(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】保護コーティングおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/12 20060101AFI20241121BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C23C14/12
C23C16/50
(21)【出願番号】P 2022575847
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2021094737
(87)【国際公開番号】W WO2021249145
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202010526322.5
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010526684.4
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522241907
【氏名又は名称】江蘇菲沃泰納米科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU FAVORED NANOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.277 Xinhua Road, Xinwu District, Wuxi, Jiangsu 214111, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】宗 堅
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110158060(CN,A)
【文献】国際公開第2007/111098(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110665768(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0291830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/50 - 16/517
C23C 14/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護コーティングIIを含む保護コーティングであって、基材をプラズマに接触させることにより、前記基材の表面に形成されるプラズマ重合コーティングであり、
前記プラズマはモノマーαのプラズマを含み、前記モノマーαは式(1)に示される脂環式エポキシ構造単位を含み、
前記プラズマはモノマーβのプラズマをさらに含み、前記モノマーβは構造単位aを含み;前記構造単位aは式(11)に示される構造を有する、ことを特徴とする、保護コーティング。
(ここで、Aは3~20員の脂環式構造である。)
(ここで、R
10、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項2】
前記Aは5員の脂環式構造又は6員の脂環式構造であることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項3】
前記モノマーαは、炭素-炭素二重結合構造単位、炭素-炭素三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項4】
前記モノマーαは式(2)に示される構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の保護コーティング。
(ここで、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;
R
4は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【請求項5】
前記R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択され;前記R
4は結合手、メチレン基又はエチレン基であることを特徴とする、請求項4に記載の保護コーティング。
【請求項6】
前記モノマーαは式(3)又は式(4)に示される構造を有することを特徴とする、請求項5に記載の保護コーティング。
【請求項7】
前記モノマーαは式(5)に示される構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の保護コーティング。
(ここで、R
5は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
R
6は
である。)
【請求項8】
前記モノマーαは式(6)又は式(7)に示される構造を有することを特徴とする、請求項7に記載の保護コーティング。
【請求項9】
前記モノマーαは式(8)に示される構造を有することを特徴とする、請求項3に記載の保護コーティング。
(ここで、R
7及びR
9はそれぞれ独立して、結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基から選択され;
R
8はC
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
X及びYはそれぞれ独立して、結合手、酸素原子、カルボニル基又はエステル基から選択される。)
【請求項10】
前記モノマーαは式(9)又は式(10)に示される構造を有することを特徴とする、請求項9に記載の保護コーティング。
【請求項11】
前記モノマーβは構造単位bをさらに含み、前記構造単位bは、二重結合構造単位、三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項12】
前記構造単位bは式(12)に示される構造を有することを特徴とする、請求項11に記載の保護コーティング。
(ここで、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項13】
前記モノマーβは式(13)に示される構造を有することを特徴とする、請求項12に記載の保護コーティング。
(ここで、R
16はC
2~C
10のアルキレン基又はC
2~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、nは1~10の整数である。)
【請求項14】
前記R
10、R
11、R
12、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の保護コーティング。
【請求項15】
さらにコーティングIを含む保護コーティングであって、
前記コーティングIは、前記保護コーティングIIを、モノマーγを含むプラズマに接触させることによりコーティングIIに形成されるプラズマ重合コーティングであり;
前記モノマーγは、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、ハロゲン化アルケン、アルキン、ハロゲン化アルキン、アクリレート又はハロゲン化アクリレートの一つまたは複数から選択されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の保護コーティング。
【請求項16】
前記モノマーγは式(14)に示される構造を有することを特徴とする、請求項15に記載の保護コーティング。
(ここで、R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;
R
20はC
1~C
20の炭化水素基又はC
1~C
20のハロゲン原子置換炭化水素基である。)
【請求項17】
前記R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され;前記R
20はC
4~C
20の炭化水素基又はC
4~C
20のハロゲン原子置換炭化水素基であることを特徴とする、請求項16に記載の保護コーティング。
【請求項18】
前記モノマーγは式(15)に示される構造を有することを特徴とする、請求項16に記載の保護コーティング。
(ここで、R21は結合手、C1~C10のアルキレン基又はC1~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
