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特許7591724部品実装装置および部品実装基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】部品実装装置および部品実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241122BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K13/08 Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020108939
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006606
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】岩川 幸喜
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121721(JP,A)
【文献】特開2007-027302(JP,A)
【文献】特開平09-307300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識マークを有しない基板に部品を実装する部品実装装置であって、
前記部品を実装する前の前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、
少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度、および、個々の特徴点の前記認識座標と、対応する個々の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、
補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する、部品実装装置。
【請求項2】
前記認識座標が取得された前記特徴点が複数対ある場合、各対に関する前記認識座標と前記設計座標との差を平均化した値を用いて前記実装位置を補正する、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記実装位置を補正する際に、
前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、
算出した前記角度の平均値分、補正前の前記実装位置を前記座標平面の中心に対して回転させた位置を利用して、前記実装位置を補正する、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項4】
認識マークを有しない基板に部品を実装する部品実装装置であって、
前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、
少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、
補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装し、
前記実装位置を補正する際に、
前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、対応する少なくとも1対の前記基準点を前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分それぞれ回転させた少なくとも一対の補正点を算出し、
前記少なくとも一対の補正点の補正座標と、対応する前記少なくとも一対の前記特徴点の前記認識座標との差に関して、第1軸に沿った第1差の平均値を算出し、前記第1軸に交差する第2軸に沿った第2差の平均値を算出し、
補正前の前記実装位置を、前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分回転させるとともに、前記第1軸に沿って前記第1差の平均値分オフセットし、且つ前記第2軸に沿って前記第2差の平均値分オフセットした位置に基づいて、前記部品を前記基板に実装する部品実装装置。
【請求項5】
前記基板は円形である、請求項1から4のいずれか1つに記載の部品実装装置。
【請求項6】
前記基準点は、前記基板の外周に沿って8点設けられる、請求項5に記載の部品実装装置。
【請求項7】
前記基準点は、前記座標平面の中心を基準に8つの領域に分割した各分割領域に1つずつ設定され、
前記8つの分割領域のうち、相対する2つの前記分割領域に設定された2つの前記基準点に対応する前記特徴点を、前記特徴点の対とする、請求項6に記載の部品実装装置。
【請求項8】
前記基板の前記主面は格子状のパターンを含み、
前記主面上の前記特徴点は、前記格子状のパターンの格子点である、請求項1から7のいずれか1つに記載の部品実装装置。
【請求項9】
認識マークを有しない基板に部品を実装して部品実装基板を製造する方法であって、
前記部品を実装する前の前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、
少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度、および、個々の特徴点の前記認識座標と、対応する個々の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、
補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する、部品実装基板の製造方法。
【請求項10】
前記認識座標が取得された前記特徴点が複数対ある場合、各対に関する前記認識座標と前記設計座標との差を平均化した値を用いて前記実装位置を補正する、請求項9に記載の部品実装基板の製造方法。
【請求項11】
前記実装位置を補正する際に、
前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、
算出した前記角度の平均値分、補正前の前記実装位置を前記座標平面の中心に対して回転させた位置を利用して、前記実装位置を補正する、請求項9に記載の部品実装基板の製造方法。
【請求項12】
認識マークを有しない基板に部品を実装して部品実装基板を製造する方法であって、
前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、
少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、
