(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241122BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H02M7/48 L
H02M1/08 C
(21)【出願番号】P 2024508888
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013476
(87)【国際公開番号】W WO2023181166
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一真
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103185(JP,A)
【文献】特開2004-40470(JP,A)
【文献】国際公開第2020/002666(WO,A1)
【文献】特開2011-35983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0076752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ接続されたパワー半導体素子を有し、スイッチを介して直流電源と接続された電力変換回路と、
前記電力変換回路の電源ラインと接地ラインとの間に接続された平滑用コンデンサと、
複数のチャージポンプコンデンサを有するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路により生成された電力を利用して、前記パワー半導体素子を駆動する駆動回路と、
前記平滑用コンデンサの電圧を検出する電圧検出回路と、
制御回路と、
を備え、
前記チャージポンプ回路は、前記複数のチャージポンプコンデンサのうち少なくとも1つのチャージポンプコンデンサを前記電源ラインと前記接地ラインとに交互に接続させる動作を実行可能であり、
前記制御回路は、
前記スイッチが開状態になった後に、前記少なくとも1つのチャージポンプコンデンサが前記電源ラインと前記接地ラインとに交互に接続される放電動作を前記チャージポンプ回路に実行させ、
前記平滑用コンデンサの電圧が閾値電圧以下になった場合、又は、前記放電動作が開始されてからの経過時間が閾値時間を超えた場合、前記チャージポンプ回路の前記放電動作を停止させるように構成されている電力変換装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、反転型のレベルシフト回路を有しており、
前記レベルシフト回路は、前記チャージポンプ回路の出力段と前記接地ラインとの間に直列に接続されたスイッチング素子及びプルアップ抵抗を有しており、
前記パワー半導体素子が遮断状態にある場合には、前記スイッチング素子が導通状態となる請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記経過時間が前記閾値時間を超えても前記平滑用コンデンサの電圧が前記閾値電圧以下にならない場合、前記スイッチが故障していると判定する請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記放電動作が開始される前の前記平滑用コンデンサの電圧と、前記チャージポンプ回路及び前記駆動回路において消費される負荷電流と、前記閾値電圧と、に基づいて、前記閾値時間を算出する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電圧検出回路は、前記制御回路と前記平滑用コンデンサとの間に直列に接続された抵抗器を有している請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平滑用コンデンサを有する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電電動機駆動装置が記載されている。この発電電動機駆動装置は、発電電動機、キャパシタ、ドライバ、昇圧器及びコントローラを有している。コントローラは、指示が入力されると放電制御を行う。放電制御において、コントローラは、昇圧器及びドライバを作動させ、発電電動機を負荷として、キャパシタに蓄電された電力を放電させる制御を行う。キャパシタの端子間電圧がしきい値に達すると、コントローラは、昇圧器のスイッチング素子を継続してオンにして、キャパシタを含む閉回路を形成する。これにより、キャパシタに蓄電された電力が放電され、キャパシタの端子間電圧が零レベル近くの電圧値に達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発電電動機駆動装置では、昇圧器のインバータ回路の駆動により、キャパシタの電荷が放電される。