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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】物質活性化装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/14 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61N1/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024079058
(22)【出願日】2024-05-15
【審査請求日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2023128026
(32)【優先日】2023-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399116054
【氏名又は名称】上森 三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上森 三郎
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162913(JP,A)
【文献】国際公開第2007/069433(WO,A1)
【文献】中国実用新案第2901689(CN,Y)
【文献】中国実用新案第2922271(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース、及び前記ケース内に収容された第1永久磁石を有する浮上体と、
前記浮上体の下方に配置され鉛直軸を中心として円環状に形成された第2永久磁石、及び前記第2永久磁石の径方向内方に配置される電磁石を有し、前記電磁石の電流を制御して磁力と重力とをバランスさせることにより前記浮上体を空中に浮上させた状態で、当該浮上体を前記鉛直軸回りに回転可能に支持する磁気浮上機構と、
前記電磁石と前記浮上体との間に配置される非磁性かつ導電性の金属板と、
記浮上体上に載置される磁場発生器と、を備える物質活性化装置であって、
前記磁場発生器は、
中空に形成された外殻体と、
前記外殻体を上下方向に貫通した状態で前記外殻体に固定され、前記外殻体の中心を通過するように上下方向に延びる軸線を有する筒体と、
前記筒体の径方向外方かつ前記外殻体の内部において、前記外殻体の周方向に沿って等間隔に配置され、前記軸線上にゼロ磁場を発生させるように前記外殻体の接線方向に着磁された複数の第3永久磁石と、を備え、
前記磁気浮上機構により空中に浮上した前記浮上体を、前記磁場発生器と共に前記鉛直軸回りに回転させ、前記金属板から放出され前記浮上体を通過して前記磁場発生器内に入り込んだ金属電子を、前記ゼロ磁場、及び複数の前記第3永久磁石が前記ゼロ磁場の周囲に形成する磁場によって、前記鉛直軸を中心とする放射方向に飛散させることで、前記物質活性化装置から離れている物質に対して、飛散した前記金属電子を浴びせて活性化させる、物質活性化装置
【請求項2】
前記第2永久磁石の上方において前記電磁石を囲むように配置され、外部電源から給電される円環コイルをさらに備える請求項1に記載の物質活性化装置。
【請求項3】
前記金属板は、金、銀、銅、及びプラチナの少なくとも一つからなる、請求項1又は請求項2に記載の物質活性化装置。
【請求項4】
前記磁場発生器は、前記周方向に隣り合う2つの前記第3永久磁石が、互いに同極同士を対向させた状態で配置され、この配置によって現れる複数の磁壁線により囲まれない開放空間に位置する前記軸線上に、開放的かつ静的な前記ゼロ磁場を発生させる、請求項1又は請求項2に記載の物質活性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物質活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質が有する波動性エネルギーを増幅させて、当該物質を活性化させる活性化装置が知られている。この活性化装置として、例えば特許文献1に示すように、磁石の表面に、金、銀、銅等の非磁性の導電性金属を接触させたものが提案されている。特許文献1に記載された活性化装置は、導電性金属に被処理物を接触又は接近させると、当該被処理物である固体や流体を活性化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/155465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の活性化装置を用いて被処理物を活性化させるためには、被処理物を導電性金属に接触又は接近させる必要があり、煩わしいという問題があった。
