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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】路面凍結抑制方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/24 20060101AFI20241121BHJP
   E01C 7/24 20060101ALI20241121BHJP
   E01C 7/35 20060101ALI20241121BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E01C11/24
E01C7/24
E01C7/35
C09K3/00 102
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023148454
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201515
【氏名又は名称】前田道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 知
(72)【発明者】
【氏名】谷中 哲
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-160302(JP,A)
【文献】特開2020-076210(JP,A)
【文献】特開2021-138582(JP,A)
【文献】特開平07-324307(JP,A)
【文献】特開2010-222910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/24
E01C 7/24
E01C 7/35
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布する第1の工程と、
ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを前記路面に塗布し、モルタル層を形成する第2の工程と、を備え、
前記凍結抑制剤は、前記有機酸の金属塩化合物を含有する水溶液である路面凍結抑制方法。
【請求項2】
前記凍結抑制剤における前記有機酸の金属塩化合物の含有量が、5~45重量%である請求項1に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記凍結抑制剤の散布量が0.05~0.5L/mである請求項1または2に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項4】
前記第1の工程において、前記凍結抑制剤を散布することにより前記路面に配置される前記有機酸の金属塩化合物の量が、2.5~225g/mである請求項1または2に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項5】
前記第2の工程において、前記モルタル層の厚さが0.2~4mmである請求項1または2に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項6】
前記第2の工程を、前記第1の工程の後10分~2時間経過してから行う請求項1または2に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項7】
前記有機酸の金属塩化合物が、カルボン酸の金属塩である請求項1または2に記載の路面凍結抑方法。
【請求項8】
前記有機酸の金属塩化合物が、ギ酸の金属塩である請求項7に記載の路面凍結抑制方法。
【請求項9】
前記ポリマーエマルションが、アクリル酸エステル重合体のエマルションである請求項1または2に記載の路面凍結抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装等の路面凍結抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積雪寒冷地における路面においては、スパイクタイヤの使用禁止区域が広がったことを受け、スタッドレスタイヤが冬タイヤの主流となってきたため、雪氷路面でのすべり抵抗性の低下が問題となってきている。このため、交通安全の面から、冬期に路面の凍結を抑制することが重要な課題となっている。
【0003】
このような路面の凍結を抑制する方法として、たとえば、特許文献1には、有機酸の金属塩化合物と、ポリマーエマルションと、固化材と、骨材とを含有する凍結抑制表面処理混合物を、路面に吹き付ける方法が開示されている。しかしながら、上記の凍結抑制表面処理混合物は、可使時間が短いため、吹き付け機械に詰まりが発生しやすい。また、上記の凍結抑制表面処理混合物は、硬化時間が長いため、路面に吹き付けた後、バーナー等を用いて混合物を加熱する必要がある場合がある。また、吹き付けによる施工では、飛散した材料による汚損を防ぐため、工区の養生に多大な労力を要する。このように、特許文献1の凍結抑制表面処理混合物を用いた方法では、上記の要因により施工が困難であるという問題があった。加えて、凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性のさらなる向上も求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-76210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、簡便に施工することができ、かつ、凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性を高めることができる路面凍結抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布する第1の工程と、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを前記路面に塗布する第2の工程と、を備えた路面凍結抑制方法によれば、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
