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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】LIイオン電池用ゲル化高分子膜
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241121BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20241121BHJP
   C08L 27/20 20060101ALI20241121BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241121BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20241121BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
B32B27/00 A
C08L27/16
C08L27/20
H01M10/052
H01M10/0565
H01M50/426
H01M50/449
H01M50/489
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022527728
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 FR2020052050
(87)【国際公開番号】W WO2021094681
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】1912661
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビゼー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ショボー,ジェローム
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-023694(JP,A)
【文献】特開2000-149903(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,H01M,B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの層を含む非多孔質フルオロポリマーフィルムであって、該層が、2種のフルオロポリマー、すなわち、3重量%以上のHFP含有率を有する、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との少なくとも1種のコポリマーを含むフルオロポリマーAと、VDFホモポリマー及び/又は少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含むフルオロポリマーBとの混合物からなり、前記フルオロポリマーBが、前記ポリマーAのHFPの重量含有率より少なくとも3重量%低いHFPの重量含有率を有前記フィルムが複数の層を有し、その少なくとも1層が前記ポリマーAとBとの混合物からなり、当該多層フィルムの全体の厚さが2μm~1000μmである、非多孔質フルオロポリマーフィルム。
【請求項2】
前記フルオロポリマーAの組成の一部を形成する前記少なくとも1種のVDF-HFPコポリマー中のHFP含有率が、8%以上55%以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フルオロポリマーAが、3%以上のHFP含有率を有する単一のVDF-HFPコポリマーからなる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フルオロポリマーAが、2種以上のVDF-HFPコポリマーの混合物からなり、各コポリマーのHFP含有率が3%以上である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フルオロポリマーBが、フッ化ビニリデンのホモポリマー又はフッ化ビニリデンのホモポリマーの混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フルオロポリマーBが、1%~10%のHFP含有率を有する単一のVDF-HFPコポリマーからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記混合物が以下を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルム。
i. 10%以上99%以下の重量含有率のポリマーA、及び
ii. 90%以下1%超の重量含有率のポリマーB。
【請求項8】
付加的な層が以下のポリマー組成物から選択される、請求項に記載のフィルム。
・ フッ化ビニリデンホモポリマー及びVDF-HFPコポリマーから選択されるフルオロポリマーからなる組成物、
・ フッ化ビニリデンホモポリマー及びVDF-HFPコポリマーから選択されるフルオロポリマーと、メチルメタクリレート(MMA)ホモポリマー及び少なくとも50重量%のMMAとアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン及びイソプレンから選択されるMMAと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとを含むコポリマーとの混合物からなる組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のフルオロポリマーフィルムと、少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のリチウム塩を含む電解質とを含むゲル化高分子膜。