Bは芳香環構造又は3~20員の脂環式構造である。)
【請求項19】
前記R
21は結合手、メチレン基又はエチレン基であり、Bはシクロヘキシル基又はシクロペンチル基であることを特徴とする、請求項18に記載の保護コーティング。
【請求項20】
前記コーティングは、前記基材とモノマーδを含むプラズマとを接触させることにより形成されるプラズマ重合コーティングであるコーティングIIIをさらに含み;
前記保護コーティングIIは、前記コーティングIIIを、モノマーαを含むプラズマに接触させることによりコーティングIIIに形成されるプラズマ重合コーティングであり;
前記モノマーδは構造単位c及び構造単位dを含み、前記構造単位c及び構造単位dはそれぞれ炭素-炭素二重結合構造及びエステル基構造を有することを特徴とする、請求項15に記載の保護コーティング。
【請求項21】
前記モノマーδは式(18)に示される構造を有することを特徴とする、請求項20に記載の保護コーティング。
(ここで、R
28はC
2~C
10のアルキレン基又はC
2~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、nは0~10の整数であり、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【請求項22】
基材を提供すること;及び
プラズマ成長コーティングとして基材上に前記保護コーティングを形成すること;
を含むことを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載の保護コーティングの製造方法。
【請求項23】
前記プラズマはパルスプラズマであり、前記パルスプラズマは、パルス電圧放電を印加することにより生成され、パルス電力は20~500W、パルス周波数は20Hz~80KHz、パルスデューティ比は1‰~80%、プラズマ放電時間は100s~20000sである請求項22に記載の保護コーティングの製造方法。
【請求項24】
デバイスの表面の少なくとも一部は、請求項1~21のいずれか1項に記載の保護コーティングを有することを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
この出願は、2021年5月20日に提出された国際出願番号PCT/CN2021/094737の国内段階の出願であり、本出願は2020年6月9日中国特許庁に提出された出願番号202010526322.5、発明の名称「保護コーティングおよびその製造方法」である、及び2020年6月9日に中国特許庁に提出された出願番号202010526684.4、発明の名称「保護コーティングおよびその製造方法」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容を援用により本出願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、プラズマ化学分野に属し、具体的には、プラズマ重合保護コーティングおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ポリマーコーティングは、様々な材料の表面を効果的に保護することができ、有機ポリマーコーティングの方法の中で、基材の表面にポリマー保護コーティングを作製するための気相成長法は主流の方法であり、この方法は経済的で適用可能であり、操作しやすいなどの特徴があり、特にプラズマ化学気相成長は、プラズマを利用して反応性モノマーガスを活性化し、基材の表面に堆積させる。この方法は、様々な基材に適しており、成長されたポリマー保護コーティングは均一になり、コーティング作製温度が低く、コーティング厚さが薄く、応力が小さく、基材の表面へのダメージがほとんどなく、基材性能への影響がほとんどない。
【0004】
プラズマ重合コーティングは、従来から、プラズマ重合モノマーの選択はその研究の重要な課題の1つであり、例えば、モノマーとしてオルガノシロキサンを使用してプラズマ重合コーティングを作製すること、モノマーとして単官能不飽和フロロカーボン系樹脂と多官能不飽和炭化水素誘導体の混合物を使用してプラズマコーティングを行い、コーティングが緻密な網目状構造を形成して金属を保護することなどを含む。
【発明の概要】
【0005】
本発明の具体的な実施形態は、新規なプラズマ重合モノマーにより形成される保護コーティングおよびその製造方法を提供するためのものであり、具体的なスキームは次の通りである。
【0006】
基材をプラズマに接触させることにより前記基材の表面に形成されるプラズマ重合コーティングであり、前記プラズマはモノマーαのプラズマを含み、前記モノマーαは式(1)に示される脂環式エポキシ構造単位を含む、保護コーティングII。
(ここで、Aは3~20員の脂環式構造である。)
【0007】
任意選択的に、前記Aは5員の脂環式構造又は6員の脂環式構造である。
【0008】
任意選択的に、前記モノマーαは、炭素-炭素二重結合構造単位、炭素-炭素三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つをさらに含む。
【0009】
任意選択的に、前記モノマーαは式(2)に示される構造を有する。
(ここで、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;
R
4は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基である。)
【0010】
任意選択的に、前記R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され;前記R4は結合手、メチレン基又はエチレン基である。
【0011】
任意選択的に、前記モノマーαは式(3)又は式(4)に示される構造を有する。
【0012】
任意選択的に、前記モノマーαは式(5)に示される構造を有する。
(ここで、R
5は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
R
6は
である。)
【0013】
任意選択的に、前記モノマーαは式(6)又は式(7)に示される構造を有する。
【0014】
任意選択的に、前記モノマーαは式(8)に示される構造を有する。
(ここで、R
7及びR
9はそれぞれ独立して、結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基から選択され;
R
8はC
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
X及びYはそれぞれ独立して、結合手、酸素原子、カルボニル基又はエステル基から選択される。)
【0015】
任意選択的に、前記モノマーαは式(9)又は式(10)に示される構造を有する。
【0016】
任意選択的に、前記プラズマはモノマーβのプラズマをさらに含み、前記モノマーβは構造単位aを含み;
前記構造単位aは式(11)に示される構造を有する。
(ここで、R
10、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0017】
任意選択的に、前記モノマーβは構造単位bをさらに含み、前記構造単位bは、二重結合構造単位、三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つを含む。
【0018】
任意選択的に、前記構造単位bは式(12)に示される構造を有する。
(ここで、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0019】
任意選択的に、前記モノマーβは式(13)に示される構造を有する。
(ここで、R
16はC
2~C
10のアルキレン基又はC
2~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、nは1~10の整数である。)
【0020】
任意選択的に、前記R10、R11、R12、R13、R14及びR15はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択される。
【0021】
任意選択的に、前記基材は、金属、プラスチック、織物、ガラス、電気部材、光学機器又は電気部品である。
