(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】リニアモータおよび工作機械
(51)【国際特許分類】
H02K 41/02 20060101AFI20241121BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02K41/02 Z
H02K9/02 Z
(21)【出願番号】P 2024507872
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2023003354
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】河本 道生
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-043878(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0018390(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0039532(KR,A)
【文献】特開昭64-026356(JP,A)
【文献】特開昭63-302755(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2029982(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K9/00-9/28
41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に用いられるリニアモータであって、
複数の磁石が第1方向に並べて設けられている磁石板と、
複数のコイルが前記第1方向に並べて設けられており、前記磁石板に対して前記第1方向にスライド可能に構成されたスライダとを備え、
前記スライダは、
前記磁石板と前記スライダとの隙間に空気を供給するための空気供給路
と、
前記磁石板と対向するように前記第1方向に並べて前記スライダに設けられている複数のティースとを含
み、
前記複数のティースは、
最も外側に位置するティースであって、前記複数のコイルが巻かれていない第1ティースと、
前記複数のコイルのそれぞれが巻かれている複数の第2ティースとを含み、
前記複数の第2ティースの少なくとも1つには、前記磁石板の表面と直交する方向において前記スライダを貫通している貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記空気供給路として機能する、リニアモータ。
【請求項2】
前記スライダには、複数の前記貫通孔が形成されており、
複数の前記貫通孔は、前記第1方向に並んでいる、請求項
1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸とを備え、
前記リニアモータは、前記主軸の位置を移動するために用いられている、工作機械。
【請求項4】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
ワークを載置するためのテーブルとを備え、
前記リニアモータは、前記テーブルを駆動するために用いられている、工作機械。
【請求項5】
請求項1
または2に記載のリニアモータと、
部材を搬送するためのローダとを備え、
前記リニアモータは、前記ローダを駆動するために用いられている、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータおよび工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-042423号公報(特許文献1)は、リニアモータに関する発明を開示している。当該リニアモータは、固定子として機能する界磁部と、可動子として機能する電機子とを備える。電機子は、内部にコイルを備える。電機子は、当該コイルに電流を流すことで電磁誘導作用に伴う駆動力を発生させ、界磁部上を移動する。
【0003】
電機子は、上下に重ねて配管されている2つの冷却パイプを備える。2つの冷却パイプは、電機子が界磁部と対向している面とは反対側からコイルを冷却するように配管されている。上段の冷却パイプ内の冷媒は、下段の冷却パイプ内の冷媒と逆向きに流れている。これにより、特許文献1に開示されるリニアモータは、電機子の温度分布を均一にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動子側のコイルで発生した熱は、固定側の磁石に伝わってしまうことがある。磁石の温度が上昇すると、リニアモータの性能が低下する。特許文献1は、コイルから磁石への伝熱を防ぐことについては何ら開示していない。したがって、コイルから磁石への伝熱を防ぐことが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、工作機械に用いられるリニアモータは、複数の磁石が第1方向に並べて設けられている磁石板と、複数のコイルが上記第1方向に並べて設けられており、上記磁石板に対して上記第1方向にスライド可能に構成されたスライダとを備える。上記スライダは、上記磁石板と上記スライダとの隙間に空気を供給するための空気供給路を含む。
【0007】
本開示の一例では、上記空気供給路は、上記磁石板の表面と平行でかつ上記第1方向と直交する第2方向から上記隙間に向けて空気を供給するように配管されている。
【0008】
本開示の一例では、上記第1方向および上記第2方向の両方に直交する第3方向から見たときに、上記空気供給路は、上記第2方向における上記複数のコイルの端部と重なるように配管されている。
【0009】
本開示の一例では、上記空気供給路は、上記空気を上記隙間に導くための配管を含む。上記配管は、上記スライダと共に移動するように上記スライダに保持されている。