【請求項10】
前記溶媒が、環状及び非環状アルキルカーボネート、エーテル、グリム、ギ酸塩、エステル及びラクトンから選択される、請求項に記載の膜。
【請求項11】
前記リチウム塩が、LiPF(リチウムヘキサフルオロホスフェート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTDI(リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート)、LiPOF、LiB(C、LiFB(C、LiBF、LiNO、LiClOから選択される、請求項又は10に記載の膜。
【請求項12】
前記電解質が、前記溶媒中で0.05~5mol/Lの塩濃度を有する、請求項11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
前記電解質/フルオロポリマーの比が、0.05~20である、請求項から12のいずれか一項に記載の膜。
【請求項14】
非多孔質フルオロポリマーフィルムと、少なくとも1種の溶媒及びLiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)である少なくとも1種のリチウム塩を含む電解質とを含むゲル化高分子膜であって、前記フルオロポリマーフィルムが、少なくとも1つの層を含む非多孔質フルオロポリマーフィルムであって、該層が、2種のフルオロポリマー、すなわち、3重量%以上のHFP含有率を有する、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との少なくとも1種のコポリマーを含むフルオロポリマーAと、VDFホモポリマー及び/又は少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含むフルオロポリマーBとの混合物からなり、前記フルオロポリマーBが、前記ポリマーAのHFPの重量含有率より少なくとも3重量%低いHFPの重量含有率を有する、非多孔質フルオロポリマーフィルムである、ゲル化高分子膜。
【請求項15】
請求項13のいずれか一項に記載のゲル化高分子膜からなる、再充電可能なLiイオン電池用セパレータ。
【請求項16】
非多孔質フルオロポリマーフィルムと、少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のリチウム塩を含む電解質とを含むゲル化高分子膜からなる、再充電可能なLiイオン電池用であって、前記フルオロポリマーフィルムが、少なくとも1つの層を含み、該層が、2種のフルオロポリマー、すなわち、3重量%以上のHFP含有率を有する、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との少なくとも1種のコポリマーを含むフルオロポリマーAと、VDFホモポリマー及び/又は少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含むフルオロポリマーBとの混合物からなり、前記フルオロポリマーBが、前記ポリマーAのHFPの重量含有率より少なくとも3重量%低いHFPの重量含有率を有する、セパレータ。
【請求項17】
アノード、カソード及びセパレータを含み、該セパレータが、請求項13のいずれか一項に記載のゲル化高分子膜を含む、Liイオン蓄電池。
【請求項18】
アノード、カソード及び請求項16に記載のセパレータを含む、Liイオン蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、Liイオン型の再充電可能な蓄電池における電気エネルギー蓄積の分野に関する。より具体的には、本発明は、膨潤後のイオン伝導度と機械的強度との間の非常に良好な妥協を提供するゲル化された高密度膜を製造することを可能にするフルオロポリマーフィルムに関する。この膜はLiイオン電池用のセパレータとしての使用を意図している。
【背景技術】
【0002】
Liイオン電池は、銅集電体に結合された少なくとも1つの負極又はアノード、アルミニウム集電体に結合された正極又はカソード、セパレータ及び電解質を含む。電解質は、イオンの輸送及び解離を最適化するために選択される有機カーボネートの混合物である溶媒と混合されたリチウム塩、一般にヘキサフルオロリン酸リチウムからなる。高い誘電率はイオンの解離を促進し、その結果、所定の体積で利用可能なイオンの数を増やし、一方、低い粘度は電気化学系の充放電の速度において、他のパラメーターの中でも必須の役割を果たすイオン拡散を促進する。
【0003】
再充電可能な電池、すなわち蓄電池は、電池の正極及び負極で起こる関連する化学反応が可逆的であるため、一次電池(再充電可能ではない)よりも有利である。蓄電池の電極は、電荷を適用することにより、複数回再生することができる。多くの先進的な電極システムが、電荷を貯蔵するために開発されてきた。並行して、電気化学電池の容量を改善できる電解質の開発に多大な努力が払われてきた。
【0004】
