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特許7591716スイッチ装置及びスイッチ装置の故障診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】スイッチ装置及びスイッチ装置の故障診断方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/64 20060101AFI20241122BHJP
   H01H 9/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01H13/64
H01H9/00 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021013505
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117030
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 佑己
(72)【発明者】
【氏名】藤川 幸則
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-117729(JP,U)
【文献】特開2006-269157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00-9/28
H01H 13/00-13/88
H01H 89/00-89/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び下面を有するボディと、
内部に空間を有し、前記ボディの上面を覆うように前記ボディに取り付けられたカバーと、
前記ボディに配設されるとともに、前記ボディを貫通して前記ボディの下面から下方に延びる第1~第3の端子と、
前記カバーを内外に貫通するとともに、押圧操作により前記カバーの内部を上下方向に変位可能に設けられた操作子と、
前記操作子の押圧操作に応じて、前記カバーの内部を前記上下方向に変位可能に設けられた第1の作動子及び第2の作動子と、
前記第1の作動子及び前記第2の作動子にそれぞれ取り付けられた第1の可動接点及び第2の可動接点と、
前記カバーの内部に配設された第1の固定接点及び第2の固定接点と、を少なくとも備え、
前記第1~第3の端子は、前記上下方向と交差する左右方向に互いに間隔をあけてこの順に配設されており、
前記第1の作動子は、前記第2の作動子と独立に変位可能に設けられており、
前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とは前記左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、
前記操作子を押圧操作して前記第1の作動子を下方に変位させることで、前記第1の可動接点と前記第1の固定接点との接触状態が変化して、前記第1の端子と前記第2の端子との間の導通状態が変化し、
前記操作子を押圧操作して前記第2の作動子を下方に変位させることで、前記第2の可動接点と前記第2の固定接点との接触状態が変化して、前記第2の端子と前記第3の端子との間の導通状態が変化することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置において、
前記操作子には第1の押圧部と第2の押圧部とが設けられており、
前記第1の作動子は、前記第1の可動接点を保持する第1の保持ブロックを有しており、前記第1の保持ブロックには第1の被押圧部が設けられており、
前記第2の作動子は、前記第2の可動接点を保持する第2の保持ブロックを有しており、前記第2の保持ブロックには第2の被押圧部が設けられており、
前記操作子を押圧操作した場合、
前記第1の押圧部と前記第1の被押圧部とが線接触するとともに、
前記第2の押圧部と前記第2の被押圧部とが線接触するように構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ装置において、
前記操作子が操作されていない状態で、
前記第1の押圧部及び前記第2の押圧部は、前記操作子の中心を通りかつ前記上下方向及び前記左右方向とそれぞれ交差する前後方向に延びる仮想面に関して左右対称に配置されており、
前記第1の被押圧部及び前記第2の被押圧部は、前記仮想面に関して左右対称に配置されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ装置において、
前記第1の押圧部は、前記第1の被押圧部に対向するとともに、下方にかつ前記仮想面から離れるように突出する凸状の第1の曲面を有しており、
前記第2の押圧部は、前記第2の被押圧部に対向するとともに、下方にかつ前記仮想面から離れるように突出する凸状の第2の曲面を有しており、
前記操作子を押圧操作した場合、
前記第1の曲面と前記第1の被押圧部とが前記前後方向に沿って線接触するとともに、
前記第2の曲面と前記第2の被押圧部とが前記前後方向に沿って線接触するように構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスイッチ装置において、
前記第1の被押圧部は、前記第1の押圧部に対向するとともに、下り傾斜でかつ前記左右方向に沿って下辺が上辺よりも前記仮想面に近くなるように設けられた第1の傾斜面を有しており、
前記第2の被押圧部は、前記第2の押圧部に対向するとともに、下り傾斜でかつ前記左右方向に沿って下辺が上辺よりも前記仮想面に近くなるように設けられた第2の傾斜面を有しており、
前記操作子を押圧操作した場合、
前記第1の曲面と前記第1の傾斜面とが前記前後方向に沿って線接触するとともに、
前記第2の曲面と前記第2の傾斜面とが前記前後方向に沿って線接触するように構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のスイッチ装置において、
前記第1の曲面及び前記第2の曲面は、それぞれ同じ半径を有する円柱の表面の一部で近似され、
前記前後方向から見て、
前記第1の曲面を円周の一部として含む円の中心と前記第2の曲面を円周の一部として含む円の中心とは、前記仮想面上の略同じ位置にあることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項7】
上面及び下面を有するボディと、
内部に空間を有し、前記ボディの上面を覆うように前記ボディに取り付けられたカバーと、
前記ボディに配設されるとともに、前記ボディを貫通して前記ボディの下面から下方に延びる第1~第3の端子と、
前記カバーを内外に貫通するとともに、押圧操作により前記カバーの内部を上下方向に変位可能に設けられた操作子と、
前記操作子の押圧操作に応じて、前記カバーの内部を前記上下方向に変位可能に設けられた第1の作動子及び第2の作動子と、
前記第1の作動子及び前記第2の作動子にそれぞれ取り付けられた第1の可動接点及び第2の可動接点と、
前記カバーの内部に配設された第1の固定接点及び第2の固定接点と、を少なくとも備え、
前記第1~第3の端子は、前記上下方向と交差する左右方向に互いに間隔をあけてこの順に配設されており、
前記第1の作動子は、前記第2の作動子と独立に変位可能に設けられており、
前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とは前記左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、
前記操作子には第1の押圧部と第2の押圧部とが設けられており、
前記第1の作動子は、前記第1の可動接点を保持する第1の保持ブロックを有しており、前記第1の保持ブロックには第1の被押圧部が設けられており、
前記第2の作動子は、前記第2の可動接点を保持する第2の保持ブロックを有しており、前記第2の保持ブロックには第2の被押圧部が設けられており、
前記操作子が操作されていない状態で、
前記第1の押圧部及び前記第2の押圧部は、前記操作子の中心を通りかつ前記上下方向及び前記左右方向とそれぞれ交差する前後方向に延びる仮想面に関して左右対称に配置されており、
前記第1の被押圧部及び前記第2の被押圧部は、前記仮想面に関して左右対称に配置され、
前記第1の押圧部は、前記第1の被押圧部に対向するとともに、下方にかつ前記仮想面から離れるように突出する凸状の第1の曲面を有しており、
前記第2の押圧部は、前記第2の被押圧部に対向するとともに、下方にかつ前記仮想面から離れるように突出する凸状の第2の曲面を有しており、
前記操作子を押圧操作した場合、
前記第1の曲面と前記第1の被押圧部とが前記前後方向に沿って線接触するとともに、
