前
記オレフィン系樹脂としてポリプロピレン(PP)が用いられ、前記ゴム成分として水添
スチレンブタジエンゴム(HSBR)が用いられたものであることが好ましい。
【0022】
被覆層2は、熱可塑性樹脂に加えて、他の成分を含んでいてもよい。
【0023】
熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である場合、被覆層2は、他の成分として、可塑剤
、安定化剤(スタビライザー)、フィラー、色粉などを含んでいてもよい。
前記可塑剤としては、フタル酸エステルが挙げられ、フタル酸エステルとしては、ジオ
クチルフタレート(DOP)やジブチルフタレート(DBP)などが挙げられる。
被覆層2は、溶融押出成形などによって、熱可塑性樹脂や可塑剤などの他の成分を含む
樹脂組成物で芯材1の外周を被覆することにより形成されるが、前記樹脂組成物が前記可
塑剤を含んでいることにより、成形加工時においては、加熱時における前記樹脂組成物の
流動粘度を低下させて加工を容易にすることに加えて、被覆層2とされた後においては、
ケーブル10に柔軟性及びゴム弾性を付与することにより、ケーブル10を伸展性に優れ
たものとすることができる。
前記安定化剤(スタビライザー)としては、三塩基硫酸塩(3PbO・PbSO4・H
2O)などが挙げられる。
前記フィラーとしては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
前記色粉としては、酸化チタンなどが挙げられる。
被覆層2を構成する前記樹脂組成物が、前記可塑剤、前記安定化剤(スタビライザー)
、フィラー、及び、色粉を含む場合、前記ポリ塩化ビニル樹脂の100質量部に対して、
前記可塑剤は、10質量部以上30質量部以下含まれていることが好ましく、前記安定化
剤(スタビライザー)は、1質量部以上10質量部以下含まれていることが好ましく、前
記フィラーは、33質量部以上43質量部以下含まれていることが好ましく、前記色粉は
、0.5質量部以上1.0質量部以下含まれていることが好ましい。
また、被覆層2は、滑剤を含んでいてもよい。前記滑剤としては、二塩基性ステアリン
酸鉛(2PbO・Pb・Stearate)などが挙げられる。被覆層2が前記滑剤を含
んでいる場合、被覆層2を構成する前記樹脂組成物は、前記滑剤を0.5質量部以上5質
量部以下含んでいることが好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂の場合、被覆層2は、他の成分
として、可塑剤、フィラーなどを含んでいることが好ましい。
前記可塑剤としては、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセルオイルなどの
各種公知のプロセスオイルが挙げられる。
前述のように、被覆層2は、溶融押出成形などによって、熱可塑性樹脂や可塑剤などの
他の成分を含む樹脂組成物で芯材1の外周を被覆することにより形成されるが、前記樹脂
組成物(被覆層2を形成するための樹脂組成物)がプロセスオイルなどの可塑剤を含むこ
とにより、成形加工時における加工性を向上させることができる。
前記フィラーとしては、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
被覆層2が、前記可塑剤及び前記フィラーを含む場合、前記オレフィン系熱可塑性エラ
ストマー樹脂の100質量部に対して、前記可塑剤は、10質量部以上20質量部以下含
まれていることが好ましく、前記フィラーは、20質量部以上40質量部以下含まれてい
ることが好ましい。
【0025】
本実施形態に係るケーブル10は、スパイラル状(ケーブルの一巻きが複数連なった形
状)に巻き取り可能な巻き癖が付けられていて、一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下
させて、他端側に100gの錘を装着した状態において、前記天板との固定位置から他端
側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上と
なっており、一端側を天板に固定して鉛直方向に垂下させて、他端側に100gの錘を装
着して60分間保持した後に、前記錘を他端側から取り外した状態において、前記天板と
の固定位置から他端側の先端位置までの直線距離が、直線状に伸ばした状態における直線
距離の46%以上90%以下となっていることが重要である。
上記のごとき特性を有していることにより、ケーブル10の両端を掴んだ状態で、ケー
ブル10の両端を互いに離間する方向に引っ張ってケーブル10を伸ばすときに、比較的
小さい力で十分に伸ばすことができる。これにより、例えば、ケーブル10がスマートフ
ォン用のケーブルである場合、ケーブル10の一端側に取り付けられたパソコン接続用の
USB端子(USB Type-A型のUSB端子)をパソコンに接続し、ケーブル10
の他端側に取り付けられた、スマートフォン接続用のUSB端子(Androidスマー
トフォンにおいては、USB Type-C型のUSB端子またはmicroUSB型の
USB端子。iPhone(登録商標)においては、Ligntning型のUSB端子
)をスマートフォンに接続した状態としたときに、スマートフォンの自重により、ケーブ
ル10を十分に伸ばした状態とすることができる。すなわち、ケーブル10を使用時にお
ける使い勝手の良いものとすることができる。
また、
図2に示されているように、比較的小さい力で、一巻き10aが複数連なったス
パイラル状に巻き取ることができるとともに、スパイラル状に巻き取った状態を維持する
ことができる。すなわち、ケーブル10を収容時における使い勝手の良いものとすること
ができる。
【0026】
なお、ケーブル10において、被覆層2がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂を含
む樹脂組成物で形成されている場合、以下のような利点を有する。
具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、耐熱性に優れるという特性を
有することから、ケーブル10を高温環境下(例えば、120℃の温度環境下)において
も使用することができる。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、耐寒性にも優れるという特性を有す
ることから、ケーブル10を低温環境下(例えば、-20℃の温度環境下)においても使
