(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】肥育期中の豚用低エネルギー飼料におけるグアニジノ酢酸の使用
(51)【国際特許分類】
A23K 50/30 20160101AFI20241121BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20241121BHJP
A23K 20/105 20160101ALI20241121BHJP
【FI】
A23K50/30
A23K20/142
A23K20/105
(21)【出願番号】P 2024522150
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078059
(87)【国際公開番号】W WO2023061916
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】102021126581.9
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512117801
【氏名又は名称】アルツヒエム トローストベアク ゲー・エム・べー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Alzchem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.-Albert-Frank-Str. 32, D-83308 Trostberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ロイブル、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】リンゲル、ジュディス
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/018486(WO,A1)
【文献】特表2009-528038(JP,A)
【文献】特表2008-501352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚による飼料のエネルギー利
用向上
剤であって、i)グアニジノ酢酸を含む組成物
を含み、ii)飼料の合計重量に対して粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%の範囲および1頭あたりの生体重27kg以上からの豚の肥育中エネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の豚用低エネルギー飼料
に使用
する剤。
【請求項2】
豚による飼料のエネルギー利用における向上が、グアニジノ酢酸を含まない対応する飼料と比較して少なくとも0.1MJ ME/kgのエネルギー不足を補うことを特徴とする、請求項1に記載の
剤。
【請求項3】
豚による飼料のエネルギー利用が、低エネルギー飼料単独と比較して向上されていることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項4】
組成物i)が、豚用飼料と混合した固形製剤として提供されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項5】
組成物i)がグアニジノ酢酸を遊離酸またはこの酸の塩の形態として含むことを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項6】
グアニジノ酢酸がグアニジノ酢酸の塩の形態で使用され、塩がグアニジノ酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩
、グアニジノ酢酸ナトリウム、グアニジノ酢酸カリウム、グアニジノ酢酸マグネシウムまたはグアニジノ酢酸カルシウムの群から選択されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項7】
グアニジノ酢酸が
、飼料の合計重量に対して、0.01から0.20wt.%ま
での量で使用されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項8】
グアニジノ酢酸が、飼料の合計重量に対して、0.02から0.15wt.%までの量で使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の剤。
【請求項9】
グアニジノ酢酸が、飼料の合計重量に対して、0.04から0.10wt.%までの量で使用されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項10】
グアニジノ酢酸を含
む組成物i)および/または飼料ii)が添加物として、リジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリンもしくはグリシンまたはそれらの混合物の群からのアミノ酸を含むことを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項11】
低エネルギー飼料ii)のエネルギー含有量が、12.2から12.8MJ ME/kg飼料の範囲であることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項12】
グアニジノ酢酸を含む組成物i)が、生体重60kgからの
豚の肥育における低エネルギー飼料ii)と組み合わせて使用されることを特徴とする
、請求項
1または2に記載の
剤。
【請求項13】
グアニジノ酢酸を含む組成物i)が、生体重60kgを超えて生体重110kgまでの豚の肥育における低エネルギー飼料ii)と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の剤。
【請求項14】
豚による低エネルギー飼料のエネルギー利用の向上方法であって、豚が、飼料の合計重量に対して粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%の範囲および1頭あたり生体重27kg以上からの豚の肥育中エネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の豚用低エネルギー飼料ならびにさらにグアニジノ酢酸を含む組成物が投与される、方法。
【請求項15】
豚による飼料のエネルギー利用の向上が、グアニジノ酢酸を含まない対応する飼料と比較して少なくとも0.1MJ ME/kgのエネルギー不足を補う、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
豚による飼料のエネルギー利用が、低エネルギー飼料単独と比較して向上される、請求項
14または
15に記載の方法。
【請求項17】
組成
物が、豚用飼料と混合した固形製剤として提供される、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項18】
組成
物がグアニジノ酢酸を遊離酸またはこの酸の塩の形態として含む、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項19】
グアニジノ酢酸がグアニジノ酢酸の塩の形態で使用され、塩が、グアニジノ酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩
、グアニジノ酢酸ナトリウム、グアニジノ酢酸カリウム、グアニジノ酢酸マグネシウムまたはグアニジノ酢酸カルシウムの群から選択される、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項20】
グアニジノ酢酸が
、飼料の合計重量に対して、0.01から0.20wt.%ま
での量で使用される、請求項
14または15に記載の
方法。
【請求項21】
グアニジノ酢酸が、飼料の合計重量に対して、0.02から0.15wt.%までの量で使用される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項22】
グアニジノ酢酸が、飼料の合計重量に対して、0.04から0.10wt.%までの量で使用される、請求項
14または15に記載の
方法。
【請求項23】
グアニジノ酢酸を含
む組成物および/または飼
料が添加物として、リジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリンもしくはグリシンまたはそれらの混合物の群からのアミノ
酸を含む、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項24】
低エネルギー飼
料のエネルギー含有量が12.2から12.8MJ ME/kg飼料の範囲である、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項25】
グアニジノ酢酸を含む組成
物が、生体重60kgからの
豚の肥育における低エネルギー飼
料と組み合わせて使用される、請求項
14または15に記載の方法。
【請求項26】
グアニジノ酢酸を含む組成物が、生体重60kgを超え生体重110kgまでの豚の肥育における低エネルギー飼料と組み合わせて使用される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項27】
i)グアニジノ酢酸を含む組成物、ならびに
ii)飼料の合計重量に対して粗タンパク含有量が10.0から18.0wt.%の範囲およびエネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の範囲である豚用低エネルギー飼料
を含む豚用飼料。
【請求項28】
1頭当たり生体重27kgからの豚の肥育中に投与するための、請求項
27に記載の豚用飼料。
【請求項29】
豚による飼料のエネルギー利用を向上させるための、請求項
27または
28に記載の飼料。
【請求項30】
低エネルギー飼料が、飼料の合計重量に対して、14から18wt.%の範
囲の粗タンパク含有量、および11.4から12.9MJ ME/kg飼料の範
囲のエネルギー含有量を有し、ならびに
飼料の合計重量に対して、0.01から0.20wt.