セパレータはこれら2つの電極の間に位置し、機械的及び電子的バリアとして、またイオン伝導体として作用する。いくつかのカテゴリーのセパレータが存在する。すなわち、乾燥高分子膜、ゲル化高分子膜、及び液体電解質を含浸させた微小孔性又はマクロ多孔性のセパレータである。
【0005】
セパレータ市場では、押出及び/又は延伸によって製造されたポリオレフィン(Celgard(R)又はSolupor(R))の使用が支配的である。セパレータは、薄い厚さ、電解質に対する最適な親和性及び満足な機械的強度を同時に示さなければならない。ポリオレフィンの最も有利な代替品の中で、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロペン)(P(VDF-co-HFP))などの系の内部抵抗を低下させるために、標準電解質に関してより良好な親和性を示すポリマーが提案された。
【0006】
液体溶媒を用いない乾燥高分子膜は、従来のLiイオン電池のように可燃性液体成分の使用を避け、より薄く、より可撓性の電池の製造を可能にする。しかし、これらは液体電解質の特性、特にイオン伝導度に明らかに劣る特性を持つ。良好な伝導度は、例えば、携帯電話及び衛星によって要求される高スループット動作に必要である。
【0007】
ゲル化高密度膜は、液体電解質を含侵させたセパレータに対するもう一つの選択肢となる。「高密度膜」という用語は、もはや自由気孔率を持たない膜を指す。それらは溶媒によって膨潤するが、膜材料に化学的に強く結合した後者は、その全ての溶媒和特性を失い、その結果溶媒は溶質を同伴することなく膜を通過する。これらの膜の場合、自由空間はポリマー鎖によってそれらの間に残された自由空間に対応し、単純な有機分子又は水和イオンの大きさを持っている。
【0008】
ゲル化高密度膜の利点は、液体電解質をベースとするセパレータと比較して、安全性のより良好な保証を提供することである。さらに、この種のセパレータは、アノードとしてリチウム箔を使用する電池技術に有利であり、したがってアノードの表面上での樹状突起の形成を制限し得る。
【0009】
ゲル化膜の難点は、高いイオン伝導度を調和させながら、電池の製造のためのセパレータの容易な取扱いを可能にし、電池の充電/放電サイクルの間の機械的応力に耐えるのに十分な膨潤後の機械的強度を同時に保持することである。ゲル化された電解質は、電解質自体の塩及びポリマーに加えて、かなりの割合の溶媒(又は可塑剤)を含む。
【0010】
ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)及びその誘導体は、それらの電気化学的安定性及び、イオンの解離、ひいては伝導度を促進する高い誘電率のために、セパレータの主要構成材料としての利点を示す。コポリマーP(VDF-co-HFP)(フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー)は、PVDFよりも低い結晶性を示すため、ゲル化膜として研究されてきた。このため、これらのP(VDF-co-HFP)コポリマーの利点は、それらにより、より大きな膨潤を達成し、したがって伝導度を促進することが可能になることである。
【0011】
文献US5296318号には、リチウム塩(LiPF)及び溶媒としての炭酸塩の混合物からなる電解質中で膨潤したVDF-HFPコポリマーをベースとするセパレータが記載されている。記載例では、Kynar Flex(R)2801及び2750をそれぞれHFPの12重量%及び15重量%で使用する。より一般的には、この特許は、HFPの8重量%~25重量%の最適HFP含有率を請求する。HFPの8%未満では、著者らは膜の使用に関連した難点を挙げている。25%を超えると、膨潤後に機械的強度が不十分になる。セパレータの製造方法は、揮発性の非常に高い溶媒であるテトラヒドロフランを使用する、溶媒をベースとする方法である。実施例1及び2で報告されているイオン伝導度はそれぞれ0.3mS/cm及び0.4mS/cmである。
【0012】
この文献は、膨潤後のそれらの機械的強度を強化するために、25重量%を超えるHFP含有率を有するVDF-HFPコポリマーをベースとするセパレータには、追加の架橋工程を使用する必要性を記載する。これらのコポリマーは70℃まで加熱しても満足な結果を与える。しかし、可塑化コポリマーは、80℃を超える温度で液体電解質に可溶性である。一定の応力下で電解質膜が溶けると、電解質が流れ、内部でバッテリーが短絡し、急激な放電及び加熱が発生する可能性がある。
【0013】
この問題を解決するために、文献US2019/088916号は、電解質溶液中で有機溶媒によってゲル化でき、電解質溶液を加えるとポリマーゲル電解質を形成する高分子材料を含む非多孔質のセパレータを提案する。この非多孔質セパレータは、少なくとも1種の合成高分子化合物又は1種の天然高分子化合物を含み、マトリックスとして、有機溶媒によってゲル化することができない少なくとも1種の高分子材料も含む。実施例は、ゲル化不能なポリマーが、ゲル化性ポリマーの溶液を含浸させた多孔質膜の形態で使用されることを示す。したがって、この取り組みは、ゲル化不能なポリマーの多孔質膜を製造するための複雑な工程(気孔率の程度及び気孔率の性質(孔径及び開放気孔率の程度)を制御することを可能とする)を課す。さらに、この製造方法は、多孔質膜の孔を含浸させるために溶媒をベースとする工程を使用することを必要としており、溶媒を使用する欠点を有し、蒸発工程を必要とする。
【0014】