[1]本発明の態様1によれば、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布する第1の工程と、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを前記路面に塗布する第2の工程と、を備えた路面凍結抑制方法が提供される。
【0008】
[2]本発明の態様2によれば、前記凍結抑制剤における前記有機酸の金属塩化合物の含有量が、5~45重量%である態様1に記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0009】
[3]本発明の態様3によれば、前記第1の工程において、前記凍結抑制剤の散布量が0.05~0.5L/mである態様1または2に記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0010】
[4]本発明の態様4によれば、前記第1の工程において、前記凍結抑制剤を散布することにより前記路面に配置される前記有機酸の金属塩化合物の量が、2.5~225g/mである態様1~3のいずれかに記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0011】
[5]本発明の態様5によれば、前記第2の工程において、前記モルタル層の厚さが0.2~4mmである態様1~4のいずれかに記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0012】
[6]本発明の態様6によれば、前記第2の工程を、前記第1の工程の後10分~2時間経過してから行う態様1~5のいずれかに記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0013】
[7]本発明の態様7によれば、前記有機酸の金属塩化合物が、カルボン酸の金属塩である態様1~6のいずれかに記載の路面凍結抑方法が提供される。
【0014】
[8]本発明の態様8によれば、前記有機酸の金属塩化合物が、ギ酸の金属塩である態様7に記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【0015】
[9]本発明の態様9によれば、前記ポリマーエマルションが、アクリル酸エステル重合体のエマルションである態様1~8のいずれかに記載の路面凍結抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便に施工することができ、かつ、凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性を高めることができる路面凍結抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、氷着引張試験方法を説明するための図である。
図2図2は、氷着引張試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、融雪剤散布後の氷着引張試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態における路面凍結抑制方法は、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布する第1の工程と、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを前記路面に塗布する第2の工程と、を備えている。本実施形態における路面凍結抑制方法によれば、凍結抑制剤が散布された路面上に、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルからなるモルタル層が形成される。これにより、舗装道路などの路面に凍結抑制効果を付与することができる。
【0019】
第1の工程では、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を、路面に散布する。凍結抑制剤は、有機酸の金属塩化合物を含有する水溶液である。凍結抑制剤を路面に散布する方法としては、特に限定されないが、例えば、タンクに貯留した凍結抑制剤をポンプで送出し、散布機を用いて工区に散布する方法が挙げられる。なお、特に限定されないが、本発明による凍結抑制効果を十分に発揮させるため、第1の工程の前に、ブロワ等で路面上を清掃しておくことが好ましい。
【0020】
有機酸の金属塩化合物は、凝固点降下作用により、凍結抑制効果を示す化合物である。このような有機酸の金属塩化合物としては、有機酸の金属塩であればよく特に限定されないが、カルボン酸の金属塩、スルホン酸の金属塩などが挙げられ、凍結抑制効果をより高めることができるという観点より、カルボン酸の金属塩が好ましい。また、カルボン酸としては、特に限定されず、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;などが挙げられる。これらのなかでも、凍結抑制効果が高いという観点より、飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸がより好ましく、ギ酸が特に好ましい。
【0021】