補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装し、
前記実装位置を補正する際に、
前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、対応する少なくとも1対の前記基準点を前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分それぞれ回転させた少なくとも一対の補正点を算出し、
前記少なくとも一対の補正点の補正座標と、対応する前記少なくとも一対の前記特徴点の前記認識座標との差に関して、第1軸に沿った第1差の平均値を算出し、前記第1軸に交差する第2軸に沿った第2差の平均値を算出し、
補正前の前記実装位置を、前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分回転させるとともに、前記第1軸に沿って前記第1差の平均値分オフセットし、且つ前記第2軸に沿って前記第2差の平均値分オフセットした位置に基づいて、前記部品を前記基板に実装する、部品実装基板の製造方法。
【請求項13】
前記基板は円形である、請求項9から12のいずれか1つに記載の部品実装基板の製造方法。
【請求項14】
前記基準点は、前記基板の外周に沿って8点設けられる、請求項13に記載の部品実装基板の製造方法。
【請求項15】
前記基準点は、前記座標平面の中心を基準に8つの領域に分割した各分割領域に1つずつ設定され、
前記8つの分割領域のうち、相対する2つの前記分割領域に設定された2つの前記基準点に対応する前記特徴点を、前記特徴点の対とする、請求項14に記載の部品実装基板の製造方法。
【請求項16】
前記基板の前記主面は格子状のパターンを含み、
前記主面上の前記特徴点は、前記格子状のパターンの格子点である、請求項9から15のいずれか1つに記載の部品実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装装置および部品実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、認識マークを有する基板に対して部品を実装する部品実装装置がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-152400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、認識マークを有しない基板も存在しており、認識マークを有する基板に比べて基板の位置を正確に認識することが難しく、部品を実装する際の実装位置がずれやすい。認識マークを有しない基板であっても、部品をより正確な位置に実装することに関して改善の余地があるといえる。
【0005】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、認識マークを有しない基板に対して部品をより正確な位置に実装することができる部品実装基板の製造方法および部品実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の部品実装装置は、認識マークを有しない基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する。
【0007】
また、本発明の部品実装基板の製造方法は、認識マークを有しない基板に部品を実装して部品実装基板を製造する方法であって、前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、認識マークを有しない基板に対して部品をより正確な位置に実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の部品実装装置の概略図
図2図1に示す部品実装装置の斜視図
図3図1に示す部品実装装置が取り扱う基板の平面図
図4図1に示す部品実装装置が有する制御部のブロック図
図5A図1に示す部品実装装置の記憶部に記憶されている情報を説明するための平面図
図5B図1に示す部品実装装置の記憶部に記憶されている情報を説明するための平面図
図6図1に示す部品実装装置を用いて基板に部品を実装する際の実装位置を補正する方法、およびそれを含む部品実装基板の製造方法を示すフローチャート
図7図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の説明図
図8図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の説明図
図9図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の説明図
図10図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の説明図
図11図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の説明図
図12A】実施形態2の部品実装装置の記憶部に予め記憶されている情報を説明するための図
図12B】実施形態2の部品実装装置の記憶部に予め記憶されている情報を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1態様によれば、認識マークを有しない基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する、部品実装装置を提供する。
【0011】
このような構成によれば、認識マークを有しない基板であっても、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応して基板の特徴点の認識を試みて、認識座標が取得された特徴点とそれに対応する基準点との座標の差に基づいて、実装位置を補正することができる。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記認識座標が取得された前記特徴点が複数対ある場合、各対に関する前記認識座標と前記設計座標との差を平均化した値を用いて前記実装位置を補正する、第1態様に記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、平均化によって実装位置の補正精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記実装位置を補正する際に、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、算出した前記角度の平均値分、補正前の前記実装位置を前記座標平面の中心に対して回転させた位置を利用して、前記実装位置を補正する、第1態様又は第2態様に記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、実装位置の角度補正を行うことができる。