(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子部品検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/22 20060101AFI20241121BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20241121BHJP
G01N 27/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01R29/22 G
G01R27/02 R
G01N27/20 Z
(21)【出願番号】P 2023510740
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009766
(87)【国際公開番号】W WO2022209611
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2021055173
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】池田 竜介
(72)【発明者】
【氏名】日比野 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝生
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-148243(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054337(WO,A1)
【文献】特開2019-4184(JP,A)
【文献】特開2016-25142(JP,A)
【文献】特開2020-102615(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066936(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/262256(WO,A1)
【文献】特開2007-129776(JP,A)
【文献】特開平9-33334(JP,A)
【文献】国際公開第2006/115110(WO,A1)
【文献】特開2010-190815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/22
G01R 27/02
G01N 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極が設けられた第1面と、第2電極が設けられた第2面とを有する電子部品を、第1端子および第2端子を有する測定器を用いて検査する、電子部品検査方法であって、
(a)前記第1面および前記第2面のうち前記第2面のみを
着脱可能に導電性粘着シートに粘着させる工程と、
(b)前記測定器の前記第1端子を前記第1電極へ前記第1面で電気的に接続し、かつ前記測定器の前記第2端子を前記第2電極へ前記第2面で前記導電性粘着シートを介して電気的に接続しつつ、前記測定器によって前記電子部品を測定する工程と、
を備える電子部品検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品検査方法であって、
前記工程(a)において、前記導電性粘着シートは金属部材に支持されている、電子部品検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品検査方法であって、
前記工程(b)において、前記測定器の前記第2端子は、前記導電性粘着シートへ前記金属部材を介して電気的に接続されている、電子部品検査方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品検査方法であって、
前記工程(b)は、
(b-1)少なくともひとつの測定周波数を含む周波数領域において前記第1端子と前記第2端子との間でのインピーダンス測定を行う工程、
を含み、
前記少なくともひとつの測定周波数での、前記第2電極と前記第2端子との間での前記導電性粘着シートのインピーダンスの絶対値は、前記第1電極と前記第2電極との間での前記電子部品のインピーダンスの絶対値よりも小さい、電子部品検査方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品検査方法であって、
前記少なくともひとつの測定周波数は、1MHz以上の周波数を含む、電子部品検査方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電子部品検査方法であって、
前記電子部品は部分的に圧電体からなる、電子部品検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子部品検査方法であって、
