IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ エー・エス・ピー・インクの特許一覧

特許7591647骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム
<>
  • 特許-骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム 図1
  • 特許-骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム 図2
  • 特許-骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム 図3
  • 特許-骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】骨盤拘束チャンバを備えたシート中心エアバッグシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20241121BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023513158
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021051600
(87)【国際公開番号】W WO2022066804
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】17/030,147
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、デイヴィッド ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ハリー
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/141737(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107073(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/198632(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0161050(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077359(US,A1)
【文献】特開2017-178147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328294(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054890(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0326938(US,A1)
【文献】国際公開第2020/130427(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2096850(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/2338
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート搭載型エアバッグアセンブリ[100]であって、車両シートの第1の側から展開するように構成された第1の側部クッション[110A]と、前記第1の側とは反対側の前記車両シートの第2の側から展開するように構成された第2の側部クッション[110B]と、を備える、シート搭載型エアバッグアセンブリ[100]において、
前記車両シートの前記第1の側から展開するように構成された第1の骨盤拘束クッション[120A]であって、前記第1の側部クッション[110A]と動作可能に連結され、かつ、車両乗員の第1の大腿上部及び/又は骨盤領域と係合することによって、車両内での前記車両乗員の前方への並進を阻止するように構成されている第1の骨盤拘束クッション[120A]と、
前記第1の骨盤拘束クッション[120A]と前記第1の側部クッション[110A]との間に連結された第1の外部テザー[115]と、
前記車両シートの前記第2の側から展開するように構成された第2の骨盤拘束クッション[120B]であって、前記第2の側部クッション[110B]と動作可能に連結され、かつ、前記車両乗員の第2の大腿上部及び/又は骨盤領域と係合することによって、前記車両内での前記車両乗員の前方への並進を阻止するように構成されている、第2の骨盤拘束クッション[120B]と、
前記第2の骨盤拘束クッション[120B]と前記第2の側部クッション[110B]との間に連結された第2の外部テザー[115]と、
をさらに備えることを特徴とする、シート搭載型エアバッグアセンブリ[100]。
【請求項2】
