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特許7591691抗インターロイキン-33抗体による慢性閉塞性肺疾患の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】抗インターロイキン-33抗体による慢性閉塞性肺疾患の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241121BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241121BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K45/00
A61P11/00
C07K16/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024511995
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2022073766
(87)【国際公開番号】W WO2023025932
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】63/237,630
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/364,734
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】サディク,ムハンマド ワカス
(72)【発明者】
【氏名】ロサノ, エウラリア ヒメネス
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/089563(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/156440(WO,A1)
【文献】Chuan QIU et al.,“Anti‐interleukin‐33inhibits cigarette smoke‐induced lung inflammation in mice”,Immunology,2012年12月13日,Vol.138, No. 1,p.76-82,DOI: 10.1111/IMM.12020
【文献】Jeanne ALLINNE et al.,“IL-33blockade affects mediators of persistence and exacerbation in a model ofchronic airway inflammation”,Journal of Allergyand Clinical Immunology,2019年12月,Vol.144, No. 6,p.1624-1637.e10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 45/00
A61P 11/00
C07K 16/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントを含み、2週毎(Q2W)、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300mgの前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの用量、又は4週毎(Q4W)の間隔にて約600mgの前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの用量で前記対象に投与され、前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号4の配列を有するVHドメイン及び配列番号8の配列を有するVLドメインを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記COPDは、前記対象において、慢性気管支炎と関連する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記COPDは、中程度のCOPD、中程度から重度のCOPD、又は重度のCOPDである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記対象は、処置前の12ヵ月においてCOPDの少なくとも1回又は少なくとも2回の中程度、又は少なくとも1回の重度の急性増悪(aeCOPD)の既往歴がある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
処置の前に、前記対象は、気管支拡張薬後1秒努力呼気肺活量(FEV)対努力肺活量(FVC)比(BD後FEV/FVC)が0.70未満(<0.70)である、及び/又はBD後FEVが、予測される正常値の>20%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記対象は、現在の喫煙者又は以前の喫煙者である、又は喫煙歴が少なくとも10パックイヤーである現在の喫煙者又は以前の喫煙者である、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記対象は、長時間作用性のベータ2アゴニスト(LABA)、長時間作用性のムスカリン受容体アンタゴニスト(LAMA)及び/又は吸入コルチコステロイド(ICS)を含むCOPD吸入維持療法を受けている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記吸入維持療法は、LABA及びLAMA、ICS及びLABA、又はICS、LABA及びLAMAを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物の投与によって、中程度から重度のCOPD増悪又は重度のCOPD増悪の年率換算割合が、前記対象において引き下げられる、及び/又は最初の中程度から重度のCOPD増悪又は最初の重度のCOPD増悪までの時間が、前記対象において長くなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物の投与によって、FEV、気管支拡張薬前FEV、及び/又はFEV対努力肺活量(FVC)比(FEV/FVC)が、前記対象において向上する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物の投与によって、COPDにおける呼吸器症状の評価(E-RS)、St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)、COPD評価試験(CAT)、慢性肺疾患の増悪のツール-患者報告アウトカム(EXACT-PRO)、息切れ、咳及び痰スケール(BCSS)、5-レベルEuroQol-5ディメンション(EQ-5D-5L)、労働生産性及び活動性障害アンケート(WPAI-GH)、重篤度の患者全般印象度(PGIS)、及び変化の患者全般印象度(PGIC)から選択される1つ以上のアンケート中で、スコアが前記対象において向上する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
E-RS:COPDスコア、SGRQスコア、及び/又はCATスコアの臨床における最小重要差が達成される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記用量は、投与期間の間、約10~35μg/mlのCmax.ssを達成するのに有効である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは:ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体の抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、lgG1抗体、lgG2抗体、lgG3抗体、及びlgG4抗体から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、IgG1である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗IL-33抗体は、配列番号9に示す軽鎖配列及び配列番号10に示す重鎖配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記抗IL-33抗体は33_670087_7B(MEDI3506)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記投与は皮下投与である、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特に抗IL-33抗体又はその抗体バリアントを投与することによって、COPDを処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患は、世界で第4位の死因であり、2030年までに世界で第3位の死因となると推定されている(非特許文献1)。慢性閉塞性肺疾患は、持続的な呼吸器症状及び気流制限(気管支拡張薬後[BD]1秒努力呼気肺活量[FEV1]/努力肺活量[FVC]<0.70)によって特徴付けられ、これは、気道及び/又は肺胞の異常に起因し、通常、有害粒子又はガスへのかなりの曝露によって引き起こされ、そして肺分化異常が挙げられる宿主因子によって影響される。重大な共存症は、罹患率及び死亡率に影響を及ぼすおそれがある(非特許文献2)。慢性閉塞性肺疾患は、致命的な呼吸状態であり、疾患の経過は、長期間の障害によって特徴付けられ、これは、健康関連クオリティ・オブ・ライフのかなりの損失をもたらす(非特許文献3)。
【0003】
慢性閉塞性肺疾患は、完全には可逆的でなく、通常、進行性であり、肺における慢性炎症性応答の増強と関連する。症候的負担全体が、健康関連クオリティ・オブ・ライフに実質的な不利益な影響を及ぼし、そのうえ、増悪のリスクの増大及びより悪い疾患予測に寄与することを実証する証拠の根拠が増えている(非特許文献4)。
【0004】
COPDの急性増悪は、患者に重大な悪影響を及ぼす症状悪化の発現である(非特許文献5)。増悪の頻度が高いほど、肺機能低下、健康関連クオリティ・オブ・ライフの障害、及び死亡率の増大の促進と関連する(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。さらに、COPDの発病率が増すにつれ、増悪が、ヘルスケアシステムに対して大きな重荷を負わせており、米国において毎年1000万人を超える予定外の人数を占める(非特許文献9)。米国におけるCOPD処置の直接経費は、毎年320億ドルを超え、増悪は、この保健医療費の50%~75%を占めると推定される(非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。また、増悪は、COPDにおいて、回復促進を標的とする急性処置による重要な転帰尺度であるが、長期の維持吸入療法が、増悪の頻度及び重篤度を妨げ、且つ引き下げるように設計される(非特許文献13)。
【0005】
最適化された維持吸入療法による十分な処置にも拘わらず、患者のおよそ30%~40%が、中程度又は重度の増悪を持ち続ける(非特許文献14、15)。最大3つの療法(LABA+LAMA+ICS)ですら、依然として不十分であり得る(非特許文献16);それゆえに、医療ニーズは実質的に満たされていないままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Adeloye et al 2015
【文献】GOLD 2020
【文献】van Manen et al 2003
【文献】Miravitlles and Ribera 2017
【文献】Wedzicha and Seemungal 2007
【文献】Donaldson et al 2002
【文献】Seemungal et al 1998
【文献】Soler-Cataluna et al 2005
【文献】Mannino and Braman 2007
【文献】Celli et al 2004
【文献】Guarascio et al 2013
【文献】Toy et al 2010
【文献】Ritchie and Wedzicha 2020
【文献】Muellerova et al 2017
【文献】Vestbo et al 2017
【文献】Rabe et al 2020
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、COPDを処置する方法を提供する。本明細書中で開示される方法は、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの投与を含む。
【0008】
インターロイキン33発現は、COPDにおいて増大して(Byers et al 2013)、肺機能と逆に相関する(Byers et al 2013、Kearley et al 2015)。MEDI3506によるIL-33活性の中和は、COPD患者の肺における炎症性の構造的損傷のサイクルを崩壊させることによって、COPD患者に有益な治療薬を提供する潜在性がある。
【0009】
一態様において、本開示は、対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置する方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置する方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)の間隔にて約150mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本開示は、対象におけるCOPDを処置する方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、肺又は上皮内層流体(ELF)においてIL-33の少なくとも80%の阻害を達成するのに有効な用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0012】
ある場合には、用量は、肺においてIL-33の阻害を少なくとも約90%、場合によっては少なくとも95%達成するのに有効である。
【0013】
ある場合には、用量は、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgである。ある場合には、用量は約300mg Q8Wである。ある場合には、用量は約300mg Q4Wである。ある場合には、用量は約150mg Q4Wである。
【0014】
ある場合には、COPDは、対象において、慢性気管支炎と関連する。
【0015】
ある場合には、COPDは、中程度のCOPD、中程度から重度のCOPD、又は重度のCOPDである。
【0016】
ある場合には、処置されることとなる対象は、処置前の12ヵ月においてCOPDの少なくとも1回、場合によっては少なくとも2回の中程度、又は少なくとも1回の重度の急性増悪(aeCOPD)の既往歴がある。
【0017】
ある場合には、処置の前に、対象は、気管支拡張薬後1秒努力呼気肺活量(FEV)対努力肺活量(FVC)比(BD後FEV/FVC)が0.70未満(<0.70)である。ある場合には、処置の前に、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の>20%である。
【0018】
ある場合には、対象は、現在の喫煙者又は以前の喫煙者である。ある場合には、対象は、以前の喫煙者である。ある場合には、対象は、喫煙歴が少なくとも10パックイヤーである。
【0019】
ある場合には、処置されることとなる対象は、長時間作用性のベータ2アゴニスト(LABA)、長時間作用性のムスカリン受容体アンタゴニスト(LAMA)、及び/又は吸入コルチコステロイド(ICS)を含むCOPD吸入維持療法を受けている。ある場合には、吸入維持療法は、LABA及びLAMA、ICS及びLABA、又はICS、LABA、及びLAMAを含む。
【0020】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは:ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体の抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、lgG1抗体、lgG2抗体、lgG3抗体、及びlgG4抗体から選択される。
【0021】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、IgG1である。
【0022】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、ヒト抗体である。
【0023】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号4に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一のVHドメイン、及び配列番号8に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一のVLドメインを含む。
【0024】
ある場合には、抗IL-33抗体は、配列番号4に示すVHドメイン配列及び配列番号8に示すVLドメイン配列を含む。
【0025】
ある場合には、抗IL-33抗体は、配列番号9に示す軽鎖配列及び配列番号10に示す重鎖配列を含む。
【0026】
ある場合には、抗IL-33抗体バリアントは、ヒトにおける33_670087_7B(MEDI3506/トゾラキマブ)と同じ薬物動態学的(pK)特徴を有する。
【0027】
ある場合には、抗IL-33抗体はトゾラキマブである。
【0028】
ある場合には、投与は皮下投与である。
【0029】
別の態様において、本開示は、対象において慢性閉塞性肺疾患(COPD)のマーカーを向上させる方法であって:抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。マーカーは:中程度から重度のCOPD増悪への年率換算割合、最初の中程度から重度のCOPD増悪までの時間、FEV1、1秒努力呼気肺活量(FEV1)、FEV1対努力肺活量(FVC)比(FEV1/FVC)、又は息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)スコア、COPD評価試験(COPD Assessment Test:CAT)スコア、並びにSt.George’s respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアから選択される。
【0030】
ある場合には、先行する態様のいずれについても、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも12週間投与される。ある場合には、先行する態様のいずれについても、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも24週間投与される。ある場合には、先行する態様のいずれについても、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも52週間投与される。
【0031】
別の態様において、本開示は、対象において、中程度から重度のCOPD増悪への年率換算割合を引き下げる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0032】
別の態様において、本開示は、COPDを患う対象において気管支拡張薬前FEV1を向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0033】