用することができる。
すなわち、ケーブル10を-20℃といった温度環境下や120℃といった温度環境下
のような厳しい温度環境下においても使用することができる。
さらに、オレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂は、ゴム弾性に優れるという特性を有
することから、ケーブル10は配策し易いものとなる。
【0027】
ケーブル10の巻き癖は、後述する製造方法で説明するように、ケーブル10を筒体に
巻き付けた状態とした後、所定範囲内の温度に維持しつつ、60分以上加熱し、さらに、
前記筒体に巻き付けた状態で9℃以上36℃以下の範囲内の温度まで冷却することにより
付けることができる。
なお、筒体に巻き付けた状態のケーブル10を加熱する温度の範囲は、被覆層2に含ま
れる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選ばれる。
【0028】
また、ケーブル10の一巻き10aにおける最長長さ(以下、巻き直径ともいう)は、
ケーブル10の長さ(ケーブル10を直線状に伸ばした状態における直線距離)に応じて
、適宜設定することができる。
例えば、ケーブル10の長さが1mの場合、一巻き10aにおける最長長さ(巻き直径
)は、5.5±1.5cmに設定することができ、ケーブル10の長さが2mの場合、一
巻き10aにおける最長長さ(巻き直径)は、9.5±1.5cmに設定することができ
る。
なお、ケーブル10の一巻き10aにおける最長長さ(巻き直径)は、後述する製造方
法で説明するように、ケーブル10を巻き付ける筒体の外径を調整することにより、調整
することができる。
また、ケーブル10の一巻き10aの形状(巻き癖の形状)は、円形状、正多角形状(
例えば、正方形状、正六角形状、正八角形状)などが挙げられるものの、通常は、円形状
が好ましい。ケーブル10の一巻き10aの形状(巻き癖の形状)は、後述する製造方法
で説明するように、ケーブル10を巻き付ける筒体の断面形状を適宜選ぶことにより調整
することができる。例えば、ケーブル10の一巻き10aの形状(巻き癖の形状)を円形
状とする場合には、ケーブル10を巻き付ける筒体として、断面形状が円形状のものを選
び、ケーブル10の一巻き10aの形状(巻き癖の形状)を正多角形状(例えば、正方形
状、正六角形状、正八角形状)とする場合には、ケーブル10を巻き付ける筒体として、
断面形状が正多角形状(例えば、正方形状、正六角形状、正八角形状)のものを選ぶ。
【0029】
本実施形態に係るケーブル10は、例えば、
図3に示したフローにしたがって製造する
ことができる。
詳しくは、本実施形態に係るケーブル10は、
線状の芯材と、前記芯材の外周を被覆した最外層を構成するとともに、熱可塑性樹脂を
含む被覆層と、を備えるケーブルを、筒体に巻き付ける巻付け工程(S1)と、
前記筒体に巻き付けた前記ケーブルを、所定範囲内の温度に維持しつつ、60分以上加
熱する加熱工程(S2)と、
加熱した前記ケーブルを、前記筒体に巻き付けた状態で9℃以上36℃以下の範囲内の
温度まで冷却する冷却工程(S3)と、を備える、製造方法で製造することができる。
以下、
図3を参照しながら、上記製造方法を工程ごとに説明する。
【0030】
(巻付け工程S1)
巻付け工程S1では、前記筒体に前記ケーブルを巻き付ける。前記ケーブルは、前記筒
体に隙間なく(前記筒体に巻き付けられた状態における前記ケーブル間の幅(以下、ピッ
チ幅ともいう)が0mmとなるように)巻き付けられることが好ましい。
また、巻付け工程S1では、前記筒体として、1.5cm以上20cm以下の外径を有
するものを用いることが好ましい。
【0031】
前記筒体の断面形状は、前記ケーブルに付けたい巻き癖の形状に応じて適宜選ばれる。
巻き癖の形状としては、円形状、正多角形状(例えば、正方形状、正六角形状、正八角形
状)などが挙げられるものの、通常は、円形状が好ましい。すなわち、前記筒体の断面形
状は、円形状であることが好ましい。
【0032】
なお、前記被覆層は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で前記芯材の外周を被覆すること
により行うことができ、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物での前記芯材の外周の被覆は、各
種公知の方法で行うことができる。各種公知の方法としては、例えば、溶融押出成形が挙
げられる。溶融押出成形は、一般的な溶融押出成形装置、例えば、巻き取った状態の前記
芯材を下流側に送出する送出部と、該送出部の下流側に配されて、送出された前記芯材の
外周を溶融させた前記樹脂組成物で被覆し、かつ、前記前記樹脂組成物で被覆された前記
芯材(以下、被覆芯材ともいう)を下流側に押し出す押出部と、該押出部の下流側に配さ
れて、被覆芯材の前記樹脂組成物を冷却固化させる冷却部と、該冷却部の下流側に配され
て、前記樹脂組成物が固化された後の前記被覆芯材(すなわち、ケーブル)を巻き取る巻
取部と、を備える装置を用いて行うことができる。
【0033】
(加熱工程S2)
加熱工程S2においては、前記筒体に巻き付けた前記ケーブルを所定範囲内の温度に維
持しつつ、60分以上加熱することにより行う。
加熱工程S2は、一般的な加熱炉を用いて行うことができる。
前記熱硬化性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である場合、前記筒体に巻き付けた前記ケーブ
ルを、79℃以上121℃以下の範囲内の温度に維持しつつ、60分以上加熱を行う。前
記熱硬化性樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である場合、加熱工程S2での加熱温度は、89℃
以上121℃以下であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂である場合、前記筒体に巻
き付けた前記ケーブルを、79℃以上91℃以下の範囲内の温度に維持しつつ、60分以
上加熱を行う。前記熱可塑性樹脂がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂である場合、
加熱工程S2での加熱温度は、84℃以上91℃以下であることが好ましい。
【0034】
上記のごとき、所定範囲内の温度に維持しつつ、60分以上加熱した上で、9℃以上3
6℃以下の範囲内の温度まで冷却することにより得られるケーブルは、使用時及び収容時