【0005】
かかる課題に鑑み、本開示は、被処理物から離れていても被処理物を活性化することができる物質活性化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の物質活性化装置は、第1永久磁石を有する浮上体と、前記浮上体の下方に配置され鉛直軸を中心として円環状に形成された第2永久磁石、及び前記第2永久磁石の径方向内方に配置される電磁石を有し、前記電磁石の電流を制御して磁力と重力とをバランスさせることにより前記浮上体を空中に浮上させた状態で、当該浮上体を前記鉛直軸回りに回転可能に支持する磁気浮上機構と、前記電磁石と前記浮上体との間に配置される非磁性かつ導電性の金属板と、ゼロ磁場を発生させる複数の第3永久磁石を有し、前記浮上体上に載置される磁場発生器と、を備える。
【0007】
磁気浮上機構の電磁石と浮上体との間に、非磁性かつ導電性の金属板を配置することで、金属板には、電磁石の電流により渦電流が発生する。このように渦電流が発生すると、金属板は、その金属抵抗により発生するジュール熱(誘導加熱)で加熱されることで、金属板を構成する金属の電子が金属板から放出される。本願発明者は、この現象に着目して鋭意研究を重ねた結果、金属板から放出された金属の電子を被処理物が浴びると、被処理物が活性化されることを見出した。そして、鉛直軸回りに回転する浮上体上に、ゼロ磁場を発生させる磁場発生器を載置することで、物質活性化装置から離れた場所まで金属の電子が飛散する知見を得、かかる知見に基づいて上記(1)に係る発明を完成させた。これにより、物質活性化装置が被処理物から離れていても、金属板から飛散する金属の電子によって被処理物を活性化することができる。
【0008】
(2)前記(1)の物質活性化装置は、前記第2永久磁石の上方において前記電磁石を囲むように配置され、外部電源から給電される円環コイルをさらに備えるのが好ましい。
本願発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、第2永久磁石の上方において電磁石を囲むように配置された円環コイルに給電することで、金属の電子がさらに遠くへ飛散する知見を得、かかる知見に基づいて上記(2)に係る発明を完成させた。これにより、物質活性化装置が被処理物からさらに離れていても、金属板から飛散する金属の電子によって被処理物を活性化することができる。
【0009】
(3)前記(1)又は(2)の物質活性化装置において、前記金属板は、金、銀、銅、及びプラチナの少なくとも一つからなるのが好ましい。
本願発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、金属板が、金、銀、銅、及びプラチナの少なくとも一つからなることで、金属の電子がさらに遠くへ飛散する知見を得、かかる知見に基づいて上記(3)に係る発明を完成させた。これにより、物質活性化装置が被処理物からさらに離れていても、金属板から飛散する金属の電子によって被処理物を活性化することができる。
【0010】
(4)前記(1)から(3)のいずれかの物質活性化装置において、前記磁場発生器は、開放的かつ静的なゼロ磁場を発生させるのが好ましい。
本願発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、磁場発生器が開放的かつ静的なゼロ磁場を発生することで、金属の電子がさらに遠くへ飛散する知見を得、かかる知見に基づいて上記(3)に係る発明を完成させた。これにより、物質活性化装置が被処理物からさらに離れていても、金属板から飛散する金属の電子によって被処理物を活性化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の物質活性化装置によれば、被処理物から離れていても被処理物を活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る物質活性化装置を示す正面図である。
図2】物質活性化装置を分解した状態を示す斜視図である。
図3】浮上体の永久磁石の着磁方向と、磁気浮上機構の永久磁石及び複数の電磁石の各着磁方向を示す説明図である。
図4】磁場発生器を示す斜視図である。
図5図4のI-I矢視断面図である。
図6図4のII-II矢視断面図である。
図7】磁場発生器の磁壁線を示す模式図である。
図8】磁場発生器の変形例を示す断面図である。
図9図8の磁場発生器の磁壁線を示す模式図である。