前記第2の曲面と前記第2の被押圧部とが前記前後方向に沿って線接触し、
前記第1の曲面及び前記第2の曲面は、それぞれ同じ半径を有する円柱の表面の一部で近似され、
前記前後方向から見て、
前記第1の曲面を円周の一部として含む円の中心と前記第2の曲面を円周の一部として含む円の中心とは、前記仮想面上の略同じ位置にあることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項8】
上面及び下面を有するボディと、
内部に空間を有し、前記ボディの上面を覆うように前記ボディに取り付けられたカバーと、
前記ボディに配設されるとともに、前記ボディを貫通して前記ボディの下面から下方に延びる第1~第3の端子と、
前記カバーを内外に貫通するとともに、押圧操作により前記カバーの内部を上下方向に変位可能に設けられた操作子と、
前記操作子の押圧操作に応じて、前記カバーの内部を前記上下方向に変位可能に設けられた第1の作動子及び第2の作動子と、
前記第1の作動子及び前記第2の作動子にそれぞれ取り付けられた第1の可動接点及び第2の可動接点と、
前記カバーの内部に配設された第1の固定接点及び第2の固定接点と、を少なくとも備え、
前記第1~第3の端子は、前記上下方向と交差する左右方向に互いに間隔をあけてこの順に配設されており、
前記第1の作動子は、前記第2の作動子と独立に変位可能に設けられており、
前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とは前記左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、
前記第2の端子は共通端子であり、前記ボディの上面から前記カバーの内部に延びるとともに、前記ボディの上側で前記左右方向に延びるばね受け片を有しており、
前記ばね受け片は、前記左右方向に沿って一方の端部に第1の突起部を、他方の端部に第2の突起部をそれぞれ有しており、
前記第1の端子は、前記ボディの上面から前記カバーの内部に延びる第1の固定接点片を有しており、
前記第3の端子は、前記ボディの上面から前記カバーの内部に延びる第2の固定接点片を有しており、
下端が前記第1の突起部に接触するように位置決めされて前記カバーの内部に配設されるとともに、上端が前記第1の作動子に保持されて前記第1の可動接点と電気的に接続された第1の復帰ばねと、
下端が前記第2の突起部に接触するように位置決めされて前記カバーの内部に配設されるとともに、上端が前記第2の作動子に保持されて前記第2の可動接点と電気的に接続された第2の復帰ばねと、をさらに備え、
前記第1の復帰ばねと前記第2の復帰ばねとは前記左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、
前記第1の可動接点と前記第1の固定接点片とが接触することで、前記第1の端子と前記第2の端子との間に電路が形成され、
前記第2の可動接点と前記第2の固定接点片とが接触することで、前記第2の端子と前記第3の端子との間に電路が形成されるように構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のスイッチ装置において、
前記操作子が操作されていない状態で、
前記第1の可動接点及び前記第2の可動接点のうちの一方は、前記第1の固定接点片または前記第2の固定接点片のいずれかに接触するように構成され、
前記第1の可動接点及び前記第2の可動接点のうちの他方は、前記第1の固定接点片及び前記第2の固定接点片のいずれにも接触しないように構成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のスイッチ装置の故障診断方法であって、
前記操作子の押圧操作の前後で、前記第1の端子の電位と前記第3の端子の電位の少なくとも一方が変化しない場合は、
前記スイッチ装置の外部配線または前記スイッチ装置の内部で故障が発生していると判定することを特徴とするスイッチ装置の故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はスイッチ装置及びスイッチ装置の故障診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアや設備の扉の開閉検知用に、押釦式のスイッチ装置が広く用いられている。このようなスイッチ装置において、複数のスイッチを設け、これらを同期させて切り換えることで、スイッチ装置の冗長性を確保することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハウジングと、押圧操作を受け付ける押釦と、ハウジングの内部で互いに間隔をあけて並設された複数の固定接点と、固定接点と摺接する接点部を有する複数の可動接点と、押釦が所定位置まで押圧された場合に可動接点を駆動するスナップアクション機構とを備えたスイッチ装置が開示されている。
【0004】
このスイッチ装置では、押釦が所定位置まで押圧されると、スナップアクション機構に設けられた引っ張りばねの付勢力によって、複数の可動接点を瞬時に駆動することができるので、複数のスイッチを同期させて切り換える場合においても、切り換えの同期タイミングのばらつきを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/032814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来のスイッチ装置は、押釦の押圧操作及び押圧操作の解除によりにより複数のスイッチを動作させている。
【0007】
ところで、押釦を押圧操作する場合、外力等により押釦の押圧方向が設定された所定の方向からずれる場合がある。このようなことが起こると、スイッチのそれぞれの開閉タイミングが設定されたタイミングからずれる等の問題が生じ、スイッチ装置の設計余裕度が低減してしまうおそれがあった。
【0008】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数のスイッチ(接点)を内蔵し、操作子の押圧方向が所定の方向からずれた場合にも接点位置ずれを抑制でき、設計余裕度を確保可能なスイッチ装置及びその故障診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本開示に係るスイッチ装置は、上面及び下面を有するボディと、内部に空間を有し、前記ボディの上面を覆うように前記ボディに取り付けられたカバーと、前記ボディに配設されるとともに、前記ボディを貫通して前記ボディの下面から下方に延びる第1~第3の端子と、前記カバーを内外に貫通するとともに、押圧操作により前記カバーの内部を上下方向に変位可能に設けられた操作子と、前記操作子の押圧操作に応じて、前記カバーの内部を前記上下方向に変位可能に設けられた第1の作動子及び第2の作動子と、前記第1の作動子及び前記第2の作動子にそれぞれ取り付けられた第1の可動接点及び第2の可動接点と、前記カバーの内部に配設された第1の固定接点及び第2の固定接点と、を少なくとも備え、前記第1~第3の端子は、前記上下方向と交差する左右方向に互いに間隔をあけてこの順に配設されており、前記第1の作動子は、前記第2の作動子と独立に変位可能に設けられており、前記第1の固定接点と前記第2の固定接点とは前記左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、前記操作子を押圧操作して前記第1の作動子を下方に変位させることで、前記第1の可動接点と前記第1の固定接点との接触状態が変化して、前記第1の端子と前記第2の端子との間の導通状態が変化し、前記操作子を押圧操作して前記第2の作動子を下方に変位させることで、前記第2の可動接点と前記第2の固定接点との接触状態が変化して、前記第2の端子と前記第3の端子との間の導通状態が変化することを特徴とする。
【0010】
本開示に係るスイッチ装置の故障診断方法は、前記操作子の押圧操作の前後で、前記第1の端子の電位と前記第3の端子の電位の少なくとも一方が変化しない場合は、前記スイッチ装置の外部配線または前記スイッチ装置の内部で故障が発生していると判定することを特徴とする。ここで、スイッチ装置の内部故障とは、接点または復帰ばねの故障である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のスイッチ装置によれば、操作子の押圧方向が所定の方向からずれた場合でも、第1の可動接点や第2の可動接点の上下方向に沿った位置ずれを抑制することができ、スイッチ装置の設計余裕度を確保できる。本開示のスイッチ装置の故障診断方法によれば、操作子の押圧操作の前後で、第1の端子及び第3の端子の電位をそれぞれモニターすることで、スイッチ装置の外部配線またはスイッチ装置の内部故障を容易に診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るスイッチ装置の分解斜視図である。
