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▶ 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】プロペラファン及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/38 20060101AFI20241121BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F04D29/38 D
F04D29/66 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023523751
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019737
(87)【国際公開番号】W WO2022249270
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 拓
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 哲志
(72)【発明者】
【氏名】尾原 秀司
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/234997(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/128908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/38
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、その全域において吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記後縁部に沿うスパン方向において、前記翼端後縁と前記翼根後縁との間の第2中間部に前記第2位置が設けられ、
前記第2中間部は、スパン方向で前記後縁部を三等分した場合の中間の部分である、プロペラファン。
【請求項2】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲して第3位置で頂点となる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、その全域において吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
スパン方向において、前記第1位置と前記第3位置との間に前記第2位置が設けられる、プロペラファン。
【請求項3】
前記前縁部に沿うスパン方向において、前記翼端前縁と前記翼根前縁との間の第1中間部に前記第1位置が設けられること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラファン。
【請求項4】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記プロペラの中心軸線から前記第1位置までの径方向の距離と、前記中心軸線から前記第2位置までの径方向の距離と、が等しい、プロペラファン。
【請求項5】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記翼は、前記第1位置において翼断面の取付角が最大となる、プロペラファン。
【請求項6】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記翼は、前記第2位置において翼断面の取付角が最大となる、プロペラファン。
【請求項7】
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、
前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記翼は、前記第1位置において翼弦長が最大となる、プロペラファン。
【請求項8】
前記翼は、前記第2位置において翼弦長が最大となること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロペラファン。
【請求項9】
圧縮機と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を備えるとともに、
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有する室外ファンと、
前記室外ファンの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、その全域において吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
前記後縁部に沿うスパン方向において、前記翼端後縁と前記翼根後縁との間の第2中間部に前記第2位置が設けられ、
前記第2中間部は、スパン方向で前記後縁部を三等分した場合の中間の部分である、空気調和機。
【請求項10】
圧縮機と、室外熱交換器と、膨張弁と、室内熱交換器と、を備えるとともに、
モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有する室外ファンと、
前記室外ファンの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、
前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、
前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲して第3位置で頂点となる凹状を呈し、
前記翼の後縁部は、その全域において吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、
前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、
前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し