別の態様において、本開示は、COPDを患う対象においてE-RS:COPDスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0034】
別の態様において、本開示は、COPDを患う対象においてSGRQスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本開示は、COPDを患う対象においてCATスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、抗IL-33抗体は:配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】[図1A]NCT03096795のパートIからの健康な参加者の血清中で測定したIL-33/トゾラキマブ複合体量を示す。[図1B]NCT03096795のパートIからの健康な参加者の血清中で測定したIL-33/sST2複合体量を示す。[図1C]NCT03096795のパートIIからのCOPDを患う参加者の血清中で測定したIL-33/トゾラキマブ複合体量を示す。[図1D]NCT03096795のパートIIからのCOPDを患う参加者の血清中で測定したIL-33/sST2複合体量を示す。
図2】[図2A]300mg MADコホートにおいて29日目に測定した遊離IL-33redプラスIL-33red/トゾラキマブの鼻粘膜内層流体レベルを示す。[図2B]300mg MADコホートにおいて29日目に測定した遊離IL-33redの鼻粘膜内層流体レベルを示す。[図2C]300mg MADコホートにおいて29日目に測定した遊離IL-33oxの鼻粘膜内層流体レベルを示す。
図3】トゾラキマブが、健康な参加者由来の全血においてエクスビボIL-33誘発(challenge)を阻害することを示す。
図4】[図4A]300mg MADコホート内の参加者における、1、14、及び28日目のIL-5の血清レベル(プラセボ、n=6;ゾラキマブ、n=6)を示す。プロットは、平均±SEMを示す。混合効果縦断モデルを用いて、トゾラキマブとプラセボ間のバイオマーカーの軌跡を比較するp値を生成した(p=0.0037)。[図4B]300mg MADコホート内の参加者における、1、14、及び28日目のIL-13の血清レベル(プラセボ、n=6;トゾラキマブ、n=6)を示す。プロットは、平均±SEMを示す。混合効果縦断モデルを用いて、トゾラキマブとプラセボ間のバイオマーカーの軌跡を比較するp値を生成した(p=0.034)。[図4C]300mg MADコホート内の参加者における、1、14、及び28日目の好酸球の血清レベル(プラセボ、n=6;トゾラキマブ、n=6)を示す。プロットは、平均±SEMを示す。混合効果縦断モデルを用いて、トゾラキマブとプラセボ間のバイオマーカーの軌跡を比較するp値を生成した(p=0.0023)。
図5】アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)が、ヒト化IL-33マウスにおける気管支肺胞洗浄液(BALF)において迅速なIL-33放出を誘導することを示す
図6】トゾラキマブが、ヒト化IL-33マウスにおいてALT誘導BALF IL-5を阻害することを示す。試験物質を、ALTによる誘発前-24時間にて鼻腔内投与した。ALT誘発後の24時間にてBALFを収集して、IL-5の存在について分析した。一元配置ANOVAをボンフェローニの多重比較検定と共に用いて、試験物質の有意な効果を判定した。***p<0.001、**p<0.01(n=4)。
図7】[図7A]野生型IL-33(IL-33)、oxIL-33、及びoxIL-33+抗ST2抗体による処置後の正常なヒト気管支上皮細胞におけるスクラッチ創傷修復を示す。[図7B図3Aに記載するスクラッチ創傷アッセイ由来の創傷閉鎖%の定量化を示す。
図8】スクラッチ創傷障害が、COPD対象から得られる気管支上皮細胞においても見られたことを示す。
図9】トゾラキマブ及び抗TSLP抗体の濃度の上昇に伴う、A549細胞におけるスクラッチ閉鎖%を示す。
図10】PK/PDターゲットエンゲージメントモデルの説明である。
図11】Ph1用量コホート由来のトゾラキマブ全身濃度の予測対観察トゾラキマブ全身濃度を示す。
図12】Ph1用量コホート由来のトゾラキマブ:IL-33複合体形成の予測対観察トゾラキマブ:IL-33複合体形成を示す。
図13】Ph1用量コホート由来のIL-33:sST2複合体引下げの予測対観察IL-33:sST2複合体引下げを示す。
図14】血液中のIL33/sST2複合体阻害についての用量応答から予測されるIL-33阻害を示す(Q2W-一番上の線;Q4W-中央の線;Q6W-一番下の線)。
図15】トゾラキマブによる、肺におけるトラフでのIL-33の予測される抑制を示す(Q4W-一番上の線;Q8W-一番下の線)。
図16】300mg Q4W(より高い線)及び300mg Q8W(より低い線)後の予測されるトゾラキマブ血清濃度を示す。アルタナリアマウスモデルによって特定される60%、80%、及び90%に必要とされる血清濃度を、破線によって示す。
図17】300mg Q4W(より高い線)及び150mg Q4W(より低い線)後の予測されるトゾラキマブ血清濃度を示す。スクラッチ創傷閉鎖アッセイにおける応答についての血清濃度閾値を、破線として示す。
図18】Ph1用量コホート由来のトゾラキマブ全身濃度の予測対観察トゾラキマブ全身濃度を示す。
図19】Ph1用量コホート由来のIL-33:sST2複合体引下げの予測対観察IL-33:sST2複合体引下げを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
用語「約」又は「およそ」は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、その値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。特定の実施形態において、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3、又は4標準偏差内を意味する。特定の実施形態において、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%内を意味する。用語「約」又は「およそ」が、一連の2つ以上の数値における最初の数値の前に来る場合は常に、用語「約」又は「およそ」が、当該一連の数値のそれぞれに当て嵌まると理解されたい。
【0038】
COPDの処置
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺からの気流の妨害を引き起こす慢性炎症性肺疾患である。症状として、呼吸困難、咳、粘液(痰)の産生、及び喘鳴が挙げられる。
【0039】
COPDは、気道肺活量測定、好ましくは気管支拡張薬後(BD後)気道肺活量測定により報告される持続的な呼吸器症状及び気流制限によって特徴付けられ得る。本明細書中で用いられる「気管支拡張薬後(BD後)気道肺活量測定」は、典型的にはインヘラ又はネブライザを介して投与される、気管支拡張薬の投与後に実行される気道肺活量測定を指す。一部の実施形態において、気管支拡張薬は、アルブテロール又はサルブタモールから選択される。BD後肺活量測定結果は、1秒努力呼気肺活量(FEV1)又は努力肺活量(FVC)として表され得る。
【0040】
本開示は、COPDの処置を提供する。ある場合には、COPDは、中程度から重度のCOPDである。中程度から重度のCOPDは、一般に、BD後1秒努力呼気肺活量(FEV1)が、予測される正常値、すなわち健康な患者について予測される値の<80%である対象によって特徴付けられる。ある場合には、対象は、BD後FEVが、予測される正常値の<80%、<75%、<70%、<65%、<60%、<55%、<50%、<45%、<40%、又は<35%である。ある場合には、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の<70%且つ>30%である。ある場合には、対象は、BD後FEVが、予測される正常値の<80%且つ>30%、<75%且つ>30%、<70%且つ>30%、<65%且つ>30%、<60%且つ>30%、予測される正常値の<55%且つ>30%、予測される正常値の<50%且つ>30%、予測される正常値の<45%且つ>30%、予測される正常値の<40%且つ>30%である。ある場合には、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の<80%且つ>35%、<75%且つ>35%、<70%且つ>35%、<65%且つ>35%、<60%且つ>35%、予測される正常値の<55%且つ>35%、予測される正常値の<50%且つ>35%、予測される正常値の<45%且つ>35%、又は予測される正常値の<40%且つ>35%である。ある場合には、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の<60%且つ>40%、予測される正常値の<55%且つ>40%、予測される正常値の<50%且つ>40%、又は予測される正常値の<45%且つ>40%である。
【0041】
ある場合には、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の>20%である。ある場合には、対象は、BD後FEVが、予測される正常値の>21%、>22%、>23%、>24%、>25%、>26%、>27%、>28%、>29%、又は>30%である。ある場合には、対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の>30%である。
【0042】
ある場合には、COPDは、<0.70、<0.65、<0.60の<0.55、<0.50、<0.45、<0.40、<0.35、又は<0.30のBD後FEV1/努力肺活量(FVC)の存在によって特徴付けられる。ある場合には、COPDは、<0.70のBD後FEV1/FVCの存在によって特徴付けられる。
【0043】
COPDは慢性症状であり、その重篤度は、強くなったり弱くなったりし得る。したがって、COPDを患う対象は、COPDの1回以上の急性増悪(AECOPD、本明細書中で「COPD増悪」とも称される)を経験するおそれがあり、これは、症状が比較的少ない期間によって区切られ得る。
【0044】
本明細書中で用いられる「AECOPD」又は「aeCOPD」は、2日以上続く、正常な日々の変動を越える、急性発症である、そして通常の薬物の変化を是認し得る、対象の通常のCOPD症状の変化である。症状の変化は、以下のリストから少なくとも1つの主要な、又は軽度のCOPD症状を含み得る:
- 主要なCOPD症状:呼吸困難、痰容量の増大、及び痰の色の変化
- 軽度のCOPD症状:咳、喘鳴、咽頭炎、風邪症状(鼻水又は鼻づまり)、及び他の原因のない発熱
【0045】
ある場合には、症状の変化は、上述のリストからの少なくとも2つのCOPD症状を含む。ある場合には、症状の変化は、上述のリストからの少なくとも1つの主要なCOPD症状を含む。ある場合には、症状の変化は、上述のリストからの少なくとも1つの主要なCOPD症状、及び少なくとも1つの他の主要な、又は軽度の症状を含む。
【0046】
AECOPDは、軽度、中程度、又は重度と分類され得る。本明細書中で用いられる「重度のAECOPD」は、入院患者のCOPD関連入院をもたらすものである(例えば、対象は、国及びヘルスケアシステムに応じて、COPD増悪のために入院するか、又は観察エリア、緊急部門、若しくは他の同等の医療施設への入場が≧24時間承認される)。重度のAECOPDは、COPD関連死に終わるおそれがある。「中程度のAECOPD」は、「重度」(すなわち入院)の基準を満たさないものである。中程度及び重度のAECOPDは、全身性コルチコステロイド及び/若しくは抗生物質、又はコルチコステロイドの単回のデポー注射液用量の使用に終わる。ある場合には、AECOPDが起こったことが確認される一方、対象は、COPDのための安定した2つ又は3つの維持療法中であり、処置におけるギャップ又は下降(step down)の結果としてではなかった。最後に、「軽度のAECOPD」は、「重度」又は「中程度」の基準を満たさない増悪である。
【0047】
重度のAECOPDについて、AECOPDの開始日時は、入院の日時、又は中程度のAECOPDについて、全身性コルチコステロイド若しくは抗生物質の処置の開始日時のいずれか早い方であり得、終了日時は、全身性コルチコステロイド若しくは抗生物質の処置の終了日時、又は退院の日時の最新の方であり得る。
【0048】
ある場合には、処置されることとなる対象は、処置前(すなわち、最初の用量の投与よりも前)の12ヵ月以内の少なくとも1回の中程度又は重度のAECOPDの既往歴があり得る。ある場合には、対象は、処置前(すなわち、最初の用量の投与前)の11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ヵ月以内に、少なくとも1回の、場合によっては少なくとも2回の、中程度の、又は少なくとも1回の重度のAECOPDの既往歴があり得る。ある場合には、対象は、処置前の12ヵ月以内に少なくとも2回の中程度のAECOPDの既往歴があり得る。ある場合には、対象は、処置前の52週以内に少なくとも2回の中程度のAECOPDの既往歴があり得る。ある場合には、対象は、処置前の12ヵ月以内に少なくとも1回の重度のAECOPDの既往歴があり得る。ある場合には、対象は、処置前の52週以内に少なくとも1回の重度のAECOPDの既往歴があり得る。
【0049】
AECOPDを分類する代わりの方法は、「COPDCompEx:A novel composite endpoint for COPD exacerbations to enable faster clinical development」(Vogelmeier et al,Respiratory Medicine,volume 173 November 2020,106175)において概説されるように、COPD複合増悪(COPDCompEx)アルゴリズムを用いるものである。COPDCompExは、COPDにおける増悪についての複合エンドポイントであり、増悪を、参加者のe-Diaries及びPEFから定義される事象と組み合わせている。増悪の双方の種類についての定義は、以下の通りである:COPDCompEx定義増悪:以下の1つ以上に至る発現:入院、救急外来受診、OCSによる処置、又は抗生物質による処置。日誌事象:以下の日誌及び家庭での肺活量測定変数を用いた閾値及び勾配基準によって定義:全般的症状評価、症状に起因する夜間覚醒、リリーバー薬物使用、PEF。好都合にも、COPDCompEx事象は、先に述べたように、AECOPD事象によるよりも頻繁な傾向があり、より短い時間枠にわたるCOPDの重篤度についての診断力を提供する。
【0050】
ある場合には、処置されることとなる対象は、処置前(すなわち、最初の用量の投与前)の12ヵ月以内に少なくとも1回のCOPDCompEx事象の既往歴があり得る。処置されることとなる対象は、処置前(すなわち、最初の用量の投与前)の11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1ヵ月以内に少なくとも1回のCOPDCompEx事象の既往歴があり得る。
【0051】
また、COPDは、ベースラインと比較して、息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)スコアにより分類され得る。本明細書中で用いられる、BCSSスコア等の本明細書中で開示されるあらゆるCOPDマーカーに関する「ベースライン」は、IL-33療法の最初の施用前の、又はその時の、患者についての当該パラメータの数値を意味する。
【0052】
BCSSは、3つの症状:息切れ、痰、及び咳(各々5点スケール)の重篤度を評価する3項目の毎日の日誌(Leidy et al 2003)である。項目スコアは、ドメインスコアとして報告することができ、合計されて総スコアが与えられる。ある場合には、対象は、抗IL33抗体又はその断片による処置の前に、総BCSSスコアが4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、又は14以上である。ある場合には、対象は、抗IL33抗体又はその断片による処置の前に、咳ドメインにおけるスコアが2以上、3以上、4以上、又は5である。一部の実施形態において、対象は、抗IL33抗体又はその断片による処置の前に、痰ドメインにおけるスコアが2以上、3以上、4以上、又は5である。ある場合には、「処置前の」BSCCスコアは、本明細書中に記載される抗IL33抗体又はその断片による処置前の4週にわたって記録される毎日のスコアの平均である。
【0053】
ある場合には、COPDは、慢性肺疾患の増悪のツール-患者報告アウトカム(Exacerbations of Chronic Pulmonary Disease Tool-Patient-reported Outcome:EXACT-PRO)スコアを用いて分類される。EXACT-PROは、COPD増悪の頻度、重篤度、及び期間を評価するために開発された14項目のePRO手段である(Jones et al 2011;Leidy et al 2011)。当該手段は、手持ち型電子デバイスを用いる、毎日の自宅での投与のために開発された。応答者は、応答者の経験を「今日」とみなして、就寝時刻の直前に毎晩、日誌を完了し、且つ質問に答えるように指示される。毎日のEXACT-PRO総スコアは、0~100の範囲を有し、スコアが高いほど重篤度が大きいことを示す。総スコア変化が、発症及びEXACT-PRO定義増悪事象からの回復を特定するのに用いられる。事象の発症及び回復を特定する際に、EXACT-PROは、事象の頻度及び期間、並びに事象の重篤度についての情報を提供することができる。ある場合には、処置されることとなる対象は、本明細書中に記載される抗IL33抗体又はその断片による処置前のEXACT-PROスコアが、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、又は少なくとも80である。
【0054】
ある場合には、COPDは、St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)を用いて分類され得る。SGRQは、気道閉塞症の疾患患者において健康状況(クオリティ・オブ・ライフ)を測定するために開発された50項目のアンケートである。グローバルスコアは、0から100に及ぶ。ディメンションによるスコアは、3つのドメイン:症状、活動、及び影響(社会心理的)、並びに総スコアについて算出される。スコアが低いほど、クオリティ・オブ・ライフ(QoL)が良いことを示す。第1の部分(「症状」)は、咳、喀痰産生、喘鳴、息切れの頻度、並びに息切れ又は喘鳴の攻撃の期間及び頻度が挙げられる症候学を評価する。第2の部分は、2つの構成要素:「活動」及び「影響」を有する。「活動」の部は、息切れを引き起こすか、又は息切れのため制限される活動に関係する。「影響」の部は、仕事、健康管理、パニック、スティグマ付与(stigmatization)、薬物の必要性、処方される療法の副作用、健康についての予想、及び日常生活の同様に及ぼす影響が挙げられる広範な因子をカバーする。アンケートの回想期間は、過去4週にわたる。精神測定試験は、その反復性、信頼性、及び確証を実証した。感受性は、臨床試験により実証された。4単位の最小変化(「臨床における最小重要差(Minimum Clinically Important Difference)」)は、患者及び臨床医の試験後に臨床的に妥当であると確立された(Jones COPD 2005 2(1):75-9)。
【0055】
