(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】摩擦撹拌接合ツールインサート
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B23K20/12 344
(21)【出願番号】P 2023513410
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2021074114
(87)【国際公開番号】W WO2022049113
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-24
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ サントーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンデシン スティグ オーケ
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0169747(US,A1)
【文献】特開2006-212657(JP,A)
【文献】特表2003-532542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076957(US,A1)
【文献】国際公開第2016/163214(WO,A1)
【文献】特開2013-031863(JP,A)
【文献】国際公開第2010/074165(WO,A1)
【文献】特開2008-036664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向回転軸を有する摩擦撹拌接合(FSW)ツールインサートであって、撹拌ピン及び撹拌ピンの周りに同軸に取り付けられた環状ショルダーを含み、前記撹拌ピン及び前記環状ショルダーがそれぞれ、多結晶立方晶窒化ホウ素を含み、前記環状ショルダーが、1~12mmの厚さを有する薄いディスクであり、前記ショルダーが、テーパーのついた中央開口部を含み、それを通して前記撹拌ピンが突出する、FSWツールインサート。
【請求項2】
前記ディスクが、2~12mmの厚さを有する、請求項1に記載のFSWツールインサート。
【請求項3】
前記ショルダーが、炭化物支持体を有する、請求項1又は2に記載のFSWツールインサート。
【請求項4】
前記ショルダーが、いかなる支持体によっても裏打ちされない、請求項1又は2に記載のFSWツールインサート。
【請求項5】
前記ショルダーが、上側平表面上に少なくとも1種のらせん状外形を含む、請求項1~4のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項6】
前記ショルダーが、4.5mm~75mmの外半径を有する、請求項1~5のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項7】
前記ショルダーが、フランジを更に含む、請求項1~6のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項8】
前記撹拌ピンが、境界域で第2のピン部から離れて先端方向に延びる円錐形の第1のピン部を含む、請求項1~7のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項9】
前記撹拌ピンが、第1のピン部及び/又は第2のピン部中又はそれらの上に設けられた地形学的形状を誘導する撹拌を更に含み、前記撹拌が誘導する地形学的形状が、らせん状及び/又は平坦状である、請求項8に記載のFSWツールインサート。
【請求項10】
前記第2のピン部が、境界域に近接したウエスト部を含み、前記ウエスト部が、中間部に延び、前記中間部が、基部に延び、前記ウエスト部は円錐台であり、前記中間部は円筒であり、前記基部は円錐台であり、これらは全て端と端で相互に当接して積層され、且つ一体形成される、請求項8又は9に記載のFSWツールインサート。
【請求項11】
前記第2のピン部が、最大50mmの外径を有する、請求項8~10のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項12】
前記第2のピン部が、25mm~50mmの外径を有する、請求項8~11のいずれかに記載のFSWツールインサート。
【請求項13】
ツールホルダー及び請求項1~12のいずれかに記載のFSWツールインサートを含むツール組立体であって、前記ツールホルダーが、前記ツールインサートを受ける保持部材、及び細長い前記保持部材に結合した本体部材を含む、ツール組立体。
【請求項14】
前記保持部材が、前記ツールインサートを受けるために、凹型のカップを含む、請求項13に記載のツール組立体。
【請求項15】
前記保持部材が、前記凹型のカップ内の撹拌ピンの前記基部のみを受けるように構成される、請求項10に従属する、請求項
14に記載のツール組立体。
【請求項16】
前記ショルダーの下側平表面が、組立てられた状態で前記ツールホルダーに当接する、請求項13~15のいずれか1項に記載のツール組立体。
