(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】移動体、搬送装置、部品実装システム及び移動体用の軸継手
(51)【国際特許分類】
F16D 3/04 20060101AFI20241122BHJP
F16D 3/08 20060101ALI20241122BHJP
F16D 3/10 20060101ALI20241122BHJP
H05K 13/00 20060101ALI20241122BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20241122BHJP
B60B 35/14 20060101ALI20241122BHJP
B60B 35/16 20060101ALI20241122BHJP
B62D 63/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
F16D3/04
F16D3/08
F16D3/10
H05K13/00 Y
B62B5/00 J
B60B35/14 Q
B60B35/16 Z
B62D63/06 Z
(21)【出願番号】P 2020197494
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大島 由美子
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-002504(JP,A)
【文献】特開2006-083895(JP,A)
【文献】特開2020-047801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00-9/10
H05K 3/30,13/00-13/08
B60B 21/00-31/06,35/00-37/12
B62K 1/00-6/12,7/00-8/00,16/00
B62B 1/00-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられた車軸と、
前記車軸の回りに回転可能に配置される駆動輪と、
モータと、
前記車軸に取り付けられ、前記モータの回転出力を減速して伝達する減速機と、
前記減速機の回転出力を前記駆動輪に伝達する軸継手と、を備え、
前記減速機は、前記車軸の中心軸線に沿う出力軸を有し、
前記軸継手は、前記中心軸線方向に見て環状となり、内部に前記減速機の少なくとも一部を収容する筒状部を有し、
前記筒状部は、
前記中心軸線方向の一方側に、前記出力軸の回転出力が入力される入力部を有し、
前記中心軸線方向の他方側に、前記駆動輪に回転出力を出力する出力部を有し、
前記入力部と前記出力部との間に、前記出力軸の回転中心軸線と前記駆動輪の回転中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する、
移動体。
【請求項2】
本体と、
前記本体に設けられた車軸と、
前記車軸の回りに回転可能に配置される駆動輪と、
前記車軸に取り付けられたモータと、
前記モータの回転出力を前記駆動輪に伝達する軸継手と、を備え、
前記モータは、前記車軸の中心軸線に沿う出力軸を有し、
前記軸継手は、前記中心軸線方向に見て環状となり、内部に前記モータの少なくとも一部を収容する筒状部を有し、
前記筒状部は、
前記中心軸線方向の一方側に、前記出力軸の回転出力が入力される入力部を有し、
前記中心軸線方向の他方側に、前記駆動輪に回転出力を出力する出力部を有し、
前記入力部と前記出力部との間に、前記出力軸の回転中心軸線と前記駆動輪の回転中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する、
移動体。
【請求項3】
前記吸収部は、前記出力軸と前記駆動輪のエンドプレイを更に吸収可能である
請求項1又は2に記載の移動体。
【請求項4】
連結体を更に備え、
前記連結体は、前記出力軸と前記入力部とを連結する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項5】
前記軸継手は、連結部を更に備え、
前記連結部は、前記入力部から一体に前記中心軸線に向けて延び、前記出力軸と連結される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項6】
前記車軸は、内部空間を有し、
前記減速機の一部又は全部が前記内部空間に位置する、
請求項
1に記載の移動体。
【請求項7】
前記車軸は、内部空間を有し、
前記モータの一部又は全部が前記内部空間に位置する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の移動体を用いた搬送装置であって、
前記本体が、被搬送物を保持する保持部を有する、
搬送装置。
【請求項9】
前記保持部は、前記被搬送物と連結することによって前記被搬送物を保持する被搬送物連結部を含む、
請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含み、
前記部品実装機は、
前記部品を供給するフィーダ台車と、
前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有し、
前記フィーダ台車が、請求項8又は9に記載の搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である、
部品実装システム。
【請求項11】
軸線方向に見て環状となり、内部に減速機又はモータの少なくとも一部を収容可能な筒状部を有し、
前記筒状部は、
前記軸線方向の一方側に、前記減速機又は前記モータの出力軸の回転出力が入力される入力部を有し、
前記軸線方向の他方側に、駆動輪に回転出力を出力する出力部を有し、
前記入力部と前記出力部との間に、前記入力部の中心軸線と前記出力部の中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する、