図2】スイッチ装置の部分断面図である。
図3図2の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
図4】スイッチ装置の等価回路図である。
図5】押釦を押圧操作した場合の、スイッチ装置内部の電路形成状態及び第1及び第2の可動接点と第1及び第2の固定接点片との接触状態を示す図である。
図6】スイッチ装置が正常な場合の、押釦の押圧操作前後での各スイッチの開閉状態と出力電圧とを示す図である。
図7A】スイッチ装置の外部配線が断線した場合の出力電圧の一例を示す図である。
図7B】スイッチ装置の外部配線が短絡した場合の出力電圧の一例を示す図である。
図8A】第1のスイッチがON故障した場合の、押釦の押圧操作前後での各スイッチの開閉状態と出力電圧とを示す図である。
図8B】第2のスイッチがOFF故障した場合の、押釦の押圧操作前後でのスイッチの開閉状態と出力電圧とを示す図である。
図9】比較のための押釦の押圧操作状態と第1及び第2の可動接点との関係を示す模式図である。
図10】実施形態に係る押釦の押圧操作状態と第1及び第2の可動接点との関係を示す模式図である。
図11】スイッチ装置の動作特性を示す模式図である。
図12】押釦の操作量の余裕度を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0014】
(実施形態)
[スイッチ装置の構成]
図1は、本実施形態に係るスイッチ装置の分解斜視図を、図2は、スイッチ装置の部分断面図を、図3は、図2の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図を、図4は、スイッチ装置の等価回路図をそれぞれ示す。なお、説明をわかりやすくするために、図3における各部品の形状は、実際の形状よりも曲率等を強調して図示している。
【0015】
また、以降の説明において、押釦70の変位方向を上下方向と呼び、上下方向において、ボディ10に対してカバー20が設けられた側を上側あるいは上と呼び、その反対側、すなわち、ボディ10の外側に第1~第3の端子30,40,50が延びる側を下側あるいは下と呼ぶことがある。また、第1~第3の端子30,40,50の配列方向を左右方向と呼び、第1の端子30が設けられた側を左側あるいは左と呼び、その反対側、すなわち、第3の端子50が設けられた側を右側あるいは右と呼ぶことがある。また、上下方向及び左右方向のそれぞれと交差する方向を前後方向と呼ぶことがある。
【0016】
スイッチ装置200は、ボディ10とカバー20と第1~第3の端子30,40,50と第1及び第2の復帰ばね61,62と第1及び第2の作動子80,90と押釦(操作子)70とキャップ100とを有している。
【0017】
ボディ10は、上面及び下面を有する樹脂製の部材であり、上面には第1の復帰ばね61を支持する第1のばね支持部11と、第1の固定接点片34を保持するとともに、後で述べる第1の可動接点83aを上下方向に摺動可能にガイドする第1の接点保持部12が形成されている。また、ボディ10の上面には第2の復帰ばね62を支持する第2のばね支持部13と、第2の固定接点片54を保持するとともに、後で述べる第2の可動接点93aを上下方向に摺動可能にガイドする第2の接点保持部14が形成されている。
【0018】
第1のばね支持部11と第2のばね支持部13とは左右方向に間隔をあけて形成されている。また、第1の接点保持部12と第2の接点保持部14とは左右方向に間隔をあけて形成されている。
【0019】
カバー20は、有底筒状の樹脂製部材であり、ボディ10の上面を覆うようにボディ10に取り付けられている。カバー20の内部に第1及び第2の復帰ばね61,62や第1及び第2の作動子80,90や押釦70の一部等が収容されている。また、カバー20の上部には開口21が設けられており、この開口21を通じて押釦70がカバー20の内外を上下方向に変位可能に設けられている。
【0020】
第1~第3の端子30,40,50は、それぞれボディ10に配設されるとともに、ボディ10を貫通してボディ10の下面から下方に延びる板状の金属部材である。第1~第3の端子30,40,50は、左右方向にこの順で互いに間隔をあけて配設されている。つまり、左側に第1の端子30が位置し、中央に第2の端子40が位置し、右側に第3の端子50が位置している。
【0021】
また、第1~第3の端子30,40,50は、それぞれボディ10の下方に延びる部分に第1の貫通孔31,41,51と一対の係止片32,42,52と第2の貫通孔33,43,53とを有している。第1~第3の端子50は、例えば、リン青銅の板材の表面に銀めっきを施してなり、また、インサート成形によりボディ10と一体に配設されている。ただし、第1~第3の端子30,40,50の材質は特にこれに限定されず、例えば、アルミニウムの板材を用いてもよい。
【0022】
第1の貫通孔31,41,51は、第1~第3の端子30,40,50を、それぞれ厚さ方向に貫通して設けられており、上下方向に互いに対向する一対の係止片32,42,52が、第1の貫通孔31,41,51の内側にそれぞれ設けられている。このため、第1の貫通孔31,41,51は、平面視でバタフライ形状の外形を有している。
【0023】
係止片32は、根元から先端に向かうにつれて幅が狭くなるように係止片32が形成されている。また、係止片32,42,52のそれぞれの先端は、それ以外の部分よりも薄くなるように形成されている。
【0024】
第2の貫通孔33,43,53は、第1~第3の端子30,40,50をそれぞれの厚さ方向に貫通して設けられた略長方形の孔であり、前後方向から見て、第1の貫通孔31,41,51とベース10の下面との間にそれぞれ設けられている。また、第1の貫通孔31,41,51と第2の貫通孔33,43,53とは、それぞれ上下方向に所定の間隔をあけて互いに離間している。第1の貫通孔31,41,51及び第2の貫通孔33,43,53は、第1~第3の端子30,40,50を打ち抜き加工することで形成される。ただし、特にこの工法に限られず、他の工法を用いてもよい。第2の貫通孔33,43,53は、第1の貫通孔31,41,51に外部機器の機器側端子(図示せず)がそれぞれ挿通されたとき、第1~第3の端子30,40,50とベース10とのそれぞれの接続部に加わる応力を緩和するように構成された応力緩和部である。
【0025】
第2の端子40は、ボディ10の上面からカバー20の内部に延びるとともに、ボディ10の上側で左右方向に延びるばね受け片44を有している。ばね受け片44は、左右方向の一方の端部に第1の突起部44aを、他方の端部に第2の突起部44bをそれぞれ有している。第1の突起部44aは、第1のばね支持部11に保持されている。また、第1の突起部44aは、第1の復帰ばね61の下端部に接触しており、第1の復帰ばね61に電気的に接続されている。第1の突起部44aの右側に位置する第2の突起部44bは、第2のばね支持部13に保持されている。また、第2の突起部44bは、第2の復帰ばね62の下端部に接触しており、第2の復帰ばね62に電気的に接続されている。
【0026】
後で述べるように、第2の端子40は、図3に示す第1のスイッチ201と第2のスイッチ202の共通端子として機能する。
【0027】
第1の端子30は、ボディ10の内部に延びる第1の固定接点片(第1の固定接点)34を有している。前述したように、第1の固定接点片34は、ボディ10の上面からカバー20の内部を上方に延びており、第1の接点保持部12に保持されている。後で述べるように、押釦70の押圧操作により、第1の作動子80に取り付けられた第1の可動接点83aと第1の固定接点片34とが離間することで、第1の端子30と第2の端子40との間に形成されていた電路が遮断され、第1の端子30と第2の端子40との間が非導通状態となる。
【0028】
第3の端子50は、ボディ10の内部に延びる第2の固定接点片(第2の固定接点)54を有している。前述したように、第2の固定接点片54は、ボディ10の上面からカバー20の内部を上方に延びており、第2の接点保持部14に保持されている。後で述べるように、押釦70の押圧操作により、第2の作動子90に取り付けられた第2の可動接点93aと第2の固定接点片54とが接触することで、第2の端子40と第3の端子50との間に電路が形成され、第2の端子40と第3の端子50との間が導通状態となる。
【0029】
図1から明らかなように、前後方向から見て、第1の固定接点片34の平面形状は、第2の固定接点片54の平面形状と異なっている。具体的には、第1の固定接点片34は、左右方向の幅が上部で広くなっており、初期状態(状態1)から長さL1だけ下がったところから、幅が狭くなり始める(図4参照)。一方、第2の固定接点片54は、その上端が第1の固定接点片34の幅広の部分よりも下方に位置している。