【0022】
上記のいずれか1項に記載の保護コーティングIIの製造方法であって、
基材を提供すること;及び
基材を前記プラズマに接触させることにより、前記基材の表面にプラズマ重合コーティングを形成すること、を含む、保護コーティングIIの製造方法。
【0023】
任意選択的に、前記プラズマは、パルス方式で励起されるプラズマである。
【0024】
任意選択的に、前記パルス方式のパルス周波数は20Hz~80KHz、デューティ比は1‰~80%、平均パルス電力密度は0.001W/m3~500W/m3である。
【0025】
表面の少なくとも一部は、上記のいずれか1項に記載の保護コーティングIIを有する、デバイス。
【0026】
基材上に成長されるコーティングI及びコーティングIIを含む保護コーティングであって、
前記コーティングIIは上記のいずれか1項に記載の保護コーティングIIであり;
前記コーティングIは、前記コーティングIIを、モノマーγを含むプラズマに接触させることによりコーティングII上に形成されるプラズマ重合コーティングであり;
前記モノマーγは、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、ハロゲン化アルケン、アルキン、ハロゲン化アルキン、アクリレート又はハロゲン化アクリレートの一つまたは複数から選択される、保護コーティング。
【0027】
任意選択的に、前記モノマーγは式(14)に示される構造を有する。
(ここで、R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;
R
20はC
1~C
20の炭化水素基又はC
1~C
20のハロゲン原子置換炭化水素基である。)
【0028】
任意選択的に、前記R17、R18及びR19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され;前記R20はC4~C20の炭化水素基又はC4~C20のハロゲン原子置換炭化水素基である。
【0029】
任意選択的に、前記モノマーγは式(15)に示される構造を有する。
(ここで、R
21は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;
Bは芳香環構造又は3~20員の脂環式構造である。)
【0030】
任意選択的に、前記R21は結合手、メチレン基又はエチレン基であり、Bはシクロヘキシル基又はシクロペンチル基である。
【0031】
任意選択的に、前記コーティングは、前記基材とモノマーδを含むプラズマとを接触させることにより形成されるプラズマ重合コーティングであるコーティングIIIをさらに含み;
前記コーティングIIは、前記コーティングIIIを、モノマーαを含むプラズマに接触させることによりコーティングIII上に形成されるプラズマ重合コーティングであり;
前記モノマーδは、構造単位c及び構造単位dを含み、前記構造単位c及び構造単位dはそれぞれ炭素-炭素二重結合構造及びエステル基構造を有する。
【0032】
任意選択的に、前記構造単位cは式(16)に示される構造を有する。
(ここで、R
22、R
23及びR
24はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0033】
任意選択的に、前記構造単位dは式(17)に示される構造を有する。
(ここで、R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0034】
任意選択的に、前記モノマーδは式(18)に示される構造を有し、
(ここで、R
28はC
2~C
10のアルキレン基又はC
2~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、nは0~10の整数であり、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。)
【0035】
任意選択的に、前記R22、R23、R24、R25、R26及びR27はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択される。
【0036】
上記のいずれか1項に記載の保護コーティングの製造方法であって、
基材を提供すること;及び
プラズマ成長コーティングとして基材上に前記保護コーティングを形成すること、を含む、保護コーティングの製造方法。
【0037】
任意選択的に、前記プラズマはパルスプラズマである。
【0038】
任意選択的に、前記パルスプラズマは、パルス電圧放電を印加することにより生成され、パルス電力は20~500W、パルス周波数は20Hz~80KHz、パルスデューティ比は1‰~80%、プラズマ放電時間は100s~20000sである。
【0039】
表面の少なくとも一部は、上記のいずれか1項に記載の保護コーティングを有する、デバイスであって、前記デバイス。
【0040】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、脂環式エポキシ構造単位を有するモノマーでプラズマ重合コーティングを行い、緻密な剛性分子構造を形成し、コーティングの保護性能を向上させることができる。さらに、前記脂環式エポキシ構造単位のモノマー結合は、多官能基部位、特にアクリレート構造を含む多官能基モノマーを有し、プラズマ放電下で複数の活性部位を形成し、架橋して緻密な網目状構造を形成し、基材、特に金属との結合力が高く、金属の耐食性を向上させる。
【0041】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、脂環式エポキシ構造単位を有するモノマーでプラズマ重合コーティングを行い緻密な剛性分子構造の防食層を形成するとともに、脂環式エポキシ構造単位を有するモノマーのプラズマ重合コーティング上にプラズマ重合により疎水コーティングを形成し、基材に対する保護性能に優れたコーティングを構成し;さらに、前記疎水コーティングのプラズマモノマーが脂環式エポキシ構造単位を有するモノマーを採用する場合、前記疎水層は防食層に密着し、より優れた保護性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、基材をプラズマに接触させることにより前記基材の表面に形成されるプラズマ重合コーティングであり、前記プラズマはモノマーαのプラズマを含み、前記モノマーαは式(1)に示される脂環式エポキシ構造単位を含む。
(ここで、Aは3~20員の脂環式構造である。)
【0043】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、いくつかの具体的な実施形態では、前記脂環式環は1つ又は複数の置換基を有し、前記置換基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル置換基であってもよく、フッ素又は塩素などのハロゲン原子置換基であってもよく、フッ素置換メチル基、塩素置換メチル基、フッ素置換エチル基、塩素置換エチル基、フッ素置換プロピル基、塩素置換プロピル基、フッ素置換ブチル基又は塩素置換ブチル基などのハロゲン原子置換アルキル置換基であってもよい。
【0044】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、いくつかの具体的な実施形態では、前記Aは5員の脂環式構造又は6員の脂環式構造であり、このような脂環式環はその剛性構造がより安定している。
【0045】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIでは、前記モノマーαは、炭素-炭素二重結合構造単位、炭素-炭素三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つをさらに含み、複数の活性部位を形成して架橋して緻密な網目状構造を形成することを助長し、具体例として、前記モノマーαは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルシクロペンチルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジイソプレンジエポキシド、ビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート、3,4エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボン酸-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルメチルエステル又はジシクロペンタジエンジエポキシドなどの一つまたは複数であってもよく、いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーαは式(2)に示される構造を有する。