において使い勝手の良いものとなるが、本発明者らはその理由について、以下のように考
えている。
すなわち、前記筒体に前記ケーブルを巻き付けた状態で、所定範囲内の温度に維持しつ
つ、60分以上加熱した上で、9℃以上36℃以下の範囲内の温度まで冷却すると、巻き
付けられた前記ケーブルは、内側(前記筒体に接している側)においては程良く縮んだ状
態で固化し、外側(前記筒体と接していない側)においては程良く伸びた状態で固化する
ようになって、巻いた状態としたときには、巻き状態を維持し易くなり、かつ、引き伸ば
した状態としたときには、引き伸ばした状態を維持し易くなるような巻き癖が付いたと考
えられる。
その結果、スパイラル状の巻き癖が付いたケーブルの両端側を手で掴んで離間する方向
に引っ張っただけで、ある程度の長さが確保できるまで、前記ケーブルを比較的容易に伸
ばすことができ、かつ、伸びた状態を維持することができ、また、伸びた状態からスパイ
ラル状に巻き取った形状としたときに、スパイラル形状を比較的維持することができるよ
うになったと考えられる。
【0035】
また、加熱時間が長すぎるとエネルギー効率が悪くなる観点から、加熱時間の上限は、
240分であることが好ましい。
【0036】
(冷却工程S3)
冷却工程S3では、加熱した前記ケーブルを、前記筒体に巻き付けた状態で9℃以上3
6℃以下の範囲内の温度まで冷却する。前記温度の範囲は、14℃以上31℃以下である
ことが好ましく、19℃以上26℃以下であることがより好ましい。
9℃以上36℃以下の範囲内の温度まで冷却する時間は、20分以上40分以下である
ことが好ましい。
また、加熱工程S2を加熱炉内で行った場合には、冷却工程S3は、例えば、加熱した
前記ケーブルを、前記加熱炉内で9℃以上36℃以下の範囲内の温度まで自然冷却するこ
とにより行ったり、加熱した前記ケーブルを、前記加熱炉内で所定温度(例えば、39℃
~51℃の温度)まで自然冷却した後、前記加熱炉内から取り出して、大気開放下で9℃
以上36℃以下の範囲内の温度までさらに自然冷却することにより行ったりすることがで
きる。
なお、筒体として、1.5cm以上20cm以下の外径を有するものを用いた場合、冷
却工程S3後において、前記ケーブルにおける一巻きの最長長さ(以下、巻き直径ともい
う)は、2.3cm以上30cm以下の範囲となる。
【0037】
なお、本発明に係るケーブルは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発
明に係るケーブルは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る
ケーブルは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0038】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発
明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
<被覆層がポリ塩化ビニル樹脂を含むケーブル>
[引張試験]
以下のようにして引張試験用の検体を得た。
まず、導体(外周が樹脂組成物で被覆された導体(銅線)を複数本を撚り合わせたもの)からなる芯材の外周がポリ塩化ビニルを含む樹脂で被覆された長さ約1m(1m±1cm)の3本のケーブル(ケーブルA、ケーブルB、及び、ケーブルC)を、ピッチ幅0mmで円筒状の筒体(直径(外径)3.8cm×高さ200cm)にスパイラル状に巻き付けて、ケーブルが巻き付けられた筒体(以下、ケーブル付の筒体ともいう)を得た。
次に、これらのケーブル付の筒体(ケーブルAが巻き付けられた筒体、ケーブルBが巻き付けられた筒体、及び、ケーブルCが巻き付けられた筒体)を加熱炉内に入れて、120±1℃で60分処理した。
次に、これらのケーブル付の筒体を加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷することにより、引張試験用の検体を得た。なお、直径(外径)3.8cmの筒体に巻き付けて加熱処置することにより得られた各ケーブルにおける一巻きの最長長さ(以下、巻き直径ともいう)は、5.5±1.5cmであった。
ケーブルA、ケーブルB、及び、ケーブルCは、いずれも、断面の形状が円形状であった。
また、ケーブルAにおいては、芯材の太さ(外径)は3.2mmであり、被覆厚さは0.4mmであり、ケーブルBにおいては、芯材の太さ(外径)は3.3mmであり、被覆厚さは0.4mmであり、ケーブルCにおいては、芯材の太さ(外径)は4mmであり、被覆厚さは0.4mmであった。
なお、ケーブルA~Cについて、被覆厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
また、ケーブルA~Cについて、ケーブルの太さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
引張試験用の検体は、各ケーブルごとに、3本ずつ(計9検体)作製した。
そして、各検体(計9検体)について、以下の手順にしたがって引張試験を行った。
(1)天板を有する固定具の天板に、検体の一端側を固定する。
(2)天板から検体が垂れ下がった状態において、検体の一端側の固定箇所から検体の他端側の先端部までの長さ(錘装着前長さL1)を測定する。
(3)100gの錘を検体の他端側に取り付けて、60分間放置する。
(4)検体の他端側から100gの錘を取り外す。
(5)検体の一端側の固定箇所から検体の他端側の先端部までの長さ(錘装着後長さL2)を測定する。
【0040】
引張試験の結果について、ケーブルAについては、実施例1~3として表1に示し、ケ
ーブルBについては、実施例4~6として表2に示し、ケーブルCについては、実施例7
~9として表3に示した。
また、実施例1~9に係るケーブルの引張試験結果と比較するために、ケーブルA、ケ
ーブルB、及び、ケーブルCのそれぞれについて、上記のような加熱処理を施していない
ケーブルを3検体ずつ(計9検体)準備し、上記の手順にしたがって引張試験を行った。
その結果について、ケーブルAについては、比較例1~3として表1に示し、ケーブル
Bについては、比較例7~9として表2に示し、ケーブルCについては、比較例13~1
5として、表3に示した。
さらに、上記のように作製したケーブルの引張試験結果と比較するために、ケーブルA
、ケーブルB、及び、ケーブルCのそれぞれを、円筒状の筒体(直径(外径)1cm×高
