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特許7591726バッテリケースおよび電動アシスト自転車用バッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】バッテリケースおよび電動アシスト自転車用バッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/271 20210101AFI20241122BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/317 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20241122BHJP
   B62M 6/90 20100101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M50/271 B
H01M50/249
H01M50/317 201
H01M50/325
B62M6/90
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160756
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053879
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 裕二
(72)【発明者】
【氏名】海藤 稜馬
(72)【発明者】
【氏名】地主 親市
(72)【発明者】
【氏名】小川 満
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-087526(JP,A)
【文献】特開2019-197664(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111590922(CN,A)
【文献】特開2018-018659(JP,A)
【文献】特開2011-124085(JP,A)
【文献】特開2009-146812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20 - 50/298
H01M 50/30 - 50/392
B62M 6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部をそれぞれ有する第1ケースおよび第2ケースを含み、前記第1ケースと前記第2ケースを重ね合わせることでセルを収容する内部空間が形成されるバッテリケースであって、
前記第1ケースと前記第2ケースを固定する固定部と、
前記固定部で固定された状態よりも前記内部空間が拡大した状態で、前記第1ケース前記第2ケースに係止された連結状態を維持する係合部と、
を備える、バッテリケース。
【請求項2】
前記第1ケースには、前記第2ケース側に延びて前記第2ケースとオーバーラップし、前記内部空間が拡大した状態で前記内部空間を隠す延出部が設けられている、請求項1に記載のバッテリケース。
【請求項3】
前記係合部は、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの一方に形成された凸部と、
前記第1ケースおよび前記第2ケースの他方に形成され、前記凸部が挿入される受け部と、
を含み、前記内部空間が拡大した状態で、前記凸部が前記受け部に係止される、請求項1または2に記載のバッテリケース。
【請求項4】
前記第1ケースおよび前記第2ケースの少なくとも一方には、前記内部空間内の圧力が所定の閾値を超えたときに、外側に弾性変形して前記内部空間を開放する排気部が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリケース。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリケースと、
前記バッテリケースに収容されたセルと、
を備える電動アシスト自転車用バッテリであって、
前記バッテリケースは、前記内部空間が拡大した状態において、充電器および電動アシスト自転車のバッテリ設置部に嵌合しないように構成されている、電動アシスト自転車用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリケース、および当該ケースを備えた電動アシスト自転車用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザーがペダルを踏む力をモータによりアシストする電動アシスト自転車が広く知られている。電動アシスト自転車には、モータに電力を供給するためのバッテリが搭載されている。バッテリは、一般的に、バッテリケースと、当該ケース内に収容されたセルとを含み、自転車のフレームに設けられたバッテリ設置部に対して着脱自在に取り付けられる(例えば、特許文献1,2参照)。バッテリケースは、例えば、互いに固定された第1ケースおよび第2ケースを含む樹脂製ケースであって、その内部空間にはラミネートセル、円筒形セル等の二次電池が複数収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-104501号公報