【0010】
本開示の一例では、上記第2方向から見たときに、上記空気供給路は、上記第2方向における上記複数の磁石と重なるように配管されている。
【0011】
本開示の一例では、上記スライダには、上記磁石板の表面と直交する方向において上記スライダを貫通している貫通孔が形成されている。上記貫通孔は、上記空気供給路として機能する。
【0012】
本開示の一例では、上記スライダには、複数の上記貫通孔が形成されている。複数の上記貫通孔は、上記第1方向に並んでいる。
【0013】
本開示の一例では、上記リニアモータと、ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸とを備える。上記リニアモータは、上記主軸の位置を移動するために用いられている。
【0014】
本開示の他の例では、工作機械が提供される。上記工作機械は、上記リニアモータと、ワークを載置するためのテーブルとを備える。上記リニアモータは、上記テーブルを駆動するために用いられている。
【0015】
本開示の他の例では、工作機械が提供される。上記工作機械は、リニアモータと、部材を搬送するためのローダとを備える。上記リニアモータは、上記ローダを駆動するために用いられている。
【0016】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に従うリニアモータ100を斜め方向から表わす斜視図である。
【
図2】Y軸方向からリニアモータ100を表わした側面図である。
【
図3】
図2に示されるIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】スライダ50をZ軸方向から表わした図である。
【
図5】
図4に示されるV-V線に沿ったスライダ50の断面図である。
【
図6】
図4に示されるVI-VI線に沿ったスライダ50の断面図である。
【
図7】スライダ50をZ軸方向から表わした図である。
【
図8】
図7に示されるVIII-VIII線に沿ったスライダ50の断面図である。
【
図9】
図7に示されるIX-IX線に沿ったスライダ50の断面図である。
【
図10】工作機械200の装置構成の一例を示す図である。
【
図11】工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【
図12】工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0019】
<A.リニアモータ100>
まず、
図1を参照して、リニアモータ100の概要について説明する。
図1は、実施の形態に従うリニアモータ100を斜め方向から表わす斜視図である。
【0020】
図1に示されるように、リニアモータ100は、磁石板10と、スライダ50とを含む。
【0021】
磁石板10は、固定子として機能する。磁石板10には、複数の磁石12が並べられている。説明の便宜のために、以下では、磁石12が並べられている方向をX軸方向(第1方向)とも称する。磁石板10の表面と平行でかつX軸方向と直交する方向をY軸方向(第2方向)とも称する。X軸方向およびY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向(第3方向)とも称する。
【0022】
複数の磁石12の各々は、X軸方向において所定の間隔を空けて磁石板10上に配置されている。磁石12の各々は、永久磁石である。磁石12の各々は、隣接する磁石12と極性が反対になるように磁石板10上に設けられている。一例として、一の磁石12の表面がN極で、当該一の磁石12の裏面がS極であったとする。この場合、当該一の磁石12の隣に配置されている磁石12については、表面がS極で、裏面がN極となる。
【0023】
スライダ50は、可動子として機能する。スライダ50は、複数のコイル52を有する。複数のコイル52は、X軸方向に並べてスライダ50に設けられている。コイル52の各々は、スライダ50に形成されている後述のティース53(
図5参照)に長円状に巻かれている。
【0024】
複数のコイル52は、複数の磁石12と対向するようにスライダ50に設けられている。異なる言い方をすれば、複数のコイル52は、Z軸方向から見て複数の磁石12と重なるようにスライダ50に設けられている。
【0025】
スライダ50は、複数のコイル52に交流電流を印加することにより発生する磁場を複数の磁石12に作用させることで、磁石板10上をX軸方向にスライドする。交流電流は、たとえば、コイル52に電気的に接続される電源(図示しない)から供給される。
【0026】
<B.空気供給路54>
次に、
図2および
図3を参照して、スライダ50に設けられている空気供給路54について説明する。
図2は、Y軸方向からリニアモータ100を表わした側面図である。
図3は、
図2に示されるIII-III線に沿う断面図である。
【0027】
リニアモータ100は、磁石板10とスライダ50との隙間SPに空気を供給するための空気供給路54を備える。隙間SPは、物体が存在しない空間である。すなわち、隙間SPには、空気のみが存在する。空気が空気供給路54から隙間SPに供給されることで、当該空気が隙間SPにおいて断熱層となる。その結果、スライダ50内のコイル52で発生した熱が磁石板10に伝わることが防がれる。
【0028】
また、リニアモータ100が工作機械に利用される場合には、ワークの切り屑が隙間SPに入り込む可能性がある。当該切り屑は、リニアモータ100の性能の低下の原因になったり、磁石板10およびスライダ50の損傷の原因になる。空気供給路54がスライダ50に設けられることで、ワークの切り屑が隙間SPに入り込むことを防ぐことができる。
【0029】
なお、空気供給路54から隙間SPに供給される空気には、1種類の気体のみが含まれていてもよいし、複数種類の気体が含まれていてもよい。
【0030】