スパン方向において、前記第1位置と前記第3位置との間に前記第2位置が設けられる、空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラファン等に関する。
【背景技術】
【0002】
プロペラの薄型化を図る(軸方向の寸法を短くする)技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、翼の回転方向に沿う断面形状が、翼の負圧面側に膨出する膨出部と、翼の正圧面側に膨出する膨出部と、を交互に3箇所以上有するように形成された軸流ファンについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-150945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、正圧面側に膨出している膨出部の負圧面側で空気流れの剥離が生ずる可能性がある。このような空気流れの剥離に伴う圧力変動が生じると、空力騒音が大きくなる。したがって、特許文献1に記載の技術は、騒音の低減において改善の余地がある。
【0005】
また、プロペラの薄型化を図るために、例えば、翼端部での翼弦長や取付角を小さくすると、静圧の上昇幅(静圧上昇ともいう)が小さくなる他、風量も小さくなる。このような場合において、静圧の上昇幅や風量を確保するためにプロペラの回転速度を上昇させると、騒音の増加を招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、薄型化が可能な低騒音で高効率のプロペラファン等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明は、モータ軸と一体で回転するボス部と、前記ボス部に設置される複数の翼と、を有するプロペラと、前記プロペラの外周側に設けられるベルマウスと、を備え、前記翼の前縁部において最も吸込側に位置している第1位置が、翼端前縁と翼根前縁との間に設けられ、前記翼端前縁と前記第1位置との間では、前記前縁部が吹出側に湾曲してなる凹状を呈し、前記翼の後縁部は、その全域において吹出側に湾曲してなる凸状を呈し、前記後縁の全体において最も吹出側に位置している第2位置が、翼端後縁と翼根後縁との間に設けられ、前記後縁部において前記第2位置に近い箇所ほど吹出側に位置し、前記後縁部に沿うスパン方向において、前記翼端後縁と前記翼根後縁との間の第2中間部に前記第2位置が設けられ、前記第2中間部は、スパン方向で前記後縁部を三等分した場合の中間の部分であることとした。なお、その他については実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄型化が可能な低騒音で高効率のプロペラファン等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るプロペラファンを備える空気調和機の冷媒回路を含む構成図である。
図2】第1実施形態に係るプロペラファンを備える室外機の断面図である。
図3】第1実施形態に係るプロペラファンが備えるプロペラの斜視図である。
図4】第1実施形態に係るプロペラファンが備えるプロペラの中心軸線の方向において、空気の吸込側からプロペラを見た図である。
図5A図4の円弧A-Aを含む円筒面で翼を切断した場合の断面図である。
図5B図4の円弧B-Bを含む円筒面で翼を切断した場合の断面図である。
図5C図4の円弧C-Cを含む円筒面で翼を切断した場合の断面図である。
図6A図4のスパン線D-Dで翼を切断した場合の断面図である。
図6B図4のスパン線E-Eで翼を切断した場合の断面図である。
図6C図4のスパン線F-Fで翼を切断した場合の断面図である。
図7】第2実施形態に係るプロペラファンを備える室外機の断面図である。
図8】第3実施形態に係るプロペラファンにおける翼断面の取付角に関する説明図である。
図9】第4実施形態に係るプロペラファンにおける翼断面の取付角に関する説明図である。
図10】第5実施形態に係るプロペラファンにおける翼弦長に関する説明図である。
図11】第6実施形態に係るプロペラファンにおける翼弦長に関する説明図である。
図12】第7実施形態に係るプロペラファンを備える空気調和機の構成図である。
図13】第7実施形態に係るプロペラファンを備える室外機の断面図である。
図14A】第1の変形例に係るプロペラファンの断面図である。
図14B】第2の変形例に係るプロペラファンの断面図である。
図14C】第3の変形例に係るプロペラファンの断面図である。
図15】一般的なプロペラの翼を所定の円筒面で切断した場合の断面図である。
図16】比較例に係るプロペラを備える室外機の断面図である。
図17】比較例に係るプロペラの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪第1実施形態≫
<空気調和機の構成>
図1は、第1実施形態に係るプロペラファンを備える空気調和機100の冷媒回路Qを含む構成図である。
なお、図1の実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
一方、図1の破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。
空気調和機100は、暖房運転や冷房運転等の空調を行う機器である。図1に示すように、空気調和機100は、圧縮機1と、室外熱交換器2と、プロペラ3(室外ファン)と、膨張弁4と、を備えている。また、空気調和機100は、前記した構成の他に、室内熱交換器5と、室内ファン6と、四方弁7と、を備えている。
【0011】
圧縮機1は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する機器である。このような圧縮機1として、例えば、スクロール圧縮機やロータリ圧縮機が用いられる。
室外熱交換器2は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、プロペラ3から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
【0012】
プロペラ3(室外ファン)は、室外熱交換器2に外気を送り込む軸流ファンである。プロペラ3は、駆動源であるファンモータ31を備え、室外熱交換器2の付近に設置されている。