%の量のグアニジノ酢酸である、
請求項
27または28に記載の飼料。
【請求項31】
低エネルギー飼料が、飼料の合計重量に対して、16から17.5wt.%の範囲の粗タンパク含有量、および12.4から12.8MJ ME/kg飼料の範囲のエネルギー含有量を有し、ならびに
飼料の合計重量に対して、0.04から0.10wt.%の量のグアニジノ酢酸である、
請求項27または28に記載の飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低エネルギー飼料を用いた豚の肥育におけるグアニジノ酢酸を含む組成物の使用に関する。さらに、本発明は、グアニジノ酢酸を添加することによる豚による低エネルギー飼料のエネルギー利用の向上方法、ならびに低エネルギー飼料およびグアニジノ酢酸を含む豚用飼料に関する。飼料の最適化は多くの観点から実施されうる。一方、動物が必要とするすべての栄養素は飼料には十分な量で利用できなければならない。栄養必要量に加えて、動物の健康も至適飼料組成を決定する別の因子である。環境面、飼料生産時の施肥に関する規制および排出物などの多くの他の因子も考慮しなければならない。家畜、特に肥育豚には、飼料はこれらのすべての必要量において中心的な役割を果たしている。
【0002】
現在、種々な飼料添加物が現代の飼料の必要量に合致させるために使用されている。真っ先に、飼料混合物中の不足は必須栄養素および成長制限的栄養素の標的化添加によって補われている。代表的には、リジンもしくはメチオニンなどの必須アミノ酸、カルシウムおよび他の金属塩またはビタミンが挙げられる。しかしながら、フレーバリングまたは細胞代謝に影響する内因性物質も使用される。家禽とは対照的に、豚肥育におけるクレアチンまたはグアニジノ酢酸の使用は、今日までどちらかというと従属的な役割を果たしてきた。グアニジノ酢酸(syn.グリコシアミン、N-グアニルグリシン、N-アミジノグリシン;C3H7N3O2;CAS No.352-97-6)は、しばらく前から家禽飼料における飼料添加物として市販されている。
【0003】
クレアチンまたはクレアチン一水和物とは対照的に、グアニジノ酢酸およびその塩は酸性水溶液中で有意に高い安定性を示し、生理的条件下でのみクレアチンに変換される。グアニジノ酢酸は吸収、特に肝臓で吸収された後にのみクレアチンに変換される。したがって、クレアチンとは対照的に、大部分の投与または摂食された化合物、グアニジノ酢酸および/またはグアニジノ酢酸の塩は、不安定反応、例えば胃の中で分解されないが、対応する生理的代謝反応には実際には利用可能である。
【0004】
例えば、国際公開第2005/120246 A1には、クレアチニルホスフェートの前駆体化合物、すなわちグアニジノ酢酸を主としてベジタリアン飼料に補充することが、鶏において、飼料摂取の改善、肥育パフォーマンス、筋肉形成、肉質および/または繁殖パフォーマンスの向上に寄与することが記載されている。
【0005】
国際公開第2006/092298 A1には、水溶性または生物利用性の向上を示すグアニジノ酢酸の塩が記載されている。
【0006】
コードファジー(caudophagy)を低下または豚の攻撃性を低下させるための豚肥育におけるグアニジノ酢酸の使用が国際公開第2021/175677 A1において開示されている。
【0007】
Weber et al.の研究(A. Zeyner, H. Kluth, M. Bulang, M. Bochnia und M. Bachmann (Hrsg.), 14. Tagung Schweine und Geflugelernahrung, 21. - 23. November, 2017, Lutherstadt Wittenberg, Institut fur Agrar- und Ernahrungswissenschaften, Universitat Halle-Wittenbergで公開)において、一般の飼料中のグアニジノ酢酸の影響が調査されている。研究では、飼料変換においてわずかな向上だけでなく、有意な閾値においてわずかな日々の増加が発見された。研究によれば、高エネルギー飼料へのグアニジノ酢酸の添加は、豚においてはわずかに低い飼料の取り込みを示した。豚のエネルギー利用に対するグアニジノ酢酸の効果は、特に低エネルギー飼料を使用する場合、Weber et al.によって調査されていなかった。
【0008】
飼料の高エネルギー成分は、低エネルギー成分と比較して、時に限られた量しか入手できない。したがって、同じパフォーマンスを維持しながらエネルギー含有量を低下させることは、より資源効率的方法で動物を給餌することを可能にし得る。しかしながら、一日の配給量のエネルギー含有量の低減は、通常飼料摂取の増加につながり、通常低エネルギー飼料の利点が失われるか、または体重増加1kgあたりの資源消費がさらにもっと増加する。
【0009】