前記第1の骨盤拘束クッション[120A]が、前記第1の側部クッション[110A]に対してある角度で展開するように構成されている、請求項1に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の骨盤拘束クッション[120B]が、前記第2の側部クッション[110B]に対してある角度で展開するように構成されてる、請求項1または2に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項4】
骨盤拘束クッションを側部クッションに対して角度付けするための手段をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項5】
角度付けするための前記手段は、前記第1の骨盤拘束クッション及び第2の骨盤拘束クッション[120]と前記第1の側部クッション及び第2の側部クッション[110]とを接合する領域[112]に沿って形成された内部テザー及び1つ以上のプリーツのうちの少なくとも1つを備える、請求項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項6】
前記第1の骨盤拘束クッション[120A]は、前記第1の側部クッション[110A]と流体的に連結されている、請求項1~のいずれか一項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の外部テザー[115]は、前記第1の側部クッション[110A]に対してある角度で前記第1の骨盤拘束クッション[120A]の展開を方向付けるように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項8】
前記第1の側部クッション[110A]と連結され、前記第1の側部クッション[110A]の外側/後方部分の周りに延びていて、展開中に前記第1の側部クッション[110A]に張力をかけるように構成された第1のベルト[114A]をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【請求項9】
前記第1の側部クッション[110A]と連結され、前記第1の側部クッション[110A]の内側/前方部分の周りに延びていて、展開中に前記第1の側部クッション[110A]に張力をかけるように構成された第2のベルト[116A]をさらに備える、請求項に記載のシート搭載型エアバッグアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
多くの車両環境は、例えば、ニーボルスター及び/又はトーパンによって提供され得る十分な骨盤拘束を欠いている。自律型車両又は高度自動運転(HAD)車両などの高度な自律的機能を有する車両は、特に、骨盤拘束が弱い傾向がある。したがって、そのような車両用に設計されたいくつかの拘束/安全システムは、特に乗員を拘束する傾向があり得る。
【0002】
例えば、いくつかのシステムは、ステアリングホイール又は隣接する車両パネルからではなく、シート自体からエアバッグクッションを展開する。そのようなシステムは、「ラップアラウンドベルト」として知られるベルトを展開して、膨張中にエアバッグを乗員に隣接して保持するための反作用面を提供することができる。しかしながら、そのようなシステムは、特に乗員が一般的なシートベルトによってシートに拘束されていない場合、正面衝突などの特定の衝突事象中に乗員の骨盤が前方に移動することを許容する傾向があることが多い。このことは、膨張中に乗員の骨盤領域を十分に拘束できないためである。
【0003】
したがって、本発明者らは、前述の制限及び/又は先行技術の他の制限のうちの1つ以上を克服する装置、システム、及び方法を提供することが望ましいと判断した。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される発明概念は、シート搭載型エアバッグクッションシステムにしばしば欠けている骨盤拘束を提供するように特に構成されたクッションを提供し得る。いくつかの実施形態では、この拘束は、1つ以上の骨盤拘束チャンバによって提供されてもよく、骨盤拘束チャンバは、いくつかの実施形態では、車両乗員の胸部の両側で膨張するように構成されたエアバッグクッションの一次チャンバと流体的に連結されてもよい。
【0004】
シート搭載型エアバッグアセンブリのより具体的な例では、アセンブリは、車両シートの第1の側から展開するように構成された第1の側部クッションを備えてもよい。アセンブリは、第1の側部クッションと連結され、展開中に第1の側部クッションに張力をかけるように構成された、第1のベルトをさらに備えてもよい。アセンブリは、第2の側部クッションと連結され、展開中に第2の側部クッションに張力をかけるように構成された第2のベルトと共に、第1の側とは反対側の車両シートの第2の側から展開するように構成された第2の側部クッションをさらに備えてもよい。アセンブリは、車両乗員の大腿上部及び/又は骨盤領域のうちの少なくとも1つと係合することによって、車両内の車両乗員の前方への並進を阻止するように構成された、1つ以上の骨盤拘束膨張チャンバをさらに備えてもよい。好ましい実施形態では、2つの骨盤拘束膨張チャンバがあり、1つは乗員の上腿の各々に接触するように構成されている。
【0005】