膨張弁4は、「凝縮器」(室外熱交換器2及び室内熱交換器5の一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。なお、膨張弁4で減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器2及び室内熱交換器5の他方)に導かれる。
【0013】
室内熱交換器5は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン6から送り込まれる室内空気(空調室の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
室内ファン6は、室内熱交換器5に室内空気を送り込むファンである。室内ファン6は、駆動源である室内ファンモータ61を備え、室内熱交換器5の付近に設置されている。このような室内ファン6として、例えば、クロスフローファンが用いられる。
【0014】
四方弁7は、空気調和機100の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(図1の破線矢印を参照)には、冷媒回路Qにおいて、圧縮機1、室外熱交換器2(凝縮器)、膨張弁4、及び室内熱交換器5(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。一方、暖房運転時(図1の実線矢印を参照)には、冷媒回路Qにおいて、圧縮機1、室内熱交換器5(凝縮器)、膨張弁4、及び室外熱交換器2(蒸発器)を順次に介して、冷媒が循環する。
【0015】
なお、図1の例では、圧縮機1、室外熱交換器2、プロペラ3(室外ファン)、膨張弁4、及び四方弁7が、室外機10に設置されている。一方、室内熱交換器5や室内ファン6は、室内機20に設置されている。圧縮機1やプロペラ3の他、膨張弁4や室内ファン6、四方弁7等の機器は、制御装置(図示せず)によって、所定に制御される。
【0016】
図2は、プロペラファンU1を備える室外機10の断面図である。
なお、図2では、プロペラ3の中心軸線Yを含む所定の水平面で、横吹型の室外機10を切断した場合の模式的な断面を図示している。また、プロペラ3の翼32(図3も参照)については、図2では、この翼32の子午面を示している。ここで、翼32の「子午面」とは、プロペラ3の中心軸線Yを基準として、翼32の形状を所定に回転投影したものである。また、図2では、空気の流れを白抜きの太矢印で示している。
【0017】
図2に示すように、プロペラファンU1は、プロペラ3と、ベルマウス8と、を備え、室外機10の内部に設置されている。
プロペラ3は、概ね軸方向に空気を送風する軸流ファンである。プロペラ3は、駆動源であるファンモータ31と、ファンモータ31のモータ軸31aと一体で回転する外形円柱状のボス部33と、ボス部33の周壁に設置される3枚の翼32(図3も参照)と、を備えている。図2の例では、中心軸線Yの方向(モータ軸31aの軸方向)が室外機10の前後方向と平行になるように、プロペラファンU1が設置されている。
【0018】
ベルマウス8は、プロペラ3に吸い込まれる空気を所定に導き、また、プロペラ3から吹き出される空気を所定に導く整流部材である。ベルマウス8は、円筒状を呈し、プロペラ3の外周側(径方向外側)に設けられている。なお、ベルマウス8の中心軸線は、プロペラ3の中心軸線Yに略一致している。
【0019】
図2に示すように、ベルマウス8は、湾曲部81と、拡径部82と、を備えている。湾曲部81は、肉薄の円筒状を呈し、空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、その径が小さくなるように、所定に湾曲している。拡径部82は、円錐台の側面状を呈し、湾曲部81の下流側(吹出側)に連なっている。拡径部82は、空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、その径が大きくなるように形成されている。
【0020】
また、図2の例では、横断面視でL字状を呈する室外熱交換器2が、室外機10の背面側・左側に設けられている。室外熱交換器2において室外機10の背面側の部分は、空気の流れ方向で、プロペラ3の上流側に位置している。そして、室外熱交換器2で熱交換した空気が、ベルマウス8で整流されつつプロペラ3に吸い込まれ、さらに、プロペラ3から所定に吹き出されるようになっている。
【0021】
図2に示す機械室R1は、圧縮機1(図1参照)やアキュムレータ(図示せず)、膨張弁4(図1参照)等が収容される空間であり、プロペラファンU1の右側に設けられている。なお、プロペラファンU1が収容されるファン室R2と、前記した機械室R1と、は仕切板(図示せず)で所定に仕切られている。また、図2に示す翼32の翼端前縁321、翼端後縁322、翼根前縁323、及び翼根後縁324の他、第1位置α、第2位置β、及び第3位置γについては後記する。
【0022】
図3は、プロペラファンが備えるプロペラ3の斜視図である。
なお、図3等に示す斜線入りの太矢印は、プロペラ3の回転する向きを示している。また、図3等に示す白抜きの太矢印は、プロペラ3の回転に伴って空気が流れる向きを示している。
図3に示す3枚の翼32は、ボス部33の周壁に等角度間隔で設けられ、ボス部33から概ね径方向に放射状に延びている。より詳しく説明すると、3枚の翼32は、それぞれ、中心軸線Yを基準とする径方向に対して、回転方向の前方に傾くように延在している(図4も参照)。なお、翼32の枚数は、図3に示す3枚の他、2枚であってもよいし、また、4枚以上であってもよい。
【0023】
図4は、プロペラ3の中心軸線Yの方向において、空気の吸込側からプロペラ3を見た図である。
図4に示すように、複数の翼32は、それぞれ、前縁部32aと、後縁部32bと、翼端部32cと、翼根部32dと、を備えている。前縁部32aは、翼32において、プロペラ3の回転方向で前方側に位置する縁部である。後縁部32bは、翼32において、プロペラ3の回転方向で後方側に位置する縁部である。翼端部32cは、翼32の外周側の縁部である。翼根部32dは、翼32の内周側の縁部である。
【0024】