また、有機酸の金属塩化合物を構成する金属としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの周期表第1族金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表第2族金属などが挙げられるが、これらの中でも、凍結抑制効果をより高めることができるという観点より、周期表第1族金属が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウムがより好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0022】
凍結抑制剤における有機酸の金属塩化合物の含有量は、好ましくは5~45重量%であり、より好ましくは10~35重量%であり、さらに好ましくは15~25重量%である。凍結抑制剤における有機酸の金属塩化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、凍結抑制効果をより高めることができる。
【0023】
第1の工程における凍結抑制剤の散布量は、路面の単位面積当たりに対する量で、好ましくは0.05~0.5L/m、より好ましくは0.08~0.4L/m、さらに好ましくは0.1~0.3L/mである。
【0024】
第1の工程により路面上に配置される有機酸の金属塩化合物の量は、路面の単位面積当たりに対する量で、好ましくは2.5~225g/mであり、より好ましくは8~140g/mであり、さらに好ましくは15~75g/mである。路面上に散布される有機酸の金属塩化合物の量を上記範囲内とすることにより、凍結抑制効果をより高めることができる。路面上に配置される有機酸の金属塩化合物の量は、凍結抑制剤における有機酸の金属塩化合物の含有量、及び凍結抑制剤の散布量を調整することにより、調整することができる。
【0025】
第2の工程では、凍結抑制剤が散布された路面上に、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタル(ポリマーセメントモルタル)を塗布する。
【0026】
モルタルに含有されるポリマーエマルションは、水中にポリマーが分散してなるポリマー分散液であればよく、特に限定されないが、アクリル系重合体のエマルション、酢酸ビニル系重合体のエマルション、ブタジエン系重合体のエマルション、天然ゴムのエマルションなどが挙げられる。
【0027】
アクリル系重合体のエマルションの具体例としては、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの意味。)を重合してなる(メタ)アクリル酸エステル重合体のエマルションや、(メタ)アクリル酸エステルとブタジエンを共重合してなる(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体のエマルションなどが挙げられる。
【0028】
酢酸ビニル系重合体のエマルションの具体例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のエマルションや、ポリ酢酸ビニル(PVAC)のエマルションなどが挙げられる。
【0029】
ブタジエン系重合体のエマルションの具体例としては、スチレンとブタジエンを共重合してなるスチレン-ブタジエン共重合体のエマルションや、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合してなるアクリロニトリル-ブタジエン共重合体のエマルションなどが挙げられる。
【0030】
上記したポリマーエマルションのなかでも、凍結抑制効果の持続性をより高めることができるという観点より、アクリル系重合体のエマルションが好ましく、アクリル酸エステルを重合してなるアクリル酸エステル重合体のエマルションがより好ましい。
【0031】
ポリマーエマルション中に含まれるポリマーのガラス転移温度(Tg)は、凍結抑制効果の持続性をより高めるという観点より、好ましくは0℃未満、より好ましくは-10℃以下、特に好ましくは-20℃以下である。
【0032】
また、ポリマーエマルション中のポリマーの割合(固形分の割合)は、特に限定されないが、好ましくは20~70質量%、より好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは35~45質量%である。
【0033】
モルタルにおけるポリマーエマルションの含有量は、骨材100重量部に対する量で、
好ましくは20~70重量部であり、より好ましくは30~50重量部であり、さらに好ましくは35~45重量部である。ポリマーエマルションの含有量を上記範囲とすることにより、凍結抑制効果の持続性をより高めることができる。
【0034】
モルタルに含有される固化材としては、ポリマーエマルション中に含まれる水と反応して硬化することができるものであればよく、例えば、セメントを好適に用いることができる。セメントとしては、特に限定されず、たとえば、超速硬セメントや、超早強ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメントなどの混合セメントや、エコセメントなどが挙げられる。これらのなかでも、早期の交通開放の観点から、超速硬セメント、超早強ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましく、超速硬セメントがより好ましい。
【0035】
モルタルにおける固化材の含有量は、骨材100重量部に対して、好ましくは20~60重量部、より好ましくは30~50重量部、さらに好ましくは35~45重量部である。
【0036】