図10図8の磁場発生器の磁場を図8のIII方向又はIV方向から見た図である。
図11図8の磁場発生器の磁場を図8のV方向又はVI方向から見た図である。
図12】物質活性化装置の作動中に発生する現象を示す分解斜視図である。
図13】脳波に関する試験の結果を示す表である。
図14】血中酸素濃度に関する試験の結果を示す表である。
図15】指の血管幅及び表面温度に関する試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[物質活性化装置の全体構成]
図1は、実施形態に係る物質活性化装置1を示す正面図である。図2は、物質活性化装置1を分解した状態を示す斜視図である。図1及び図2において、物質活性化装置1は、浮上体2と、磁気浮上機構3と、金属板4と、円環コイル5と、磁場発生器6と、を備える。図2では、磁場発生器6の図示を省略している。
【0014】
浮上体2は、上下にそれぞれ開口を有する漏斗状のケース2aと、ケース2aに収容される円板状の永久磁石(第1永久磁石)2bと、ケース2aの上側の開口を塞ぐ円板状の蓋板2cと、を備える。永久磁石2bは、円板状のネオジム磁石であり、その軸方向に着磁されたN極とS極とを有する(図3参照)。ケース2a及び蓋板2cは、いずれも合成樹脂製である。蓋板2cの上面は、磁場発生器6が載置される載置面2dとされている。浮上体2は、全体として略円柱状に形成されている。
【0015】
浮上体2の全体形状は、本実施形態に限定されず、例えば多角柱状でもよい。永久磁石2bの種類は、本実施形態に限定されず、例えばアルニコ磁石又はフェライト磁石であってもよい(後述する永久磁石13,24についても同様)。
【0016】
[磁気浮上機構]
磁気浮上機構3は、周知の浮上メカニズムにより、浮上体2を空中に浮上させた状態で、浮上体2を鉛直軸C1回りに回転可能に支持する機構である。磁気浮上機構3は、下ケース11、制御基板12、永久磁石(第2永久磁石)13、複数の電磁石14、及び上ケース15を有する。
【0017】
下ケース11は、平面視において六角形の椀形状に形成され、上方に開口している。下ケース11の下面には、複数の脚部16が固定されている。下ケース11は、脚部16を介して、床面やテーブルの上面等の設置面90に設置される。下ケース11には、外部電源である電源アダプタ17が設けられている。
【0018】
制御基板12は、下ケース11内の底面に載置される。制御基板12は、複数の電磁石14に流す電流をそれぞれ制御する制御回路部(図示省略)を有する。制御基板12は、電源アダプタ17から給電される。
【0019】
永久磁石13は、鉛直軸C1を中心として円環状に形成されている。永久磁石13は、制御基板12上に搭載され、浮上体2の下方に配置される。本実施形態の永久磁石13は、円環状のネオジム磁石であり、その軸方向に着磁されたN極とS極とを有する(図3参照)。永久磁石13の内径は、浮上体2の永久磁石2bの外径よりも大きい。
【0020】
複数の電磁石14は、永久磁石13の径方向内方において制御基板12上に搭載される。本実施形態では、4つの電磁石14が、永久磁石13の中心軸である鉛直軸C1の周りに等間隔に配置される。磁気浮上機構3は、少なくとも1つの電磁石14を有していればよい。
【0021】
各電磁石14は、上下方向に延びる鉄心14aと、鉄心14aに巻回されたコイル14bと、を有する。各電磁石14のコイル14bは、電源アダプタ17から給電される。各電磁石14のコイル14bに流れる電流は、制御基板12の制御回路部によって制御される。各電磁石14の上端部は、永久磁石13よりも上方に突出している(図3参照)。
【0022】
上ケース15は、平面視において六角形の椀形状に形成され、下方に開口している。上ケース15は、下ケース11側に設けられた制御基板12、永久磁石13、及び複数の電磁石14を上方から覆った状態で、ネジ(図示省略)等により下ケース11に固定される。下ケース11及び上ケース15の各形状は、本実施形態に限定されず、平面視において他の多角形又は円形の椀形状であってもよい。
【0023】
図3は、浮上体2の永久磁石2bの着磁方向と、磁気浮上機構3の永久磁石13及び複数の電磁石14の各着磁方向を示す説明図である。磁気浮上機構3において、複数の電磁石14の各着磁方向は、互いに同じ向きであり、永久磁石13の着磁方向と逆向きである。浮上体2の永久磁石2bの着磁方向は、磁気浮上機構3の永久磁石13の着磁方向と同じ向きであり、かつ磁気浮上機構3の電磁石14の着磁方向と逆向きである。
【0024】