移動体用の軸継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、搬送装置、部品実装システム及び移動体用の軸継手に関する。より詳細には、本開示は、移動面の上を走行する移動体、搬送装置、部品実装システム及び移動体用の軸継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無人搬送車(搬送装置)が開示されている。この無人搬送車は、走行モータの駆動により回転する操舵輪を2つ備える。無人搬送車は、ステアリングモータで2つの操舵輪を回転させることによって、所望の移動方向に移動する。
【0003】
特許文献1には、走行モータとして、操舵輪内に保持されたホィールインモータが使用される点が開示されているが、ホィールインモータの回転出力をどのように操舵輪に伝達するかの詳細については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなモータ又は減速機の回転出力を駆動輪に伝達する場合、モータ又は減速機の出力軸の回転中心軸線と駆動輪の回転中心軸線との間の偏差及び偏角が問題となるため、一般的には、偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有するカップリングが使用される。
【0006】
しかしながら、従来のカップリングは、出力軸の回転中心軸線と駆動輪の回転中心軸線とが同一軸線上に並ぶように出力軸と駆動輪とを連結するため、モータ又は減速機と駆動輪の軸線方向に占める長さが長くなるものであった。
【0007】
本開示の目的は、減速機と駆動輪の軸線方向に占める長さが長くなるのを抑えやすい移動体、搬送装置、部品実装システム及び移動体用の軸継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の移動体は、本体と、車軸と、駆動輪と、モータと、減速機と、軸継手と、を備える。前記車軸は、前記本体に設けられる。前記駆動輪は、前記車軸の回りに回転可能に配置される。前記減速機は、前記車軸に取り付けられ、前記モータの回転出力を減速して伝達する。前記減速機は、前記車軸の中心軸線に沿う出力軸を有する。前記軸継手は、前記減速機の回転出力を前記駆動輪に伝達する。前記軸継手は、前記中心軸線方向に見て環状となり、内部に前記減速機の少なくとも一部を収容する筒状部を有する。前記筒状部は、前記中心軸線方向の一方側に、前記出力軸の回転出力が入力される入力部を有する。前記筒状部は、前記中心軸線方向の他方側に、前記駆動輪に回転出力を出力する出力部を有する。前記筒状部は、前記入力部と前記出力部との間に、前記出力軸の回転中心軸線と前記駆動輪の回転中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する。
【0009】
本開示の他の態様の移動体は、本体と、車軸と、駆動輪と、モータと、軸継手と、を備える。前記車軸は、前記本体に設けられる。前記駆動輪は、前記車軸の回りに回転可能に配置される。前記モータは、前記車軸に取り付けられる。前記モータは、前記車軸の中心軸線に沿う出力軸を有する。前記軸継手は、前記モータの回転出力を前記駆動輪に伝達する。前記軸継手は、前記中心軸線方向に見て環状となり、内部に前記モータの少なくとも一部を収容する筒状部を有する。前記筒状部は、前記中心軸線方向の一方側に、前記出力軸の回転出力が入力される入力部を有する。前記筒状部は、前記中心軸線方向の他方側に、前記駆動輪に回転出力を出力する出力部を有する。前記筒状部は、前記入力部と前記出力部との間に、前記出力軸の回転中心軸線と前記駆動輪の回転中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する。
【0010】
本開示の一態様の搬送装置は、前記移動体を用いた搬送装置であって、前記本体が、被搬送物を保持する保持部を有する。
【0011】
本開示の一態様の部品実装システムは、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機を含む。前記部品実装機は、前記部品を供給するフィーダ台車と、前記部品を前記基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体と、を有する。前記フィーダ台車が、前記搬送装置によって前記実装本体まで搬送される前記被搬送物である。
【0012】
本開示の一態様の移動体用の軸継手は、軸線方向に見て環状となり、内部に減速機の少なくとも一部を収容可能な筒状部を有する。前記筒状部は、前記軸線方向の一方側に、前記減速機の出力軸の回転出力が入力される入力部を有する。前記筒状部は、前記軸線方向の他方側に、駆動輪に回転出力を出力する出力部を有する。前記筒状部は、前記入力部と前記出力部との間に、前記入力部の中心軸線と前記出力部の中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の移動体、搬送装置、部品実装システム及び移動体用の軸継手にあっては、減速機と駆動輪の軸線方向に占める長さが長くなるのを抑えやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係る移動体を用いた搬送装置が被搬送物を搬送している状態の模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送装置を含む全体システムの概略的なブロック図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送装置と部品実装システムとを模式的に示した平面図である。
【
図4】
図4は、同上の移動体における駆動輪ユニットの断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の第2実施形態に係る移動体における駆動輪ユニットの断面図である。
【
図6】
図6Aは、同上の移動体に用いられる軸継手の分解斜視図である。
図6Bは、同上の軸継手の
図6Aとは別の角度から見た分解斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示の第3実施形態に係る移動体における駆動輪ユニットの断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第4実施形態に係る移動体における駆動輪ユニットの断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の第5実施形態に係る移動体における駆動輪ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