【請求項17】
前記ショルダーの内側環状表面が、組立てられた状態で前記撹拌ピンのウエスト部に当接する、請求項10~12に従属する、請求項13~16のいずれかに記載のツール組立体。
【請求項18】
前記ツールホルダーが、ニッケル系合金を含む、請求項13~17のいずれかに記載のツール組立体。
【請求項19】
前記ショルダー及び前記ツールホルダーの周りに取り付けられた止めナットを更に含む、請求項13~18のいずれかに記載のツール組立体。
【請求項20】
前記ショルダーと前記ツールホルダーとの間の相対回転を防ぐために、協調動作する一連の係止部品を更に含む、請求項13~19のいずれかに記載のツール組立体。
【請求項21】
複数セットの協調動作する係止部品を含む、請求項20に記載のツール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撹拌ピン及びショルダーを含む、二部品の摩擦撹拌接合(FSW)ツールインサートに関する。本開示は更に、ツールホルダー及びツールインサートを含むツール組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合(FSW)は、回転ツールを、結合される2つの隣接する被加工物と強制的に接触させ、ツールの回転により被加工物の摩擦及び粘性加熱を発生させる。混合により塑性域に沿って広範な変形が起こる。塑性域の冷却時に、被加工物は溶接継手に沿って結合される。被加工物は固相のままであるので、この工程は、技術的には溶接工程ではなく鍛造工程であり、慣例により溶接又は摩擦撹拌接合と呼ばれるため、ここではその慣習に従っている。
【0003】
低温金属のFSWの場合、ツール/ツールホルダー全体が形状工具鋼の一体成形品であり得、この場合「プローブ」と呼ばれる場合が多い。対照的に、ツールが鋼などのより高い温度の合金の溶接用の場合には、ツールは2つ以上の部品からなることが多い。ツールは、溶接される材料と直接接触する末端要素は多くの場合「パック」又は「ツールインサート」とよばれ、ツールの残りの部分は「ツールホルダー」と呼ばれる。ツールホルダーは、パックを確実に保持し、FSW装置に装着する。ツールパック及びツールホルダーは一緒に、「ツール」又は「ツール組立体」を構成する。ツールパックは通常、ショルダー及び撹拌ピンを形成する形状になっており、多くの場合撹拌ピンの表面に逆らせん状の切り込みを有し、それにより回転中に金属をピンの方向に引っ張り、その金属をピンにより形成されている孔の中に押し込む。
【0004】
ピンの長さは通常、目的の溶接の深さの95%、例えば、6mm厚さの鋼のルート欠陥のない全層突合わせ溶接では、ピン長さは5.7mmである。FSW操作での主要課題の1つは、厚さが12mmを超える板状被加工物の溶接である。板の厚さが増大すると、必要とされるピン長さを得るのが困難になる場合がある。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0169747号は、シャンク部、シャンク部分と取り外し可能に係合可能なショルダー部分、及びシャンク部分と取り外し可能に係合可能なピンを有する摩擦撹拌接合ツールを開示している。シャンク部分11、ショルダー部分50及びピン90は、タングステン、モリブデン、レニウム及びそれらの合金などの高温耐熱金属を含む群から選択される金属又は金属合金、窒化ホウ素及び関連化合物などのセラミックス;ならびにタングステン及びそれらの関連炭化物から作製される。その中に記載の作製物の欠点は、FSWツールを製造するのに大量の材料が必要である一方で、コストの最小化及び寿命の最大化が必要なことである。
【0006】
出願者の同時係属出願GB1917907.6に記載のものなどの多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)から作成されるツールパックは、比較的経済性に優れ、耐久性が高い。しかし、このようなPCBNパックの製造工程の制約は、パックが作製される大きな塊状のPCBN部品が必要であることである。12mmピン高さのパックを作製するために、単一結晶からなるPCBNブロックは直径50mm、高さ50mmもの大きさにする必要があり、これにより、12mmの板厚さを溶接することになる。これより大きい単一結晶からなるPCBNブロック(従って、PCBNパック)は、PCBN焼結工程中に使用される高圧高温(HPHT)プレスの制限に起因して、現時点では、実施可能ではない。より大きなプレスは、材料の均一性を損なう可能性がある。手短に言えば、現状で実際に到達可能なPCBNパックのサイズは、12mm未満の厚さを有する板を溶接できる程度に制限される。
【0007】
12mmより大きい板厚を溶接できるFSWパックを提供することは本発明の1つの目的である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様では、長手方向回転軸を有する摩擦撹拌接合(FSW)ツールインサートが提供され、前記ツールインサートは、撹拌ピン及び撹拌ピンの周りに同軸に取り付けられた環状ショルダーを含み、撹拌ピン及び環状ショルダーはそれぞれ、多結晶立方晶窒化ホウ素を含み、環状ショルダーは、1~12mmの厚さを有する薄いディスクであり、ショルダーは、テーパーのついた中央開口部を含み、それを通して撹拌ピンが突出する。