本実施形態では、磁気浮上機構3の各電磁石14は、そのコイル14bの一方向に電流を流すことで、軸方向上側がN極、軸方向下側がS極に着磁される。磁気浮上機構3の永久磁石13は、軸方向上側がS極、軸方向下側がN極に着磁されている。浮上体2の永久磁石2bは、軸方向上側がS極、軸方向下側がN極に着磁されている。複数の電磁石14及び各永久磁石13,2bは、いずれもN極とS極が逆向きとなるように着磁されていてもよい。
【0025】
浮上体2の永久磁石2bは、磁気浮上機構3の複数の電磁石14の上方に配置されるので、永久磁石2bと各電磁石14との間には、N極同士が反発し合う磁力(斥力)が発生する。この斥力により、浮上体2は、上方に押し上げられる。
一方、浮上体2の永久磁石2bと磁気浮上機構3の永久磁石13との間には、永久磁石2bのN極と永久磁石13のS極とが互いに引き合う磁力(引力)が発生する。この引力により、浮上体2は、下方に引き下げられる。また、浮上体2は、重力によっても下方に引き下げられる。
【0026】
制御基板12(制御回路部)は、浮上体2を上方へ押し上げる斥力が、浮上体2を下方へ引き下げる引力及び重力とバランスするように、各電磁石14の電流を増減して制御する。これにより、浮上体2は、磁気浮上機構3より上方の所定の高さ位置において、空中に浮上した状態で支持される。この状態で、浮上体2に対して鉛直軸C1回りの一方向又は他方向への回転力を手動で付与すると、浮上体2に作用する回転抵抗は小さいので、浮上体2を長時間にわたって鉛直軸C1回りに回転させることができる。なお、浮上体2は、手動で回転させる以外に、モータで回転駆動させてもよい。
【0027】
[金属板及び円環コイル]
図2において、金属板4は、複数の電磁石14と浮上体2との間に配置される。本実施形態の金属板4は、磁気浮上機構3の上ケース15内において、複数の電磁石14の上側に載置されている。金属板4は、複数の電磁石14を全て覆う大きさの四角形状に形成されている。金属板4は、例えば金、銀、銅、及びプラチナ等の非磁性かつ導電性の金属からなる薄板又は箔である。本実施形態の金属板4は、金、銀、銅、及びプラチナを重ね合わせて構成された箔である。
【0028】
金属板4は、本実施形態に限定されない。例えば、金属板4は、金、銀、銅、及びプラチナの少なくとも一つからなる薄板又は箔であってもよい。また、金属板4は、上ケース15の上面に載置されてもよい。
【0029】
円環コイル5は、永久磁石13の上方において、複数の電磁石14の上部を囲むように配置される。本実施形態の円環コイル5は、鉛直軸C1を中心として円環状に形成され、永久磁石13の上面に載置されている。円環コイル5の最外径は、永久磁石13の外径よりも小さい。円環コイル5は、電源アダプタ17から給電される。
【0030】
[磁場発生器]
図4は、磁場発生器6を示す斜視図である。図5は、図4のI-I矢視断面図である。図4及び図5において、磁場発生器6は、空中に浮上している浮上体2上に載置され(図1参照)、浮上体2と共に回転する。磁場発生器6は、外殻体21、内殻体22、筒体23、及び複数の永久磁石(第3永久磁石)24を有する。
【0031】
外殻体21は、中空の略多角体状に形成されている。本実施形態の外殻体21は、透明な樹脂成形品である。外殻体21は、浮上体2の載置面2dに載置される(図1参照)。内殻体22は、外殻体21の内部に収容された状態で外殻体21に固定されている。内殻体22は、中空の略球状に形成され、外殻体21と同心状に配置されている。
【0032】
筒体23は、外殻体21及び内殻体22を上下方向に貫通した状態で、外殻体21に固定されている。筒体23は、円筒状に形成され、その軸線C2が外殻体21(内殻体22)の中心を通過するように配置されている。筒体23内には、その上下両端において外部に開放される内部空間23aが形成されている。
【0033】
図6は、図4のII-II矢視断面図である。図5及び図6において、複数の永久磁石24は、内殻体22の内部に収容された状態で内殻体22に保持されている。各永久磁石24は、矩形板状に形成されている。複数の永久磁石24は、内殻体22の水平周方向に沿って等間隔に配置されている。本実施形態では、4つの永久磁石24が、筒体23の軸線C2を中心として、水平周方向に90°ごとに配置されている。
【0034】
本実施形態の永久磁石24は、矩形板状のネオジム磁石であり、平面視において内殻体22の接線方向に着磁されたN極とS極とを有する。内殻体22の周方向に隣り合う2つの永久磁石24は、互いに異極同士を対向させた状態で配置されている。
【0035】
