(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】流体活性化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20230101AFI20241121BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C02F1/48 A
B01J19/08 D
(21)【出願番号】P 2024154998
(22)【出願日】2024-09-09
【審査請求日】2024-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399116054
【氏名又は名称】上森 三郎
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上森 三郎
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3106416(JP,U)
【文献】特開2013-94760(JP,A)
【文献】登録実用新案第3210514(JP,U)
【文献】国際公開第2008/035615(WO,A1)
【文献】特開2002-126749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0144826(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112191201(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00、1/48
B01J19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が一方向に流れる流体通路を内部に有するケーシングと、
前記流体通路の周囲において前記一方向に並んで配置される複数の磁場発生部と、
前記磁場発生部と前記流体通路との間に配置される金属層と、を備え、
前記磁場発生部により形成される磁場によって、前記金属層から前記流体通路に金属電子を放出することで、前記流体通路を流れる流体を活性化させる流体活性化装置であって、
複数の前記磁場発生部は、前記一方向の上流側及び下流側に配置される一対の第1磁場発生部と、一対の前記第1磁場発生部の間に配置される第2磁場発生部と、を含み、
前記第1磁場発生部は、前記流体通路の周方向に沿って等間隔に配置される複数の第1永久磁石を有し、各前記第1永久磁石が前記周方向に着磁され、かつ前記周方向に隣り合う2つの前記第1永久磁石が互いに異極同士を近接させて配置されることで、前記流体通路の中心線上に動的なゼロ磁場を発生させ、
前記第2磁場発生部は、前記周方向に沿って等間隔に配置される複数の第2永久磁石を有し、各前記第2永久磁石が前記中心線に対して放射方向に着磁され、かつ互いに逆向きに着磁された2つの前記第2永久磁石が前記周方向に隣り合うように配置されることで、前記中心線上に静的なゼロ磁場を発生させる、流体活性化装置。
【請求項2】
前記第1磁場発生部は、前記中心線を中心として回転する回転磁場を形成し、
前記回転磁場における磁界の回転方向は、前記上流側から前記下流側に向かって電流が流れた場合に発生する磁界の回転方向と同じ方向である、請求項1に記載の流体活性化装置。
【請求項3】
前記金属層は、前記放射方向に積層された複数の金属層部を有する、請求項1又は請求項2に記載の流体活性化装置。
【請求項4】
複数の前記金属層部は、互いに異なる金属からなる、請求項3に記載の流体活性化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体活性化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す流体の活性化装置は、内部に流体通路が設けられたケーシングと、ケーシング内の流体通路の周囲に配置された複数の永久磁石と、流体通路と永久磁石との間に配置された金属層と、を備えている。この活性化装置では、複数の永久磁石によって高密度の磁力線が発生し、その磁力線を金属層によって流体通路の中心方向に押しやることができる。これにより、ケーシング内の流体通路に流体を流すと、流体通路を流れる流体に対して強力な磁力が作用することで、流体を活性化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の活性化装置よりも、さらに効果的に流体を活性化させることが要望されている。