ある場合には、COPDは、COPD評価試験(CAT)スコアによって分類され得る。CATは、クオリティ・オブ・ライフに及ぼす疾患の影響を測定するためにCOPD患者のために設計されているアンケートである。CATは、健康状況に及ぼすCOPD(咳、痰、呼吸困難、胸部圧迫感)の影響を包括的に評価する8項目の患者完成アンケートである。CATは、0~40の範囲に及ぶ。スコアが高いほど、対象の寿命に及ぼすCOPDの影響が重度であることを意味する。ある場合には、処置されることとなる対象は、治療前のCATスコアが少なくとも10である。
【0056】
ある場合には、COPDは、E-RS(商標):COPD(COPDの呼吸器症状の重篤度を評価するために開発された11項目のePRO)によって分類され得る(Leidy et al 2014a;Leidy et al 2014b)。E-RS(商標):COPDは、EXACT-PRO由来の項目のサブセットである。E-RS(商標):COPDは、毎日のEXACT-PRO評価の一部として捕らえられるように設計された。E-RS(商標):COPD項目応答の合計は、0~40に及ぶ総スコアを生成し、スコアが高いほど重篤度が大きいことを示す。総スコアに加えて、症状ドメインスコアは、それぞれのドメイン内の項目の応答を合計することによって、息切れ(5項目;スコア範囲:0~17)、咳及び痰(3項目;スコア範囲:0~11)、並びに胸部症状(3項目;スコア範囲:0~12)について算出することができる。ある場合には、処置されることとなる対象は、E-RS(商標):COPDスコアが、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、又は少なくとも35%である。ある場合には、処置されることとなる対象は、咳及び痰ドメインにおけるE-RS(商標):COPDスコアが、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、又は11である。ある場合には、処置されることとなる対象は、胸症状ドメインにおけるE-RS(商標):COPDスコアが、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、又は12である。ある場合には、処置されることとなる対象は、息切れドメインにおけるE-RS(商標):COPDスコアが、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、又は17である。
【0057】
ある場合には、COPDは、対象における慢性気管支炎と関連する。慢性気管支炎を患う対象は、8週を超える、16週を超える、32週を超える、又は52週を超える間、気管支炎の症状(咳、粘液/痰の産生、疲労感、息切れ、発熱、悪寒、及び/又は胸部不快感)に苦しむおそれがある。
【0058】
ある場合には、処置されることとなる対象は、現在の喫煙者又は以前の喫煙者である。ある場合には、処置されることとなる対象は、喫煙歴が、パックイヤー10以上である。パックイヤーは、1日あたりのタバコの平均数×年数/20本として算出される。例えば、1パックイヤー=1年間1日あたり20本のタバコ又は2年間1日あたり10本のタバコを喫煙。
【0059】
ある場合には、対象は現在の喫煙者である。
【0060】
ある場合には、対象は以前の喫煙者である。「以前の喫煙者」は、治療の開始時に喫煙しておらず、そして治療開始前の最小6ヵ月間、恒久的にやめる意志を持って喫煙停止している対象と定義され得る。
【0061】
一部の実施形態の場合には、対象は、吸入コルチコステロイド(ICS)、持続的に作用するベータアゴニスト(LABA)、及び/若しくは持続的に作用するムスカリン性アンタゴニスト(LAMA)等のCOPD用の他の薬物に対して不十分な応答若しくは不耐性の履歴があるか、又はそうでなければ、COPD用のこれらの他の薬物が、医学的に不得策であり得る。本明細書中で用いられる、処置に対する「不十分な応答」は、前記処置の施用が、本明細書中に記載されるCOPDの1つ以上の症状の短期的且つ/又は長期的な改善をもたらさない場合である。これ以外にも、不十分な応答は、前記処置の脱退後に中程度から重度のレベルへの状態のぶり返しをもたらし得る。一部の実施形態において、COPDは以前に、ICS及びLABA、ICS及びLAMA、LABA及びLAMA、又はICS、LABA、及びLAMAで処置されており、前記処置に対する応答性が鈍いことが示されている。COPDは、COPDが処置にも拘わらず中等度~重度のままであるならば、又は対象が、療法のコースの脱退若しくは完了の後に中程度若しくは重度のAECOPD事象を経験するならば、処置に対する応答が不十分であると分類され得る。
【0062】
ある場合には、処置されることとなる対象は、本明細書中に記載される抗IL-33抗体又はその抗体バリアントによる処置の前に、ICS、LAMA、及び/又はLABA療法のコース(例えば、ICS-LAMA、ICS-LABA、LAMA-LABA、又はICS-LAMA-LABA療法、まとめて「COPD吸入維持療法」と称される)を受けたか、又は受けている。ある場合には、療法のコースは、本明細書中に記載される抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの最初の用量の投与の少なくとも3ヵ月前に開始し、少なくとも3ヵ月長であり得る。ある場合には、療法のコースは、本明細書中に記載される抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの最初の用量の投与の少なくとも3ヵ月前に開始し、前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントによる処置ウィンドウの開始時に進行中であり、そしてその間、続けられる。
【0063】
本明細書中で用いられる「吸入コルチコステロイド(ICS)」は、ネブライザ、インヘラ、又はヴェポライザの使用による、COPDの処置のために施されるあらゆるコルチコステロイド処置を指す。ICSは、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ブデソニド、及び/又はベクロメタゾン二プロピオン酸エステルから選択され得る。
【0064】
本明細書中で用いられる「長時間作用性のベータ-2アドレナリン受容体アゴニスト(LABA)」は、作用期間がおよそ12時間以上であるあらゆるベータアドレナリン受容体アゴニストを指す。これは、作用期間がおよそ4~6時間であるサルブタモール等の短時間作用型ベータアゴニスト(SABA)と対照的である。例示的なLABAとして、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、フォルモテロール、サルメテロール、プロトキロールが挙げられる。LABAは、作用期間が24時間以上である「超LABA」、例えば、インダカテロール、オロデタロール、又はビランテロールであり得る。LABAは、適切なあらゆる経路を通して、例えば、ネブライザ、インヘラ、又はヴェポライザの使用により投与され得る。
【0065】
本明細書中で用いられる長時間作用型ムスカリン性アンタゴニスト(LAMA)は、ムスカリンアセチルコリン受容体の活性をブロックする抗コリン作動薬である。例示的なLAMAとして、チオトロピウム臭化物、グリコピロニウム臭化物、及びアクリジニウム臭化物が挙げられる。LAMAは、適切なあらゆる経路を通して、例えば、ネブライザ、インヘラ、又はヴェポライザの使用により投与され得る。
【0066】
処置への「不耐性」がある対象は、処置が、処置の継続を賢明でなくさせる1つ以上の副作用を誘発する対象である。例えば、処置に対するアレルギー反応が、不耐性を示し得る。
【0067】
ある場合には、処置されることとなるCOPDは、中程度から重度のCOPDである。ある場合には、中程度から重度のCOPDは、以下によって特徴付けられる:
・対象における慢性気管支炎との関連
・処置の12ヵ月前におけるCOPDの少なくとも1回、場合によっては少なくとも2回の中程度の、又は少なくとも1回の重度の急性増悪の既往歴
・気管支拡張薬後の1秒努力呼気肺活量(FEV1)対努力肺活量(FVC)比(BD後FEV1/FVC)が<0.70、そして/又はBD後FEV1が、予測される正常値の>30%且つ<80%
・平均息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)スコアが、咳では>2、且つ/又は痰ドメインでは>2。
【0068】
ある場合には、処置されることとなるCOPDは、以下によって特徴付けられる:
・処置前の52週以内のCOPDの少なくとも2回の中程度の、又は少なくとも1回の重度の急性増悪の既往歴
・気管支拡張薬後の1秒努力呼気肺活量(FEV1)対努力肺活量(FVC)比(BD後FEV1/FVC)が、<0.70
・BD後FEV1が、予測される正常値の>20%。
・処置前のCATスコアが10以上、且つ粘液及び咳項目が各々2以上。
【0069】
特定の場合には、対象は、血中好酸球数が、1μlあたり約300細胞以上、又は処置前の1μlあたり300細胞未満である。ある場合には、対象は、処置前の血中好酸球数が1μlあたり300細胞以上である。
【0070】
投与レジメン
本開示は、抗IL-33抗体又は抗体バリアントの投与レジメンに関し、これは、COPDの処置において特定の有効性を見出す。投与レジメンは、制御されたサイズの1回以上の用量で構成され、処置ウィンドウの全体を通して投与される。2回以上の用量が存在する場合、用量は、投与間隔によって区切られる。抗IL-33抗体又は抗体バリアントは、治療的に有効な量で投与される。本明細書中で用いられる、剤、例えばIL-33抗体を含む医薬製剤の「有効な量」又は「治療的に有効な量」は、必須の投薬量及び期間での、所望の治療結果又は予防結果を達成するのに有効な量を指す。
【0071】
抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの用量のサイズは、抗IL-33抗体又は抗体バリアントの重量に換算して表され得る。特定の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、約400~約800mg、約450~約750mg、約500~約700mg、約510~約690mg、約520~約680mg、約530~約670mg、約540~約660mg、約550~約650mg、約560~約640mg、約570~約630mg、約580~約620mg、約590~約630mg、又は約600mgの用量で投与される。
【0072】
ある場合には、用量は600mgである。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、600mg用量が4mL処置として投与されるように、150mg/mlでの皮下注射用に製剤化される。抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの600mg用量が、2回の同時の300mg投薬量として投与され得る。本明細書中で用いられる「同時の」用量は、同時に、又は区切らずに、若しくは最小期間(例えば、1時間未満、30分未満、15分未満、5分未満)だけ区切って逐次的に投与される用量を指す。
【0073】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、約200~約400mg、約250~約350mg、約260~約340mg、約270~約330mg、約280~約320mg、約290~約310mg、約295~約305mg、又は約300mgの用量で投与される。
【0074】
ある場合には、用量は300mgである。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、300mg用量が2mL処置として投与されるように、150mg/mlでの皮下注射用に製剤化される。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの300mg用量が、2回の同時の150mg投薬量として投与され得る。本明細書中で用いられる「同時の」用量は、同時に、又は区切らずに、若しくは最小期間(例えば、1時間未満、30分未満、15分未満、5分未満)だけ区切って逐次的に投与される用量を指す。
【0075】
ある場合には、用量は150mgである。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、150mg用量が1mL処置として投与されるように、150mg/mlでの皮下注射用に製剤化される。
【0076】
抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの用量のサイズは、特定のレベルの血漿薬物濃度を実現するように操作された活性化合物の量として、用量によって実現される血漿薬物濃度に換算して表され得る。投与される抗体又はバリアントの量、生体利用性、又はタイミング/頻度を変えることによって、当業者は、対象における血漿濃度を制御することができる。血漿濃度は、薬物の吸収及びクリアランスにより、時間全体にわたって変動するので、種々の標準化された方法で(例えば、最大、最小(トラフ)として、又は時間全体にわたって)表され得る。
【0077】
ある場合には、用量は、約20~約50μg/mL、約25~約45μg/mL、約30~約40μg/mL、約35~約40μg/mL、又は約37μg/mLのCmax,ss(定常状態での観察最大濃度)を実現するように選択される。ある場合には、Cmaz.ssは、投与期間の間に観察されるものである。この文脈において、「投与期間」は、2回の連続用量間の時間を指す。
【0078】
実施例は、MEDI3506の300mg Q4W又はQ8Wでの投与レジメンが、持続する二重経路阻害を達成する、redIL-33:ST2シグナル伝達軸及びoxIL-33:RAGE/EGFRシグナル伝達軸の双方の阻害に必須の血清濃度を達成すると予測されることを示す(図16及び図17)。MEDI3506血清濃度は、適切なアッセイフォーマットにより抗薬物抗体試薬で測定されて(したがって、Cmax.ssを求めるために用いられて)、生体試料(例えば血液)からMEDI3506を捕捉且つ検出することができる。ある場合には、アッセイは、抗IgG1捕捉mAb、及び検出可能なマーカーで標識した、安定したMEDI3506抗原を用いてもよい。検出可能なマーカーを定量化して、MEDI3506の濃度を求めることができる。ある場合には、MEDI3506抗原(IL-33)は、例えば、1つ以上のシステイン残基をセリンに変異させることによって還元形態で安定させて、ジスルフィド結合形成を介した酸化形態(oxIL-33)へのredIL-33変換を防ぎ得る。血清バイオマーカーの検出に適したアッセイ及びプラットフォームが、当業者に周知である。
【0079】
ある場合には、用量は、約10~約35μg/mL、約15~約30μg/mL、約15~約30μg/mL、約15~約25μg/mL、約15~約20μg/mL、又は約18.6μg/mLのCmax,ssを実現するように選択される。
【0080】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、投与期間(AUC)の全体を通じた血漿濃度-時間曲線下面積を提供するように選択される用量で投与される。
【0081】
ある場合には、用量は、投与期間にわたって、約400~約800μg・日/mL、約500~約750μg・日/mL、約600~約700μg・日/mL、約600~約650μg・日/mL、約600~約620μg・日/mL、約610~約620μg・日/mL、又は約616μg・日/mLのAUCを提供するように選択される。
【0082】
ある場合には、用量は、投与期間にわたって、約200~約515μg・日/mL、約250~約500μg・日/mL、約300~約450μg・日/mL、約300~約350μg・日/mL、又は約323μg・日/mLのAUCを提供するように選択される。
【0083】
ある場合には、用量は、投与期間にわたって、約100~約300μg・日/mL、約100~約250μg・日/mL、約100~約200μg・日/mL、約150~約200μg・日/mL、又は約161.5μg・日/mLのAUCを提供するように選択される。
【0084】
抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの投与が、投与間隔によって区切られた複数回用量として実行される。ある場合には、投与間隔は、2週(14日)、3週(21日)、4週(28日)、又は5週(35日)である。一部の実施形態において、投与間隔は4週(28日)である。ある場合には、投与間隔は約4週(すなわち28±4日)である。ある場合には、投与間隔は約8週(すなわち56±4日)である。
【0085】
ある場合には、用量が、複数日にわたって、例えば2回以上の下位用量として投与されてもよい。本明細書中で用いられる「下位用量」は、治療薬の用量の部分的な量であり、下位用量で投与される治療薬の総量が、当該用量における総量と等しくなるような量である。あらゆる部分的な量が用いられ得、例えば、2、3、4、5回、又はそれを超える下位用量が単回用量を構成するような量である。ある場合には、用量が、1、2、3、4、5、又は6日の期間によって区切られた2回以上の下位用量として投与されてもよい。ある場合には、用量が、1、2、又は3週の期間によって区切られた2回以上の下位用量として投与されてもよい。下位用量が、2、3、4日、又はそれを超える連続日数で投与されてもよい。用量を構成する下位用量は、それらの合計が当該用量と等しい限り、等しいサイズであってもよいし、サイズが異なってもよい。
【0086】
したがって、本明細書中で用いられる4週投与ウィンドウ(Q4W)による600mgの用量が、毎週(Q1W)投与される150mg、2週毎(Q2W)に投与される300mg、又は3週毎(Q3W)に投与される450mgの代わりに用いられてもよく、これらは全て、4週毎の600mgに等しい投与レジメンを提供する。4週投与ウィンドウ(Q4W)による300mgの用量が、2週毎(Q2W)に投与される150mg又は毎週(Q1W)投与される75mgの代わりに用いられてもよい。8週投与ウィンドウ(Q8W)による300mgの用量が、4週毎(Q4W)に投与される150mg、2週(Q2W)毎に投与される75mg、又は週毎(Q1W)投与される37.5mgの代わりに用いられてもよい。
【0087】
投与間隔が週の数として表される場合、週が7日±1日として表され得るような誤差限界が許容可能である。一部の実施形態において、週は7日±0.5日、7日±0.25日、又は正確に7日として表され得る。投与間隔が複数週である場合、各週内の誤差限界が組み合わされ得る。例えば、場合によっては、投与間隔は4週±4日である。ある場合には、投与間隔は4週±3日である。ある場合には、投与間隔は4週±2日である。ある場合には、投与間隔は4週±1日である。ある場合には、投与間隔は、正確に4週である。ある場合には、投与間隔は8週±4日である。ある場合には、投与間隔は8週±3日である。ある場合には、投与間隔は8週±2日である。ある場合には、投与間隔は8週±1日である。ある場合には、投与間隔は、正確に8週である。
【0088】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、「処置ウィンドウ」の間に投与され、これは、本明細書中で用いられるように、最初の用量の投与で始まって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの最終用量が投与されるまでランする期間を指す。最初の用量が投与される日時は、「0週目」の「1日目」と称され、7日後に1週目が開始し、その7日後に2週目が開始する等々である。一部の実施形態において、処置ウィンドウは12週長である(すなわち、0週目から12週目までランする)。一部の実施形態において、処置ウィンドウは16週長であり(すなわち、0週目から15週目までランする)、そして投与間隔は4週であり、合計4回の用量が(それぞれ0、4、8、及び12週目に)投与される。一部の実施形態において、処置ウィンドウは12週長であり、そして投与間隔は4週であり、用量が、1日目(0週目)、29±4日目(4週目)、57±4日目(8週目)、及び85±4日目(12週目)に投与される。