具体的には、図6において、12時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の右側がN極、前記接線方向の左側がS極となるように配置されている。3時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の上側がS極、前記接線方向の下側がN極となるように配置されている。6時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の右側がS極、前記接線方向の左側がN極となるように配置されている。9時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の下側がS極、前記接線方向の上側がN極となるように配置されている。図6に示す全ての永久磁石24は、いずれもN極とS極が逆向きとなるように配置されてよい。
【0036】
図7は、磁場発生器6の磁壁線を示す模式図である。図7では、磁場発生器6の上に磁気観察シート(マグネットビューワー)S1を添わせた様子を示している(図8図11も同様)。磁気観察シートS1は、磁性流体を樹脂シートに均一に分散させたシートであり、人間の目には見えない磁界を視覚化することができる。
【0037】
磁場発生器6では、各永久磁石24を図6に示すように配置することで、図7に示すように8本の磁壁線J11~J18が現れる。磁壁線J11~J18は、筒体23の軸線C2を中心として等角度(約45°)ごとに、放射状に延びている。そのうち、4本の磁壁線J11,J13,J15,J17は、軸線C2から、各永久磁石24の中心を通過して、内殻体22の径方向外方に延びている。残りの4本の磁壁線J12,J14,J16,J18は、軸線C2から、内殻体22の周方向に隣接する2つの永久磁石24の間を通過して内殻体22の径方向外方に延びている。
【0038】
上記の磁壁線J11~J18が現れることで、図6に示すように、内殻体22の周方向に隣り合う永久磁石24同士の間を全て通過するように、筒体23の軸線C2回りに回転する単一の磁場X11が形成される。本実施形態の磁場X11は、軸線C2を中心とする図6の時計回り方向に、全ての永久磁石24を通過するように形成される。
【0039】
磁場X11は、軸線C2回りに回転する回転磁場であるため、軸線C2には磁場が作用しない。したがって、磁場X11が形成されることで、筒体23の軸線C2上に動的なゼロ磁場が発生する。これにより、軸線C2上の位置を動的なゼロ磁場としつつ、その周囲において軸線C2回りに回転する磁場X11(回転磁場)が形成される。
【0040】
[磁場発生器の変形例]
図8は、磁場発生器6の変形例を示す断面図である。本変形例の磁場発生器6は、複数の永久磁石24のN極及びS極の配置が異なる。本変形例では、内殻体22の周方向に隣り合う2つの永久磁石24が、互いに同極同士を対向させた状態で配置されている。
【0041】
具体的には、図8において、12時の位置に配置された永久磁石24は、内殻体22の接線方向の右側がS極、前記接線方向の左側がN極となるように配置されている。3時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の上側がS極、前記接線方向の下側がN極となるように配置されている。6時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の右側がN極、前記接線方向の左側がS極となるように配置されている。9時の位置に配置された永久磁石24は、前記接線方向の下側がS極、前記接線方向の上側がN極となるように配置されている。図8に示す全ての永久磁石24は、いずれもN極とS極が逆向きとなるように配置されてよい。
【0042】
図9は、本変形例の磁場発生器6の磁壁線を示す模式図である。磁場発生器6では、各永久磁石24を図8に示すように配置することで、図9に示すように4本の磁壁線J21~J24が現れる。磁壁線J21~J24は、筒体23の軸線C2を中心として放射状に延びている。具体的には、磁壁線J21~J24は、軸線C2を中心として、各永久磁石24の中心を通過して、内殻体22の径方向外方に延びている。これにより、軸線C2は、磁壁線J21~J24により囲まれない開放空間に位置する。
【0043】
上記の磁壁線J21~J24が現れることで、図8に示すように、内殻体22の周方向に隣り合う2つの永久磁石24の同極同士と、その間を含む領域によって、1つの同極領域が形成される。具体的には、内殻体22の周方向に隣り合う2つの永久磁石24のS極同士とその間を含む領域には、S極領域R1,R3が形成される。また、内殻体22の周方向に隣り合う2つの永久磁石24のN極同士とその間を含む領域には、N極領域R2,R4が形成される。これにより、軸線C2を中心として、内殻体22の周方向に、S極領域R1、N極領域R2、S極領域R3、及びN極領域R4が、連続して形成される。