かかる課題に鑑み、本開示は、流体を効果的に活性化させることができる流体活性化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本開示の流体活性化装置は、流体が一方向に流れる流体通路を内部に有するケーシングと、前記流体通路の周囲において前記一方向に並んで配置される複数の磁場発生部と、前記磁場発生部と前記流体通路との間に配置される金属層と、を備え、前記磁場発生部により形成される磁場によって、前記金属層から前記流体通路に金属電子を放出することで、前記流体通路を流れる流体を活性化させる流体活性化装置であって、複数の前記磁場発生部は、前記一方向の上流側及び下流側に配置される一対の第1磁場発生部と、一対の前記第1磁場発生部の間に配置される第2磁場発生部と、を含み、前記第1磁場発生部は、前記流体通路の周方向に沿って等間隔に配置される複数の第1永久磁石を有し、各前記第1永久磁石が前記周方向に着磁され、かつ前記周方向に隣り合う2つの前記第1永久磁石が互いに異極同士を近接させて配置されることで、前記流体通路の中心線上に動的なゼロ磁場を発生させ、前記第2磁場発生部は、前記周方向に沿って等間隔に配置される複数の第2永久磁石を有し、各前記第2永久磁石が前記中心線に対して放射方向に着磁され、かつ互いに逆向きに着磁された2つの前記第2永久磁石が前記周方向に隣り合うように配置されることで、前記中心線上に静的なゼロ磁場を発生させる。
【0006】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、流体が流体通路を流れる方向に沿って複数の磁場発生部を並べ、動的なゼロ磁場を発生させる2つの磁場発生部の間に、静的なゼロ磁場を発生させる磁場発生部を配置したときに、金属層から流体通路の中心に向かって金属電子が効果的に放出される知見を得、かかる知見に基づいて上記(1)に係る発明を完成させた。動的なゼロ磁場とは、磁界が回転する回転磁場の中心に発生し、前記中心に磁場が作用しない状態をいう。静的なゼロ磁場とは、周方向に間隔をあけて形成される複数の磁場の中心に発生し、これらの磁場が互いに拮抗し合うことで前記中心に磁場が作用しない状態をいう。
【0007】
上記(1)の流体活性化装置によれば、流体通路の上流側及び下流側に配置される一対の第1磁場発生部は、流体通路の中心線上に動的なゼロ磁場を発生させる。また、一対の第1磁場発生部の間に配置される第2磁場発生部は、流体通路の中心線上に静的なゼロ磁場を発生させる。これにより、金属層から流体通路の中心線に向かって金属電子が効果的に放出される。したがって、金属層から放出される金属電子によって、流体通路を流れる流体を効果的に活性化させることができる。
【0008】
(2)前記(1)の流体活性化装置において、前記第1磁場発生部は、前記中心線を中心として回転する回転磁場を形成し、前記回転磁場における磁界の回転方向は、前記上流側から前記下流側に向かって電流が流れた場合に発生する磁界の回転方向と同じ方向であるのが好ましい。
本願発明者は、さらに鋭意研究を重ねた結果、第1磁場発生部が形成する回転磁場における磁界の回転方向を、流体通路の上流側から下流側に向かって電流が流れた場合に発生する磁界の回転方向と同じ方向にすることで、金属層から流体通路の中心線に向かって金属電子がさらに効果的に放出される知見を得、かかる知見に基づいて上記(2)に係る発明を完成させた。これにより、金属層から放出される金属電子によって、流体通路を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【0009】
(3)前記(1)又は(2)の流体活性化装置において、前記金属層は、前記放射方向に積層された複数の金属層部を有するのが好ましい。
この場合、金属層における複数の金属層部それぞれから、金属の金属電子が、流体通路の中心線に向かって放出されるので、流体通路を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【0010】
(4)前記(3)の流体活性化装置において、複数の前記金属層部は、互いに異なる金属からなるのが好ましい。