【0046】
ここで、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、R
4は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;特に、前記R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
4のアルキレン基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、前記R
4は結合手、C
1~C
4のアルキレン基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキレン基であり;特に、前記R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、前記R
4は結合手、メチレン基又はエチレン基である。具体例として、前記モノマーαは、式(3)で表される構造の3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート又は式(4)で表される構造の3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートであってもよい。
【0047】
いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーαは式(5)に示される構造を有する。
【0048】
ここで、R
5は結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;R
6は
であり;特に、R
5は結合手、C
1~C
4のアルキレン基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキレン基であり;具体例として、前記モノマーαは、式(6)で表される構造の1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン又は式(7)で表される構造のビニルシクロヘキセンジエポキシドであってもよい。
【0049】
いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーαは式(8)に示される構造を有する。
【0050】
ここで、R
7及びR
9はそれぞれ独立して、結合手、C
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基から選択され、特にR
7及びR
9はそれぞれ独立して、結合手、C
1~C
4のアルキレン基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキレン基から選択され;R
8はC
1~C
10のアルキレン基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、特にR
8はC
1~C
4のアルキレン基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキレン基であり;X及びYはそれぞれ独立して、結合手、酸素原子、カルボニル基又はエステル基から選択され;具体例として、前記モノマーαは、式(9)で表される構造の3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート又は式(10)で表される構造のビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペートであってもよい。
【0051】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、いくつかの具体的な実施形態では、前記プラズマはモノマーαのプラズマのみを含む。他の具体的な実施形態では、プラズマコーティングと基材との間に高い結合力を持つ緻密な保護層の形成をさらに容易にするために、前記プラズマは、モノマーαのプラズマとモノマーβのプラズマからなり、前記モノマーβは構造単位aを含み;前記構造単位aは式(11)に示される構造を有する。
【0052】
ここで、R
10、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択される。具体例として、前記モノマーβは、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、1,4-ブタンジオールメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート又はネオペンチルグリコールジメタクリレートなどの一つまたは複数であってもよい。特に、前記R
10、R
11及びR
12はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
4のアルキル基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、特に、前記R
10、R
11及びR
12はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、特に、前記モノマーβは構造単位bを含み、前記構造単位bは炭素-炭素二重結合構造単位、炭素-炭素三重結合構造単位又はエポキシ構造単位の少なくとも1つであり、特に式(12)に示される構造を有する二重結合構造単位である。
【0053】
ここで、R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;特に、前記R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
4のアルキル基又はC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキル基から選択され;特に、前記R
13、R
14及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基から選択される。特に、前記モノマーβは式(13)に示される構造を有する。
【0054】
ここで、R16はC2~C10のアルキレン基又はC2~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、nは1~10の整数であり;具体的には、例えば、nは1であり、R11はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基などのC2~C10のアルキレン基であり;又はnは1であり、R11はハロゲン原子置換エチレン基、ハロゲン原子置換プロピレン基、ハロゲン原子置換ブチレン基、ハロゲン原子置換ペンチレン基などのC2~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;又はnは2~10の整数であり、R11はエチレン基又はプロピレン基などである。本発明の具体的な実施形態では、エポキシ脂環式構造を有するモノマーαがアクリレート構造を有するモノマーβと組み合わせ、特にモノマーβが式(13)に示されるジアクリレート構造を採用する場合、プラズマコーティング後に基材と結合力の高い緻密な保護層を形成し、基材の耐食性をさらに向上させることに役立つ。
【0055】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIでは、前記モノマーβ及びモノマーαの具体的な添加量は、実際の状況に応じて調整することができ、通常、モノマーβとモノマーαの質量比は1:10~10:1であり、具体的には、例えば、1:1、1:2、1:3、2:3、1:4、1:5、2:1、3:1、3:2、4:1又は5:1などである。