要約すると、豚用低エネルギー飼料の欠点を十分に補うための経済的方法は未だない。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、低エネルギー飼料を給餌した場合、肥育終了時の動物の体重を低エネルギー飼料単独の給餌と比較して有意に増加させ、好ましくはバランスのとれた高エネルギー飼料を給餌した場合に得られる体重を達成する、豚用飼料添加物を提供することである。
【0011】
本目的は、請求項1に記載の使用によって解決される。このように、第一の実施形態により、豚による飼料のエネルギー利用を向上させるための、i)グアニジノ酢酸を含む組成物ならびにii)粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%の範囲(飼料の合計重量に対して)および1頭当たり生体重27kg以上からの豚の肥育中エネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の範囲(飼料の合計重量に対して)の豚用低エネルギー飼料の使用が本発明の主題である。
【0012】
エネルギー利用は、動物の1キログラムの体重増加をもたらす代謝エネルギー(代謝エネルギーME)量として定義される。したがって、エネルギー利用においての向上は、動物の体重増加1キログラムあたり消費される飼料の代謝エネルギーの比率の低下と定義される。
【0013】
表現「飼料の合計重量に対して」または「合計飼料に対して」は、対応する値が88%乾燥物を伴う飼料をさすことを意味する。
【0014】
用語グアニジノ酢酸を下記で使用する場合、本文中で明確に遊離酸をさしていない限り、遊離酸だけでなく、その塩もさす。
【0015】
本発明は、特に、グアニジノ酢酸を含む組成物および低エネルギー飼料を使用する豚の肥育におけるグアニジノ酢酸の使用に関する。本発明によれば、低エネルギー飼料は、好ましくは粗タンパク含有量が14.0から18.0wt.%の範囲(合計飼料に対して)およびエネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kgの飼料として理解される。
【0016】
粗タンパク含有量は、粗タンパク質の測定のためのVDLUFA法(VDLUFA Methodenbuch III, 3. Erg. 1993: Rohprotein, 4.1.1)を用いて決定される。硫酸消化、蒸留および放出されたアンモニアの滴定によって、飼料の窒素含有量が決定される。タンパク質は、平均16%の窒素を含む。したがって、粗タンパク含有量は、窒素含有量に6.25を乗じて決定される。
【0017】
飼料の代謝エネルギー(ME)含有量は下記式(Gesellschaft fur Ernahrungsphysiologie, 2008: Prediction of metabolisable energy of compound feeds for pigs. Proceedings of the Society of Nutrition Physiology 17, 199-204):を用いて計算される:
ME(MJ/kg)=0.021503(MJ/g)×XP(g/kg)+0.032497(MJ/g)×XL(g/kg)-0.021071(MJ/g)×粗繊維(g/kg)+0.016309(MJ/g)×デンプン(g/kg)+0.014701(MJ/g)×「可消化残留物」(g/kg)
【0018】
したがって、式は、粗タンパク質(XP)、可消化粗脂肪(XL)、粗繊維、デンプンおよび「可消化残留物」(有機質量およびXP、XL、粗繊維およびデンプンの合計との差、それぞれg/kgで)の分析含有量を含む。
【0019】
市販の飼料では、粗タンパク含有量、粗脂肪含有量、粗繊維含有量およびデンプン含有量が通常表示されているので、代謝エネルギーの含有量を直接計算することができる。粗タンパク含有量、粗脂肪含有量、粗繊維含有量およびデンプン含有量を一般的なVDLUFA法(VDLUFA Methodenbuch III: 3. Erg. 1993, Abschnitt 4.1.1 (Rohproteinbestimmung); 2. Erg. 1988, Abschnitt 5.1.1 (Rohfettbestimmung; 8. Erg. 2012, Abschnitt 7.2.1 (Starkebestimmung); 3. Erg. 1993, Abschnitt 6.1.1 (Rohfaserbestimmung))を用いて決定することができる。
【0020】
グアニジノ酢酸を含む組成物ならびに低エネルギー飼料は1頭あたり、生体重27kg以上、好ましくは50kg以上、特に好ましくは60kg超からの豚の肥育中(以下肥育段階ともいう)に使用することがさらに提供される。このように本発明の使用は、1頭あたり27kgまでの子豚の第1の成長段階(以下飼育ともいう)外で行われ、また好ましくは本発明の本質の上で、1頭あたり60kgまでの生体重を特徴とする豚のプレ肥育(以下プレ肥育ともいう)外で行われる。