いくつかの実施形態では、骨盤拘束膨張チャンバは、車両シート内の乗員の大腿上部/骨盤領域とエアバッグクッションの一次膨張チャンバとの間で膨張するように構成されてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、骨盤拘束チャンバは、第1の側部クッション及び第2の側部クッションのうちの少なくとも1つと流体的に連結されてもよく、そうでない場合は動作可能に連結されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態は、内部及び/若しくは外部テザー又はプリーツなどの、所望の膨張特性を促進するように構成された、1つ以上の特徴をさらに備えてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の外部テザーが、骨盤拘束膨張チャンバと、第1の側部クッション及び第2の側部クッションのうちの少なくとも1つとの間に連結されてもよく、それにより、骨盤拘束チャンバ(単数又は複数)が、乗員の大腿上部に沿ってなど、所望の角度で一次チャンバ(単数又は複数)から延びることができる。いくつかのそのような実施形態では、外部テザーは、第1の側部クッション及び第2の側部クッションのうちの少なくとも1つに対してある角度で骨盤拘束膨張チャンバの展開を方向付けるように構成されてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態は、骨盤拘束膨張チャンバと、第1の側部クッション及び第2の側部クッションのうちの少なくとも1つとの間に連結された内部テザーをさらに備えてもよい。内部テザーは、第1の側部クッション及び第2の側部クッションのうちの少なくとも1つに対して、ある角度で骨盤拘束膨張チャンバの展開を方向付けるように構成されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態は、所望に応じて、骨盤拘束膨張チャンバの屈曲をさらに促進し得る、プリーツのある領域をさらに備えてもよい。例えば、側方チャンバと骨盤拘束チャンバとの間にある角度を提供するために、一方の側の長さを縮小させるように、特定の位置でギャザー付き布地を共に縫い合わせることができる。
【0010】
いくつかの実施形態は、第2の骨盤拘束膨張チャンバをさらに備えてもよく、骨盤拘束膨張チャンバは、車両乗員の第1の大腿上部に対して展開するように構成され、第2の骨盤拘束膨張チャンバは、車両乗員の第2の大腿上部に対して展開するように構成されている。
【0011】
他の実施形態によるシート搭載型エアバッグアセンブリの一例では、このアセンブリは、車両シートの第1の側から展開するように構成された第1の側部クッションと、第1の側とは反対側の車両シートの第2の側から展開するように構成された第2の側部クッションとを備えてもよい。アセンブリは、車両シートの第1の側から展開するように構成された第1の骨盤拘束クッションをさらに備えてもよく、第1の骨盤拘束クッションは、第1の側部クッションと動作可能に連結され、車両乗員の第1の大腿上部及び/又は骨盤領域と係合することによって、車両内の車両乗員の前方への並進を阻止するように構成されている。アセンブリは、車両シートの第2の側から展開するように構成された第2の骨盤拘束クッションをさらに備えてもよく、第2の骨盤拘束クッションは、第2の側部クッションと動作可能に連結され、車両乗員の第2の大腿上部及び/又は骨盤領域と係合することによって、車両内での車両乗員の前方への並進を阻止するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の骨盤拘束クッションは、第1の側部クッションに対してある角度で展開するように構成されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の骨盤拘束クッションは、第1の側部クッションの膨張チャンバを備えてもよい。第2の骨盤拘束クッションはまた、第2の側部クッションに対してある角度で展開するように構成されてもよく、及び/又は第2の側部クッションの膨張チャンバを備えてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態は、第1の骨盤拘束クッション及び第2の骨盤拘束クッションと第1の側面クッション及び第2の側部クッションとを接合する領域に沿って形成されたプリーツのあるエルボー若しくは他のプリーツのある領域、1つ以上の外部テザー、並びに/又は1つ以上の内部テザーなどの、側部クッションに対して骨盤拘束クッションを角度付けするための手段をさらに備えてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態は、例えば、第1の骨盤拘束クッションと第1の側部クッションとの間に連結された第1のテザー又は一組のテザーと、第2の骨盤拘束クッションと第2の側部クッションとの間に連結された第2のテザー又は一組のテザーとを備えてもよい。
【0016】
いくつかの実装形態による、衝突事象中の車両乗員の前方への並進を抑制するための方法の一例では、この方法は、車両乗員の第1の側に沿って第1のシート搭載型エアバッグクッションを展開することと、車両乗員の第2の側に沿って第2のシート搭載型エアバッグクッションを展開することと、を含むことができる。第1の骨盤拘束チャンバは、第1のシート搭載型エアバッグクッションの下に、第1のシート搭載型エアバッグクッションに対してある角度で、かつ車両乗員の第1の大腿上部に向かって展開されてもよい。第1の骨盤拘束チャンバは、展開中に車両シート内の車両乗員の前方への並進を阻止することができる。