また、空気供給路54は、空気を隙間SPに供給可能な構成であれば任意の形態で実現され得る。
図2および
図3には、空気供給路54の一例として、エアー配管54Aが示されている。
【0031】
エアー配管54Aは、Y軸方向から隙間SPに向けて空気を供給するように配管されている。その結果、当該空気は、隙間SP内においてY軸方向の一方側から他方側に流れる。これにより、隙間SPに入り込んだワークの切り屑が磁石板10の短手方向に排出され、当該切り屑が磁石板10上に残ることを防ぐことができる。
【0032】
より具体的には、エアー配管54Aは、Z軸方向から見たときに、Y軸方向におけるコイル52の端部と重なるように配管されている。「コイル52の端部」とは、Y軸方向におけるコイル52の最端部を少なくとも含むコイル部分を意味する。一例として、コイル52の端部は、コイル52の最端部から所定の長さの範囲に含まれているコイル部分を表わす。
【0033】
また、エアー配管54Aは、Z軸方向から見たときに、Y軸方向における磁石12の端部と重なるように配管されている。「磁石12の端部」とは、Y軸方向における磁石12の最端部を少なくとも含む磁石部分を意味する。一例として、磁石12の端部は、磁石12の最端部から所定の長さの範囲に含まれている磁石部分を表わす。
【0034】
典型的には、エアー配管54Aは、スライダ50に保持されている。その結果、スライダ50が磁石板10上をスライドした場合に、エアー配管54Aは、スライダ50と共に移動する。これにより、冷却が必要な部分にのみ空気が供給され、消費電力を削減することができる。
【0035】
エアー配管54Aには、空気の流出口OLが設けられている。流出口OLは、隙間SPを向くようにエアー配管54Aに設けられている。これにより、エアー配管54Aに送り込まれた空気は、流出口OLから隙間SPに吐出される。
【0036】
なお、エアー配管54Aに設けられる流出口OLの数は、任意である。エアー配管54Aには、1つの流出口OLが設けられてもよいし、複数の流出口OLが設けられてもよい。
【0037】
また、エアー配管54Aは、空気の流入口ILを有する。流入口ILは、配管を介して、エアー機器(図示しない)に繋がれる。当該エアー機器は、たとえば、空気のコンプレッサおよびバルブなどで構成される。当該エアー機器は、流入口ILからエアー配管54Aの内部に空気を圧送し、流出口OLから当該空気を吐出する。
【0038】
なお、
図3には、エアー配管54Aの断面形状が円形である例が示されているが、エアー配管54Aの断面形状は、任意である。一例として、当該断面形状は、多角形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0039】
<C.スライダ50>
次に、
図4~
図6を参照して、上述のスライダ50についてさらに詳細に説明する。
図4は、スライダ50をZ軸方向から表わした図である。
図5は、
図4に示されるV-V線に沿ったスライダ50の断面図である。
図6は、
図4に示されるVI-VI線に沿ったスライダ50の断面図である。
【0040】
スライダ50は、その外観を成す筐体60を有する。筐体60は、たとえば、樹脂製である。筐体60の内部には、スライダコア51と、複数のコイル52と、エアー配管54Aと、冷却配管56と、固定用部材58とが収容されている。
【0041】
スライダコア51は、たとえば、電磁鋼板で構成されている。また、スライダコア51には、上述のティース53が形成されている。
【0042】
ティース53は、X軸方向の最も外側に位置するティースであって、コイル52が巻かれていない補助ティース53Aと、補助ティース53Aの内側に位置するティースであって、コイル52が巻かれているコイル用ティース53Bとを含む。コイル用ティース53Bには、コイル52が長円状に巻かれている。
【0043】
また、コイル用ティース53Bには、Y軸方向に延在している貫通孔Hが形成されている。貫通孔Hには、固定用部材58が挿入される。固定用部材58には、Z軸方向においてねじ穴が形成されているとともに、スライダコア51にはZ軸方向に対して固定用部材58のねじ穴と連通する貫通孔Hが形成されている。
【0044】
固定用部材58は、スライダコア51とは異なる種類の部材で構成される。一例として、スライダコア51が積層鋼鈑で構成されているのに対して、固定用部材58は、積層鋼鈑以外の金属で構成される。一例として、固定用部材58は、鉄で構成されてもよいし、その他の種類の金属で構成されてもよい。
冷却配管56は、スライダコア51の上面(すなわち、磁石板10との対向面とは反対側の面)に設けられる。より具体的には、スライダコア51の上面には、複数の溝が形成されている。各溝は、X軸方向において等間隔に形成される。また、各溝は、Y軸方向に延在している。冷却配管56は、スライダコア51の上面に形成されている各溝に沿って蛇行するように配管される。
【0045】
冷却配管56は、冷媒の流入口と、冷媒の流出口とを有する。当該流入口と当該流出口とは、冷却器(図示しない)に繋げられている。冷媒は、冷却配管56の流入口から冷却配管56の流出口まで流れ、スライダ50を冷却する。流出口に到達した冷媒は、冷却器に送られ、冷やされる。その後、冷やされた冷媒は、冷却配管56の流入口に再び送られる。このように、冷媒は、スライダコア51の上面を循環することでスライダ50から排熱する。冷媒は、たとえば、水などを含む液体である。
【0046】
冷却配管56は、たとえば、熱伝導性の良い金属管で構成される。一例として、冷却配管56は、銅管で構成されてもよいし、アルミニウム管で構成されてもよいし、ステンレス鋼管で構成されてもよい。
【0047】
なお、
図5には、冷却配管56の断面形状が円形である例が示されているが、冷却配管56の断面形状は、任意である。冷却配管56の断面形状は、たとえば、多角形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0048】