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記実装位置を補正する際に、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対応する少なくとも1対の前記基準点を前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分それぞれ回転させた少なくとも一対の補正点を算出し、前記少なくとも一対の補正点の補正座標と、対応する前記少なくとも一対の前記特徴点の前記認識座標との差に関して、第1軸に沿った第1差の平均値を算出し、前記第1軸に交差する第2軸に沿った第2差の平均値を算出し、補正前の前記実装位置を、前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分回転させるとともに、前記第1軸に沿って前記第1差の平均値分オフセットし、且つ前記第2軸に沿って前記第2差の平均値分オフセットした位置に基づいて、前記部品を前記基板に実装する、第3態様に記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、実装位置をより精度良く補正することができる。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記基板は円形である、第1態様から第4態様のいずれか1つに記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、認識マークを有しない基板が円形であるときは、基板が角形である場合と比較して基板の位置や姿勢を認識することが難しく、実装位置がずれやすい。このような基板であっても、基板の主面上の特徴点を認識することで、実装位置の補正を行うことができる。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記基準点は、前記基板の外周に沿って8点設けられる、第5態様に記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、基準点を8点設けることで、平均化による精度向上を図ることができ、実装位置をバランス良く補正することができる。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記基準点は、前記座標平面の中心を基準に8つの領域に分割した各分割領域に1つずつ設定され、前記8つの分割領域のうち、相対する2つの前記分割領域に設定された2つの前記基準点に対応する前記特徴点を、前記特徴点の対とする、第6態様に記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、平均化による精度向上を図ることができ、実装位置をバランス良く補正することができる。
【0018】
本発明の第8態様によれば、前記基板の前記主面は格子状のパターンを含み、前記主面上の前記特徴点は、前記格子状のパターンの格子点である、第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の部品実装装置を提供する。このような構成によれば、認識マークを有しない基板であっても、格子状のパターンをもとに実装位置を補正することができる。
【0019】
本発明の第9態様によれば、認識マークを有しない基板に部品を実装して部品実装基板を製造する方法であって、前記基板の主面上に設定した座標平面において、予め定めた少なくとも3つの基準点に対応する前記主面上の少なくとも3つの特徴点に対して認識動作を実行し、複数対の前記特徴点に関する認識座標の取得を試行し、少なくとも一対の前記特徴点に関して前記認識座標が取得された場合、当該少なくとも一対の特徴点の前記認識座標と、対応する少なくとも一対の前記基準点の設計座標との差に基づいて、前記基板に前記部品を実装する実装位置を補正し、補正後の前記実装位置に基づいて前記基板に前記部品を実装する、部品実装基板の製造方法を提供する。
【0020】
このような方法によれば、第1態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0021】
本発明の第10態様によれば、前記認識座標が取得された前記特徴点が複数対ある場合、各対に関する前記認識座標と前記設計座標との差を平均化した値を用いて前記実装位置を補正する、第9態様に記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第2態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0022】
本発明の第11態様によれば、前記実装位置を補正する際に、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対を構成する2つの前記特徴点どうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの前記基準点どうしを結ぶ第2直線とがなす角度を、各対に関してそれぞれ算出して平均値を算出し、算出した前記角度の平均値分、補正前の前記実装位置を前記座標平面の中心に対して回転させた位置を利用して、前記実装位置を補正する、第9態様又は第10態様に記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第3態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0023】
本発明の第12態様によれば、前記実装位置を補正する際に、前記認識座標が取得された前記少なくとも一対の特徴点に関して、対応する少なくとも1対の前記基準点を前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分それぞれ回転させた少なくとも一対の補正点を算出し、前記少なくとも一対の補正点の補正座標と、対応する前記少なくとも一対の前記特徴点の前記認識座標との差に関して、第1軸に沿った第1差の平均値を算出し、前記第1軸に交差する第2軸に沿った第2差の平均値を算出し、補正前の前記実装位置を、前記座標平面の中心に対して前記角度の平均値分回転させるとともに、前記第1軸に沿って前記第1差の平均値分オフセットし、且つ前記第2軸に沿って前記第2差の平均値分オフセットした位置に基づいて、前記前記部品を前記基板に実装する、第11態様に記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第4態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0024】