【0030】
第1の復帰ばね61は、導電性金属からなるコイル状の部材であり、下端部が第1のばね支持部11に支持される一方、上端部が第1の作動子80に設けられた第1の保持ブロック81に保持されている。また、第1の復帰ばね61の下端部は、ばね受け片44の一部である第1の突起部44aに電気的に接続されており、上端部は、第1の作動子80に取り付けられた第1のばね当接部82に電気的に接続されている。
【0031】
第2の復帰ばね62は、導電性金属からなるコイル状の部材であり、下端部が第2のばね支持部13に支持される一方、上端部が第2の作動子90に設けられた第2の保持ブロック91に保持されている。また、第2の復帰ばね62の下端部は、ばね受け片44の一部である第2の突起部44bに電気的に接続されており、上端部は、第2の作動子90に取り付けられた第2のばね当接部92に電気的に接続されている。
【0032】
第1の作動子80は、樹脂製の第1の保持ブロック81と導電性金属からなる第1のばね当接部82及び第1の接触片83とを有している。第1の保持ブロック81は、第1のばね当接部82を保持するとともに、第1のばね当接部82と接触するように第1の復帰ばね61を保持している。第1の接触片83は、前後方向で互いに対向する一対の板状の部材である。第1の接触片83は、半環状の第1のばね当接部82の両端からそれぞれ左方向に延びて、左側に行くほど互いの間隔が狭まるように形成されている。第1の接触片83と第1のばね当接部82とは一体的に形成されている。また、第1の接触片83を構成する一対の板材の左端部には第1の可動接点83aがそれぞれ設けられている。第1の接触片83に設けられた第1の可動接点83aは、第1の固定接点片34と第1の接点保持部12とを前後方向で挟み込むように構成されている。つまり、第1の可動接点83aは、第1の保持ブロック81に保持されている。
【0033】
図3に示すように、第1の保持ブロック81の右上の角部は、斜めに切り欠かれた形状となっている。具体的には、第1の保持ブロック81の右上の角部には、下り傾斜の第1の傾斜面81bが設けられている。第1の傾斜面81bは、左右方向に沿って下辺が上辺よりも仮想面Sに近くなるように設けられている。ここで、「仮想面S」とは、押釦70の中心を通り前後方向に延びる仮想面(図3参照)である。また、後で述べるように、第1の保持ブロック81の右上の角部は、押釦70に設けられた第1の押圧部75aに押圧される第1の被押圧部81aとして機能する。
【0034】
第2の作動子90は、樹脂製の第2の保持ブロック91と導電性金属からなる第2のばね当接部92及び第2の接触片93とを有している。第2の保持ブロック91は、第2のばね当接部92を保持するとともに、第2のばね当接部92と接触するように第2の復帰ばね62を保持している。第2の接触片93は、前後方向で互いに対向する一対の板状の部材である。第2の接触片93は、半環状の第2のばね当接部92の両端からそれぞれ右方向に延びて、右側に行くほど互いの間隔が狭まるように形成されている。第2の接触片93と第2のばね当接部92とは一体的に形成されている。また、第2の接触片93を構成する一対の板材の右端部には第2の可動接点93aがそれぞれ設けられている。第2の接触片93に設けられた第2の可動接点93aは、第2の固定接点片54と第2の接点保持部14とを前後方向で挟み込むように構成されている。つまり、第2の可動接点93aは、第2の保持ブロック91に保持されている。
【0035】
図3に示すように、第2の保持ブロック91の左上の角部は、斜めに切り欠かれた形状となっている。具体的には、第2の保持ブロック91の左上の角部には、下り傾斜の第2の傾斜面91bが設けられている。第2の傾斜面91bは、左右方向に沿って下辺が上辺よりも前述の仮想面Sに近くなるように設けられている。また、後で述べるように、第2の保持ブロック91の左上の角部は、押釦70に設けられた第2の押圧部76aに押圧される第2の被押圧部91aとして機能する。なお、押釦70が操作されていない状態で、第1の被押圧部81aと第2の被押圧部91aとは、ボディ10の上面を基準として上下方向で同じ高さに位置している。
【0036】
押釦70は、樹脂製の部材であり、上下方向に延びる柱状の第1部分71と、第1部分71の上端に設けられた第2部分72と、第1部分71に接続され、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aの下側に設けられた第3部分73と、を有している。また、押釦70は、第1部分71の左右の両側面にそれぞれ設けられた第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aを有している。
【0037】
第3部分73は、第1部分71よりも左右方向の幅が狭くなっており、第1部分71と第3部分73との接続部分に、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aがそれぞれ設けられている。
【0038】
図3に示すように、第1の押圧部75aは、前述の第1の被押圧部81aに対向する第1の曲面75bを有している。第1の曲面75bは、下方に突出するとともに、左右方向に沿って仮想面Sから離れるように、この場合は仮想面Sの左側に突出する凸状の曲面である。また、第2の押圧部76aは、前述の第2の被押圧部91aに対向する第2の曲面76bを有している。第2の曲面76bは、下方に突出するとともに、左右方向に沿って仮想面Sから離れるように、この場合は仮想面Sの右側に突出する凸状の曲面である。
【0039】
図3に示すように、第1の曲面75b及び第2の曲面76bは、それぞれ同じ半径Rを有する円柱の表面の一部で近似される。前後方向から見て、第1の曲面75bを円周の一部として含む円の中心と第2の曲面76bを円周の一部として含む円の中心とは、仮想面S上の略同じ位置にある。
【0040】
なお、本願明細書において、「略等しい」または「略同じ」とは、スイッチ装置200に含まれる各構成部品の製造公差や部品間の組立公差を含んで等しいまたは同じという意味である。
【0041】
また、図3に示すように、押釦70が操作されていない状態で、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aは、仮想面Sに関して左右対称に配置されている。また、第1の被押圧部81a及び第2の被押圧部91aは、仮想面Sに関して左右対称に配置されている。
【0042】
押釦70が操作されていない状態で、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aは、第1の被押圧部81a及び第2の被押圧部91aにそれぞれ近接している。
【0043】
一方、押釦70を押圧操作した場合、第1の曲面75bと第1の傾斜面81bとが前後方向に沿って線接触するとともに、第2の曲面76bと第2の傾斜面91bとが前記前後方向に沿って線接触するように構成されている。ここで、線接触とは、例えば、円柱と平面とが当接した場合のように2つの物体が線で接触する状態を言う。なお、押釦70が操作されていない状態で、第1の曲面75bと第1の傾斜面81bとが前後方向に沿って線接触するとともに、第2の曲面76bと第2の傾斜面91bとが前後方向に沿って線接触するように構成されていてもよい。
【0044】
押釦70がさらに押圧操作されると、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aにそれぞれ押圧されて第1の保持ブロック81と第2の保持ブロック91がそれぞれ下方に変位する。このとき、第1の復帰ばね61と第2の復帰ばね62とは、上下方向に縮むように変形する。また、第1の保持ブロック81の変位に応じて、第1の可動接点83aが、第1の固定接点片34の表面を摺動しながら下方に変位する。第2の保持ブロック91の変位に応じて、第2の可動接点93aが、第2の固定接点片54の表面を摺動しながら下方に変位する。
【0045】
押釦70の押圧操作が解除されると、第1の復帰ばね61の復元力により、第1の保持ブロック81が上方に押し戻されて元の位置に復帰する。また、これに対応して、第1の可動接点83aも上方に変位して元の位置に復帰する。同様に、第2の復帰ばね62の復元力により、第2の保持ブロック91が上方に押し戻されて元の位置に復帰する。また、これに対応して、第2の可動接点93aも上方に変位して元の位置に復帰する。
【0046】