図4に示すように、翼端部32cと前縁部32aとは、翼端前縁321を介して隣接している。翼端部32cと後縁部32bとは、翼端後縁322を介して隣接している。翼根部32dと前縁部32aとは、翼根前縁323を介して離接している。翼根部32dと後縁部32bとは、翼根後縁324を介して隣接している。なお、翼端前縁321、翼端後縁322、翼根前縁323、及び翼根後縁324については、図2におけるプロペラ3の子午面にも表れている。
【0025】
図4に示すように、空気の吸込側からプロペラ3を見た場合、前縁部32aは、回転方向の後側に湾曲するように凹状を呈している。一方、後縁部32bは、回転方向の後側に湾曲するように凸状を呈している。翼端部32cは、ベルマウス8(図2参照)の内周面との間に所定の隙間が設けられるように、円弧状を呈している。翼根部32dは、ボス部33の外周面に沿うように、円弧状に形成されている。
【0026】
それぞれの翼32は、圧力面32e(図3参照)と、負圧面32fと、を備えている。圧力面32eは、翼32が有する2つの面のうち、中心軸線Yの方向で前方側(吹出側、図4の紙面奥側)の面である。プロペラ3が回転しているときには、翼32の移動に伴い、圧力面32eによって空気が所定に押し出される。
【0027】
負圧面32fは、翼32が有する2つの面のうち、中心軸線Yの方向で後方側(吸込側、図4の紙面手前側)の面である。つまり、負圧面32fは、圧力面32e(図3参照)の裏側の面である。プロペラ3が回転しているときには、翼32の移動に伴い、負圧面32fに向かうように空気が吸い込まれる。なお、図4は、プロペラ3の吸込側から見た図であるため、負圧面32fが見えている一方、裏側の圧力面32e(図3参照)は見えていない。
【0028】
図5Aは、図4の円弧A-Aを含む円筒面で翼32を切断した場合の断面図である。
なお、図4の破線で示す円弧A-Aは、プロペラ3の中心軸線Yを基準(円弧の中心)として、翼端部32cの付近を通る仮想的な円弧である。また、図4の円弧A-A等の符号付近の各矢印は、翼32を断面視する際の方向を示している。図5A等に示す斜線入りの太矢印は、プロペラ3の回転に伴って、翼32が移動する向きを示している。また、図5A等に示す白抜きの太矢印は、プロペラ3の回転に伴って空気が流れる向きを示している。
【0029】
翼端部32c(図4参照)の付近では、図5Aに示すように、プロペラ3の回転方向の前方(図5Aの紙面右側)に位置する箇所ほど、空気の吸込側(図5Aの紙面上側)に位置するように、所定に傾斜している。
【0030】
図5Bは、図4の円弧B-Bを含む円筒面で翼32を切断した場合の断面図である。
なお、図4の破線で示す円弧B-Bは、プロペラ3の中心軸線Yを基準(円弧の中心)として、翼端部32cと翼根部32dとの間の中間部を通る仮想的な円弧である。つまり、図4に示す中心軸線Yから円弧B-Bまでの距離は、中心軸線Yから翼端部32cまでの距離と、中心軸線Yから翼根部32dまでの距離と、の和を2で除算した値になっている。図5Bに示すように、翼32の中間部も、プロペラ3の回転方向の前方(図5Bの紙面右側)に位置する箇所ほど、空気の吸込側(図5Bの紙面上側)に位置するように、所定に傾斜している。
【0031】
図5Cは、図4の円弧C-Cを含む円筒面で翼32を切断した場合の断面図である。
なお、図4の破線で示す円弧C-Cは、プロペラ3の中心軸線Yを基準(円弧の中心)として、翼根部32dの付近を通る仮想的な円弧である。翼根部32d(図4参照)の付近でも、図5Cに示すように、プロペラ3の回転方向の前方(図5Cの紙面右側)に位置する箇所ほど、空気の吸込側(図5Cの紙面上側)に位置するように、所定に傾斜している。
【0032】
図5A図5B、及び図5Cに示すように、径方向で翼根部32d(図4参照)に近いほど、翼32の周方向の長さが短くなっている。また、翼端部32cの付近(図5A参照)や中間部(図5B参照)の他、翼根部32dの付近(図5C参照)のいずれにおいても、空気の吸込側から見て、翼32が緩やかな凸状に湾曲している。これによって、翼32の圧力面32eで空気が昇圧されやすくなる。
【0033】
図6Aは、図4のスパン線D-Dで翼32を切断した場合の断面図である。
ここで、「スパン線」とは、中心軸線Y(図4参照)を基準(中心)とする複数の円筒断面のそれぞれにおいて、前縁部32a(図4参照)からの距離と、後縁部32b(図4参照)からの距離と、の比が一定になる点を、翼端部32c(図4参照)から翼根部32d(図4参照)まで結んだ線である。なお、前縁部32aからスパン線D-Dまでの距離や、後縁部32bからスパン線D-Dまでの距離は、翼32の反り線に沿って所定に測定されるものとする。また、スパン線に沿う方向を「スパン方向」という。
【0034】
図4に示すスパン線D-D(図6Aの断面に対応)は、翼32の前縁部32aの付近を通るスパン線である。なお、翼32の前縁部32a(図2参照)も図6Aと同様の形状を呈している。したがって、説明を分かりやすくするために、前縁部32aの付近のスパン方向の断面を示す図6Aにも、翼端前縁321や翼根前縁323等の符号を便宜的に示している。
【0035】
前縁部32a(図4参照)の付近のスパン線D-Dの断面は、図6Aに示すように、逆S字状を呈している。また、図2に示すように、前縁部32aも同様の逆S字状を呈している。そして、図2に示すように、翼32の前縁部32aにおいて最も吸込側に位置している第1位置αが、翼端前縁321と翼根前縁323との間に設けられている。また、翼端前縁321と第1位置αとの間では、前縁部32aが吹出側に湾曲してなる凹状を呈している。ここで、吹出側に湾曲してなる「凹状」とは、前縁部32aにおいて、翼端前縁321と第1位置αとの間の第3位置γに近い箇所ほど吹出側に位置するような形状をいう。
【0036】
このような構成によれば、径方向内向きの速度成分を有する斜め方向の空気(図2の矢印W1,W2を参照)が翼32に流入した場合でも、翼端前縁321と第1位置αとの間に凹状の部分が設けられているため、空気の流れを翼32に沿わせることができる。したがって、空気の流れが翼32から剥離することを抑制し、高効率化を図ることができる。このような構成は、プロペラ3の側方に室外熱交換器2や機械室R1が設けられている影響で空気が翼32に対して斜め方向に流入しやすい横吹型の室外機10に特に適している。
【0037】