モルタルに含有される骨材としては、特に限定されないが、砕石、砂、石粉など、通常の路面の舗装に用いられるものを適宜用いることができるが、本発明の路面用の凍結抑制表面処理混合物を舗装道路などの路面へ塗布する際における塗布性をより良好なものとするという観点より、シリカサンド(珪砂)、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂などの細骨材が好ましい。また、骨材としては、骨材の全量中における0.6mm以下の粒度を有する骨材の割合が0~50質量%であるものが好ましく、0.6mm以下の粒度を有する骨材の割合が10~30質量%であるものがより好ましい。
【0037】
なお、モルタルには、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、上記以外に、舗装路面において通常用いられる添加剤、たとえば、硬化促進剤、流動化剤、消泡剤、遅延剤、フィラー、植物繊維、顔料などを添加してもよい。モルタルは、上記の各成分を混合することにより製造することができる。
【0038】
モルタルを路面上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ハンドミキサー等で混合したモルタルを工区内に配置し、ゴムレーキ等を用いて敷き均す方法や、混合装置及び/又はスプレッダボックスを備えた車両を用いてモルタルを塗布しながら敷き均す方法などが挙げられる。
【0039】
第2の工程で形成されるモルタル層の厚さは、好ましくは0.2~4mmであり、より好ましくは0.5~3mmであり、さらに好ましくは1~2mmである。モルタル層の厚さは、モルタルに含有される各成分の配合を調整したり、モルタルを塗布する際に所望の厚さとなるようにモルタルを敷き均したりすることにより、調整することができる。
【0040】
また、第2の工程で形成されるモルタル層の厚さは、特に限定されないが、第1の工程において路面上に配置された単位面積当たりの有機酸の金属塩化合物の量に対する厚さで、好ましくは0.0008~1.6mm/(g/m)であり、好ましくは0.003~0.38mm/(g/m)であり、より好ましくは0.01~0.14mm/(g/m)である。有機酸の金属塩化合物の量に対するモルタル層の厚さを上記範囲内とすることにより、凍結抑制剤による凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性をより高めることができる。
【0041】
特に限定されないが、第2の工程は、第1の工程の後、10分~2時間経過後に行うことが好ましく、30分~1時間経過後に行うことがより好ましい。第1の工程の後、所定の時間が経過してから第2の工程を行うことにより、モルタルを適切に硬化させることができ、凍結抑制剤による凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性をより高めることができる。
【0042】
また、第2の工程において、モルタルを塗布した後、必要に応じて養生し、モルタルを硬化させることが好ましい。
【0043】
本実施形態における路面凍結抑制方法では、第1の工程において、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布した後に、第2の工程において、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを塗布する。これにより、所望の組成を有するモルタルを用いて、モルタルの可使時間および硬化時間のバランスを適切に調整することができるため、モルタルの取り扱いが容易となり、簡便な施工が可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、路面に散布した凍結抑制剤の上にモルタル層を形成することにより、凍結抑制剤による凍結抑制効果の持続性を向上することができる。この理由としては定かではないが、モルタル層が封かん層(シール層)の役割を果たし、凍結抑制剤に含有される有機酸の金属塩化合物の徐放性が向上するためであると考えられる。
【0045】
また、上記のモルタルを用いて形成されるモルタル層は、表面及び内部に微細な空隙を有する。このため、第1の工程において散布された凍結抑制剤が、第2の工程で形成されたモルタル層の空隙からモルタル層の表面に浸み出すことができる。従って、本実施形態における路面凍結抑制方法によれば、凍結抑制剤による凍結抑制効果を有効に発現させることができる。
【0046】
また、本実施形態における路面凍結抑制方法を適用した路面に塩化カルシウム等の融雪剤を散布した場合に、モルタル層が微細な空隙を有していることにより、空隙によって融雪剤が路面に保持されやすい。このため、本実施形態における路面凍結抑制方法によれば、融雪剤の効果の持続性も向上することができる。
【0047】
以上の特徴から、本実施形態における路面凍結抑制方法は、寒冷地など、冬期において路面の凍結が起こり易い地域の路面において、好適に用いることができる。
【実施例
【0048】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0049】
<比較例1>
密粒度アスファルト混合物(13)を用いて、締固め温度まで加熱したモールド(型枠)内へ投入した後、締固め(両面50回)を行い、密粒度アスファルト混合物(13)の供試体を得た。これを比較例1の供試体とした。
【0050】
<実施例1>
有機酸の金属塩化合物としてのギ酸ナトリウムを水に添加し混合することで、ギ酸ナトリウム濃度20重量%の凍結抑制剤を調製した。次いで、ポリマーエマルションとしてのアクリル酸エステル重合体のエマルション(アクリル酸エステルを重合してなる重合体の水分散液、固形分としてのポリマーの含有割合:38重量%、ポリマーのガラス転移温度(Tg):-52℃)23.0重量部、固化材としてのセメント(超速硬セメント)22重量部、および細骨材(粒度1.7mm以下、細骨材全量中の0.6mm以下の粒度を持つ細骨材の割合:22重量%)55.0重量部をミキサーに配合し、混合することで、モルタルを得た。
