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特許7591622重力補償手段があるバランスばねを備える計時器用調速メンバー
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  • 特許-重力補償手段があるバランスばねを備える計時器用調速メンバー 図1
  • 特許-重力補償手段があるバランスばねを備える計時器用調速メンバー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】重力補償手段があるバランスばねを備える計時器用調速メンバー
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/22 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G04B17/22 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023109040
(22)【出願日】2023-07-03
(65)【公開番号】P2024014762
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】22186305.3
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・イノー
(72)【発明者】
【氏名】モハマド フセイン・カーロバイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック・エルフェ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許発明第00717283(CH,B5)
【文献】特開2022-088332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/06,17/22
G04B 17/04,17/00
G04B 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器用ムーブメント用の調速メンバー(10)であって、
バランスのような振動錘と、バランスばねとを備え、
前記バランスばねは、自身のまわりに複数の回転分巻かれたフレキシブルな細長材(2)を備え、
前記細長材(2)は、前記振動錘が回転振動運動を行うことができるように所定の剛性を有し、
前記細長材(2)には外端(9)があり、
前記調速メンバー(10)は、前記調速メンバー(10)に対する重力の向きを補償するための弾性補償デバイスを備え、
前記弾性補償デバイスは、その剛性を重力に応じて適応させて、前記調速メンバー(10)に対する重力の影響を補償するように構成しており、
前記弾性補償デバイスは、計時器用ムーブメントに対して不動な第1の不動支持体(7)に前記外端(9)を接続する弾性要素(5)と、前記調速メンバー(10)に対する重力の向きに応じて、前記弾性要素(5)に可変の力又はトルクを与える予応力手段(6)とを備え
前記予応力手段(6)は、重力の向きに応じて動く応力付与錘(20)を備え、
この応力付与錘(20)は、前記バランスばねによって形成される平面と垂直な方向へ動くように構成されてい
ことを特徴とする調速メンバー。
【請求項2】
計時器用ムーブメント用の調速メンバー(10)であって、
バランスのような振動錘と、バランスばねとを備え、
前記バランスばねは、自身のまわりに複数の回転分巻かれたフレキシブルな細長材(2)を備え、
前記細長材(2)は、前記振動錘が回転振動運動を行うことができるように所定の剛性を有し、
前記細長材(2)には外端(9)があり、
前記調速メンバー(10)は、前記調速メンバー(10)に対する重力の向きを補償するための弾性補償デバイスを備え、
前記弾性補償デバイスは、その剛性を重力に応じて適応させて、前記調速メンバー(10)に対する重力の影響を補償するように構成しており、
前記弾性補償デバイスは、計時器用ムーブメントに対して不動な第1の不動支持体(7)に前記外端(9)を接続する弾性要素(5)と、前記調速メンバー(10)に対する重力の向きに応じて、前記弾性要素(5)に可変の力又はトルクを与える予応力手段(6)とを備え、
前記予応力手段(6)は、重力の向きに応じて動く応力付与錘(20)を備え、
前記予応力手段(6)は、前記弾性要素(5)に接続されるばね部を備え、
前記ばね部は、前記応力付与錘(20)の動きを通じて付与される力又はトルクを前記弾性要素(5)に伝達し、
前記応力付与錘(20)には、前記ばね部に接触する斜めの壁(23)があり、
前記斜めの壁(23)は、前記応力付与錘(20)の位置が変わることによって前記ばね部に与えられる力が変わるように、前記応力付与錘(20)とともに動くことができる
ことを特徴とする調速メンバー
【請求項3】
前記予応力手段(6)は、前記弾性要素(5)に接続されるばね部を備え、
前記ばね部は、前記応力付与錘(20)の動きを通じて付与される力又はトルクを前記弾性要素(5)に伝達する
ことを特徴とする請求項に記載の調速メンバー。
【請求項4】
前記応力付与錘(20)には、前記ばね部に接触する斜めの壁(23)があり、
前記斜めの壁(23)は、前記応力付与錘(20)の位置が変わることによって前記ばね部に与えられる力が変わるように、前記応力付与錘(20)とともに動くことができる
ことを特徴とする請求項3に記載の調速メンバー。
【請求項5】
前記ばね部は、前記弾性要素(5)に接続されるフレキシブルブレード(11)を備える