<D.変形例>
次に、
図7~
図9を参照して、上述の空気供給路54(
図2および
図3参照)の変形例について説明する。
図7は、スライダ50をZ軸方向から表わした図である。
図8は、
図7に示されるVIII-VIII線に沿ったスライダ50の断面図である。
図9は、
図7に示されるIX-IX線に沿ったスライダ50の断面図である。
【0049】
上述の
図2および
図3では、エアー配管54Aとしての空気供給路54について説明を行なった。しかしながら、空気供給路54は、エアー配管54Aに限定されず、磁石板10とスライダ50との隙間SPに空気を供給可能な任意の機構で実現され得る。一例として、空気供給路54は、スライダ50に形成される貫通孔54Bによって実現される。
【0050】
貫通孔54Bは、Y軸方向にスライダ50を貫通している孔である。本変形例においては、空気は、貫通孔54Bを介して、磁石板10とスライダ50との隙間SPに供給される。このように、貫通孔54Bは、空気供給路54として機能する。空気が貫通孔54Bを通じて隙間SPに供給されることで、当該空気が隙間SPにおいて断熱層となる。その結果、その結果、スライダ50内のコイル52で発生した熱が磁石板10に伝わることが防がれる。また、スライダ50から磁石板10への伝熱を防止するために、新たな構成をリニアモータ100に設ける必要がない。
【0051】
より具体的には、貫通孔54Bは、Z軸方向から見て、コイル52、冷却配管56および固定用部材58と重ならないようにスライダコア51に形成される。また、貫通孔54Bは、空気の流入口ILと、当該空気の流出口OLとを含む。
【0052】
流入口ILは、配管を介して、エアー機器(図示しない)に繋がれる。当該エアー機器は、たとえば、空気のコンプレッサおよびバルブなどで構成される。当該エアー機器は、流入口ILから貫通孔54Bに空気を圧送し、流出口OLから当該空気を吐出する。
【0053】
流出口OLは、磁石板10とスライダ50との隙間SPと繋がるようにスライダコア51に形成されている。これにより、貫通孔54Bに送り込まれた空気は、流出口OLから隙間SPに吐出される。
【0054】
なお、スライダコア51に形成される貫通孔54Bの数は、任意である。スライダコア51には、1つの貫通孔54Bが形成されてもよいし、複数の貫通孔54Bが形成されてもよい。
図7~
図9の例では、4つの貫通孔54Bがスライダコア51に形成されている。
【0055】
ある局面において、複数の貫通孔54Bは、X軸方向に並ぶようにスライダコア51に形成される。この場合、好ましくは、複数の貫通孔54Bは、Y軸方向におけるスライダコア51の中心線を通るようにスライダコア51に形成される。
【0056】
他の局面において、複数の貫通孔54Bは、Y軸方向に並ぶようにスライダコア51に形成される。この場合、好ましくは、複数の貫通孔54Bは、X軸方向におけるスライダコア51の中心線を通るようにスライダコア51に形成される。
【0057】
さらに他の局面において、Y軸方向に並べられている一列の貫通孔54BがX軸方向に複数列並べてスライダコア51に形成されてもよい。この場合、貫通孔54Bの各々は、Y軸方向におけるスライダコア51の中心線を基準として対称な位置に形成される。また、貫通孔54Bの各々は、X軸方向におけるスライダコア51の中心線を基準として対称な位置に形成される。
【0058】
<E.リニアモータ100の応用例>
次に、
図10~
図12を参照して、上述のリニアモータ100の応用例について説明する。リニアモータ100は、たとえば、工作機械内の様々な部品を駆動するために用いられ得る。
【0059】
ここでいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。工作機械200は、横形のマシニングセンタであってもよいし、立形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械200は、旋盤であってもよいし、付加加工機であってもよいし、その他の切削機械や研削機械であってもよい。
【0060】
リニアモータ100が工作機械内で使用される場合には、固定子として機能する磁石板10が工作機械内の不動部品に取り付けられる。一方で、可動子として機能するスライダ50は、工作機械内における駆動対象の部品に取り付けられる。この場合、ボルトが駆動対象の部品を通されるとともに、当該ボルトは、スライダ50内に形成されている上述の固定用部材58に形成されているねじ穴に嵌められる。これにより、駆動対象の部品がスライダ50に固定される。
【0061】
(E1.主軸)
まず、
図10を参照して、リニアモータ100を主軸の駆動に応用する例について説明する。
図10は、工作機械200の装置構成の一例を示す図である。
【0062】
リニアモータ100は、たとえば、ワークまたは工具を回転可能に保持するための主軸250の位置を移動するために用いられる。主軸250は、ワークを回転するためのワーク主軸であってもよいし、工具を回転するための工具主軸であってもよい。
【0063】
説明の便宜のために、以下では、主軸250を基準とする座標系をX'軸,Y'軸およびZ'軸で表わす。X'軸、Y'軸およびZ'軸は、互いに直交している。
【0064】
図10に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Aと、主軸250とを含む。
【0065】
制御部200Aは、たとえば、CNC(Computer Numerical Control)装置である。CNC装置は、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのMPU(Micro Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。制御部200Aは、加工プログラムなど各種プログラムを実行することで駆動部240Aの動作を制御する。