この場合、複数の金属層部から、互いに異なる金属の金属電子が、流体通路の中心線に向かって放出されるので、流体通路を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の流体活性化装置によれば、流体を効果的に活性化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る流体活性化装置を示す斜視図である。
【
図5】第1磁場発生部を上側から見た、保持器の水平断面図である。
【
図6】第1磁場発生部の磁壁線を示す模式図である。
【
図7】第2磁場発生部を上側から見た、保持器の水平断面図である。
【
図8】第2磁場発生部の磁壁線を示す模式図である。
【
図9】
図3のI-I矢視図であり、保持体の保持部材を内側から見た図である。
【
図11】流体活性化装置の使用例を示す側面図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
[流体活性化装置の全体構成]
図1は、本開示の実施形態に係る流体活性化装置1を示す斜視図である。
図2は、流体活性化装置1の縦断面図である。
図1及び
図2において、流体活性化装置1は、ケーシング2と、保持体3と、複数の磁場発生部4と、複数の金属層5(
図9)と、を備える。なお、
図2では、金属層5の図示を省略している。
【0014】
ケーシング2は、筒状の外筒体21と、外筒体21の内周側に配置される区画体22と、円板状の底板25と、を有する。外筒体21、区画体22、及び底板25は、いずれも樹脂製である。
【0015】
外筒体21の軸線Cは、上下方向に向いている。外筒体21の外周面21aは、上下方向(軸線C方向)の中間部から上下両端に向かうにしたがって、徐々に拡径するように湾曲して形成されている。底板25は、外筒体21の下端部に固定されている。底板25の中央部には、上下方向に貫通するねじ孔25aが形成されている。
【0016】
区画体22は、内筒部23と、天板部24と、を有する。内筒部23は、外筒体21の軸線Cと同心状に配置される。内筒部23(下端部を除く)は、多角筒形状に形成されている。本実施形態の内筒部23は、四角筒形状に形成されている。内筒部23の下端部の外周には、雄ねじ23aが形成されている。内筒部23の雄ねじ23aは、保持体3の下側の開口34(後述)を上方から貫通して、底板25のねじ孔25aに締め込まれている。これにより内筒部23の下端部は、底板25に固定されている。
【0017】
内筒部23の上端部には、天板部24が一体に設けられている。天板部24は、環状に形成されている。天板部24の内周は、平面視において内筒部23の内周と同じ多角形状(本実施形態では四角形状)に形成され、内筒部23の内周に繋がっている。天板部24の外周は、円周面からなり、外筒体21の上端部に固定されている。
【0018】
以上より、ケーシング2には、外筒体21の内周面、天板部24の下面、内筒部23の外周面、及び底板25の上面によって区画された筒状の収容空間26が形成されている。また、ケーシング2における内筒部23の内部には、軸線Cを中心とする断面多角形状(ここでは断面四角形状)の流体通路27が形成されている。したがって、外筒体21の軸線Cは、流体通路27の中心線であり、以下、「中心線C」ともいう。流体通路27には、その上方から下方へ向かって一方向に流体が流れる。
【0019】
図3は、保持体3を示す斜視図である。
図2及び
図3において、保持体3は、複数の磁場発生部4を保持した状態で、これらの磁場発生部4と共にケーシング2の収容空間26に収容される。保持体3は、収容空間26の周方向に二分割されて構成されており、一対の保持部材31を有する。以下、収容空間26の周方向を、単に「周方向」ともいう。
【0020】
各保持部材31は、例えば銅などの導電性の金属からなり、縦断面視(
図2)において略コ字形状に形成されている。具体的には、各保持部材31は、上下方向に延びる複数の側壁部32と、これらの側壁部32の上下両端部から軸線Cに向かって水平方向に突出する一対の鍔部33と、を有する。
【0021】
図4は、保持体3の水平断面図である。なお、
図3では、磁場発生部4の図示を省略している。
図3及び
図4において、各保持部材31の複数の側壁部32は、一対の保持部材31が組み合わされた態で、保持体3の水平断面形状が多角形状となるように形成されている。本実施形態では、複数の側壁部32は、保持体3の水平断面形状が八角形状となるように形成されている。各保持部材31において、互いに90°の角度をなす2つの側壁部32それぞれの内面には、上下方向全体にわたって取付溝32aが形成されている。