なお、第1の作動子80は、押釦70の押圧操作に対して、第2の作動子90と独立に変位可能に構成されている。本実施形態では、第1の接触片83が取り付けられた第1の保持ブロック81と、第2の接触片93が取り付けられた第2の保持ブロック91とが左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0047】
キャップ100は、弾性変形可能な絶縁材料、例えば、合成ゴム等からなる有底円筒状の部材であり、キャップ100の下端には、その半径方向外側に延びるフランジ101がキャップ100と一体に設けられている。また、キャップ100がカバー20に取り付け固定されている。また、キャップ100の上部には開口102(図2参照)が設けられており、押釦70の第2部分72は、キャップ100の開口102に挿通されて、キャップ100の外側に露出している。キャップ100は、押釦70の操作時に弾性変形するように構成されており、押釦70が挿通されたカバー20の開口21を取り囲んで、押釦70を機械的に保護するとともに、カバー20の開口21から内部に異物や水分等が進入するのを防止している。
【0048】
また、図3に示す等価回路としてのスイッチ装置200は、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202とが並列接続された3端子のスイッチであり、押釦70の押圧操作により、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202の導通状態がそれぞれ変化する。
【0049】
第1のスイッチ201と第2のスイッチ202の接続部は固定電位に接続された共通端子(以下、Com端子ともいう)である。通常、共通端子の電位はグランド電位に固定されている。また、第1のスイッチ201の一方の端子は、ノーマリークローズ端子(以下、NC端子ともいう)であり、押釦70が操作されていない状態で、Com端子とNC端子とは導通状態となっている。また、第2のスイッチ202の一方の端子は、ノーマリーオープン端子(以下、NO端子ともいう)であり、押釦70が操作されていない状態で、Com端子とNO端子とは非導通状態となっている。一方、押釦70が押圧操作されると、Com端子とNC端子とは非導通状態となり、Com端子とNO端子とは導通状態となる。
【0050】
図1に示す各構成要素との対応で言えば、第1の端子30が図3に示すNC端子に相当し、第2の端子40がCom端子に相当し、第3の端子50がNO端子に相当する。また、第2の端子40と、第1の復帰ばね61と、第1のばね当接部82と、第1の接触片83と、第1の可動接点83aと、第1の固定接点片34が設けられた第1の端子30と、押釦70とで、図3に示す第1のスイッチ201が構成される。また、第2の端子40と、第2の復帰ばね62と、第2のばね当接部92と、第2の接触片93と、第2の可動接点93aと、第2の固定接点片54が設けられた第3の端子50と、押釦70とで、図3に示す第2のスイッチ202が構成される。Com端子がグランド電位に固定されているため、第1の端子30の電位が第1のスイッチ201の出力電圧となり、第3の端子50の電位が第2のスイッチ202の出力電圧となる。
【0051】
[スイッチ装置の動作及びスイッチ装置の外部配線または内部故障の検出について]
図5は、押釦を押圧操作した場合の、スイッチ装置内部の電路形成状態及び第1及び第2の可動接点と第1及び第2の固定接点片との接触状態を示す。図6は、スイッチ装置が正常な場合の、押釦70の押圧操作前後での各スイッチの開閉状態と出力電圧とを示す。
【0052】
まず、押釦70が操作されていない初期状態(状態I)では、第1の可動接点83aが第1の固定接点片34の幅広の部分に接触しており、第1の端子30と第2の端子40との間に電路が形成されている。つまり、第1の端子30は第2の端子40と同電位となっている。一方、図1示すように、第2の固定接点片54の上端は、第1の固定接点片34の幅広の部分よりも下方に位置している。よって、状態Iでは、第2の固定接点片54は、第2の可動接点93aに接触していない。このため、第2の端子40と第3の端子50との間に電路は形成されず、第3の端子50の電位は第2の端子40の電位と異なっている。
【0053】
従って、図6の左下に示すように、第1のスイッチ201の出力電圧が、第2の端子40の電位であるグランド電位に相当するLow電位(以下、L電位という)であるのに対し、第2のスイッチ202の出力電圧は、L電位よりも高いHigh電位(以下、H電位という)となる。
【0054】
次に、押釦70が押圧操作されて、初期状態から下方に距離L1だけ変位する。本実施形態では、押釦70の変位量は、第1及び第2の可動接点83a,93aの変位量と同じであるため、第1及び第2の可動接点83a,93aもそれぞれ初期状態から下方に距離L1だけ変位する(状態II)。
【0055】
前述したように、第1及び第2の固定接点片34,54は、初期状態から下方に距離L1下がった位置で、それぞれ前後方向の幅が変化する。このため、第1の可動接点83aは、一部が第1の固定接点片34と接触した状態となる。同様に、第2の可動接点93aは、一部が第2の固定接点片54と接触した状態となる。つまり、第1の端子30と第2の端子40との間で、電路が遮断され始めるのに対し、第2の端子40と第3の端子50との間で、電路が形成され始める。
【0056】
さらに、押釦70が下方に変位すると、第1及び第2の可動接点83a,93aもそれぞれ初期状態から下方に距離L2(>L1)だけ変位する(状態III)。
【0057】
この時点で、第1の可動接点83aは、第1の固定接点片34と非接触状態となり、第2の可動接点93aは、第2の固定接点片54と接触した状態となる。押釦70を押圧して下限まで変位させると、第1及び第2の可動接点83a,93aもそれぞれ初期状態から下方に距離L3(>L2)だけ変位する(状態IV)。
【0058】
状態IVでは、状態IIIで形成された、あるいは遮断された電路が維持される。つまり、第1の可動接点83aと第1の固定接点片34とは非接触状態であり、第2の可動接点93aと第2の固定接点片54とは接触状態である。
【0059】
状態III、IVでは、図6の右下に示すように、第1のスイッチ201の出力電圧がH電位となるのに対し、第2のスイッチ202の出力電圧はL電位となる。
【0060】
このように、スイッチ装置200は、内部に設けられた第1のスイッチ201と第2のスイッチ202とが互いに異なるレベルの電圧を出力するとともに、押釦70の押圧操作の前後で、それぞれの出力電圧が変化するように構成されている。
【0061】
また、本実施形態のスイッチ装置200によれば、第1の端子30の電位と第3の端子50の電位とをそれぞれモニターすることで外部配線または内部(スイッチ装置200の接点または第1及び第2の復帰ばね61,62)の故障の有無を判定することができる。
【0062】
図7Aは、スイッチ装置の外部配線が断線した場合の出力電圧の一例を、図7Bは、スイッチ装置の外部配線が短絡した場合の出力電圧の一例をそれぞれ示す。
【0063】
図7Aに示すように、第1の端子30に接続される外部配線が破損して、第1のスイッチ201で断線が生じている場合、初期状態で、第1の端子30の電位がH電位となる。このため、スイッチ装置200が正常な場合(図6参照)の第1の端子30の電位と比較することで、断線の有無を判定することができる。
【0064】
また、図7Bに示すように、第2の端子40に接続される外部配線と第3の端子50が接続される外部配線が接触して、第2のスイッチ202で短絡が生じている場合、初期状態で、第3の端子50の電位が電位となる。このため、スイッチ装置200が正常な場合(図6参照)の第3の端子50の電位と比較することで、短絡の有無を判定することができる。
【0065】
また、図7A,7Bから明らかなように、故障が発生しているスイッチでは、押釦70の押圧操作の前後での出力電圧は変化しない。押釦70の押圧操作の前後で、第1のスイッチ201に接続される配線が故障している場合は第1の端子30の電位は変化しない。また、第2のスイッチ202に接続される配線が故障している場合は第3の端子50の電位は変化しない。
【0066】
図8Aは、第1のスイッチがON故障した場合の、押釦の押圧操作前後での各スイッチの開閉状態と出力電圧を、図8Bは、第2のスイッチ202がOFF故障した場合の、押釦の押圧操作前後での各スイッチの開閉状態と出力電圧をそれぞれ示す。
【0067】