このため、キャパシタの電荷を放電する際には、インバータ回路を構成する複数の半導体素子と、発電電動機の負荷とがいずれも正常状態である必要がある。したがって、これらの半導体素子及び発電電動機のいずれか1つでも異常状態になると、キャパシタの電荷を放電できなくなってしまうという課題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、平滑用コンデンサの残留電荷をより確実に放電できる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力変換装置は、ブリッジ接続されたパワー半導体素子を有し、スイッチを介して直流電源と接続された電力変換回路と、前記電力変換回路の電源ラインと接地ラインとの間に接続された平滑用コンデンサと、複数のチャージポンプコンデンサを有するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路により生成された電力を利用して、前記パワー半導体素子を駆動する駆動回路と、前記平滑用コンデンサの電圧を検出する電圧検出回路と、制御回路と、を備え、前記チャージポンプ回路は、前記複数のチャージポンプコンデンサのうち少なくとも1つのチャージポンプコンデンサを前記電源ラインと前記接地ラインとに交互に接続させる動作を実行可能であり、前記制御回路は、前記スイッチが開状態になった後に、前記少なくとも1つのチャージポンプコンデンサが前記電源ラインと前記接地ラインとに交互に接続される放電動作を前記チャージポンプ回路に実行させ、前記平滑用コンデンサの電圧が閾値電圧以下になった場合、又は、前記放電動作が開始されてからの経過時間が閾値時間を超えた場合、前記チャージポンプ回路の前記放電動作を停止させるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、平滑用コンデンサの残留電荷をより確実に放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置における放電動作を説明する図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置における放電処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1に係る電力変換装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。本実施の形態では、車両向けの機電一体型発電電動機に用いられる電力変換装置14を例に挙げて説明する。
【0010】
図1に示すように、電力変換装置14は、電力変換回路7、チャージポンプ回路8、駆動回路6、制御回路10及び電圧検出回路11を備えている。電力変換装置14は、発電電動機12を動作させるように構成されている。発電電動機12は、自動車用補機となる機電一体型発電電動機の回転機部分である。
【0011】
電力変換回路7は、電源ライン1a及び第1スイッチ3を介して第1直流電源1に接続されている。第1直流電源1は、電力変換装置14の外部に設けられている。第1スイッチ3は、電源ライン1aに設けられている。第1スイッチ3は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)13の指令に基づき開閉動作を行う。第1スイッチ3が閉状態になると、第1直流電源1から電源ライン1aを介して電力変換回路7に直流電力が供給される。第1スイッチ3が開状態になると、第1直流電源1から電力変換回路7への電力供給が遮断される。
【0012】
電力変換回路7は、複数のパワー半導体素子9を有している。複数のパワー半導体素子9は、電源ライン1aと接地ライン1bとの間にブリッジ接続されている。電力変換回路7は、各パワー半導体素子9のスイッチング動作によって、必要な出力電力を生成するように構成されている。電動機駆動時には、電力変換回路7は、第1直流電源1から供給される直流電力を交流に変換する。変換された交流電力は、発電電動機12に供給される。発電時には、電力変換回路7は、発電電動機12から供給される交流電力を整流し、直流に変換する。
【0013】
駆動回路6は、制御回路10の指令に基づき、電力変換回路7の複数のパワー半導体素子9を駆動するように構成されている。駆動回路6は、発電電動機12の相毎に設けられている。
【0014】
電源ライン1aと接地ライン1bとの間には、平滑用コンデンサ5が接続されている。平滑用コンデンサ5は、電力変換時に発生するリップル電圧を平滑化する機能を有している。平滑用コンデンサ5には、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)が低く、かつ静電容量が比較的大きいコンデンサが用いられるのが好ましい。例えば、平滑用コンデンサ5には、電解コンデンサ等が用いられる。