【0044】
上記のようにS極領域R1,R3及びN極領域R2,R4が形成されることで、内殻体22の周方向には、隣り合う異極領域同士の間の一点を中心として回転する複数の磁場X21が、水平方向に形成される。本実施形態では、S極領域R1とN極領域R2との間、N極領域R2とS極領域R3との間、S極領域R3とN極領域R4との間、及びN極領域R4とS極領域R1との間において、それぞれ回転する4つの磁場X21が形成される。
【0045】
4つの磁場X21は、内殻体22の周方向に沿って等間隔、かつ筒体23の軸線C2から等距離に形成されるので、これらの磁場X21の磁力線は、軸線C2上において拮抗する。これにより、軸線C2上では、4つの磁場X21が互いに中和し合う。
【0046】
図10は、本変形例の磁場発生器6の磁場を図8のIII方向又はIV方向から見た図である。図11は、本変形例の磁場発生器6の磁場を図8のV方向又はVI方向から見た図である。図8図11に示すように、内殻体22の周方向には、隣り合う異極領域同士の間において、永久磁石24より上側の一点を中心として回転する複数の磁場X22、及び永久磁石24より下側の一点を中心として回転する複数の磁場X23が、上下方向に形成される。本実施形態では、S極領域R1とN極領域R2との間、N極領域R2とS極領域R3との間、S極領域R3とN極領域R4との間、及びN極領域R4とS極領域R1との間において、それぞれ回転する4つの磁場X22及び4つの磁場X23が形成される。
【0047】
4つの磁場X22は、内殻体22の周方向に沿って等間隔、かつ筒体23の軸線C2から等距離に形成されるので、これらの磁場X22の磁力線は、軸線C2上において拮抗する。これにより、軸線C2上では、4つの磁場X22が互いに中和し合う。同様に、4つの磁場X23は、内殻体22の周方向に沿って等間隔、かつ筒体23の軸線C2から等距離に形成されるので、これらの磁場X23の磁力線は、軸線C2上において拮抗する。これにより、軸線C2上では、4つの磁場X23が互いに中和し合う。
【0048】
以上より、各磁場X21,X22,X23がそれぞれ中和し合うので、軸線C2上には、磁場が作用しない静的なゼロ磁場が形成される。また、軸線C2は、上記のように磁壁線J21~J24により囲まれない開放空間に位置する。これにより、筒体23の軸線C2上に、開放的かつ静的なゼロ磁場(以下、開放的ゼロ磁場という)が発生する。
【0049】
[物質活性化装置の作動中に発生する現象]
図12は、物質活性化装置1の作動中に発生する現象を示す分解斜視図である。図1及び図12において、磁場発生器6が載置された浮上体2を磁気浮上機構3により空中に浮上させるとき、各電磁石14のコイル14bにおいて図12の反時計回り方向(各電磁石14の上面に示す矢印方向)に電流が流れると、金属板4の下方から上方へ貫く磁束φが増加する。
【0050】
磁束φが増加すると、金属板4には、その板面に沿って同心円状の渦電流iが発生する。渦電流iが発生すると、金属板4の金属抵抗によりジュール熱(誘導加熱)が発生し、そのジュール熱によって金属板4が加熱される。このように金属板4が加熱されると、金属板4を構成する金属の電子(自由電子)eが金属板4から放出される。本実施形態では、金、銀、銅、及びプラチナの各電子eが金属板4から放出される。以下、電子eを金属電子eともいう。
【0051】
次に、磁気浮上機構3により空中に浮上した浮上体2に対して、鉛直軸C1回りの回転力を手動で付与すると、浮上体2は、磁場発生器6と共に鉛直軸C1回りに回転する。その際、浮上体2に付与する回転力の方向は、本実施形態の磁場発生器6により形成される磁場X11(回転磁場)の回転方向(図6の時計回り方向)に合わせるのが好ましい。なお、上記の変形例(図8)の磁場発生器6を用いる場合、浮上体2に付与する回転力の方向は、図8の時計回り方向及び反時計回り方向のどちらの方向であってもよい。
【0052】
上記のように金属板4から放出された金属電子eは、磁気浮上機構3の上ケース15及び浮上体2を通過し、磁場発生器6内に入り込む。磁場発生器6内に入り込んだ金属電子eは、動的なゼロ磁場と磁場X11によって、物質活性化装置1から離れた場所まで金属電子eが飛散する。したがって、固体や流体からなる被処理物(物質)は、物質活性化装置1から離れていても、金属電子eを浴びることで活性化される。
【0053】
[効果確認試験1]
