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特許7591663非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20241121BHJP
   A24F 40/50 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/50
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023544256
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 GB2022050468
(87)【国際公開番号】W WO2022180377
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】63/200,252
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ブランディノ, トーマス ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミリガン, テレンス
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-525000(JP,A)
【文献】特表2021-506249(JP,A)
【文献】特表2020-512662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0301934(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103956930(CN,A)
【文献】国際公開第2020/260885(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置であって、
エアロゾル生成材料を加熱することによりエアロゾルを生成するように構成されたサセプタ構成体を誘導加熱する誘導素子を含む誘導回路と、
入力直流電流から、前記誘導素子を駆動して前記サセプタ構成体を誘導加熱する前記誘導回路に変動電圧を供給するように構成された駆動回路と、
前記駆動回路が、前記誘導回路に供給された前記変動電圧の極性を繰り返し切り替える第1のモードと、
前記駆動回路が、非ゼロの大きさの第1の電圧を前記誘導回路に供給することと、実質的に電圧を前記誘導回路に供給しないことと、を繰り返し切り替える第2のモードと、
において、前記駆動回路を選択的に動作させるように構成された制御回路と、
を備えた、装置。
【請求項2】
前記駆動回路が、Hブリッジ構成に配置された複数のスイッチング素子を備え、前記複数のスイッチング素子が、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を含む高位側スイッチング素子ペアと、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を含む低位側スイッチング素子ペアと、を含み、前記第1のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子が、前記誘導回路の前記第1側に電気接続され、前記第2のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子が、前記誘導回路の前記第2側に電気接続された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動回路が、使用時、前記高位側スイッチング素子ペア間の第1の点と前記低位側スイッチング素子ペア間の第2の点との間に電位を接続するように構成された、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のモードにおいて、前記制御回路が、
前記第1のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子に電流を流して、前記誘導回路の前記変動電圧がプラス極性を有し得るようにすることと、
前記第2のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子に電流を流して、前記誘導回路の前記変動電圧がマイナス極性を有し得るようにすることと、
の間で前記駆動回路を切り替えさせ、
前記第2のモードにおいて、前記制御回路が、
前記第1のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子に電流を流して、前記誘導回路の前記変動電圧がプラス極性を有し得るようにすること、又は、前記第2のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子に電流を流して、前記誘導回路の前記変動電圧がマイナス極性を有し得るようにすることと、
実質的に電圧を前記誘導回路に供給しないことと、
の間で前記駆動回路を切り替えさせる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御回路が、任意のある時点で電流を流す前記スイッチング素子を制御するように構成された1つ又は複数の駆動信号を供給することにより、前記駆動回路を前記第1のモード又は前記第2のモードで動作させるように構成された、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御回路が、第1の駆動信号を供給することにより、前記第1のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成され、前記制御回路が、第2の駆動信号を供給することにより、前記第2のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成された、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のモードにおいて、前記第1の駆動信号の値が第1の駆動周波数で切り替わり、前記第2の駆動信号が前記第1の駆動信号に対して反転することにより、前記誘導回路の前記変動電圧の前記極性を前記第1の駆動周波数で切り替えさせ、
前記第2のモードにおいて、前記第1の駆動信号の前記値が第2の駆動周波数で切り替わり、前記第2の駆動信号が、前記第2のスイッチング素子に電流が流れることを実質的に防止した状態に前記第2のスイッチング素子を維持するとともに、前記第4のスイッチング素子に電流が流れることを許容する状態に前記第4のスイッチング素子を維持するように構成された、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御回路が、前記第1の駆動信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第2の駆動信号を決定するように構成された、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御回路が、前記第1の駆動信号のほか、制御信号に基づいて、前記第2の駆動信号を決定するように構成された、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御回路が、前記第1の駆動信号及び前記制御信号を出力するように構成されたコントローラを備えた、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御信号が、前記第1のモード及び前記第2のモードのいずれで前記駆動回路を動作させるかを決定するように構成された、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御回路が、前記第1の駆動信号及び前記制御信号を入力として受信し、前記第2の駆動信号を出力するように構成された信号処理素子を備えた、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記信号処理素子が、否定論理和ゲートである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記制御回路が、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御して、前記誘導素子に供給される電流の周波数を制御することにより、前記誘導素子が前記サセプタ構成体を加熱する程度を制御するように構成された、請求項2~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記複数のスイッチング素子が、トランジスタであり、前記制御回路が、前記トランジスタのそれぞれに供給されるスイッチング電位を制御することにより、前記トランジスタのスイッチングを制御するように構成された、請求項2~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記トランジスタがそれぞれ、nチャネル電界効果トランジスタであり、任意選択として、前記トランジスタがそれぞれ、nチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタである、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記トランジスタがそれぞれ、ソース、ドレイン、及びゲートを備え、使用時、前記各スイッチング電位が、各トランジスタの前記ゲートに供給される、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記誘導回路が、前記誘導素子を含むLC共振回路である、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記LC共振回路が、容量素子と直列に配置された前記誘導素子を含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記制御回路が、前記第1のモード及び前記第2のモードのいずれで前記駆動回路が動作するかを制御することにより、前記誘導素子が前記サセプタ構成体を加熱する程度を制御するように構成された、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の装置を備えた非燃焼性エアロゾル供給デバイス。