ことを特徴とする請求項2または3に記載の調速メンバー。
【請求項6】
前記ばね部は、第1及び第2の剛体(14、19)どうしを接続する複数の二次フレキシブルブレード(16)を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の調速メンバー。
【請求項7】
可動な前記第1の剛体(14)は、前記フレキシブルブレード(11)に接続される
ことを特徴とする請求項6に記載の調速メンバー。
【請求項8】
前記ばね部は、前記第1の剛体(14)に前記力又はトルクを伝えながら前記第1の剛体(14)を動かす変換機構を備え、
前記応力付与錘(20)は、前記変換機構に接触している
ことを特徴とする請求項7に記載の調速メンバー。
【請求項9】
前記変換機構は、2つの三次フレキシブルブレード(18)と前記第2の剛体(19)を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の調速メンバー。
【請求項10】
前記調速メンバー(10)は、実質的に同じ平面上に延在している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の調速メンバー。
【請求項11】
前記弾性要素(5)は、懸架体(13)と、前記懸架体(13)を前記第1の不動支持体(7)に接続する非交差ブレード対(4)とを備える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の調速メンバー。
【請求項12】
前記予応力手段(6)は、前記懸架体(13)に力又はトルクを与えるように前記懸架体(13)と機械的に接続される
ことを特徴とする請求項11に記載の調速メンバー。
【請求項13】
請求項1から4のいずれか一項に記載の調速メンバー(10)を備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力補償手段があるバランスばねを備える計時器用調速メンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)の多くは、ばね仕掛けバランスとスイス式レバーエスケープを搭載している。ばね仕掛けバランスは、携行型時計のタイムベースを構成する。ばね仕掛けバランスは、共振器や調速メンバーとも呼ばれる。
【0003】
エスケープには、以下の2つの主な機能がある。
- 共振器の往復運動を維持すること
- この往復運動をカウントすること
【0004】
機械式共振器を構成するためには、慣性要素と、ガイドと、弾性戻し要素が必要である。伝統的に、慣性要素がバランスによって形成される場合、バランスばねが弾性戻し要素として機能する。このバランスは、概してルビー製のプレーンベアリング内において回転する、ピボットによって回転ガイドされる。
【0005】
機械式共振器に対して、計時器用ムーブメントの所定のレートが得られるように振動数が決められて選択される。
【0006】
しかし、このような機械式共振器には、その動作中に、外部パラメーターの変化に起因する外乱が与えられて、共振器の振動数が変動してしまうおそれがある。例えば、これらのパラメーターは、温度、圧力、湿度、重力である。共振器の振動数の変動は、時間測定において誤差を発生させ、したがって、計時器用ムーブメントのレートに誤差を発生させる。
【0007】
腕時計産業において、従来技術の文献に、自身に及ぼす重力の向きの影響を考慮する調速メンバーが記載されているものがある。このように、所定の振動数を選択して、バランスのアンバランスを調整することで、重力の向きが調速メンバーに与える影響を最小限に抑えることができる。
【0008】
しかし、このような調速は、調速メンバーに対する重力の影響を十分に低減することを可能にするものではない。このように、重力が原因で調速メンバーの精度を非常に高くすることができない。
【0009】
また、重力の影響を補償するために、回転軸を中心に調速メンバーを1分間当たり1~2回転させるような、トゥールビヨンやカルーセルのような調速メンバーの複雑機構も知られている。しかし、このような複雑機構は、計時器が安定位置を維持するときにのみ有効である。調速メンバーに対する重力の向きが急に変わると、その変化を補償することができるほど調速メンバーの回転は十分に速くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、実効的かつ迅速な重力補償手段がある、バランスばねを備える計時器用調速メンバーを提供することによって、前記課題の全部又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、計時器用ムーブメント用の調速メンバーに関し、バランスのような振動錘と、バランスばねとを備え、前記バランスばねは、自身のまわりに複数の回転分巻かれたフレキシブルな細長材を備え、前記細長材は、前記振動錘が回転振動運動を行うことができるように所定の剛性を有し、前記細長材には外端がある。
【0012】
本発明は、前記調速メンバーが、前記調速メンバーに対する重力の向きを補償するための弾性補償デバイスを備え、前記弾性補償デバイスが、その剛性を重力に応じて適応させて、前記調速メンバーに対する重力の影響を補償するように構成しており、前記弾性補償デバイスが、計時器用ムーブメントに対して不動な第1の不動支持体に前記外端を接続する弾性要素と、前記調速メンバーに対する重力の向きに応じて、前記弾性要素に可変の力又はトルクを与える予応力手段とを備える点で画期的である。
【0013】