【0021】
本発明によれば、グアニジノ酢酸を含む組成物を使用する。
【0022】
驚いたことに、豚の給餌実験は、グアニジノ酢酸を含む組成物の投与は所望の利点、すなわち、低エネルギー飼料を給餌した場合、他の方法では高エネルギー飼料でしか達成できない肥育パフォーマンスの達成をもたらすことが現在示されている。給餌研究は、エネルギー含有量における差0.3MJ ME/kg飼料をグアニジノ酢酸の添加により十分に補えることを示している。好ましくは、0.1MJ ME/kg飼料以上、特に好ましくは0.1~0.5MJ ME/kg飼料および特に非常に好ましくは0.2~0.4MJ ME/kg飼料のエネルギー不足をグアニジノ酢酸の使用により補える。
【0023】
別の驚くべき知見は、飼料のエネルギー含有量の補填は肥育段階でのみ十分にみられることであった。この段階でのグアニジノ酢酸の使用は、同じ分析的エネルギー含有量を有する陰性対照群に比較して、エネルギー利用の向上をもたらした。これは、より少ない飼料または代謝エネルギーが少なくとも同じまたはより高い肥育パフォーマンスを達成するためには必要であったことを意味する。肥育パフォーマンスは、1日あたりの体重増加として本明細書では定義される。グアニジノ酢酸を供給された群は、有意に多くのエネルギーを供給された陽性対照群のパフォーマンスレベルよりも優れたパフォーマンスレベルすら達成した。グアニジノ酢酸自体は有意なエネルギー含有量を有さないが、グアニジノ酢酸の動物への供給は、これによりクレアチンも向上し、飼料中のエネルギー不足を補うことができる。
【0024】
したがって、グアニジノ酢酸を含まない対応する飼料と比較して少なくとも0.1MJ ME/kgのエネルギー不足を補うために豚による飼料のエネルギー利用を向上するための低エネルギー飼料中のグアニジノ酢酸の使用は、低エネルギー飼料単独と比較して豚による飼料のエネルギー利用を向上するための低エネルギー飼料中のグアニジノ酢酸の使用と同様に、本発明のさらなる主題である。
【0025】
本発明によれば、粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%、好ましくは14.0から18.0wt.%の低エネルギー豚用飼料を提供する。さらに好ましい使用によれば、粗タンパク含有量が少なくとも14.5wt.%、さらにより好ましくは少なくとも15.0wt.%、さらにより好ましくは少なくとも15.6wt.%、特に好ましくは少なくとも16.0wt.%および特に非常に好ましくは少なくとも16.2wt.%(飼料の合計重量に対して)の低エネルギー豚用飼料を提供する。同時にまたはそれとは独立して、低エネルギー豚用飼料の粗タンパク含有量は、多くて17.8wt.%、より好ましくは多くて17.6wt.%、さらにより好ましくは多くて17.4wt.%および特に好ましくは多くて17.2wt.%(飼料の合計重量に対して)でもよい。
【0026】
このように、さらに好ましい使用によれば、粗タンパク含有量が15.0から17.8wt.%までの範囲、より好ましくは15.6から17.8wt.%までの範囲、さらにより好ましくは16.0から17.8wt.%までの範囲およびさらにより好ましくは16.2から17.8wt.%までの範囲(飼料の合計重量に対して)の低エネルギー豚用飼料を提供する。さらにより好ましいのは、粗タンパク含有量が16.8から17.6wt.%の範囲および特に非常に好ましくは17.2±0.2wt.%(飼料の合計重量に対して)の飼料である。
【0027】
本発明によれば、合計飼料に対して、エネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kgの飼料を提供する。好ましい使用によれば、エネルギー含有量が、少なくとも11.4MJ ME/kg、より好ましくは少なくとも11.8MJ ME/kg、さらにより好ましくは少なくとも12.0MJ ME/kg、さらにより好ましくは少なくとも12.2MJ ME/kgおよび特に非常に好ましくは少なくとも12.4MJ ME/kg(いずれの場合も飼料の合計重量に対して)の、使用される豚用低エネルギー飼料を提供する。同時にまたはそれとは独立して、低エネルギー豚用飼料のエネルギー含有量は、多くて12.9MJ ME/kg、より好ましくは多くて12.8MJ ME/kg、および特に非常に好ましくは多くて12.7MJ ME/kg(いずれの場合も合計飼料に対して)であり得る。
【0028】
このように、さらに好ましい使用によれば、エネルギー含有量が12.0から12.8MJ ME/kgの範囲(合計飼料に対して)、より好ましくは12.2から12.8MJ ME/kgの範囲、さらにより好ましくは12.4から12.8MJ ME/kgの範囲、さらにより好ましくは12.6から12.8MJ ME/kgの範囲および特に非常に好ましくは12.7±0.05MJ ME/kg(いずれの場合も合計飼料に対して)の豚用低エネルギー飼料を提供する。