【0017】
いくつかの実装形態は、第2の骨盤拘束チャンバを、第2のシート搭載型エアバッグクッションの下に、第2のシート搭載型エアバッグクッションに対してある角度で、かつ車両乗員の第2の大腿上部に向かって展開することをさらに含んでもよい。
【0018】
いくつかの実装形態では、第1の骨盤拘束チャンバ及び第2の骨盤拘束チャンバは、互いに向かって、及び/又は車両乗員の各々の大腿に向かって展開してもよい。
【0019】
いくつかの実装形態では、単一のインフレータを使用して、第1のシート搭載型エアバッグクッション及び第1の骨盤拘束チャンバの両方を膨張させてもよい。
【0020】
いくつかの実装形態では、第1のシート搭載型エアバッグクッションを展開する工程及び/又は第2のシート搭載型エアバッグクッションを展開する工程は、第1の骨盤拘束チャンバを展開する前に実行されてもよい。例えば、いくつかの実装形態では、シート搭載型エアバッグクッションの一方又は両方は、展開/膨張してもよく、その展開/膨張は、その後の膨張段階として、骨盤拘束チャンバの一方又は両方を膨張させてもよい。
【0021】
一実施形態に関連して本明細書に開示される特徴、構造、工程、又は特性は、1つ以上の代替実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面を参照して、本開示の様々な実施形態を含む、本開示の非限定的かつ非網羅的な実施形態が記載される。
【0023】
図1】いくつかの実施形態による、骨盤拘束を有するシート搭載型エアバッグクッションシステムの側面図である。
図2】展開前のシート搭載型エアバッグクッションシステムの正面図である。
図3】展開後のシート搭載型エアバッグクッションシステムの正面図である。
図4】展開後のシート搭載型エアバッグクッションシステムの側面図であり、膨張前及び膨張後の骨盤チャンバを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の様々な実施形態と一致する装置、システム、及び方法の詳細な説明を以下に提供する。いくつかの実施形態について説明するが、本開示は、開示される特定の実施形態のいずれかに限定されるものではなく、代わりに多数の代替形態、修正形態、及び均等物を包含することを理解されたい。加えて、本明細書に開示される実施形態の完全な理解を提供するために、以下の説明において多数の具体的な詳細が記載されているが、いくつかの実施形態は、これらの詳細の一部又は全てを伴わずに実施することができる。更に、明確にする目的で、本開示を不必要に不明瞭にすることを回避するために、関連技術分野において既知の特定の技術資料について詳細に説明していない。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に」は、示されるように機能する動作、特性、属性、状態、構造、項目、若しくは結果の完全若しくはほぼ完全な程度又は度合いを指す。例えば、「実質的に」円筒形又は「実質的に」垂直である物体は、物体/特徴が、同じ又はほぼ同じ機能をもたらすように、円筒形/垂直又はほぼ円筒形/垂直のいずれかであることを意味する。この用語によって提供される正確な許容される偏差の程度は、特定の文脈に依存し得る。「実質的に」の使用は、動作、特性、属性、状態、構造、項目、若しくは結果の完全な又はほぼ完全な欠如を指すために、負の含意で使用される場合に等しく適用可能である。例えば、底部を「実質的に含まない」構造は、底部を完全に欠いている、又はその効果が底部を完全に欠いていた場合と実質上同じであるように、底部をほぼ完全に欠いているかのいずれかである。
【0026】
同様に、本明細書で使用するとき、用語「約」は、所与の値が、範囲に関連付けられた機能を依然として達成しながら、端点の「わずか上」又は「わずか下」であり得ることを提供することによって、数値範囲の端点に柔軟性を提供するために使用される。
【0027】
本開示の実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解することができ、同様の部分は、同様の数字によって指定される場合がある。開示される実施形態の構成要素は、本明細書の図面に概ね記載及び例示されるように、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることが容易に理解されるであろう。したがって、本開示の装置及び方法の実施形態の以下の詳細な説明は、特許請求されるように、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に本開示の可能な実施形態を表すものである。加えて、特に指定しない限り、方法の工程は、必ずしも、任意の特定の順序で実行される必要はなく、又は更には連続的に実行される必要はなく、また工程は1回のみ実行される必要もない。特定の好ましい実施形態及び実装形態に関する更なる詳細は、ここで添付図面を参照してより詳細に説明される。