本発明のおかげで、予応力手段は、重力に応じて弾性要素に可変の力又はトルクを与えて、重力に対する姿勢の変化にもかかわらず、調速メンバーが正確なレートを維持するようにする。実際に、調速メンバーに対する重力の向きが変わると、予応力手段は、弾性要素に作用する力又はトルクを変えて、バランスばねと弾性要素を含む組の剛性が変わるようにする。この組の剛性を変えることで、調速メンバーのレートが調整される。この結果、調速メンバーに対する重力の向きが変わったときに、この変化にバランスばねの共振器の振動数のレートを調整するように弾性補償デバイスが機械的に作用される。この弾性補償デバイスの反応速度は非常に速い。なぜなら、重力の向きの変化に瞬時に適応するためである。
【0014】
この弾性要素は、取り付け箇所の剛性を変え、共振器のフレキシブル性を高くする。したがって、共振器の実効的な剛性は、細長材の剛性と弾性要素の剛性によって構成される。可変の力又はトルクのおかげで、好ましくは細長材に予応力を与えたり細長材の端を動かしたりすることなく、弾性要素に予応力を与えることができる。弾性要素に予応力を与えることによって、その剛性が変わるが、細長材の剛性は、変わらないままである。なぜなら、細長材には予応力が与えられず、細長材の端が動かないからである。弾性要素の剛性を変えることによって、共振器の剛性(すなわち、細長材の剛性と弾性要素の剛性)が変わり、これによって、共振器の共振器のレートが変わる。弾性要素は、好ましくは、細長材よりも剛性が高く、全体の剛性に占める弾性要素のフレキシブル性の寄与は、細長材の寄与よりも小さい。結果として、弾性要素の剛性を変えることによって、共振器全体の剛性が変わり、これによって、そのレートが細かく調整され、そのおかげで、タイムベースの振動数を正確に調整することができる。このように、重力が変わってもレートの維持において高い精度が得られる。
【0015】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記弾性要素に接続されるばね部を備え、前記ばね部は、前記力又はトルクを前記弾性要素に伝達する。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、重力の向きに応じて前記ばね部に可変の力又はトルクを与える応力付与錘を備える。
【0017】
本発明の特定の実施形態において、前記応力付与錘には、前記ばね部に接触する斜めの壁があり、前記斜めの壁は、前記応力付与錘の位置が変わることによって前記ばね部に与えられる力が変わるように、前記応力付与錘とともに動くことができる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、前記ばね部は、前記弾性要素に接続されるフレキシブルブレードを備える。
【0019】
本発明の特定の実施形態において、前記ばね部は、第1及び第2の剛体どうしを接続する複数の二次フレキシブルブレードを備える。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、可動な前記第1の剛体は、前記フレキシブルブレードに接続される。
【0021】
本発明の特定の実施形態において、前記ばね部は、変換機構を備え、前記応力付与錘は、前記変換機構に接触している。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、前記変換機構は、2つの三次フレキシブルブレードと前記第2の剛体を備える。
【0023】
本発明の特定の実施形態において、前記調速メンバーは、実質的に同じ平面上に延在している。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、前記弾性要素は、懸架体と、前記懸架体を前記第1の不動支持体に接続する非交差ブレード対とを備える。
【0025】
本発明の特定の実施形態において、前記予応力手段は、前記懸架体に力又はトルクを与えるように前記懸架体と機械的に接続される。
【0026】
本発明は、さらに、このような調速メンバーを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0027】
添付の図面を参照しながら例としてのみ与えられるいくつかの実施形態についての説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る調速メンバーの上面図を概略的に示している。
図2図1の本発明の実施形態に係る調速メンバーの側面図を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び2は、本発明に係る調速メンバー10の一実施形態を示している。
【0030】
調速メンバー10は、自身のまわりに複数の回転分巻かれたフレキシブル細長材2があるバランスばねを備える。フレキシブル細長材2には、外端9と内端8がある。
【0031】
調速メンバー10は、細長材2の内端8に接続される、図示していない振動錘、例えば環状のバランス、を備え、この細長材2は、振動錘が回転振動運動を行うことができるように所定の剛性を有する。例えば、振動錘には、軸方向の回転シャフトがあり、細長材2の内端8は、前記シャフトに接続される。
【0032】
好ましくは、調速メンバー10は、振動錘を除いて、実質的に同じ平面(x,y)内で延在し、振動錘は、その平面と平行な平面内で、好ましくはバランスばねの上方で、振動する。
【0033】
本発明によると、調速メンバー10は、調速メンバー10に対する重力の向きに応じて弾性要素5の剛性を適応させるように、調速メンバー10に対する重力の影響を補償する弾性補償デバイス15を備える。
【0034】