さ200cm)にピッチ幅0mmでスパイラル状に巻き付けた後、加熱炉を用いてこれら
を120±1℃で40分処理し、加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷することに
より、電話機本体と受話器とを接続するようなスパイラス状(螺旋状)の引張試験用の検
体を3検体ずつ(計9検体)作製し、上記の手順にしたがって引張試験を行った。
その結果について、ケーブルAについては、比較例4~6として表1に示し、ケーブル
Bについては、比較例10~12として表2に示し、ケーブルCについては、比較例16
~18として、表3に示した。
なお、100gの錘を装着した状態において、実施例1~3に係るケーブル(ケーブル
A)、実施例4~6に係るケーブル(ケーブルB)、及び、実施例7~9に係るケーブル
(ケーブルC)について、天板との固定位置から錘を装着している他端側までの直線距離
を測定したところ、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上となっていた。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
表1~3より、各実施例に係る、ケーブルA(実施例1~3)、ケーブルB(実施例4
~6)、及び、ケーブルC(実施例7~9)は、いずれも、加熱処理を施していない、ケ
ーブルA(比較例1~3)、ケーブルB(比較例7~9)、及び、ケーブルC(比較例1
3~15)に比べて、錘装着後長さL2が短くなっており、コンパクトに収容できるもの
となっていることが分かる。
また、各実施例に係る、ケーブルA、ケーブルB、及び、ケーブルCは、いずれも、ス
パイラル状を有する、ケーブルA(比較例4~6)、ケーブルB(比較例10~12)、
及び、ケーブルC(比較例16~18)に比べて、錘装着後長さL2が十分な長さとなっ
ていることが分かる。
さらに、各実施例に係るケーブルA~Cでは、錘装着後長さL2が46cm以上90c
m以下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下)の範囲に入っ
ていたのに対し、各比較例に係るケーブルA~Cでは、錘装着後長さL2が46cm以上
90cm以下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下)の範囲
外であった。
【0045】
[巻き状態の維持性の評価]
上記引張試験を行う前に、実施例1~9に係る検体について、巻き状態の維持性を評価
した。
巻き状態の維持性の評価は、以下の手順にしたがって行った。
(1)伸ばした状態の検体について、その状態を維持しながら両端を固定する。
(2)検体の両端を固定した状態で24時間保持する。
(3)両端を固定した状態から解放した検体を、平板上において、直径5.5±1.5c
mの円が複数連なった形状(スパイラル形状)となるように検体を巻く。
(4)(1)~(3)を5サイクル行い、各サイクルごとに、巻き状態としてから10分
後に、一巻きの最長部分の長さ(以下、巻き直径ともいう)を測定する。
(5)5サイクルすべてにおいて、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が5.5±1.
5cmの範囲内にある場合を、巻き状態が維持されていると判断する。
その結果について、以下の表4に示した。
【0046】
【0047】
上記手順にしたがって、実施例1~9に係る検体について巻き状態の維持性を評価した
結果、いずれの検体についても、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が上記数値範囲(
5.5±1.5cm)内となっていることが分かった。すなわち、実施例1~9に係る検
体は、全て、巻き状態を維持できていることが分かった(表4を参照)。
これに対し、比較例1~3に係るケーブルA、比較例7~9に係るケーブルB、及び、
比較例13~15に係るケーブルCについては、平板上において、直径5.5±1.5c
mの円が複数連なった形状となるように巻こうとしたが、広がってしまい、このように巻
くことができなかった。
また、比較例4~6に係るケーブルA、比較例10~12に係るケーブルB、及び、比
較例16~18に係るケーブルCは、直径1.5cmの強い巻き癖が付いており、上記数
値範囲(5.5±1.5cm)を遥かに下回る巻き直径でしか巻くことができなかった。
【0048】
[引張試験後の巻き状態の維持性の評価]
上記のように引張試験を行った後の実施例1~9に係るケーブルについて、巻き状態の
維持性を評価した。
引張試験を行った後の各ケーブルの巻き状態の維持性は、引張試験を行った後の各ケー
ブルを平板上に置いて、直径5.5±1.5cmの円が複数連なった形状(スパイラル状
)となるように巻いて10分後に、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)を測定すること
により行った。
そして、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が5.5±1.5cmの範囲内にある場
合を、巻き状態が維持されていると判断した。
その結果を以下の表5に示した。
【0049】
【0050】
表5より、実施例1~9に係るケーブルは、いずれも、引張試験後においても巻き直径
が5.5±1.5cmの範囲内となっており、巻き状態を維持できていることが分かった
。
【0051】
以上の引張試験の結果及び巻き状態の維持性の評価の結果から、熱可塑性樹脂たるポリ
塩化ビニル樹脂を含む被覆層を備え、かつ、錘装着後長さL2が46cm以上90cm以
下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下)の範囲内であるケ
ーブルは、収容時及び使用時において、使い勝手がよいものとなることが分かる。
【0052】
[加熱処理条件がケーブルの特性に及ぼす影響]
導体(銅線)からなる芯材(外周が樹脂組成物で被覆された導体(銅線)の複数本を撚
り合わせたもの)の外周がポリ塩化ビニルを含む樹脂で被覆された3本のケーブル(ケー
ブルA、ケーブルB、及び、ケーブルC)について、加熱処理条件がケーブルの特性に及
ぼす影響について調べた。
検体としては、直径(外径)3.8cm×高さ200cmの円筒状の筒体の外周に、ピ
ッチ幅0mmで、上記各ケーブルをスパイラル状に巻き付けたものを用いた。