前記少なくともひとつの測定周波数は、前記電子部品の最大外形寸法に対応した反共振周波数を含む、電子部品検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子部品検査方法であって、
(c)前記工程(b-1)の前記インピーダンス測定における前記反共振周波数でのインピーダンスに基づいて前記電子部品の機械的欠陥を評価する工程、
をさらに備える、電子部品検査方法。
【請求項9】
請求項4または5に記載の電子部品検査方法であって、
前記少なくともひとつの測定周波数は、前記電子部品の少なくともひとつの電気的共振周波数を含む、電子部品検査方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電子部品検査方法であって、
前記工程(b)において、前記電子部品を検査するために、前記電子部品に対する測定工程が、測定システムを用いて行われ、
前記導電性粘着シートは、前記電子部品ではなく前記測定システムに含まれる、電子部品検査方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の電子部品検査方法であって、
(d)前記工程(c)の後、前記電子部品を前記導電性粘着シートから分離する工程、
をさらに備える、電子部品検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品検査方法に関し、特に、電子部品へ電気的に接続された測定器によって電子部品を測定する電子部品検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/054337号公報(特許文献1)は、圧電素子の検査方法を例示している。圧電素子の一方の面には、第1端子および第2端子が形成されている。まず、圧電素子の、一方の面と対向する他方の面が、1×1016Ω以上の表面抵抗を有する微粘着シートに保持される。そして、第1端子の電極と第2端子の電極との間に電圧が印加され、電気特性評価が行われる。電気特性評価としては、容量検査と共振検査とが行われる。容量検査においては、LCRメータによって周波数1kHzの測定信号で静電容量が測定される。共振検査においては、ネットワークアナライザによって周波数7.2~7.9MHzの測定信号で圧電素子のインピーダンスの周波数依存性が測定される。共振検査の結果を評価することによって、圧電素子がクラックを有するか否かを判定することができる。具体的には、共振周波数におけるインピーダンスのピーク値が所定の閾値を超える場合、圧電素子がクラックを有しないと判定される。一方で、共振周波数におけるインピーダンスのピーク値が所定の閾値を超えない場合、圧電素子がクラックを有すると判定される。
【0003】
上記公報に記載の検査方法は、共通の面に設けられた2つの電極間に電圧を印加することによって行われる。しかしながら、多くのチップ電子部品の検査において、電気的接続を要する2つの端子は、異なる面に設けられており、典型的には両端面に設けられている。よって多くの場合、上記公報に記載の検査方法を適用することができない。
【0004】
これに対して、特開2019-67935号公報(特許文献2)は、互いに対向する両端部のそれぞれに電極を有するチップ電子部品の検査方法を開示している。この検査方法によれば、収容孔の内部に、それぞれの電極の少なくとも一部がチップ電子部品収容孔の両開口面から突き出るようにチップ電子部品が収容される。そして、両端部の電極のそれぞれに、検査器の可動ローラ電極端子および固定電極端子が接触させられることによって、電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/054337号公報
【文献】特開2019-67935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記検査方法においては、収容孔内で電子部品が変位することがある。その結果、電子部品が収容孔の内壁に衝突することがある。そして衝突の衝撃によって、電子部品が紛失したり破損したりすることがある。また、当該変位の結果、電子部品の電極へ測定器の端子が十分に接触しないことがある。この場合、再検査が必要となるので、検査に要する時間が増大してしまう。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、大きなダメージなしに安定的に電子部品を固定しつつ、電子部品へ測定器を電気的に接続することによる電子部品検査を容易に行うことができる、電子部品検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様は、第1電極が設けられた第1面と、第2電極が設けられた第2面とを有する電子部品を、第1端子および第2端子を有する測定器を用いて検査する、電子部品検査方法であって、(a)第1面および第2面のうち第2面のみを導電性粘着シートに粘着させる工程と、(b)測定器の第1端子を第1電極へ第1面で電気的に接続し、かつ測定器の第2端子を第2電極へ第2面で導電性粘着シートを介して電気的に接続しつつ、測定器によって電子部品を測定する工程と、を備える。