【0089】
ある場合には、処置ウィンドウは、12週、14週、16週、18週、20週、22週、24週、26週、28週、30週、32週、34週、36週、38週、40週、42週、44週、46週、48週、50週、52週、又はそれを超える。ある場合には、処置ウィンドウは52週以上である。ある場合には、処置ウィンドウは48週以上である。
【0090】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、約300mgがQ4Wで投与される。例は、MEDI3506 300mgのQ4Wでの投与が、肺においておよそ94%の枯渇(ターゲットエンゲージメント)を達成すると予測されることを示す。ターゲットエンゲージメントのこのレベルは、抗IL-33抗体イテペキマブについて達成されると予測されるものよりも潜在的に大きく、COPDにおける最近の第II相研究では、以前の喫煙者において、COPD増悪の著しい引下げ及びFEV1のかなりの向上がもたらされた(Rabe et al 2021)。イテペキマブは、MEDI3506と比較して、報告される半減期がかなり長い(SAR440340及びREGN3500としても知られているイテペキマブt1/2は、米国特許出願公開第2021/0000949号明細書(この中の[411]参照)において30日と報告されている)。
【0091】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、約300mgがQ8Wで投与される。例は、MEDI3506 300mgのQ8W(すなわち、投与ウィンドウが2倍長い)での投与が、肺組織内のトラフにてIL 33のおよそ83%の阻害を実現すると予測されることを示す;したがって、COPDにおいて十分な有効性を実現することができ、Q4Wと比較して、用量頻度が患者にとってより都合が良い。
【0092】
ある場合には、したがって、IL-33抗体又はその抗体バリアントは、肺において少なくとも80%、85%、又は90%のターゲットエンゲージメントを達成する用量にて投与される。ある場合には、用量は、肺において少なくとも90%のターゲットエンゲージメントを達成する。ある場合には、用量は、肺において少なくとも91%、92%、93%、又は94%のターゲットエンゲージメントを達成する。場合によっては、ターゲットエンゲージメント%は、トラフ濃度にて達成される。
【0093】
COPDのマーカー
ある場合には、本明細書中で開示される方法は、COPDの1つ以上のマーカー(「COPDマーカー」とも称される)を向上させる。
【0094】
COPDマーカーとして:中程度から重度へのCOPD増悪の年率換算割合、最初の中程度から重度のCOPD増悪までの時間、最初の重度のCOPD増悪までの時間、FEV1、FVC、E-RS COPD総スコア、SGRQスコア、CATスコアが挙げられる。
【0095】
ある場合には、E-RS COPDスコアの向上は、対象が、ベースラインと比較して、2以上(「臨床における最小重要差」又は「MCID」)のCATスコアの低下を経験したことを意味する。
【0096】
ある場合には、CATスコアの向上は、対象が、ベースラインと比較して、2以上(「臨床における最小重要差」又は「MCID」)のCATスコアの低下を経験したことを意味する。
【0097】
ある場合には、SGRQスコアの向上は、対象が、ベースラインと比較して、4以上(「臨床における最小重要差」又は「MCID」)のSGRQ総スコアの低下を経験したことを意味する。
【0098】
ある場合には、マーカーの変化は、処置ウィンドウ後に観察される。ある場合には、観察は、処置ウィンドウの直後に起こる。ある場合には、観察は、処置ウィンドウから直ぐの追加期間ランの後になされる。追加期間は、1、2、3、4、5、6日、又はそれを超える日であってよい。追加期間は、1、2、3、4週、又はそれを超える週であってよい。追加期間は、1、2、3、4ヵ月、又はそれを超える月であってよい。追加期間は、投与間隔と同じ長さであってよく、追加期間は、最終用量に追従して、更なる用量の期限が来る点までランする。処置ウィンドウプラスあらゆる追加期間は、「介入ウィンドウ」と称され得る。特定の処置結果は、介入ウィンドウの後に測定されてもよい(例えば、BD前又はBD後FEV1又はFEV1 i/FVCの変化)。
【0099】
ある場合には、追加期間は4週であり、処置ウィンドウは8週であり、処置ウィンドウプラス追加期間の総長は12週である。一部の実施形態において、追加期間は4週であり、処置ウィンドウは12週であり、処置ウィンドウプラス追加時間の総長は16週である。他の実施形態において、追加期間は4週であり、処置ウィンドウは24週であり、処置ウィンドウプラス追加期間の総長は28週である。
【0100】
これ以外にも、又は加えて、マーカーの変化は、処置ウィンドウの間に観察され得る。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了後に観察されてよい。これ以外にも、マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の1日後に観察又は測定されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の1日前に観察又は測定されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の2日後に観察されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の2日前に観察されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の3日後に観察されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の3日前に観察されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の4日後に観察されてよい。マーカーは、投与期間、例えば、第1、2、3、4、5、6、7、又は更なる投与期間の終了の4日前に観察されてよい。一部の実施形態において、処置ウィンドウは24週であり、症状の変化は12週目の間に観察される。
【0101】
特定の処置結果は、4、12、24、28、36、又は52週目の時点にて測定されてよい(例えばBD前FEV1又はFEV1 i/FVCスコアの変化)。
【0102】
本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、ベースラインと比較して、本明細書中で定義される1秒努力呼気肺活量(FEV1)の増大、特に、処置ウィンドウ(及び本明細書中で定義されるあらゆる追加期間)後に観察される増大をもたらし得る。ある場合には、FEV1の増大は、ベースラインと比較して、2、4、8、12、16、20、24、28、32、36、又は52週目に観察される。ある場合には、FEVの増大は、ベースラインと比較して、4、12、24、36、又は52週目に観察される。ある場合には、FEVの増大は、処置の前に観察されるFEV1の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は100%超である。ある場合には、FEVの増大は、予測される正常値の>70%、>75%、又は>80%である。
【0103】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、ベースラインと比較して、FEV1/FVCの増大をもたらす。ある場合には、FEV1/FVCの増大は、ベースラインと比較して、BD後FEV1/FVCの5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は100%超である。ある場合には、FEV1/FVCの増大は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、又は0.7の増大である。ある場合には、FEV1/FVCの増大は、>0.70である。ある場合には、FEV1/FVCの増大は、>0.75、>0.80、>0.85、>0.90、>0.95、又は>0.99である。
【0104】
ある場合には、1つ以上のマーカーは、ベースラインと比較して、AECOPDの頻度、期間、又は重篤度、場合によっては中程度又は重度のAECOPDの頻度、期間、又は重篤度の低下から選択される。ある場合には、AECOPDの頻度、期間、又は重篤度の低下は、ベースラインと比較して、4、8、12、16、29、24、28、32、36、40、44、48、又は52週目に観察される。ある場合には、AECOPDの頻度、期間、又は重篤度の低下は、ベースラインと比較して、52週目に観察される。
【0105】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、AECOPDの頻度の低下をもたらす。ある場合には、AECOPDの頻度の低下は、ベースラインと比較して、AECOPDの頻度の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の低下である。ある場合には、AECOPDの頻度の低下は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12ヵ月にわたる低下である。ある場合には、AECOPDの頻度の低下は、12ヵ月にわたる低下である。ある場合には、AECOPDの頻度の低下は、一年のAECOPD頻度の低下である。ある場合には、AECOPDの頻度の低下は、平均で8週に1回のAECOPD、16週に1回のAECOPD、32週に1回のAECOPD、52週に1回のAECOPD、又は52週に1回未満のAECOPDへの低下である。
【0106】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、AECOPDの平均期間の低下をもたらす。ある場合には、AECOPDの平均期間の低下は、ベースラインと比較して、AECOPDの平均期間の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の低下である。ある場合には、AECOPDの平均期間の低下は、24時間以下の平均期間への低下である。
【0107】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、AECOPDの重篤度の低下をもたらす。重篤度の低下は、ベースラインと比較して、中程度及び/又は重度のAECOPDの頻度又は期間の低下をもたらし得、そしてこれは、軽度のAECOPDの頻度又は期間の増大を伴い得る。重篤度の低下は、ベースラインと比較して、重度のAECOPDの頻度又は期間の低下をもたらし得、そしてこれは、中程度又は軽度のAECOPDの頻度又は期間の増大を伴い得る。
【0108】
ある場合には、1つ以上の症状は、ベースラインと比較して、COPDCompEx事象の頻度又は期間の低下から選択される。ある場合には、COPDCompExの頻度又は期間の低下は、ベースラインと比較して、4、8、12、16、29、24、28、32、36、40、44、48、又は52週目に観察される。
【0109】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、COPDCompEx事象の頻度の低下をもたらす。ある場合には、COPDCompEx事象の頻度の低下は、ベースラインと比較して、COPDCompEx事象の頻度の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の低下である。ある場合には、COPDCompEx事象の頻度の低下は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11ヵ月にわたる低下である。ある場合には、COPDCompEx事象の頻度の低下は、一年のCOPDCompEx事象頻度の低下である。一部の実施形態において、COPDCompEx事象の頻度の低下は、平均で8週に1回のCOPDCompEx事象、16週に1回のCOPDCompEx事象、32週に1回のCOPDCompEx事象、52週に1回のCOPDCompEx事象、又は52週に1回未満のCOPDCompEx事象への低下である。
【0110】
ある場合には、本明細書中に記載される、抗IL-33抗体又はそのバリアントによる処置は、COPDCompEx事象の平均期間の低下をもたらす。ある場合には、AECOPDの平均期間の低下は、ベースラインと比較して、COPDCompEx事象の平均期間の5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の低下である。ある場合には、COPDCompEx事象の平均期間の低下は、24時間以下の平均期間への低下である。
【0111】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、24時間にわたる客観的咳頻度の低下をもたらす。24時間にわたる客観的咳頻度は、自動化咳モニター(ACM)、例えば、VitaloJAK(商標)(Vitalograph,Buckinghamshire,UK)を用いて測定され得、これは、およそ24時間、対象にフィットして着用されて、咳頻度を記録する。これ以外にも、客観的咳頻度は、代用の手段、例えば対象のレコーディング又は直接的観察によって記録されてから、集計又はカウントの構築が続く。一部の実施形態において、客観的咳頻度の低下は、ベースラインと比較して、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は95%超の低下である。
【0112】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、リリーバーインヘラ使用が挙げられるリリーバー薬物使用の低下をもたらす。リリーバー使用は、24時間の期間において対象によって用いられるパフの数(すなわち、該当する場合、異なるリリーバーの合計)として表され得る。ある場合には、リリーバー使用は、24時間の期間における平均使用、すなわち、期間中の、そして24時間にわたって平均したリリーバー使用の総数として表され、期間は、大体24時間である。ある場合には、リリーバー薬物使用の低下は、ベースラインと比較して、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は95%超の低下である。
【0113】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、EXACT-PROスコアの低下をもたらす。一部の実施形態において、低下は、ベースラインと比較して、EXACT-PROスケールで5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、95点、又はそれを超える。ある場合には、低下は、50以上のベースラインスコアから50未満の処置後スコアである。ある場合には、低下は、60以上、70以上、又は80以上のベースラインスコアから、50未満の処置後スコアである。ある場合には、低下は、50以上、60以上、70以上、又は80以上のベースラインスコアから、40未満の処置後スコアである。ある場合には、低下は、40以上、60以上、70以上、又は80以上のベースラインスコアから、30未満の処置後スコアである。
【0114】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、E-RS(商標):COPDスコアの低下をもたらす。ある場合には、低下は、ベースラインと比較して、E-RS(商標):COPDスケールで5、10、15、20、25、30、35点、又はそれを超える。ある場合には、息切れドメインの低下は、9以上のベースラインスコアから、9未満の処置後スコアである。ある場合には、咳及び痰ドメインの低下は、6以上のベースラインスコアから、6未満の処置後スコアである。ある場合には、胸症状ドメインの低下は、7以上のベースラインスコアから、7未満の処置後スコアである。
【0115】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、咳視覚的アナログスケール(咳VAS)の向上をもたらす。咳VAS又は咳重篤度VASは、対象によって横線でマークされた100mmの線形スケールを含み、咳症状の重篤度について24時間前の対象による主観的な評価を測定して、0mmは「咳なし」を表し、100mmは「最も激しい咳」を表す(Smith et al 2006)。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、咳VASの5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は95%超の低下である。
【0116】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)スコアの向上をもたらす。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、総スコアの低下である。ある場合には、向上は、総スコアの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は10点超の向上である。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、痰及び/又は咳ドメインスコアの低下を含む。一部の実施形態において、向上は、痰及び/又は咳ドメインスコアの2、3、4、又は5点の低下である。ある場合には、BCSSスコアの向上は、>2から<2への痰及び/又は咳ドメインスコアの引下げを含む。ある場合には、BCSSスコアの向上は、>2から<2への痰及び/又は咳ドメインスコアの引下げを含む。
【0117】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、咳及び痰評価アンケート(CASA-Q)スコアの向上をもたらす。CASA-Qは、7日以前の頻度、重篤度、及び日常活動に及ぼす影響に基づいて、咳及び痰を評価する自己管理アンケートである(Crawford et al 2008;Monz et al 2010)。CASA-Qは、4つのドメイン:咳症状、咳の影響、痰症状、及び痰の影響を含有する。各ドメインは、3~8つの項目を含有し、これらは各々、頻度について「一度もない」から「常に」までの、そして強度について「全くない」から「大変/極めて」までの5つのカテゴリーで答えられる。ドメイン毎に、項目は合計されて、0から100に及ぶスコアを得るために再スケールされ、スコアが高いほど症状が少ない、又は影響が小さいという関連がある。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、4つのドメインの1つ以上のスコアの増大である。ある場合には、ドメインのスコアは、ベースラインと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80点、又はそれを超えて増大する。
【0118】