本実施形態の物質活性化装置1の効果を確認するための試験を行った。効果確認試験1では、複数の被験者(被処理物)を対象に、物質活性化装置1が脳波に与える影響について試験を行った。この試験では、脳波測定装置「アルファテック7(株式会社脳力開発研究所製)」を用いて測定し、分析ソフト「マインドセンサー7(同所製)」を用いて分析した。
【0054】
各被験者は、試験室内に置かれたテーブルの横で椅子に腰掛けて閉眼安静にした状態で、下記の条件1、条件2、及び条件3の順に、脳波測定装置により各被験者の脳波を測定した。
条件1:試験室内に物質活性化装置1が設置されていない状態で1分間
条件2:試験室内のテーブル上に物質活性化装置1が設置された状態で3分間
条件3:試験室内に物質活性化装置1が設置されていない状態で1分間
【0055】
図13は、脳波に関する試験の結果を示す表である。スローアルファ波は、脳波のうち7~8Hzの脳波である。脳波のうち、スローアルファ波の出力が、他の脳波(例えば、ベータ波、デルタ波、シータ波等)よりも優勢になると、ベータエンドルフィンという「脳の快楽物質」とも称されるホルモンの分泌が活発になり、脳及び体がリラックスすることが知られている。すなわち、スローアルファ波が増大すると、被験者のホルモンの分泌が活性化され、リラックス効果が得られる。
【0056】
また、コヒーレント状態とは、右脳及び左脳の脳波の位相が揃うことでコヒーレント(可干渉)な状態となっていることを示している。実験では、脳波のうち7.8Hzにおけるコヒーレント状態に着目した。コヒーレント状態が持続すると、右脳と左脳の働きが安定化して被験者の脳が活性化され、脳のパフォーマンス(例えば、集中力等の各種の能力)が向上する効果が得られる。
【0057】
被験者A(男性)は、条件1では右脳と左脳の変化は見られなかったが、条件2において右脳と左脳の両方でスローアルファ波が増大し、かつコヒーレント状態が増大した。条件3においても、右脳と左脳の両方で、増大したスローアルファ波及び増大したコヒーレント状態が持続された。
【0058】
被験者B(女性)は、条件1の時点から右脳と左脳の両方で、スローアルファ波は他の脳波よりも優勢であることが確認され、条件2~3においても、スローアルファ波の優勢が持続された。この結果は、被験者Aの試験が行われる段階から被験者Bが試験室内で待機していたので、被験者Aの試験の条件2における物質活性化装置1の影響を被験者Bが受けたものと考えられる。
【0059】
被験者C(男性)は、被験者Bと同様に、条件1の時点から右脳と左脳の両方で、スローアルファ波は他の脳波よりも優勢であることが確認され、条件2~3においても、スローアルファ波の優勢が持続された。この結果は、被験者Aの試験が行われる段階から被験者Cも試験室内で待機していたためと考えられる。
【0060】
以上より、3人の被験者A~Cの全員が、物質活性化装置1が試験室内に設置されることで、スローアルファ波の増大(優勢)又はコヒーレント状態の増大といった脳波の変化が確認された。すなわち、被験者が物質活性化装置1から離れていても、脳が活性化し、リラックス効果又はパフォーマンス向上効果を得られる脳波状態にできることが確認された。
【0061】
[効果確認試験2]
効果確認試験2では、複数の被験者(被処理物)を対象に、物質活性化装置1が血中酸素濃度に与える影響を調査した。血中酸素濃度は、「パルスオキシメータ オキシメイトS-101(紫明メディカルデバイス株式会社製)」を用いて測定した。血中酸素濃度は血管を流れるヘモグロビンのうち酸素と結合しているヘモグロビンの濃度を示す値である。正常な状態であれば、血中酸素濃度は95~99%となる。
【0062】
血中酸素濃度は、心肺機能、肺機能、血管及び気道等が正常であるか否かの指標となる。したがって、正常な状態で血中酸素濃度が上昇すれば、心肺機能、肺機能、血管及び気道等が活性化される。効果確認試験2では、試験室内に各被験者が居る状態で、試験室内に物質活性化装置1が設置される前と設置された後のそれぞれにおいて、各被験者の血中酸素濃度を測定した。
【0063】
図14は、血中酸素濃度に関する試験の結果を示す表である。試験の結果、被験者A~J,Lは、物質活性化装置1の設置後において、設置前よりも血中酸素濃度が1~3%上昇した。被験者Kは、物質活性化装置1の設置前と設置後において、血中酸素濃度の変化は見られなかった。以上より、被験者12人中11人について、物質活性化装置1が試験室内に設置されることで、血中酸素濃度の上昇が認められた。すなわち、被験者が物質活性化装置1から離れていても、肺機能、肺機能、血管及び気道等の活性化効果を得られることが確認できた。