【0056】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIは、いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は金属、具体的には、例えば、鉄、マグネシウム、アルミニウム、銅又はそれらの合金であり、他の具体的な実施形態では、前記基材は様々なプラスチック、織物、ガラス、電気部材又は光学機器などである。具体的には、電気部材は、プリント回路基板(PCB)、電子製品又は電子組立半製品などであってもよい。前記基材が電子製品である場合、携帯電話、タブレット、キーボード、電子書籍リーダー、ウェアラブルデバイス、ディスプレイなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記基材は、電気部材の任意の適切な電気部品であってもよく、具体的には、前記電気部品は、抵抗器、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、増幅器、リレー、変圧器、電池、ヒューズ、集積回路、スイッチ、LED、LEDディスプレイ、圧電素子、光電子部品又はアンテナ又は発振器などであってもよい。
【0057】
本発明の具体的な実施形態は、基材を提供すること;及び基材を前記プラズマと接触させることにより前記基材の表面にプラズマ重合コーティングを形成することを含む、上記の保護コーティングIIの製造方法を提供する。前記プラズマ及び基材についての説明は上述の通りである。
【0058】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIの製造方法では、プラズマコーティングと基材との結合力をさらに高めるために、いくつかの具体的な実施形態では、前記基材は、連続プラズマで前処理された基材であり、具体的な条件は、例えば、不活性ガス雰囲気下で、プラズマ放電電力は20~500W、放電方式は連続式、連続放電時間1~15minであり、他の具体的な実施形態では、前記基材は、熱、酸素又は高エネルギー放射などの方式で前処理された基材である。
【0059】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIの製造方法では、いくつかの具体的な実施形態では、前記プラズマは連続波で励起されるプラズマであり、他の具体的な実施形態では、前記プラズマはパルス方式で励起されるプラズマである。そのプラズマコーティングの具体的な条件は、従来技術における対応する条件を採用することができ、例として、次の通りである。基材をプラズマ室の反応チャンバ内に置き、20~250ミリトールまで真空引きし、He、Ar、O2又はいくつかの混合ガスなどの不活性ガスを導入し、反応に関与するモノマーを気体の形でチャンバ内に導入し、モノマー流量は10~2000μl/minで、電源を入れ、プラズマを発生させることにより、基材の表面に化学気相成長が発生する。チャンバ内の温度は20℃~80℃に制御され、モノマー気化温度は50℃~120℃で、真空条件下で気化が発生し、連続波の方式でプラズマを励起し、プラズマ放電電力は10~180W、連続放電時間10~600minであり、又はパルス方式でプラズマを励起し、前記パルス方式のパルス周波数は20Hz~80KHz、デューティ比は1‰~80%、平均パルス電力密度は0.001W/m3~500W/m3である。
【0060】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングIIの製造方法では、前記プラズマ放電方式は、従来の様々な放電方式であってもよく、具体的には、例えば、無電極放電(例えば無線周波数誘導結合放電、マイクロ波放電)、単電極放電(例えばコロナ放電、単極放電によるプラズマジェット)、二電極放電(例えば誘電体バリア放電、露出電極無線周波数グロー放電)及び多電極放電(例えば第3の電極として浮遊電極を採用する放電)である。
【0061】
本発明の具体的な実施形態は、デバイスをさらに提供し、前記デバイスの表面の少なくとも一部は上記のいずれかに記載の保護コーティングIIを有し、いくつかの具体的な実施形態では、前記デバイスの表面の一部又は全部には、上記の保護コーティングIIのみがコーティングされ、いくつかの具体的な実施形態では、前記デバイスの表面の一部又は全部には、上記の保護コーティングIIに加えて、他のコーティングがコーティングされている。
【0062】
本発明の具体的な実施形態は、保護コーティングをさらに提供し、前記保護コーティングは、基材上に堆積されるコーティングI及びコーティングIIを含み、
前記コーティングIIは、上記の保護コーティングIIであり;
前記コーティングIは、前記コーティングIIを、モノマーγを含むプラズマと接触させることによりコーティングII上に形成されるプラズマ重合コーティングであり;
前記モノマーγは、アルカン、ハロゲン化アルカン、アルケン、ハロゲン化アルケン、アルキン、ハロゲン化アルキン、アクリレート又はハロゲン化アクリレートの一つまたは複数から選択される。
【0063】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、コーティングIは、コーティングIIを、下記式(14)に示されるモノマーγを含むプラズマと接触させることによりコーティングIIに形成されるプラズマ重合コーティングである。
【0064】
ここで、R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して、水素原子、C
1~C
10のアルキル基又はC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、R
20はC
1~C
20の炭化水素基又はC
1~C
20のハロゲン原子置換炭化水素基であり、特に疎水性をさらに改善するために、R
20はC
4~C
20の炭化水素基又はC
4~C
20のハロゲン原子置換炭化水素基であり;ハロゲン元素の環境への影響を考慮して、いくつかの具体的な実施形態では、R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して水素原子又はC
1~C
10のアルキル基から選択され、特に、前記R
17、R
18及びR
19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、前記R
20はC
1~C
20の炭化水素基、特に前記R
20はC
4~C
20の炭化水素基である。本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はオクタデシル基などの飽和アルカン基であり、本発明の他の具体的な実施形態では、前記炭化水素基は、不飽和アルケン基、アルキン基又は芳香族炭化水素基。具体例として、前記モノマーγは、シクロヘキシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、アリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、9-アントラセンメチルメタクリレートの一つまたは複数であってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーγは式(15)に示される構造を有する。
【0065】
ここで、R21は結合手、C1~C10のアルキレン基又はC1~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり、Bは芳香環構造又は3~20員の脂環式構造であり、特に、Bは5員又は6員の脂環式構造であり、特にBはシクロヘキシル基又はシクロペンチル基であり;ハロゲン元素の環境への影響を考慮して、いくつかの具体的な実施形態では、R21は結合手又はC1~C10のアルキレン基であり、特に、R21は結合手、メチレン基又はエチレン基である。前記モノマーγが式(15)に示される構造を有し、Bが脂環式構造である場合、コーティングI及びコーティングIIはともに脂環式構造を有し、より良い貼り合わせ作用を有するため、コーティングIとコーティングIIの組み合わせは、より良い保護性能を有する。