【0028】
図1は、いくつかの実施形態によるシート中心エアバッグシステム100を示す。特定の好ましい実施形態では、システム100は、ニーボルスター及び/又はトーパンによる拘束などの効果的な骨盤拘束がない車両環境で使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、システム100は、自律型又は高度自動運転(HAD)車両に設置されてもよい。
【0029】
システム100は、図1に示すように、車両乗員10用の車両シート15から、又は車両シート15に隣接する位置から、例えば車両シート15の後ろから展開されるように構成された一対のエアバッグクッションを備える。これらのクッションの各々は、一次チャンバ110及び、二次チャンバ又は骨盤チャンバ120を備える。好ましくは、一次チャンバ110及び骨盤チャンバ120は、それらが共に展開し、単一のインフレータを使用して膨張し得るように、互いに流体的に連結されている。
【0030】
図2は、展開前の車両シート15及びシート中心エアバッグシステム100の正面図を示す。この図に想像線で示すように、システム100は、シート15及び乗員10の両側から展開するように構成されたクッションを備えることができる。より詳細には、第1の一次チャンバ110Aは、乗員10及びシート15の第1の側に沿って延びており、第2の一次チャンバ110Bは、第1の側とは反対側の、乗員10及びシート15の第2の側に沿って延びている。両方のクッションは、一次チャンバと流体的に連結された二次チャンバ又は骨盤チャンバをさらに備える。したがって、二次/骨盤チャンバ120Aは、一次チャンバ110Aの遠位端/下端から延びており、二次/骨盤チャンバ120Bは、二次/骨盤チャンバ110Bの遠位端/下端から延びている。
【0031】
図2に示されるように、特定の衝突事象(例えば、特に正面衝突事象)中に乗員10が前方にスライドしてシート15から外れる可能性を防止又は少なくとも阻止するように、適切な方向に膨張して、好ましくは膨張中に骨盤拘束を提供することを確実にするために、二次/骨盤チャンバ120A/120Bは、展開前の初期位置において、乗員中心線に向かって乗員10に対して上方及び内方に折り畳まれ得る。
【0032】
乗員の大腿上部及び/又は骨盤領域に対して展開することによって前述の拘束を提供するために、二次/骨盤チャンバ120が適切な方法で展開することを確実にするように、様々な特徴が提供され得る。例えば、図3に示されるものを含むいくつかの実施形態では、外部テザー115は、アセンブリの各一次と二次/骨盤拘束チャンバとの間に提供され得る。したがって、テザー115は、二次/骨盤チャンバ120A及び120Bの遠位端の各々との間に連結され、関連付けられた一次チャンバ110A/110Bの一部分まで延びている。好ましくは、これらのテザー115は、各二次/骨盤チャンバ120が乗員10の上腿及び骨盤領域に隣接して展開することを確実にするために、一次チャンバ110と隣接する二次/骨盤チャンバ120との間の所望の角度を維持するのに十分な長さである。
【0033】
いくつかの実施形態では、テザー115を使用することに加えて、又はテザー115の使用に代わる可能性として、タック/裂け目縫合などが使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態及び実装形態では、二次/骨盤チャンバ120の各々は、各二次/骨盤チャンバ120の遠位端/下端が一次チャンバ110の上端に向かって部分的に後方に延びるように、対応する一次チャンバ110に対して折り畳まれていてもよい。いくつかの実施形態では、この屈曲は、隣接する乗員10の骨盤領域に、又は骨盤領域の周囲に位置付けられてもよい。
【0034】
二次チャンバをエアバッグクッションの一次チャンバから離れるように角度付けるための手段、並びに/又は、骨盤拘束を提供するため、かつ/若しくは、反動/二次エアバッグに連結された一次チャンバの膨張に対して二次エアバッグ反作用面を提供するために、隣接するシート乗員の上腿/大腿骨及び/若しくは骨盤領域に対して展開する反動チャンバを提供するための手段の別の例として、いくつかの実施形態では、プリーツ及び/又は内部テザーが、一次チャンバ110と二次チャンバ120との間に形成されたエルボー又は屈曲領域112に沿って形成されてもよい。
【0035】
したがって、例えば、図2に示されるように、屈曲領域112Aは、一次チャンバ110Aと二次チャンバ120Aとの間に形成され、同様の屈曲領域112Bは、反対側の一次チャンバ110Bと二次チャンバ120Bとの間に形成される。これは、特に乗員10がシートベルトを着用していない場合、膨張中に乗員10の骨盤領域及び/又は大腿上部に対して展開して強化された拘束を提供することを可能にし得る屈曲を作り出すことができる。屈曲領域112A及び112Bはまた、あるいは代替として、所望の屈曲を提供し、乗員の上腿及び/又は骨盤領域に対する適切な展開及び拘束を確実にするために、1つ以上の内部テザーを含んでもよい。
【0036】