移動体1は、本体10と、車軸21と、駆動輪3と、モータ4(ドライブモータ4L,4R)と、減速機5と、軸継手6と、を備える。駆動輪3は、車軸21の回りに回転可能に配置される。減速機5は、車軸21に取り付けられ、モータ4の回転出力を減速して伝達する。減速機5は、車軸21の中心軸線210に沿う出力軸51を有する。軸継手6は、減速機5の回転出力を駆動輪3に伝達する。軸継手6は、中心軸線210方向に見て環状となり、内部に減速機5の少なくとも一部を収容する筒状部61を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の一方側に、出力軸51の回転出力が入力される入力部611を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の他方側に、駆動輪3に回転出力を出力する出力部612を有する。筒状部61は、入力部611と出力部612との間に、出力軸51の回転中心軸線510と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部610を有する。
【0017】
移動体1は、上述したような筒状部61を有する軸継手6を備えることにより、出力軸51の回転中心軸線510と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収することができる。更に、筒状部61の内部に減速機5の一部を収容することにより、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向に占める長さが長くなるのを抑えることができ、駆動輪ユニット2ひいては移動体1の小型化を図ることができる。
【0018】
以下では、本実施形態に係る移動体1が、
図1に示すように、被搬送物A1を搬送する搬送装置X1である場合を例に説明を行う。被搬送物A1は車輪A11を有しており、搬送装置X1と共に移動面B1の上を車輪A11で走行可能に構成されている。
【0019】
搬送装置X1は、例えば工場、物流センター(配送センターを含む)、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面B1は、その上を搬送装置X1が移動する面であり、搬送装置X1が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面B1となり、搬送装置X1が屋外を移動する場合は地面等が移動面B1となる。以下では、搬送装置X1が、部品実装システムW1(
図3)が設置された工場で使用される場合を例に説明を行う。部品実装システムW1については「(2.3)部品実装システム」において説明する。
【0020】
(2)第1実施形態
以下、第1実施形態に係る移動体1を用いた搬送装置X1、この搬送装置X1を備える部品実装システムW1(
図3参照)について、
図1~
図3を参照して詳しく説明する。
【0021】
(2.1)全体構成
本実施形態の搬送装置X1は、例えば、上位システム100(
図2参照)と互いに通信可能に構成されている。本開示における「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワークNT1若しくは中継器R1等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。本実施形態では、上位システム100と搬送装置X1とは、互いに双方向に通信可能であって、上位システム100から搬送装置X1への情報の送信、及び搬送装置X1から上位システム100への情報の送信の両方が可能である。
【0022】
上位システム100は、1又は複数台の搬送装置X1を統括的に制御するためのシステムであって、例えばサーバ装置で実現されている。上位システム100は、複数台の搬送装置X1の各々に対して指示を出すことで、複数台の搬送装置X1を間接的に制御する。具体的には、上位システム100が搬送装置X1に対して被搬送物A1の搬送指示を出すと、搬送装置X1は、搬送指示を受けて被搬送物A1を目標位置まで移動させる作業を自律的に行う。
【0023】
本実施形態では、上位システム100は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。そのため、1以上のプロセッサがメモリに記録されているプログラムを実行することにより、上位システム100の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。なお、本実施形態において上位システム100は必須の構成ではなく、適宜省略が可能であり、搬送装置X1が、直接又は操作端末を介して入力された搬送指示に基づいて被搬送物A1の搬送作業を自律的に行うものでもよい。
【0024】
(2.2)移動体
次に、搬送装置X1として用いられる移動体1について説明する。
【0025】
移動体1は、
図1に示すように、被搬送物A1を搬送するために無人で走行する。移動体1は、本体10と、少なくとも1つの駆動輪3と、複数の補助輪15と、を備えている。なお、本実施形態の移動体1は、一対の駆動輪3と、2対の補助輪15とを備えている。また、本実施形態の移動体1は、
図2に示すように、駆動輪3を駆動する駆動輪ユニット2と、制御装置11と、電源12と、通信部13と、検知部14と、を更に備えている。
【0026】
移動体1は、移動体1の左右方向に並ぶ複数(本実施形態では一対)の駆動輪3を有している。本開示でいう「左右方向」は、移動体1の長手方向であり、
図1におけるX軸方向である。移動体1の前後方向は、左右方向及び上下方向(移動面B1の法線方向)の各々と直交する方向、つまり移動体1の短手方向であり、
図1におけるY軸方向である。
【0027】
本実施形態の移動体1は搬送装置X1として用いられる。移動体1を用いた搬送装置X1では、本体10が、被搬送物A1を保持する保持部18(
図1参照)を備えている。本実施形態では、保持部18は、被搬送物A1と連結することによって被搬送物A1を保持する被搬送物連結部181を含んでいる。
【0028】