加熱処理条件は、加熱炉内において、温度30±1℃~240±1℃で、10~210
分処理するという条件とした。
また、加熱後の各ケーブルは、加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷するという
条件で冷却した。
加熱処理した各検体について、上記引張試験及び巻き状態の維持性の評価を行い、以下
の基準にしたがって評価した。
〇 錘装着後長さL2が46cm以上90cm以下の範囲となっており、かつ、巻き状
態の維持性の評価において、5サイクルすべてが5.5±1.5cmの範囲内である。
× 錘装着後長さL2、及び、巻き状態の維持性の評価のいずれか一方が、上記の基準
に適合していない。
ケーブルAの結果を以下の表6に示し、ケーブルBの結果を以下の表7に示し、ケーブ
ルCの結果を以下の表8に示した。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表6~8から、ケーブルA、ケーブルB、及び、ケーブルCのいずれについても、90
±1℃以上120±1℃以下の温度で60分以上加熱することにより、評価結果が〇とな
るケーブルを得ることができることが分かった。
なお、加熱温度30±1℃及び60±1℃で処理した場合には、いずれも、錘装着後長
さL2が、評価基準の上限値90cmを超えており、また、加熱温度90±1℃及び12
0±1℃で10min及び30min処理した場合も、錘装着後長さL2が、評価基準の
上限値90cmを超えていたため、×の結果となった。
また、温度150±1℃~240±1℃で処理した場合は、いずれも、錘装着後長さL
2が、評価基準の下限値46cm未満となっていたため、×の評価となった。なお、温度
150±1℃~240±1℃で処理した場合は、樹脂組成物の一部が溶融しており、巻き
付けたケーブルどうしがくっ付いてしまっていた。
この結果より、芯材の外周がポリ塩化ビニルを含む樹脂組成物で被覆されたケーブルを
筒体に巻き付けた状態とし、89℃以上121℃以下の温度で60分以上加熱した後に、
室温まで冷却することにより、収容時及び使用時において、使い勝手の良いケーブルを得
ることができることが分かった。
なお、以下の表9に、90±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルAに
ついての巻き状態の維持性(上記した5サイクルでの巻き状態の維持性)を評価した結果
を示し、表10に、90±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルBについ
て巻き状態の維持性を評価した結果を示し、表11に、90±1℃で60分以上210分
以下加熱した後のケーブルCについて巻き状態の維持性を評価した結果を示し、表12に
、120±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルAについての巻き状態の
維持性を評価した結果を示し、表13に、120±1℃で60分以上210分以下加熱し
た後のケーブルBについての巻き状態の維持性を評価した結果を示し、表14に、120
±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルCについての巻き状態の維持性を
評価した結果を示した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
[巻き直径がケーブルの巻き状態に及ぼす影響]
ケーブルにおける一巻きの最長長さ(巻き直径)がケーブルの巻き状態に及ぼす影響を調べるために、以下のようにして、巻き状態の維持性を評価するための検体を得た。
まず、導体(外周が樹脂組成物で被覆された導体(銅線)の複数本を撚り合わせたもの)からなる芯材の外周がポリ塩化ビニルを含む樹脂で被覆された長さ約2m(2m±1cm)の2本のケーブル(ケーブルA、ケーブルB)を、ピッチ幅0mmで円筒状の筒体(直径(外径)6.3cm×高さ200cm)にスパイラル状に巻き付けて、ケーブルが巻き付けられた筒体(以下、ケーブル付の筒体)を得た。
次に、これらのケーブル付の筒体(ケーブルAが巻き付けられた筒体、ケーブルBが巻き付けられた筒体)を加熱炉内に入れて、120℃±1℃で60分処理した。
次に、これらのケーブル付の筒体を加熱炉内で室温まで自然放冷することにより、巻き状態の維持性を評価するための検体を得た。なお、直径(外径)6.3cmの筒体に巻き付けて加熱処理することにより得られた各ケーブルにおける一巻きの最長長さ(巻き直径)は、9.5±1.5cmであった。
ケーブルA及びケーブルBは、いずれも、断面の形状が円形状であった。
また、ケーブルAにおいては、芯材の太さ(外径)は3.5mmであり、被覆厚さは0.35mmであり、ケーブルBにおいては、芯材の太さ(外径)は3.9mmであり、被覆厚さは0.35mmであった。
なお、ケーブルA及びBについて、被覆厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
また、ケーブルA及びBについて、ケーブルの太さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
【0064】
巻き状態の維持性の評価は、引張試験を行った後の各ケーブルについて行った。
詳しくは、引張試験を行った後の各ケーブルを平板上に置いて、直径9.5±1.5c
mの円が複数連なった形状(スパイラル状)となるように巻いて10分後に、一巻きの最
長部分の長さ(巻き直径)を測定することにより行った。
そして、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が9.5±1.5cmの範囲内にある場
合を、巻き状態が維持されていると判断した。
その結果を以下の表15に示した。
【0065】
【0066】
表15から、ケーブルA及びケーブルBは、いずれも、引張試験後においても巻き直径
が9.5±1.5cmの範囲内となっており、巻き状態を維持できていること、すなわち
、巻き直径の大きさによらず、巻き状態を維持できていることが分かった。
【0067】
[温度80±1℃で加熱されたケーブルの巻き状態の維持性]
加熱炉内での処理温度を80±1℃とした以外は、引張試験の項で説明したのと同様に
して、80±1℃で加熱された3検体のケーブルBを得た。
そして、引張試験を行った後の各ケーブルについて、巻き状態の維持性の評価を行った
。詳しくは、引張試験を行った後の各ケーブルを平板上に置いて、直径5.5cm±1.