図8Aに示すように、第1のスイッチ201の接点がON故障してしまった場合、初期状態で、第1及び第3の端子50の電位は、スイッチ装置200が正常な場合(図6参照)と同じである。一方、押釦70を押圧操作して、押釦70を図5に示す状態IIIや状態IVに示す位置まで変位させた場合、接点故障が起こっていない第2のスイッチ202では、図6に示すのと同様に、出力電圧がH電位からL電位に遷移する。一方、第1のスイッチ201の出力電圧はL電位のままである。つまり、押釦70の押圧操作の前後での第1の端子30の電位変化の有無により、第1のスイッチ201に何らかの異常が起こっていると判定することができる。また、第1の端子30の実際の電位をスイッチ装置200が正常な場合(図6参照)と比較することで、故障の種類、この場合は、第1のスイッチ201に接点故障が生じていると推定することができる。なお、図8Aに示す故障は、例えば、第1の可動接点83aと第1の固定接点片34とが溶着してしまったような場合に生じる。
【0068】
また、図8Bに示すように、第2のスイッチ202に絶縁性の異物が挟まったような場合も、初期状態で、第1及び第3の端子50の電位は、スイッチ装置200が正常な場合(図6参照)と同じである。一方、押釦70を押圧操作して、押釦70を図5に示す状態IIIや状態IVに示す位置まで変位させた場合、正常な状態の第1のスイッチ201では、図6に示すのと同様に、出力電圧がL電位からH電位に遷移する。一方、第2のスイッチ202の出力電圧はH電位のままである。
【0069】
このため、押釦70の押圧操作の前後での第3の端子50の電位変化の有無により、第2のスイッチ202に何らかの異常が起こっていると判定することができる。また、第3の端子50の実際の電位をスイッチ装置200が正常な場合(図6参照)と比較することで、故障の種類、この場合は、第2のスイッチ202に接点故障が生じていると推定することができる。なお、図8Bに示す故障は、例えば、第2の復帰ばね62と第2の端子40のばね受け片44との間に、絶縁物が挟まったような場合に生じる。
【0070】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るスイッチ装置200は、上面及び下面を有するボディ10と、内部に空間を有し、ボディ10の上面を覆うようにボディ10に取り付けられたカバー20と、ボディ10に配設されるとともに、ボディ10を貫通してボディ10の下面から下方に延びる第1~第3の端子30,40,50と、を備えている。
【0071】
スイッチ装置200は、カバー20を内外に貫通するとともに、押圧操作によりカバー20の内部を上下方向に変位可能に設けられた押釦(操作子)70と、押釦70の押圧操作に応じて、カバー20の内部を上下方向に変位可能に設けられた第1の作動子80及び第2の作動子90と、第1の作動子80及び第2の作動子90にそれぞれ取り付けられた第1の可動接点83a及び第2の可動接点93aと、カバー20の内部に配設された第1の固定接点片(第1の固定接点)34及び第2の固定接点片(第2の固定接点)54と、を備えている。第1の固定接点片34は第1の端子30の一部を、第2の固定接点片54は第3の端子50の一部をそれぞれなしている。
【0072】
第1~第3の端子30,40,50は、左右方向に互いに間隔をあけてこの順に配設されており、第1の固定接点片34と第2の固定接点片54とは左右方向に互いに間隔をあけて配設されている。また、第1の作動子80は、第2の作動子90と独立に変位可能に設けられている。
【0073】
また、スイッチ装置200は、押釦70を押圧操作した場合、押釦70と第1の作動子80とが線接触するとともに、押釦70と第2の作動子90とが線接触するように構成されている。
【0074】
さらに言うと、押釦70には、第1の押圧部75aと第2の押圧部76aとが設けられている。第1の作動子80は、第1の可動接点83aを保持する第1の保持ブロック81を有しており、第1の保持ブロック81には第1の被押圧部81aが設けられている。第2の作動子90は、第2の可動接点93aを保持する第2の保持ブロック91を有しており、第2の保持ブロック91には第2の被押圧部91aが設けられている。
【0075】
押釦70を押圧操作した場合、第1の押圧部75aと第1の被押圧部81aとが線接触するとともに、第2の押圧部76aと第2の被押圧部91aとが線接触するように構成されている。
【0076】
本実施形態のスイッチ装置200によれば、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202とを1つの押釦70の押圧操作で動作させることができる。また、押釦70の押圧方向が所定の方向からずれた場合でも、第1の可動接点83aや第2の可動接点93aの上下方向に沿った位置ずれを抑制することができる。このことにより、第1のスイッチ201または第2のスイッチ202の導通状態が変化するまでの押釦70の操作量のばらつきを低減でき、スイッチ装置200の設計余裕度を確保できる。このことについてさらに説明する。
【0077】
図9は、比較のための押釦の押圧操作状態と第1及び第2の可動接点との関係を示し、図10は、本実施形態に係る押釦の押圧操作状態と第1及び第2の可動接点との関係を示す。
【0078】
図9に示すスイッチ装置210は、押釦70が、第1部分71と第2部分72と第4部分74とを有している点で、図1~3に示す押釦70と異なる。第4部分74は、第1部分71の下端部に設けられ、前後方向と交差する平板状の部材である。
【0079】
押釦70が操作されていない状態で、第4部分74の下面は、第1の保持ブロック81の上面及び第2の保持ブロック91の上面にそれぞれ当接するか、または近接している。押釦70が押圧操作されると、第4部分74に押圧されて第1の保持ブロック81と第2の保持ブロック91がそれぞれ下方に変位する。つまり、押釦70を押圧操作した場合、第4部分74は、第1の作動子80に含まれる第1の保持ブロック81と面接触するとともに、第2の作動子90に含まれる第2の保持ブロック91と面接触するように構成されている。
【0080】
ところで、スイッチ装置210の押釦70を下方に押圧するにあたって、押圧方向が所定の方向からずれる場合がある。例えば、スイッチ装置210が取り付けられた機器(図示せず)において、押釦70を押圧する押圧機構(図示せず)の動作ばらつきにより、押釦70の押圧方向が所定の方向からずれる場合等である。また、押圧機構と押釦70との位置関係が、スイッチ装置210を取り付ける際の組立公差や機器使用時の振動等で初期の関係から変化する場合等も該当する。
【0081】
図9の左側に示すように、押釦70に対して下方に押圧する力だけでなく、右側から左側に押圧する力が重畳されると、押釦70は、所定の方向、この場合は仮想面Sに沿った方向から傾いて押圧される。さらに言うと、押釦70が下方に変位した場合、第4部分74は、その左側部分が右側部分よりも下方に位置するように傾きつつ下方に変位する。
【0082】
前述したように、第4部分74は、第1の保持ブロック81及び第2の保持ブロック91とそれぞれ面接触している。よって、第4部分74の傾きは、第1の保持ブロック81及び第2の保持ブロック91の位置ずれ、ひいては、第1の可動接点83aの位置及び第2の可動接点93aの上下方向での位置ずれに直接影響する。このため、図9の左側に示すように、第1の可動接点83aが設定位置にある場合でも、第2の可動接点93aは、設定位置より所定量だけ上方に位置してしまう。
【0083】
同様に、図9の右側に示すように、押釦70に対して下方に押圧する力だけでなく、左側から右側に押圧する力が重畳されると、押釦70が下方に変位した場合、第4部分74は、その右側部分が左側部分よりも下方に位置するように傾きつつ下方に変位する。このため、第2の可動接点93aが設定位置にある場合でも、第1の可動接点83aは、設定位置より所定量だけ上方に位置してしまう。
【0084】
押釦70を押圧操作した場合に、上下方向で、第1の可動接点83aに対する第2の可動接点93aの位置ずれ量が大きくなると、第1のスイッチ201や第2のスイッチ202の開閉タイミングが初期の設定からずれてしまう。また、このことにより、スイッチ装置210の設計余裕度が低下してしまう。
【0085】
一方、本実施形態によれば、押釦70を押圧操作した場合、第1の押圧部75aと第1の作動子80に設けられた第1の傾斜面81bとが線接触するとともに、第2の押圧部76aと第2の作動子90に設けられた第2の傾斜面91bとが線接触するように構成されている。よって、図10の左側に示すように、押釦70に対して下方に押圧する力だけでなく、右側から左側に押圧する力が重畳されると、押釦70は、第2部分72が仮想面Sの左側に変位するように、また、第3部分73が仮想面Sの右側に変位するように傾きつつ下方に変位する。
【0086】