本発明の第13態様によれば、前記基板は円形である、第9態様から第12態様のいずれか1つに記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第5態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0025】
本発明の第14態様によれば、前記基準点は、前記基板の外周に沿って8点設けられる、第13態様に記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第6態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0026】
本発明の第15態様によれば、前記基準点は、前記座標平面の中心を基準に8つの領域に分割した各分割領域に1つずつ設定され、前記8つの分割領域のうち、相対する2つの前記分割領域に設定された2つの前記基準点に対応する前記特徴点を、前記特徴点の対とする、第14態様に記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第7態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0027】
本発明の第16態様によれば、前記基板の前記主面は格子状のパターンを含み、前記主面上の前記特徴点は、前記格子状のパターンの格子点である、第9態様から第15態様のいずれか1つに記載の部品実装基板の製造方法を提供する。このような方法によれば、第8態様の部品実装装置と同様の効果を奏することができる。
【0028】
以下、本発明に係る部品実装装置およびそれを用いた部品実装基板の製造方法の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本発明に含まれる。
【0029】
(実施形態1)
まず、図1図4を参照して部品実装装置1の構成を説明する。図1は、実施形態1の部品実装装置1の正面図、図2は、実施形態1の部品実装装置1の斜視図、図3は、実施形態1の部品実装装置1が取り扱う基板5の平面図、図4は、実施形態1の部品実装装置1が有する制御部60のブロック図である。
【0030】
図1図2に示す部品実装装置1は、基台2と、基台2の上に配設された基板保持部3および部品供給部6と、実装部10と、カメラユニット30とを備える。
【0031】
基板保持部3は保持ステージ4を備え、保持ステージ4の上には、電子部品を実装する対象となる基板5が保持されている。
【0032】
図3に示すように、実施形態1の基板5は平面視で円形の形状を有する。基板5はいわゆる「認識マーク」を有しない基板である。認識マークは、基板5の位置を認識するために専用に設けられたマークであり、「原点マーク」や「基準マーク」とも称する。
【0033】
基板5は円形の主面20を有し、主面20には格子状のパターン22が形成されている。格子状のパターン22は複数の格子点23を有しており、各格子点23は後述するように、基板5に部品8を実装する際の実装位置を補正するための特徴点として用いられる。格子状のパターン22は例えばダイシングラインである。
【0034】
主面20に形成されるパターン22は格子状に限らず、実装位置を補正するための特徴点(認識マークとは異なる)を有するものであれば、任意のパターンであってもよい。
【0035】
図1に戻ると、部品供給部6は部品トレイ7を備える。部品トレイ7には複数の部品(電子部品)8が収納されている。
【0036】
実装部10は、移動テーブル11と、部品押圧ヘッド12とを備える。移動テーブル11は、部品押圧ヘッド12をX方向に移動可能に保持する部材である。部品押圧ヘッド12は、下方に突出した軸部材27を備えており、軸部材27の下端部には、ボンディングツール13が装着されている。
【0037】
ボンディングツール13は、部品8を保持する部品保持ツールである。図2に示すように、ボンディングツール13は水平な横長形状のホーン13aを備えており、ホーン13aの下面には接合作用部13bが突設されている。接合作用部13bは部品8の上面に当接して吸着保持するとともに、部品8を基板5に対して押圧する。
【0038】
ホーン13aの一方側の端部には振動子14が装着されている。振動子14を駆動することにより、超音波振動伝達用のホーン13aを介して接合作用部13bに超音波振動が伝達される。ボンディングツール13によって部品8を基板5に押圧する際に、接合作用部13bを介して部品8に超音波振動を付与することで、部品8を基板5に接合する部品接合動作が行われる。これにより、基板5に部品8を実装した部品実装基板が製造される。
【0039】
図1に示すように、実装部10の上方にはカメラユニット30が設けられている。図2ではカメラユニット30の図示を省略している。カメラユニット30は、基板カメラ32と、カメラ移動機構34とを備える。
【0040】
基板カメラ32は、下方に配置された基板5を撮像するための撮像部である。基板カメラ32は、撮像方向Aを下向きにした姿勢でカメラ移動機構34に取り付けられている。カメラ移動機構34は、基板カメラ32をXY方向に移動可能に支持する機構である。
【0041】
上述した実装部10による部品接合動作やカメラユニット30による撮像動作などは制御部60が制御する。
【0042】
制御部60は、部品実装装置1の各構成要素の動作を制御する部材である。制御部60は、配線等を介して部品実装装置1の各構成要素に電気的に接続されている。制御部60は例えばマイクロコンピュータで構成される。
【0043】
図4は、制御部60のブロック図を示す。図4に示すように、制御部60は、移動テーブル11、部品押圧ヘッド12、ボンディングツール13、基板カメラ32およびカメラ移動機構34などに電気的に接続されている。
【0044】
制御部60はその内部に、ボンディング動作実行部62と、認識部64と、記憶部66と、補正部68とを有する。
【0045】