【文献】特開2015-143035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリケースに収容されたセルは、例えば、劣化により発生するガス等が原因で大きく膨張する場合がある。セルが大きく膨張すると、バッテリケースが破損することが想定され、第1ケースと第2ケースが分離してケースが大きく開き、セルが露出する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、例えばバッテリケース内のセルが膨張した場合に、第1ケースと第2ケースが分離してケースが大きく開くことを抑制することである。なお、セルの膨張を吸収するための空間をケース内に設けることでケースの破損を抑制する方法も考えられるが、この場合、バッテリが大型化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様であるバッテリケースは、開口部をそれぞれ有する第1ケースおよび第2ケースを含み、第1ケースと第2ケースを重ね合わせることでセルを収容する内部空間が形成されるバッテリケースであって、第1ケースと第2ケースを固定する固定部と、固定部で固定された状態よりも内部空間が拡大した状態で、第1ケースと第2ケースの連結状態を維持する係合部とを備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の一態様である電動アシスト自転車用バッテリは、上記バッテリケースと、バッテリケースに収容されたセルとを備え、バッテリケースは、内部空間が拡大した状態において、充電器および電動アシスト自転車のバッテリ設置部に嵌合しないように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、例えばバッテリケース内のセルが膨張した場合に、第1ケースと第2ケースが分離してケースが大きく開くことを抑制できる。本開示の一態様であるバッテリケースでは、セルが膨張して固定部が外れたとしても、係合部によって、固定部で固定された状態よりも内部空間が拡大した状態で、第1ケースと第2ケースの連結状態が維持される。このため、セルが大きく露出するようなケースの破損が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である電動アシスト自転車を示す図である。
図2】実施形態の一例である電動アシスト自転車用バッテリの側面図である。
図3】実施形態の一例である電動アシスト自転車用バッテリの上下方向断面図である。
図4】実施形態の一例である電動アシスト自転車用バッテリの横方向断面図(セル等の図示省略)である。
図5】実施形態の一例である係合部の拡大図である。
図6】実施形態の一例である電動アシスト自転車用バッテリの側面図であって、セルの膨張によりケースが拡大した状態を示す。
図7】実施形態の一例である電動アシスト自転車用バッテリの横方向断面図(セル等の図示省略)であって、セルの膨張によりケースが拡大した状態を示す。
図8】実施形態の一例である係合部の拡大図であって、セルの膨張によりケースが拡大した状態を示す。
図9】実施形態の他の一例である電動アシスト自転車用バッテリケースを示す図である。
図10】実施形態の他の一例である電動アシスト自転車用バッテリケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係るバッテリケース、および当該バッテリケースを備えた電動アシスト自転車用バッテリの実施形態について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本開示は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせることは当初から想定されている。
【0011】
以下では、電動アシスト自転車用バッテリに適用されるバッテリケースを例示するが、本開示に係るバッテリケースはこれに限定されず、例えば、自動車用バッテリ、モバイル機器用バッテリ、蓄電システム用バッテリ等に適用することもできる。
【0012】
図1は、実施形態の一例である電動アシスト自転車1を示す図である。なお、本開示の電動アシスト自転車は、図1に例示するようなシティーサイクルに限定されず、例えば、スポーツサイクル、折り畳み式の自転車等であってもよい。
【0013】
図1に示すように、電動アシスト自転車1は、バッテリ10と、バッテリ10から供給される電力で駆動するモータユニット11とを備える。また、電動アシスト自転車1は、一般的な自転車と同様に、フレーム2、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5、クランクアーム6、ペダル7、チェーン8、および前照灯9を備える。電動アシスト自転車1は、ユーザーがペダル7を踏む力をモータユニット11に内蔵されたモータによりアシストする自転車である。
【0014】
フレーム2は、前輪3a、後輪3b、ハンドル4、サドル5等を連結する骨組みであって、複数のパイプを溶接して構成される。本実施形態では、複数のパイプとして、ヘッドパイプ2a、フロントフォーク2b、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2f、およびボトムブラケット(図示せず)が設けられている。ボトムブラケットは、ダウンパイプ2c、シートパイプ2d、およびチェーンステー2eをつなぐパイプである。
【0015】
バッテリ10は、フレーム2に設けられたバッテリ設置部12に対して着脱自在に取り付けられる。バッテリ設置部12は、例えば、バッテリ10の下部をセット可能な構造を有する。また、バッテリ設置部12には、バッテリ10に差し込まれる複数の端子が配置されている。バッテリ10は、一般的に、充電量が少なくなったときにバッテリ設置部12から取り外され、所定の充電器を用いて充電される。なお、シートパイプ2dには、バッテリ10を固定するためのロック装置が設けられていてもよい。
【0016】
以下、図2図8を参照しながら、実施形態の一例であるバッテリ10について詳説する。図2図5は、バッテリ10の初期状態(セル50が膨張していない状態)を示す図である。図6図8は、セル50の膨張によってバッテリケース13が拡大した状態を示す図である。