5cmの円が複数連なった形状(スパイラル状)となるように巻いて10分後に、一巻き
の最長部分の長さ(巻き直径)を測定することにより行った。
そして、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が5.5±1.5cmの範囲内にある場
合を、巻き状態が維持されていると判断した。
その結果を以下の表16に示した。
【0068】
【0069】
表16から、ケーブルBは、引張試験後においても巻き直径が5.5±1.5cmの範
囲内となっており、巻き状態を維持できていること、すなわち、加熱温度が80℃の場合
であっても、巻き状態を維持できるケーブルを得ることができることが分かった。
【0070】
<被覆層がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂を含むケーブル>
以下のようにして引張試験用の検体を得た。
まず、導体(外周が樹脂組成物で被覆された導体(銅線)を複数本撚り合わせたもの)からなる芯材の外周がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂(ハードセグメントたるオレフィン系樹脂としてポリプロピレン(PP)を含み、ソフトセグメントたるゴム成分として水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂)で被覆された長さ約1m(1m±1cm)の3本のケーブル(ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’)を、ピッチ幅0mmで円筒状の筒体(直径(外径)3.8cm×高さ200cm)にスパイラル状に巻き付けて、ケーブルが巻き付けられた筒体(以下、ケーブル付の筒体ともいう)を得た。
次に、これらのケーブル付の筒体(ケーブルA’が巻き付けられた筒体、ケーブルB’が巻き付けられた筒体、及び、ケーブルC’が巻き付けられた筒体)を加熱炉内に入れて、90±1℃で60分処理した。
次に、これらのケーブル付の筒体を加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷することにより、引張試験用の検体を得た。なお、直径(外径)3.8cmの筒体に巻き付けて加熱処理することにより得られた各ケーブルにおける一巻きの最長長さ(以下、巻き直径ともいう)は、5.5±1.5cmであった。
ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’は、いずれも、断面の形状が円形状であった。
また、ケーブルA’においては、芯材の太さ(外径)は3.2mmであり、被覆厚さは0.35mmであり、ケーブルB’においては、芯材の太さ(外径)は3.3mmであり、被覆厚さは0.35mmであり、ケーブルC’においては、芯材の太さ(外径)は4mmであり、被覆厚さは0.35mmであった。
なお、ケーブルA’~C’について、被覆厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
また、ケーブルA’~C’について、ケーブルの太さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
引張試験用の検体は、各ケーブルごとに、3本ずつ(計9検体)作製した。
そして、各検体(計9検体)について、以下の手順にしたがって引張試験を行った。
(1)天板を有する固定具の天板に、検体の一端側を固定する。
(2)天板から検体が垂れ下がった状態において、検体の一端側の固定箇所から検体の他端側の先端部までの長さ(錘装着前長さL1)を測定する。
(3)100gの錘を検体の他端側に取り付けて、60分放置する。
(4)検体の他端側から100gの錘を取り外す。
(5)検体の一端側の固定箇所から検体の他端側の先端部までの長さ(錘装着後長さL2)を測定する。
【0071】
引張試験の結果について、ケーブルA’については、実施例1’~3’として表17に
示し、ケーブルB’については、実施例4’~6’として表18に示し、ケーブルC’に
ついては、実施例7’~9’として表19に示した。
また、実施例1’~9’に係るケーブルの引張試験結果と比較するために、ケーブルA
’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’のそれぞれについて、上記のような加熱処理を施
していないケーブルを3検体ずつ(計9検体)準備し、上記の手順にしたがって引張試験
を行った。
その結果について、ケーブルA’については、比較例1’~3’として表17に示し、
ケーブルB’については、比較例7’~9’として表18に示し、ケーブルC’について
は、比較例13’~15’として表19に示した。
さらに、上記のように作製したケーブルの引張試験結果と比較するために、ケーブルA
’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’のそれぞれを、円筒状の筒体(直径(外径)1c
m×高さ200cm)にピッチ幅0mmでスパイラル状に巻き付けた後、加熱炉を用いて
これらを90±1℃で40分処理し、加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷するこ
とより、電話機本体と受話器とを接続するようなスパイラル状(螺旋状)の引張試験用の
検体を3検体ずつ(計9検体)作製し、上記の手順にしたがって引張試験を行った。
その結果について、ケーブルA’については、比較例4’~6’として表17に示し、
ケーブルB’については、比較例10’~12’として表18に示し、ケーブルC’につ
いては、比較例16’~18’として表19に示した。
なお、100gの錘を装着した状態において、実施例1’~3’に係るケーブル(ケー
ブルA)、実施例4’~6’に係るケーブル(ケーブルB)、及び、実施例7’~9’に
係るケーブル(ケーブルC)について、天板との固定位置から錘を装着している他端側ま
での直線距離を測定したところ、直線状に伸ばした状態における直線距離の80%以上と
なっていた。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表17~19より、各実施例に係る、ケーブルA’(実施例1’~3’)、ケーブルB