しかし、この場合、第1の押圧部75aと第1の傾斜面81bとの接触線は、初期位置から右側に移動するものの、第1の押圧部75aが第1の傾斜面81bを押す力の方向は、仮想面Sと平行な方向からほとんど変化しない。同様に、第2の押圧部76aと第2の傾斜面91bとの接触線は、初期位置から右側に移動するものの、第2の押圧部76aが第2の傾斜面91bを押す力の方向は、仮想面Sと平行な方向からほとんど変化しない。また、第1の押圧部75aが第1の傾斜面81bを押す力の大きさもほとんど変化しない。
【0087】
同様に、図10の右側に示すように、押釦70に対して下方に押圧する力だけでなく、左側から右側に押圧する力が重畳されると、押釦70は、第2部分72が仮想面Sの右側に変位するように、また、第3部分73が仮想面Sの左側に変位するように傾きつつ下方に変位する。
【0088】
しかし、この場合、第1の押圧部75aと第1の傾斜面81bとの接触線は、初期位置から左側に移動するものの、第1の押圧部75aが第1の傾斜面81bを押す力の方向は、仮想面Sと平行な方向からほとんど変化しない。同様に、第2の押圧部76aと第2の傾斜面91bとの接触線は、初期位置から左側に移動するものの、第2の押圧部76aが第2の傾斜面91bを押す力の方向は、仮想面Sと平行な方向からほとんど変化しない。また、第2の押圧部76aが第2の傾斜面91bを押す力の大きさもほとんど変化しない。
【0089】
したがって、本実施形態によれば、押釦70を押圧操作した場合に、上下方向で、第1の可動接点83aに対する第2の可動接点93aの位置ずれ量は、図9に示す場合よりも小さくなる。このため、第1のスイッチ201や第2のスイッチ202の開閉タイミングも初期の設定から大きくずれることが無くなる。また、スイッチ装置200の設計余裕度を向上できる。このことについてさらに説明する。
【0090】
図11は、スイッチ装置の動作特性を模式的に示し、図12は、押釦の操作量の余裕度を模式的に示す。なお、説明の便宜上、図11において、カバー20と押釦70以外の構成部品の図示を省略している。また、図11において、スイッチ装置200が取り付けられる機器300を簡略化して図示している。
【0091】
図11の一番左に示す状態は、図5に示す状態Iに相当する。また、この場合、機器300に設けられたスイッチ取り付け穴301の中心(図11に示す基準位置)から押釦70の第2部分72の先端までの距離をF.P.としている。押釦70を下方に押圧して所定量変位させると、スイッチ装置200は、図5に示す状態IIに変化し、第2のスイッチ202が開状態から閉状態に遷移する。このときの押釦の変位量P.T.は、図5に示す変位量L1と同じである。また、この場合の基準位置から押釦70の第2部分72の先端までの距離をO.P.としている。押釦70を押圧して下限まで変位させると、スイッチ装置200は、図5に示す状態IVに変化し、第1のスイッチ201が完全に開状態に遷移する。この場合の基準位置から押釦70の第2部分72の先端までの距離をT.T.P.としている。また、距離O.P.と距離T.T.P.との差を距離O.T.としている。なお、距離F.P.と距離T.T.P.との差が、押釦70の移動量の最大値に略相当する。
【0092】
ここで、距離O.T.は、機器300に設けられた押釦70の押圧機構(図示せず)の動作マージンに関係している。例えば、押圧機構による押釦70の操作量にばらつきがあった場合、距離O.T.が小さいと、スイッチ装置200の状態変化を正しく検出できないおそれがある。言い換えると、スイッチ装置200の設計余裕度が低下してしまう。
【0093】
一方、図12に示すように、距離O.P.が何らかの要因でばらつくと、距離O.T.が実質的に小さくなってしまう。例えば、図9に示すスイッチ装置210を用いた場合、前述したように、距離O.P.のばらつきが大きくなる。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、距離O.P.のばらつきを低減でき、その結果、距離O.T.を大きく取ることができる。このことにより、スイッチ装置200の設計余裕度を向上させることができる。
【0095】
また、本実施形態のスイッチ装置200では、押釦70が操作されていない状態で、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aは、押釦70の中心を通りかつ前後方向に延びる仮想面Sに関して左右対称に配置されている。第1の被押圧部81a及び第2の被押圧部91aは、仮想面Sに関して左右対称に配置されている。
【0096】
このようにすることで、第1の押圧部75a及び第2の押圧部76aが、第1の被押圧部81a及び第2の被押圧部91aにそれぞれ接触した場合に、上下方向における第1の被押圧部81a及び第2の被押圧部91aの位置をそれぞれ同じ位置にすることができる。このことにより、押釦70の押圧方向が所定の方向からずれた場合でも、上下方向で、第1の可動接点83aに対する第2の可動接点93aの位置ずれ量を小さくできる。
【0097】
第1の押圧部75aは、第1の被押圧部81aに対向するとともに、下方にかつ仮想面Sから離れるように突出する凸状の第1の曲面75bを有しているのが好ましい。また、第2の押圧部76aは、第2の被押圧部91aに対向するとともに、下方にかつ仮想面Sから離れるように突出する凸状の第2の曲面76bを有しているのが好ましい。
【0098】
このようにすることで、押釦70を押圧操作した場合、第1の曲面75bと第1の被押圧部81aとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。また、第2の曲面76bと第2の被押圧部91aとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。
【0099】
第1の被押圧部81aは、第1の押圧部75aに対向するとともに、下り傾斜でかつ左右方向に沿って下辺が上辺よりも仮想面Sに近くなるように設けられた第1の傾斜面81bを有しているのが好ましい。また、第2の被押圧部91aは、第2の押圧部76aに対向するとともに、下り傾斜でかつ左右方向に沿って下辺が上辺よりも仮想面Sに近くなるように設けられた第2の傾斜面91bを有しているのが好ましい。
【0100】
このようにすることで、押釦70を押圧操作した場合、第1の曲面75bと第1の傾斜面81bとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。また、第2の曲面76bと第2の傾斜面91bとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。
【0101】
また、第1の曲面75b及び第2の曲面76bは、それぞれ同じ半径Rを有する円柱の表面の一部で近似されるのがより好ましい。前後方向から見て、第1の曲面75bを円周の一部として含む円の中心と第2の曲面76bを円周の一部として含む円の中心とは、仮想面S上の略同じ位置にあることがより好ましい。
【0102】
このようにすることで、押釦70を押圧操作した場合、第1の曲面75bと第1の傾斜面81bとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。また、第2の曲面76bと第2の傾斜面91bとを前後方向に沿って容易に線接触させることができる。また、押釦70を所定の方向に押圧操作した場合、第1の曲面75bと第1の傾斜面81bとの接触線と、第2の曲面76bと第2の傾斜面91bとの接触線とを、上下方向で略同じ位置に来るようにすることができる。このことにより、前述の距離O.P.のばらつきをより小さくでき、スイッチ装置200の設計余裕度をさらに高めることができる。
【0103】
また、スイッチ装置200は、押釦70を押圧操作して第1の作動子80を下方に変位させることで、第1の可動接点83aと第1の固定接点片34との接触状態が変化して、第1の端子30と第2の端子40との間の導通状態が変化するように構成されている。
【0104】
また、スイッチ装置200は、押釦70を押圧操作して第2の作動子90を下方に変位させることで、第2の可動接点93aと第2の固定接点片54との接触状態が変化して、第2の端子40と第3の端子50との間の導通状態が変化するように構成されている。
【0105】
また、本実施形態のスイッチ装置200によれば、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202との並列回路を3端子回路として実現でき、例えば、特許文献1に開示された従来のスイッチ装置に比べて、端子数を半減できる。また、それに伴い外部の配線数を低減できる。このことにより、小型化されたスイッチ装置200を実現できる。さらに、スイッチ装置200を別の設備に取り付ける際、取り付け作業を簡略化できるため、作業コストを低減できる。
【0106】