【0009】
第2態様は、第1態様の電子部品検査方法であって、工程(a)において、導電性粘着シートは金属部材に支持されている。
【0010】
第3態様は、第2態様の電子部品検査方法であって、工程(b)において、測定器の第2端子は、導電性粘着シートへ金属部材を介して電気的に接続されている。
【0011】
第4態様は、第1から第3態様の電子部品検査方法であって、工程(b)は、(b-1)少なくともひとつの測定周波数を含む周波数領域において第1端子と第2端子との間でのインピーダンス測定を行う工程、を含む。少なくともひとつの測定周波数での、第2電極と第2端子との間での導電性粘着シートのインピーダンスの絶対値は、第1電極と第2電極との間での電子部品のインピーダンスの絶対値よりも小さい。
【0012】
第5態様は、第4態様の電子部品検査方法であって、少なくともひとつの測定周波数は、1MHz以上の周波数を含む。
【0013】
第6態様は、第4または第5態様の電子部品検査方法であって、電子部品は部分的に圧電体からなる。
【0014】
第7態様は、第6態様の電子部品検査方法であって、少なくともひとつの測定周波数は、電子部品の最大外形寸法に対応した反共振周波数を含む。
【0015】
第8態様は、第7態様の電子部品検査方法であって、(c)工程(b-1)のインピーダンス測定における反共振周波数でのインピーダンスに基づいて電子部品の機械的欠陥を評価する工程、をさらに備える。
【0016】
第9態様は、第4または第5態様の電子部品検査方法であって、少なくともひとつの測定周波数は、電子部品の少なくともひとつの電気的共振周波数を含む。
【発明の効果】
【0017】
第1態様によれば、第1に、電子部品の固定が導電性粘着シートの粘着性を用いて行われる。これにより、ダメージを与えることなく安定的に電子部品を固定することができる。第2に、測定器の第2端子が電子部品の第2電極へ第2面で導電性粘着シートを介して電気的に接続される。これにより、電子部品の第1電極への測定器の電気的接続が容易となるように電子部品の第1面を向けつつ、電子部品の第2電極への第2面での電気的接続は、導電性粘着シートの導電性を用いて容易に確保することができる。以上から、大きなダメージなしに安定的に電子部品を固定しつつ、電子部品へ測定器を電気的に接続することによる電子部品検査を容易に行うことができる。
【0018】
第2態様によれば、導電性粘着シートは金属部材に支持されている。これにより、導電性粘着シートだけでなく金属部材も、電子部品の第2電極と測定器の第2端子との間の電気的経路として用いることができる。
【0019】
第3態様によれば、測定器の第2端子は、導電性粘着シートへ金属部材を介して電気的に接続されている。これにより、測定器の第2端子からの電気的経路を、導電性粘着シートへではなく、金属部材へと取り付けることができる。
【0020】
第4態様によれば、少なくともひとつの測定周波数での、第2電極と第2端子との間での導電性粘着シートのインピーダンスの絶対値は、第1電極と第2電極との間での電子部品のインピーダンスの絶対値よりも小さい。これにより、当該測定周波数においては、導電性粘着シートのインピーダンスによって大きく妨げられることなく、電子部品のインピーダンスを測定することができる。
【0021】
第5態様によれば、少なくともひとつの測定周波数は、1MHz以上の周波数を含む。これにより、十分に高周波での検査を行うことができる。
【0022】
第6態様によれば、電子部品は部分的に圧電体からなる。これにより、測定器からの電圧印加による電子部品の機械的共振を、電子部品の検査に利用することができる。
【0023】
第7態様によれば、少なくともひとつの測定周波数は、電子部品の最大外形寸法に対応した反共振周波数を含む。これにより、できるだけ低い測定周波数を用いつつ、電子部品の機械的共振を電子部品の検査に利用することができる。
【0024】
第8態様によれば、反共振周波数でのインピーダンスに基づいて電子部品の機械的欠陥が評価される。これにより、機械的共振を用いて電子部品の機械的欠陥を評価することができる。
【0025】
第9態様によれば、少なくともひとつの測定周波数は、電子部品の少なくともひとつの電気的共振周波数を含む。これにより、電子部品の検査に電子部品の電気的共振を利用することができる。