ある場合には、処置は、ベースラインと比較して、St Georgeの呼吸アンケート(SGRQ)スコアの向上をもたらす。SGRQは、気道閉塞疾患患者の健康状況を測定するために開発された50項目ePRO手段である(Jones et al 1991)。アンケートは、2つのパートに分けられる:パート1は、前の4週における呼吸器症状の重篤度に関係する8項目からなる;パート2は、日常活動及び個人の呼吸状態の社会心理的影響に関係する42項目からなる。SGRQは、総スコア及び3つのドメインスコア(症状、活動、及び影響)をもたらす。総スコアは、健康状況全般に及ぼす疾患の影響を示す。この総スコアは、障害全体のパーセンテージとして表され、100は、考えられる最悪の健康状況を表し、0は、考えられる最良の健康状況を示す。同様に、ドメインスコアは、0~100に及び、スコアが高いほど障害が大きいことを示す。実験に基づくデータ及び患者とのインタビューに基づいて、4つの単位の変化が、臨床における最小重要差と関連する。スコア化アルゴリズムについての具体的な詳細が、開発者によってユーザーマニュアル中に記載されている(Jones and Forde 2009)。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、SGRQスコアの低下が4単位以上である。一部の実施形態において、向上は、ベースラインと比較して、SGRQスコアの低下が、8、12、16、20単位、又はそれを超える。ある場合には、向上は、ベースラインと比較して、SGRQスコアの低下が、5、10、20、30、40、50、60、70、80単位、又はそれを超える。
【0119】
ある場合には、処置は、呼吸困難、痰容量の増大、痰色の変化、咳、喘鳴、咽頭炎、風邪症状(鼻水又は鼻づまり)、及び他の原因のない発熱から選択されるCOPDの症状の頻度、期間、又は重篤度の低下をもたらす。ある場合には、処置は、呼吸困難、痰容量の増大、及び痰色の変化から選択される症状の頻度、期間、又は重篤度の低下をもたらす。一部の実施形態において、処置は、咳、喘鳴、咽頭炎、風邪症状(鼻水又は鼻づまり)、及び他の原因のない発熱から選択される症状の頻度、期間、又は重篤度の低下をもたらす。
【0120】
ある場合には、処置は、咳、粘液/痰の産生、疲労感、息切れ、発熱、悪寒、及び/又は胸部不快感から選択される、対象における慢性気管支炎の症状の1つ以上の頻度、期間の低下をもたらす。ある場合には、処置は、慢性気管支炎の症状の頻度、期間、又は重篤度の、平均で8週に1症例、16週に1症例、32週に1症例、52週に1症例、又は52週に1症例未満への低下をもたらす。
【0121】
抗IL-33抗体
本明細書中に記載される治療法は、抗IL-33抗体、並びにそのバリアント及び断片に関する。
【0122】
インターロイキン-33(IL-33)は、IL33遺伝子によってコードされるインターロイキン-1(IL-1)サイトカインファミリーのメンバーである。IL-33は、平滑筋細胞、上皮細胞、及び内皮細胞等の構造細胞が挙げられる複数の細胞型において構成的に発現される。また、IL-33の発現は、マクロファージ及び樹状細胞中の炎症性因子によって誘導され得ることが報告されている。アレルゲン、毒素、及び病原体等の環境トリガーによって引き起こされる細胞ストレス、並びに機構的損傷が、IL-33の放出を招き得る。遊離IL-33は、腫瘍形成抑制因子2(ST2)タンパク質及びインターロイキン-1受容体アクセサリタンパク質(IL-1 RAcP)で構成されるヘテロ二量体IL-33受容体複合体と会合して、アダプタタンパク質であるミエロイド系分化一次応答88(MyD88)及び場合によりMyD88アダプタ様(Mal)タンパク質を介してAP-1及びNF-κB経路を活性化する。IL-33は、II型自然リンパ球(ILC2)、マスト細胞、好塩基球、好酸球、及び樹状細胞が挙げられる多数の細胞型を刺激して、免疫応答を促進する。
【0123】
本明細書で互換的に用いられる用語「インターロイキン1受容体様1(IL1RL1)」及び「ST2」は、特に明記しない限り、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物が挙げられるあらゆる脊椎動物源に由来する天然のあらゆるST2を指す。ST2は、当該技術において、DER4、T1、及びFIT-1とも称される。当該用語は、「完全長の」未処理のST2、及び細胞におけるプロセシングから得られるあらゆる形態のST2を包含する。デュアルプロモータ系からの差次的mRNA発現から生じる可溶性型(IL 1 RL 1-aとしても知られているsST2)及び膜貫通型(IL 1 RL 1-bとしても知られているST2L)、並びに選択的スプライシングから生じるST2V及びST2LVが挙げられる、ST2の少なくとも4種のアイソフォームが当該技術において知られている。ST2Lのドメイン構造は、3つの細胞外免疫グロブリン様C2ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質Toll/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメインを含む。sST2は、ST2L内に含有される膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを欠き、9個のユニークなアミノ酸(a.a.)C末端配列を含む(例えば、Kakkar et al.Nat.Rev.Drug Disc.40 7:827-840,2008参照)。sST2は、可溶性IL-33を阻害するデコイ受容体として機能し得る。また、当該用語は、ST2の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント(例えば、第3の免疫グロブリンモチーフを欠き、且つ固有の疎水性尾部を有するST2V、及びST2Lの膜貫通ドメインを欠くST2LV)、又は対立遺伝子バリアント(例えば、本明細書中に記載される、COPDリスクに対して保護的であるか、又はCOPDリスクを付与するバリアント)を包含する。例示的なヒトST2のアミノ酸配列は、例えば、UniProtKB受託番号001638に見出され得る。ST2は、共受容体タンパク質IL-1 RAcPと共にIL-33受容体の一部である。IL-33がST2及び共受容体インターロイキン-1受容体補助タンパク質(IL-1 RAcP)に結合すると、下流シグナル伝達を促進する1:1:1の三成分シグナル伝達複合体が形成される(Lingel et al.Structure 17(10):1398-1410,2009、及びLiu et al.Proc.Nat.Acad.Sci.110(37):14918-14924,2013)。
【0124】
IL-33/ST2シグナル伝達軸の構成要素に特異的に結合してこれを阻害する抗体又は抗体バリアントが、COPDの処置に有用であり得ると考えられる。
【0125】
「抗体」は、最も広範な意味で用いられており、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体断片が挙げられるがこれらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0126】
特に、抗IL33抗体又は抗体バリアント、すなわち、IL-33に特異的に結合してこれを阻害/中和する抗体が、COPDの処置に有効であると考えられる。ある場合には、抗体は、モノクローナル(MAb);組換え;キメラ;ヒト化、例えば相補性決定領域(CDR)-グラフト化;ヒト;抗体バリアント(単鎖が挙げられる);及び/又は二重特異性;並びにそれらの断片;バリアント;又は誘導体であり得る。抗体断片は、注目するポリペプチド上のエピトープに結合する抗体の部分を含む。そのような断片の例として、完全長抗体の酵素的切断によって生成されるFab及びF(ab’)断片が挙げられる。他の結合断片として、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組換えプラスミドの発現等の組換えDNA技術によって生成されるものが挙げられる。
【0127】
モノクローナル抗体は、治療薬又は診断法として用いられるように修飾されてよい。本明細書中で用いられる「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、実質的に同一のアミノ酸配列を有するか、又は同じ遺伝源に由来する、抗体、二重特異性抗体その他が挙げられるポリペプチドを指す。また、当該用語は、単一の分子組成の抗体分子の調製を含む。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す。
【0128】
一例が、重鎖(H)及び/又は軽鎖(L)の一部分が特定の種に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である一方、鎖の残りが、別の種に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体である。また、含まれるのは、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体の断片である。米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.81:6851-55参照。
【0129】
別の場合には、モノクローナル抗体は「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化する方法が、当該技術において周知である。米国特許第5,585,089号明細書及び米国特許第5,693,762号明細書参照。概して、ヒト化抗体は、非ヒトである源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、当該技術に記載される方法(Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.,1998,Nature 332:323-27;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-36)を用いて、げっ歯類相補性決定領域の少なくとも一部分を、ヒト抗体の対応する領域と置換することによって実行することができる。
【0130】
また、意図されるのは、IL-33に結合するヒト抗体及び抗体バリアント(抗体断片が挙げられる)である。ヒト抗体のレパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を、内因性免疫グロブリン産生の不在下で用いて、そのような抗体が、場合によっては担体にコンジュゲートしたポリペプチド抗原(すなわち、少なくとも6つの連続アミノ酸を有する)による免疫化によって生成される。例えば、Jakobovits et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.90:2551-55;Jakobovits et al.,1993,Nature 362:255-58;Bruggermann et al.,1993,Year in lmmuno.7:33参照。また、国際出願PCT/US96/05928号明細書及び国際出願PCT/US93/06926号明細書参照。追加の方法が、米国特許 第5,545,807号明細書、国際出願PCT/US91/245号明細書及び国際出願PCT/GB89/01207号明細書、並びに欧州特許第54607381号明細書及び欧州特許出願公開第546073A1号明細書に記載されている。また、ヒト抗体は、本明細書中に記載されるように、宿主細胞中での組換えDNAの発現によって、又はハイブリドーマ細胞中での発現によって生成することができる。
【0131】
キメラ、CDRグラフト、及びヒト化抗体及び/又は抗体バリアントは典型的に、組換え方法によって生成される。抗体をコードする核酸が、本明細書中に記載される材料及び手順を用いて、宿主細胞中に導入されて発現される。一例において、抗体は、哺乳動物宿主細胞、例えばCHO細胞中で産生される。モノクローナル(例えばヒト)抗体は、本明細書中に記載されるように、宿主細胞中での組換えDNAの発現によって、又はハイブリドーマ細胞中での発現によって産生され得る。
【0132】
本方法に有用な抗体及び抗体バリアント(抗体断片を含む)は、以下を含み得る:(a)配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに(b)配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域。
【0133】
また、本明細書中で開示される方法での使用に企図されるのは、配列番号4に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一の重鎖可変領域(VH)ドメインを含む抗IL-33抗体又はその抗体バリアントである。場合によっては、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号8に示す配列と少なくとも95%、90%、85%同一の軽鎖可変領域(VL)ドメインを含む。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、以下を含む:(a)配列番号4に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一の重鎖可変領域(VH);及び(b)配列番号8に示す配列と少なくとも95%、90%、85%同一の軽鎖可変領域(VL)。
【0134】
ある場合には、抗IL-33抗体は、参照によって本明細書中に組み込まれる国際公開第2016/156440号パンフレットに開示される33_640087_7Bである。33_640087_7B(当該技術においてMEDI3506とも称される)は、IL-33の還元形態(redIL-33)に高い親和性で結合する抗IL-33抗体である。また、33_640087_7Bは、redIL-33の、酸化形態(oxIL-33)への変換を阻害し、これは、RAGEを介してシグナル伝達を誘導して上皮細胞増殖を誘導することが示されている。
【0135】
33_640087_7Bは、以下を有する例示的な抗IL-33抗体である:(a)配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに(b)配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域。
【0136】
また、33_640087_7Bは、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するVHドメイン及び配列番号8に示すアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
【0137】
33_640087_7Bは、IgG1抗体であり、IgG1鎖を含む33_640087_7Bの完全長軽鎖及び重鎖の配列は、配列番号9及び10にそれぞれ示される。
【0138】
場合によっては、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、ヒトにおける33_670087_7Bと類似の、又は同じ薬物動態学的(pK)特徴を有する。
【0139】
特に、抗IL-33抗体又は抗体バリアントは、ヒトにおける半減期が、33_670087_7Bと類似するか、又は同じであり得る。ヒトにおける半減期が33_670087_7Bと類似するか、又は同じ抗IL-33抗体又は抗体バリアントは、30mg Q2Wの用量にて投与される場合、半減期が約10~約20日、約12~約15日、又は約12.7日であり得る。ヒトにおける半減期が33_670087_7Bと類似するか、又は同じ抗IL-33抗体又は抗体バリアントは、100mg Q2Wの用量にて投与される場合、半減期が約10~約20日、約12~約15日、又は約13.2日であり得る。ヒトにおける半減期が33_670087_7Bと類似するか、又は同じ抗IL-33抗体又は抗体バリアントは、300mg Q2Wの用量にて投与される場合、半減期が約10~約20日、約12~約15日、又は約14.8日であり得る。
【0140】
ある場合には、IL-33抗体又はそのバリアントは、IL-33の、33_640087-7B(国際公開第2016/156440号パンフレットに記載)への結合を競合的に阻害し得る。国際公開第2016/156440号パンフレットは、33_640087-7Bが、特に高い親和性でredIL-33に結合して、ST-2及びRAGE依存性の双方のIL-33シグナル伝達を減衰させることを開示している。抗体又はそのバリアントは、エピトープへの参照抗体の結合をある程度ブロックするという範囲内でそのエピトープに特異的に結合するのであれば、所与のエピトープへの参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害は、当該技術において知られているあらゆる方法、例えば、競合ELISAアッセイ等の固相アッセイ、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA(登録商標)、Perkin Elmer)、及び放射性リガンド結合アッセイによって判定され得る。例えば、当業者であれば、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2016/156440号パンフレットの段落881~886に記載されているHTRFアッセイ等のインビトロ競合結合アッセイを用いることによって、抗体又はそのバリアントがIL-33への結合について競合するかを判定することができる。例えば、当業者であれば、33_640087-7Bをドナー蛍光体で標識して、複数の濃度をアクセプタ蛍光体標識redIL-33の固定濃度試料と混合することができる。続いて、各試料内のドナー蛍光体とアクセプタ蛍光体との間の蛍光共鳴エネルギー転移を測定して、結合特性を確認することができる。競合的結合抗体分子を解明するために、当業者であれば、最初に種々の濃度の試験結合分子を、固定濃度の標識33_640087-7B抗体と混合することができる。標識化抗体のみの陽性対照と比較した、混合物を標識化IL-33とインキュベートした場合のFRETシグナルの低減が、IL-33への競合的結合を示す。抗体又はそのバリアントは、所与のエピトープへの参照抗体の結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、又は少なくとも50%競合的に阻害すると言われ得る。
【0141】
種々の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体の抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、lgG1抗体、lgG2抗体、lgG3抗体、及びlgG4抗体から選択される。ある場合には、抗IL-33抗体バリアントは、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、単一ドメイン抗体、scFvからなる群から選択され、用量は、結合部位が、二価抗体によって投与されるものと等モルとなるように調整される。
【0142】
ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号11のアミノ酸配列を含むIL-33に結合する。種々の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号11のアミノ酸配列を含む完全長IL-33タンパク質の成熟形態に結合することができる。種々の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号11のアミノ酸72~270、79~270、95~270、99~270、107~270、109~270、111~270、又は112~270を含むIL-33タンパク質断片に結合することができる。
【0143】
種々の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、IL-33の還元形態(red-IL-33)及び/又は酸化形態(ox-IL-33)に結合することができる。ある場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、IL-33の還元形態(red-IL-33)及び/又は酸化形態(ox-IL-33)に選択的に結合することができる。
【0144】