【請求項22】
使用時の前記入力直流電流及び/又は使用時のスイッチング電位を供給するように構成された直流電源を備えた、請求項21に記載の非燃焼性エアロゾル供給デバイス。
【請求項23】
使用時、前記誘導素子により誘導加熱されるように構成された前記サセプタ構成体を備えた、請求項21又は22に記載の非燃焼性エアロゾル供給デバイス。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか一項に記載の非燃焼性エアロゾル供給デバイスと、
前記エアロゾル生成材料と、
を備えた非燃焼性エアロゾル供給システムであって、
使用時、前記エアロゾル生成材料が、前記サセプタ構成体により加熱されて前記エアロゾルを生成するように構成された、非燃焼性エアロゾル供給システム。
【請求項25】
前記エアロゾル生成材料が、タバコであるか、又は、タバコを含む、請求項24に記載の非燃焼性エアロゾル供給システム
【請求項26】
非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置を制御する方法であって、
前記装置が、
エアロゾル生成材料を加熱することによりエアロゾルを生成するように構成されたサセプタ構成体を誘導加熱する誘導素子を含む誘導回路と、
入力直流電流から、前記誘導素子を駆動して前記サセプタ構成体を誘導加熱する前記誘導回路に変動電圧を供給するように構成された駆動回路と、
制御回路と、
を備え、
前記方法が、前記制御回路によって、前記駆動回路が、前記誘導回路に供給された前記変動電圧の極性を繰り返し切り替える第1のモードと、前記駆動回路が、非ゼロの大きさの第1の電圧を前記誘導回路に供給することと、実質的に電圧を前記誘導回路に供給しないことと、を繰り返し切り替える第2のモードと、において、前記駆動回路を選択的に動作させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置に関し、より詳細には、使用時にエアロゾル生成材料を加熱するサセプタの誘導加熱用の誘導素子を備えた非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
シガレット、シガー等の喫煙品は、使用中にタバコを燃焼させて、タバコ煙を生成する。燃焼なしに化合物を放出させる製品の創出によって、これらの物品の代替物を提供しようとする試みがなされている。このような製品の例は、いわゆる「非燃焼加熱式」製品又はタバコ加熱デバイス若しくは製品であり、材料を燃焼させずに加熱することによって化合物を放出させる。この材料は、例えばタバコ又は他の非タバコ製品が考えられ、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【発明の概要】
【0003】
(概要)
本開示の第1の態様によれば、非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置であって、エアロゾル生成材料を加熱することによりエアロゾルを生成するように構成されたサセプタ構成体を誘導加熱する誘導素子を含む誘導回路と、入力直流電流から、誘導素子を駆動してサセプタ構成体を誘導加熱する誘導回路に変動電圧を供給するように構成された駆動回路と、駆動回路が、誘導回路に供給された電圧の極性を繰り返し切り替える第1のモードと、駆動回路が、非ゼロの大きさの第1の電圧を誘導回路に供給することと、実質的に電圧を誘導回路に供給しないことと、を繰り返し切り替える第2のモードと、において、駆動回路を選択的に動作させるように構成された制御回路と、を備えた、装置が提供される。
【0004】
駆動回路は、Hブリッジ構成に配置された複数のスイッチング素子を備えていてもよい。複数のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を含む高位側スイッチング素子ペアと、第3のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子を含む低位側スイッチング素子ペアと、を含んでいてもよく、第1のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子が、誘導回路の第1側に電気接続され、第2のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子が、誘導回路の第2側に電気接続されている。
【0005】
駆動回路は、使用時、高位側スイッチング素子ペア間の第1の点と低位側スイッチング素子ペア間の第2の点との間に電位を接続するように構成されていてもよい。
【0006】
第1のモードにおいて、制御回路は、第1のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子に電流を流して、誘導回路の電圧がプラス極性を有し得るようにすることと、第2のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子に電流を流して、誘導回路の電圧がマイナス極性を有し得るようにすることと、の間で駆動回路を切り替えさせるようにしてもよい。第2のモードにおいて、制御回路は、第1のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子に電流を流して、誘導回路の電圧がプラス極性を有し得るようにすること、又は、第2のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子に電流を流して、誘導回路の電圧がマイナス極性を有し得るようにすることと、実質的に電圧を誘導回路に供給しないことと、の間で駆動回路を切り替えさせるようにしてもよい。
【0007】
制御回路は、任意のある時点で電流を流すスイッチング素子を制御するように構成された1つ又は複数の駆動信号を供給することにより、駆動回路を第1のモード又は第2のモードで動作させるように構成されていてもよい。
【0008】
制御回路は、第1の駆動信号を供給することにより、第1のスイッチング素子及び第3のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成されていてもよい。制御回路は、第2の駆動信号を供給することにより、第2のスイッチング素子及び第4のスイッチング素子のスイッチングを制御するように構成されていてもよい。
【0009】
第1のモードにおいては、第1の駆動信号の値が第1の駆動周波数で切り替わるようになっていてもよく、また、第2の駆動信号が第1の駆動信号に対して反転することにより、誘導回路の電圧の極性を第1の駆動周波数で切り替えさせるようにしてもよい。第2のモードにおいては、第1の駆動信号の値が第2の駆動周波数で切り替わるようになっていてもよく、また、第2の駆動信号は、第2のスイッチング素子に電流が流れることを実質的に防止した状態に第2のスイッチング素子を維持するとともに、第4のスイッチング素子電流が流れることを許容する状態に第4のスイッチング素子を維持するように構成されていてもよい。
【0010】
制御回路は、第1の駆動信号に少なくとも部分的に基づいて、第2の駆動信号を決定するように構成されていてもよい。
【0011】
制御回路は、第1の駆動信号のほか、制御信号に基づいて、第2の駆動信号を決定するように構成されていてもよい。
【0012】
制御回路は、第1の駆動信号及び制御信号を出力するように構成されたコントローラを備えていてもよい。
【0013】
制御信号は、第1のモード及び第2のモードのいずれでドライバ構成を動作させるかを決定するように構成されていてもよい。
【0014】
制御回路は、第1の駆動信号及び制御信号を入力として受信し、第2の駆動信号を出力するように構成された信号処理素子を備えていてもよい。
【0015】
信号処理素子は、NOR(否定論理和)ゲートであってもよい。
【0016】
制御回路は、スイッチング素子のスイッチング周波数を制御して、誘導素子に供給される変動電流の周波数を制御することにより、誘導素子がサセプタ構成体を加熱する程度を制御するように構成されていてもよい。
【0017】
スイッチング素子は、トランジスタであってもよく、制御回路は、トランジスタそれぞれに供給される各スイッチング電位を制御することにより、トランジスタのスイッチングを制御するように構成されていてもよい。
【0018】
トランジスタはそれぞれ、nチャネル電界効果トランジスタであってもよい。トランジスタはそれぞれ、例えばnチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタであってもよい。
【0019】
トランジスタはそれぞれ、ソース、ドレイン、及びゲートを備えていてもよく、使用時、各スイッチング電位が、各トランジスタのゲートに供給される。
【0020】
誘導回路は、誘導素子を含むLC共振回路であってもよい。
【0021】
LC共振回路は、容量素子と直列に配置された誘導素子を含んでいてもよい。
【0022】
制御回路は、第1のモード及び第2のモードのいずれで駆動回路が動作するかを制御することにより、誘導素子がサセプタ構成体を加熱する程度を制御するように構成されていてもよい。
【0023】
本開示の第2の態様によれば、本開示の第1の態様に記載の装置を備えた非燃焼性エアロゾル供給デバイスが提供される。
【0024】
この非燃焼性エアロゾル供給デバイスは、使用時の入力直流電流及び/又は使用時のスイッチング電位を供給するように構成されたDC(直流)電源を備えていてもよい。