【0015】
チャージポンプ回路8は、パワー半導体素子9の駆動用電力を生成するように構成されている。チャージポンプ回路8は、コンデンサ、ダイオード及びスイッチが組み合わされた構成を有している。チャージポンプ回路8では、スイッチが電源側と接地側とに交互に切り替えられることによって、下端電圧が持ち上げられ、出力電圧が昇圧される。チャージポンプ回路8により生成された駆動用電力は、駆動回路6を介して各パワー半導体素子9に供給される。
【0016】
チャージポンプ回路8は、ローサイドチャージポンプコンデンサ8b、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8a、チャージポンプ駆動回路8c、スイッチ8d及びスイッチ8eを有している。
【0017】
スイッチ8dは、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aに対応して設けられている。スイッチ8eは、ローサイドチャージポンプコンデンサ8bに対応して設けられている。各スイッチ8d、8eの動作は、チャージポンプ駆動回路8cによって切り替えられる。
【0018】
ローサイドチャージポンプコンデンサ8bは、スイッチ8eが電源側に切り替えられると、電源ライン1cに接続される。電源ライン1cには、第2直流電源2から制御電源生成回路15を介して電力が供給される。第2直流電源2と制御電源生成回路15との間には、第2スイッチ4が設けられている。第2スイッチ4は、ECU13の指令に基づき開閉動作を行う。第2スイッチ4が閉状態になると、第2直流電源2から制御電源生成回路15を介して制御回路10及び電源ライン1cに電力が供給される。第2スイッチ4が開状態になると、制御回路10及び電源ライン1cへの電力供給が遮断される。ローサイドチャージポンプコンデンサ8bは、スイッチ8eが接地側に切り替えられると、接地ライン1bに接続される。
【0019】
ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aは、スイッチ8dが電源側に切り替えられると、電源ライン1aに接続される。電源ライン1aには、第1直流電源1から電力が供給される。ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aは、スイッチ8dが接地側に切り替えられると、接地ライン1bに接続される。
【0020】
このように、チャージポンプ回路8は、ローサイドチャージポンプコンデンサ8b及びハイサイドチャージポンプコンデンサ8aのそれぞれを電源ラインと接地ラインとに交互に接続させる動作を実行可能である。ローサイドチャージポンプコンデンサ8b及びハイサイドチャージポンプコンデンサ8aのそれぞれが電源ラインと接地ラインとに交互に接続されることにより、出力電圧が昇圧される。
【0021】
ハイサイドでは、ローサイドで昇圧された出力電圧と、電源ライン1aの電圧と、が加算された電圧が出力される。ハイサイドの出力は、駆動回路6を介して、上アームのパワー半導体素子9に駆動用電力として供給される。ローサイドの出力は、駆動回路6を介して、下アームのパワー半導体素子9に駆動用電力として供給される。
【0022】
チャージポンプ動作に用いられるローサイドチャージポンプコンデンサ8b及びハイサイドチャージポンプコンデンサ8aでは、電荷を高速に出し入れできることが望ましい。このため、ローサイドチャージポンプコンデンサ8b及びハイサイドチャージポンプコンデンサ8aのそれぞれには、ESRが低くかつ等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)が低いコンデンサが用いられるのが好ましい。例えば、ローサイドチャージポンプコンデンサ8b及びハイサイドチャージポンプコンデンサ8aのそれぞれには、セラミックコンデンサ等が用いられる。
【0023】
第2直流電源2の変動による影響を緩和するため、チャージポンプ回路8を含む制御用の各回路には、制御電源生成回路15を介して電力が供給されるのが好ましい。制御電源生成回路15は、DC/DCコンバータ、リニアレギュレータなどにより構成されている。
【0024】
制御回路10は、電力変換装置14の各機能を制御するように構成されている。制御回路10は、主に、第2直流電源2から制御電源生成回路15を介して供給される電力により動作する。制御回路10は、例えばマイクロコンピュータICを中心として構成されている。制御回路10は、車両側に搭載される上位のECU13と通信する。制御回路10は、ECU13からの動作要求に応じて、チャージポンプ回路8の動作許可判定、駆動回路6の駆動制御回路6aへの指令などを実行する。