種々の場合には、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、本明細書中で定義されるIL-33又はその断片を阻害することができる阻害抗体であり得る。種々の場合には、阻害抗体は、IL-33受容体とのIL-33又はその断片の結合を阻害することができる。
【実施例
【0145】
実施例1-抗インターロイキン-33抗体トゾラキマブについての機構の証明:健康な成人及び慢性閉塞性肺疾患を患う参加者における第1相研究の結果
アラーミンサイトカインインターロイキン(IL)-33は、組織損傷後の炎症性応答及びリモデリング応答を統制する(Scott IC et al.Sci Rep,2018.8:3363;Cohen E et al.Nat Commun 2015; 6:8327;Murdaca G et al.Int J Mol Sci 2019;20:5856)。過剰なIL-33は、COPDにおいて慢性閉塞性肺疾患を開始且つ駆動する重要な役割を果たす(Allinne J et al.J Allergy Clin Immunol 2019;144:1624-37.e10;Schmitz J et al.Immunity 2005;23:479-90)。トゾラキマブ(MEDI3506)は、IL-33を特異的且つ強力に標的とするヒト免疫グロブリンG1モノクローナル抗体である。このファースト・イン・ヒューマン研究(NCT03096795)は、トゾラキマブの安全性、忍容性、薬物動態、及び免疫原性を評価した。この報告は、本研究由来のトゾラキマブについての機構の証明を詳述している。
【0146】
方法
3パート第1相ランダム化盲検化プラセボ対照研究を、英国において2つのセンターにわたって2017年5月15日から2019年9月30日の間に行った。全てのコホートにおいて、参加者を3:1にランダム化して、トゾラキマブ:プラセボを受けさせた。この報告は、パート1及び2由来のデータを示す。
【0147】
イエダニ(HDM)に対して軽度のアトピー及び感受性の既往歴があるパート1の適格な参加者が、300mgの静脈(IV)、又は1mg、3mg、10mg、30mg、100mg、若しくは300mgの皮下(SC)トゾラキマブ又はプラセボの単回漸増用量(SAD)を受けた。Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)のグレードI~II COPDを患うパート2の適格な参加者が、30mg、100mg、又は300mgのSCトゾラキマブ又はプラセボの複数回漸増用量(MAD)を受けた。
【0148】
薬力学(PD)を調査結果として評価した。血清中の(全てのコホート)、そして非侵襲性nasosorptionによる局所気道鼻粘膜内層流体(MLF)試料中の(MADコホート)IL-33形態について、ターゲットエンゲージメントをultra-selectiveアッセイにより測定した。また、sST2の血清レベルを測定した。IL-33誘発の後に、インターフェロンガンマ(IFN-γ)を全血アッセイによりエクスビボで測定した(SADコホート)。Multiplex immunoassays(Meso Scale Discovery)を用いて、炎症性メディエータに及ぼすトゾラキマブのPD効果を調査した(MADコホート)。全血中の好酸球レベルを測定した(MADコホート)。
【0149】
結果
患者ベースラインデモグラフィックは、以下の通りであった。
【0150】
【表1】
【0151】
合計で、56人の参加者を登録して、SADコホート(軽度のアトピー及びHDMに対する感受性を有する健康な成人)においてランダム化した:トゾラキマブ処置群において42人及びプラセボ処置群において14人。24人の患者を登録して、MADコホート(GOLDのグレードI~II COPDを患う成人)においてランダム化した:トゾラキマブ処置群において18人及びプラセボ処置群において6人。
【0152】
ターゲットエンゲージメントバイオマーカー研究(調査エンドポイント)
トゾラキマブターゲットエンゲージメントを、血清(図1)及び局所気道鼻MLF(図2)において実証した。血清において、トゾラキマブは、全てのコホートにわたって、プラセボと比較して、IL-33/トゾラキマブ複合体のレベルを上昇させた(図1A[SADコホート]及び図1C[MADコホート])が、内因性IL-33/sST2複合体のレベルは、全てのコホートにおいて低下した(図1B[SADコホート]及び図1D[MADコホート])。トゾラキマブは、あらゆる用量レベルにて、プラセボと比較して、総sST2の血清レベルに有意な影響を与えなかった。
【0153】
局所気道鼻粘膜内層流体(MLF)において、トゾラキマブは、プラセボ(MADコホート)と比較して、IL-33/トゾラキマブ複合体のレベルを上昇させ(図2A)、そしてIL-33の還元形態及び酸化形態のレベルを低下させた(図2B及び図2C)。
【0154】
循環中の高いレベルのトゾラキマブは、低いレベルの誘導されるIFN-γと相関する(図3)。
【0155】
薬力学バイオマーカー研究(調査エンドポイント)
トゾラキマブ(300mg SC)は、プラセボと比較して、血清IL-5及びIL-13レベルを有意に引き下げた(図4A及び図4B)。さらに、トゾラキマブは、血中好酸球レベルを有意に引き下げ(図4C)、そして当該引下げは、IL-5(反復測度相関[r]=0.64;95%の信頼区間[CI]:0.23~0.86、p=0.0034)及びIL-13(r=0.75;95%CI:0.43~0.91、p=0.00019)の血清レベルの引下げと相関した。
【0156】
結論
これらのデータは、COPD患者において、ファースト・イン・ヒューマン研究(NCT03096795)におけるトゾラキマブについてのPDバイオマーカーのターゲットエンゲージメント及び同定によって、機構の証明を示す。ターゲットエンゲージメントを、先駆的nasosorptionサンプリングを用いて、循環系において、そして気道において局所的に、実証した。結果は、第2相研究及び第3相研究へのトゾラキマブのエントリを支持する。第2相研究(NCT04631016)及び第3相研究(NCT05166889及びNCT05158387)が、COPDの処置用のトゾラキマブの安全性及び有効性を調査するために、現在進行中である。
【0157】
実施例2-中程度から重度の慢性閉塞性肺疾患及び慢性気管支炎を患う参加者において、MEDI3506の有効性、安全性、及び忍容性を評価するための第II相ランダム化二重盲検プラセボ対照研究(FRONTIER 4)
本実施例は、標準治療(2つの療法又は3つの療法)を維持療法として受けている、中程度又は重度のCOPDを患う成人対象において、MEDI3506の有効性、安全性、PK、及び免疫原性を評価するための第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群概念実証研究を記載する。また、参加者は、安定した基礎処置中の以前の12ヵ月において≧1回の中程度又は重度の急性増悪、及び中等度~重度の慢性気管支炎の既往歴があり、痰及び咳症状が激しい。
【0158】
MEDI3506(本明細書中で33_640087_7Bとも称される)は、ヒトIL-33に結合するヒトIgG1 mAbである。MEDI3506は、ヒトIL-33の完全長成熟形態に非常に高い親和性で結合して、ST2(IL-1RL1としても知られている)受容体の可溶性形態(sST2)及び膜結合形態へのIL-33結合を妨げる。
【0159】
いくつかの臨床研究及び非臨床研究は、IL-33/ST2シグナル伝達軸が、COPDの病因において重要な役割を果たすことを指し示す。ゆえに、このシグナル伝達経路をブロックすることは、COPDの治療利益となり得る。
【0160】
参加者は、登録前の≧3ヵ月の間に2つの療法(ICS+LABA又はLABA+LAMA)又は3つの療法(ICS+LABA+LAMA)の安定した施用がなければならず、且つ研究の間、そのままでなければならない。研究を始める前に、以前の増悪後の維持COPD処置に変化があってはならない。
【0161】
参加者を、600mg MEDI3506 SC(20mM L-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩、220mM L-アルギニン塩酸塩、0.03%(w/v)ポリソルベート80、pH5.5)又は容量がマッチするプラセボSC(まとめて「治験薬」と称する)を受けることとなる処置群にランダム化する;1:1の比率、合計7回の用量について全体で4週毎(Q4W)、24週目に最終用量。
【0162】
参加者は、この研究において、少なくとも4週のスクリーニング/慣らし(run-in)期間、24週の介入期間(又は「処置ウィンドウ」)(その間、7回用量SC Q4Wを受ける)、4週の追加期間、及び8週の追跡調査期間について登録する。調査用スキーマを表2で述べる。
【0163】
プライマリエスティマンドは、以下の通りである:12週目のFEV1におけるベースラインからの平均変化の差異(MEDI3506-プラセボ)を、ITT集団について、共分散モデルの反復測度混合効果分析を用いて推定する。これは、参加者が研究介入を中断したか、又はリリーバー療法を受けたかに拘らず、12週目まで(12週目を含む)の全ての来院から入手可能な全てのデータを含む。モデルは、ベースライン、好酸球階層、バックグラウンド薬物階層、来院、研究介入、及び来院単位の(by visit)ベースライン、並びに来院単位の研究介入の相互作用についての固定効果を含む。非構造化共分散マトリックスを用いて、来院間での参加者についての観察間の相関を説明する。
【0164】
類似したアプローチを、咳VAS、BCSS、CASA-Q、SGRQ、及びリリーバー薬物の分析についてとる。データは、適切な場合には、分析前に対数変換してもよい。目的咳パラメータのベースラインからの変化、及び12週目のオシロメトリパラメータを、共分散分析を用いて分析する。事象までの時間の分析、及び事象データの年率換算割合は、全ての参加者について入手可能なデータ(これが入手可能な28週目まで)を含む。事象エンドポイントまでの時間を分析する。
【0165】
スクリーニング手順
参加者は、以下の基準を満たさなければならない:
1.参加者は、40~75歳(これを含む)でなければならない。
2.参加者は、喫煙歴がパックイヤー≧10である現在の喫煙者又は元喫煙者である。
3.参加者は、局所処置ガイドラインの通りに肺炎球菌ワクチン及びインフルエンザワクチンを受けている。
4.参加者は、少なくとも1年間のCOPDの既往歴が実証されている。
5.参加者は、スクリーニング時に、BD後FEV1/FVCが<0.70、且つBD後FEV1が、予測される正常値の>30%且つ<80%である。この基準評価に、集中肺活量測定を用いる。
6.参加者は、SV1(スクリーニング)の直ぐ前の少なくとも2年間において、≧3ヵ月間/年の殆どの日における咳及び痰の存在として定義される慢性気管支炎の参加者の既往歴を医師が確認している。
7.参加者は、平均BCSSスコアが、SV3前の14日にわたって評価される咳ドメインにおいて≧2、そして痰ドメインにおいて≧2である。
8.参加者は、登録前の≧3ヵ月の間に、2つの療法又は3つの療法の安定レジメンが実証されている;研究を始める前に、以前の増悪後の処置に変化があってはならない。2つの療法が、ICS+LABA又はLABA+LAMAからなり、3つの療法が、ICS+LABA+LAMAからなる場合。2つの療法及び3つの療法は双方とも、固定用量組合せインヘラの別々のインヘラの形態であってもよいが、霧状の形態でなくてもよい。
9.参加者は、少なくとも3日の期間の間に全身性コルチコステロイド及び/若しくは抗生物質(又はデポー製剤の1回の注射)を必要とする≧1回の中程度若しくは重度のAECOPDの既往歴、又はスクリーニング前の以前の12ヵ月においてAECOPDの理由による入院が実証されている。
10.臨床的に安定しており、且つSV1(スクリーニング)の前、そして1日目の前の1ヵ月間、COPDの増悪がない参加者。
11.範囲19~35kg/m2(この値を含む)内のボディマスインデックス。
【0166】
ランダム化及び投与
ランダム化は、研究来院3(SV3-1日目)にて起こる。適格基準を満たし続ける参加者を、先に記載するように、処置群にランダム化する。血液試料、尿試料、有効性評価、及び安全性評価を実行して、ベースラインを確立する。
【0167】
ランダム化を、ベースライン血中好酸球(<300細胞/μL対≧300細胞/μL)及びバックグラウンド薬物(ICSを含む対ICSを含まない)によって階層化する。
【0168】
最初の治験薬(IP)投与は、研究来院3(1日目)にて起こり、処置ウィンドウ中に治験薬の最初の用量を投与することを含む。
【0169】
600mg MEDI3506を投与するには、用量あたり2回×2mL SC注射を必要とする。プラセボ群は、注射容量がMEDI3506群にマッチする。
【0170】
研究来院4(2日目)にて、参加者は、自己評価有効性報告手順の厳守の評価、及び安全性評価のために戻る。手順を表4に概説する。
【0171】
第2の治験薬投与は、研究来院6(29±3日目)にて起こる。
【0172】
第3の治験薬投与は、研究来院7(57±3日目)にて起こる。
【0173】
第4の治験薬投与は、研究来院8(85±3日目)にて起こる。
【0174】
第5の治験薬投与は、研究来院9(113±3日目)にて起こる。
【0175】
第6の治験薬投与は、研究来院10(141±3日目)にて起こる。
【0176】
第7の最終治験薬投与は、研究来院11(169±3日目)にて起こる。
【0177】
エンドポイント
プライマリエンドポイント来院は、研究来院10(113±4日目)にて評価されるように、12週目に起こる。
【0178】
プライマリエンドポイントは、クリニックBD前 FEVにおけるベースラインから12週目までの変化の向上である。1秒努力呼気肺活量は実証されており、COPD研究において臨床的に重要なエンドポイントであり、類似した慢性気管支炎患者集団における現在の標準治療(2つ/3つの療法)へのアドオン療法の登録を支持するのに用いられる治験に広範囲にわたって用いられている(Martinez et al 2015)。
【0179】
入手可能なデータに基づいて、サンプルサイズ決定において想定されるFEVの向上は、12週目までに達成されると予想される。しかしながら、FEV1の向上は、重要であるが、COPDにおいて満たされていない医療ニーズを満たすのに十分でないと考えられる。COPDCompExのセカンダリエンドポイントの評価を可能にするために、プライマリエンドポイントデータの収集後に処置を続けて、更なる事象を収集する。また、介入期間が長くなると、12週目を越えてのFEVに及ぼす処置効果の調査評価が可能となる。
【0180】
セカンダリエンドポイントは、28週目のCOPDCompExである。また、クリニックBD前FEV の変化を、28週目に評価する。
【0181】
疾患病理及び/又はMEDI3506の作用機構に関連するバイオマーカーの評価のために、血液試料を対象から収集する。
【0182】
結果
この第2相臨床研究において対象に投与されるMEDI3506の最も高い用量は、SC注射Q4Wによる600mgである。この用量は、第1相臨床研究(研究D9180C00001)において投与される最も高い用量(すなわち、300mg IV MEDI3506の単回用量)と比較して、定常状態での最大濃度(Cmax,ss;およそ2.5倍)及びAUC(およそ1.6倍)に換算して、曝露がより低いと予測される。SC注射Q4Wによる600mgの用量は、同じ研究において投与される最も高い複数回用量(すなわち、300mg SC Q2W)と比較して、Cmax,ssがより高いが、AUCが同じであると予測される(表6)。
【0183】
研究集団における疾患の性質及び重篤度は、曝露全体にもクリアランスにも大きな影響を与えると予想されない。ADでの使用が認可されているモノクローナル抗体についての公開PKデータは、疾患状況(すなわち、健康な対象対AD対象)が、曝露又はクリアランスに大きな影響がなかったことを示す(Kovalenko et al,2016)。それゆえに、発明者らは、MEDI3506が、健康な対象及びCOPD対象の双方について、類似したPKプロファイルを示すと予測する。
【0184】
実施例3-COPDの処置におけるMEDI3506についての用量選択基準
標的用量を選択するために、PK/PDモデルを、Ph1研究(NCT03096795)由来のターゲットエンゲージメントデータを用いて生成した。より詳細には、PK/PDモデルは、以下に基づいた:
・第1相由来の体循環におけるMEDI3506:IL33及びIL33:ST2複合体の定量的情報。双方の複合体濃度を、IL-33の還元形態(redIL-33)に特異的に結合する自社所有のIL-33検出試薬を用いて測定した。
・第1相由来のMEDI3506 PKデータ(線形PK、半減期(t1/2)17日)
【0185】
用量選択を知らせた追加の前臨床情報として、以下が挙げられる:
・redIL-33:ST2シグナル伝達経路
・oxIL-33:RAGE:EGFRシグナル伝達経路
【0186】
redIL-33:ST2シグナル伝達経路
マウスにおけるアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)(ALT)誘導気道炎症のモデルが、以前に記載されている(Kouzaki et al.J.Immunol.2011,186:4375-4387;Bartemes et al J Immunol,2012,188:1503-1513)。内因性IL-33が、ALT曝露後に急速に放出されて、肺におけるIL-33依存性IL-5産生を駆動する。雄又は雌の野生型又はヒト化IL-33マウス(6~10週齢)を、イソフルラン(isofluorane)で短時間麻酔して、25μgのALT抽出物(Greer,Lenoir,NC)又はビヒクルのいずれかを、50μlの総容積で鼻腔内投与した。ALTによる鼻腔内誘発の24時間前に、マウスを、MEDI3506(0.1、1、2、又は10mg/kg)、アイソタイプ対照IgG(NIP228)、又はビヒクル(PBS、10ml/kg)で腹腔内処置した。誘発の24時間後、マウスをペントバルビタールナトリウムによって麻酔死させてから、瀉血及び気管支肺胞洗浄流体(BALF)収集を行った。BALFを、気管カニューレを介する洗浄によって収集した。BALFを遠心して、細胞をカウントして(FACS(FacsCALIBER,BD)による総細胞)、上清をサイトカインについてELISA(Meso Scale Discovery,Rockville,MD)によって分析した。Diff-Quik(Fisher Scientific,UK)で染色したサイトスピン調製物に細胞分画カウント(200細胞/スライド)を実行した。全ての作業は、適切なプロジェクトライセンス権限下で英国内務省(UK Home Office)倫理及び飼育管理基準に則り行った。MEDI3506によるIL5の用量依存性阻害を、BALFにおいて観察し、有意な抑制が、この研究において試験した最も低い用量0.1mg/kgにて達成された。3mg/kgにて、90%の阻害が達成され、マウスにおける20μg/mLの平均血清全身曝露に相当した。結果を、図5及び図6に示す。
【0187】
oxIL-33:RAGE:EGFRシグナル伝達経路
最近、IL-33の酸化形態(oxIL-33、IL-33ox、又はIL-33DSB)は、上皮修復応答を直接弱めて、上皮杯細胞の分化及び増殖を低下させて、粘液産生及びMUC5AC等のムチン関連遺伝子の産生を増大させることが発見された。oxIL-33は、(参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2021/089563号パンフレットに記載される)RAGE及びEGFRの複合体に結合して、これによりシグナル伝達することによって、上皮に及ぼす病理作用を媒介することが見出された。
【0188】
oxIL-33シグナル伝達経路に対する以下のMEDI3506濃度を用いて、用量選択を知らせた。