弾性補償デバイス15は、さらに、計時器用ムーブメント、例えば、プレート、に対して不動支持体7に外端9を接続する弾性要素5を備える。弾性補償デバイス15は、さらに、調速メンバー10に対する重力の向きに応じて弾性要素5に可変の力又はトルクを与えるための予応力手段6を備える。
【0035】
ここで、弾性要素5は、懸架体13と、懸架体13を不動支持体7に接続する非交差ブレード対4とを備える。例えば、懸架体13は、平行六面体であり、非交差ブレード4が、懸架体13から不動支持体7まで偏って延在している。
【0036】
弾性要素5は、フレキシブル細長材2の続きに配置され、振動錘の振動中のバランスばねと弾性要素5の間の接触を避けつつ、バランスばねと弾性要素5は隣り合うように配置される。
【0037】
予応力手段6は、懸架体13に力又はトルクを与えるように構成する。予応力手段6は、懸架体13に接続されるフレキシブルブレード11があるばね部を備える。フレキシブルブレード11は、弾性要素の軸方向に延在し、外端9に対してオフセットされる。
【0038】
細長材2の外端9とフレキシブルブレード11は、懸架体13の同じ側で接続される。
【0039】
フレキシブルブレード11は、弾性要素5の剛体部分を予応力手段6の肘状(L字状)の第1の可動剛体14に接続する。
【0040】
予応力手段6は、肘状の第2の可動剛体19と、2つの剛体14、19を接続する平行な第2のフレキシブルブレード16とを備える。2つの剛体14、19は、予応力手段6の休み位置において、対で実質的に平行区画がある。4つの二次フレキシブルブレード16は、予応力手段6の休み位置において、フレキシブルブレード11に対して実質的に垂直であり、2つの剛体14、19の間にばね効果を発生させる。予応力手段6のばね部は、平行な二次フレキシブルブレード16を備える。
【0041】
予応力手段6のばね部は、さらに、計時器用ムーブメントに対して第2の本体19を第2の不動支持体17に接続する2つの三次フレキシブルブレード18を備え、この三次フレキシブルブレード18は、第1の剛体14をガイドするための変換機構を形成する。三次フレキシブルブレード18は、二次フレキシブルブレードと実質的に平行であり、第2の剛体19の同じ側に配置される。第2の可動剛体19を動かすことによって、第1の可動剛体14は、次に、二次フレキシブルブレード16を介して動かされて、可変の力又はトルクが懸架体13に与えられる。したがって、弾性要素5、したがって、弾性要素5とバランスばねを含む組、の剛性が変わる。
【0042】
また、予応力手段6は、応力付与錘20を備え、この応力付与錘20が占める調速メンバー10内の位置が重力の影響を受ける。
【0043】
応力付与錘20は、第3のフレキシブルブレード対21のおかげで、ムーブメント、例えばプレート、に対して不動な第3の不動支持体22に接続される。したがって、応力付与錘20は、バランスばねの平面に対して実質的に垂直な方向、すなわち、z軸の方向に、動くことができる。
【0044】
応力付与錘20は、ここでは斜め面23がある平行六面体である。応力付与錘20は、斜め面23が第2の本体19の背部に接触するように構成している。4つの副ブレード16が発生させるばね効果によって、第2の本体19が斜め面23に押し付けられる。
【0045】
斜め面23は、平面x,yとの間に、90°とは異なる角度を形成する。
【0046】
応力付与錘20は、z軸の方向に、重力に応じて動くように構成している。
【0047】
重力の向きが調速メンバー10の平面に対して垂直であるz軸とは反対の第1の方向であると、応力付与錘20は下方に押され、斜め面23には、第2の剛体19から離れる部分があり、この部分は、第1の可動剛体14から離れる。このように、弾性要素5の剛性、したがって、大きく見ると調速メンバー10の剛性、が増加する。
【0048】
重力の向きが、調速メンバー10の平面に対して垂直である第1の方向とは反対のz軸の方向である第2の方向であると、応力付与錘20は上方に押し上げられ、斜め面には第2の剛体19に近くなる部分があり、この部分は、第1の可動剛体14の方へと進む。したがって、弾性要素5の剛性、したがって、大きく見ると調速メンバー10の剛性、が低下する。
【0049】
重力の向きが調速メンバー10の平面x,y内にあるときに、応力付与錘20は平均位置に留まる。
【0050】
すべての中間的な重力の向きが可能であるため、応力付与錘20は、実質的に、この方向に、第2の剛体19に接触している斜め面23の部分に応じて、第2の剛体19を押す。
【0051】
重力の向きに応じて、応力付与錘20、したがって、斜め面23が、上昇及び下降をして、実質的に第2の剛体19を第1の剛体14の方へと押し付ける。したがって、応力付与錘20に対する重力の向きに応じて、弾性要素5の剛性、したがって、調速メンバー10のレートが、変わる。
【0052】
本発明は、さらに、前記のような調速メンバー10を備える計時器用ムーブメント(図示せず)に関する。
【0053】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに、様々な代替的形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0054】
2 細長材
4 非交差ブレード
5 弾性要素
6 予応力手段
7 第1の不動支持体
8 内端
9 外端
10 調速メンバー
11 フレキシブルブレード
13 懸架体
14 第1の剛体
15 弾性補償デバイス
16 二次フレキシブルブレード
17 第2の不動支持体
18 三次フレキシブルブレード
19 第2の剛体
20 応力付与錘
23 斜めの壁
図1
図2