【0025】
チャージポンプ回路8及び駆動回路6は、ドライバICのような1つのICにより実現される機能であってもよい。チャージポンプ回路8及び駆動回路6のそれぞれの機能に対して、動作の許可及び非許可を行うことができる手段が備えられていればよい。
【0026】
ECU13は、主に、車両の各センサ情報を集約して統合制御する役割を持っている。ECU13は、第1スイッチ3及び第2スイッチ4の開閉動作を指令する機能を有している。車両が停止した際には、車両メンテナンス時の安全確保、及び暗電流によるバッテリ上がり防止のため、第1スイッチ3及び第2スイッチ4はいずれも開状態に制御されるのが好ましい。ECU13と制御回路10との間の通信では、第1スイッチ3及び第2スイッチ4のそれぞれの開閉状態を含む車両側の状態の情報、及び電力変換装置14の状態の情報が相互にやりとりされる。
【0027】
第1直流電源1及び第2直流電源2のそれぞれには、鉛蓄電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ等の各種蓄電デバイスを適用することができる。第1直流電源1及び第2直流電源2は、同電圧系である。あるいは、相対的に大きい電力を必要とする第1直流電源1の電圧は、第2直流電源2の電圧よりも高くなっている。第1直流電源1及び第2直流電源2の電圧が異なると、内部絶縁が必要になる場合がある。放電を必要とする平滑用コンデンサ5及びチャージポンプ回路8の接地系が同一であれば、種々の対応により内部絶縁を行うことができる。例えば、制御電源生成回路15において絶縁電源を使用したり、制御回路10等の弱電系と、チャージポンプ回路8及び駆動回路6等の強電系と、の間の絶縁処理を行ったりすることにより、内部絶縁を行うことができる。
【0028】
電圧検出回路11は、第1直流電源1の電源ライン1aの電圧を検出するように構成されている。電圧検出回路11は、センサの1つである。制御回路10が動作している間は、電圧検出回路11により平滑用コンデンサ5の残留電圧を監視することができる。
【0029】
図2は、本実施の形態に係る電力変換装置における放電動作を説明する図である。
図2のチャージポンプ回路8は、
図1のチャージポンプ回路8と同等の接続構成を有している。
図1において、ローサイドチャージポンプコンデンサ8bは、スイッチ8eによって電源ライン1cと接地ライン1bとに交互に接続される。電源ライン1cは、制御電源生成回路15を介して第2直流電源2に接続されている。ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aは、スイッチ8dによって電源ライン1aと接地ライン1bとに交互に接続される。電源ライン1aは、平滑用コンデンサ5に接続されている。これらに基づき、
図2のチャージポンプ回路8は、可変直流電源及び可変コンデンサを用いて模式的に表されている。
【0030】
駆動回路6は、プッシュプル回路6bと、反転型のレベルシフト回路6cと、を有している。プッシュプル回路6bは、コンプリメンタリのトランジスタ等が2段接続されることにより構成されている。プッシュプル回路6bは、パワー半導体素子9を駆動するために電流を増幅する。
図2に示す例では、パワー半導体素子9は、Nチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。また、プッシュプル回路6bでは、上段のトランジスタにNPN型のバイポーラトランジスタが適用されており、下段のトランジスタにPNP型のバイポーラトランジスタが適用されている。
【0031】
プッシュプル回路6bにおいて、上段のトランジスタのコレクタは、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aの出力段に接続されている。下段のトランジスタのコレクタは、パワー半導体素子9のソース端子に接続されている。上段及び下段の各トランジスタのエミッタ同士が接続された中点は、プッシュプル回路6bの出力段となる。プッシュプル回路6bの出力段は、ゲート抵抗を介して、パワー半導体素子9のゲート端子に接続されている。
【0032】
プッシュプル回路6bにHi信号が入力されると、上段のNPNトランジスタが導通し、プッシュ動作によってパワー半導体素子9にゲート電圧が印加される。これにより、パワー半導体素子9は導通状態となる。プッシュプル回路6bにLo信号が入力されると、下段のPNPトランジスタが導通し、プル動作によってパワー半導体素子9のゲート及びソースが同電位となる。これにより、パワー半導体素子9は遮断状態となる。