【0029】
低エネルギー飼料と組み合わせたグアニジノ酢酸の使用は、豚の体重が60kgに達するとすぐ、肥育段階で特に有益である。グアニジノ酢酸の投与は、重量が110kgまでに特に有益である。しかしながら、グアニジノ酢酸の使用は、動物の食餌中のタンパク質必要量が生育日数および体重の増加に伴って減少したとしても、これ以上に動物のエネルギー利用も向上させることができる。グアニジノ酢酸は、プレ肥育期、動物の体重が約27~60kgの場合でもエネルギー利用をサポートするために、投与することができる。
【0030】
本発明のグアニジノ酢酸の使用は、そのような物質に限定されないことが示されている。むしろ、そのような、すなわち遊離酸として、またはグアニジノ酢酸の塩として両方のグアニジノ酢酸を使用することができる。
【0031】
特に好ましくは、塩として、グアニジノ酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の群から選択される塩を使用することができる。特に非常に好ましくは、グアニジノ酢酸ナトリウム、グアニジノ酢酸カリウム、グアニジノ酢酸マグネシウムまたはグアニジノ酢酸カルシウムを使用することができる。
【0032】
しかしながら、遊離酸としてグアニジノ酢酸を含む組成物の使用が特に好ましく、また遊離酸のみ含みその塩を含まない組成物が特に好ましい。
【0033】
グアニジノ酢酸含有組成物は、好ましくは粉末または顆粒状形態の固体として使用されるが、パスティーユ(pastille)、カプセル、ペレットまたはゼリーなどの水溶液の形態で使用することもできる。本発明の目的のために、グアニジノ酢酸を含む組成物は、更なる添加物を含まない純粋な物質としてのグアニジノ酢酸の使用としても理解される。
【0034】
グアニジノ酢酸を含む組成物は、例えば一連の炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、メチル基供与体およびこれらの物質の誘導体およびそれらの混合物などの栄養活性物質をさらに含んでもよい。好ましくは、組成物は、アミノ酸、特にリジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリンを含む。さらに、組成物は、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ニコチン酸、ニコチン酸アミドおよびβ-カロチンなどのビタミンを含んでもよい。上記物質は、もちろん飼料に直接添加することもできる。
【0035】
好ましくは、グアニジノ酢酸は、少なくともひとつの結合剤を含有する顆粒の形態で使用される。適当な結合剤としては、特に、結合効果を有し、組成物の良好な造粒を可能にする栄養活性物質、例えばグリシン、デンプンまたは糖などが挙げられる。他の適当な結合剤は、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、エチルメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルデンプン、アルファー化または変成デンプン、糖シロップ、デキストリン、ゼラチン、プロピルビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、キサンタン、アラビアガム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよびグリセロールおよびそれらの混合物である。顆粒の流動性を向上させるために、流動助剤、特に親水性および/または疎水シリカおよび/またはシリケートベースの添加物および/または脂肪酸および/またはそれらの塩、例えばステアリン酸もしくはパルミチン酸およびそれらのナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩を顆粒に含めることは有利かもしれない。
【0036】
結合剤は、顆粒化グアニジノ酢酸組成物中に好ましくは0.05から15wt.%、特に0.1から1.5wt.%の量で存在する。適当な顆粒の粒子径は、好ましくは100と850μmの間であり、好ましくは100μm未満の粒子が10wt.%未満、また850μm超の粒子が10wt.%未満である。したがって、成形物のグアニジノ酢酸またはグアニジノ酢酸塩の含有量は、好ましくは、85から99.95wt.%、特に95から98.5wt.%である。流動剤および他の添加物は、5wt.%までの量で顆粒中に存在してもよい。
【0037】