【0022】
保持部材31の各鍔部33の突出端部は、平面視においてV字形状に形成されている。一対の保持部材31を組み合わせた状態で、保持体3の上下両端部には、一対の鍔部33により四角形状の開口34が形成される。各開口34は、ケーシング2の内筒部23が挿入される大きさに形成されている(
図2参照)。
【0023】
各保持部材31の周方向一端側の側壁部32の端面には、凸部32bが形成されている。各保持部材31の周方向他端側の側壁部32の端面には、凹部32cが形成されている。一方の保持部材31の凸部32bは、他方の保持部材31の凹部32cに係合される。これにより、一対の保持部材31は、互いに組み合わされた状態で、水平方向(
図4の左右方向)への位置ずれが抑制される。
【0024】
図2において、複数の磁場発生部4は、内筒部23の周囲において、保持体3の側壁部32の内面に沿って上下方向に並んで配置されている。すなわち、複数の磁場発生部4は、流体通路27の周囲において、流体が流れる一方向に並んで配置されている。複数の磁場発生部4は、上側(上流側)及び下側(下流側)に配置される一対の第1磁場発生部4Aと、一対の第1磁場発生部4Aの間に配置される第2磁場発生部4Bと、を含む。
【0025】
[第1磁場発生部]
図5は、第1磁場発生部4Aを上側から見た、保持体3の水平断面図である。
図5において、第1磁場発生部4Aは、複数の第1永久磁石41を有する。本実施形態の第1磁場発生部4Aは、4つの第1永久磁石41を有する。
【0026】
4つの第1永久磁石41は、周方向に沿って等間隔(90°間隔)に配置され、各保持部材31に2つずつ設けられている。各保持部材31における2つの第1永久磁石41それぞれは、後述するメッキ層511(513)を介して、側壁部32の取付溝32aに嵌め込まれて固定されている(
図10も参照)。
【0027】
各第1永久磁石41は、例えば矩形板状のネオジム磁石であり、周方向に着磁されたN極とS極とを有する。周方向に隣り合う2つの第1永久磁石41は、互いに異極同士を近接させて配置されている。本実施形態の各第1永久磁石41は、周方向一方側(
図5の時計回り方向側)がN極、周方向他方側(
図5の反時計回り方向側)がS極となるように配置されている。なお、
図5に示す全ての第1永久磁石41は、N極とS極を逆向きにして配置されてもよい。
【0028】
図6は、第1磁場発生部4Aの磁壁線を示す模式図である。
図6では、第1磁場発生部4Aの上に磁気観察シート(マグネットビューワー)S1を添わせた様子を示している。磁気観察シートS1は、磁性流体を樹脂シートに均一に分散させたシートであり、人間の目には見えない磁界を視覚化することができる。
【0029】
第1磁場発生部4Aでは、各第1永久磁石41を
図5に示すように配置することで、
図6に示すように8本の磁壁線J11~J18が現れる。磁壁線J11~J18は、軸線Cを中心として等角度(約45°)ごとに、放射状に延びている。そのうち、4本の磁壁線J11,J13,J15,J17は、軸線Cから、各第1永久磁石41の中心を通過する。残りの4本の磁壁線J12,J14,J16,J18は、軸線Cから、周方向に隣接する2つの第1永久磁石41の間を通過する。
【0030】
上記の磁壁線J11~J18が現れることで、
図5に示すように、周方向に隣り合う第1永久磁石41同士の間を全て通過するように、軸線C回りに磁界が回転する単一の磁場X11が形成される。本実施形態の磁場X11は、
図5に示すように、上側から見て軸線Cを中心とする時計回り方向に磁界が回転し、かつ当該磁界が全ての第1永久磁石41を通過するように形成される。
【0031】
磁場X11は、軸線Cを中心として磁界が回転する回転磁場であるため、軸線Cには磁場が作用しない。したがって、第1磁場発生部4Aでは、磁場X11が形成されることで、軸線C上に動的なゼロ磁場が発生する。これにより、軸線C上の位置を動的なゼロ磁場としつつ、その周囲において軸線Cを中心として磁界が回転する磁場X11(回転磁場)が形成される。以下、磁場X11を、「回転磁場X11」ともいう。
【0032】