場合により、ディスクは、2~12mmの厚さを有する。好ましくはディスクの厚さは、3~12mmである。より好ましくは、ディスクの厚さは、4~12mmである。
【0009】
ショルダーは、炭化物の支持体を含み得る。あるいは、ショルダーは裏打ち、すなわち支持体が無くてもよい。
好ましくは、ショルダーは、上側平表面上に少なくとも1種のらせん状外形を含み、上側表面は、撹拌ピンに近接している。
場合により、ショルダーは、4.5mm~75mmの外半径を有する。
場合により、ショルダーはフランジを更に含む。
好ましくは、撹拌ピンは、境界域で第2のピン部から離れて先端方向に延びる円錐形の第1のピン部を含む。
【0010】
場合により、撹拌ピンは、第1のピン部及び/又は第2のピン部中又はそれらの上に設けられた地形学的形状を誘導する撹拌を更に含む。好ましくは地形学的形状を誘導する撹拌は、らせん状及び/又は平坦状である。
場合により、第2のピン部は、外向きにテーパーをつけた境界域に近接したウエスト部を含み、ウエスト部は、外向きにテーパーをつけた中間部に延び、中間部は、内向きにテーパーをつけた基部に延びる。
場合により、第2のピン部は、最大50mmの外径を有する。場合により、第2のピン部は、25mm~50mmの外径を有する。
【0011】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様によるツールホルダー及びFSWツールインサートを含むツール組立体が提供され、ツールホルダーは、ツールインサートを受ける保持部材、及び保持部材に結合した細長い本体部材を含む。
場合により、保持部材は、ツールインサートを受けるために凹型のカップを含む。
場合により、保持部材は、凹型のカップ内の撹拌ピンの基部のみを受けるように構成される。
場合により、ショルダーの下側平表面は、組立てられた状態でツールホルダーに当接する。
場合により、ショルダーの内側環状表面は、組立てられた状態で撹拌ピンのウエスト部に当接する。
好ましくは、ツールホルダーは、ニッケル系合金を含む。好ましくは、ニッケル系合金は、ニモニック(登録商標)80A合金又は類似品である。ニモニック(登録商標)80A合金は、ニッケル-クロム系合金であり、チタン、アルミニウム及び炭素の添加物を含む。
場合により、ツールホルダーは、ショルダー及びツールホルダーの周りに取り付けられた止めナットを更に含む。
場合により、ショルダーとツールホルダーの間の相対回転を防止するために協調動作する一連の係止部品を更に含む。場合により、ツールホルダーは、複数セットの協調動作する係止部品を含むのが好ましい。
本発明は以降で、添付の図面を参照しながら、例示の目的のみでより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】先行技術の摩擦撹拌接合ツールの部分的側面図を示す。
【
図2】
図1のツール、ツールホルダー及びツールホルダーにツールを固定する締付けカラーを含む先行技術のツール組立体の側面図を示す。
【
図3】本発明によるツールインサートの斜視図を示し、ツールインサートは、撹拌ピン及びショルダーを含む。
【
図12】
図3のツールインサートと連結するためのツールホルダーの斜視図を示す。
【
図15】
図3のツールインサート及び
図12のツールホルダーを含むツール組立体の斜視図を示す。
【
図18】
図17の切断面C-Cを通るツール組立体の断面図を示す。
【
図19】
図17の切断面C-Cを通り、ツールホルダーの周りに取り付けられた止めナットを有するツール組立体の断面図を示す。
【
図20】別のツールホルダー、特に、協調動作する係止部品の第1の実施形態の平面図を示す。
【
図21】更に別のツールホルダー、特に、協調動作する係止部品の第2の実施形態の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(図面の詳細な説明)
図1及び2を参照すると、先行技術のFSWツールインサートの全体が10で示されている。ツールインサート10は、FSW中にその周りを回転する回転軸12を有する。(この回転軸は、主にツールインサートへ加工された非対称ネジ山の型が原因で、回転対称の軸ではないことに留意されたい)。使用時には、ツールインサート10は、ツールホルダー14に焼嵌めされる。締付けカラー16は、ツールインサート10をツールホルダー14の所定位置に固定する。
【0014】
ツールインサート10は、撹拌ピン18、ショルダー20及び本体部分(図示せず)を、全て相互に軸芯出し状態で含む。撹拌ピン18、ショルダー20及び本体部分は、全て相互に一体形成される。この一体型のツールインサートは、12mm未満の厚さを有する板の溶接に制限される。
【0015】