’(実施例4’~6’)、及び、ケーブルC’(実施例7’~9’)は、いずれも、加熱
処理を施していない、ケーブルA’(比較例1’~3’)、ケーブルB’(比較例7’~
9’)、及び、ケーブルC’(比較例13’~15’)に比べて、錘装着後長さL2が短
くなっており、コンパクトに収容できるものとなっていることが分かる。
また、各実施例に係るケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’は、いずれも
、スパイラル状を有する、ケーブルA’(比較例4’~6’)、ケーブルB’(比較例1
0’~12’)、及び、ケーブルC’(比較例16’~18’)に比べて、錘装着後長さ
L2が十分な長さとなっていることが分かる。
さらに、各実施例に係るケーブルA’~C’では、錘装着後長さL2が46cm以上9
0cm以下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下)の範囲に
入っていたのに対し、各比較例に係るケーブルA’~C’では、錘装着後長さL2が46
cm以上90cm以下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下
)の範囲外であった。
【0076】
[巻き状態の維持性の評価]
以下のようにして巻き状態の維持性を評価するための検体を得た。
上記の引張試験の項で説明したのと同様にして、長さ約1m(1m±1cm)の3本の
ケーブル(ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’)を、ピッチ幅0mmで円
筒状の筒体(直径(外径)3.8cm×高さ200cm)にスパイラル状に巻き付けて、
ケーブルが巻き付けられた筒体(ケーブル付の筒体)を得た。
次に、これらのケーブル付の筒体(ケーブルA’が巻き付けられた筒体、ケーブルB’
が巻き付けられた筒体、及び、ケーブルC’が巻き付けられた筒体)を加熱炉内に入れて
、温度60±1℃~120±1℃で、30~210分処理した。
次に、これらのケーブル付の筒体を加熱炉内で室温(23±2℃)まで自然放冷するこ
とにより、引張試験用の検体を得た。なお、直径(外径)3.8cmの筒体に巻き付けて
加熱処理することにより得られた各ケーブルにおける一巻きの最長長さ(以下、巻き直径
ともいう)は、5.5±1.5cmであった。
ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’は、いずれも、断面の形状が円形状
であった。
巻き状態の維持性の評価用の検体は、各ケーブルにつき、各温度ごと(60±1℃、9
0±1℃、及び、120±1℃)及び各加熱時間ごとに3本ずつ作製した(各ケーブルご
とに18検体。計54検体)。
【0077】
巻き状態の維持性の評価は、各検体について、以下の手順にしたがって行った。
(1)検体の一端側に5Nの力に相当する錘を取り付けた状態とし、検体の他端側を上方
に引っ張り上げて1秒間保持した後、他端側を離す。
(2)(1)を1095回繰り返す。
(3)(2)を行った後の検体を、平板上において、直径5.5cm±1.5cmの円が
複数連なった形状(スパイラル形状)となるように検体を巻く(巻き状態とする)。
(4)巻き状態としてから10分後に、一巻きの最長部分の長さ(以下、巻き直径ともい
う)を測定する。
(5)一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が5.5±1.5cmの範囲内にある場合を
、巻き状態が維持されていると判断する。
ケーブルA’についての巻き状態の維持性の評価結果を以下の表20に示し、ケーブル
B’についての巻き状態の維持性の評価結果を以下の表21に示し、ケーブルC’につい
ての巻き状態の維持性の評価結果を以下の表22に示した。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
表20~22より、ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’のいずれについ
ても、90±1℃で60分以上加熱することにより、巻き状態の維持性についての評価が
〇となるケーブルを得ることができることが分かった。
一方で、ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’のいずれについても、60
±1℃で加熱処理したものは、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が7cm(5.5+
1.5cm)を超えていたため、×の評価であった。
また、ケーブルA’、ケーブルB’、及び、ケーブルC’のいずれについても、120
±1℃で加熱処理したものは、樹脂組成物の一部が溶融しており、巻き状態の維持性の評
価を行うことができなかったため、×の評価であった。
なお、以下の表23に、90±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルA
’についての巻き状態の維持性を評価した結果を示し、以下の表24に、90±1℃で6
0分以上210分以下加熱処理した後のケーブルB’についての巻き状態の維持性を評価
した結果を示し、以下の表25に、90±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケ
ーブルC’についての巻き状態の維持性を評価した結果を示した。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
上記の引張試験の結果及び巻き状態の維持性の評価の結果から、熱可塑性樹脂たるオレ
フィン系熱可塑性エラストマー樹脂を含む被覆層を備え、かつ、錘装着後長さL2が46
cm以上90cm以下(直線状に伸ばした状態における直線距離の46%以上90%以下
)の範囲内であるケーブルは、収容時及び使用時において、使い勝手がよいものとなるこ
とが分かる。
【0086】
[巻き直径がケーブルの巻き状態に及ぼす影響]
ケーブルにおける一巻きの最長長さ(巻き直径)がケーブルの巻き状態に及ぼす影響を調べるために、以下のようにして、巻き状態の維持性を評価するための検体を得た。