移動体1が被搬送物A1を搬送する場合、移動体1の前後方向における一面に被搬送物A1を連結する被搬送物連結部181が設けられている。移動体1は、当該移動体1に被搬送物連結部181を用いて連結された被搬送物A1と共に移動する。被搬送物連結部181は、例えば、引っ掛け又は嵌合等によって、移動面B1の上を走行する被搬送物A1の少なくとも一部を把持することで、被搬送物A1に脱着可能に連結されている。被搬送物連結部181は、例えば上下方向において自由度を有した状態で、本体10と被搬送物A1との間を脱着可能に連結する。ここで、被搬送物連結部181への被搬送物A1の連結は、移動体1又はその他の装置により自動で行われてもよいし、人により行われてもよい。また、被搬送物連結部181の形状及び移動体1(搬送装置X1)が備える被搬送物連結部181の数は、適宜変更可能である。なお、本実施形態では、移動体1が、被搬送物A1を保持する保持部18として被搬送物連結部181を備えているが、保持部は被搬送物連結部181に限定されない。移動体1は、保持部として、例えば電磁石を有し、電磁石が発生する磁力で被搬送物A1を吸着することによって、被搬送物A1を保持してもよい。
【0029】
ここで、移動体1が前後方向において移動する場合に、移動体1が進んでいく方向(進行方向、Y軸の正方向)を前方、その反対方向を後方という。移動体1が被搬送物A1を搬送する場合、移動体1が先頭になって被搬送物A1をけん引する走行形態と、被搬送物A1を先頭にして移動体1が被搬送物A1を押していく走行形態とがある。一般的に、被搬送物A1を後側から押す走行形態に比べて、被搬送物A1をけん引する走行形態の方が、走行状態が安定するので、移動体1は通常は被搬送物A1をけん引して移動する。移動体1が被搬送物A1をけん引して移動する場合、Y軸方向の正の向きが前側となり、X軸方向の正の向きが右側となる。ただし、これらの方向は一例であり、移動体1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0030】
移動体1の本体10は、
図2及び
図3に示すように、概ね直方体状に形成されている。本体10の下部には複数の駆動輪3と複数の補助輪15とが配置されている。本実施形態では、本体10に対して、一対の駆動輪3が左右方向に並ぶように配置されている。本体10には、一対の駆動輪3に対して、前側及び後側に、それぞれ一対の補助輪15が左右方向に並ぶように配置されている。
【0031】
本実施形態では、一対の駆動輪3は、本体10の左側に位置する左駆動輪3Lと、本体10の右側に位置する右駆動輪3Rと、を含む。本実施形態では、本体10に2つの駆動輪3が設けられており、移動体1は、2つの駆動輪3と4つの補助輪15とで移動面B1の上を走行している。
【0032】
本実施形態では、左駆動輪3L及び右駆動輪3Rの各々が操向輪を兼ねている。左駆動輪3Lを駆動する駆動機構と、左駆動輪3Lの向きを変える操向機構とが、左駆動輪ユニット2Lとして一体化されている。また、右駆動輪3Rを駆動する駆動機構と、右駆動輪3Rの向きを変える操向機構とが、右駆動輪ユニット2Rとして一体化されている。つまり、上記の駆動輪ユニット2は、左駆動輪ユニット2Lと右駆動輪ユニット2Rとを含んでいる。
【0033】
左駆動輪ユニット2Lは、左駆動輪3Lの回転と舵角とを制御する。左駆動輪ユニット2Lは、
図4に示すように、左駆動輪3Lを円周方向に回転させるドライブモータ4L(モータ4)と、左駆動輪3Lの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ23Lと、を備えている。ステアリングモータ23Lは、本体10に対して本体10の下面に沿うように設けられている平板状の固定板24の左端部に取り付けられている。ステアリングモータ23Lは、ドライブモータ4Lが固定されたブラケット22Lを、移動面B1と平行な平面内で回転させることによって、左駆動輪3Lの向きを変化させる。つまり、左駆動輪ユニット2L及び左駆動輪ユニット2Lに支持された左駆動輪3Lは固定板24等を介して本体10に固定されている。ここで、左駆動輪ユニット2Lは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ23Lが左駆動輪3Lを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ4Lが左駆動輪3Lを制御命令で指示された回転トルク又は回転速度で回転させる。
【0034】
左駆動輪3Lは、環状をした金属等からなるホイール31と、ホイール31の周囲に嵌められるゴム等からなるトレッド32と、を備えている。駆動輪3は、車軸21の回りに回転可能に配置される。
【0035】
ブラケット22Lには、車軸21L(21)が取り付けられる。すなわち、車軸21Lは、本体10に設けられる。車軸21Lは、ボルト等からなる締結具26によりブラケット22Lに固定される。車軸21Lは、内部空間211を有する筒状の部材により構成される。車軸21Lの中心軸線210は、移動体1が進行方向(すなわちY軸の正方向)に移動可能な状態において、X軸に沿う方向となる。
【0036】
車軸21Lの外周に軸受27の内輪が取り付けられ、軸受27の外輪にホイール31が取り付けられる。これにより、左駆動輪3Lは軸受27を介して車軸21Lの回りに回転可能となる。
【0037】
ドライブモータ4Lは、ブラケット22Lに取り付けられる。ドライブモータ4Lの一部は、内部空間211に位置している。更に言うと、ドライブモータ4Lの一部は、駆動輪3の内部の空間(駆動輪3内の回転中心軸線300方向における幅内に収まる空間)に位置している。なお、モータ4の全部が、内部空間211(駆動輪3の内部の空間)に位置してもよい。また、モータ4は、減速機5を介して車軸21に取り付けられてもよい。
【0038】
車軸21Lには、減速機5L(5)が取り付けられる。減速機5Lは、モータ4の回転出力を減速して伝達する。減速機5は、車軸21の中心軸線210に沿う出力軸51を有する。減速機5Lの一部は、内部空間211に位置している。更に言うと、減速機5Lの一部は、駆動輪3の内部の空間に位置している。なお、減速機5の全部が、内部空間211(駆動輪3の内部の空間)に位置してもよい。また、減速機5Lは、ブラケット22Lに取り付けられてもよい。