また、この取り組みには、ゲル化可能な高分子材料及びゲル化不能な高分子材料が非常に異なる化学的性質を有することが必要である。このことは、ゲル化可能な高分子材料及びゲル化不能な高分子材料間の接着性の低さを意味し、このことはバッテリー性能の耐久性に悪影響である可能性がある。最後に、イオン伝導性を担うゲル化可能なポリマーの画分は、膜の一部のみを表し、これは、セパレータのイオン伝導性部分と電極との接触の表面を最適化することを可能にしない。
【0015】
膨潤後のイオン伝導度と機械的強度との間に良好な妥協性を示し、かつ事前の変換工程を必要とせず、簡易な使用に適した新しいゲル化セパレータを開発する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第5296318号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/088916号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、このようにして、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服すること、すなわち、溶媒中で膨潤後、良好な機械的強度及び良好なイオン伝導度を維持することができるポリマーフィルムを提案することである。
【0018】
本発明はまた、フルオロポリマーをベースとする配合物からの押出の単一工程を含む、このポリマーフィルムを製造するための方法を提供することを目的とする。
【0019】
本発明はまた、溶媒(複数可)及びリチウム塩(複数可)の混合物からなる電解質に含浸された前記ポリマーフィルムを含むゲル化高分子膜に関する。
【0020】
本発明の別の主題は、前記ゲル化高分子膜の全部又は一部からなるLiイオン蓄電池用のセパレータである。
【0021】
最後に、本発明は、そのようなセパレータを含む、再充電可能なLi-イオン蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によって提案される技術的解決策は、異なる結晶性を有する少なくとも2種のフルオロポリマーの混合物をベースとするフルオロポリマーフィルムである。
【0023】
本発明は、少なくとも1つの層を含む非多孔質フルオロポリマーフィルムに関するものであり、該層は、2種のフルオロポリマー、すなわち、3重量%以上のHFP含有率を有する、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との少なくとも1種のコポリマーを含むフルオロポリマーAと、VDFホモポリマー及び/又は少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含むフルオロポリマーBであって、ポリマーAの重量含有率より少なくとも3重量%低いHFPの重量含有率を有する該フルオロポリマーBの混合物からなる。
【0024】
フルオロポリマーAは、3重量%以上、好ましくは8%以上、有利には13%以上のHFP含有率を有する少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含む。
【0025】
フルオロフィルム配合物中のその重量含有率は、10重量%以上99%以下であり、優先的に25%以上95%以下であり、優先的に50%以上95%以下である。
【0026】
フルオロポリマーBは、ポリマーAのHFPの重量含有率より少なくとも3%低いHFPの重量含有率を有する少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含む。フルオロフィルム配合物中のその重量含有率は90%以下1%超であり、好ましくは75%未満5%超であり、有利には50%未満5%超である。
【0027】
一実施形態によると、前記フルオロポリマーフィルムは単層フィルムである。
【0028】
別の実施形態によれば、前記フルオロポリマーフィルムは、ポリマーの少なくとも2層を含み、そのうちの少なくとも1層は、上記の2種のフルオロポリマーの混合物からなる。
【0029】
本発明はまた、上記フルオロポリマーフィルムを含む、ゲル化高分子膜、及び少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のリチウム塩及び任意に少なくとも1種の添加剤を含む電解質に関する。
【0030】
一実施形態によれば、前記溶媒は環状及び非環状のアルキルカーボネート、エーテル、ギ酸塩、ニトリル、エステル及びラクトンから選択される。
【0031】
本発明の別の主題は、全部又は一部が上記のゲル化高分子膜からなる再充電可能なLi-イオン電池用のセパレータである。
【0032】
本発明の別の主題は、負極、正極及びセパレータを含むLiイオン蓄電池であって、該セパレータは上記のゲル化高分子膜を含む。
【0033】
本発明は、従来技術の欠点を克服することを可能にする。本発明は、特に、電解質中でリチウム塩の存在下で膨潤させた後、高いイオン伝導度及びセパレータの扱いを容易にするのに十分な機械的強度を組み合わせたセパレータを提供することができる非多孔質フルオロポリマーフィルムを提供する。
【0034】
この技術の利点は、液体電解質をベースとするセパレータと比較して、安全性の保証がより優れていることである。さらに、この種のセパレータは、アノードとしてリチウム箔を使用する電池技術に有利であり、したがってアノードの表面での樹状突起の形成を制限し得る。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、ここで、以下の説明において、より詳細に及び非限定的な方法で説明される。