【0025】
この非燃焼性エアロゾル供給デバイスは、使用時、誘導素子により誘導加熱されるように構成されたサセプタ構成体を備えていてもよい。
【0026】
本開示の第3の態様によれば、本開示の第2の態様に記載の非燃焼性エアロゾル供給デバイスと、エアロゾル生成材料と、を備えた非燃焼性エアロゾル供給システムであって、使用時、エアロゾル生成材料が、サセプタにより加熱されてエアロゾルを生成するように構成された、非燃焼性エアロゾル供給システムが提供される。
【0027】
エアロゾル生成材料は、タバコであってもよいし、タバコを含んでいてもよい。
【0028】
本開示の第4の態様によれば、非燃焼性エアロゾル供給デバイス用の装置を制御する方法であって、装置が、エアロゾル生成材料を加熱することによりエアロゾルを生成するように構成されたサセプタ構成体を誘導加熱する誘導素子を含む誘導回路と、入力直流電流から、誘導素子を駆動してサセプタ構成体を誘導加熱する誘導回路に変動電圧を供給するように構成された駆動回路と、制御回路と、を備え、当該方法が、制御回路によって、駆動回路が、誘導回路に供給された電圧の極性を繰り返し切り替える第1のモードと、駆動回路が、非ゼロの大きさの第1の電圧を誘導回路に供給することと、実質的に電圧を誘導回路に供給しないことと、を繰り返し切り替える第2のモードと、において、駆動回路を選択的に動作させるステップを含む、方法が提供される。
【0029】
本発明の別の特徴及び利点については、本発明の好適な実施形態に関する以下の説明から明らかとなるであろうが、これは、添付の図面を参照しつつ、一例として示しているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一例に係る、非燃焼性エアロゾル供給デバイスを模式的に示した図である。
図2】一例に係る、非燃焼性エアロゾル供給デバイスの誘導素子とともに使用する装置を模式的に示した図である。
図3】一例に係る、非燃焼性エアロゾル供給デバイスの誘導素子とともに使用する装置の一部を示した図である。
図4】一例に係る、非燃焼性エアロゾル供給デバイスの誘導素子とともに使用する装置の別の部分を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(詳細な説明)
誘導加熱は、電磁誘導によって導電体(サセプタと称する場合がある)を加熱するプロセスである。誘導加熱器は、電磁石等の誘導素子と、交流電流等の変動電流を電磁石に通過させる回路とを備えていてもよい。電磁石中の変動電流は、変動磁界を生成する。変動磁界は、電磁石に対して好適に配置されたサセプタに侵入して、サセプタの内側に渦電流を生成する。サセプタは、渦電流に対する電気抵抗を有するため、この抵抗に対する渦電流の流れによって、サセプタがジュール加熱により加熱される。また、サセプタが鉄、ニッケル、又はコバルト等の強磁性材料を含む場合は、サセプタ中の磁気ヒステリシス損すなわち変動磁界との位置合わせの結果としての磁性材料中の磁気双極子の向きの変化によっても熱が生成され得る。
【0032】
誘導加熱においては、例えば伝導による加熱と比較して、サセプタの内側で熱が生成されるため、急速加熱が可能となる。さらに、誘導加熱器とサセプタとの間の物理的な接触が一切不要なため、構成及び用途の自由度が増す。
【0033】
誘導加熱器は、抵抗器により与えられる抵抗(R)と、誘導素子(例えば、サセプタを誘導加熱するように構成可能な電磁石)により与えられるインダクタンス(L)と、キャパシタにより与えられるキャパシタンス(C)とからなる直列に接続されたRLC回路を備えていてもよい。場合によっては、インダクタ及び抵抗器を接続する回路の部品のオーム抵抗による抵抗が与えられるため、RLC回路は、必ずしもこのように抵抗器を含んでいる必要はない。このような回路は、例えばLC回路と称する場合もある。このような回路は、電気的共振を示す場合があり、回路素子のインピーダンス又はアドミッタンスの虚部が互いに打ち消し合う特定の共振周波数で発生する。RLC又はLC回路において共振が発生するのは、インダクタの磁場が減衰することで巻線に電流が生じ、これがキャパシタを充電する一方、放電するキャパシタが電流を供給することによりインダクタに磁場を構築するためである。回路が共振周波数で駆動されると、インダクタ及びキャパシタの直列インピーダンスが最小となり、回路電流が最大となる。したがって、RLC又はLC回路を共振周波数又はその近傍で駆動すると、効果的及び/又は効率的な誘導加熱がもたらされ得る。
【0034】
トランジスタは、電気信号をスイッチングする半導体デバイスである。トランジスタは通常、電子回路に接続する少なくとも3つの端子を備える。
【0035】
電界効果トランジスタ(FET)は、印加電界の効果の利用によってトランジスタの有効コンダクタンスを変化させ得るトランジスタである。電界効果トランジスタは、ボディB、ソース端子S、ドレイン端子D、及びゲート端子Gを備え得る。電界効果トランジスタは、電荷キャリア(電子又はホール)がソースSとドレインDとの間で流れ得る半導体を含むアクティブチャネルを備える。チャネルの伝導度すなわちドレインD及びソースS端子間の伝導度は、例えばゲート端子Gに印加された電位により生成されるゲートG及びソースS端子間の電位差の関数である。エンハンスメントモードFETにおいては、ゲートG-ソースS間電圧が実質的にゼロの場合にFETがオフとなり(すなわち、電流が実質的に通過しなくなり)、ゲートG-ソース間電圧が実質的にゼロではない場合にオンとなり得る(すなわち、電流が実質的に通過する)。
【0036】
nチャネル(又は、n型)電界効果トランジスタ(n-FET)は、チャネルがn型半導体を含む電界効果トランジスタであり、電子が多数キャリアでホールが少数キャリアである。例えば、n型半導体は、ドナー不純物(例えば、リン等)がドープされた真性半導体(例えば、シリコン等)を含み得る。nチャネルFETにおいては、ドレイン端子Dがソース端子Sよりも高い電位に置かれる(すなわち、ドレイン-ソース電圧が正、言い換えると、ソース-ドレイン電圧が負となる)。nチャネルFETを「オン」にするため(すなわち、電流が通過し得るようにするため)、ソース端子Sの電位よりも高いスイッチング電位がゲート端子Gに印加される。
【0037】
pチャネル(又は、p型)電界効果トランジスタ(p-FET)は、チャネルがp型半導体を含む電界効果トランジスタであり、ホールが多数キャリアで電子が少数キャリアである。例えば、p型半導体は、アクセプタ不純物(例えば、ホウ素等)がドープされた真性半導体(例えば、シリコン等)を含み得る。pチャネルFETにおいては、ソース端子Sがドレイン端子Dよりも高い電位に置かれる(すなわち、ドレイン-ソース電圧が負、言い換えると、ソース-ドレイン電圧が正となる)。pチャネルFETを「オン」にするため(すなわち、電流が通過し得るようにするため)、ソース端子Sの電位よりも低い(例えば、ドレイン端子Dの電位よりは高くてもよい)スイッチング電位がゲート端子Gに印加される。
【0038】
金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)は、ゲート端子Gが絶縁層によって半導体チャネルから電気的に絶縁された電界効果トランジスタである。いくつかの例においては、ゲート端子Gが金属で、絶縁層が酸化物(例えば、二酸化シリコン等)の「金属酸化物半導体」であってもよい。ただし、他の例においては、ゲートが金属以外の材料(ポリシリコン等)であること、及び/又は、絶縁層が酸化物以外の材料(他の誘電体材料等)であることも可能である。それにも関わらず、このようなデバイスを通常は金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)と称し、本明細書において、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)又はMOSFETという用語は、このようなデバイスを含むものと解釈すべきことが了解される。
【0039】
MOSFETは、半導体がn型のnチャネル(又は、n型)MOSFETであってもよい。nチャネルMOSFET(n-MOSFET)は、nチャネルFETに関して上述したのと同じように動作し得る。別の例として、MOSFETは、半導体がp型のpチャネル(又は、p型)MOSFETであってもよい。pチャネルMOSFET(p-MOSFET)は、pチャネルFETに関して上述したのと同じように動作し得る。n-MOSFETは通常、p-MOSFETよりもソース-ドレイン抵抗が低い。このため、「オン」状態(すなわち、電流が通過する状態)において、n-MOSFETは通常、p-MOSFETと比較して発熱が少なく、したがって、p-MOSFETよりも動作時のエネルギー消費が少なくて済む。さらに、n-MOSFETは通常、p-MOSFETと比較して、スイッチング時間(すなわち、ゲート端子Gに供給されるスイッチング電位を変化させてから、電流が通過するか否かをMOSFETが変化させるまでの特性応答時間)が短い。これにより、スイッチングレートを高くするとともにスイッチング制御を改善することができる。
【0040】
図1は、一例に係る、デバイス100を模式的に示している。デバイス100は、非燃焼性エアロゾル供給デバイス100である。非燃焼性エアロゾル供給デバイス100は、DC電源104(本例においては、バッテリ104)、回路106、誘導素子108、及びエアロゾル生成材料116を加熱するように構成されたサセプタ110を備える。DC電源104は、回路106に電気接続されている。DC電源104は、DC電力を回路106に供給するように構成されている。回路106は、誘導素子108に電気接続されている。誘導素子108は、例えば電磁石(例えば、コイル又はソレノイド)であってよく、例えば平面状であってよく、例えば銅により形成されていてもよい。回路106は、DC電源104からの入力DC電流を変動(例えば、交流)電流に変換するように構成されている。回路106は、誘導素子108に変動電流を送り込むように構成されている。