【0064】
[効果確認試験3]
効果確認試験3では、複数の被験者(被処理物)を対象に、物質活性化装置1が血流に与える影響を調査した。血流への影響の指標として、指の血管幅及び表面温度を測定した。血管幅及び表面温度は、「健康モニタリング装置ASTRIM FIT(シスメックス株式会社製)」を用いて測定した。
【0065】
指の血管幅が拡大すると、又は指の表面温度が上昇すると、血流を促進(活性化)する効果が得られる。効果確認試験3では、試験室内において、被験者から約50cm離れた位置に物質活性化装置1が設置される前と設置された後のそれぞれにおいて、各被験者の指の血管幅及び表面温度を測定した。物質活性化装置1が設置された後の測定は、物質活性化装置1の設置時点から1分後に行われた。
【0066】
図15は、指の血管幅及び表面温度に関する試験の結果を示す表である。試験の結果、被験者B~E,G,Hは、物質活性化装置1の設置後において、設置前よりも指の血管幅が0.13~041mmの範囲で拡大し、かつ設置前よりも指の表面温度が0.4~4.3℃の範囲で上昇した。被験者Aは、物質活性化装置1の設置後において、設置前よりも指の表面温度が0.4℃上昇した。被験者Fは、物質活性化装置1の設置後において、設置前よりも指の血管幅が0.02mm拡大した。以上より、被験者8人の全員が、物質活性化装置1が試験室内に設置されることで、指の血管幅の拡大、又は指の表面温度の上昇が認められた。すなわち、被験者が物質活性化装置1から離れていても、血流を促進する効果を得られることが確認された。
【0067】
[作用効果]
本実施形態の物質活性化装置1によれば、磁気浮上機構3の電磁石14と浮上体2との間に、非磁性かつ導電性の金属板4を配置することで、金属板4には、電磁石14の電流により渦電流iが発生する。渦電流iが発生すると、金属板4は、その金属抵抗により発生するジュール熱(誘導加熱)で加熱されることで、金属板4の金属電子eが金属板4から放出される。そして、鉛直軸C1回りに回転する浮上体2上に載置された磁場発生器6によりゼロ磁場を発生させることで、金属板4から放出された金属電子eは、物質活性化装置1から離れた場所まで金属電子eが飛散する。このように飛散した金属電子eを被処理物が浴びることで、被処理物が活性化される。したがって、物質活性化装置1が被処理物から離れていても、金属板4から飛散する金属電子eによって被処理物を活性化することができる。
【0068】
磁気浮上機構3の永久磁石13の上方において電磁石14を囲むように配置された円環コイル5に給電することで、金属電子eはさらに遠くへ飛散する。これにより、物質活性化装置1が被処理物からさらに離れていても、金属板4から飛散する金属電子eによって被処理物を活性化することができる。
【0069】
金属板4が、金、銀、銅、及びプラチナの少なくとも一つからなることで、金属電子eはさらに遠くへ飛散する。これにより、物質活性化装置1が被処理物からさらに離れていても、金属板4から飛散する金属電子eによって被処理物を活性化することができる。
【0070】
磁場発生器6が開放的かつ静的なゼロ磁場を発生することで、金属電子eはさらに遠くへ飛散する。これにより、物質活性化装置1が被処理物からさらに離れていても、金属板4から飛散する金属電子eによって被処理物を活性化することができる。
【0071】
[その他]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 物質活性化装置
2 浮上体
2b 永久磁石(第1永久磁石)
3 磁気浮上機構
4 金属板
5 円環コイル
6 磁場発生器
13 永久磁石(第2永久磁石)
14 電磁石
17 電源アダプタ(外部電源)
24 永久磁石(第3永久磁石)
C1 鉛直軸
【要約】
【課題】被処理物から離れていても被処理物を活性化することができる物質活性化装置を提供する。
【解決手段】磁気発生器1は、第1永久磁石2bを有する浮上体2と、浮上体2の下方において鉛直軸C1を中心として円環状に形成された第2永久磁石13、及び第2永久磁石13の径方向内方に配置される電磁石14を有し、電磁石14の電流を制御して磁力と重力とをバランスさせることにより浮上体2を空中に浮上させた状態で、浮上体2を鉛直軸C1回りに回転可能に支持する磁気浮上機構3と、電磁石14と浮上体2との間に配置される、非磁性かつ導電性の金属板4と、ゼロ磁場を発生させる複数の第3永久磁石24を有し、浮上体2上に載置される磁場発生器6と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15