ボンディング動作実行部62、認識部64および補正部68は例えば処理回路であり、記憶部66に記憶されたコンピュータプログラムをそれぞれ実行する。記憶部66は例えばコンピュータプログラムを記憶したメモリである。処理回路がコンピュータプログラムを実行することによって、または、処理回路単独、またはメモリ単独で、ボンディング動作実行部62、認識部64および補正部68が実現される。
【0046】
ボンディング動作実行部62は、ボンディングツール13が保持する部品8を保持ステージ4に載置された基板5に実装する機能を実行する。
【0047】
認識部64は、基板カメラ32が撮像した撮像画像に基づいて、基板5の位置および基板5の特徴点の位置を認識する機能を実行する。認識部64は、任意の画像処理技術を用いて認識処理を実行してもよい。
【0048】
記憶部66は、各種コンピュータプログラムとともに、認識部64の認識処理によって取得した各点の位置情報などを記憶する。
【0049】
補正部68は、記憶部66に記憶している情報などに基づいて、基板5に部品8を実装する実装位置を補正する機能を実行する。具体的な補正方法については後述する。
【0050】
ここで、記憶部66に予め記憶されている情報について、図5A図5Bを用いて説明する。
【0051】
図5Aに示すように、記憶部66は、基板5の主面20に設定する座標平面に関して、複数の「基準点」の座標を記憶している。図5Aに示す例では、基準点Ana(nは1~4の自然数)および基準点Bna(nは1~4の自然数)は、各象限に1つずつ設けられており、合計8つの基準点A1a、A2a、A3a、A4a、B1a、B2a、B3a、B4aが設けられている。基準点Ana、Bnaのそれぞれは、格子状のパターン22に含まれる各格子点23に対応して設定されている。
【0052】
記憶部66はさらに、8つの基準点Ana、Bnaに対応して、8つの認識領域And、Bnd(nは1~4の自然数)の座標を予め記憶している。8つの認識領域And、Bndはそれぞれ、8つの基準点Ana、Bnaを含む領域として個別に設定された領域であり、後述するように、パターン22の各格子点23を特徴点として認識する際の認識範囲を定める領域である。
【0053】
図5Aに示すように、認識領域A1d、A2d、A3d、A4dはそれぞれ基準点A1a、A2a、A3a、A4aを含む領域であり、認識領域B1d、B2d、B3d、B4dはそれぞれ基準点B1a、B2a、B3a、B4aを含む領域である。図5Aでは、それぞれの認識領域And、Bndを略正方形状の領域としているが、他の形状であってもよい。
【0054】
図5Bに示すように、8つの基準点Ana、Bnaおよび8つの認識領域And、Bndはそれぞれ、基板5の外周面に沿って概ね等間隔で設定されている。座標平面の中心を基準として主面20を略45度間隔で8つの領域に分割して分割領域S1~S8とすると、分割領域S1~S8のそれぞれに1つの基準点および1つの認識領域が設定されている。
【0055】
8つの基準点Ana、Bnaのうち、座標平面の中心に対して相対する2つの基準点Ana、Bnaは、1対の基準点として設定されている(2点鎖線で図示)。具体的には、分割領域S1に設けられる基準点A1aと分割領域S5に設けられる基準点B1aとが一対を構成し、分割領域S2に設けられる基準点A2aと分割領域S6に設けられる基準点B2aとが一対を構成し、分割領域S3に設けられる基準点A3aと分割領域S7に設けられる基準点B3aとが一対を構成し、分割領域S4に設けられる基準点A4aと分割領域S8に設けられる基準点B4aとが一対を構成するものとして設定されている。
【0056】
次に、上述した部品実装装置1を用いて基板5に部品8を実装する際の実装位置を補正する方法、およびそれを含む部品実装基板の製造方法について、図6図11を用いて説明する。
【0057】
図6は、部品実装装置1を用いた部品実装基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。図6のフローチャートに示す各ステップは例えば制御部60によって実行される。図7図11は、図6のフローチャートに沿って各ステップを実行する際の各種説明図である。
【0058】
図6に示すように、制御部60はまず、基板5を撮像する(S1)。具体的には、基板カメラ32を用いて、下方に位置決めされた基板5の主面20を撮像する。制御部60は、基板カメラ32が撮像した撮像画像に基づいて、認識部64を用いて基板5の位置を認識するとともに、主面20に対して座標平面を設定する。これにより、座標平面の中心、X軸(第1軸)、Y軸(第2軸)などが定められる。
【0059】
制御部60は、8点の特徴点に関する認識座標の取得を試行する(S2)。具体的には、図7に示すように、ステップS1で撮像した撮像画像に基づく座標平面において、記憶部66に予め記憶している認識領域And、Bnd(nは1~4の自然数)の各領域において、パターン22の各格子点23を特徴点Anb、Bnb(nは1~4の自然数)として、認識部64を用いて認識動作を実行する。
【0060】
認識動作によって取得した特徴点Anb、Bnbの各座標は、認識座標(raxn、rayn)、(rbxn、rbyn)(nは1~4の自然数)として、記憶部66に記憶される。
【0061】
図7に示すように、認識領域A1d~A4dに含まれる特徴点A1b~A4bと、認識領域B1d~B4dに含まれる特徴点B1b~B4bはそれぞれ4つの対を構成するものとして設定される(2点鎖線で各対を表示)。具体的には、特徴点A1b、B1bが一対を構成し、特徴点A2b、B2bが一対を構成し、特徴点A3b、B3bが一対を構成し、特徴点A4b、B4bが一対を構成するものとして設定される。
【0062】
実施形態1では、ステップS2において、8点の特徴点Anb、Bnbの認識座標が全て取得された例について説明する。
【0063】
制御部60は、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標を取得したか否かを判断する(S3)。具体的には、制御部60は、特徴点Anb、Bnbの各対において、対を構成する2つの認識座標が取得されているか否かに基づいて、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標を取得したか否かを判断する。
【0064】
ステップS3以降は、制御部60は補正部68を用いて各ステップを実行する。
【0065】
実施形態1では、全ての特徴点Anb、Bnbの認識座標が取得されており、4対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標を取得しているため、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標を取得したと判断する(S3でYES)。この場合、ステップS5に移行する。