【0066】
駆動部240Aは、主軸250を駆動するための機構である。駆動部240Aの装置構成は、任意である。駆動部240Aは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図10の例では、駆動部240Aは、モータドライバ241A~241Cと、リニアモータ242A~242Cと、エンコーダ243A~243Cとで構成されている。リニアモータ242A~242Cの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0067】
モータドライバ241Aは、主軸250のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Aは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Aに出力する。
【0068】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Aに逐次的に出力する。モータドライバ241Aは、エンコーダ243Aのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Aに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Aは、X'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0069】
モータドライバ241Bは、主軸250のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Bは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Bに出力する。
【0070】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Bに逐次的に出力する。モータドライバ241Bは、エンコーダ243Bのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Bに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Bは、Y'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0071】
モータドライバ241Cは、主軸250のZ'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Cは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Cに出力する。
【0072】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Cに逐次的に出力する。モータドライバ241Cは、エンコーダ243Cのフィードバック信号から主軸250の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Cに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Cは、Z'軸方向の任意の位置に主軸250を移動する。
【0073】
(E2.テーブル)
次に、
図11を参照して、リニアモータ100をテーブルの駆動に応用する例について説明する。
図11は、工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【0074】
リニアモータ100は、たとえば、工作機械内に設けられているテーブル260を駆動するために用いられる。テーブル260は、加工対象のワークを載置するための台である。
【0075】
図11に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Bと、テーブル260とを含む。
【0076】
駆動部240Bは、テーブル260を駆動するための機構である。駆動部240Bの装置構成は、任意である。駆動部240Bは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図11の例では、駆動部240Bは、モータドライバ241D,241Eと、リニアモータ242D,242Eと、エンコーダ243D,243Eとで構成されている。リニアモータ242D,242Eの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0077】
モータドライバ241Dは、テーブル260のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Dは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Dに出力する。
【0078】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Dに逐次的に出力する。モータドライバ241Dは、エンコーダ243Dのフィードバック信号からテーブル260の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Dに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Dは、X'軸方向の任意の位置にテーブル260を移動する。
【0079】
モータドライバ241Eは、テーブル260のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Eは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Eに出力する。