【0041】
サセプタ110は、誘導素子108に対して、誘導素子108から当該サセプタ110に誘導エネルギーを伝達するように構成されている。サセプタは、鉄、ニッケル、及びコバルト等の例示的な金属のうちの1つ又は組み合わせを含み得る強磁性部を備えていてもよい。誘導素子108は、変動電流が送り込まれると、上述の通り、ジュール加熱及び/又は磁気ヒステリシス加熱によってサセプタ110を加熱する。サセプタ110は、使用時、例えば伝導、対流、及び/又は放射による加熱によってエアロゾル生成材料116を加熱することにより、エアロゾルを生成するように構成されている。いくつかの例において、サセプタ110及びエアロゾル生成材料116は、非燃焼性エアロゾル供給デバイス100に対する挿入及び/若しくは取り出し、並びに使い捨てが可能な一体型ユニットを構成する。例えば、エアロゾル生成材料116及びサセプタ110は、消耗品に含まれていてもよい。このような例においては、デバイス100及び物品を併せて非燃焼性エアロゾル供給システムと称する場合もある。他の例においては、エアロゾル生成材料116が交換可能である一方、サセプタ110がデバイス100の永久部品を構成していてもよい。いくつかの例において、誘導素子108は、例えば交換のため、デバイス100から取り出し可能であってもよい。非燃焼性エアロゾル供給デバイス100は、手持ち式であってもよい。非燃焼性エアロゾル供給デバイス100は、エアロゾル生成材料116を加熱することにより、ユーザが吸引するエアロゾルを生成するように構成されていてもよい。
【0042】
図1を再び参照して、非燃焼性エアロゾル供給デバイス100は、バッテリ104、回路106、誘導素子108、サセプタ110、及びエアロゾル生成材料116を収容する外側本体112を備える。外側本体112は、使用時に生成されたエアロゾルがデバイス100から出られるようにしたマウスピース114を備える。
【0043】
使用時、ユーザは、例えばそれ自体既知のボタン(図示せず)又はパフ検出器(図示せず)を介して、回路106を起動することにより、誘導素子108に変動電流を送り込んでサセプタ116を誘導加熱し、ひいてはエアロゾル生成材料116を加熱することによって、エアロゾル生成材料116からエアロゾルを生成させることができる。エアロゾルは、空気入口(図示せず)からデバイス100に取り込まれた空気中に生成され、マウスピース114まで搬送されてデバイス100から出ていく。
【0044】
少なくともいくつかの例においては、蒸気が生成された後、少なくとも一部が凝縮してエアロゾルを形成してから非燃焼性エアロゾル供給デバイスを出てユーザに吸引される。
【0045】
この点、最初の留意点として、蒸気は一般的に、臨界温度よりも低い温度で気相の物質であり、例えば、温度を下げることなく圧力を上げることによって液体へと凝縮可能であることを意味する。一方、エアロゾルは一般的に、空気又は別の気体中の微細な固体粒子又は液滴のコロイドである。「コロイド」は、微視的に分散した不溶性粒子が別の物質中に懸濁した物質である。
【0046】
便宜上、本明細書において、エアロゾル(aerosol)という用語は、エアロゾル、蒸気、又はエアロゾル及び蒸気の組み合わせを意味するものとする。
【0047】
エアロゾル生成材料は、例えば加熱、照射、又はその他任意の方法でエネルギー供給された場合にエアロゾルを生成可能な材料である。エアロゾル生成材料は、例えば固体、液体、又はゲルの形態であってもよく、活性物質及び/又は香味料を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。いくつかの実施形態において、エアロゾル生成材料は、「アモルファス固体」を含んでいてもよく、これは代替として、「モノリシック固体」(すなわち、非繊維質)と称する場合もある。いくつかの実施形態において、アモルファス固体は、乾燥ゲルであってもよい。アモルファス固体は、液体等の何らかの流体を内部に保持可能な固体材料である。いくつかの実施形態において、エアロゾル生成材料は、例えばおよそ50wt%、60wt%、又は70wt%~およそ90wt%、95wt%、又は100wt%のアモルファス固体を含んでいてもよい。
【0048】
エアロゾル生成材料は、1つ若しくは複数の活性物質及び/若しくは香料、1つ若しくは複数のエアロゾル形成材料、並びに任意選択として、1つ若しくは複数の他の機能材料を含んでいてもよい。
【0049】
本明細書において使用する活性物質は、生理学的活性材料(生理学的反応の実現又は増強が意図される材料)であってもよい。活性物質は、例えば栄養補助食品、向精神薬、精神活性剤から選択されるようになっていてもよい。活性物質は、自然に存在するものであってもよいし、合成して得られるものであってもよい。活性物質は、例えばニコチン、カフェイン、タウリン、テイン、B6、B12、若しくはC等のビタミン類、メラトニン、カンナビノイド、又はこれらの構成物質、誘導体、若しくは組み合わせを含んでいてもよい。活性物質は、タバコ、大麻、又は別の植物の1つ又は複数の構成物質、誘導体、又は抽出物を含んでいてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、活性物質は、ニコチンを含む。いくつかの実施形態において、活性物質は、カフェイン、メラトニン、又はビタミンB12を含む。
【0051】
1つ又は複数の他の機能材料は、pH調整剤、着色剤、防腐剤、バインダ、充填剤、安定剤、及び/又は酸化防止剤のうちの1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0052】
エアロゾル形成材料は、エアロゾルを形成可能な1つ又は複数の構成物質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、エアロゾル形成材料は、グリセロール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エリスリトール、メソ-エリスリトール、バニリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ジエチル硫酸塩、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ジアセチン混合物、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、トリブチリン、酢酸ラウリル、ラウリン酸、ミリスチン酸、及び炭酸プロピレンのうちの1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0053】
消耗品は、エアロゾル生成材料を含む物品又はエアロゾル生成材料から成る物品であって、その一部又は全部がユーザによる使用時に消費されることが意図される。消耗品は、エアロゾル生成材料格納エリア、エアロゾル生成材料移動コンポーネント、エアロゾル生成エリア、ハウジング、ラッパー、マウスピース、フィルタ、及び/又はエアロゾル変性剤等の1つ又は複数の他のコンポーネントを備えていてもよい。また、消耗品は、使用時に熱を放出してエアロゾル生成材料からエアロゾルを生成させる加熱器等のエアロゾル生成器を備えていてもよい。上述の通り、加熱器は、例えば燃焼性材料、電気伝導により加熱可能な材料、又はサセプタを含んでいてもよい。
【0054】
回路106、誘導素子108、サセプタ110、及び/又は全体としてのデバイス100は、様々な温度へのエアロゾル生成材料116の加熱によって、エアロゾル生成材料116の燃焼なく、エアロゾル生成材料116の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成されていてもよい。例えば、温度範囲は、およそ50℃~およそ250℃、およそ50℃~およそ150℃、およそ50℃~およそ120℃、およそ50℃~およそ100℃、およそ50℃~およそ80℃、又はおよそ60℃~およそ70℃等、およそ50℃~およそ350℃であってもよい。いくつかの例において、温度範囲は、およそ160℃~およそ280℃又はおよそ170℃~およそ220℃である。いくつかの例において、温度範囲は、この範囲以外であってもよく、温度範囲の上限は、280℃前後であってもよいし、300℃より高くてもよい。
【0055】
ここで図2を参照して、この図は、一例に係る、非燃焼性エアロゾル供給デバイス100の誘導素子108に対する回路106をより詳しく模式的に示している。
【0056】
回路106は、ドライバ構成204を備えるが、本明細書においては駆動回路204とも称する。また、回路106は、ドライバ制御構成208及びコントローラ220を備えるが、本明細書においては一体的に制御回路と称する場合もある。また、コントローラ220がバッテリ104に電気接続されることにより、バッテリ104がDC電圧をコントローラ220に供給するようになっている。例として、コントローラ220は、バッテリ104から電力を受電するように構成され、回路106及び、場合によっては、デバイス100の他の構成素子に電気信号を出力する複数の出力を備えた処理ユニット(例えば、MCU)である。ドライバ構成204は、相対的に高い電位+v202を供給するコントローラ220のプラス端子と、例としてグランドに接続され、相対的に低い電位GND206を供給するコントローラ220のマイナス端子と、に電気接続されている。例として、コントローラ220によりドライバ構成204に出力される電圧は、バッテリ104によりコントローラ220に供給される電圧と実質的に等しい。したがって、ドライバ構成204には、ある電圧が生じる。
【0057】
ドライバ構成204は、インダクタンスLを有する誘導素子108を含むLC誘導回路205及びキャパシタンスCを有するキャパシタ210(本例においては、誘導素子108に直列に接続されている)に電気接続されている。