さらに、本実施形態のスイッチ装置200によれば、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202との出力電圧、特に押釦70の押圧操作の前後で出力電圧の変化をモニターすることで、スイッチ装置200の外部の配線故障やスイッチ装置200の内部故障の有無を簡便に検出することができる。このことにより、スイッチ装置200の信頼性や機能安全性を高められる。例えば、スイッチ装置200が、車両のドアの開閉検知用に用いられる場合、スイッチ装置200自体の故障の有無を検出できるため、実際にドアが開いているのか、スイッチ装置200が故障しているため、誤検知の可能性があるのかを確実に区別できる。
【0107】
スイッチ装置200の第2の端子40は共通端子であり、ボディ10の上面からカバー20の内部に延びるとともに、ボディ10の上側で左右方向に延びるばね受け片44を有している。ばね受け片44は、左右方向の一方の端部に第1の突起部44aを、他方の端部に第2の突起部44bをそれぞれ有している。第1の端子30は、ボディ10の上面からカバー20の内部に延びる第1の固定接点片34を有しており、第3の端子50は、ボディ10の上面からカバー20の内部に延びる第2の固定接点片54を有している。
【0108】
スイッチ装置200は、下端がばね受け片44の第1の突起部44aに接触するように位置決めされてカバー20の内部に配設されるとともに、上端が第1の作動子80に保持されて第1の可動接点83aと電気的に接続された第1の復帰ばね61を有している。また、スイッチ装置200は、下端がばね受け片44の第2の突起部44bに接触するように位置決めされてカバー20の内部に配設されるとともに、上端が第2の作動子90に保持されて第2の可動接点93aと電気的に接続された第2の復帰ばね62を備えている。
【0109】
第1の復帰ばね61と第2の復帰ばね62とは左右方向に互いに間隔をあけて配設されており、第1の可動接点83aと第1の固定接点片34とが接触することで、第1の端子30と第2の端子40との間に電路が形成され、第2の可動接点93aと第2の固定接点片54とが接触することで、第2の端子40と第3の端子50との間に電路が形成されるように構成される。
【0110】
スイッチ装置200をこのように構成することで、スイッチの一方に不具合が起こったとしても、他方を正常に動作させることができる。例えば、特許文献1に開示された従来のスイッチ装置では、2つのスイッチの接点は、それぞれ独立して形成されているが、スイッチの動作機構を含めて全体が一体成形により形成されている。このため、2つのスイッチを独立して動作させることができない。例えば、一方のスイッチで接点の固着不良が起こった場合に、他方のスイッチも動かなくなる。
【0111】
一方、本実施形態によれば、第1の可動接点83aに電気的に接続された第1の復帰ばね61と、第2の可動接点93aに電気的に接続された第2の復帰ばね62とが独立して設けられている。また、第1及び第2の復帰ばね61,62をそれぞれ保持する第1及び第2の作動子80,90がそれぞれ独立して変位可能に構成されている。
【0112】
このことにより、スイッチ装置200内部の接点故障を容易に検出できる。また、一方のスイッチで接点の固着不良が起こった場合にも、他方のスイッチが正常に動作し、スイッチ装置200としての機能を奏することができる。つまり、押釦70の押圧操作の前後で電位が変化した信号を出力できる。
【0113】
スイッチ装置200は、押釦70が操作されていない状態で、第1の可動接点83aが第1の固定接点片34に接触するように、また、第2の可動接点93aが第2の固定接点片54に接触しないように、それぞれ構成されている。
【0114】
スイッチ装置200をこのように構成することで、押釦70を押圧操作すると、第1のスイッチ201の出力電圧がL電位からH電位に、第2のスイッチ202の出力電圧がH電位からL電位にそれぞれ変化する。つまり、第1のスイッチ201と第2のスイッチ202とが互いに異なるレベルの電圧を出力するとともに、押釦70の押圧操作の前後で、それぞれの出力電圧が変化する。このことにより、スイッチ装置200の外部配線やスイッチ装置200の内部故障を簡便かつ確実に検出することができる。
【0115】
なお、図示しないが、押釦70を押圧操作すると、第1のスイッチ201の出力電圧がH電位からL電位に、第2のスイッチ202の出力電圧がL電位からH電位にそれぞれ変化するようにしてもよい。具体的には、第1の固定接点片34と第2の固定接点片54の平面形状を図1に示す形状と異ならせることで、上記の動作を実現できる。例えば、第1の固定接点片34において、左右方向の幅が上部で狭くなっており、初期状態から長さL1だけ下がったところから、幅が広くなり始めるように形成する。また、第2の固定接点片54において、左右方向の幅が上部で広くなっており、初期状態から長さL1だけ下がったところから、幅が狭くなり始めるように形成する。
【0116】
つまり、スイッチ装置200は、押釦70が操作されていない状態で、第1の可動接点83a及び第2の可動接点93aのうちの一方は、第1の固定接点片34または第2の固定接点片54のいずれかに接触するように構成され、第1の可動接点83a及び第2の可動接点93aのうちの他方は、第1の固定接点片34及び第2の固定接点片54のいずれにも接触しないように構成されている。
【0117】
この場合も、スイッチ装置200の外部配線やスイッチ装置200の内部故障を簡便かつ確実に検出することができることは言うまでもない。
【0118】
本実施形態に係るスイッチ装置200の故障診断方法は、押釦70の押圧操作の前後で、第1の端子30の電位及び第3の端子50の電位の少なくとも一方が変化しない場合は、スイッチ装置200の外部配線またはスイッチ装置200の内部で故障が発生していると判定する。
【0119】
本実施形態によれば、押釦70の押圧操作の前後で、第1の端子30及び第3の端子50の電位をそれぞれモニターすることで、スイッチ装置200の外部配線やスイッチ装置200の内部故障を容易に診断できる。
【0120】
(その他の実施形態)
本願明細書では、第1の曲面75b及び第2の曲面76bをそれぞれ同じ半径Rを有する円柱の表面の一部に近似した形状としたが、特にこれに限定されない。第1の曲面75b及び第2の曲面76bのそれぞれの形状を、断面視で同じ短径及び長径を有する楕円柱の表面の一部に近似した形状としてもよい。つまり、第1の曲面75b及び第2の曲面76bは、下方にかつ仮想面Sから離れるように突出する凸状の曲面であればよい。
【0121】
また、第1の傾斜面81b及び第2の傾斜面91bの形状も実施形態に示した形状に限定されない。例えば、第1の傾斜面81b及び第2の傾斜面91bが、上方にかつ左右方向に沿って仮想面Sに近づくように突出する凸状の曲面であってもよい。押釦70が操作されていない状態で、第1の被押圧部81aと第2の被押圧部91aとが、ボディ10の上面を基準として上下方向で同じ高さに位置していればよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本開示のスイッチ装置は、操作子の押圧方向が所定の方向からずれた場合にも接点位置ずれを抑制でき、設計余裕度を確保できるため、車両等の高い信頼性が要求される設備に組み込む上で有用である。
【符号の説明】
【0123】
10 ボディ
11 第1のばね支持部
12 第1の接点保持部
13 第2のばね支持部
14 第2の接点保持部
20 カバー
21 開口
30 第1の端子
31 第1の貫通孔
32 係止片
33 第2の貫通孔
34 第1の固定接点片(第1の固定接点)
40 第2の端子
41 第1の貫通孔
42 係止片
43 第2の貫通孔
44 ばね受け片
44a 第1の突起部
44b 第2の突起部
50 第3の端子
51 第1の貫通孔
52 係止片
53 第2の貫通孔
54 第2の固定接点片(第2の固定接点)
61 第1の復帰ばね
62 第2の復帰ばね
70 押釦(操作子)
71 第1部分
72 第2部分
73 第3部分
74 第4部分
75a 第1の押圧部
75b 第1の曲面
76a 第2の押圧部
76b 第2の曲面
80 第1の作動子
81 第1の保持ブロック
81a 第1の被押圧部
81b 第1の傾斜面
82 第1のばね当接部
83 第1の接触片
83a 第1の可動接点
90 第2の作動子
91 第2の保持ブロック
91a 第2の被押圧部
91b 第2の傾斜面
92 第2のばね当接部
93 第2の接触片
93a 第2の可動接点
100 キャップ
101 フランジ
102 開口
200,210 スイッチ装置
201 第1のスイッチ
202 第2のスイッチ
300 機器
301 スイッチ取り付け穴
S 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12