・oxIL-33媒介機能不全性スクラッチ創傷閉鎖を回復に向かわせる閾値
【0189】
スクラッチ創傷閉鎖
以前の実験は、oxIL-33が、健康なヒト気管支上皮細胞において上皮スクラッチ創傷閉鎖を傷つけることを示した(図7A及び図7B)。障害性の創傷閉鎖は、抗ST2抗体処置により回復に向かわなかった。このことは、病理作用が、oxIL-33-RAGE/EGFRシグナル伝達軸を介して媒介されることを示す。また、スクラッチ創傷障害が、COPD対象から得られた気管支上皮細胞において見られた(図8)。
【0190】
oxIL-33媒介スクラッチ創傷閉鎖機能不全を回復に向かわせるのに必要なMEDI3506の濃度を、A549細胞培養物において算出した。
【0191】
A549をATCCから得て、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び10%FBSを補充したRPMI GlutaMax培地中で培養した。細胞をアキュターゼ(PAA,#L1 1-007)により収集して、5×10/100μLにて96ウェルプレート中に播種して、37℃、5%COにて6~8時間インキュベートした。次いで、ウェルを100μLのPBSで2回洗浄してから、100μLの飢餓培地(1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI GlutaMax培地)を加えて、37℃、5%COにて18~24時間インキュベートした。WoundMaker(商標)(Essen Bioscience)を用いて、細胞をスクラッチした後に、ウェルを200μLのPBSで2回洗浄してから、示す刺激;培地のみ(非刺激対照)、様々な濃度のMEDI3506又は抗TSLP抗体を含有する、0.1%FBS(v/v)及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI GlutaMax培地を加えて、37℃、5%COに戻した。72時間にわたる創傷治癒の撮像及び分析のために、プレートをIncucyteZoomに入れた。Incucyte Zoomソフトウェア内の創傷治癒アルゴリズムによって相対的創傷密度を算出した。図9は、A549細胞におけるスクラッチ創傷閉鎖のMEDI3506用量依存性向上を示す。50.4pM(又は7.26ng/ml)を超えるMEDI3506の濃度が、完全奏効を達成するのに必要であった。これは、0.15μg/mLの血中濃度に等しいと想定された(皮下投与後に、上皮内層流体への5%の分配を想定)。効果は、抗TSLP抗体について見られなかった。
【0192】
ターゲットエンゲージメントについての統合PK/PDモデル
統合popPK/PDモデルを、MEDI3506 Ph1研究由来のSAD/MAD/IV MEDI3506全身曝露及びターゲットエンゲージメント(TE)臨床データに基づいて確立した。用いたTE情報は、全身IL33-MEDI3506複合体形成であり、IL33-ST2が、FTIMからレベルを引き下げた。
【0193】
モデルにおいてカバーされる集団及び用量は、以下を含む。
・単回の皮下(SC)用量(1~300mg SC)及び300mg静脈(IV)の後に軽度のアトピーがある健康な対象
・30、100、及び300mg SCの複数回用量を受けている軽度のCOPD患者
【0194】
モデル構造は、4つのコンパートメントが定義され、図10に示す。
【0195】
PKPDモデルは、確実に、血中のMEDI3506、MEDI3506:IL33複合体形成、及びIL33:ST2用量依存性阻害の観察PKプロファイルを説明する(図11図12、及び図13)。図18及び図19は、それぞれ図11及び図13の異なる提示を示す。実線は、観察の中央値を表す。影付きの領域は、モデルによって予測される中央値の95%信頼区間を表す。破線は、トゾラキマブ(0.01ng/ml)及びIL-33:sST2(0.5pg/ml)についてのLLOQ値を表す。
【0196】
Q2W、Q4W、及びQ6W投与レジメンについてのトラフでの血中のMEDI3506についてのST2:IL33複合体阻害における用量応答を、図14に示す。
【0197】
血中のIL-33/sST2複合体阻害についてのPK/PDモデルをさらに変換して、肺組織におけるIL-33阻害を予測した(想定:血液:組織分配係数14%、肺におけるIL-33レベルは、血中よりも2倍高い)。
【0198】
Q4W及びQ8W投与頻度についてのトラフでの肺組織におけるIL-33阻害%を、図15に示す。
【0199】
用量選択
トラフでの肺組織におけるほぼ95%の標的阻害が、300mg用量Q4W投与頻度について予測される。MEDI3506 300mg Q8Wは、80%超の肺におけるTEを達成すると予測され、これは、患者の肺におけるIL-33の持続する阻害が、患者のためのより長いが、より都合の良い投与間隔を用いて達成可能であることを意味する(図15)。
【0200】
Ph1 PKデータ及び他の入力パラメータに基づいて、MEDI3506血清濃度を、300mg Q4W及び300mg Q8Wについてモデル化した。これらのレジメンは双方とも、60%の阻害を達成するのに必要とされるアルテルナリアヒト化IL-33マウスモデルから予測される量よりもトラフ濃度が高いと予測される(図16)。アルテルナリアモデルは、増悪又はウイルス感染において引き起こされる急性影響をより忠実に代表する。したがって、このカットオフを用いる用量予測は、ヒト慢性IL-33媒介疾患、例えばCOPDに有効な用量を達成するのに十分である見込みがある。また、双方のレジメンは、oxIL-33:RAGE/EGFRシグナル伝達軸を介して病理学的シグナル伝達を阻害するのに、スクラッチ創傷モデルによって特定される閾値量よりもトラフ濃度が高いと予測される(図17)。
【0201】
実施例4-COPD増悪の既往歴がある、症候的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患う参加者においてMEDI3506の2回用量レジメンの有効性及び安全性を評価するための、第III相マルチセンターランダム化二重盲検慢性投与並行群プラセボ対照研究
設計全体
この第III相研究の目的は、症候的なCOPDを患い、且つ以前の12ヵ月においてCOPDの≧2回の中程度又は≧1回の重度の増悪の既往歴がある成人参加者において皮下(SC)投与される、MEDI3506の8週毎(Q8W)の300mg及び4週毎(Q4W)の300mgの用量レジメンの有効性及び安全性を評価することである。参加者は、登録前の少なくとも3ヵ月にわたって、安定した用量による維持吸入療法による最適化処置(ICS/LABA/LAMAの3つの療法、又は3つが示されないか、若しくは禁忌ならば、2つの療法)を受けていなければならない。
【0202】
本研究は、地域、維持吸入療法(2つ対3つ)、及び喫煙状況(現在対以前)によって階層化した、およそ1272人の参加者をランダム化する。本研究は、以前の喫煙者及び現在の喫煙者を含む。参加者は、研究の期間の全体を通して、同じCOPD維持療法を続けることとなる。
【0203】
本研究は、少なくとも2週のスクリーニング期間、52週の処置期間(4週毎の現地来院及びIP投与を伴う)、及び処置後8週の追跡調査期間からなる。
【0204】
キープライマリ及びセカンダリ目的及びエンドポイントを、以下の表に記載する。
【0205】
【表2】
【0206】
【表3】
【0207】
【表4】
【0208】
AE=有害事象;BD=気管支拡張薬;CAT=COPD評価試験;CCU=重症管理室;COPD=慢性閉塞性肺疾患;ECG=心電図;ED=救急診療部;ER=緊急治療室;E-RS:COPD=COPDにおける呼吸器症状の評価;FEV=1秒努力呼気肺活量;HRU=ヘルスケア資源利用;ICU=集中治療室;IP=治験薬;MCID=臨床的に重要な最小変化量;SGRQ=St.George’s Respiratory Questionnaire;SoC=標準治療。
【0209】
参加者のタイプ及び疾患特徴
1 登録前の少なくとも1年間のCOPDの実証された診断。
2 予測される正常値のBD後FEV/FVC<0.70且つBD後FEV>20%(スクリーニング時の中央肺活量測定によって評価される)。
3 登録前の12ヵ月以内の≧2回の中程度又は≧1回の重度のCOPD増悪の実証された既往歴:
(a)増悪は、全身性コルチコステロイド及び/又は抗生物質による処置を必要とするならば、中程度、そして入院を必要とするならば、重度とみなされる。注:入院は、国及び医療制度に応じて、病院、観察エリア、緊急部門、又は他の同等の医療施設における≧24時間の入院患者の入場と定義される。
(b)少なくとも1つの資格を得ている増悪は、全身性コルチコステロイドにより処置されていなければならない。
(c)抗生物質が、COPD症状の悪化に対して明確に処方された場合にのみ、抗生物質だけで処置される事象は、中程度の増悪としての資格を得る。
(d)以前に増悪が起こったことが確認されなければならないが、一方で、参加者はCOPDについての安定した2つ又は3つの(ICS/LABA/LAMA)維持吸入療法中であり、処置におけるギャップ又はステップダウンの結果としてではなかった。
(e)登録前の最近の安定した中断されていない治療中でありながら、少なくとも1つの資格を得る増悪が起こっていなければならない。
4 登録前の少なくとも3ヵ月間の安定した用量での、COPD維持療法による実証された最適化処置(ICS/LABA/LAMAの3つの療法、又は3つが示されないか、若しくは禁忌ならば、2つの療法)。
5 ≧10パックイヤーの喫煙歴:
(a)以前の喫煙者は、現在喫煙しておらず、スクリーニングの≧6ヵ月前に、恒久的にやめる意志を持って喫煙停止している参加者と定義される。
(b)現在の喫煙者は、現在タバコ(過去7日の間に平均で1日あたり少なくとも1本のタバコ)を喫煙しており、現在、禁煙に参加していない参加者と定義される。
(c)電子タバコ(Eシガレット)の使用は、適格基準についてのパックイヤー数には寄与しない。
6 CAT総スコア≧10、粘液(痰)項目及び咳項目は各々、スクリーニング時及びランダム化時の双方でスコア≧2。
7 スクリーニング期間全体の間、少なくとも70%の毎日のPRO完了、ランダム化より前の14日の期間において、少なくとも50%の毎日のPRO完了。
8 スクリーニング期間全体の間、COPD維持吸入療法(その日の予定されているCOPD維持吸入薬物を服用したと定義)の少なくとも70%の遵守。
9 電子デバイスを読んで使用することができる。
【0210】
研究介入
【0211】
【表5】
【0212】
救急薬
短時間作用型β2-アゴニスト(SABA、例えば、サルブタモール、アルブテロール、テルブタリン、レバルブテロール)、短時間作用型ムスカリンアンタゴニスト(SAMA)、SABA/SAMAの組合せ、又は局所標準治療による代替の救急薬を、COPD症状の悪化事象における研究中に用いてよい。
【0213】
維持療法
安定した最適化された維持吸入治療(ICS/LABA/LAMAの3つの療法、又は3つが示されないか、若しくは禁忌ならば、2つの療法)。他のあらゆるCOPD維持療法(例えば、キサンチン、抗生物質、PDE4阻害剤その他)の用量及びレジメンは、研究より前の3ヵ月間、及び研究期間の全体を通じて安定していなければならない。
【0214】
有効性評価
COPD増悪の評価
プロトコルの目的上、COPD増悪は、参加者の通常のCOPD症状の悪化(例えば、呼吸困難、痰容量、痰膿汁、咳、喘鳴、並びに他のCOPD関連の症状及び/又は発見)として定義され、これは、通常の日々の変動を超え、発症が急性で、2日以上(又は、悪化が非常に急速で深刻であり、処置を行う医師が処置の強化を遅らせることはできないと判断した場合、1日)続く、通常の投薬の変更を是認する可能性があり、以下のいずれかにつながる:
少なくとも3日間の全身性コルチコステロイドの使用;コルチコステロイドの単回デポー注射液(IM)用量は、3日コースの全身性コルチコステロイドに等しいと考えられる。
抗生物質の使用。
COPDに起因する入院患者の入院(国及び医療制度に応じて、病院、観察エリア、救急部門、又は他の同等の医療施設における≧24時間の入院患者の入場と定義される)。
致死。
【0215】
全身性コルチコステロイド及び/又は抗生物質による処置が必要であり、且つ重度の事象基準を満たさなければ、増悪は中程度であるとみなされる。COPDに起因して入院又は死に至ったならば、増悪は重度であるとみなされる。
【0216】
増悪の開始は、全身性コルチコステロイド若しくは抗生物質処置又は入院の開始日のいずれか早い方と定義し、終了日は、全身性コルチコステロイド若しくは抗生物質処置又は退院の最終日のいずれか遅い方と定義する。コルチコステロイドの単回デポー注射液用量は、3日コースの全身性コルチコステロイドに等しいとみなされる。この処置についての対応する停止日は、結果的に、投与の日時プラス2日として決まる。
【0217】
肺活量測定(気管支拡張薬前後の評価)
全ての肺活量測定を、投与前に実行する。
【0218】
肺機能(FEV及びFVC)を、中央ベンダーによって提供される装置を用いる肺活量測定によって測定する。肺活量測定は、American Thoracic Society(ATS)/European Respiratory Society(ERS)ガイドライン(Graham et al 2019)に従って、調査者又は権限のある代理人によって実行される。
【0219】
肺活量測定基準
Global Lung Function Initiative式を用いて、予測される正常値(PNV)を求めて、肺活量計に予めプログラムする(Quanjer et al 2012)。
【0220】
PNVのパーセントとして表す1秒努力呼気肺活量を、以下のように算出する:
PNVのFEV%=(測定されるFEV/FEVPNV)×100。
FEF25~75%を、FEVと類似の方法を用いて算出する。
【0221】
BD後肺活量測定
エンドポイント最大BDを、最終のBD前肺活量測定法の30分±15分以内に最大4回の吸入まで、スペーサーデバイスあり又はなしで、アルブテロール(90μgの測定用量)又はサルブタモール(100μgの測定用量)を用いて誘導する。BD後肺活量測定を、15~30分後に実行する。患者が4パフのアルブテロール又はサルブタモールに耐えることができなければ、調査者の臨床判断で吸入回数を減らすことを検討することができる。
【0222】
患者報告アウトカム(PRO)
参加者は、以下の非毎日PROを以下の順序で完了する:SGRQ、CAT、5-レベルEuroQol-5ディメンション(EQ-5D-5L)、労働生産性及び活動性障害アンケート(WPAI-GH)、PGIS、並びに変化の患者全般印象度(PGIC)。評価の頻度について、SoA(セクション1.3 エラー!引用元を見出せず)参照。
【0223】
慢性肺疾患の増悪のツール-患者報告アウトカム(EXACT-PRO)
EXACT-PROは、COPD増悪の頻度、重篤度、及び継続期間を評価するために開発された14項目のPRO手段である(Jones et al 2011、Leidy et al 2011)。当該手段は、手持ち型電子デバイスを用いる、毎日の自宅での投与のために開発された。応答者は、応答者の経験を「今日」とみなして、就寝時刻の直前に毎晩、日誌を完了し、且つ質問に答えるように指示される。毎日のEXACT-PRO総スコアは、0~100の範囲を有し、スコアが高いほど重篤度が大きいことを示す。総スコア変化が、発症及びEXACT-PRO定義増悪事象からの回復を特定するのに用いられる。事象の発症及び回復を特定する際に、EXACT-PROは、事象の頻度及び期間、並びに事象の重篤度についての情報を提供することができる。
【0224】
COPDにおける呼吸器症状の評価(E-RS)
E-RS:COPDは、COPDの呼吸器症状の重篤度を評価するために開発された11項目PROである(Leidy et al 2014a、Leidy et al 2014b).E-RS:COPDは、EXACT-PRO由来の項目のサブセットである。E-RS:COPDは、毎日のEXACT-PRO評価の一部として捕らえられるように設計された。E-RS:COPD項目応答の合計は、0~40の範囲に及ぶ総スコアを生成し、スコアが高いほど重篤度が大きいことを示す。総スコアに加えて、症状ドメインスコアは、それぞれのドメイン内の項目の応答を合計することによって、息切れ(5項目;スコア範囲:0~17)、咳及び痰(3項目;スコア範囲:0~11)、並びに胸部症状(3項目;スコア範囲:0~12)について算出することができる。総スコアと同様に、ドメインスコアが高いほど重篤度が大きいことを示す。E-RS:COPD総スコアの少なくとも2ポイントの個々のスコア低下は、意味があると考えられ、レスポンダ定義として用いられる(Leidy et al 2014a)。
【0225】
息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)
BCSSは、3項目PRO(Leidy et al 2003a、Leidy et al 2003b)であり、これは、息切れ、咳、及び痰の重篤度を0~4のスケールで評価する。項目スコアを合計して総スコアを与え、スコアが高いほど症状が重度であることを示す。
【0226】
St.George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)
SGRQは、気道閉塞疾患を患う参加者の健康状況を測定するために開発された50項目PRO手段である(Jones et al 1991、Jones and Forde 2009)。アンケートは、2つのパートに分けられる:パート1は、前の4週における呼吸器症状の重篤度に関係する8項目からなる;パート2は、日常活動及び個人の呼吸状態の社会心理的影響に関係する42項目からなる。SGRQは、総スコア及び3つの構成要素スコア(症状、活動、及び影響)をもたらす。総スコアは、健康状況全般に及ぼす疾患の影響を示す。この総スコアは、障害全体のパーセンテージとして表され、100は、考えられる最悪の健康状況を表し、0は、考えられる最良の健康状況を示す。同様に、構成要素スコアは、0~100に及び、スコアが高いほど障害が大きいことを示す。SGRQ総スコアの少なくとも4ポイントの個々のスコア低下は、意味があると考えられ、レスポンダ定義を支持するのに用いられる。スコア化アルゴリズムについての具体的な詳細が、開発者によってユーザーマニュアル中に記載されている(Jones and Forde 2009)。
【0227】
COPD評価試験(CAT)
CATは、健康状況に及ぼすCOPDの影響を測定するために開発された8項目PROである(Jones et al 2009、Kon et al 2014)。当該手段は、COPDの影響を捕らえるための対照的な形容詞によって定義される意味差判別(semantic differential)6ポイント応答スケールを用いる。内容は、咳、啖、胸苦しさ、丘/段を上る際の息切れ、家での活動制限、家を出る自信、睡眠、及びエネルギーに関係する項目を含む。各項目応答は、0から5に及び、0が、健康状況に及ぼす影響が最少であり、5が、影響が最も大きい。CAT総スコアは、項目応答の合計であり、スコアは0から40に及び、スコアが高いほど、健康状況に及ぼすCOPD影響が大きいことを示す。CAT総スコアの少なくとも2ポイントの個々のスコア低下は、意味があると考えられ、レスポンダ定義を支持するのに用いられる(Kon et al 2014)。
【0228】
5-レベルEuroQol-5ディメンション(EQ-5D-5L)
EQ-5D-5Lは、健康転帰の尺度として用いられる5つのレベルの標準化された手段である。これは、広範な健康状態及び処置に適用でき、健康状況についての単純な記述プロファイル及びシングルインデックス値を提供する。EQ-5D-5Lは、2つの評価、記述システム及び視覚的アナログスケール(VAS)からなる。記述システムは、以下の5つのディメンション:運動、セルフケア、日常活動、疼痛/不快感、及び不安/抑うつで構成される。各ディメンションは、5つの重篤度レベル:問題なし、僅かな問題、中程度の問題、重度の問題、及び極度の問題がある。EQ-5D-5Lインデックススコアは、5つのディメンションに対する参加者の応答に基づいて、そして適切な値セットを用いて算出することができ、これは、統計分析計画(SAP)にさらに記載されている。