【0039】
左駆動輪ユニット2Lは、移動体1用の軸継手6L(6)を備える。軸継手6Lは、減速機5Lの回転出力を左駆動輪3Lに伝達する。軸継手6Lは、中心軸線210方向に見て環状となり、内部に減速機5Lの少なくとも一部を収容する筒状部61を有する。本実施形態では、筒状部61の内部に減速機5Lの一部が収容され、減速機5Lの残りの部分が車軸21Lの内部空間211に収容されている。
【0040】
筒状部61は、中心軸線210方向の一方側に、出力軸51の回転出力が入力される入力部611を有する。本実施形態では、左駆動輪ユニット2Lは、連結体25を更に備えている。連結体25は、出力軸51と入力部611とを連結する。連結体25は、ボルト等からなる締結具28により出力軸51に固定され、ボルト等からなる締結具29により入力部611に固定される。
【0041】
筒状部61は、中心軸線210方向の他方側に、駆動輪3に回転出力を出力する出力部612を有する。出力部612は、ボルト等からなる締結具(不図示)によりホイール31に固定される。
【0042】
筒状部61は、入力部611と出力部612との間に、吸収部610を有する。吸収部610は、出力軸51の回転中心軸線510と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収する。
【0043】
軸継手6の方式としては、筒状部61に例えば螺旋状のスリットが形成されたスリットタイプ、オルダムタイプ、ベローズタイプ、ディスクタイプ、セレーションタイプといった既知の方式をはじめとする様々な方式が採用可能であり、特に限定されない。移動体1用の軸継手6としては、バックラッシュが小さく高剛性の軸継手6が好ましく、本実施形態はスリットタイプであるが、ディスクタイプも好適に用いられる。
【0044】
右駆動輪ユニット2Rは、右駆動輪3Rの回転と舵角とを制御する。右駆動輪ユニット2Rは、
図2に示すように、右駆動輪3Rを円周方向に回転させるドライブモータ4Rと、右駆動輪3Rの向き(転動方向)を変化させるステアリングモータ23Rと、を備えている。ステアリングモータ23Rは、固定板24に取り付けられている。ステアリングモータ23Rは、ドライブモータ4Rが固定されたブラケット22Rを、移動面B1と平行な平面内で回転させることによって、右駆動輪3Rの向きを変化させる。つまり、右駆動輪ユニット2R及び右駆動輪ユニット2Rに支持された右駆動輪3Rは固定板24等を介して本体10に固定されている。ここで、右駆動輪ユニット2Rは、制御装置11からの制御命令を受けて、ステアリングモータ23Rが右駆動輪3Rを制御命令で指示された向きに変化させ、ドライブモータ4Rが右駆動輪3Rを制御命令で指示された回転トルク又は回転速度で回転させる。
【0045】
右駆動輪ユニット2Rは、左駆動輪ユニット2Lの左右を反転した対称形状をなし、左駆動輪ユニット2Lと同様の構成、すなわち、車軸21R、減速機5R、軸継手6R等の左駆動輪ユニット2Lが備える全ての構成と同様の構成を有する。
【0046】
移動体1の制御装置11は、右駆動輪ユニット2Rを制御して右駆動輪3Rを個別に駆動し、左駆動輪ユニット2Lを制御して左駆動輪3Lを個別に駆動する。すなわち、一対の駆動輪3(右駆動輪3R及び左駆動輪3L)の各々が個別に操舵可能であるので、一対の駆動輪3を個別に操舵することで、所望の方向に移動体1を移動させることができる。本実施形態では、一対の駆動輪3の各々が操向輪を兼ねており、駆動輪3とは別に操向輪を設ける場合に比べて、移動体1が備える車輪の数を減らすことができる。
【0047】
本実施形態では、本体10に2対の補助輪15が設けられている。2対の補助輪15は、移動体1の移動方向に追従して向きが変わる従動輪である。ここにおいて、2対の補助輪15は、車軸151(
図1参照)の向きが可変の自在車輪を含む。つまり、2対の補助輪15の各々は、例えば車輪を回転可能に支持する車軸151が、移動面B1と平行な平面内で360度の全周方向に移動可能な自在車輪(いわゆる自在キャスタ)である。なお、補助輪15として用いられる自在車輪は、車軸151の向きが可変の自在車輪に限定されず、車輪となる球体が任意の方向に回転可能なボールキャスタでもよい。また、補助輪15は任意の構成であり、設けられなくてもよい。
【0048】
次に、検知部14について説明する。
図1~
図3に示すように、検知部14は、本体10の挙動、及び本体10の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、本体10の挙動は、本体10が走行中/停止中を表す本体10の動作状態、本体10の移動距離及び走行時間、本体10の速度(及び速度変化)、本体10に作用する加速度、及び本体10の姿勢等を含む。
【0049】
検知部14は、例えば、本体10の周囲に存在する物体を検知するためのLiDAR(Light Detection and Ranging)141、移動面B1に設けられた誘導ラインを検知するための磁気センサ142等のセンサを含む。
【0050】
LiDAR141は本体10の周辺における物体の有無、物体が存在する場合はその位置を検知しており、検知結果を制御装置11に出力する。制御装置11は、LiDAR141が検知した物体の情報に基づいて、物体との衝突を回避することができる。
【0051】
なお、本体10の周囲に存在する物体を検知するための検知部14は、LiDAR141に限定されない。この種のセンサとしては、音波、光、及び電波のうちの少なくとも一つを利用して物体を検知するセンサでもよい。
【0052】
移動面B1に設けられた誘導ラインは、例えば永久磁石材料等の硬磁性材料を含むゴム等で形成されており、移動面B1の表面に移動体1の走行経路にしたがってライン状に形成されている。
【0053】
磁気センサ142は、移動面B1に設けられた誘導ラインを、磁気によって検出する。制御装置11は、磁気センサ142の検知結果に基づいて、誘導ラインの上を通るように、右駆動輪ユニット2R及び左駆動輪ユニット2Lを制御して、移動体1を移動させる。
【0054】