また、図2の例では、プロペラ3の中心軸線Yの方向において、翼端前縁321が第1位置αよりも吹出側に位置している。このような構成によれば、翼端前縁321が第1位置αよりも吸込側に位置している場合に比べて、プロペラ3のプロペラ高さHP(軸方向の寸法)が短くなる。したがって、プロペラ3の薄型化を図ることができる。
【0038】
図6Bは、図4のスパン線E-Eで翼32を切断した場合の断面図である。
なお、図4のスパン線E-Eは、前縁部32aと後縁部32bとの間の周方向の中間位置を通るスパン線である。スパン線E-Eにおける断面も、図6Aと同様に逆S字状を呈しているが、スパン線D-D(図4参照)における断面(図6A参照)に比べて、逆S字状の湾曲度合いが緩やかになっている。つまり、スパン方向で、前縁部32a(図2参照)からスパン方向の中間位置(図6B参照)に向かうにつれて、前記した逆S字状の湾曲度合いが次第に緩やかになっている。
【0039】
図6Cは、図4のスパン線F-Fで翼32を切断した場合の断面図である。
なお、図4のスパン線F-Fは、翼32の後縁部32bの付近を通るスパン線である。また、図2に示すように、後縁部32bも図6Cと同様の形状を呈している。したがって、説明を分かりやすくするために、後縁部32bの付近のスパン方向の断面を示す図6Cにも、翼端後縁322や翼根後縁324等の符号を便宜的に示している。
【0040】
図2に示すように、翼32の後縁部32bは、吹出側に湾曲してなる凸状を呈している(吸込側から見ると、凹状を呈している)。具体的には、後縁部32bにおいて最も吹出側に位置している第2位置βが、翼端後縁322と翼根後縁324との間に設けられている。また、後縁部32bにおいて第2位置βに近い箇所ほど吹出側に位置している。
【0041】
このような構成によれば、プロペラ3から吹き出される空気が、第2位置βよりも径方向外側の領域の圧力面32eによって、径方向外向きの速度成分を含むように、斜め方向に押し出される(図2の矢印W3,W4を参照)。その結果、プロペラ3から吹き出された空気が、ベルマウス8の拡径部82に沿うように流れる。したがって、ベルマウス8における空気の圧力損失を低減し、ひいては、静圧の上昇幅の低下を抑制できる。
【0042】
なお、スパン方向で、図6Bの中間位置から後縁部32b(図2参照)に向かうにつれて、翼32の吹出側への湾曲度合いが次第に大きくなっている。また、後縁部32bでは、その全域において吹出側に凸状に湾曲している。
【0043】
また、図2の前縁部32aに沿うスパン方向において、翼端前縁321と翼根前縁323との間の第1中間部325(図6A参照)に第1位置αが設けられることが好ましい。さらに、図2の後縁部32bに沿うスパン方向において、翼端後縁322と翼根後縁324との間の第2中間部326(図6C参照)に第2位置βが設けられることが好ましい。前記した第1中間部325として、例えば、スパン方向で前縁部32aを三等分して、翼端側・中間部・翼根側の3つの部分に分けた場合の中間部を用いるようにしてもよい。第2中間部326についても同様に、スパン方向で後縁部32bを三等分した場合の中間部を用いるようにしてもよい。
【0044】
このような構成によれば、スパン方向において、第1位置αと翼端前縁321との間の範囲を十分に確保できる。したがって、径方向内向きの速度成分を有する斜め方向の空気の流れが翼32に沿いやすくなる。また、プロペラ3の軸方向において、第1位置αと第2位置βとの間の長さが確保しやくなる。その結果、プロペラ3の薄型化を図りつつ、静圧の上昇幅や風量の低下を抑制できる。
【0045】
なお、図2の例では、プロペラ3の中心軸線Yから第1位置αまでの径方向の距離よりも、中心軸線Yから第2位置βまでの径方向の距離の方が長くなっているが、これらの距離の大小関係が逆であってもよい。
次に、「翼弦長」及び「取付角」の定義について、図15を用いて簡単に説明する。
【0046】
図15は、一般的なプロペラの翼34を所定の円筒面で切断した場合の断面図である。
図15に示す翼弦長Lは、翼弦線Sの長さである。翼弦線Sは、翼34の翼断面における前縁34aと後縁34bとを結ぶ線分である。また、取付角ξとは、翼弦線Sと回転面Xとのなす角である。なお、回転面Xは、プロペラの中心軸線(図示せず)に対して垂直であるものとする。
【0047】
図15に示す翼弦長Lが長いほど、静圧の上昇幅が大きくなる他、風量も大きくなる。また、取付角ξが大きいほど、静圧の上昇幅が大きくなる他、風量も大きくなる。したがって、翼弦長Lや取付角ξは、静圧の上昇幅や風量を確保するための重要な設計値である。
【0048】
図16は、比較例に係るプロペラ3Gを備える室外機10Gの断面図である。
なお、プロペラ3Gの翼32G(図17も参照)については、図16では、翼32Gの子午面を示している。図16の比較例では、前縁部32Gaは、翼端前縁321Gに近いほど吸込側に位置している。一方、後縁部32Gbは、翼端後縁322Gに近いほど吹出側に位置している。そして、翼端部32Gcにおいて、翼弦長L(図15参照)や取付角ξ(図15参照)が最大となるようにプロペラ3Gが形成されている。このような構成では、プロペラ高さHPが、翼端部32Gcでの翼弦長L及び取付角ξで決まることになる。
【0049】
図17は、比較例に係るプロペラ3Gの斜視図である。
なお、図17に示すプロペラ3Gは、図16の構成に対応している。これまでのプロペラ3Gの設計では、プロペラ高さHP(図16参照)を短くするために、翼端部32Gcでの翼弦長L(図15参照)を小さくしたり、取付角ξ(図15参照)を小さくしたりする方法が採られていた。しかしながら、このような設計では、プロペラ3Gの静圧の上昇幅が低下する他、風量も低下する。また、静圧の上昇幅や風量の低下を補うためにプロペラ3Gの回転速度を上昇させると、騒音の増加を招いてしまう。
【0050】
これに対して第1実施形態では、図2に示すように、翼端前縁321と第1位置αとの間では、前縁部32aが吹出側に湾曲してなる凹状を呈している。また、翼32の後縁部32bは、吹出側に湾曲してなる凸状を呈している。このような構成にすると、プロペラ高さHP(図2参照)が、第1位置α及び第2位置βの軸方向の位置で決まることになる。具体的には、第1位置αと第2位置βとの間の軸方向の距離が、プロペラ高さHPになる。
【0051】