【0066】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、いくつかの具体的な実施形態では、前記コーティングはコーティングIIIをさらに含み、前記コーティングIIIは、前記基材とモノマーδのプラズマとの接触により形成されるプラズマ重合コーティングであり;前記コーティングIIは、前記コーティングIIIを、モノマーαを含むプラズマと接触させることによりコーティングIIIに形成されるプラズマ重合コーティングであり;前記モノマーδは構造単位c及び構造単位dを含み、前記構造単位c及び構造単位dはそれぞれ炭素-炭素二重結合構造及びエステル基構造を有し、このような二つの不飽和エステル構造を有するモノマーδのプラズマを用いて化学気相成長して形成されるコーティングIIIは、基材とコーティングIIとの緊密な結合を高めるのに有益であり、さらに保護コーティングの緻密性と結合力を高める。具体例として、前記モノマーδは、1,4-ブタンジオールメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、無水メタクリル酸、2-ベンジリデンマロン酸ジプロプ-2-エニル、ジアリルマロン酸ジエチル、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート又は1,6-ヘキサンジオールジアクリレートの一つまたは複数であってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、前記構造単位cは式(16)に示される構造を有する。
【0067】
ここで、いくつかの具体的な実施形態では、R
22、R
23及びR
24はそれぞれ独立してC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、特にC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキル基であり;ハロゲン元素の環境への影響を考慮して、いくつかの具体的な実施形態では、R
22、R
23及びR
24はそれぞれ独立して水素原子又はC
1~C
10のアルキル基から選択され、特に水素原子又はC
1~C
4のアルキル基であり、特に水素原子又はメチル基であり;いくつかの具体的な実施形態では、前記構造単位dは式(17)に示される構造の炭素-炭素二重結合構造単位を有する。
【0068】
ここで、いくつかの具体的な実施形態では、R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立してC
1~C
10のハロゲン原子置換アルキル基から選択され、特にC
1~C
4のハロゲン原子置換アルキル基であり;ハロゲン元素の環境への影響を考慮して、いくつかの具体的な実施形態では、R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立して水素原子又はC
1~C
10のアルキル基から選択され、特に水素原子又はC
1~C
4のアルキル基であり;特に、前記R
25、R
26及びR
27はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基から選択され、特に水素原子又はメチル基である。いくつかの具体的な実施形態では、前記モノマーδは式(18)に示される構造を有する。
【0069】
ここで、いくつかの実施形態では、R28はC2~C10のハロゲン原子置換アルキレン基、nは0~10の整数であり、具体的には、例えば、nは1、R28はハロゲン原子置換エチレン基、ハロゲン原子置換プロピレン基、ハロゲン原子置換ブチレン基、ハロゲン原子置換ペンチレン基などのC2~C10のハロゲン原子置換アルキレン基であり;ハロゲン元素の環境への影響を考慮して、いくつかの実施形態では、R28はC2~C10のアルキレン基であり、nは1~10の整数であり、具体的には、例えば、nは1、R28はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基などのC2~C10のアルキレン基であり、又はnは2~10の整数、R22はエチレン基又はプロピレン基などである。前記コーティングIII、特にコーティングIIIのモノマーδが式(18)に示されるジアクリレート構造であることにより、コーティングIIは基材とより密接に結合し、さらにかかる保護コーティングの緻密性と結合力を高める。
【0070】
プラズマ防食コーティングを用いるのは、より一般的に使用される方法が、パーフルオロモノマーを用いて基材にプラズマコーティングを行うことであるが、このようなコーティングは、モノマーがパーフルオロ基による基材への結合力が悪いという問題があり、及びフルオロポリマーがパーフロロオクチルカルボン酸塩やパーフロロオクチルスルホン酸塩のような有毒な物質を環境に放出し、環境汚染を引き起こしやすい。これに対応して、米国環境保護庁(EPA)は、長い炭素鎖を含むフルオロポリマーの使用を禁止する、より厳しい規制を発行した。本発明の具体的な実施形態の保護コーティングは、一方で、基材との優れた結合力を有するとともに、ハロゲンFを含まない場合でも、F含有モノマーによって形成されるプラズマコーティングよりも優れた保護性能を有する。
【0071】
本発明の具体的な実施形態は、基材を提供すること;及びプラズマ成長コーティングとして基材上に前記保護コーティングを形成することを含む、上記保護コーティングの製造方法をさらに提供する。前記プラズマ及び基材についての説明は上述の通りである。
【0072】
本発明の具体的な実施形態の保護コーティングの製造方法では、いくつかの具体的な実施形態では、そのプラズマコーティングの具体的な条件は、従来技術における対応する条件を採用することができ、例として、次の通りである。基材をプラズマ室の反応チャンバ内に置き、1~250ミリトールまで真空引きし、He、Ar、O2又はいくつかの混合ガスなどの不活性ガスを導入し、反応に関与するモノマーを気体の形でチャンバ内に導入し、モノマー流量は40~2000μl/minで、電源を入れ、プラズマを発生させることにより、基材の表面に化学気相成長が発生し、それぞれ前記コーティングIII、コーティングII及びコーティングIを形成する。チャンバ内の温度は20℃~80℃に制御され、モノマー気化温度は70℃~150℃で、真空条件下で気化が発生し、連続波の方式でプラズマを励起し、プラズマ放電電力は10~180W、連続放電時間100~7200sであり、又はパルス方式でプラズマを励起し、前記パルス方式は、パルス電力が20~500W、パルス周波数が20Hz~80KHz、パルスデューティ比が1‰~80%、プラズマ放電時間が100s~20000sである。
【0073】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0074】
試験方法の説明
【0075】
5V塩水試験:試験過程は次の通りである:1、電源は回路基板に5V電圧を供給した;2、回路基板を3.6%の塩水に浸した;3、コンピュータで電流を検出した;4、故障時間(電流>0.6mA)を記録した。
【0076】
耐塩水噴霧試験:GB/T2423.18-2000電工電子製品の環境試験方法に従って試験した。
【0077】
高温高湿試験:GB/T2423.34-2012標準に従って試験した。
実施例1-1
【0078】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を80ミリトールにし、チャンバ温度は35℃とした。
【0079】
(2)アルゴンガスを10sccmの流量で流し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は100W、放電は80s連続した。
【0080】
(3)トリエチレングリコールジメタクリレートと3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(質量比1:1)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は600μl/min、チャンバ内部の反応温度は60℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は100μs、パルス周波数は100Hz、放電電力は10W、放電時間は120minとした。
【0081】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
実施例1-2
【0082】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を20ミリトールにし、チャンバ温度は45℃とした。