【0033】
レベルシフト回路6cは、プルアップ抵抗16及びスイッチング素子17を有している。プルアップ抵抗16は、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aの出力段に接続されている。スイッチング素子17は、プルアップ抵抗16と接地ライン1bとの間に直列に接続されている。レベルシフト回路6cの出力は、ベース抵抗を介してプッシュプル回路6bに入力される。
【0034】
スイッチング素子17が導通したときには、プッシュプル回路6bはプル動作となり、パワー半導体素子9は遮断状態となる。スイッチング素子17が遮断されたときには、プッシュプル回路6bはプッシュ動作となり、パワー半導体素子9は導通状態となる。
【0035】
したがって、電力変換回路7の動作が停止しているときには、スイッチング素子17が導通状態になり、プルアップ抵抗16が対地接続される。したがって、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aの電荷は、プルアップ抵抗16を介して消費される。
【0036】
さらに、スイッチ8dが電源側に切り替えられたとき、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aには、消費された分の電荷が平滑用コンデンサ5から供給される。第1スイッチ3は開状態であるため、平滑用コンデンサ5には、第1直流電源1から電荷は供給されない。このため、平滑用コンデンサ5は、充電されることなく放電し続ける。これにより、平滑用コンデンサ5のコンデンサ電圧が低下していく。このように、本実施の形態では、チャージポンプ回路8の放電動作によって、平滑用コンデンサ5の残留電荷が放電される。
【0037】
ここで、電圧検出回路11は、
図2に示すように、分圧するための抵抗器11aを有することが好ましい。抵抗器11aは、制御回路10と平滑用コンデンサ5との間に直列に接続される。これにより、放電処理の終了後に制御回路10の動作停止処理が実施された場合においても、平滑用コンデンサ5の電荷は、抵抗器11aを介して消費される。したがって、平滑用コンデンサ5の残留電荷をより完全に放電させることができる。
【0038】
本実施の形態では、パワー半導体素子9が停止している状態においてチャージポンプ回路8の動作を継続することにより、平滑用コンデンサ5の電荷を放電させることができる。このため、電力変換回路7又は発電電動機12が仮に異常状態であったとしても、平滑用コンデンサ5の電荷を放電させることができる。電力変換回路7又は発電電動機12に異常がある状態でパワー半導体素子9を動作させた場合、電源短絡などにより大電流が発生してしまうおそれがある。これに対し、本実施の形態では、電力変換回路7を動作させずに放電できるため、平滑用コンデンサ5の電荷をより安全に放電させることができる。
【0039】
次に、本実施の形態に係る電力変換装置における放電処理の手順について説明する。
図3は、本実施の形態に係る電力変換装置における放電処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示す放電処理は、電力変換装置14の動作が停止するときに、制御回路10によって実行される。
【0040】
まず、
図3のステップS101では、制御回路10は、上位のECU13からの通知に基づき、第1スイッチ3が開状態であるか否かを判定する。第1スイッチ3が開状態である場合には、ステップS102以降の処理が実行される。第1スイッチ3が閉状態である場合には、ステップS101の処理が繰り返される。なお、制御回路10は、ECU13からの通知を受けたときにステップS101の処理を開始するようにしてもよい。
【0041】
ステップS102では、制御回路10は、駆動制御回路6aに停止信号を出力する。これにより、駆動回路6による電力変換回路7の駆動が停止し、電力変換回路7が動作を停止する。なお、制御回路10は、ステップS102の処理に代えて、駆動回路6が停止状態になっていることを確認する処理を行ってもよい。
【0042】
次に、ステップS103では、制御回路10は、閾値時間Tthを算出する。ステップS103の処理の詳細については後述する。
【0043】
次に、ステップS104では、制御回路10は、チャージポンプ回路8の動作を許可する動作許可信号をチャージポンプ回路8に出力する。これにより、ステップS105では、チャージポンプ回路8の放電動作が実行される。平滑用コンデンサ5の残留電荷は、チャージポンプ回路8の放電動作によって徐々に放電される。すなわち、本実施の形態では、電力変換装置14の通常動作で使用される回路機能を利用して、平滑用コンデンサ5の放電が可能となる。本実施の形態では、放電回路を別途設ける必要がないため、電力変換装置14の構成を簡素化できる。