【0066】
一方で、4対の特徴点Anb、Bnbのいずれにおいても、各対を構成する2つの認識座標のうちの1つ又は2つが取得できなかった場合、少なくとも一対の特徴点に関する認識座標を取得していないと判断する(S3でNO)。この場合、部品実装装置1の運転を停止する(S4)。
【0067】
実施形態1では、合計4対(8点)の特徴点Anb、Bnbおよびそれに対応する認識領域And、Bndを定めているため、そのうちのいくつかの特徴点Anb、Bnbの認識動作に失敗しても、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標を取得できる場合が多い。これにより、部品実装装置1の運転を停止する機会(S4)を減らし、部品実装基板の製造を継続することができ、部品実装装置1の生産性を向上させることができる。
【0068】
制御部60は、認識座標が取得された特徴点Anb、Bnbに対応する基準点Ana、Bnaに関する設計座標を取得する(S5)。具体的には、基準点Ana、Bnaに関する設計座標が予め記憶部66に記憶されているため、ステップS2で認識座標が取得された特徴点Anb、Bnbに対応する基準点Ana、Bnaの設計座標を読み出すことにより、設計座標(axn、ayn)、(bxn、byn)(nは1~4の自然数)を取得する。実施形態1では、8点全ての特徴点Anb、Bnbの認識座標が取得されているため、8点全ての基準点Ana、Bnaの設計座標が取得される。
【0069】
制御部60は、対を構成する2つの特徴点Anb、Bnbどうしを結ぶ第1直線と、対応する2つの基準点Ana、Bnaどうしを結ぶ第2直線とがなす角度を算出する(S6)。具体的には、図8に示すように、例えば特徴点A1b、B1bの対に関しては、2つの特徴点A1b、B1bどうしを結ぶ第1直線P1はX軸に対して角度rθ1を有し、対応する2つの基準点A1a、B1aどうしを結ぶ第2直線Q1はX軸に対して角度θ1を有する。角度rθ1は、arctan((ray1-rby1)/(rax1-rbx1))で算出され、角度θ1は、arctan((ray1-rby1)/(rax1-rbx1))で算出される。
【0070】
第1直線P1と第2直線Q1とがなす角度は(rθ1-θ1)で求めることができ、他の3つの対のそれぞれにおいても同様に角度を求めることで、角度(rθn-θn)(nは1~4の自然数)を算出する。
【0071】
図8では、第1直線Pn(nは1~4の自然数)を点線で表し、第2直線Qn(nは1~4の自然数)を一点鎖線で表している。nが2~4の場合は符号の図示を省略している。
【0072】
制御部60は、角度(rθn-θn)の平均値Avgθを算出する(S7)。具体的には、ステップS6で算出した角度(rθn-θn)の合計を4で除算することにより、角度の平均値Avgθを算出する。
【0073】
制御部60は、基準点Ana、Bnaを平均値Avgθ分回転させた第1補正点Anc、Bnc(nは1~4の自然数)を特定する(S8)。具体的には、図9に示すように、基準点Ana、Bnaの設計座標(axn、ayn)、(bxn、byn)を角度の平均値Avgθ分回転させた点を第1補正点Anc、Bnc(nは1~4の自然数)とし、第1補正座標(daxn、dayn)、(dbxn、dbyn)(nは1~4の自然数)を算出する。
【0074】
ステップS8で用いる数式を以下の数1に示す。二次元の座標平面において、点(x、y)を原点中心に反時計周りにθ回転させた点(X、Y)の座標は、以下の数1で計算できる。
【0075】
【数1】
【0076】
数1に基づいて、第1補正点Anc、Bncの第1補正座標(daxn、dayn)、(dbxn、dbyn)は、基準点Ana、Bnaの設計座標(axn、ayn)、(bxn、byn)および角度の平均値Avgθに基づいて、下記の通り計算できる。
【0077】
daxn=axn*cos(Avgθ)-ayn*sin(Avgθ)
dayn=axn*sin(Avgθ)+ayn*cos(Avgθ)
dbxn=bxn*cos(Avgθ)-byn*sin(Avgθ)
dbyn=bxn*sin(Avgθ)+byn*cos(Avgθ)
【0078】
制御部60は、第1補正点Anc、Bncと、対応する特徴点Anb、Bnbとの差に関して、X方向の差分(Δxm)およびY方向の差分(Δym)を算出する(S9)。具体的には、例えば図10に示すように、第1補正点A1cとそれに対応する特徴点A1bとの差に関して、X方向の差分として、dax1-rax1によりΔx1を算出し、Y方向の差分として、day1-ray1によりΔy1を算出する(m=1の場合)。mが2~8の場合についても同様にX方向の差分とY方向の差分を算出することにより、全てのX方向の差分(Δxm)およびY方向の差分(Δym)を算出する(mは1~8の自然数)。
【0079】
制御部60は、X方向の差分(Δxm)の平均値Avgxと、Y方向の差分(Δym)の平均値Avgyとを算出する(S10)。具体的には、ステップS9で算出したΔxm(m=1~8)の合計を8で除算することにより平均値Avgxを算出し、Δym(m=1~8)の合計を8で除算することにより平均値Avgyを算出する。
【0080】
制御部60は、原点を中心として、補正前の実装点を平均値Avgθ分回転させた第2補正点を特定する(S11)。具体的には、図11に示すように、記憶部66に予め記憶されている補正前の実装点(補正前の実装位置)Bdの実装座標(bdx、bdy)を、平均値Avgθ分回転させた位置を第2補正点Bd’とし、補正座標(bdx’、bdy’)を算出する。補正座標(bdx’、bdy’)は、前述した数1に基づいて、以下の通り計算できる。
【0081】
bdx’=bdx*cos(Avgθ)-bdy*sin(Avgθ)
bdy’=bdx*sin(Avgθ)+bdy*cos(Avgθ)
【0082】
制御部60はさらに、第2補正点Bd’をX方向に平均値Avgx分オフセットし、Y方向に平均値Avgy分オフセットした補正後の実装点Bd’’を特定し、部品8を実装する(S12)。具体的には、図11に示すように、第2補正点Bd’の補正座標(bdx’、bdy’)に対して、X方向の差分の平均値Avgxを加算し、Y方向の差分の平均値Avgyを加算することにより、補正後の実装点(補正後の実装位置)Bd’’の実装座標(bdx’’、bdy’’)を特定する。
【0083】