好ましくは、グアニジノ酢酸は、少なくとも0.01wt.%、より好ましくは少なくとも0.02wt.%、さらに好ましくは少なくとも0.03wt.%および特に非常に好ましくは少なくとも0.04wt.%の量で使用される。使用されるグアニジノ酢酸の上限は、好ましくは0.20wt.%、より好ましくは多くて0.15wt.%、より好ましくは多くて0.12wt.%、特に好ましくは多くて0.10wt.%および特に非常に好ましくは多くて0.08wt.%(飼料の合計重量に対して)である。
【0038】
したがって、本発明の使用の好ましい実施形態によれば、グアニジノ酢酸は、0.01から0.20wt.%まで、好ましくは0.02から0.15wt.%までおよび特に好ましくは0.04から0.10wt.%までの量(いずれの場合も低エネルギー飼料の合計重量に対して)で使用されることを提供する。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、グアニジノ酢酸を含む組成物が、低エネルギー豚用飼料と混合された固形製剤として提供されるような使用が提供されてもよい。さらに好ましくは、組成物は、低エネルギー豚用飼料と混合された固形製剤として提供され、該組成物は、グアニジノ酢酸を0.01から0.20wt.%まで、好ましくは0.02から0.15wt.%までおよび特に好ましくは0.04から0.10wt.%までの量(飼料の合計重量に対して)で含む。
【0040】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、使用は、組成物が低エネルギー豚用飼料と混合された固形製剤として提供されるような使用であり、該組成物はグアニジノ酢酸を0.03から0.08wt.%の量(飼料の合計重量に対して)で含む。
【0041】
本発明によれば、本明細書に記載の範囲にしたがって、粗タンパク質およびエネルギー含有量のパラメーターを調整した低エネルギー飼料が使用される。この低エネルギー飼料は、基本の飼料およびさらに飼料添加物を含むことができる。低エネルギー飼料が基本の飼料としてa)少なくともひとつの植物性成分、特に穀物、穀粉、穀物ミール、穀物抽出ミール、穀物セモリナ、穀物ブランまたは穀物セモリナブランならびにb)植物または動物由来の油脂を含む場合には、特に良好な結果が達成できることが示されている。さらに好ましくは、基本の飼料が、下記のa1)からa6)の群、特に穀物、穀粉、穀物セモリナ、穀物ミール、穀物抽出ミール、穀物ブランまたは穀物セモリナブランおよび/またはオイルシード製品から選択される少なくともひとつの植物性成分およびb)動物または植物性脂肪および/または油を含む使用である:
a1)小麦、小麦粉、小麦セモリナ、小麦ミール、小麦ブラン、その小麦セモリナブラン、
a2)大麦、大麦粉、大麦ミール、その大麦ブラン、
a3)トウモロコシ、トウモロコシ粉、そのトウモロコシミール、
a4)大豆、大豆粉、大豆ミールまたはその大豆抽出ミール、
a5)菜種種子、菜種種子粉、菜種種子ミールまたはその菜種種子ミール抽出物、
および/または
a6)ヒマワリ、ヒマワリ粉、ヒマワリミールまたはそのヒマワリ抽出ミール。
【0042】
さらに飼料添加物をこの基本の飼料に添加することもできる。特に、低エネルギー飼料は、さらにミネラル、アミノ酸、ビタミン、微量元素またはそれらの混合物の群から飼料添加物を含むことができる。特に非常に好ましくは、この飼料添加物はリジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリンおよびビタミンならびにそれらの混合物の群から選択することもできる。さらに、クレアチンまたはメチオニン、ベタインおよびコリンなどのメチル基供与体を飼料に添加することもできる。
【0043】
これらの成分の多くは、特に、動物の必須栄養素の適切な供給を確保するために、混合物(プレミックス)の形態で飼料に添加される。
【0044】
好ましい低エネルギー飼料としては、
a)小麦、小麦ミール、大麦、大麦ミール、トウモロコシおよびトウモロコシミールからなる群より選択される少なくともひとつの炭水化物に富む成分;および
b)大豆、大豆ミール、大豆抽出ミール、菜種種子、菜種種子ミール、菜種種子抽出ミール、ヒマワリ、ヒマワリミールおよびヒマワリ抽出ミールなどのオイルシードの群から選択されるタンパク質に富む成分;ならびに
c)ブラン類、特に、小麦ブラン、小麦セモリナブラン、大麦ブランおよびトウモロコシブランの群から選択される任意の低エネルギー成分;ならびに
d)動物性または植物性油脂の群から選択される脂肪
が挙げられる。
【0045】
好ましい低エネルギー飼料中の炭水化物に富む成分の割合は、通常30と90wt.%の間、特に好ましくは40から80wt.%の範囲である。タンパク質に富む成分の割合は、好ましくは2と30wt.%の間、特に好ましくは4から15wt.%の範囲である。追加される脂肪の割合は、常に飼料の合計重量に対して、好ましくは0.5から10wt.%、特に好ましくは1から8wt.%の範囲内、特に非常に好ましくは3から6wt.%までである。飼料成分の重量割合は、合計飼料のエネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の範囲になるように秤量されなければならない。