なお、移動面B1において、移動体1の走行経路の全体に誘導ラインが設けられていることは必須ではなく、走行経路の要所に、磁性材料で形成された誘導マーカが設けられていてもよく、移動体1は誘導マーカを辿りながら移動することができる。また、移動面B1に設けられた誘導ライン又は誘導マーカは磁気を利用して移動体1を誘導するものに限定されず、移動体1に設けられた画像センサで検出される誘導ライン又は誘導マーカ(例えば二次元バーコード等)を移動面B1に設けてもよい。また、誘導ライン又は誘導マーカは、移動体1に設けられた接触式のセンサで検出されるものでもよい。
【0055】
また、検知部14は、LiDAR141が検出した周辺の物体の位置情報と、所定エリアの電子的な地図情報とに基づいて、所定エリア内での搬送装置X1の存在位置を検出し、存在位置の検出結果を制御装置11に出力してもよい。また、検知部14が、複数の発信器から電波で送信されるビーコン信号を受信する受信機を含み、複数の発信器から送信されるビーコン信号に基づいて現在位置を検知し、現在位置の検知結果を制御装置11に出力してもよい。ここにおいて、複数の発信器は、搬送装置X1が移動する所定エリア内の複数箇所に配置されている。検知部14は、複数の発信器の位置と、受信機でのビーコン信号の受信電波強度とに基づいて、移動体1の現在位置を測定する。また、検知部14は、GPS(Global Positioning System)等の全地球測位システムを用いて移動体1の現在位置を検知するものでもよい。
【0056】
制御装置11は、例えば1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコンピュータを有している。言い換えれば、制御装置11は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されている。制御装置11は、例えば上位システム100からの搬送指示と検知部14の検知結果とに基づいて、各駆動輪ユニット2に制御命令を出力し、各駆動輪3の向き及び回転を制御することで、移動体1を所望の方向へ所望の速度で移動させる。
【0057】
電源12は、例えば、二次電池である。電源12は、左駆動輪ユニット2L及び右駆動輪ユニット2R、制御装置11、通信部13、及び検知部14等に直接又は間接的に電力を供給する。なお、搬送装置X1は、外部から電力が供給されてもよく、この場合、搬送装置X1は電源12を備えなくてもよい。
【0058】
通信部13は、上位システム100と通信可能に構成されている。本実施形態では、通信部13は、搬送装置X1が移動する所定エリア内に設置された複数の中継器R1のいずれかと、電波を媒体とする無線通信によって通信を行う。そのため、通信部13と上位システム100とは、少なくともネットワークNT1及び中継器R1を介して、間接的に通信を行うことになる。
【0059】
各中継器R1は、通信部13と上位システム100との間の通信を中継する機器(アクセスポイント)である。中継器R1は、ネットワークNT1を介して、上位システム100と通信する。本実施形態では一例として、中継器R1と通信部13との間の通信には、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、無線通信を採用する。また、ネットワークNT1は、インターネットに限らず、例えば、搬送装置X1が移動する所定エリア内又はこの所定エリアの運営会社内のローカルな通信ネットワークが適用されてもよい。
【0060】
(2.3)部品実装システム
本実施形態の搬送装置X1は、
図3に示すように、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機80を含む部品実装システムW1に用いられる。
【0061】
部品実装機80は、部品を供給するフィーダ台車81(
図3参照)と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体82と、を有する。
【0062】
フィーダ台車81は、工場内に設置された部品実装機80の実装本体82に対して部品を供給するために用いられる。ここでいう「部品実装機」は、例えば基板等の対象物に部品を実装する機械である。実装本体82は、部品を基板に実装する実装ヘッドを含んでいる。本実施形態では、搬送装置X1は、被搬送物A1としてのフィーダ台車81を、部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送する。これにより、部品実装システムW1を構築することが可能である。言い換えれば、部品実装システムW1は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機80を含むシステムである。そして、フィーダ台車81は、搬送装置X1によって実装本体82まで搬送される。本実施形態では、搬送装置X1は、例えば上位システム100からの指示を受けて、所定エリア内のある場所に置かれているフィーダ台車81を、実装本体82に接続される位置まで移動させる。搬送装置X1が、実装本体82の側面に設けられた凹所821内にフィーダ台車81を移動させると、実装本体82に設けられた第1コネクタに、フィーダ台車81の第2コネクタが接続されることによって、実装本体82とフィーダ台車81とが互いに接続された状態となる。そして、実装本体82とフィーダ台車81とが互いに接続された状態で、フィーダ台車81から実装本体82に対して部品を供給することが可能になる。
【0063】
ここで、搬送装置X1は、フィーダ台車81のうち部品を実装本体82に排出する部位と反対側の部位と連結可能であるのが好ましい。この場合、フィーダ台車81を部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送した際に、フィーダ台車81における部品を排出する部位が実装本体82の方を向くことになる。したがって、フィーダ台車81を部品実装機80の実装本体82の設置場所まで搬送した際に、上記の排出する部位が実装本体82に向くようにフィーダ台車81の向きを変える作業をしなくて済む。
【0064】
(2.4)動作
以下、本実施形態の移動体1を用いた搬送装置X1の動作の一例について図面を参照して説明する。
【0065】
本実施形態の搬送装置X1は、被搬送物連結部181によって連結された被搬送物A1と共に移動することによって、被搬送物A1を搬送する作業を行う。ここで、被搬送物連結部181は、上下方向において自由度を有した状態で被搬送物A1を連結している。