制御部60はボンディング動作実行部62を用いて、ステップS12で特定した補正後の実装点Bd’’の実装座標(bdx’’、bdy’’)に基づいて、基板5に部品8を実装する。
【0084】
上記方法によれば、部品実装基板の量産時に、基板5の位置ずれが生じる場合であっても、部品8を実装する実装位置Bdをその都度補正して部品8をより正確な位置に実装することができる。また認識マークを有しない基板5であっても、格子状のパターン22の格子点23を特徴点Anb、Bnbとして認識するとともに、基準点Ana、Bnaとの座標の差に基づいて、実装位置Bdを補正することができる。
【0085】
実施形態1では特に、複数対の基準点Ana、Bnaを設定するとともに、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関して認識座標が取得できれば(S3でYES)、部品実装装置1の運転を停止せずに、実装位置Bdを補正して部品8の実装を行うことができる(S5~S12)。実施形態1では、8点すなわち4対の基準点Ana、Bnaを設定しているため、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標の取得が容易であり、部品実装装置1の運転を停止する機会を極力減らすことができる。さらには、平均化による実装位置の補正精度も向上させることができる。
【0086】
図6ではステップS1~S12に分けて記載したが、処理の内容等に応じて1つのステップを複数のステップに分解してもよく、複数のステップを1つのステップに統合してもよい。例えば、補正前の実装点bdから第2補正点bd’を特定するステップS11と、第2補正点bd’から補正後の実装点bd’’を特定して部品8を実装するS12を統合してもよい。すなわち、補正前の実装点bdから補正後の実装点bd’’を直接特定して部品8を実装してもよい。その場合、補正後の実装点bd’’の実装座標(bdx’’、bdy’’)は、補正前の実装点bdの実装座標(bdx、bdy)および平均値Avgθ、Avgx、Avgyに基づいて、以下の通り計算できる。
【0087】
bdx’’=bdx*cos(Avgθ)-bdy*sin(Avgθ)+Avgx
bdy’’=bdx*sin(Avgθ)+bdy*cos(Avgθ)+Avgy
【0088】
上述したように、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、制御部60は、基板5の主面20に設定した座標平面において、予め定めた8つの基準点Ana、Bnaに対応する主面20上の8つの特徴点Anb、Bnbに対して認識動作を実行し、4対の特徴点Anb、Bnbに関する認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)の取得を試行する(S2)。制御部60は、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関して認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得された場合(S3でYES)、当該少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbの認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)と、対応する少なくとも一対の基準点Ana、Bnaの設計座標(axn,ayn)、(bxn,byn)との差に基づいて、基板5に部品8を実装する実装位置Bdを補正し、補正後の実装点Bd’’に基づいて基板5に部品8を実装する(S5~S12)。
【0089】
このような構成および方法によれば、認識マークを有しない基板5であっても、予め定めた8つの基準点Ana、Bnaに対応して8つの特徴点Anb、Bnbの認識を試みて、認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得された特徴点Anb、Bnbと、それに対応する基準点Ana、Bnaとの座標の差に基づいて、実装位置Bdを補正することができる。一部の特徴点Anb、Bnbに関して認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)の取得に失敗した場合でも、少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbの認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得できれば、実装位置Bdを補正することができる。これにより、特徴点Anb、Bnbの認識エラーによる部品実装作業の中断機会を減らすことができ、部品実装装置1の生産性を向上させることができる。
【0090】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得された特徴点Anb、Bnbが複数対ある場合、各対に関する認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)と設計座標(axn,ayn)、(bxn,byn)との差を平均化した値を用いて実装位置を補正する(S6、S7)。
【0091】
このような構成および方法によれば、差の平均化によって、実装位置Bdの補正精度を向上させることができる。
【0092】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得された少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関して、対を構成する2つの特徴点Anb、Bnbどうしを結ぶ第1直線Pnと、対応する2つの基準点Ana、Bnaどうしを結ぶ第2直線Qnとがなす角度(rθn-θn)を、各対に関してそれぞれ算出して平均値Avgθを算出する(S7)。制御部60は、算出した角度の平均値Avgθ分、補正前の実装点Bdを座標平面の中心に対して回転させた第2補正点Bd’を利用して、実装位置Bdを補正する(S11)。
【0093】
このような構成および方法によれば、実装位置Bdの角度補正を行うことができる。