【0036】
第1の態様によれば、本発明は、少なくとも1層を含む非多孔質フルオロポリマーフィルムに関するものであり、該層は2種のフルオロポリマー、すなわち、3重量%以上のHFP含有率を有する、フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との少なくとも1種のコポリマーを含むフルオロポリマーAと、VDFホモポリマー及び/又は少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含むフルオロポリマーBであって、ポリマーAのHFPの重量含有率よりも少なくとも3重量%低いHFPの重量含有率を有する該フルオロポリマーBの混合物からなる。
【0037】
様々な実装によれば、前記フィルムは、適切に組み合わせられる、以下の特徴を有する。示された含有率は、特に指示がない限り、重量で表される。
【0038】
第1の実施形態によると、前記フィルムは単一層からなる。
【0039】
フルオロポリマーAは、3重量%以上、好ましくは8%以上、有利には13%以上のHFP含有率を有する少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含む。前記VDF-HFPコポリマーは、55%以下、好ましくは50%以下のHFP含有率を有する。
【0040】
この非常に低い結晶性のコポリマーは電解質溶媒中で容易に膨潤し、それによりフィルムに良好なイオン伝導度を与えることができる。膨潤は電解質中のフィルムの質量増加によって定量化できる。このコポリマーの質量増加は、有利に少なくとも5重量%以上である。
【0041】
一実施形態によれば、フルオロポリマーAは、3%以上のHFP含有率を有する単一のVDF-HFPコポリマーからなる。一実施形態によれば、このVDF-HFPコポリマーのHFP含有率は13%~55%であり、端点が含まれ、好ましくは15%~50%であり、端点が含まれる。
【0042】
一実施形態によれば、フルオロポリマーAは、2種以上のVDF-HFPコポリマーの混合物からなり、各コポリマーのHFP含有率は3%以上である。一実施形態によれば、コポリマーの各々は、13%~55%(端点を含む)、好ましくは15%~50%(端点を含む)のHFP含有率を有する。
【0043】
フルオロポリマー中の単位のモル組成は、赤外分光法又はラマン分光法のような種々の手段によって決定され得る。X線蛍光分光法のような炭素、フッ素及び塩素又は臭素又はヨウ素元素の元素分析の従来の方法により、ポリマーの重量組成を明確に計算することが可能になり、重量組成からモル組成が推定される。
【0044】
適切な重水素化溶媒中のポリマーの溶液の分析によって、多核NMR技術、特にプロトン(1H)及びフッ素(19F)NMR技術を使用することもできる。NMRスペクトルは多核プローブを装備したFT-NMR分光計で記録される。次に、いずれかの核に応じて生成されるスペクトルの中で、種々モノマーによって与えられる特異的なシグナルが同定される。
【0045】
フルオロポリマーBは、ポリマーAのHFPの重量含有率よりも少なくとも3%低いHFPの重量含有率を有する少なくとも1種のVDF-HFPコポリマーを含む。
【0046】
一実施形態によると、フルオロポリマーBはフッ化ビニリデン(VDF)ホモポリマー又はフッ化ビニリデンホモポリマーの混合物である。
【0047】
一実施形態によれば、フルオロポリマーBは、単一のVDF-HFPコポリマーからなる。一実施形態によれば、このVDF-HFPコポリマーのHFP含有率は1%~5%であり、端点が含まれる。別の実施形態によると、このVDF-HFPコポリマーのHFP含有率は、1%~10%であり、端点が含まれる。
【0048】
一実施形態によれば、フルオロポリマーBは、PVDFホモポリマーとVDF-HFPコポリマーとの混合物、又は2種以上のVDF-HFPコポリマーの混合物である。
【0049】
一実施形態によると、前記混合物は、
i. 10%以上99%以下、好ましくは50%以上95%以下、有利に25%以上95%以下の重量含有率のポリマーA、及び
ii. 90%以下1%超、好ましくは50%未満5%超の重量含有率のポリマーBを含む。
【0050】
一実施形態によると、前記単分子層フルオロポリマーフィルムは、1~1000μm、好ましくは1μm~500μm、より優先的には5μm~100μmの間の厚さを有する。
【0051】
有利には、本発明によるフルオロポリマーフィルムにおいて、フルオロポリマーA及びBは、これらのポリマーの徹底的な混合物を得るように混合され、この混合物において、ポリマーA及びBの各々は、溶融状態にある。
【0052】
一実施形態によれば、フィルムが単分子層フィルムである場合、前記フルオロポリマーフィルムは、溶媒媒介方法によって製造され得る。ポリマーA及びBは、ポリフッ化ビニリデン又はそのコポリマーのための既知の溶媒に溶解される。溶媒の非網羅的な例としては、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン及びアセトンが挙げられる。溶液を平らな基材に塗布し、溶媒を蒸発させた後、フィルムが得られる。
【0053】