【0058】
ドライバ構成204は、バッテリ104からの入力直流電流によりコントローラ220を介して、変動電圧をLC回路205に供給するように構成されている。これにより、使用時には、変動電流が誘導素子108に流れる。
【0059】
ドライバ制御構成208は、ドライバ構成204又はその構成素子を制御して、ドライバ構成によりLC回路205に出力される電圧を制御するように構成されている。具体的に、本例においては、以下により詳しく説明する通り、ドライバ制御構成208は、様々な時間におけるドライバ構成204のトランジスタへのスイッチング電位の供給を制御することによって、ドライバ構成204に変動電流を生成させるように構成されている。
【0060】
ドライバ制御構成208は、コントローラ220を介して、本例においてはスイッチング電位の起源でもあるバッテリ104に電気接続されている。
【0061】
また、本例においては、ドライバ制御構成208がコントローラ220のプラス及びマイナス端子に接続されていることから、ドライバ制御構成208への電位の供給ひいては給電によって、ドライバ構成204を制御するスイッチング電位をドライバ制御構成208が生成可能となる。本例において、ドライバ制御構成208は、バッテリ電圧+vをドライバ構成204に供給する端子とは異なるコントローラ220の端子に接続されている。これについては、以降の図面を参照しつつ、以下により詳しく説明する。
【0062】
ドライバ制御構成208は、コントローラ220からの制御信号を受信するためのコントローラ220に対する別途接続部221を備える。図2においては、単一のラインとして単純化された形態で別途接続部221を示している。接続部221の別途詳細については、図4を参照しつつ以下に説明する。
【0063】
バッテリ104を起源としてコントローラ220により供給された電位による給電によって、ドライバ制御構成208は、スイッチング電位を供給してドライバ構成204を制御するように構成されている。スイッチング電位は、ドライバ構成204のトランジスタのスイッチングに適するように選択される。スイッチング電位は、例えばバッテリ電圧+v以下であってもよい。スイッチング電位の値は、ドライバ構成204に用いられるトランジスタの種類によって決まり得る。
【0064】
本例において、ドライバ制御構成208は、LC回路205に供給される変動(例えば、交流)電圧の周波数ひいては誘導素子108に送り込まれる変動電流の周波数を制御するように構成されている。前述の通り、LC回路は、共振を示す場合がある。いくつかの例において、ドライバ制御構成208は、LC回路205の共振周波数又はその近くとなるように、LC回路に送り込まれる変動電流の周波数(駆動周波数)を制御する。例えば、駆動周波数は、MHzの範囲(例えば、0.5~1.5MHzの範囲(例えば、1MHz))であってもよい。別の例において、駆動周波数は、kHzの範囲(例えば、100kHz~1MHzの範囲(例えば、400kHz前後))であってもよい。当然のことながら、例えば特定のLC回路205(及び/若しくはその構成素子)並びに/又はサセプタ110の使用に応じて、他の周波数が用いられるようになっていてもよい。例えば、当然のことながら、LC回路205の共振周波数は、回路205のインダクタンスL及びキャパシタンスCに依存し、ひいては、使用されるインダクタ108、キャパシタ210、及びサセプタ110に依存し得る。
【0065】
使用時、ドライバ制御構成208は、例えばユーザにより起動されると、変動電流をLC回路205ひいては誘導素子108に送り込んでサセプタ116を誘導加熱するようにドライバ構成204を制御する。これにより、誘導素子108がエアロゾル生成材料(図2には示さず)を加熱して、例えばユーザが吸引するエアロゾルを生成する。
【0066】
ここで図3を参照して、この図は、ドライバ構成204をより詳しく模式的に示している。ドライバ構成204は、Hブリッジ構成に配置された複数のトランジスタ(本例においては、4つのトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4)を備える(なお、Hブリッジ構成に配置又は接続されたトランジスタをHブリッジと称する場合もある)。
【0067】
Hブリッジ構成は、高位側ペア304のトランジスタQ1、Q2及び低位側ペア306のトランジスタQ3、Q4を含む。高位側ペア304の第1のトランジスタQ1は、低位側ペア306の第3のトランジスタQ3に対して電気的に隣り合い、高位側ペア304の第2のトランジスタQ2は、低位側ペア314の第4のトランジスタQ4に対して電気的に隣り合う。高位側ペア304は、低位側ペア306を接続する第2の電位GND206よりも高い第1の電位+v202に接続するためのものである。
【0068】
本例において、ドライバ構成204は、高位側ペア304のトランジスタQ1、Q2間の第1の点322と低位側ペア306のトランジスタQ3、Q4間の第2の点320との間に、コントローラ220(図3には示さず)から供給されたバッテリ電位+vを接続するように構成されている。具体的に、第1の点322は、正のバッテリ電圧出力+vを与えるコントローラ220の端子に接続するためのものであり、第2の点320は、バッテリ104のマイナス端子につながるコントローラ220の端子に接続するためのものである。したがって、使用時には、第1の点322と第2の点320との間に電位差が生じる。
【0069】
図2を参照して説明した通り、ドライバ構成204は、誘導素子(図3には示さず)を備えたLC回路205に電気接続され、これを駆動するように構成されている。具体的に、(LC回路205の一部としての)誘導素子は、高位側ペアの一方のトランジスタQ2及び低位側ペアの一方のトランジスタQ4の間の第3の点324と高位側ペアの他方のトランジスタQ1及び低位側第2のペアの他方のトランジスタQ3の間の第4の点326との間に接続される。
【0070】
本例において、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、nチャネル電界効果トランジスタである。各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4は、使用時、スイッチング電位による制御によって、電流を選択的に通過させることができる。各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4は、ソースS、ドレインD、及びゲートGを備える。スイッチング電位は各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のゲートGに供給され、これによって上述の通り、各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のソースSとドレインDとの間に電流が通過可能となる。したがって、スイッチング電位が供給された場合には電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が「オン」となって電流が通過し、スイッチング電位が供給されない場合には電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が「オフ」となって電流が実質的に通過しなくなる高抵抗を有するように、各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が構成されている。
【0071】
図3に示す例において、各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4は、スイッチング電圧を搬送する関連のスイッチング電圧ライン311、312、313、314を(それぞれ)有する。
【0072】
ドライバ制御構成208(図3には示さず、図2参照)は、各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4に対するスイッチング電位の供給の制御によって、各トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が「オン」モード(すなわち、電流が通過する低抵抗モード)になるか、「オフ」モード(すなわち、実質的に電流が通過しない高抵抗モード)になるかを制御するように構成されている。
【0073】
各電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4へのスイッチング電位の供給のタイミングを制御することにより、ドライバ制御構成208は、変動(例えば、交流)電圧がLC回路205に供給され、その誘導素子(図3には示さず)に変動電流が供給されるようにしてもよい。
【0074】
以下により詳しく論じる通り、ドライバ制御構成208は、電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4の「オン」及び「オフ」スイッチングのシーケンス制御によって誘導回路に供給される変動電圧を制御するのに使用可能である。
【0075】