まず、導体(外周が樹脂組成物で被覆された導体(銅線)の複数本を撚り合わせたもの)からなる芯材の外周がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂(ハードセグメントたるオレフィン系樹脂としてポリプロピレン(PP)を含み、ソフトセグメントたるゴム成分として水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)を含むオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂)を含む樹脂組成物で被覆された長さ約2m(2m±1cm)の2本のケーブル(ケーブルA’、及び、ケーブルB’)を、ピッチ幅0mmで円筒状の筒体(直径(外径)6.3cm×高さ200cm)にスパイラル状に巻き付けて、ケーブルが巻き付けられた筒体(以下、ケーブル付の筒体)を得た。
次に、これらのケーブル付の筒体(ケーブルA’が巻き付けられた筒体、及び、ケーブルB’が巻き付けられた筒体)を加熱炉内に入れて、温度60±1℃~120±1℃で、30分~210分処理した。
次に、これらのケーブル付の筒体を加熱炉内で室温まで自然放冷することにより、巻き状態の維持性を評価するための検体を得た。なお、直径(外径)6.3cmの筒体に巻き付けて加熱処理することにより得られた各ケーブルにおける巻き部分の最長長さ(巻き直径)は、9.5±1.5cmであった。
ケーブルA’及びケーブルB’は、いずれも、断面の形状が円形状であった。
また、ケーブルA’においては、芯材の太さ(外径)は3.5mmであり、被覆厚さは0.4mmであり、ケーブルB’においては、芯材の太さ(外径)は3.9mmであり、被覆厚さは0.4mmであった。
なお、ケーブルA’及びB’について、被覆厚さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
また、ケーブルA’及びB’について、ケーブルの太さは、上記の実施形態の項で説明した方法にしたがって測定した。
巻き状態の維持性の評価用の検体は、各ケーブルにつき、各温度ごと(60±1℃、90±1℃、及び、120±1℃)及び各加熱時間ごとに3本ずつ作製した(各ケーブルごとに18検体。計36検体)。
【0087】
巻き状態の維持性の評価は、以下の手順にしたがって行った。
(1)検体の一端側に5Nの力に相当する錘を取り付けた状態とし、検体の他端側を上方
に引っ張り上げて1秒間保持した後、他端側を離す。
(2)(1)を1095回繰り返す。
(3)(2)を行った後の検体を、平板上において、直径9.5cm±1.5cmの円が
複数連なった形状(スパイラル形状)となるように検体を巻く(巻き状態とする)。
(4)巻き状態としてから10分後に、一巻きの最長部分の長さ(以下、巻き直径ともい
う)を測定する。
(5)一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が9.5±1.5cmの範囲内にある場合を
、巻き状態が維持されていると判断する。
ケーブルA’についての巻き状態の維持性の評価結果を以下の表26に示し、ケーブル
B’についての巻き状態の維持性の評価結果を以下の表27に示した。
【0088】
【0089】
【0090】
表26及び27より、ケーブルA’、及び、ケーブルB’のいずれについても、90±
1℃で60分以上加熱することにより、巻き状態の維持性についての評価が〇となるケー
ブルを得ることができることが分かった。
一方で、ケーブルA’、及び、ケーブルB’のいずれについても、60±1℃で加熱処
理したものは、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が11cm(9.5+1.5cm)
を超えていたため、×の評価であった。
また、ケーブルA’、及び、ケーブルB’のいずれについても、120±1℃で加熱処
理したものは、樹脂組成物の一部が溶融しており、巻き状態の維持性の評価を行うことが
できなかったため、×の評価であった。
この結果から、芯材の外周がオレフィン系熱可塑性エラストマー樹脂を含む樹脂組成物
で被覆されたケーブルを筒体に巻き付けた状態とし、89℃以上91℃以下の温度で60
分以上加熱した後に、室温まで冷却することにより得られるケーブルは、巻き直径の大き
さによらず、巻き状態を維持できていることが分かった。
なお、以下の表28に、90±1℃で60分以上210分以下加熱した後のケーブルA
’についての巻き状態の維持性を評価した結果を示し、以下の表29に、90±1℃で6
0分以上210分以下加熱処理した後のケーブルB’についての巻き状態の維持性を評価
した結果を示した。
【0091】
【0092】
【0093】
[温度80±1℃で加熱されたケーブルの巻き状態の維持性]
加熱炉内での処理温度を80±1℃とした以外は、引張試験の項で説明したのと同様に
して、80±1℃で加熱された3検体のケーブルB’を得た。
そして、各ケーブルについて、巻き状態の維持性の評価を行った。
巻き状態の維持性の評価は、以下の手順にしたがって行った。
(1)天板を有する固定具の天板に、検体の一端側を固定する。
(2)100gの錘を検体の他端側に取り付けて、60分間放置する。
(3)検体の他端側から錘を取り外す。
(4)検体の一端側を天板から取り外した後に、平板上において、直径5.5±1.5c
mの円が複数連なった形状(スパイラル形状)となるように検体を巻く。
(5)巻き状態としてから10分後に、一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)を測定する
。
(6)一巻きの最長部分の長さ(巻き直径)が5.5±1.5cmの範囲内にある場合を
、巻き状態が維持されていると判断する。
その結果を、以下の表30に示した。
【0094】
【0095】
表30から、ケーブルB’は、試験後の巻き直径が5.5±1.5cmの範囲内となっ
ており、巻き状態を維持できていること、すなわち、加熱温度が79℃以上81℃以下の
場合であっても、巻き状態を維持できるケーブルを得ることができることが分かった。
この結果と、上記した60±1℃~120±1℃で加熱処理した後のケーブルについて
の巻き状態の維持性の評価結果とから、加熱温度を79℃以上91℃以下とすることによ
り、巻き状態を維持できるケーブルを得ることができることが分かった。
【符号の説明】
【0096】
1 芯材、2 被覆層、10 ケーブル、
10a 一巻き、
S1 巻付け工程、S2 加熱工程、S3 冷却工程。