【0046】
飼料中のエネルギー削減は、様々な方法で達成することができる。基本的には、高エネルギー飼料から始まり、飼料のひとつの成分をある程度まで低エネルギー成分に置き換えることができる。
【0047】
エネルギーの削減は、添加する動物性または植物性脂肪の割合を減らすことによりタンパク質に富む成分、炭水化物に富む成分および/または低エネルギー成分の重量割合をそれに応じて増加させることにより達成することができる。添加脂肪の含有量を減らした低エネルギー飼料の脂肪含有量は、好ましくは0.5から5wt.%の範囲、特に1と4.5wt.%の間、また特に好ましくは1と3.5wt.%の間である。
【0048】
エネルギー削減をタンパク質に富む成分の重量割合を減らすことにより達成する場合、炭水化物に富む成分および低エネルギー成分の重量割合は増加する。飼料中のタンパク質に富む成分を減らす場合、アミノ酸の供給不足を起こさずに飼料のエネルギー含有量の削減が達成されるように、好ましくはリジン、メチオニン、トレオニン、トリプトファンおよびバリンの群からのアミノ酸を飼料に添加する。かかる飼料のタンパク質に富む成分の割合は、2から15wt.%、好ましくは3から10wt.%である。追加で添加されるアミノ酸の割合は、好ましくは0.05から5wt.%の範囲、特に好ましくは0.1から2wt.%の範囲である。
【0049】
さらに、低エネルギー飼料では、特にブランなどの低エネルギー成分で置き換えられている炭水化物に富む成分の割合は低くてもよい。
【0050】
好ましいのはベジタリアン食餌であり、それは唯一の動物性成分として動物性脂肪のみ含まれていてもよいし、好ましくは純粋なベジタリアン食餌も給餌される。
【0051】
本発明はさらに、i)グアニジノ酢酸を含む組成物ならびにii)飼料の合計重量に対して粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%の範囲およびエネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の範囲の豚用低エネルギー飼料を含む豚用飼料に関する。
【0052】
飼料は、特に、1頭あたり生体重27kg以上、好ましくは1頭あたり60kg以上の豚の肥育中に投与されるために提供される(povided)。
【0053】
本発明によれば、下記成分:
a)14から18wt.%、特に16から17.5wt.%の量の粗タンパク質、
b)0.01から0.20wt.%、好ましくは0.04から0.10wt.%の量のグアニジノ酢酸、
を含み、ならびに代謝エネルギー含有量MEが11.4から12.9MJ ME/kg飼料、好ましくは12.4から12.8MJ ME/kg飼料の範囲の低エネルギー飼料が特に有利であることが判明した。
【0054】
グアニジノ酢酸は、例えば、グリシンとシアナミドを水溶液中で反応させることにより製造することができる。グアニジノ酢酸はCreamino(登録商標)(AlzChem Trostberg GmbH)の名前で市販もされている。
【0055】
本発明は、さらに、豚による低エネルギー飼料のエネルギー利用を向上させる方法であって、飼料の合計重量に対して粗タンパク含有量が10.0から20.0wt.%の範囲および1頭あたりの生体重27kg以上からの豚の肥育中エネルギー含有量が11.4から12.9MJ ME/kg飼料の豚用低エネルギー飼料ならびにさらにグアニジノ酢酸を含む組成物を豚に投与する方法に関する。
【0056】
本発明の方法の特徴の好ましい実施形態は、本明細書で先に述べられる通りである。
【0057】
下記実施例は、本発明を説明することを目的としている。
【実施例】
【0058】
実施例:
39日の給餌実験において、3つの異なる飼料コンセプトが初期体重65kgまでの肥育豚に給餌された。各飼料コンセプトに対して、16のペンに80頭の豚(1ペンあたり5頭)を試験した。ペンは同じ性別、すなわちメスまたは去勢していないオス豚で独占的に占められ、性別比は1:1であった。
【0059】
3つの異なる飼料群は、NRC(National Research Council of the National Academies, 2012: Nutrient requirements of Swine/ Committee on Nutrient Requirements of Swine, Board on Agriculture and Natural Resources, Division on Earth and Life Studies. - 11th rev. ed. p. cm.)の供給推奨に基づいて代謝エネルギー(ME)の含有量と他の生栄養素を最適化した。エネルギー必要量をカバーする13.0MJ MEを伴う陽性対照群を0.2MJ減らした12.8MJ MEを伴う陰性対照群と比較した。600g/tを補給したグアニジノ酢酸群では、12.7MJ MEのエネルギー含有量に調整した。