【0080】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Eに逐次的に出力する。モータドライバ241Eは、エンコーダ243Eのフィードバック信号からテーブル260の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Eに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Eは、Y'軸方向の任意の位置にテーブル260を移動する。
【0081】
(E3.ローダ)
次に、
図12を参照して、リニアモータ100をローダの駆動に応用する例について説明する。
図12は、工作機械200の装置構成の他の例を示す図である。
【0082】
リニアモータ100は、たとえば、部材を搬送するためのローダ270を駆動するために用いられる。当該部材は、加工前または加工後のワークであってもよいし、工具であってもよい。
【0083】
図12に示されるように、工作機械200は、制御部200Aと、駆動部240Cと、ローダ270とを含む。
【0084】
駆動部240Cは、ローダ270を駆動するための機構である。駆動部240Cの装置構成は、任意である。駆動部240Cは、単体の駆動ユニットで構成されてもよし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図12の例では、駆動部240Cは、モータドライバ241F,241G,241Hと、リニアモータ242F,242G,242Hと、エンコーダ243F,243G,243Hとで構成されている。リニアモータ242F,242G,242Hの各々は、上述のリニアモータ100に対応する。
【0085】
モータドライバ241Fは、ローダ270のX'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Fは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Fに出力する。
【0086】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Fに逐次的に出力する。モータドライバ241Fは、エンコーダ243Fのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Fに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Fは、X'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0087】
モータドライバ241Gは、ローダ270のY'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Gは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Gに出力する。
【0088】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Gに逐次的に出力する。モータドライバ241Gは、エンコーダ243Gのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Gに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Gは、Y'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0089】
モータドライバ241Hは、ローダ270のZ'軸方向における駆動を制御する。モータドライバ241Hは、制御部200Aから制御信号の入力を受け、当該制御信号に応じた電流をリニアモータ242Hに出力する。
【0090】
より具体的には、制御部200Aは、目標位置を含む制御信号をモータドライバ241Hに逐次的に出力する。モータドライバ241Hは、エンコーダ243Hのフィードバック信号からローダ270の実位置を算出し、当該実位置と当該目標位置との差分が小さくなるようにリニアモータ242Hに電流を出力する。これにより、モータドライバ241Hは、Z'軸方向の任意の位置にローダ270を移動する。
【0091】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
10 磁石板、12 磁石、50 スライダ、51 スライダコア、52 コイル、53 ティース、53A 補助ティース、53B コイル用ティース、54 空気供給路、54A エアー配管、54B 貫通孔、56 冷却配管、58 固定用部材、60 筐体、100 リニアモータ、200 工作機械、200A 制御部、240A 駆動部、240B 駆動部、240C 駆動部、241A モータドライバ、241B モータドライバ、241C モータドライバ、241D モータドライバ、241E モータドライバ、241F モータドライバ、241G モータドライバ、241H モータドライバ、242A リニアモータ、242B リニアモータ、242C リニアモータ、242D リニアモータ、242E リニアモータ、242F リニアモータ、242G リニアモータ、242H リニアモータ、243A エンコーダ、243B エンコーダ、243C エンコーダ、243D エンコーダ、243E エンコーダ、243F エンコーダ、243G エンコーダ、243H エンコーダ、250 主軸、260 テーブル、270 ローダ。
【要約】
工作機械に用いられるリニアモータ(100)は、複数の磁石(12)が第1方向に並べて設けられている磁石板(10)と、複数のコイル(52)が第1方向に並べて設けられており、磁石板(10)に対して第1方向にスライド可能に構成されたスライダ(50)とを備える。スライダ(50)は、磁石板(10)とスライダ(50)との隙間に空気を供給するための空気供給路(54)を含む。