一実施形態によれば、前記フルオロポリマーフィルムは、少なくとも1層が本発明によるポリマーA及びBの混合物から構成される多層フィルムである。多層フィルムの全体の厚さは2μm~1000μmの間であり、本発明によるフルオロポリマー層の厚さは1μm~999μmの間である。
【0054】
付加的な層(単数又は複数)は、以下のポリマー組成物から選択される。
- フッ化ビニリデンホモポリマー及び好ましくは少なくとも90重量%のVDFを含有するVDF-HFPコポリマーから選択されるフルオロポリマーからなる組成物、
- フッ化ビニリデンホモポリマー及び好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含有するVDF-HFPコポリマーから選択されるフルオロポリマーと、メチルメタクリレート(MMA)ホモポリマー及び少なくとも50重量%のMMAと、MMAと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーとを含有するコポリマーとの混合物からなる組成物。MMAと共重合可能なコモノマーの例としては、アルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン及びイソプレンが挙げられる。MMAポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)は、有利には、0~20重量%、好ましくは5~15重量%のC1~C8アルキル(メタ)アクリレートを含み、C1~C8アルキル(メタ)アクリレートは好ましくはメチルアクリレート及び/又はエチルアクリレートである。MMAポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)は官能化されてもよく、これは、例えば、酸、塩化アシル、アルコール又は無水物官能基を含むことを意味する。これらの官能基はグラフト化又は共重合によって導入することができる。官能基は、特にアクリル酸コモノマーによって提供される酸官能基が有利である。また、脱水されて無水物を生成することのできる2つの隣接アクリル酸官能基を持つモノマーを用いてもよい。官能基の割合は、MMAポリマーの0~15重量%、例えば、0~10重量%であることができる。
【0055】
一実施形態によれば、前記フルオロポリマーフィルムは、フラットフィルム押出、インフレーション成形、カレンダー加工又は圧縮成形などの溶融状態ポリマー変換方法により製造される。
【0056】
一実施形態によれば、フィルムを製造する工程の前に、フルオロポリマーA及びBは、二軸押出機又は共混練機を用いて押出すことにより、溶融状態で徹底的に混合される。
【0057】
本発明はまた、上記のフルオロポリマーフィルムを含むゲル化高分子膜、及び少なくとも1種の溶媒及び少なくとも1種のリチウム塩を含む電解質に関する。
【0058】
一実施形態によれば、膜は、酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムなどの無機充填剤をさらに含む。無機充填剤の重量含有率は、フルオロポリマーA及びBの重量に対して25%以下である。
【0059】
一実施形態によれば、膜はまた、リチウム超イオン伝導体[リチウム超イオン伝導体(LISICON)]及び誘導体、チオ-LISICON、LiSiO-LiPO型の構造、ナトリウム超イオン伝導体及び誘導体[ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)]、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO(LATP)型の構造、ガーネット構造LiLaZr12(LLZO)及び誘導体、ペロブスカイト構造Li3xLa2/3-2x□1/3-2xTiO(0<x<0.16)(LLTO)及び非晶質、結晶性又は半結晶性硫化物などの固体電解質を含む。固体電解質の重量含有率は、フルオロポリマーA及びBの重量に対して10%以下である。
【0060】
一実施形態によれば、前記溶媒は環状及び非環状のアルキルカーボネート、エーテル、グリム、ギ酸塩、エステル及びラクトンから選択される。
【0061】
エーテルの中で、ジメトキシエタン(DME)、2~100個のオキシエチレン単位のオリゴエチレングリコールのメチルエーテル、ジオキソラン、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどの直鎖状又は環状エーテル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0062】
エステルの中で、リン酸エステル及び亜硫酸エステルを挙げることができる。例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0063】
使用されるグリムは、一般式R-O-R-O-R(式中、R及びRは、1~5個の炭素の直鎖アルキルであり、Rは、3~10個の炭素の直鎖又は分岐アルキル鎖である)のものである。
【0064】
ラクトンの中で、特にガンマ-ブチロラクトンを挙げることができる。
【0065】
ニトリルの中では、例えば、アセトニトリル、ピルボニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアミノプロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ピバロニトリル、イソバレロニトリル、グルタロニトリル、メトキシグルタロニトリル、2-メチルグルタロニトリル、3-メチルグルタロニトリル、アジポニトリル、マロノニトリル及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0066】