【0066】
移動体1は、上述したような筒状部61を有する軸継手6を備えることにより、出力軸51の回転中心軸線510と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収することができる。更に、筒状部61の内部に減速機5の一部を収容することにより、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向に占める長さが長くなるのを抑えることができ、駆動輪ユニット2ひいては移動体1の小型化を図ることができる。
【0067】
(3)第2実施形態
以下、第2実施形態に係る移動体1について、
図5及び
図6を参照して説明する。なお、第2実施形態に係る移動体1は、第1実施形態に係る移動体1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0068】
第1実施形態においては、移動体1は、出力軸51と入力部611とを連結する連結体25を軸継手6とは別体として備えていた。これに対して、第2実施形態においては、連結体25を備えない代わりに、軸継手6は、連結部62を一体に備えている。連結部62は、入力部611から一体に中心軸線210に向けて延び、出力軸51と連結される。これにより、移動体1を構成する部材の点数が削減される。
【0069】
(4)第3実施形態
以下、第3実施形態に係る移動体1について、
図7を参照して説明する。なお、第3実施形態に係る移動体1は、第2実施形態に係る移動体1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0070】
第2実施形態においては、移動体1は、軸継手6の出力部612と駆動輪3のホイール31とは別体として備えていた。これに対して、第3実施形態においては、軸継手6の出力部612と駆動輪3のホイール31とを一体(筒状部61とホイール31とを一体)として備えている。これにより、移動体1を構成する部材の点数が削減される。
【0071】
(5)第4実施形態
以下、第4実施形態に係る移動体1について、
図8を参照して説明する。なお、第4実施形態に係る移動体1は、第1実施形態に係る移動体1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0072】
第1実施形態においては、軸継手6は、車軸21の内部空間211には配置されていなかった。これに対して、第4実施形態においては、軸継手6の一部が、車軸21の内部空間211に位置している。これにより、軸継手6の車軸21の外部に位置する部分が小さくてすみ、見栄えが向上すると共に、車軸21の外部に露出する軸継手6に物体が衝突しにくくなる。
【0073】
(6)第5実施形態
以下、第5実施形態に係る移動体1について、
図9を参照して説明する。なお、第5実施形態に係る移動体1は、第1実施形態に係る移動体1と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0074】
第1実施形態においては、軸継手6は、車軸21の内部空間211には配置されていなかった。これに対して、第5実施形態においては、軸継手6の全部が、車軸21の内部空間211に位置している。これにより、軸継手6の車軸21の外部に位置する部分がなくなり、見栄えが向上すると共に、車軸21の外部に露出する軸継手6に物体が衝突することがない。
【0075】
(7)変形例
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0076】
上記の実施形態において、移動体1は減速機5を備えていたが、移動体1は減速機5を備えなくてもよい。この場合、モータ4は、車軸21の中心軸線210に沿う出力軸を有し、出力軸の回転出力は、軸継手6の入力部611に入力される。モータ4の少なくとも一部は軸継手6の筒状部61に収容される。軸継手6の吸収部610は、モータ4の出力軸の回転中心軸線と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能である。
【0077】
本開示における移動体1(搬送装置X1)は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における移動体1(搬送装置X1)としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field- Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0078】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の移動体1は、本体10と、車軸21と、駆動輪3と、モータ4と、減速機5と、軸継手6と、を備える。車軸21は、本体10に設けられる。駆動輪3は、車軸21の回りに回転可能に配置される。減速機5は、車軸21に取り付けられ、モータ4の回転出力を減速して伝達する。減速機5は、車軸21の中心軸線210に沿う出力軸51を有する。軸継手6は、減速機5の回転出力を駆動輪3に伝達する。軸継手6は、中心軸線210方向に見て環状となり、内部に減速機5の少なくとも一部を収容する筒状部61を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の一方側に、出力軸51の回転出力が入力される入力部611を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の他方側に、駆動輪3に回転出力を出力する出力部612を有する。筒状部61は、入力部611と出力部612との間に、出力軸51の回転中心軸線510と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部610を有する。
【0079】
第1の態様では、吸収部610により回転中心軸線510と回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能で、かつ、筒状部61の内部に減速機5の一部を収容することにより、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向の長さが抑えられる。