回転磁場X11における磁界の回転方向は、上記のように、上側から見て軸線Cを中心とする時計回り方向である。この回転磁場X11における磁界の回転方向は、流体通路27(
図2参照)の上流側から下流側に向かって軸線C上を電流が流れた場合に、右ねじの法則により軸線C回りに発生する磁界の回転方向と同じ方向である。つまり、回転磁場X11における磁界の回転方向は、流体が流れる方向に電流が流れた場合に発生する磁界の回転方向と同じ方向である。
【0033】
[第2磁場発生部]
図7は、第2磁場発生部4Bを上側から見た、保持体3の水平断面図である。
図7において、第2磁場発生部4Bは、複数の第2永久磁石42を有する。本実施形態の第2磁場発生部4Bは、4つの第2永久磁石42を有する。
【0034】
4つの第2永久磁石42は、第1永久磁石41と同様に、周方向に沿って等間隔(90°間隔)に配置され、各保持部材31に2つずつ設けられている。各保持部材31における2つの第2永久磁石42それぞれは、後述するメッキ層512を介して、側壁部32の取付溝32aに嵌め込まれて固定されている(
図10も参照)。
【0035】
各第2永久磁石42は、例えば矩形板状のネオジム磁石であり、軸線Cに対して放射方向に着磁されたN極とS極とを有する。周方向に隣り合う2つの第2永久磁石42は、互いに逆向きに着磁されている。以下、軸線Cに対する放射方向を、単に「放射方向」ともいう。
【0036】
本実施形態では、保持体3内における
図7の右上及び左下にそれぞれ配置される第2永久磁石42は、放射方向の内側(軸線C側;以下同様)がN極、放射方向の外側(側壁部32側;以下同様)がS極となるように配置されている。保持体3内における
図7の左上及び右下にそれぞれ配置される第2永久磁石42は、放射方向の内側がS極、放射方向の外側がN極となるように配置されている。なお、
図7に示す全ての第2永久磁石42は、N極とS極を逆向きにして配置されてもよい。
【0037】
図8は、第2磁場発生部4Bの磁壁線を示す模式図である。第2磁場発生部4Bでは、各第2永久磁石42を
図7に示すように配置することで、
図8に示すように概ね8本の磁壁線J21~J28が現れる。そのうち、4本の磁壁線J21~J24は、軸線Cを中心として放射状に延びている。具体的には、磁壁線J21~J24は、軸線Cを中心として等角度(約90°)ごとに、周方向に隣接する2つの第2永久磁石42の間において放射方向に延びている。
【0038】
他の4本の磁壁線J25~J28は、それぞれ第2永久磁石42の直上において、当該第2永久磁石42の着磁方向と直交する方向に延びている。磁壁線J25及び磁壁線J26の端部同士、磁壁線J26及び磁壁線J27の端部同士、磁壁線J27及び磁壁線J28の端部同士、磁壁線J28及び磁壁線J25の端部同士は、それぞれ互いに繋がっている。これにより、軸線Cは、磁壁線J25~J28により囲まれた閉鎖空間に位置する。
【0039】
上記の磁壁線J21~J28が現れることで、
図7に示すように、周方向に間隔をあけて複数の磁場X21が形成される。各磁場X21は、周方向に隣り合う第2永久磁石42同士の間の一点を中心として磁界が回転するように形成される。本実施形態では、
図7の12時、3時、6時、及び9時のそれぞれの位置を中心とする4つの磁場X21が形成される。
【0040】
4つの磁場X21は、周方向に沿って等間隔、かつ軸線Cから等距離に形成されるので、これらの磁場X21の磁力線は、軸線Cにおいて拮抗する。これにより、軸線Cには、4つの磁場X21が互いに拮抗し合うことで、磁場が作用しない静的なゼロ磁場が発生する。また、軸線Cは、上記のように磁壁線J25~J28により囲まれた閉鎖空間に位置する。したがって、第2磁場発生部4Bでは、軸線C上に閉鎖的かつ静的なゼロ磁場が発生する。このような静的なゼロ磁場では、金、銀、銅の各電子のみが、流体通路27を通過する流体に作用する。
【0041】
[金属層]
図9は、
図3のI-I矢視図であり、保持体3の保持部材31を内側から見た図である。
図10は、
図9のII-II矢視断面図である。
図9及び
図10において、磁場発生部4と内筒部23との間には、金属層5が配置されている。本実施形態では、保持体3の一対の保持部材31それぞれに2つずつ、計4つの金属層5が配置されている。
【0042】
各金属層5は、放射方向に積層された複数の金属層部を有する。本実施形態の金属層5は、複数の前記金属層部として、第1金属層部51、第2金属層部52、第3金属層部53、及び第4金属層部54を有する。これらの金属層部51~54は、放射方向に四層に積層され、互いに異なる金属からなる。