カーボネートの中では、例えば、環状カーボネート、例えば、エチレンカーボネート(EC)(CAS:96-49-1)、プロピレンカーボネート(PC)(CAS:108-32-7)、ブチレンカーボネート(BC)(AS:4437-85-8)、ジメチルカーボネート(DMC)(CAS:616-38-6)、ジエチルカーボネート(DEC)(CAS:105-58-8)、エチルメチルカーボネート(EMC)(CAS:623-53-0)、ジフェニルカーボネート(CAS:102-09-0)、メチルフェニルカーボネート(CAS:13509-27-8)、ジプロピルカーボネート(DPC)(CAS:623-96-1)、メチルプロピルカーボネート(MPC)(CAS:1333-41―1)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ビニレンカーボネート(VC)(CAS:872-36-6)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)(CAS:114435-02-8)、トリフロオロプロピレンカーボネート(CAS:167951-80-6)又はそれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
一実施形態によれば、前記リチウム塩は、LiPF(リチウムヘキサフルオロホスフェート)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)、LiTDI(リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート)、LiPOF、LiB(C、LiFB(C、LiBF、LiNO、LiClOから選択される。
【0068】
一実施形態によれば、電解質は、溶媒及びリチウム塩に加えて、少なくとも1種の添加剤を含む。添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ピリダジン、ビニルピリダジン、キノリン、ビニルキノリン、ブタジエン、セバコニトリル、アルキルジスルフィド、フルオロトルエン、1,4-ジメトキシテトラフルオロトルエン、t-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、オキシム、脂肪族エポキシド、ハロゲン化ビフェニル、メタクリル酸、アリルエチルカーボネート、酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、プロパンスルトン、アクリロニトリル、2-ビニルピリジン、無水マレイン酸、ケイ皮酸メチル、ホスホン酸塩、ビニルを含有するシラン化合物及び2-シアノフランからなる群から選択することができる。
【0069】
また、カチオン及びアニオンのみからなる液体を形成するイオン性液体のような、溶融温度が100℃未満の塩から添加剤を選択してもよい。
【0070】
有機カチオンの例としては、特に、以下のカチオン、すなわち、アンモニウム、スルホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ホスホニウム、リチウム、グアニジニウム、ピペリジニウム、チアゾリウム、トリアゾリウム、オキサゾリウム、ピラゾリウム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
アニオンの例としては、特にイミド、特にビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(略称NTf )、ホウ酸塩、特にテトラフルオロホウ酸塩(略称BF )、リン酸塩、特にヘキサフルオロリン酸塩(略称PF )、ホスフィン酸塩及びホスホン酸塩、特にアルキル-ホスホン酸塩、アミド、特にジシアナミド(略称DCA)、アルミン酸塩、特にテトラクロロアルミン酸塩(AlCl )、ハロゲン化物(臭化物アニオン、塩化物アニオン又はヨウ化物アニオンなど)、シアン酸塩、酢酸塩(CHCOO)、特にトリフルオロ酢酸塩、スルホン酸塩、特にメタンスルホン酸塩(CHSO )、トリフルオロメタンスルホン酸塩、硫酸塩、特に硫化水素が挙げられる。
【0072】
一実施形態によると、前記電解質は、溶媒中で0.05mol/リットル~5mol/リットルの塩濃度を有する。
【0073】
一実施形態によれば、本発明による膜中の電解質/フルオロポリマー比は0.05~20であり、優先的には0.1~10である。
【0074】
一実施形態によれば、本発明による膜は、0.01~5mS/cmのイオン伝導度を有する。伝導度はインピーダンス分光法で測定される。
【0075】
一実施形態によれば、本発明による膜は、1Hz及び23℃で動的機械分析によって測定される、0.01MPaを超える、優先的に0.1MPaを超える弾性率を特徴とする機械的強度を示す。
【0076】
次に、各溶液に伝導性セルを浸し、3回のインピーダンス分光法測定を行った。これらの分光法測定は、振幅10mVで500mHz~100kHzの間で行われる。使用するセルの定数は1.12であり、イオン伝導度を次式により算出する。
【数1】
式中、Rは曲線Im(Z)=f(Re(Z))の線形回帰によって得られる抵抗を表す。Im(Z)=0の特定の場合、Rは線形回帰式の傾きで割った原点での縦座標の反対に等しい。