例えば、第1の時間においては、ドライバ制御構成208が第1のスイッチング状態であってもよく、スイッチング電位が第1及び第4の電界効果トランジスタQ1、Q4に供給される一方、第2及び第3の電界効果トランジスタQ2、Q3には供給されない。このため、第1及び第4の電界効果トランジスタQ1、Q4が低抵抗モードとなる一方、第2及び第3の電界効果トランジスタQ2、Q3が高抵抗モードとなる。したがって、この第1の時間においては、ドライバ構成204の第1の点322から、第1の電界効果トランジスタQ1と、第1の方向(図3の意味で左から右)にLC回路205と、第4の電界効果トランジスタQ4と、を通って、ドライバ構成204の第2の点320まで電流が流れ得る。ただし、第2の時間においては、ドライバ制御構成208が第2のスイッチング状態であってもよく、スイッチング電位が第2及び第3の電界効果トランジスタQ2、Q3に供給される一方、第1及び第4の電界効果トランジスタQ1、Q4には供給されない。このため、第2及び第3の電界効果トランジスタQ2、Q3が低抵抗モードとなる一方、第1及び第4の電界効果トランジスタQ1、Q4が高抵抗モードとなる。したがって、この第2の時間においては、ドライバ構成204の第1の点322から、第2の電界効果トランジスタQ2と、第1の方向と反対の第2の方向(すなわち、図3の意味で右から左)にLC回路205と、第3の電界効果トランジスタQ3と、を通って、ドライバ構成204の第2の点320まで電流が流れ得る。したがって、第1及び第2のスイッチング状態の切り替えにより、ドライバ制御構成208は、LC回路205に交流電圧、ひいては、誘導素子108に変動電流を供給(すなわち、送り込む)ようにドライバ構成204を制御可能である。
【0076】
上述のような動作において、HブリッジのトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、一部の時間に「オン」となり、他の時間に「オフ」となる。Hブリッジは、高位側ペア304の第1のトランジスタが「オン」で、Hブリッジの反対側の低位側ペア306の一方のトランジスタも「オン」となる第1のスイッチング状態と、高位側ペア304の他方のトランジスタが「オン」で、低位側ペア306の他方のトランジスタも「オン」となる第2のスイッチング状態と、の間で切り替わる。これにより、ドライバ構成204によって誘導回路205に供給される電圧の極性が繰り返し切り替わる。本明細書において、この種の動作は、ドライバ構成204が「フルブリッジ」モードで動作しているものと称する場合がある。
【0077】
上述のフルブリッジモードで動作するほか、ドライバ構成204は、非ゼロの大きさの電圧を誘導回路205に供給することと、実質的に電圧を誘導回路205に供給しないことと、の間でHブリッジが繰り返し切り替わる第2のモードでも動作するように構成されている。例として、これを「ハーフブリッジ」モードでの動作と称する場合がある。ハーフブリッジモードにおいて、ドライバ構成204は、電圧を誘導回路205に供給する第3のスイッチング状態と実質的に電圧を誘導回路205に供給しない第4のスイッチング状態との間で切り替わるように構成されている。例えば、第3のスイッチング状態においては、第1及び第4のトランジスタQ1、Q4が「オン」となる一方、第2及び第3のトランジスタQ2、Q3が「オフ」となり得る。したがって、第3のスイッチング状態においては、第1のトランジスタQ1及び第4のトランジスタQ4に電流が流れるため、図3において左から右に示す方向で誘導回路205にも流れ得る。第4のスイッチング状態においては、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4がすべてオフとなるか、又は、少なくとも高位側ペア304の両トランジスタ若しくは低位側ペア306の両トランジスタがオフとなり得るため、電流が誘導回路205を通ってグランド206に流れる経路が存在しない。したがって、ハーフブリッジモードにおけるHブリッジは、電圧が誘導回路205に供給されるスイッチング状態と実質的に電圧が誘導回路205に供給されないスイッチング状態との間で切り替わる。
【0078】
同様に、Hブリッジ204がハーフブリッジモードで動作している場合は、第3のスイッチング状態で第2のトランジスタQ2及び第3のトランジスタQ3に(図3に示す意味で右から左に)電流が流れて電圧を誘導回路205に供給し得る一方、第4のスイッチング状態においては実質的に電圧が誘導回路205に供給されない。
【0079】
言い換えると、ハーフブリッジモードで動作している場合、ドライバ構成204は、ある状態で正電圧又は負電圧を誘導回路205に供給することと、別の状態で実質的に電圧を誘導回路205に供給しないことと、の間で交互に切り替わる。これは、正電圧を誘導回路205に供給することと、負電圧を誘導回路205に供給することと、の間でドライバ構成204が繰り返し切り替わるフルブリッジモードと対比可能である。
【0080】
例として、ハーフブリッジモードにおいては、電圧が誘導回路に供給される時間の割合がフルブリッジモードよりも小さい。したがって、Hブリッジをハーフブリッジモードで動作させることにより、フルブリッジモードと比較した場合に、誘導素子108によるサセプタ110への電力の伝達が抑えられるため、サセプタ110がデバイス100により加熱される程度も抑えることができる。例として、デバイス100は、サセプタ110を加熱させるのが望ましい程度に応じて、フルブリッジモード及びハーフブリッジモードの一方で選択的に動作するように構成されていてもよい。一例として、サセプタ110の温度を目標温度まで上げるのに用いられる加熱電力と比較した場合、サセプタ110を目標温度に維持するのに用いられる加熱電力は小さくなると考えられる。このような例において、デバイス100は、フルブリッジモードで動作して、サセプタ110の温度を高くする大電力を供給することにより、例えばサセプタ110を目標動作温度まで昇温させてエアロゾル生成材料116を加熱するように構成されていてもよい。その後、目標動作温度に十分達した場合、デバイス100は、ハーフブリッジモードでの動作に切り替わって、サセプタ110を目標温度に維持するためのより小さな加熱電力を供給するようにしてもよい。
【0081】
また、サセプタ110が誘導素子108により加熱される程度を制御する他の手段がデバイス100により用いられるようになっていてもよい。例えば、ドライバ構成204が駆動される周波数、すなわち、ドライバ構成204によって誘導回路205に供給される電圧の変更又は切り替えが行われる周波数を制御することにより、誘導素子108の加熱電力が制御されるようになっていてもよい。例として、フルブリッジモード又はハーフブリッジモードで動作する場合の駆動周波数を切り替えることにより、誘導素子108の加熱電力の調整がなされるようになっていてもよい。例として、フルブリッジモードでの動作からハーフブリッジモードでの動作への切り替えにより加熱電力が大幅に抑えられ、例えば、4分の1に抑えられるようになっていてもよい。したがって、例えば、駆動周波数の調整により加熱電力が微調整され得る一方、フルブリッジモードとハーフブリッジモードとの間のモード切り替えによって、加熱電力が大きく調整され得る。
【0082】
供給される加熱電力は、DC供給電圧及びサセプタ110の見掛けのインピーダンスに依存する。例えば、バッテリ104が3ボルトを供給し、サセプタ110の見掛けのインピーダンスが0.4オームである場合、利用可能な加熱電力は、(3ボルト×3ボルト)/0.4オーム=22.5ワットと決定され得る。ただし、バッテリ104が4.2ボルトを供給する場合、利用可能な加熱電力は、(4.2ボルト×4.2ボルト)/0.4オーム=44.1ワットと決定され得る。したがって、バッテリ電圧が4.2ボルトである例において、例えばサセプタ110を所望の温度に維持するのに必要と決定された電力と考えられる1.5ワットの加熱電力を供給するには、利用可能な44.1ワットの電力のうちの1.5ワットを供給するものとする。これは、本例において、44.1/1.5又は、等価的に、29.4:1の比で電力を制御する必要があることを意味する。ハーフブリッジモードへの切り替えによって、利用可能な電力が4分の1に抑えられるため、本例においては、サセプタの温度を維持するのに、利用可能な11ワット前後の電力のうちの1.5ワットを供給するものとする。これは、7.35:1前後の比である。したがって、ハーフブリッジモードへの切り替えによって、所望の加熱電力を供給するために制御する必要がある供給電力の範囲が抑えられる。
【0083】
いくつかの例において、駆動周波数の制御による加熱電力の制御は、国際公開第2018/178114A2号に記載のように実行されるが、そのすべての内容を参照により本明細書に援用する。例えば、コントローラ220は、誘導回路205の共振周波数でHブリッジ204を駆動するように構成されてもよく、この共振周波数は、加熱電力を最大化するため、測定されるようになっていてもよいし、例えば予め定められていてもよい。誘導回路108の共振周波数での駆動と比較して加熱電力を抑えるため、コントローラ220は、誘導回路205の共振周波数と異なる(例えば、共振周波数よりも低い)周波数でHブリッジを駆動するようにしてもよい。これを回路の「オフレゾナンス」駆動と称する場合があり、サセプタ110が誘導素子108により加熱される程度を抑えることができる。オフレゾナンス駆動の場合は、回路が共振周波数で駆動される場合と比較して、共振回路に流れる電流が小さくなる。したがって、所与の供給電圧に関し、インダクタ108からサセプタ110へのエネルギー伝達が小さくなるため、サセプタ110が誘導加熱される程度は、所与の供給電圧に対して回路が共振周波数で駆動される場合と比較して低くなる。Hブリッジが共振回路205を駆動する周波数が共振周波数から(上下いずれかに)離れるほど、サセプタ110が誘導加熱される程度が低くなる。
【0084】
いくつかの例においては、ドライバ構成204の駆動周波数の制御による加熱電力の制御の追加又は代替として、Hブリッジ204の入力電圧が制御されるようになっていてもよい。例えば、入力電圧の低減により、サセプタ110が加熱される程度を抑え、入力電圧の増大により、サセプタ110が加熱される程度を増すようにしてもよい。
【0085】
図4は、回路106の別途詳細であり、特に、ドライバ制御構成の詳細を示している(ドライバ制御構成の構成素子の表現が異なるため、図4では標識化しておらず、図2のドライバ制御構成208参照)。
【0086】