【0043】
第1金属層部51は、各磁場発生部4の第1永久磁石41及び第2永久磁石42にそれぞれ施されたメッキ層511,512,513からなる。メッキ層511は、上側の第1磁場発生部4Aにおける第1永久磁石41の表面全体に施されている。メッキ層511は、例えば金のメッキ層である。メッキ層512は、第2磁場発生部4Bの第2永久磁石42の表面全体に施されている。メッキ層512は、例えば銀のメッキ層である。メッキ層513は、下側の第1磁場発生部4Aにおける第1永久磁石41の表面全体に施されている。メッキ層513は、例えば銅のメッキ層である。
【0044】
第2金属層部52は、第1金属層部51の放射方向の内側(
図10の左側;以下同様)に積層されている。第2金属層部52は、3つの磁場発生部4を跨ぐように上下方向に延びる帯状の金属薄板である。第2金属層部52は、例えば銅からなる金属薄板である。第2金属層部52は、第1永久磁石41及び第2永久磁石42の磁力により、第1金属層部51に吸着されて固定される。なお、第2金属層部52は、接着剤により第1金属層部51に固定されてもよい。
【0045】
第3金属層部53は、第2金属層部52の放射方向の内側に積層されている。第3金属層部53は、第2金属層部52の上端部に積層された金属薄板531、第2金属層部52の上下方向の中間部に積層された金属薄板532、及び第2金属層部52の下端部に積層された金属薄板533からなる。各金属薄板531,532,533は、第2金属層部52よりも上下方向に短い。金属薄板531は、例えばマグネシウムからなる金属薄板である。金属薄板532は、例えばチタンからなる金属薄板である。金属薄板533は、例えば亜鉛からなる金属薄板である。
【0046】
第4金属層部54は、第3金属層部53の放射方向の内側に積層されている。第4金属層部54は、第3金属層部53の2つの金属薄板531,532を跨ぐように上下方向に延びる帯状の金属薄板である、第4金属層部54の上下方向の長さは、第2金属層部52の上下方向の長さと略同一である。第4金属層部54は、例えばステンレスからなる金属薄板である。第4金属層部54は、第1永久磁石41及び第2永久磁石42の磁力により、第2金属層部52側へ吸着されている。これにより、第3金属層部53の各金属薄板531,532,533は、第2金属層部52と第4金属層部54との間に挟み込まれた状態で保持されている。なお、各金属薄板531,532,533は、接着剤により第2金属層部52及び第4金属層部54の少なくとも一方に固定されてもよい。
【0047】
金属層5の構成は、本実施形態に限定されない。例えば、第1金属層部51は、複数のメッキ層511,512,513の代わりに、第3金属層部53等と同様に、複数の金属薄板で構成されてもよい。また、複数の金属層部51,52,53,54は、互いに異なる金属からなるように構成されてもよい。また、金属層5は、三層以下で構成されてもよいし、五層以上で構成されてもよい。また、金属層5は、複数の磁場発生部4と内筒部23との間に配置されているが、1つの磁場発生部4と内筒部23との間に配置されてもよい。金属層5の個数は、本実施形態に限定されない。例えば、金属層5は、一方の保持部材31に1つだけ配置されてもよい。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の流体活性化装置1は、金属部材6をさらに備える。本実施形態の金属部材6は、上下方向に細長い金属棒であり、例えばバナジウムからなる。金属部材6は、保持体3内のデッドスペースに配置される。本実施形態の金属部材6は、各保持部材31において、周方向に隣り合う第1永久磁石41同士の間、及び第2永久磁石42同士の間に形成された隙間に配置されている。なお、流体活性化装置1は、金属部材6を備えていなくてもよい。
【0049】
[流体活性化装置の使用例]
図11は、流体活性化装置1の使用例を示す側面図(一部断面図)である。
図11に示すように、流体活性化装置1は、例えば漏斗装置10を利用して使用される。漏斗装置10は、流体活性化装置1を支持するスタンド11と、流体活性化装置1の流体通路27に挿入される漏斗15と、漏斗15の下方に配置される受容器16と、を備える。
【0050】