【0077】
一実施形態によれば、本発明による膜中の前記フィルムは、5重量%以上、好ましくは10%~1000%の範囲の質量増加を示す。
【0078】
本発明によるセパレータは、有利に非多孔質であり、ガス透過性試験(セパレータの表面積が10cmのとき、両側のガス圧の差は1気圧であり、時間は10分である)によって検出されるセパレータのガス透過性が0ml/分であることを意味する。
【0079】
一実施形態によれば、ゲル化高分子膜は、以下の工程の連続から得られる。
- 二軸押出のような溶融混合方法によるフルオロポリマーAとBの混合物の製造工程
- ブロー成形法又はフラット押出法を用いて、混合物を押し出すことによりフィルムを製造する工程
- 溶媒及びリチウム塩からなる電解質に、フィルムが飽和するまで浸漬することによって得られるフィルムの含浸工程。このようにして得られたフィルムは、リチウムイオン電池に組み込まれることを意図したゲル化膜を構成する。含浸工程の変形例が可能である。フィルムは、乾燥状態で電池内に置くことができ、第2の工程で電解質が添加され、電池内で膜への電解質の含浸がその場で行われる。
【0080】
本発明の別の主題は、全部又は一部が前記ゲル化高分子膜からなるLiイオン蓄電池用のセパレータである。一実施形態によれば、前記セパレータは、本発明による単一のゲル化高分子膜を含む。別の実施形態によると、前記セパレータは、各層が本発明によるフィルムの組成を有する多層フィルムからなる。本発明によるセパレータでは、膜は支持体によって支持されないのが有利である。
【0081】
本発明の別の主題は、負極、正極及びセパレータを含むLiイオン蓄電池であって、セパレータは上記のゲル化高分子膜を含む。
【実施例
【0082】
以下の実施例は、本発明の範囲を非限定的に説明する。
【0083】
<生成物>
<PVDF1>:25重量%のHFPを含み、100s-1及び230℃で1000Pa.sの溶融粘度を特徴とする、フッ化ビニリデン(VDF)と六フッ化ビニリデン(HFP)とのコポリマー。
【0084】
<PVDF2>18重量%のHFPを含み、100s-1及び230℃で1200Pa.sの溶融粘度を特徴とする、フッ化ビニリデン(VDF)と六フッ化ビニリデン(HFP)とのコポリマー。
【0085】
<PVDF3>:100s-1及び230℃で1000Pa.sの溶融粘度を特徴とするフッ化ビニリデンホモポリマー。
【0086】
<PVDF4(Kynarflex 2750-10)>:100s-1及び230℃で900Pa.sの溶融粘度を特徴とする、15重量%のHFPのフッ化ビニリデン(VDF)と六フッ化ビニリデン(HFP)とのコポリマー。
【0087】
<PVDF5(Kynarflex 2801)>:100s-1及び230℃で2500Pa.sの溶融粘度を特徴とする、12重量%のHFPのフッ化ビニリデン(VDF)と六フッ化ビニリデン(HFP)とのコポリマー。
【0088】
リチウム塩:アルケマが販売するリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)
【0089】
<異なるHFP含有率を有するフルオロポリマーの混合物の調製及びフィルムの製造>:
これらのフルオロポリマー混合物を、Haake(R)2型の実験室用二軸押出機で製造した。フラットダイを備えたRandcastle実験室一軸スクリュー押出機によるフラット押出法を用いて、フィルムを得た。得られた厚さは、各フィルムについて約50μmである。
【0090】
表1は、本発明に従って調製されたフィルム及び比較例についてのフィルムの組成を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
<電解質へのフィルムの含浸>:
フィルムは、エチルメチルカーボネート(EMC)と1リットル当たり1molの濃度のLiFSIとの混合物からなる電解質に含浸させた。これを行うために、直径16mmのディスクをフィルムから切り出した後、30℃で1時間電解質に浸す。電解質への浸漬前後の質量の相違で、フィルムの質量増加を測定する。
【0093】
<電解質中の膨潤後の膜のイオン伝導度の測定>:
伝導度は、膨潤したフルオロポリマーフィルムをリチウムイオンシートでできた2つの電極の間に置いて、インピーダンス分光法で測定する。表2は、EMC+1M LiFSI電解質に浸漬した後のフィルムのイオン伝導度及び質量値の増加を示す。
【0094】
【表2】
【0095】
実施例1及び2は、文献(US5296318号)に記載されている比較例3及び4のポリマーよりも高い伝導度が得られることを示す。特に、膨潤が大きいほど、伝導度が良好になる。
【0096】
また、膨潤後の実施例1及び2のフィルムは、フィルムが電解質に溶けて使用できない比較例1及び2とは逆に、良好な機械的強度を保持する。膨潤フィルムの良好な機械的強度は、電解質に溶解する比較例1及び2のフィルムとは逆に、フィルムが無傷かつ操作可能なフィルムの形態で残存するという事実によって特徴付けられる。
【0097】
最後に、実施例1と比較例2との比較は、HFPの同じ全体含有率の先行技術から使用されているフルオロポリマーと比較して、本発明による配合物を用いると、より良好な特性(機械的、イオン伝導度)を得ることが可能であることを示す。このように、HFPが18重量%の比較例2のコポリマーは電解質に溶解し、フィルムは操作不能となり、そのイオン伝導度は測定不能となる。