図4に示すように、ドライバ制御構成208は、供給ライン311、313を介して、スイッチング電位を第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ3に供給するように構成された第1のドライバ410を備える。また、ドライバ制御構成208は、供給ライン312、314を介して、スイッチング電位を第2のトランジスタQ2及び第4のトランジスタQ4に供給するように構成された第2のドライバ420を備える。上述の通り、第1のドライバ410及び第2のドライバ420は、バッテリ電圧+vを与えるコントローラ220の端子とバッテリ104のマイナス端子につながるコントローラ220の端子との間に接続されている。本例において、第1のドライバ410及び第2のドライバ420は、Hブリッジ204と並列に接続されている。図4に示すように、第1及び第2のドライバ410、420、第3及び第4のトランジスタQ3、Q4、並びにバッテリ104のマイナス端子につながるコントローラ220の端子間には、抵抗器320が電気接続されている。例として、抵抗器320は、Hブリッジ204を通ってグランドGND206に流れる電流を(例えば、コントローラ220により)モニタリングする電流源抵抗器として用いられるようになっていてもよい。
【0087】
第1のドライバ410及び第2のドライバ420は、当該第1のドライバ410及び当該第2のドライバ420により各供給ライン311、312、313、314を介してトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4に供給されるスイッチング電位を制御する各駆動信号1010、1020を受信する。第1及び第2の駆動信号1010、1020は、以下により詳しく論じる通り、コントローラ220及びドライバ制御構成208の他の回路に由来する。本例において、駆動信号1010、1020は、高低の値間で切り替わる矩形波信号であり、以下の議論では「1」及び「0」と標識化する。一例においては、ドライバ構成204をフルブリッジモードで動作させるため、駆動信号1010、1020が相互に逆位相である。すなわち、第1の駆動信号1010が値1を有する場合は第2の駆動信号1020が値0を有し、その逆もまた同様である。例えば、第1の駆動信号1010が位相0°の矩形波信号である一方、第2の駆動信号1020が位相180°の矩形波信号であってもよい。
【0088】
任意のある時点で、第1の信号1010の値が1であるか0であるかによって、第1のドライバ410が第1のトランジスタQ1及び第3のトランジスタQ3に供給するスイッチング電位が決まる。同様に、任意のある時点で、第2の信号1020の値が1であるか0であるかによって、第2のドライバ420が第2のトランジスタQ2及び第4のトランジスタQ4に供給するスイッチング電位が決まる。一例において、第1の駆動信号1010の値が1である場合、第1のドライバ410は、スイッチング電位を第1のトランジスタQ1及び第3のトランジスタQ3に供給して、第1のトランジスタQ1を「オン」、第3のトランジスタQ3を「オフ」にするが、ここで上述の通り、所与のトランジスタが「オン」である場合は電流が流れ、所与のトランジスタが「オフ」である場合は電流が流れ得ない。これは、上述の第1のスイッチング状態に対応する。さらに、本例において、第1の駆動信号1010の値が0である場合、第1のドライバ410は、スイッチング電位を第1のトランジスタQ1及び第3のトランジスタQ3に供給して、第1のトランジスタQ1を「オフ」、第3のトランジスタQ3を「オン」にする。これは、上述の第2のスイッチング状態に対応する。
【0089】
同様に、同じ例において、第2の駆動信号1020の値が1である場合、第2のドライバ420は、スイッチング電位を第2のトランジスタQ2及び第4のトランジスタQ4に供給して、第2のトランジスタQ2を「オン」、第4のトランジスタQ4を「オフ」にし、第2の駆動信号1020の値が0である場合、第2のドライバ420は、スイッチング電位を第2のトランジスタQ2及び第4のトランジスタQ4に供給して、第2のトランジスタQ2を「オフ」、第4のトランジスタQ4を「オン」にする。これは、以下の表1のようにまとめられる。
【0090】
【表1】
【0091】
上述の構成では、相互に逆位相の第1及び第2の駆動信号1010、1020を供給することにより、第1及び第2の駆動信号1010、1020の値が切り替わる場合に、誘導回路205の電圧が繰り返し極性を切り替える、言い換えると、誘導回路205の電圧降下方向が繰り返し方向を変えるフルブリッジモードでドライバ構成204を動作させるようにする。駆動信号1010、1020が矩形波信号であることから、このモードで動作する場合は、実質的に任意のある時点で、誘導回路205の電圧が一方向又は他方向に降下している。
【0092】
これは、第1のトランジスタQ1及び第4のトランジスタQ4が第1の矩形波電圧信号を誘導回路205に供給し、第2のトランジスタQ2及び第3のトランジスタQ3が第2の矩形波電圧信号を誘導回路205に供給し、第1及び第2の矩形波信号が相互に180°位相がずれているものと考えられる。本例において、第1及び第2の矩形波信号はそれぞれ、DC電源電圧(例えば、4V)と0Vとの間で切り替わる。したがって、フルブリッジ動作の効果は、DC電源電圧の2倍で組み合わされた矩形波信号を供給するものと考えられる。
【0093】
ここで図4を再び参照して、第1及び第2のドライバ410、420を備えたドライバ制御構成208は、論理ゲート430を備えることが見て取れる。論理ゲート430は、第1の駆動信号1010を第1の入力として、制御信号1030を第2の入力として取得し、第2の駆動信号1020を出力として供給する。論理ゲート430に入力される第1の駆動信号1010及び制御信号1030はいずれも、コントローラ220からの出力である。図4は、図2を参照して簡単に上述したコントローラ220とドライバ制御構成208との間の接続部221をより詳しく示している。接続部221のうちの第1の接続部221aが第1の駆動信号1010を第1のドライバ410及び論理ゲート430の第1の入力に搬送する。接続部221のうちの第2の接続部が制御信号1030を論理ゲート430の第2の入力に搬送する。
【0094】
論理ゲート430は、両入力である第1の駆動信号1010及び制御信号1030の値が0である場合、第2の駆動信号1020に値1を出力するNORゲートである。それ以外の場合すなわちいずれかの入力の値が1である場合、NORゲート430は、第2の駆動信号1020に値0を出力する。
【0095】
コントローラ220が出力する第1の駆動信号1010及び制御信号1030の様々な値に対してNORゲート430が出力する第2の駆動信号1020を以下の表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の最初の2行は、Hブリッジがフルブリッジモードにおいて切り替わる状態すなわち上述の第1のスイッチング状態及び第2のスイッチング状態を表す。表2の3行目及び4行目は、Hブリッジがハーフブリッジモードにおいて切り替わる状態を表す。
【0098】
表2の最初の2行に見られるように、制御信号1030の値が0である場合、第1の駆動信号1010の値が1である場合は第2の駆動信号1020の値が0であり、第1の駆動信号1010の値が0である場合は第2の駆動信号1020の値が1である。このため、制御信号1030の値が0である場合は、表1を参照して上述した通り、ドライバ構成204により誘導回路205に供給される電圧の極性が第1の駆動信号1010の周波数で切り替わる。
【0099】
ただし、表2の3行目及び4行目に見られるように、制御信号1030の値が1である場合は、第1の駆動信号1010の値に関わらず、第2の駆動信号1020の値が0である。これは、ドライバ構成204をハーフブリッジモードで動作させる効果を有する。すなわち、制御信号1030が値1を維持する状態では、第4のトランジスタQ4がオンを維持する一方、第2のトランジスタQ2がオフを維持する。したがって、第1の駆動信号1010の値が1である場合は第1のトランジスタQ1がオン(且つ、第2のトランジスタQ2がオフ)であり、図4に示すように、誘導回路205の電圧が左から右に降下する。言い換えると、この状態においては、誘導回路205の左側が回路205の右側よりも高い電位差にある。ただし、第1の駆動信号1010の値が0である場合は、第1のトランジスタQ1がオフである一方、第2のトランジスタQ2もオフを維持する。したがって、この状態においては、第3及び第4のトランジスタQ3、Q4がオンであるにも関わらず、高位側ペアのトランジスタQ1、Q2がいずれもオフであるため、実質的に電圧が誘導回路205に供給されない。したがって、ドライバ構成204は、第1のドライバ410に供給される矩形波の第1の駆動信号1010の値が1である場合にのみ、電流を誘導回路205に送り込むように動作する。すなわち、本例において、ハーフブリッジモードで動作する場合、実質的に半分の時間は電圧が誘導回路205に供給され、実質的に残り半分の時間は電圧が誘導回路205に供給されない。
【0100】
これは、繰り返しになるが、第1のトランジスタQ1及び第4のトランジスタQ4が第1の矩形波電圧信号を誘導回路205に供給し、残りの時間は電圧が誘導回路205に供給されないものと考えられる。したがって、フルブリッジ動作と比較したハーフブリッジ動作の効果は、半分の時間はDC電源電圧で動作する矩形波信号すなわちDC電源電圧の大きさの矩形波信号を供給する一方、残りの時間は実質的に電圧を供給しないものと考えられる。これは、フルブリッジモードで供給される矩形波の電圧の半分の大きさの電圧で矩形波信号が動作するものと考えられる。このため、ハーフブリッジモードにおいて供給される電力は、フルブリッジモードでの動作と比較した場合に、4分の1に抑えられる。
【0101】