スタンド11は、ベース部材12と、ベース部材12に取り付けられた支持部材13と、支持部材13に取り付けられた載置部材14と、を有する。ベース部材12は、側面視において略L字形状に折り曲げて形成された板部材からなる。ベース部材12は、水平方向に延びて作業台70上に設置されるベース部12aと、ベース部12aの一端から上方に延びる取付部12bと、を有する。
【0051】
スタンド11の支持部材13は、側面視において略逆L字形状に折り曲げて形成された板部材からなる。支持部材13は、ベース部材12の取付部12bに取り付けられて取付部12bに沿って上方に延びる支持部13aと、支持部13aの上端から水平方向に延びる保持部13bと、を有する。保持部13bは、ベース部12aの上方に配置される。保持部13bには、上下方向に貫通する挿入孔13cが形成されている。保持部13bの挿入孔13cには、流体活性化装置1が挿入され、流体活性化装置1の水平方向の移動が規制される。
【0052】
スタンド11の載置部材14は、側面視において略コ字形状に折り曲げて形成された板部材からなる。載置部材14は、水平方向に延びて保持部13bの下面に固定される固定部14aと、固定部14aの一端から下方に延びる垂下部14bと、垂下部14bの下端から水平方向に延びる載置部14cと、を有する。
【0053】
載置部14cは、保持部13bの下方に配置される。載置部14cには、保持部13bの挿入孔13cを貫通した流体活性化装置1が載置される。これにより、流体活性化装置1は、載置部14cに載置された状態で保持部13bに保持され、水平方向の移動が規制される。載置部14cには、漏斗15の細筒部15b(後述)が挿入される貫通孔14dが形成されている。
【0054】
漏斗15は、椀形状に形成されて上下両端が開口する本体部15aと、本体部15aの下端から下方に延びる細筒部15bと、を有する。細筒部15bは、流体活性化装置1の流体通路27に挿入可能な大きさに形成されており、流体通路27よりも上下方向に長い。したがって、スタンド11に支持された流体活性化装置1の流体通路27に、漏斗15の細筒部15bが上方から挿入されると、細筒部15bの下端部は、流体通路27及び載置部14cの貫通孔14dを貫通し、載置部14cの下方に突出する。
【0055】
受容器16は、スタンド11の保持部13bの下方において、ベース部12a上に設置される。受容器16は、漏斗15の細筒部15bの下端部が挿入される受口16aを有する。本実施形態の受容器16は、例えばペットボトルからなる。
【0056】
図11に示す状態から、漏斗15の上方から本体部15a内に流体が供給されると、本体部15aから細筒部15b内に流体が流れ込む。流体は、細筒部15b内を流れるときに、流体活性化装置1の流体通路27を上流側から下流側に向かって通過する。その際、流体通路27の上流側及び下流側に配置された一対の第1磁場発生部4Aは、上記のように流体通路27の中心線C上に動的なゼロ磁場を発生させる。また、一対の第1磁場発生部4Aの間に配置される第2磁場発生部4Bは、上記のように流体通路27の中心線C上に静的なゼロ磁場を発生させる。したがって、流体通路27の中心線C上には、上流側及び下流側のそれぞれにおいて動的なゼロ磁場が発生し、これらの動的なゼロ磁場の間において、静的なゼロ磁場が発生する。
【0057】
これにより、金属層5における複数の第1~第4金属層部51~54から、互いに異なる金属(金、銀、銅、ステンレス、マグネシウム、チタン、及び亜鉛)の金属電子が、流体通路27の中心線Cに向かって放出される。また、金属部材6における金属(バナジウム)の金属電子も、流体通路27に向かって放出される。そして、流体通路27を通過する流体に、金属層5及び金属部材6から放出される複数の金属電子が入り込む。したがって、金属層5及び金属部材6から放出される複数の金属電子によって、流体通路27を通過する流体は活性化される。なお、
図11の使用例では、漏斗15の細筒部15bに流体を流しているが、これに限定されない。例えば、流体活性化装置1を水道管に取り付け、水道管から流体活性化装置1の流体通路27に流体を直接流してもよい。
【0058】
[効果確認試験]
本願発明者は、本実施形態の流体活性化装置1の効果を確認するための試験を行った。効果確認試験では、複数の被験者を対象にして、漏斗装置10により流体活性化装置1の流体通路27を通過して活性化された水(流体)を被験者が飲んだ場合に、血流に与える影響について調査が行われた。