【0094】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、制御部60は、認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)が取得された少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbに関して、対応する少なくとも1対の基準点Ana、Bnaを座標平面の中心に対して角度の平均値Avgθ分それぞれ回転させた少なくとも一対の第1補正点Anc、Bncを算出する(S8)。制御部60は、少なくとも一対の第1補正点Anc、Bncの補正座標(daxn、dayn)、(dbxn、dbyn)と、対応する少なくとも一対の特徴点Anb、Bnbの認識座標(raxn,rayn)、(rbxn,rbyn)との差に関して、X軸(第1軸)に沿ったΔxm(第1差)の平均値Avgxを算出し、Y軸(第2軸)に沿ったΔym(第2差)の平均値Avgyを算出する(S9、S10)。制御部60は、補正前の実装点Bdを、座標平面の中心に対して角度の平均値Avgθ分回転させるとともに(S11)、X軸に沿って平均値Avgx分オフセットし、且つY軸に沿って平均値Avgy分オフセットした補正後の実装点Bd’’に基づいて、部品8を基板5に実装する(S12)。
【0095】
このような構成および方法によれば、実装位置Bdをより精度良く補正することができる。
【0096】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、基板5は円形である。
【0097】
このような構成および方法によれば、認識マークを有しない基板5が円形であるときは、基板が角形である場合と比較して基板5の位置や姿勢を認識することが難しく、実装位置Bdがずれやすい。このような基板5であっても、認識マークとは異なる基板5の特徴点Anb、Bnbを認識することで、実装位置Bdの補正を行うことができる。
【0098】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、基準点Ana、Bnaは、基板5の外周に沿って8点設けられる。
【0099】
このような構成および方法によれば、基準点Ana、Bnaを8点設けることで、平均化による精度向上を図ることができ、実装位置Bdをバランス良く補正することができる。
【0100】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、基準点Ana、Bnaは、座標平面の中心を基準に8つの領域に分割した各分割領域S1~S8に1つずつ設定され、8つの分割領域S1~S8のうち、相対する2つの分割領域に設定された2つの基準点Ana、Bnaに対応する特徴点Anb、Bnbを、特徴点の対とする。
【0101】
このような構成および方法によれば、平均化による精度向上を図ることができ、実装位置Bdをバランス良く補正することができる。
【0102】
また、実施形態1の部品実装装置1およびそれを用いた部品実装基板の製造方法では、基板5の主面20は格子状のパターン22を含み、特徴点Anb、Bnbは、格子状のパターン22の格子点23である。
【0103】
このような構成および方法によれば、認識マークを有しない基板5であっても、格子状のパターン22をもとに実装位置Bdを補正することができる。
【0104】
(実施形態2)
本発明に係る実施形態2の部品実装装置およびそれを用いた部品実装基板の製造方法について説明する。なお、実施形態2では、主に実施形態1と異なる点について説明し、実施形態1と重複する記載は省略する。
【0105】
実施形態2では、8つの基準点Ana、Bnaおよび8つの認識領域And、Bndを設けていたが、実施形態1では、3つの基準点Ana、Bnaおよび3つの認識領域And、Bndのみ設けている点が、異なる。
【0106】
図12A図12Bは、実施形態2の部品実装装置の記憶部に予め記憶している情報を説明するための平面図である。
【0107】
図12Aに示すように、実施形態2では、主面20上に設定した座標平面に関して、3つの基準点Ana、Bnaおよび3つの認識領域And、Bndを設けている。図12Aに示す例では、実施形態1で使用した8つの基準点Ana、Bnaのうち、基準点A1a、A4a、B2aを使用している。このような場合に限らず、実施形態1の他の基準点を使用してもよく、実施形態1とは異なる基準点を設定してもよい。
【0108】
図12Bに示すように、3つの基準点A1a、A4a、B2aのうち、基準点A1a、A4aが一対を構成し、基準点A1a、B2aが一対を構成するものとして設定している。すなわち、基準点A1a、A4a、B2aは2対の基準点を含む。
【0109】
図12A図12Bに示すような場合であっても、複数対の特徴点に関する認識座標の取得を試行し(図6のS2)、少なくとも一対の特徴点に関する認識座標を取得したか否かを判断することができる(図6のS3)。少なくとも一対の特徴点に関する認識座標を取得したと判断した場合(図6のS3でYES)、ステップS5~S12を同様に実行して実装位置Bdを補正することができる。
【0110】
以上、上述の実施形態1、2を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態1、2に限定されない。例えば、基準点Ana、Bnaおよび認識領域And、Bndのそれぞれの数に関して、実施形態1では8つずつ、実施形態2では3つずつ設けていたが、このような場合に限らない。基準点Ana、Bnaおよび認識領域And、Bndは少なくとも3つずつ設けていれば、複数対の特徴点に関する認識座標の取得を試行することができる(S2)。なお、対の数を多くするほど平均化による精度向上の効果が大きくなり、対の数を少なくするほど実装位置Bdの補正に関する処理内容が簡単になる。
【0111】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0112】
なお、前記実施形態の様々な変形例のうち、任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、部品実装装置およびそれを用いた部品実装基板の製造方法であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 部品実装装置
2 基台
3 基板保持部
4 保持ステージ
5 基板
6 部品供給部
7 部品トレイ
8 部品
10 実装部
11 移動テーブル
12 部品押圧ヘッド
13 ボンディングツール
13a ホーン
13b 接合作用部
14 振動子
22 パターン
23 格子点
27 軸部材
30 カメラユニット
32 基板カメラ
34 カメラ移動機構
60 制御部
62 ボンディング動作実行部
64 認識部
66 記憶部
68 補正部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B