このように、第1実施形態では、プロペラ高さHPを規定する第1位置αや第2位置βが、翼端部32cと翼根部32dとの間の所定箇所(例えば、スパン方向の中間部の付近)に設けられている。これによって、第1位置αや第2位置βの付近で、翼弦長L(図15参照)や取付角ξ(図15参照)を比較的大きくすることができる。
【0052】
<効果>
第1実施形態によれば、図2に示すように、翼32の前縁部32aにおける第1位置αと、翼32の後縁部32bにおける第2位置βと、でプロペラ高さHPが決まるように構成されている。したがって、プロペラ3の設計段階で第1位置αや第2位置βを適宜に調整することで、プロペラ3の薄型化を図りつつ、静圧の上昇幅や風量を十分に確保できる。また、プロペラ3の薄型化を図ることで、横吹型の室外機10の前後方向の長さを短くすることができる。
【0053】
また、翼端前縁321と第1位置αとの間では、前縁部32aが吹出側に凹状を呈している。これによって、横方向で室外熱交換器2や機械室R1がプロペラファンU1に対して比較的近い位置に設けられた場合でも、斜め方向の空気(図2の矢印W1,W2を参照)が翼32に沿うように流れる。つまり、径方向内向きの速度成分を有する空気の流れが、プロペラ3の外周側から誘引されやすくなる。その結果、翼32における空気の■離を抑制し、ひいては、静圧の上昇幅や風量を確保できる。
【0054】
また、図2に示すように、翼32の後縁部32bが吹出側に凸状を呈しているため、プロペラ3から吹き出される空気が、径方向外向きの速度成分を含むように斜め方向に導かれ(図2の矢印W3,W4を参照)、さらに、ベルマウス8の拡径部82に沿って流れる。これによって、ベルマウス8における空気の圧力損失を抑制し、ひいては、効率を高めることができる。また、翼32の後縁部32bでは、吹出側から見て凹状の部分が特にないため、翼32の負圧面32f(図3参照)で空気の流れの剥離が生ずることもほとんどない。したがって、静圧の上昇幅の低下を抑制できる。
【0055】
例えば、図16図17の比較例に対して、第1実施形態におけるプロペラ3のプロペラ高さHPを26%薄型にした場合でも、静圧の上昇幅や風量の他、プロペラ3の効率が、比較例と同等になるという結果が得られた。このように、第1実施形態によれば、薄型化が可能な低騒音で高効率のプロペラファンU1等を提供できる。
【0056】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、プロペラ3A(図7参照)の中心軸線Yから第1位置αまでの径方向の距離RDと、中心軸線Yから第2位置βまでの径方向の距離RDと、が等しい点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0057】
図7は、第2実施形態に係るプロペラファンUA1を備える室外機10Aの断面図である。
なお、プロペラ3Aの翼32Aについては、図7では、翼32Aの子午面を示している。図7の例では、プロペラ3Aの中心軸線Yから第1位置αまでの径方向の距離RDと、中心軸線Yから第2位置βまでの径方向の距離RDと、が等しくなっている。このような構成によれば、第1位置α及び第2位置βを含む一つの翼断面(翼32Aを所定の円筒面で切断した場合の断面)に基づいて、第1位置αや第2位置βを設計段階で適宜に調整できる。したがって、プロペラ3Aを設計しやすくなるため、設計段階での作業負担を軽減できる。
【0058】
<効果>
第2実施形態によれば、所定の円筒面でプロペラ3Aを切断した所定の翼断面(一つの翼断面)において、第1位置αや第2位置βを設計段階で適宜に調整できるため、プロペラ3Aの設計を容易に行うことができる。
【0059】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、第1位置α(図2参照)において翼断面の取付角が最大になる点が、第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0060】
図8は、第3実施形態に係るプロペラファンにおける翼断面の取付角ξに関する説明図である。
なお、図8の横軸は、プロペラ3(図2参照)の半径R(つまり、中心軸線Yとの間の径方向の距離)である。また、図8の縦軸は、各半径に対応する翼断面での取付角ξである。なお、「翼断面」とは、所定の円筒面で翼32を切断した場合の断面である。
【0061】
図8の横軸における‘0’は、ボス部33(図2参照)の半径を示している。一方、図8の横軸における‘1’は、翼端部32c(図2参照)の半径を示している。
図8の実線は、第3実施形態に係るプロペラ3の各半径における翼断面の取付角ξを示している。一方、図8の一点鎖線は、比較例(図16図17参照)に係るプロペラ3Gの各半径おける翼断面の取付角ξを示している。
【0062】
図8に示すように、比較例(図8の一点鎖線)では、翼端部(横軸の‘1’)に近いほど、取付角ξが小さくなっている。これに対して、第3実施形態(図8の実線)では、点Pαで示すように、第1位置α(図2参照)の半径Rαにおいて、翼断面の取付角ξが最大になっている。これによって、第1位置αの付近において取付角ξの大きさを十分に確保できるため、静圧の上昇幅や風量を大きくすることができる。なお、第2位置β(図2参照)については、図8には特に示していないが、第2位置βは、第1位置αに対して翼端側・翼根側のうちいずれに設けられていてもよい。
【0063】
<効果>
第3実施形態によれば、第1位置α(図2参照)において翼断面の取付角ξが最大になるため、第1位置αの付近でのプロペラ3の仕事量が比較的大きくなる。これによって、静圧の上昇幅や風量を十分に確保できる。
【0064】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、第2位置β(図2参照)において翼断面の取付角が最大になる点が、第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0065】
図9は、第4実施形態に係るプロペラファンにおける翼断面の取付角ξに関する説明図である。