【0044】
次に、ステップS106では、制御回路10は、チャージポンプ回路8の放電動作が開始されてからの経過時間Tが閾値時間Tthを超えたか否かを判定する。経過時間Tが閾値時間Tthを超えた場合には、ステップS107の処理が実行される。経過時間Tが閾値時間Tth以下である場合には、チャージポンプ回路8の放電動作が継続される。
【0045】
ステップS107では、制御回路10は、平滑用コンデンサ5の電圧Vconが閾値電圧Vth以下であるか否かを判定する。電圧Vconは、電圧検出回路11により検出されている。閾値電圧Vthは、あらかじめ設定されている。電圧Vconが閾値電圧Vth以下である場合には、ステップS108の処理が実行される。一方、電圧Vconが閾値電圧Vthよりも大きい場合には、ステップS109の処理が実行される。
【0046】
ステップS108では、制御回路10は、チャージポンプ回路8の動作を停止させる動作停止信号をチャージポンプ回路8に出力する。これにより、チャージポンプ回路8の放電動作が停止する。
【0047】
ステップS109では、制御回路10は、第1スイッチ3が故障していると判定する。第1スイッチ3の故障には、第1スイッチ3に関わる制御系統の故障も含まれる。すなわち、経過時間Tが閾値時間Tthを超えても電圧Vconが閾値電圧Vth以下にならない場合、第1スイッチ3が固着しているか、又は、ECU13により第1スイッチ3を正常に制御できていないことが推定される。制御回路10は、第1スイッチ3が故障していると判定した場合、その旨の情報を例えばECU13に通知する。これにより、車両に設けられている警告灯などにより、第1スイッチ3の故障を使用者に報知することが可能となる。
【0048】
本実施の形態では、チャージポンプ回路8の動作を許可する前に、可変値である閾値時間Tthを算出しておくことが望ましい。平滑用コンデンサ5にかかる電圧は、第1直流電源1の状態及び電力変換回路7の動作によって変動する。このため、平滑用コンデンサ5の放電に要する時間には、ばらつきが生じやすい。
【0049】
したがって、制御回路10は、負荷電流又は負荷抵抗値をあらかじめ推定する。負荷電流は、チャージポンプ回路8と、発電電動機12における全相分の駆動回路6と、において消費される電流である。負荷抵抗値は、チャージポンプ回路8と、発電電動機12における全相分の駆動回路6と、の抵抗値である。ステップS103において、制御回路10は、放電処理を実行する直前の平滑用コンデンサ5の電圧Vconと、あらかじめ推定された負荷電流又は負荷抵抗値と、放電処理後の電圧Vconの目標値と、に基づき閾値時間Tthを算出する。放電処理後の電圧Vconの目標値は、例えば閾値電圧Vthである。これにより、放電処理開始時点の電圧Vconのばらつきの影響が考慮された適切な放電時間を設定することができる。したがって、平滑用コンデンサ5の残留電荷をより確実に放電させることができるとともに、第1スイッチ3又は第1スイッチ3に関わる制御系統の故障を精度良く検出することができる。
【0050】
図3に示す放電処理では、ステップS107及びS109の処理を省略することができる。この場合、制御回路10は、経過時間Tが閾値時間Tthを超えた場合には、電圧Vconに関わらず、動作停止信号をチャージポンプ回路8に出力する。また、
図3に示す放電処理では、ステップS106の処理を省略することができる。この場合、制御回路10は、電圧Vconが閾値電圧Vth以下になった場合には、経過時間Tに関わらず、動作停止信号をチャージポンプ回路8に出力する。すなわち、本実施の形態では、制御回路10は、電圧Vconが閾値電圧Vth以下になった場合、又は、経過時間Tが閾値時間Tthを超えた場合に、動作停止信号をチャージポンプ回路8に出力する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係る電力変換装置14は、電力変換回路7と、平滑用コンデンサ5と、チャージポンプ回路8と、駆動回路6と、電圧検出回路11と、制御回路10と、を備えている。電力変換回路7は、ブリッジ接続されたパワー半導体素子9を有している。電力変換回路7は、第1スイッチ3を介して第1直流電源1と接続されている。平滑用コンデンサ5は、電力変換回路7の電源ライン1aと、接地ライン1bと、の間に接続されている。チャージポンプ回路8は、複数のチャージポンプコンデンサを有している。駆動回路6は、チャージポンプ回路8により生成された電力を利用して、パワー半導体素子9を駆動する。電圧検出回路11は、平滑用コンデンサ5の電圧を検出する。チャージポンプ回路8は、複数のチャージポンプコンデンサのうち少なくとも1つのハイサイドチャージポンプコンデンサ8aを電源ライン1aと接地ライン1bとに交互に接続させる動作を実行可能である。