【0026】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施の形態に係る電子部品検査方法における測定工程を概略的に示す図である。
【
図2】一実施の形態に係る電子部品検査方法を概略的に示すフロー図である。
【
図3】導電性が相対的に低い導電性粘着シートと、導電性が相対的に高い導電性粘着シートと、電子部品と、の各々のインピーダンスの周波数依存性を例示するグラフ図である。
【
図4】比較例に係る電子部品検査方法における測定工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る電子部品検査方法における測定工程を概略的に示す図である。
図1を参照して、本実施の形態において検査される圧電素子110(電子部品)は、基部10と、電極11(第1電極)が設けられた上面FC1(第1面)と、電極12(第2電極)が設けられた下面FC2(第2面)とを有している。ここで第2面は、第1面とは異なる面であり、典型的には、本実施の形態においてそうであるように、第1面とは反対の面である。基部10の少なくとも一部はセラミックスからなっていてよく、本実施の形態においては圧電体セラミックスからなる。よって本実施の形態における電子部品は、部分的に圧電体からなる。基部10はその内部に、電極11および電極12の各々から延びる内部電極層(図示せず)を含んでいてよい。
【0030】
次に、測定工程に用いられる測定システムの構成について、以下に説明する。
【0031】
ネットワークアナライザ200(測定器)は、圧電素子110を検査するためのものであり、端子TM1(第1端子)および端子TM2(第2端子)を有している。端子TM1および端子TM2のそれぞれには、配線経路LN1および配線経路LN2が接続されている。配線経路LN1は、配線CB1(例えば信号ケーブル)と、それを介して端子TM1に接続されたプローブPB1(例えば、プローブ針)と、を有している。
【0032】
ステージ400(金属部材)は、金属からなる部材であり、例えばアルミニウムからなる。ステージ400は、配線経路LN2によってネットワークアナライザ200の端子TM2に電気的に接続されている。ステージ400は、支持面(
図1における上面)を有している。支持面は平坦面であることが好ましく、当該平坦面は、鉛直方向に対して垂直であることが好ましい。
【0033】
導電性粘着シート310は、粘着面(
図1における上面)と、裏面(
図1における下面)とを有している。粘着面は、粘着によって圧電素子110を保持するための保持力を有している。粘着面の保持力は、物理的接着(二次結合、言い換えれば分子間結合)によるものであってよい。粘着面の保持力は、例えば、0.98N/cm
2(0.10kgf/cm
2)以上、4.9N/cm
2(0.50kgf/cm
2)以下である。導電性粘着シート310の裏面は、ステージ400の支持面上に取り付けられている。これにより、導電性粘着シート310はステージ400と電気的に接続されている。
【0034】
導電性粘着シート310は導電性を有している。導電性粘着シート310は、典型的には、樹脂からなる母材と、母材中に分散された導電性フィラーとを有している。母材は、例えば、フッ素ゴムからなる。導電性フィラーは、例えば、カーボンブラックからなる。
【0035】
導電性粘着シート310の厚みは、例えば、0.1mm以上、1.0mm以下である。導電性粘着シート310のヤング率は、例えば、5.0MPa以上、10.0MPa以下である。導電性粘着シート310の耐熱性は、例えば、90℃以上である。導電性粘着シート310の熱伝導率は、例えば、0.05W/mK以上である。
【0036】
図2は、当該測定工程を含む電子部品検査方法を概略的に示すフロー図である。
【0037】
ステップST10(
図2)にて粘着工程が行われる。具体的には、
図1に示されているように、圧電素子110の下面FC2が、ステージ400に支持された導電性粘着シート310の粘着面に粘着させられる。一方、圧電素子110の上面FC1は導電性粘着シート310に粘着されない。よって、上面FC1および下面FC2のうち下面FC2のみが導電性粘着シート310に粘着させられる。下面FC2が導電性粘着シート310に粘着されることによって、圧電素子110と導電性粘着シート310とが互いに固定されるだけでなく、圧電素子110の電極12と導電性粘着シート310とが互いに電気的に接続される。
【0038】
ステップST20(