【0229】
EQ-5D VASは、応答者の自己評価した健康を、エンドポイントを「あなたが想像できる最良の健康」及び「あなたが想像できる最悪の健康」で標識した(スコアが高いほど良好な健康状態に相当する)20cm、0~100のバーティカルスケールで記録する。この情報は、個々の応答者によって判断される健康の定量的尺度として用いられる。
【0230】
労働生産性及び活動性障害アンケート(WPAI-GH)
WPAI-GH(バージョン2.0)は、アブセンティズム、プレゼンティズム(就業しながらの有効性の減少)、労働生産性全体の喪失(アブセンティズムプラスプレゼンティズム)、及び活動性障害に対処する6つの質問で構成される自己管理ツールである。この証明されたツールは、過去7日からデータを捕らえる。WPAI-GH転帰は、障害パーセンテージとしてスコア化され、パーセンテージが高いほど、障害が大きく、且つ生産性が低いことを示す(Reilly et al 1993)。
【0231】
重篤度の患者全般印象度(PGIS)
PGISは、6ポイントスケール(0-症状なし~5-非常に重篤)を用いて、完了時のCOPD症状重篤度全体の参加者の認識を捕らえるように設計された単一項目である。
【0232】
変化の患者全般印象度(PGIC)
PGICは、7ポイントスケール(1-かなりよい~7-かなり悪い)を用いて、IPの最初の用量以来のCOPD症状全体の変化における参加者の認識を捕らえるように設計された単一項目である。
【0233】
COPDの増悪についての複合エンドポイント(COPDCompEx)
COPDの増悪についての複合エンドポイント(COPDCompEx)は、増悪の、毎日のPRO定義事象及び研究脱落との組合せに基づくエンドポイントである(Vogelmeier et al 2020)。COPDCompEx構成要素のための定義は、以下の通りである:
増悪:以下の1つ以上につながるエピソード:入院、緊急治療室来院、全身性コルチコステロイドによる処置、又は抗生物質による処置。
毎日のPRO事象:以下のPRO変数を用いる閾値及び傾斜基準によって定義される:BCSS及び救急薬使用の個々の項目。
【0234】
統計考察
プライマリエンドポイント
プライマリエンドポイントは、中程度から重度の増悪の年率換算割合である。これは、最初にプライマリ集団(以前の喫煙者)において、そしてその後に現在の喫煙者及び以前の喫煙者の集団全体において、MEDI3506対プラセボの用量毎に評価する。
【0235】
各MEDI3506用量レジメン群における中程度から重度の増悪割合を、負の二項モデルを用いて、プラセボ群における中程度から重度の増悪割合と比較する。モデルにおける応答変数は、完全二重盲検52週処置期間にわたって参加者によって経験されるCOPD増悪の数である。モデルは、カテゴリカル因子としての処置群、地域、維持吸入療法(3つ又は2つ)、及び前年における増悪の数(1回対≧2回)、並びに連続共変量としてのスクリーニング時に予測されるBD後FEV1%及び対数スクリーニング血中好酸球数の共変量を含む。参加者の対応する追跡調査時間の対数を、モデルにおけるオフセット変数として用いる。また、集団全体における分析について、喫煙状況を、共変量として含める。
【0236】
推定される処置効果(すなわち、MEDI3506対プラセボの各用量の率比)、対応する95%信頼区間(CI)、及び率比についての両側p値を示す。加えて、各処置群におけるモデル調整増悪割合を示す。
【0237】
以前の処置コースを終えて7日以内に始まる全身性コルチコステロイド又は抗生物質による処置のコースを、同じ単回増悪のための処置とみなす。
【0238】
セカンダリエンドポイント
全てのセカンダリエンドポイントについての分析を、プライマリ集団(以前の喫煙者)において行う。類似の分析を、集団全体(以前の喫煙者及び現在の喫煙者)において行う。
【0239】
最初の中程度又は重度のCOPD増悪までの時間
最初の中程度又は重度のCOPD増悪までの時間を、MEDI3506の各用量による処置が、プラセボと比較して、最初の増悪までの時間をどの程度遅らせるかを調査するためのプライマリ目的に対するキーセカンダリ有効性変数として分析する。Cox比例ハザードモデルを、処置群、地域、維持吸入療法、前年における増悪の数、スクリーニング時の予測されるBD後FEV1%、及び対数スクリーニング血中好酸球数の共変量と適合させる。ハザード比、95%CI、及びp値、並びに事象がある参加者の割合が報告される。
【0240】
St George’s Respiratory Questionnaire
52週にわたるSGRQ総スコアのベースラインからの変化を、反復測度線形モデルを用いて、MEDI3506とプラセボ間で比較する。従属変数は、52週目の訪問までのベースライン後プロトコル指定来院時のSGRQ総スコアのベースラインからの変化である。前年における処置、来院、来院単位の処置の相互作用、地域、維持吸入療法、及び増悪の数を、カテゴリカル共変量として、連続共変量としてのベースラインSGRQ総スコア、予測されるBD後FEV1%、及び対数スクリーニング血中好酸球数と適合させる。非構造化分散共分散マトリックスを、参加者内のモデル相関に用いる。対比を用いて、各来院(24週目及び52週目を含む)時の、そして52週にわたる処置効果推定値を生成する。これを、両側95%CI及びp値と一緒に報告する。
【0241】
レスポンダ分析を、52週目にSGRQ総スコアについて実行する。レスポンダを、ベースラインに勝る≧4.0ポイントの向上(低下)がある参加者と定義する。いかなる理由であれ研究を中断するか、又は52週目にミッシングデータがある参加者を、非レスポンダと分類する。ロジスティック回帰を用いて、処置群を、カテゴリカル共変量としての処置、地域、維持吸入療法、及び前年における増悪の数、並びに連続共変量としての予測されるBD後FEV1%、対数スクリーニング血中好酸球数、及びベースラインSGRQ総スコアと比較する。95%CIと共にp値及びオッズ比を、処置比較毎に生成する。
【0242】
E-RS:COPD総スコアのベースラインからの変化
52週にわたるE-RS:COPD総スコアのベースラインからの変化を、SGRQ総スコアのベースラインからの変化と類似のモデルを用いて分析する。また、ベースラインからの≧2ポイント向上(低下)に基づく52週目のE RS:COPD総スコアについてのレスポンダ分析を、SGRQレスポンダ分析と同様に生成する。
【0243】
投与前FEV1のベースラインからの変化
SGRQスコアのベースラインからの変化についてと類似の反復測度分析モデルを、カテゴリカル共変量として適合する前年における処置、来院、来院単位の処置の相互作用、地域、維持吸入療法、及び増悪の数、並びに連続共変量としてのベースラインFEV1及び対数スクリーニング血中好酸球数と共に用いて、投与前/BD前FEV1のベースラインからの変化を分析する。対比を用いて、各来院(24週目及び52週目を含む)時の、そして52週にわたる処置効果推定値を生成する。これを、両側95%CI及びp値と一緒に報告する。
【0244】
他のセカンダリエンドポイント
最初の重度の増悪までの時間、及び重度の増悪の年率換算割合を、先に記載する中程度又は重度の増悪と類似の方法で分析する。
【0245】
CAT総スコアのベースラインからの変化、及びCAT総スコアの低下(向上)が≧2ポイントの参加者の割合の分析を、SGRQ総スコアと類似の方法を用いて行う。
本発明の態様
本発明の態様を以下の項にさらに記載する:
[項1]
対象における慢性閉塞性肺疾患(COPD)を処置する方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項2]
対象におけるCOPDを処置する方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、肺又は上皮内層流体(ELF)においてIL-33の少なくとも80%の阻害を達成するのに有効な用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項3]
前記用量は、肺においてIL-33の阻害を少なくとも約90%、場合によっては少なくとも95%達成するのに有効である、上記項2に記載の方法。
[項4]
前記用量は、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgである、上記項2又は3に記載の方法。
[項5]
前記用量は約300mg Q8Wである、上記項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
前記用量は約300mg Q4Wである、上記項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
前記用量は約600mg Q4Wである、上記項1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項8]
前記COPDは、前記対象において、慢性気管支炎と関連する、上記項1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
前記COPDは、中程度のCOPD、中程度から重度のCOPD、又は重度のCOPDである、上記項1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
前記対象は、処置前の12ヵ月においてCOPDの少なくとも1回、場合によっては少なくとも2回の中程度、又は少なくとも1回の重度の急性増悪(aeCOPD)の既往歴がある、上記項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
処置の前に、前記対象は、気管支拡張薬後1秒努力呼気肺活量(FEV )対努力肺活量(FVC)比(気管支拡張薬後(BD後)FEV /FVC)が0.70未満(<0.70)である、上記項1~10のいずれか一項に記載の方法。
[項12]
処置の前に、前記対象は、BD後FEV1が、予測される正常値の>20%である、上記項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[項13]
前記対象は、現在の喫煙者又は以前の喫煙者である、上記項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[項14]
前記対象は、喫煙歴が少なくとも10パックイヤーである、上記項13に記載の方法。
[項15]
前記対象は、長時間作用性のベータ2アゴニスト(LABA)、長時間作用性のムスカリン受容体アンタゴニスト(LABA)、及び/又は吸入コルチコステロイド(ICS)を含むCOPD吸入維持療法を受けている、上記項1~14のいずれか一項に記載の方法。
[項16]
前記吸入維持療法は、LABA及びLAMA、ICS及びLABA、又はICS、LABA、及びLAMAを含む、上記項15に記載の方法。
[項17]
中程度から重度のCOPD増悪への年率換算割合が、前記対象において引き下げられる、上記項1~16のいずれか一項に記載の方法。
[項18]
最初の中程度から重度のCOPD増悪までの時間が長くなる、上記項1~17のいずれか一項に記載の方法。
[項19]
最初の重度のCOPD増悪までの時間が長くなる、上記項1~18のいずれか一項に記載の方法。
[項20]
重度のCOPD増悪の年率換算割合が、前記対象において引き下げられる、上記項1~19のいずれか一項に記載の方法。
[項21]
気管支拡張薬前FEV が、前記対象において向上する、上記項1~20のいずれか一項に記載の方法。
[項22]
前記スコアは、COPDにおける呼吸器症状の評価(E-RS)、St George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)、COPD評価試験(CAT)、慢性肺疾患の増悪のツール-患者報告アウトカム(EXACT-PRO)、息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)、5-レベルEuroQol-5ディメンション(EQ-5D-5L)、労働生産性及び活動性障害アンケート(WPAI-GH)、重篤度の患者全般印象度(PGIS)、及び変化の患者全般印象度(PGIC)から選択される1つ以上のアンケート中で、前記対象において向上する、上記項1~21のいずれか一項に記載の方法。
[項23]
前記用量は、投与期間の間、約10~35μg/mlのC max.ss を達成するのに有効である、上記項1~22のいずれか一項に記載の方法。
[項24]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは:ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、単鎖抗体、単量体の抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab断片、lgG1抗体、lgG2抗体、lgG3抗体、及びlgG4抗体から選択される、上記項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[項25]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、IgG1である、上記項1~24のいずれか一項に記載の方法。
[項26]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、ヒト抗体である、上記項1~25のいずれか一項に記載の方法。
[項27]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、配列番号4に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一のVHドメイン、及び配列番号8に示す配列と少なくとも95%、90%、又は85%同一のVLドメインを含む、上記項1~26のいずれか一項に記載の方法。
[項28]
前記抗IL-33抗体は、配列番号4に示すVHドメイン配列及び配列番号8に示すVLドメイン配列を含む、上記項1~27のいずれか一項に記載の方法。
[項29]
前記抗IL-33抗体は、配列番号9に示す軽鎖配列及び配列番号10に示す重鎖配列を含む、上記項1~28のいずれか一項に記載の方法。
[項30]
前記抗IL-33抗体バリアントは、ヒトにおける33_670087_7Bと同じ薬物動態学的(pK)特徴を有する、上記項1~29のいずれか一項に記載の方法。
[項31]
前記抗IL-33抗体は33_670087_7B(MEDI3506)である、上記項1~30のいずれか一項に記載の方法。
[項32]
前記投与は皮下投与である、上記項1~31のいずれか一項に記載の方法。
[項33]
対象において慢性閉塞性肺疾患(COPD)のマーカーを向上させる方法であって:抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含み、
前記マーカーは:中程度から重度のCOPD増悪への年率換算割合、最初の中程度から重度のCOPD増悪までの時間、FEV 、1秒努力呼気肺活量(FEV )、FEV1対努力肺活量(FVC)比(FEV /FVC)、又は息切れ、咳、及び痰スケール(BCSS)スコア、COPD評価試験(CAT)スコア、並びにSt.George’s respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアから選択される、方法。
[項34]
前記マーカーの向上は、ベースラインに関連する、上記項33に記載の方法。
[項35]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも12週間投与される、上記項1~34のいずれか一項に記載の方法。
[項36]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも24週間投与される、上記項1~35のいずれか一項に記載の方法。
[項37]
前記抗IL-33抗体又はその抗体バリアントは、少なくとも52週間投与される、上記項1~36のいずれか一項に記載の方法。
[項38]
COPDを処置する方法に使用される、上記項1~37のいずれか一項において特徴付けられる抗IL-33抗体又はその抗体バリアントであって、前記方法は、上記項1~37のいずれか一項において特徴付けられる方法である、抗IL-33抗体又はその抗体バリアント。
[項39]
上記項1~38のいずれか一項において特徴付けられるCOPDを処置する方法に使用される薬剤の製造における、上記項1~38のいずれか一項において特徴付けられる抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの使用。
[項40]
対象において中程度から重度のCOPD増悪への年率換算割合を引き下げる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項41]
COPDを患う対象において気管支拡張薬前FEV を向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項42]
COPDを患う対象においてE-RS:COPDスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項43]
E-RS:COPDスコアの臨床における最小重要差を達成する、上記項42に記載の方法。
[項44]
COPDを患う対象においてSGRQスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項45]
SGRQスコアの臨床における最小重要差を達成する、上記項44に記載の方法。
[項46]
COPDを患う対象においてCATスコアを向上させる方法であって、抗IL-33抗体又はその抗体バリアントの治療的に有効な量を、4週毎(Q4W)又は8週毎(Q8W)の間隔にて約300~約600mgの用量で投与することを含み、前記抗IL-33抗体は:
a.配列番号1に示す配列を有するHCDR1、配列番号2の配列を有するVHCDR2、配列番号3の配列を有するVHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに
b.配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、方法。
[項47]
CATスコアの臨床における最小重要差を達成する、上記項44に記載の方法。
[項48]
前記用量は約300mg Q8Wである、上記項40~47のいずれか一項に記載の方法。
[項49]
前記用量は約300mg Q4Wである、上記項40~47のいずれか一項に記載の方法。
[項50]
前記用量は約600mg Q4Wであり、配列番号5の配列を有するVLCDR1、配列番号6の配列を有するVLCDR2、及び配列番号7の配列を有するVLCDR3を含む、上記項40~47のいずれか一項に記載の方法。



【0246】
参考文献
本発明及び本発明が関係する最新技術をより完全に説明且つ開示するために、いくつかの刊行物が先で引用されている。これらの参考文献の完全な引用を、以下に示す。これらの参考文献のそれぞれの全体が、本明細書に組み込まれる。
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【0247】
【表6】
【0248】
【表7】
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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