【0052】
制御回路10は、第1スイッチ3が開状態になった後に、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aが電源ライン1aと接地ライン1bとに交互に接続される放電動作をチャージポンプ回路8に実行させる。制御回路10は、平滑用コンデンサ5の電圧Vconが閾値電圧Vth以下になった場合、又は、放電動作が開始されてからの経過時間Tが閾値時間Tthを超えた場合、チャージポンプ回路8の放電動作を停止させるように構成されている。ここで、第1スイッチ3は、スイッチの一例である。第1直流電源1は、直流電源の一例である。ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aは、チャージポンプコンデンサの一例である。
【0053】
この構成によれば、電力変換回路7を動作させずに、チャージポンプ回路8の放電動作によって平滑用コンデンサ5の電荷を放電させることができる。これにより、電力変換回路7及び発電電動機12の状態に依存することなく、平滑用コンデンサ5の残留電荷をより確実に放電させることができる。また、専用の放電回路を別途設けることなく、電力変換装置14の通常動作で使用される回路を利用して放電できるため、電力変換装置14の構成を簡素化できる。
【0054】
本実施の形態に係る電力変換装置14では、駆動回路6は、反転型のレベルシフト回路6cを有している。レベルシフト回路6cは、スイッチング素子17及びプルアップ抵抗16を有している。スイッチング素子17及びプルアップ抵抗16は、チャージポンプ回路8の出力段と接地ライン1bとの間に直列に接続されている。パワー半導体素子9が遮断状態にある場合には、スイッチング素子17が導通状態となる。この構成によれば、電力変換回路7の動作が停止しているときには、導通状態のスイッチング素子17を介してプルアップ抵抗16が対地接続される。したがって、ハイサイドチャージポンプコンデンサ8aの電荷をプルアップ抵抗16によって消費することができる。
【0055】
本実施の形態に係る電力変換装置14では、制御回路10は、経過時間Tが閾値時間Tthを超えても平滑用コンデンサ5の電圧Vconが閾値電圧Vth以下にならない場合、第1スイッチ3が故障していると判定する。この構成によれば、第1スイッチ3の故障を使用者に報知することが可能となる。
【0056】
本実施の形態に係る電力変換装置14では、制御回路10は、放電動作が開始される前の平滑用コンデンサ5の電圧と、チャージポンプ回路8及び駆動回路6において消費される負荷電流と、閾値電圧Vthと、に基づいて、閾値時間Tthを算出する。この構成によれば、放電に必要な時間に応じて閾値時間Tthを適切に設定することができる。
【0057】
本実施の形態に係る電力変換装置14では、電圧検出回路11は、抵抗器11aを有している。抵抗器11aは、制御回路10と平滑用コンデンサ5との間に直列に接続されている。この構成によれば、放電処理の終了後に制御回路10の動作が停止しても、平滑用コンデンサ5の電荷は、抵抗器11aを介して消費される。したがって、平滑用コンデンサ5の残留電荷をより完全に放電させることができる。
【0058】
上記実施の形態では、車両向けの機電一体型発電電動機に用いられる電力変換装置を例に挙げたが、これには限られない。本開示は、平滑用コンデンサの放電処理を必要とする種々の電力変換装置に適用することができる。
【0059】
なお、本開示の実施の形態は全ての点で例示であって限定的なものではないと考えられるべきであり、本開示の技術的趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
1 第1直流電源、1a 電源ライン、1b 接地ライン、1c 電源ライン、2 第2直流電源、3 第1スイッチ、4 第2スイッチ、5 平滑用コンデンサ、6 駆動回路、6a 駆動制御回路、6b プッシュプル回路、6c レベルシフト回路、7 電力変換回路、8 チャージポンプ回路、8a ハイサイドチャージポンプコンデンサ、8b ローサイドチャージポンプコンデンサ、8c チャージポンプ駆動回路、8d スイッチ、8e スイッチ、9 パワー半導体素子、10 制御回路、11 電圧検出回路、11a 抵抗器、12 発電電動機、13 ECU、14 電力変換装置、15 制御電源生成回路、16 プルアップ抵抗、17 スイッチング素子、T 経過時間、Tth 閾値時間、Vcon 電圧、Vth 閾値電圧。