【0083】
(2)ヘリウムガスを300sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は300Wであり、放電は60s連続した。
【0084】
(3)テトラエチレングリコールジメタクリレートと3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は200μl/min、チャンバ内部の反応温度は65℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は200μs、パルス周波数は100Hz、放電電力は35W、放電時間は40minとした。
【0085】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
実施例1-3
【0086】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を250ミリトールにし、チャンバ温度は45℃とした。
【0087】
(2)ヘリウムガスを120sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は300Wであり、放電は90s連続した。
【0088】
(3)1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(質量比3:2)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は200μl/minであり、チャンバ内部の反応温度は70℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は200μs、パルス周波数は50Hz、放電電力は100W、放電時間は35minとした。
【0089】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
実施例1-4
【0090】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を100ミリトールにし、チャンバ温度は80℃とした。
【0091】
(2)酸素ガスを300sccmの流量で導入し、マイクロ波プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は500Wであり、放電は90s連続した。
【0092】
(3)ヒドロキシプロピルメタクリレートとビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート(質量比1:2)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は2000μl/min、チャンバ内部の反応温度は45℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は300μs、パルス周波数は50Hz、放電電力は180W、放電時間は15minとした。
【0093】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
実施例1-5
【0094】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を100ミリトールにし、チャンバ温度は80℃とした。
【0095】
(2)ヘリウムガスを180sccmの流量で導入し、マイクロ波プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は120Wであり、放電は600s連続した。
【0096】
(3)1,3-ブタンジオールジメタクリレートとビニルシクロヘキセンジエポキシド(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は800μl/min、チャンバ内部の反応温度は45℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は300μs、パルス周波数は50Hz、放電電力は300W、放電時間は20minとした。
【0097】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
実施例1-6
【0098】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を80ミリトールにし、チャンバ温度は50℃とした。
【0099】
(2)ヘリウムガスを160sccmの流量で導入し、マイクロ波プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180Wであり、放電は300s連続した。
【0100】
(3)1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンモノマーを導入し、混合モノマー流量は500μl/min、チャンバ内部の反応温度は85℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は500μs、パルス周波数は20Hz、放電電力は100W、放電時間は20minとした。
【0101】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
比較例1-1
【0102】
(1)基材Feシート(30*20*2mm)、Mgシート(30*20*2mm)を500Lプラズマ真空反応チャンバ内に置き、反応チャンバを連続的に真空引きして真空度を80ミリトールにし、チャンバ温度は60℃とした。
【0103】
(2)ヘリウムガスを140sccmの流量で導入し、マイクロ波プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180Wであり、放電は200s連続した。
【0104】
(3)エチレングリコールジメタクリレートモノマーを導入し、混合モノマー流量は700μl/min、チャンバ内部の反応温度は55℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式をパルスに変更し、パルス幅は300μs、パルス周波数は50Hz、放電電力は80W、放電時間は40minとした。
【0105】
(4)コーティング作製終了後、空気を導入して反応チャンバを常圧に戻し、チャンバを開放し、Feシート、Mgシートを取り出し、耐塩水噴霧試験と高温高湿試験を行い、試験結果をそれぞれ下記表1と表2に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
回路基板、Mg、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを20ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを80sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は100Wであり、放電は600s連続した。
【0109】
次に、1,4-ブタンジオールジメタクリレートを導入し、気化温度100℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は150μL/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は1000Hz、放電電力は50W、放電時間は3600sとした。
【0110】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は40μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は1000Hz、放電電力は10w、放電時間は7200sとした。
【0111】
次に、オクタデシルアクリレートの蒸気を導入し、流量は100μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は1000Hz、放電電力は180w、放電時間は7200sとし、コーティングが完了した。
【0112】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板、Mg、Feシートのサンプルを取り出し、塩水試験と塩霧試験を行い、その試験結果を表3に示す。