図3に示すように、展開中、一次チャンバ110A及び110Bは、隣接する乗員10の胸部の両側に沿って展開する。隣接するエアバッグクッションが胸部領域において十分な張力を有することを確実にするために、ラップアラウンドベルト114及び116を使用して反作用面を提供してもよい。本明細書に開示される実施形態のうちの1つ以上において使用され得るラップアラウンドベルトの例は、「Vehicle Occupant Restraint Device」と題する米国特許出願公開第2017/0259774号明細書に見出すことができ、その全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0037】
より詳細には、乗員10及びシート15の中心線の両側に、システム100の一次チャンバ110A/110Bの展開を容易にするための一対のベルトがある。したがって、乗員10の右側では(図の視点から)、後方/下部ベルト114Aがクッション110Aの外側/後方部分の周りに延びており、前方/上部ベルト116Aがクッション110Aの内側/前方部分の周りに延びている。同様に、乗員10の反対側には、乗員10と隣接するクッション110Bとの間に張力を与えるための表面を維持するために、別の対のベルト、すなわち別の後方/下部ベルト114B及び別の前方/上部ベルト116Bが設けられている。
【0038】
ベルト114A/116A及び114B/116Bは、それぞれ、シート15の上部後方部分及び下部側方部分の反対端に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、両側のベルトは両方とも、シート15上の同じ場所又は隣接する場所に取り付けられてもよい。このベルトは、上部及び/又は下部に引き込み可能に取り付けられてもよく、適切な展開を可能にするのに十分な長さを提供するが、更なる引き込みを阻止して隣接するクッション110A/110Bに対する張力を維持することを確実にするために、様々なプリテンショナ、負荷リミッタなどを含んでもよい。さらに、ベルト114/116のいずれかは、適切な展開を確実にするために、各々のクッション110の一部分に連結され得ることを理解されたい。この連結は、剛性であってもよいし、布地又はウェビングループ、摺動可能なクリップなどによる摺動可能な連結によって行われてもよい。
【0039】
しかしながら、乗員10と一次チャンバ110A/110Bとの間、より具体的には、乗員10の大腿上部/骨盤領域と隣接する一次チャンバ110A/110Bとの間に反作用面を提供するために、二次/骨盤チャンバ120A/120Bは、好ましくは下方及び後方に展開して、乗員10に対する骨盤拘束を向上させる。好ましい実施形態では、膨張の初期段階は、一次チャンバ110A及び110Bの膨張をもたらし、その後、二次/骨盤チャンバ120A及び120Bは、それらの初期位置から下方に回転する。二次/骨盤チャンバ120A及び120Bの各々は、膨張前には、その対応する一次チャンバに対して折り畳まれていてもよい。
【0040】
2つの二次/骨盤チャンバ120A/120Bが、両方とも概ね互いに向かって、かつ、乗員10の大腿上部/骨盤領域に対して下方に膨張する間、テザー115は、二次/骨盤チャンバ120A/120Bの過回転を防止し、各々の一般的な膨張方向へ誘導する。
【0041】
図4は、展開後のエアバッグシステム100の側面斜視図である。この図の想像部分に示されるように、膨張前に、骨盤チャンバ120A′は、内側/インボード側及び外側/アウトボード側(図4には片側のみが示される)の両方において、乗員10の大腿及び骨盤領域に対して配置されている。展開後の骨盤チャンバ120Aも示されており、この骨盤チャンバは、乗員の骨盤領域に接触して張力及び反作用面を提供し、乗員が2つの一次チャンバ110間で前方にスライドしないようにしている。また、図4に示されるように、テザー115は、一次チャンバ110Aと骨盤チャンバ120Aとの間に延びている。この図には示されていないが、他の骨盤チャンバの展開を誘導するために、同様のテザーが反対側に存在してもよい。
【0042】
前述の明細書は、様々な実施形態及び実装形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、様々な動作工程、並びに動作工程を実行するための構成要素は、特定の用途に応じて、又はシステムの動作に関連付けられた任意の数の費用関数を考慮して、様々な方法で実装されてもよい。したがって、工程のうちの任意の1つ以上は、削除、修正、又は他の工程と組み合わせることができる。更に、本開示は、限定的な意味ではなく例示的なものと見なされるべきであり、そのような全ての修正は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。同様に、様々な実施形態に関して、利益、他の利点、及び問題に対する解決策が上述されてきた。しかしながら、利益、利点、問題に対する解決策、及び任意の利益、利点、若しくは解決策を生じさせる、又はより顕著にさせることができる任意の要素(単数又は複数)は、重要な、必要な、若しくは必須の特徴又は要素として解釈されるべきではない。
【0043】
当業者は、本発明の基本原理から逸脱することなく、上述の実施形態の詳細に多くの変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4