なお、図9の横軸はプロペラ3(図2参照)の半径R(つまり、中心軸線Yとの間の径方向の距離)であり、縦軸は取付角ξである。図9に示すように、第4実施形態(図9の実線)では、点Pβで示すように、第2位置β(図2参照)の半径Rβにおいて、翼断面の取付角ξが最大になっている。これによって、第2位置βの付近で取付角ξの大きさを十分に確保できるため、静圧の上昇幅や風量を大きくすることができる。なお、第1位置α(図2参照)については、図9には特に示していないが、第1位置αは、第2位置βに対して翼端側・翼根側のうちいずれに設けられていてもよい。
【0066】
<効果>
第4実施形態によれば、第2位置β(図2参照)において翼断面の取付角ξが最大になるため、第2位置βの付近でのプロペラ3の仕事量が比較的大きくなる。これによって、静圧の上昇幅や風量を十分に確保できる。
【0067】
≪第5実施形態≫
第5実施形態は、第1位置α(図2参照)において翼弦長が最大になる点が、第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0068】
図10は、第5実施形態に係るプロペラファンにおける翼弦長Lに関する説明図である。
なお、図10の横軸は、プロペラ3(図2参照)の半径R(つまり、中心軸線Yとの間の径方向の距離)である。また、図10の縦軸は、各半径に対応する翼断面での翼弦長Lである。また、図10の実線は、第5実施形態に係るプロペラ3の各半径における翼弦長Lを示している。一方、図10の一点鎖線は、比較例(図16図17参照)に係るプロペラ3Gの各半径における翼弦長Lを示している。図10に示すように、比較例(図10の一点鎖線)では、翼端部(横軸の‘1’)に近いほど、翼弦長が長くなっている。
【0069】
これに対して、第5実施形態(図10の実線)では、点Pαで示すように、第1位置α(図2参照)の半径Rαにおいて、翼弦長Lが最大になっている。これによって、第1位置αの付近で翼弦長Lの長さを十分に確保できるため、静圧の上昇幅や風量を大きくすることができる。なお、第2位置β(図2参照)については、図10には特に示していないが、第2位置βは、第1位置αに対して翼端側・翼根側のうちいずれに設けられていてもよい。
【0070】
<効果>
第5実施形態によれば、第1位置α(図2参照)において翼弦長Lが最大になるため、第1位置αの付近でのプロペラ3の仕事量が比較的大きくなる。これによって、静圧の上昇幅や風量を十分に確保できる。
【0071】
≪第6実施形態≫
第6実施形態は、第2位置β(図2参照)において翼弦長が最大になる点が、第1実施形態とは異なっているが、その他については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0072】
図11は、第6実施形態に係るプロペラファンにおける翼弦長Lに関する説明図である。
なお、図11の横軸はプロペラ3(図2参照)の半径R(つまり、中心軸線Yとの間の径方向の距離)であり、縦軸は翼弦長Lである。第6実施形態(図11の実線)では、点Pβで示すように、第2位置β(図2参照)の半径Rβにおいて、翼弦長Lが最大になっている。これによって、第2位置βの付近で翼弦長Lの長さを十分に確保できるため、静圧の上昇幅や風量を大きくすることができる。なお、第1位置α(図2参照)については、図11には特に示していないが、第1位置αは、第2位置βに対して翼端側・翼根側のうちいずれに設けられていてもよい。
【0073】
<効果>
第6実施形態によれば、第2位置β(図2参照)において翼弦長Lが最大になるため、第2位置βの付近でのプロペラ3の仕事量が比較的大きくなる。これによって、静圧の上昇幅や風量を十分に確保できる。
【0074】
≪第7実施形態≫
第7実施形態は、プロペラファンUB1(図13参照)が上吹型の室外機10B(図13参照)に設けられる点が、第1実施形態とは異なっている。また、第7実施形態は、空気調和機100Bが複数の室内機21~24(図12参照)を備えるマルチ型の空気調和機である点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他(プロペラ3の構成等:図13参照)については第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0075】
図12は、第7実施形態に係るプロペラファンを備える空気調和機100Bの構成図である。
なお、図12では、冷媒配管K1の図示を簡略化し、室外機10Bから室内機21等に冷媒を導く冷媒配管と、室内機21等から室外機10Bに冷媒を導く冷媒配管と、を共通の実線で図示している。図12に示すマルチ型の空気調和機100Bは、上吹型の室外機10Bと、天井埋込型の4台の室内機21~24と、を備えている。そして、冷媒配管K1を介して並列接続された冷媒回路QBにおいて、冷媒が所定に循環するようになっている。なお、室外機10Bに接続される室内機の台数は、3台以下であってもよいし、また、5台以上であってもよい。
【0076】
図13は、プロペラファンUB1を備える室外機10Bの断面図である。
図13に示すように、室外機10Bの筐体11の上端付近には、プロペラファンUB1が設けられている。筐体11の内部において、プロペラ3の空気流れの上流側(吸込側)の空間には、圧縮機1やアキュムレータ12の他、室外熱交換器2や電気品箱13が設置されている。
【0077】
プロペラファンUB1は、プロペラ3(室外ファン)と、ベルマウス8Bと、を備えている。プロペラ3のボス部33には、ファンモータ31が設置されている。ファンモータ31は、モータ軸31aが鉛直方向となるようにモータクランプ14に固定されている。なお、プロペラ3の構成については、第1実施形態(図2参照)と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0078】
ベルマウス8Bは、プロペラ3の外周側(径方向外側)に設けられている。図13に示すように、ベルマウス8Bは、湾曲部81Bと、拡径部82と、を備えている。湾曲部81Bは、肉薄の円筒状を呈し、空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、その径が小さくなるように所定に湾曲している。拡径部82は、円錐台の側面状を呈し、湾曲部81Bの下流側(吹出側)に連なっている。そして、プロペラ3が回転することで、ベルマウス8Bを介して、上向きに空気が吹き上がるようになっている。具体的には、矢印W5,W6で示すように、径方向内向きの速度成分を有する空気が斜め下からプロペラ3に流入する。