【0059】
本試験では、血流への影響の指標として、血管幅及び表面温度が測定された。具体的には、活性化された水500mlを、被験者が飲む前と、飲水してから30分が経過した後のそれぞれにおいて、被験者の指の血管幅及び表面温度が測定された。血管幅及び表面温度は、「健康モニタリング装置ASTRIM FIT(シスメックス株式会社製)」を用いて測定された。被験者の飲む水が活性化されていれば、その水を被験者が飲んだ後に、指の血管幅が拡大し又は指の表面温度が上昇し、血流が促進(活性化)される。
【0060】
図12は、効果確認試験の結果を示す表である。本試験の結果、被験者Hを除く全ての被験者において、飲水前よりも飲水後に指の血管幅が拡大した。これにより、被験者10人中9人について、飲水後に指の血管幅の拡大が認められた。また、被験者Fを除く全ての被験者において、飲水前よりも飲水後に指の表面温度が上昇した。これにより、被験者10人中9人について、飲水後に指の表面温度の上昇が認められた。以上より、被験者の飲む水が流体活性化装置1により活性化されたのを確認できた。
【0061】
[作用効果]
本実施形態の流体活性化装置1によれば、流体通路27の上流側及び下流側に配置される一対の第1磁場発生部4Aは、流体通路27の中心線C上に動的なゼロ磁場を発生させる。また、一対の第1磁場発生部4Aの間に配置される第2磁場発生部4Bは、流体通路27の中心線C上に静的なゼロ磁場を発生させる。これにより、各金属層5から流体通路27の中心線Cに向かって金属電子が効果的に放出される。したがって、各金属層5から放出される金属電子によって、流体通路27を流れる流体を効果的に活性化させることができる。
【0062】
各第1磁場発生部4Aが形成する回転磁場X11における磁界の回転方向は、流体通路27の上流側から下流側に向かって電流が流れた場合に発生する磁界の回転方向と同じ方向である。これにより、金属層5から流体通路27の中心線Cに向かって金属電子がさらに効果的に放出される。その結果、金属層5から放出される金属電子によって、流体通路27を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【0063】
各金属層5は、放射方向に積層された複数の金属層部51~54を有する。これにより、複数の金属層部51~54それぞれから、金属の金属電子が流体通路27の中心線Cに向かって放出される。その結果、流体通路27を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【0064】
複数の金属層部51~54は、互いに異なる金属からなるので、複数の金属層部51~54から、互いに異なる金属の金属電子が、流体通路27の中心線Cに向かって放出される。その結果、流体通路27を流れる流体をさらに効果的に活性化させることができる。
【0065】
[その他]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 流体活性化装置
2 ケーシング
4 磁場発生部
4A 第1磁場発生部
4B 第2磁場発生部
5 金属層
27 流体通路
41 第1永久磁石
42 第2永久磁石
51 第1金属層部(金属層部)
52 第2金属層部(金属層部)
53 第3金属層部(金属層部)
54 第4金属層部(金属層部)
C 軸線(中心線)
X11 磁場(回転磁場)
【要約】
【課題】流体を効果的に活性化させることができる流体活性化装置を提供する。
【解決手段】流体活性化装置1は、流体通路27を有するケーシング2と、流体通路27の周囲に配置される複数の磁場発生部4と、磁場発生部4と流体通路27との間に配置される金属層5と、を備える。複数の磁場発生部4は、上流側及び下流側に配置される一対の第1磁場発生部4Aと、これらの間に配置される第2磁場発生部4Bと、を含み、第1磁場発生部4Aは、周方向に着磁された第1永久磁石41を周方向に複数有し、周方向に隣り合う2つの第1永久磁石41が互いに異極同士を近接させて配置されることで、動的なゼロ磁場を発生させ、第2磁場発生部4Bは、流体通路27の中心線Cに対して放射方向に着磁された第2永久磁石42を周方向に複数有し、互いに逆向きに着磁された2つの第2永久磁石42が周方向に隣り合うように配置されることで、静的なゼロ磁場を発生させる。
【選択図】
図2