実施例2-2
【0113】
回路基板、Mg、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを8ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを80sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は100Wであり、放電は600s連続した。
【0114】
次に、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートを導入し、気化温度100℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は150μL/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は500Hz、放電電力は50W、放電時間は3600sとした。
【0115】
次に、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートとビニルシクロヘキセンジエポキシド(質量比1:2)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は40μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は500Hz、放電電力は10W、放電時間は7200sとした。
【0116】
次に、t-ブチルメタクリレートの蒸気を導入し、流量は100μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は500Hz、放電電力25W、放電時間7200sとし、コーティングが完了した。
【0117】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板、Mg、Feシートのサンプルを取り出し、塩水試験と塩霧試験を行い、その試験結果を表3に示す。
実施例2-3
【0118】
回路基板、Mg、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを100ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを120sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180Wであり、放電は300s連続した。
【0119】
次に、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートを導入し、気化温度110℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は220μL/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は5000Hz、放電電力は25W、放電時間は2200sとした。
【0120】
次に、トリエチレングリコールジメタクリレートと3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(質量比3:2)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は40μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は5000Hz、放電電力は10w、放電時間は7200sとした。
【0121】
次に、イソボルニルメタクリレートの蒸気を導入し、流量は100μl/min、モノマー気化温度は120℃、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は45%、パルス周波数は5000Hz、放電電力は25w、放電時間は7200sとし、コーティングが完了した。
【0122】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板、Mg、Feシートのサンプルを取り出し、塩水試験と塩霧試験を行い、その試験結果を表3に示す。
実施例2-4
【0123】
回路基板、Mgシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを80ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを120sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180Wであり、放電は300s連続した。
【0124】
次に、1,4-ブタンジオールジメタクリレートを導入し、気化温度110℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は120μL/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電電力は20W、放電時間は3600sとした。
【0125】
次に、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとビス((3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル)アジペート(質量比2:1)の混合モノマーを導入し、混合モノマー流量は150μl/min、モノマー気化温度は120℃であり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電電力は10w、放電時間は3600sとした。
【0126】
次に、ベンジルメタクリレートの蒸気を導入し、流量は150μl/min、モノマー気化温度は150℃、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電電力は150w、放電時間は7200sとし、コーティングが完了した。
【0127】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板、Mg、Feシートのサンプルを取り出し、塩水試験と塩霧試験を行い、その試験結果を表3に示す。
比較例2-1
【0128】
回路基板、Mg、Feシートをプラズマチャンバ内に置き、チャンバを80ミリトールまで真空引きし、ヘリウムガスを120sccmの流量で導入し、無線周波数プラズマ放電をオンにして基材を前処理し、この前処理段階では、放電電力は180Wであり、300s放電した。
【0129】
次に、1,4-ブタンジオールジアクリレートを導入し、気化温度110℃で気化した後にチャンバ内に導入してプラズマ化学気相成長を行い、モノマー流量は120μL/minであり、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電電力は20Wで、放電時間は3600sとした。
【0130】
次に、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを導入し、モノマー流量は120μl/min、モノマー気化温度は110℃、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電時間は3600s、放電電力は180wとした。
【0131】
次に、2-(パーフルオロドデシル)エチルアクリレートの蒸気を導入し、流量は160μl/min、モノマー気化温度は110℃、チャンバ内のプラズマは無線周波数放電方式によって生成され、出力方式はパルス、パルスデューティ比は25%、パルス周波数は20kHz、放電時間は7200s、放電電力は180wとし、コーティングが完了した。
【0132】
コーティング完了後、圧縮空気を導入してチャンバを常圧に戻した。回路基板、Mg、Feシートのサンプルを取り出し、塩水試験と塩霧試験を行い、その試験結果を表3に示す。
【0133】
【0134】
上記表3の結果から、本発明の保護コーティングによると、ハロゲンFを含まない場合でも、パーフルオロモノマーにより形成されるプラズマ保護コーティングよりも優れた保護性能を有することが示され得る。
【0135】
本発明は以上のように開示されたが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義された範囲に基づくべきである。