図2)にて測定工程が行われる。具体的には、ネットワークアナライザ200の端子TM1が圧電素子110の電極11へ上面FC1で電気的に接続され、かつ、ネットワークアナライザ200の端子TM2が圧電素子110の電極12へ下面FC2で導電性粘着シート310を介して電気的に接続される。これらの接続が維持されつつ、ネットワークアナライザ200によって圧電素子110が測定される。このとき、配線経路LN2は、導電性粘着シート310を介することなくステージ400へ直接的に接続されていてよく、その場合、ネットワークアナライザ200の端子TM2は導電性粘着シート310へステージ400を介して電気的に接続される。一方、端子TM1の電気的接続は、プローブPB1を上方から圧電素子110の電極11へ上面FC1で接触させることによって確保される。本実施の形態においては、端子TM1と端子TM2との間でのインピーダンス測定が、少なくともひとつの測定周波数を含む周波数領域において行われる。少なくともひとつの測定周波数は、1MHz以上の周波数を含んでいてよい。測定には、例えば、+4dBmの測定信号が用いられる。
【0039】
図3を参照して、周波数fを表す横軸を有するグラフにおいて、導電性が相対的に低い導電性粘着シート310のインピーダンスZ
SH、導電性が相対的に高い導電性粘着シート310のインピーダンスZ
SL、および、電極11と電極12との間での圧電素子110のインピーダンスZ
Cの各々についての、周波数依存性が例示されている。ここで、導電性粘着シート310のインピーダンスは、電極12とネットワークアナライザ200の端子TM2との間のインピーダンスとして定義される。なお
図3の例で示されている各インピーダンスは、その絶対値で示されている。グラフ中の矢印は、圧電素子110の最大外形寸法に対応した反共振周波数f
A(並列共振周波数)を示している。
【0040】
ある測定周波数でのインピーダンスZCの値が圧電素子110の評価に用いられることになる場合、当該測定周波数において、導電性粘着シート310のインピーダンスの絶対値は、圧電素子110のインピーダンスZCよりも小さいことが好ましい。特に、反共振周波数fAでのインピーダンスZCのピーク値が圧電素子110の評価に用いられることになる場合、反共振周波数fAにおいて、導電性粘着シート310のインピーダンスの絶対値は、インピーダンスZCよりも小さいことが好ましい。よってその場合、インピーダンスZSHではなくインピーダンスZSLを有する導電性粘着シート310が用いられることが好ましい。
【0041】
ステップST30(
図2)にて評価工程が行われる。具体的には、上記ステップST20でのインピーダンス測定における上記反共振周波数f
AでのインピーダンスZ
Cのピーク値に基づいて圧電素子110の機械的欠陥が評価される。典型的には、予め定められた閾値を基準として、上記ピーク値が相対的に大きければ圧電素子110はクラックを有しないと判定され、上記ピーク値が相対的に小さければ圧電素子110はクラックを有すると判定される。
【0042】
図4は、比較例に係る電子部品検査方法における測定工程を概略的に示す図である。本比較例においては、ネットワークアナライザ200の端子TM2に接続された配線経路LN2が、配線CB2およびプローブPB2を有している。また本比較例において検査される圧電素子190は、基部90と、電極91と、電極92とを有している。電極91および電極92の各々は、上面FC1および下面FC2の両方にわたって延びている。よって、測定のための電気的接続を確保する目的で、電極91および電極92のそれぞれにプローブPB1およびプローブPB2を上方から上面FC1で接触させることができる。このとき、圧電素子190の下面FC2は粘着シート390に粘着されている。粘着シート390の絶縁性が十分に高くないと、電極91と電極92との間の粘着シート390を介しての電気的接続が、電極91と電極92との間でのネットワークアナライザ200による測定を、大きく乱してしまう。よって、当該測定の観点において十分な程度に、粘着シート390は非導電性を有している必要がある。このように、本比較例の粘着シート390と、前述した実施の形態における導電性粘着シート310(
図1)とでは、導電性に求められる要件が反対である。また、そもそも本比較例においては圧電素子190が上面FC1に電極91および電極92の両方を有している必要があるので、本比較例の測定工程を圧電素子110(
図1)の測定に適用することはできない。
【0043】
本実施の形態によれば、第1に、圧電素子110の固定が導電性粘着シート310の粘着性を用いて行われる。これにより、ダメージを与えることなく安定的に圧電素子110を固定することができる。第2に、ネットワークアナライザ200の端子TM2が圧電素子110の電極12へ下面FC2で導電性粘着シート310を介して電気的に接続される。これにより、圧電素子110の電極11へのネットワークアナライザ200の電気的接続が容易となるように圧電素子110の上面FC1を向けつつ、圧電素子110の電極12への下面FC2での電気的接続は、導電性粘着シート310の導電性を用いて容易に確保することができる。以上から、大きなダメージなしに安定的に圧電素子110を固定しつつ、圧電素子110へネットワークアナライザ200を電気的に接続することによる圧電素子110の検査を容易に行うことができる。