したがって、上記説明から、ドライバ構成204がフルブリッジモードで動作するかハーフブリッジモードで動作するかの選択に制御信号1030を使用可能であることが分かる。NORゲート430を含む構成は、制御信号1030に基づいて、第2の駆動信号1020を第1の駆動信号1010と逆位相にするか、又は、第1の駆動信号1010が矩形波として進行する間、第2の駆動信号1020を低位に保持する単純な構成を提供する。したがって、本例においては、一方の矩形波駆動信号である第1の駆動信号1010及び制御信号1030をドライバ制御構成208に供給しさえすればよい。第2の駆動信号1020は、これら2つの信号の入力に応答してNORゲート430から出力されるため、コントローラ220によって別途生成する必要がない。第2の駆動信号1020を供給するとともにドライバ構成204をフルブリッジ動作とハーフブリッジ動作との間で切り換え得る単純な構成がこのように与えられる。
【0102】
第1の駆動信号1010及び制御信号1030を制御することによって、コントローラ220は、ドライバ構成204の動作を制御することにより、誘導素子108によるサセプタ110の加熱を制御することができる。上述の通り、コントローラ220は、制御信号1030を使用して、ドライバ構成204がハーフブリッジとして動作するかフルブリッジとして動作するかを制御することができる。これは、サセプタ110に供給される加熱電力の制御に使用可能である。例えば、上述の通り、ハーフブリッジモードでの動作によって、誘導回路205により供給される加熱電力は、フルブリッジモードでの動作と比較した場合に、4分の1に抑えられる。また、上述の通り、コントローラ220は、例えば第1の駆動信号1010の周波数の制御によって、誘導回路205が駆動される周波数を制御することにより、サセプタ110が加熱される程度を制御するようにしてもよい。この構成により、誘導回路205が駆動される周波数をコントローラ220が変更しようとする場合、これは、第1の駆動信号1010の周波数を変えるだけで行うことができる。
【0103】
上記例において、ドライバ構成204は、Hブリッジ構成に配置された4つのトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4を備えるが、当然のことながら、他の例においては、他のトランジスタを備えていてもよく、Hブリッジ構成の一部であってもよいし、Hブリッジ構成の一部でなくてもよい。
【0104】
上述の例において、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4はそれぞれ、nチャネルトランジスタ(例えば、エンハンスメントモードnチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。ただし、他の例においては、トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のうちの1つ又は複数がpチャネル電界効果トランジスタ(例えば、エンハンスメントモードpチャネル金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)であってもよい。
【0105】
同じく上述の通り、nチャネルFETの場合は、ドレイン端子Dがソース端子Sよりも高い電位に置かれ(すなわち、ドレイン-ソース電圧が正、言い換えると、ソース-ドレイン電圧が負となり)、nチャネルFETを「オン」にする(すなわち、電流が通過できるようにする)ため、ゲート端子Gに印加されるスイッチング電位がソース端子Sでの電位よりも高い。
【0106】
上記例においては、電界効果トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4が金属酸化物電界効果トランジスタであるものの、当然のことながら、これは必ずしも必要なことではなく、他の例においては、他種のトランジスタ(例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT))が用いられるようになっていてもよい。いくつかの例においては、SiC(炭化ケイ素)及びGaN(窒化ガリウム)等の広バンドギャップ材料を採用したトランジスタが用いられるようになっていてもよく、例えばFET又はHEMTであってもよい。
【0107】
上述の例においては、コントローラ220を介して供給される同じバッテリ電圧+vによってドライバ制御構成208が給電されるものの、他の例においては、ドライバ制御構成208の電位がバッテリ電圧+vと異なっていてもよい。例えば、ドライバ制御構成208及びドライバ構成204の電位は、コントローラ220からの異なる出力を介して供給されるようになっていてもよい。
【0108】
上述の例においては、バッテリ電圧+vをドライバ構成204に供給する端子とは異なるコントローラ220の端子にドライバ制御構成208が接続されているものの、他の例においては、電位をドライバ構成204に供給するのと同じ端子によって、ドライバ制御構成208に電位が供給されるようになっていてもよい。
【0109】
上述の例において、非燃焼性エアロゾル供給デバイス100は、当該デバイスが生成したエアロゾルをユーザが吸引し得るマウスピースを備える。ただし、他の例においては、デバイス100がマウスピースを備えていなくてもよい。例えば、エアロゾル生成材料116を含む物品は、ユーザが口にくわえて生成エアロゾルを吸引し得る部分を備えていてもよい。
【0110】
いくつかの例において、非燃焼性エアロゾル供給システムは、ベーピングデバイス又は電子ニコチン送達システム(END)としても知られる電子タバコであるが、エアロゾル生成材料中のニコチンの存在は要件ではないことに留意されたい。
【0111】
いくつかの例において、非燃焼性エアロゾル供給システムは、非燃焼加熱式システムとしても知られるエアロゾル生成材料加熱システムである。このようなシステムの一例は、タバコ加熱システムである。
【0112】
いくつかの例において、非燃焼性エアロゾル供給システムは、エアロゾル生成材料(これらのうちの1つが加熱されるようになっていてもよいし、複数が加熱されるようになっていてもよい)の組み合わせによってエアロゾルを生成する混成システムである。エアロゾル生成材料はそれぞれ、例えば固体、液体、又はゲルの形態であってもよく、ニコチンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。いくつかの例において、混成システムは、液体若しくはゲルエアロゾル生成材料並びに固体エアロゾル生成材料を含む。固体エアロゾル生成材料は、例えばタバコ又は非タバコ製品を含んでいてもよい。
【0113】
非燃焼性エアロゾル供給システムは、非燃焼性エアロゾル供給デバイスと、非燃焼性エアロゾル供給デバイスとともに使用する消耗品と、を備えていてもよい。
【0114】
いくつかの例において、本開示は、エアロゾル生成材料を含み、非燃焼性エアロゾル供給デバイスとともに使用するように構成された消耗品に関する。本開示の全体を通して、これらの消耗品を物品又はエアロゾル生成物品と称する場合がある。
【0115】
いくつかの例において、非燃焼性エアロゾル供給システムは、消耗品を受容するエリア、エアロゾル生成器、エアロゾル生成エリア、ハウジング、マウスピース、フィルタ、及び/又はエアロゾル変性剤を備えていてもよい。
【0116】
いくつかの例において、非燃焼性エアロゾル供給デバイスとともに使用する消耗品は、エアロゾル生成材料、エアロゾル生成材料格納エリア、エアロゾル生成材料移動コンポーネント、エアロゾル生成器、エアロゾル生成エリア、ハウジング、ラッパー、フィルタ、マウスピース、及び/又はエアロゾル変性剤を備えていてもよい。
【0117】
いくつかの例において、送達される物質は、エアロゾル生成材料であってもよいし、エアロゾル化の対象ではない材料であってもよい。いずれの材料も、必要に応じて、1つ若しくは複数の活性構成物質、1つ若しくは複数の香料、1つ若しくは複数のエアロゾル形成材料、並びに/又は1つ若しくは複数の他の機能材料を含んでいてもよい。
【0118】
材料は、支持部上又は支持部中に存在して、基板を形成していてもよい。支持部は、例えば紙、ボール紙、板紙、厚紙、再生材料、プラスチック材料、セラミック材料、複合材、ガラス、金属、又は合金であってもよいし、これらの材料を含んでいてもよい。いくつかの例において、支持部は、サセプタを備える。いくつの例において、サセプタは、材料内に埋め込まれている。いくつかの代替例において、サセプタは、材料の片側又は両側にある。
【0119】
サセプタは、交番磁場等の変動磁界の侵入により加熱可能な材料である。サセプタは、変動磁界の侵入によって加熱材料の誘導加熱が生じるように、導電性材料であってもよい。加熱材料は、変動磁界の侵入によって当該加熱材料の磁気ヒステリシス加熱が生じるように、磁性材料であってもよい。サセプタは、導電性及び磁性の両加熱メカニズムで加熱可能となるように、両特性であってもよい。本明細書においては、変動磁界を生成するように構成されたデバイスを誘導素子と称するが、磁場生成器と称する場合もある。
【0120】
エアロゾル生成器は、エアロゾル生成材料からエアロゾルを生成するように構成された装置である。本開示の例において、エアロゾル生成器は、エアロゾル生成材料に熱エネルギーを加えることにより、エアロゾル生成材料から1つ又は複数の揮発性物質を放出させてエアロゾルを形成するように構成されている。
【0121】
上記例は、本発明の説明に役立つ実例として理解されるものとする。任意の一例に関して記載の任意の特徴は、単独又は他の記載特徴との組み合わせにて使用可能であり、また、例のその他いずれか又はその任意の組み合わせの1つ又は複数の特徴との組み合わせにて使用可能であることが了解されるものとする。さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲に規定の上述していない同等物及び改良も採用可能である。
図1
図2
図3
図4