【0080】
第2の態様の移動体1は、本体10と、車軸21と、駆動輪3と、モータ4と、軸継手6と、を備える。車軸21は、本体10に設けられる。駆動輪3は、車軸21の回りに回転可能に配置される。モータ4は、車軸21に取り付けられる。モータ4は、車軸21の中心軸線210に沿う出力軸を有する。軸継手6は、モータ4の回転出力を駆動輪3に伝達する。軸継手6は、中心軸線210方向に見て環状となり、内部にモータ4の少なくとも一部を収容する筒状部61を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の一方側に、出力軸の回転出力が入力される入力部611を有する。筒状部61は、中心軸線210方向の他方側に、駆動輪3に回転出力を出力する出力部612を有する。筒状部61は、入力部611と出力部612との間に、出力軸の回転中心軸線と駆動輪3の回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部610を有する。
【0081】
第2の態様では、吸収部610により回転中心軸線と回転中心軸線300との間の偏差及び偏角を吸収可能で、かつ、筒状部61の内部にモータ4の一部を収容することにより、モータ4と駆動輪3の中心軸線210方向の長さが抑えられる。
【0082】
第3の態様は、第1又は第2のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、吸収部610は、出力軸と駆動輪3のエンドプレイを更に吸収可能である。
【0083】
第3の態様によれば、出力軸と駆動輪3のエンドプレイまで吸収可能となる。
【0084】
第4の態様は、第1~第3のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、移動体1は、連結体25を更に備える。連結体25は、出力軸51と入力部611とを連結する。
【0085】
第4の態様によれば、出力軸51と筒状部61とは、中心軸線210と直交する方向に離れているため、離れている出力軸51と筒状部61とを連結体25により連結することができる。
【0086】
第5の態様は、第1~第3のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、軸継手6は、連結部62を更に備える。連結部62は、入力部611から一体に中心軸線210に向けて延び、出力軸51と連結される。
【0087】
第5の態様によれば、出力軸51と筒状部61とは、中心軸線210と直交する方向に離れているため、離れている出力軸51と筒状部61とを、筒状部61と一体に形成された連結部62により連結することができると共に、部材点数が削減される。
【0088】
第6の態様は、第1~第5のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第6の態様では、車軸21は、内部空間211を有する。減速機5の一部又は全部が内部空間211に位置する。
【0089】
第6の態様によれば、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向に占める長さが長くなるのをより一層抑えられる。
【0090】
第7の態様は、第1~第6のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第7の態様では、車軸21は、内部空間211を有する。モータ4の一部又は全部が内部空間211に位置する。
【0091】
第7の態様によれば、減速機5と駆動輪3とモータ4の中心軸線210方向に占める長さが長くなるのをより一層抑えられる。
【0092】
第8の態様は、第1~第7のいずれかの態様の移動体1を用いた搬送装置X1である。本体10が、被搬送物A1を保持する保持部18を有する。
【0093】
第8の態様によれば、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向の長さが抑えられた搬送装置X1とすることができる。
【0094】
第9の態様は、第8の態様との組み合わせにより実現され得る。第9の態様では、保持部18は、被搬送物A1と連結することによって被搬送物A1を保持する被搬送物連結部181を含む。
【0095】
第9の態様によれば、被搬送物連結部181により被搬送物A1を連結して保持することができる。
【0096】
第10の態様の部品実装システムW1は、部品を基板に実装する少なくとも1つの部品実装機80を含む。部品実装機80は、部品を供給するフィーダ台車81と、部品を基板に実装する実装ヘッドを含む実装本体82と、を有する。フィーダ台車81が、第8の態様又は第9の態様の搬送装置X1によって実装本体82まで搬送される被搬送物A1である。
【0097】
第10の態様によれば、減速機5と駆動輪3の中心軸線210方向の長さが抑えられた部品実装システムW1とすることができる。
【0098】
第11の態様の移動体1用の軸継手6は、軸線方向に見て環状となり、内部に減速機5の少なくとも一部を収容可能な筒状部61を有する。筒状部61は、軸線方向の一方側に、減速機5の出力軸51の回転出力が入力される入力部611を有する。筒状部61は、軸線方向の他方側に、駆動輪3に回転出力を出力する出力部612を有する。筒状部61は、入力部611と出力部612との間に、入力部611の中心軸線と出力部612の中心軸線との間の偏差及び偏角を吸収可能な吸収部610を有する。
【0099】
第11の態様によれば、筒状部61の内部に減速機5の一部を収容することにより、入力部611に連結される減速機5と出力部612に連結される駆動輪3の中心軸線210方向の長さが抑えられる。
【符号の説明】
【0100】
A1 被搬送物
W1 部品実装システム
X1 搬送装置
1 移動体
10 本体
18 保持部
181 被搬送物連結部
21 車軸
210 中心軸線
211 内部空間
25 連結体
3 駆動輪
300 回転中心軸線
4 モータ
5 減速機
51 出力軸
510 回転中心軸線
6 軸継手
61 筒状部
610 吸収部
611 入力部
612 出力部
62 連結部
80 部品実装機
81 フィーダ台車
82 実装本体