【0051】
次いで、比較例1と同様にして得た密粒度アスファルト混合物(13)の供試体の表面に、スプレーを用いて上記の凍結抑制剤を0.2L/m散布した。すなわち、供試体の表面には、40g/mのギ酸ナトリウムが散布された。凍結抑制剤を散布してから1時間経過後、供試体の凍結抑制剤を散布した面に、上記のモルタルを厚さ約1mmで塗布し、モルタル層を形成した。さらに、室温下で2時間養生し、モルタルを硬化させた。これを実施例1の供試体とした。
【0052】
<比較例2>
有機酸の金属塩化合物としてのギ酸ナトリウムをさらに加えた以外は、実施例1のモルタルと同様にして、ギ酸ナトリウムを含有する混合物を得た。得られた混合物を、比較例1と同様にして得た密粒度アスファルト混合物(13)の供試体の表面に、リシンガンを用いて、0.7MPaにて吹き付けを行い、室温下で、2時間放置することで、約1mmの厚さの膜を形成し、これを比較例2の供試体とした。なお、混合物製造時に投入したギ酸ナトリウムの量は、混合物を厚さ約1mmの膜とした際に供試体表面に散布されるギ酸ナトリウムの量が40g/mとなる量とした。
【0053】
<氷着引張試験>
「舗装性能評価法別冊」((社)日本道路協会 平成20年3月)に記載されている「氷着引張強度を求めるための引張試験機による測定方法」に従い、実施例1の供試体、比較例1の供試体、及び比較例2の供試体について、凍結抑制効果を室内にて評価した。なお、図1は、氷着引張試験方法を示す図である。
【0054】
具体的には、まず、試験温度を-5℃に設定し、供試体10表面に薄い氷膜を形成した。次いで、不織布30を貼り付けた測定冶具20を準備し、測定冶具20に貼り付けた不織布30を水で飽和させて供試体10表面に設置した。次いで、供試体10表面に接地圧4kPaとなる荷重をかけた状態にて、-5℃の環境にて4時間養生を行った後、荷重を取り除いて、測定冶具20の上部に、ゴム板40を設置し、ここに420gの鋼球を25cmの高さから10回落下させた。その後、供試体10から、測定冶具20を引き抜き、測定冶具20を引き抜いた際の最大荷重を測定し、これを氷着引張強度とした。氷着引張強度が小さいほど、凍結抑制効果が高いと判断できる。また、凍結抑制効果の持続性を評価するため、同じ供試体について繰り返し氷着引張試験を行った。繰り返し試験を行っても氷着引張強度が大きく上昇しない場合、凍結抑制効果の持続性が高いと判断できる。あるいは、繰り返し試験を行うことで氷着引張強度が大きく上昇した場合であっても、氷着引張強度が大きく上昇したときの試験回数が大きいほど、凍結抑制効果の持続性が高いと判断できる。測定結果を図2に示す。
【0055】
図2に示すように、有機酸の金属塩化合物としてのギ酸ナトリウムを使用した実施例1の供試体によれば、密粒度アスファルト混合物(13)の供試体と比較して、氷着引張強度が大きく低減されており、凍結抑制効果に優れるものであるといえる。
【0056】
<融雪剤の効果の持続性評価>
実施例1の供試体の表面を2日間流水にさらし、ギ酸ナトリウムを供試体の表面から流出させた。この供試体について、上記と同様の手順で氷着引張試験を行った。次いで、融雪剤としての塩化カルシウムを含有する塩化カルシウム水溶液を、供試体表面における塩化カルシウムの量が20g/mとなるように、氷着引張試験後の供試体表面に散布した。塩化カルシウム水溶液散布後の供試体について、繰り返し氷着引張試験を行った。塩化カルシウム水溶液散布後の氷着引張試験において、氷着引張強度が大きく上昇したときの試験回数が大きいほど、融雪剤の効果の持続性が高いと判断できる。比較例1の供試体についても、同様に融雪剤の効果の持続性評価を行った。測定結果を図3に示す。なお、図3において、回数1の結果は、供試体表面を2日間流水にさらした後の結果を表す。また、図3において、回数2~6の結果は、供試体表面に塩化カルシウム水溶液を散布した後の結果を表す。
【0057】
図2に示すように、有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を散布し、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを塗布してモルタル層を形成する方法により得られた実施例1の供試体は、氷着引張強度が小さく、凍結抑制効果に優れていた(特に、1回目の試験結果)。また、実施例1の供試体は、繰り返し氷着引張試験を行っても、氷着引張強度が大きく上昇せず、凍結抑制効果の持続性にも優れていた。
【0058】
一方、凍結抑制剤を散布しなかった比較例1の供試体や、有機酸の金属塩化合物、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有する混合物を吹き付けることにより得られた比較例2の供試体は、氷着引張強度が大きく、凍結抑制効果に劣っていた。また、比較例1の供試体及び比較例2の供試体では、繰り返し氷着引張試験を行うことで氷着引張強度が大きく上昇してしまい、凍結抑制効果の持続性にも劣っていた。
【0059】
また、図3に示すように、実施例1の供試体は、有機酸の金属塩化合物としてのギ酸ナトリウムを流出させ、融雪剤としての塩化カルシウム水溶液を散布した後において、繰り返し氷着引張試験を行っても、氷着引張強度が大きく上昇しなかったことから、融雪剤の効果の持続性にも優れていた。
【要約】
【課題】簡便に施工することができ、かつ、凍結抑制効果、及び凍結抑制効果の持続性を高めることができる路面凍結抑制方法を提供すること。
【解決手段】有機酸の金属塩化合物を含有する凍結抑制剤を路面に散布する第1の工程と、ポリマーエマルション、固化材、及び骨材を含有するモルタルを前記路面に塗布し、モルタル層を形成する第2の工程と、を備えた路面凍結抑制方法を提供する。
【選択図】なし
図1
図2
図3