【0044】
導電性粘着シート310はステージ400に支持されている。これにより、導電性粘着シート310だけでなくステージ400も、圧電素子110の電極12とネットワークアナライザ200の端子TM2との間の電気的経路として用いることができる。
【0045】
ネットワークアナライザ200の端子TM2は、導電性粘着シート310へステージ400を介して電気的に接続されている。これにより、ネットワークアナライザ200の端子TM2からの配線経路LN2を、導電性粘着シート310へではなく、ステージ400へと取り付けることができる。
【0046】
少なくともひとつの測定周波数での、電極12と端子TM2との間での導電性粘着シート310のインピーダンスの絶対値は、インピーダンスZ
C(
図3)よりも小さいことが好ましい。これにより、当該周波数においては、導電性粘着シート310のインピーダンスによって大きく妨げられることなく、圧電素子110のインピーダンスZ
Cを測定することができる。特に、反共振周波数f
AでのインピーダンスZ
Cのピーク値が圧電素子110の評価に用いられることになる場合、反共振周波数f
Aにおいて、導電性粘着シート310のインピーダンスの絶対値は、インピーダンスZ
Cよりも小さいことが好ましい。よってその場合は、前述したように、インピーダンスZ
SH(
図3)ではなくインピーダンスZ
SL(
図3)を有する導電性粘着シート310が用いられることが好ましい。
【0047】
少なくともひとつの測定周波数は、1MHz以上の周波数を含むことが好ましい。これにより、十分に高周波での検査を行うことができる。
【0048】
圧電素子110は部分的に圧電体からなる。これにより、ネットワークアナライザ200からの電圧印加による圧電素子110の機械的共振を、圧電素子110の検査に利用することができる。圧電素子110の機械的共振が着目される際には、多くの場合において、上述したように、少なくともひとつの測定周波数が1MHz以上の周波数を含む必要がある。特に、圧電素子110のサイズが小さいほど、より高い周波数での測定が必要である。
【0049】
少なくともひとつの測定周波数は、本実施の形態においては、圧電素子110の最大外形寸法に対応した反共振周波数fAを含む。これにより、できるだけ低い測定周波数を用いつつ、圧電素子110の機械的共振を圧電素子110の検査に利用することができる。具体的には、機械的共振を用いて圧電素子110の機械的欠陥を評価することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態においては、電子部品が圧電素子110である場合について詳述したが、電子部品は圧電素子に限定されるものではなく、非圧電素子であってもよい。非圧電素子は、圧電現象を積極的に利用しない素子であり、例えばキャパシタである。非圧電素子は、部分的に圧電体からなっていてよく、あるいは、非圧電体のみからなっていてよい。よって、電子部品は、必ずしも部分的に圧電体からなる必要はない。電子部品としての非圧電素子が部分的に圧電体からなる場合、上記実施の形態と同様、圧電現象に関連した測定を行うことが可能であり、具体的には、電子部品の最大外形寸法に対応した反共振周波数でのインピーダンスに基づいて機械的欠陥を評価することが可能である。例えば、キャパシタの誘電体材料が圧電性を有している場合、そのような評価が可能である。また、電子部品が部分的に圧電体からなるか否かを問わず、当該電子部品が電気的共振周波数を有する場合において、少なくともひとつの測定周波数が当該電気的共振周波数を含んでいれば、電子部品の検査に電子部品の電気的共振を利用することができる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、測定器がネットワークアナライザ200である場合について詳述したが、測定器はネットワークアナライザに限定されるものではなく、例えば、LCRメータであってもよい。LCRメータにより、電子部品のインダクタンス、キャパシタンスおよび抵抗の少なくともいずれかを測定することができる。測定の用途によっては、測定周波数は1MHz未満であってよく、例えば、キャパシタンスの測定には、しばしば1kHz程度の周波数が用いられる。また測定周波数はゼロであってもよく、周波数ゼロは直流を意味する。
【符号の説明】
【0052】
10 :基部
11 :第1電極
12 :第2電極
110 :圧電素子(電子部品)
200 :ネットワークアナライザ(測定器)
310 :導電性粘着シート
400 :ステージ(金属部材)
PB1 :プローブ
TM1 :第1端子
TM2 :第2端子