撹拌ピン18は、丸みをつけた先端22からショルダー20まで延びる。ショルダー20は、実質的に円筒形であり、撹拌ピン18の円形基部より大きな直径を有する。撹拌ピン18は、先端22からショルダー20まで延在する彫り込まれたらせん状外形を有する。従って、撹拌ピン18は通常、円錐形のプロファイルを有する。らせんは、平面経路24を有し、これは軸方向を向いている。ツールインサート10の作業面26は、半径方向を向いている。いくつかの三面28は、らせん中に設けられる。各三面28は、平面経路24のエッジ面取りである。ショルダー20は、軸方向に延び、本体部分と接触する。本体部分は、ツールホルダー14と結合するように構成される。
【0016】
使用時には、ツールの回転は、らせんが被加工材料をショルダー20の端部から中心へと流動させ、次いで撹拌ピン18の長さに沿って下方へ流動させ、被加工材料を撹拌ゾーン内で循環させ、ツールが旋回するのに伴い、ピンにより形成された空隙を満たす。このような循環は、得られた溶接中の均質な微細構造を促進すると理解される。
【0017】
次に
図3~6を見てみると、本発明による二部品のツールインサートの実施形態の全体が100で示されている。ツールインサート100は、撹拌ピン104の周りに同軸に取り付けられたショルダー102を含む。言及されている軸は、以前の補足説明の通り、回転軸である。
【0018】
別々に製造された後に撹拌ピン及びショルダーは一緒に焼嵌めされて、組み立てられ、それにより、ツールインサートが形成される。ショルダー及び撹拌ピンに使用される材料は相互に異なってよく、単一結晶ではない。2つの構成要素が使用中に異なる応力及び温度条件を受けるので、これは有用である。従って、それらは、異なる材料特性及び構造的特徴を必要とし、それに応じて、それらのデザインを変えることができる。同様に、2つの構成要素に対する摩擦の要件も変わる。多結晶立方晶窒化ホウ素(PCBN)から製造されるツールインサートの場合、二部品の配置では、大部分が要件を満たすような単一の極めて大きなサイズのブロックから両方の構成要素を作製するのではなく、撹拌ピンがPCBNの第1のブロックから、ショルダーがPCBNの第2のブロックから作製できるので、特に有用である。PCBN構成要素の場合、焼嵌めは特に重要である;鋼製構成要素では、異なる形態の連係が必要となるであろう。
【0019】
図7及び8で最もよくわかるように、ショルダー102は、1mm~12mm、好ましくは2~12mm、より好ましくは3~12mm、及び更に好ましくは4~12mmの厚さを有する環状ディスク106を含む。環状ディスク106は、炭化物基材110(通常、「支持体」と呼ばれる)で裏打ちされたPCBN層108を含む。支持体110はオプションであり、通常、PCBN層の厚さに応じて取り除くことができ、その代わりに、自立型PCBN環状ディスクを使用し得る。上述の厚さの範囲は、任意の支持体の厚さを包含する。
【0020】
ショルダー102はまた、撹拌ピン104に対するショルダー102の滑りを最小化するのを補助するために、後で更に詳細に説明されるように、フランジ111を含む。
ショルダーの外半径は、(フランジの周辺端部まで測定して)4.5mm~75mmであり、PCBN材料で容易に達成可能である。これは同様に、裏打ちされたPCBNディスクを用いるという製造の観点からも達成可能である。
環状ディスク106は、中央貫通孔又は開口部112を含み、これは、上側の第1の表面114から下側の第2の表面116に向けて外向きにテーパーがつけられている。環状ディスク106の第1及び第2の表面114、116は、平面状で平行である。環状ディスク106の向きは、組み立てられた状態で上側の第1の表面114が撹拌ピン104に最も近く、下側の第2の表面116が最も遠くなるような向きである。開口部112のテーパーは、撹拌ピン104の周りのショルダー102の密接結合を確保するのを補助する。組み立て後、撹拌ピン104は、開口部112を通って突出する。
図8で最もよくわかるように、ショルダー102は、第1の上側面114に加工されたらせん状外形118を含む。らせん118は、FSW中に、撹拌ピン104の周りの金属の流れを柔らかくする。
【0021】
次に
図9~11を見てみると、撹拌ピン104は境界域124で接触する、第1及び第2のピン部120、122を含む。第1のピン部120は、円錐形であり、境界域124の第2のピン部122から離れて尖った先端126に向けて延びる。第1のピン部120は、らせんを形成するために外表面に加工された平面経路128と共に、らせん状に境界域124に向けて下方へ進む。いくつかの三面130がらせんの一部として設けられる。境界域124の第1のピン部120の直径は、同じ面に沿った第2のピン部122の直径より小さく、それにより、第1のピン部120は、半径方向で内側に向かって階段状である。
【0022】
図11でもっともよくわかるように、第2のピン部122は、外向きにテーパーをつけた境界域124に近接したウエスト部132を含み、ウエスト部132は、外向きにテーパーをつけた中間部134に延び、中間部134は、内向きにテーパーをつけた基部136に延びる。換言すれば、ウエスト部132は、円錐台であり、中間部134は円筒であり、基部136は円錐台であり、これらは全て端と端で相互に当接して積層されているが、一体形成される。撹拌ピン104とショルダー102が一緒に組み立てられる場合、ショルダー開口部112(