【0060】
肥育段階は39日続いた。40日目、すでに畜殺重量108kg超えに達した動物は畜殺された。このためデータはこの日に記録された。
【0061】
両給餌段階にわたり3つの処置の詳細な一日の配給量を表1に示す。一日の配給量は、小麦、小麦セモリナブラン、菜種種子抽出ミールおよび大豆抽出ミールに基づいた。動物性脂肪も適切な量を添加した。食餌は等窒素の、すなわち、粗タンパク質および可消化アミノ酸の供給は3つのすべての処置群とも同じであった。
【0062】
【0063】
3つの処置群のパフォーマンスを表2に示す。肥育段階の開始時におけるグアニジノ酢酸群の動物での63.9kgは、2つの対照群の動物よりも平均約1.8kg軽かった。これは、実験群に対して動物を無作為に割り当てたためである。データ収集の最終日では、動物は平均良好な96kgの体重であった。したがって、すべての群の動物は、ほぼ同じ平均最終体重に達した。肥育段階の開始時には、グアニジノ酢酸群の動物は2つの対照群よりも1.8kg前後軽かった。グアニジノ酢酸群の肥育段階で得られた1日の体重増加は約830g/dであり、したがって陽性対照群約800g/dおよび陰性対照群約800g/dの体重増加よりも有意に高かった。したがってグアニジノ酢酸の低エネルギー含有量の飼料への添加は、エネルギー不足を補うことができた。
【0064】
グアニジノ酢酸の効果は3つの処置群の異なる1日の飼料摂取において主に観察された。陽性対照群の動物およびGAA群の動物は、1日当たりおおよそ同じ量の飼料を絶え間なく食べた。対照的に、陰性対照群の飼料摂取は、概ね100g/日以上増加した。豚の飼料摂取は動物のエネルギー状態によって制御されるので、この観察は3つの処置群の飼料の異なるエネルギー含有量によるものである。陰性対照群のエネルギー含有量は、0.2MJ ME減少した。このエネルギー不足を補うために、動物は、結果として1日の飼料摂取を増加させた。1日の飼料摂取の観点では、GAA群の動物は陽性対照と同じレベルであった。このように、グアニジノ酢酸自体は有意なエネルギー含有量を持たないが、600g/tのグアニジノ酢酸の添加は、0.2MJ MEのエネルギー不足を補うことができる。
【0065】
肥育段階では、陽性対照に比較して6ポイントおよび陰性対照に比較して23ポイントのわずかに向上された飼料転換率(2.69kg飼料/kg体重増加)も観察された。この率は陰性対照群の動物がそのパフォーマンスレベルを維持するために飼料摂取を増加させることによりエネルギー不足を補なった一方、グアニジノ酢酸群の動物は少ない飼料でさえも向上されたパフォーマンスを達成できたことを重ねて示す。グアニジノ酢酸群の動物の飼料摂取は陽性対照の飼料摂取に相当し;飼料摂取における増加は、この実施例においてグアニジノ酢酸の投与の結果として観察されなかった。
【0066】
また動物のエネルギー利用は、グアニジノ酢酸のほんのわずかな量の投与により向上した。グアニジノ酢酸群の動物が必要とする肥育段階中の1kg増加あたりのエネルギーは、2.1MJ ME(陽性対照)および4.3MJ ME(陰性対照)少なかった。低エネルギー飼料をグアニジノ酢酸と組み合わせて使用した場合、動物のエネルギー利用は、陽性対照の飼料転換よりも向上されることが分かった。この実施例では、飼料転換は約2.2%向上したのみだが、エネルギー利用は約5.8%向上した。
【0067】
結果を表2にまとめた。
【0068】
【0069】
飼料転換は、動物の1キログラムの体重増加をもたらすのに消費される飼料の量である。エネルギー利用は、増加体重1キログラムあたりのエネルギー摂取である。
【0070】
したがって、肥育豚の飼料に600g/tのグアニジノ酢酸を添加することは0.3MJ ME/kg前後のエネルギー不足を補うには十分であることを給餌実験は証明することができた。グアニジノ酢酸を供給された動物は、エネルギー要求をカバーしている陽性対照と比較して同等の、いくつかの場合さらに向上されたパフォーマンスが達成され、それらの飼料摂取は変わらなかった。なかでも飼料摂取は動物のエネルギー状態によって制御がされる。このことは、陰性対照動物において観察された。陰性対照動物は陽性対照に対して同様の体重増加が達成されたが、そのためには1日の飼料摂取100g以上増加しなければならなかった。
【0071】
動物は畜殺体重が約108kgに達し食餌が維持された場合、40日から74日までに畜殺された。グアニジノ酢酸の投与が約0.3MJ ME/kgの飼料におけるエネルギー不足を完全に補ったことも本明細書に示す。畜殺までの平均肥育日数は同じに保持された。