【0079】
<効果>
第7実施形態によれば、プロペラ3の薄型化を図りつつ、静圧の上昇幅や風量を確保できる。また、プロペラ3の薄型化を図ることで、室外機10Bの高さ方向の寸法を短くすることができる。図13の例では、室外熱交換器2がプロペラ3から比較的離れているが、その一方で、筐体11の上端付近の壁とベルマウス8Bとの間の距離が比較的短くなっている。ここで、プロペラ3は、翼端前縁321と第1位置αとの間では、前縁部32aが吹出側に湾曲してなる凹状を呈しているため、空気の流れを翼32に沿わせることができる。これによって、静圧の上昇幅や風量を確保できる。また、プロペラ3の薄型化を図りつつ、効率の低下を抑制できる。
【0080】
≪変形例≫
以上、本発明に係るプロペラファンU1等について各実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、ベルマウス8(図2参照)が備える拡径部82の構成として、軸方向で空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、拡径部82の径が直線的に単調増加する構成を示したが、これに限らない。例えば、ベルマウス8は、次に説明する図14A図14Cのような構成であってもよい。
【0081】
図14Aは、第1の変形例に係るプロペラファンUC1の断面図である。
なお、図14Aでは、プロペラ3のファンモータ31の図示を省略している。
図14Aの変形例では、軸方向で空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、ベルマウス8Cの拡径部82Cの径が階段状に増加している。このような構成でも、翼32の後縁部32bが吹出側に湾曲してなる凸状を呈しているため、プロペラ3から吹き出される空気の流れをベルマウス8Cに沿わせることができる。したがって、プロペラファンUC1おいて空気の圧力損失を低減し、高効率化を図ることができる。
【0082】
図14Bは、第2の変形例に係るプロペラファンUD1の断面図である。
図14Bの変形例では、軸方向で空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、ベルマウス8Dの拡径部82Dの径が単調増加し、さらに、拡径部82Dは径方向内側に凸の形状になっている。このような構成でも、翼32の後縁部32bが吹出側に湾曲してなる凸状を呈しているため、プロペラ3から吹き出される空気の流れをベルマウス8Dに沿わせることができる。
【0083】
図14Cは、第3の変形例に係るプロペラファンUE1の断面図である。
図14Cの変形例では、軸方向で空気流れの下流側(吹出側)に向かうにつれて、ベルマウス8Eの拡径部82Eの径が単調増加し、さらに、拡径部82Eは径方向外側に凸の形状になっている。このような構成でも、翼32の後縁部32bが吹出側に湾曲してなる凸状を呈しているため、プロペラ3から吹き出される空気の流れをベルマウス8Eに沿わせることができる。
【0084】
また、第1実施形態では、スパン方向において、第1位置α(図2参照)と第3位置γ(図2参照)との間に第2位置βが設けられる構成について説明したが、これに限らない。例えば、スパン方向において、第1位置αよりも翼根側に第2位置βが設けられる構成であってもよい。このような構成でも、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0085】
また、第1実施形態では、翼端前縁321(図2参照)と翼根前縁323(図2参照)との間の第1中間部325(図6A参照)に第1位置αが設けられる構成について説明したが、これに限らない。すなわち、第1中間部325よりも翼端側又は翼根側に第1位置αが設けられてもよい。なお、第2~第7実施形態についても同様のことがいえる。
また、第1実施形態では、翼端後縁322(図2参照)と翼根後縁324(図2参照)との間の第2中間部326(図6C参照)に第2位置βが設けられる構成について説明したが、これに限らない。すなわち、第2中間部326よりも翼端側又は翼根側に第2位置βが設けられてもよい。なお、第2~第7実施形態についても同様のことがいえる。
【0086】
また、各実施形態では、翼端前縁321(図2参照)が第1位置αよりも吹出側に位置する構成について説明したが、これに限らない。すなわち、翼端前縁321及び第1位置αの軸方向の位置が略等しい構成であってもよいし、また、翼端前縁321が第1位置αよりも吸込側に位置していてもよい。このような構成でも、各実施形態と同様の効果が奏される。
【0087】
また、第1実施形態では、翼根前縁323から第1位置αまでの範囲では、前縁部32aが吸込側に凸の形状である場合について説明したが、これに限らない。例えば、翼根前縁323から第1位置αに近づくにつれて、吹出側に凸の形状から、所定の変曲点(図示せず)を経て、吸込側に凸の形状になるように構成されていてもよい。
【0088】
また、各実施形態で説明したプロペラファンU1等は、ルームエアコンの他、パッケージエアコンやビル用マルチエアコンといった様々な種類の空気調和機にも適用できる。また、各実施形態で説明したプロペラファンU1等は、空気調和機以外のさまざまな機器に適用することも可能である。
【0089】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0090】
1 圧縮機
2 室外熱交換器
3,3A プロペラ(室外ファン)
4 膨張弁
5 室内熱交換器
6 室内ファン
7 四方弁
31 ファンモータ
31a モータ軸
32,32A 翼
33 ボス部
321 翼端前縁
322 翼端後縁
323 翼根前縁
324 翼根後縁
325 第1中間部
326 第2中間部
32a 前縁部
32b 後縁部
32c 翼端部
32d 翼根部
8,8B,8C,8D,8E ベルマウス
100,100B 空気調和機
α 第1位置
β 第2位置
γ 第3位置
Q,QB 冷媒回路
U1,UA1,UB1,UC1,UD1,UE1 プロペラファン
Y 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17