図7参照)の内側環状面138は、ウエスト部132と当接する。
第2のピン部122は、最大50mmの外径を有する。外径は、撹拌ピン104の軸中心から最外表面まで測定される。この実施形態では、最大の直径は、中間部134にある。好ましくは、第2のピン部122は、25mm~50mmの外径を有する。ショルダー開口部112は、それに対応したサイズである。
撹拌ピン104は、PCBNを含み、一体成形物として形成される。撹拌ピン104は、ブロックが焼結された後で、単一結晶からなるPCBNブロックから加工される。任意の好適な、例えばレーザーを用いた加工技術を使用可能である。
【0023】
図12,13及び14は、140で全体的に示されるツールホルダーに注目する。ツールホルダー140の目的は、FSW操作中にツールインサート100を支持することである。
ツールホルダー140は、
図12に示されるように、ツールインサート100を受けるための保持部材142、保持部材142に結合された細長い本体部材144を含む。
保持部材142は、ショルダー102を少なくとも部分的に受ける浅い円形凹部146を含む(
図12参照)。円形凹部146は、平面接触面150の境界となる円周に延びる外周部148を形成する。保持部材142は、ツールインサート100を受けるための平底カップ152を更に含む。カップ152は、円形凹部146中に取り付けられ、中央部に配置される。カップ152は、撹拌ピン104の基部136及び中間部134のみを受けるように構成される。保持部材142は、
図19に示すように、止めナット153を受けるために、外部にネジが切られている。
本体部材144は、円筒形本体154及び従来方式でFSW装置に連結するためのツールフラット156を含む。
ツールホルダー140、又は少なくとも保持部材142は、ニッケル系合金を含む。ニモニック(登録商標)80A合金が好ましい。
【0024】
次に
図15~19を見てみると、ツール組立体の全体が158で示されている。ツール組立体158は、上で記載したツールインサート100及びツールホルダー140を含む。
ツール組立体158が組み立てられる条件下にある場合、ショルダー102の下側の第2の表面116は、保持部材142の接触面150に面し、それに近接している。外周部148は、ショルダー102を所定位置に保持するために、ショルダー102に少なくとも部分的に結合し、どの横方向の動きも防止する。撹拌ピン104の基部及び中間部134、136は、凹型のカップ152内にぴったりと嵌合する。止めナット153は、ショルダー102のフランジ119に対して横方向に延びることにより、円形凹部146内にショルダー102を固定するのを補助する。
ツール組立体158は、ツールインサート140上の協調動作する係止部品160及びショルダー102を含む。いくつかの協調動作する係止部品は、ツールホルダー158の接触面150上に設けられる。残りの協調動作する係止部品160は、ショルダー102の下側の第2の表面116上に配置され得る。
【0025】
例えば、
図20では、協調動作する係止部品160は、ツールホルダー140の中心から外周部148に向けて半径方向に延びる4つのリブ160aを含む。4つの対応した形状の凹部が、ショルダー102の下側の第2の表面116上に設けられる。リブ160bは、凹部中に収まり、ショルダー102及びツールホルダー140を一緒に固定して、それらの間の相対回転を防止する。従って、協調動作する係止部品160は、回転止めの役割を果たす。
同様に、
図21では、協調動作する係止部品160は、平面図で4つの三角形の隆起160bを含む。この場合も、隆起160bは、ツールホルダー140の中心から外周部148に向けて、三角形の基部から先端へ半径方向に延びる。4つの対応した形状の凹部が、ショルダー102の下側の第2の表面116上に設けられる。
【0026】
協調動作する係止部品160は、代わりに環状突出部又は「くぼみ」及びそれに対応する形状の凹部を含み得る。
他の形態、例えば、回転防止に十分である人工の組織形成された表面も想定される。
このリブ、隆起及び環状突出部は、ツールホルダー140上に、及び凹部はショルダー102上に配置されることが示唆されたが、その代わりに、それらがショルダー102上に、及び凹部がツールホルダー140上に配置されてもよい。
協調動作する係止部品160は、多数である必要はない。単一組の協調動作する係止部品160、例えば、1つの大きなリブ及び対応する形状の凹部でも、十分であり得る。
【0027】
簡潔に述べると、本発明者らは、二部品のPCBNツールインサートを設けることにより、従来達成できていない、12mmを超える厚さの板を溶接できる「大きな」PCBNツールインサートを製造可能であるということを、発見した。コストは、比較的薄いディスクのみをショルダーとして、それほど大きくない固体ブロックを使用することにより、最小化される。
【0028】
本発明を実施形態を基準にして詳細に示し説明してきたが、当業者であれば、添付された特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形式及び細部の種々の変更を行い得ることを理解するであろう。