【0017】
以下では、説明の便宜上、上下、左右(横)、前後等の方向を示す用語を使用する。具体的には、バッテリ10の長手方向に沿った方向を上下方向、第1ケース20と第2ケース30が並ぶ方向を前後方向(第1ケース20側を前)、上下方向および前後方向に直交する方向を横方向とする。
【0018】
図2はバッテリ10の側面図、図3はバッテリ10の上下方向断面図である。図2および図3に示すように、バッテリ10は、バッテリケース13と、バッテリケース13に収容されたセル50とを備える。セル50には、リチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。バッテリ10は、例えば、直列接続された複数のセル50と、保護基板51とを備える。保護基板51は、一般的にBMS基板と呼ばれ、セル50の状態を監視し、セル50の最適な充放電制御を実現する。
【0019】
セル50は、外装体内に収容された電極群および電解質を含む。セル50の構造は特に限定されないが、好適な一例としては、ラミネートセル、円筒形セル等が挙げられる。ラミネートセルは、アルミニウム等の金属層を含むラミネートシートで構成された外装体を備える。円筒形セルは、有底円筒形状の金属製の外装体を備える。複数のセル50は、接着剤や粘着テープ、包装体等を用いて一体化され、または所定のホルダーに格納された状態で、バッテリケース13の内部空間14に収容されていることが好ましい。
【0020】
セル50は、例えば、長期間の使用により次第に劣化し、電解質等が分解してガスが発生することで膨張する場合がある。特に、ラミネートセルでは、劣化による体積膨張が起こり易い。詳しくは後述するが、バッテリケース13によれば、セル50が大きく膨張したときに、第1ケース20と第2ケース30が分離してセル50が大きく露出するようなケースの破損が抑制される。また、セル50に異常が発生した場合には、セル50からバッテリケース13内にガスが噴出されることも想定されるが、バッテリケース13はこのような状況にも対応できる。
【0021】
バッテリケース13は、開口部をそれぞれ有する第1ケース20および第2ケース30を含み、複数のセル50を収容可能な内部空間14を有する。バッテリケース13では、第1ケース20と第2ケース30を重ね合わせることで外部から隔離された内部空間14が形成されている。第1ケース20と第2ケース30は、開口部の周縁同士を重ね合わせることが可能な形状を有し、重ね合わせることで閉じられた内部空間14が形成される。
【0022】
バッテリケース13は、金属製ケースであってもよいが、軽量性、成形性等の観点から、樹脂製ケースであることが好ましい。バッテリケース13は、一般的に不透明であり、内部空間14に収容されるセル50等を隠蔽する。本実施形態では、バッテリケース13の下部が上部よりも細くなっており、この細くなった下部がバッテリ設置部12および充電器に差し込まれる。一方、詳しくは後述するが、セル50が膨張してバッテリケース13が拡大した状態では、バッテリケース13の下部をバッテリ設置部12および充電器に差し込むことができない。
【0023】
バッテリケース13の下部には、例えば、左右に突出した2つの凸部24が形成されている。なお、バッテリ設置部12および充電器には、凸部24が嵌る凹部が設けられている。また、バッテリケース13の上部には、例えば、バッテリ10を持ち運びする際に使用される把手25が形成されている。図2に示す例では、第1ケース20に凸部24および把手25が形成されているが、これらは第2ケース30に形成されていてもよい。
【0024】
バッテリケース13は、上記のように、第1ケース20と第2ケース30を連結して構成されている。第1ケース20は、上下方向に長い略長方形状の前面部20Aと、2つの側面部20Bと、上面部20Cと、下面部20Dとを含み、前面部20Aと対向する位置に開口部が形成された構造を有する。側面部20B、上面部20C、および下面部20Dは、例えば、前面部20Aに対して略垂直に形成されている。同様に、第2ケース30は、後面部30Aと、側面部30Bと、上面部30Cと、下面部30Dとを含み、後面部30Aと対向する位置に開口部が形成された構造を有する。
【0025】
バッテリケース13は、第1ケース20と第2ケース30を固定する固定部40を備える。固定部40は、例えば、バッテリケース13の上部と下部に2つずつ、合計4つ設けられている。固定部40は、バッテリケース13の上部において、横方向に並んで左右両側に1つずつ配置され、バッテリケース13の下部においても同様に、左右両側に1つずつ配置される。固定部40は内部空間14に形成され、複数のセル50は上下の固定部40の間に配置されている。
【0026】
図4は、バッテリ10の横方向断面図(セル50等の図示省略)である。本実施形態では、固定部40と後述する係合部41は横方向に並んで形成されていないが、説明の便宜上、図4では両方の断面形状を示す。図4に示すように、固定部40は、ネジ42を用いて第1ケース20と第2ケース30を締結するように構成されていることが好ましい。
【0027】
固定部40は、第1ケース20に形成されたボス部21と、第2ケース30に形成されたネジ挿入部31と、ネジ挿入部31に挿入されてボス部21に締結されるネジ42とを含む。なお、2つのケースの固定方法はネジ止めに限定されず、例えばリベット、溶接等による固定であってもよい。なお、固定部40は、セル50が大きく膨張したとき、またセル50に異常が発生してセル50からガスが噴出したときに、ケースの他の部分が破損する前に外れる(破断する)ように設計されていることが好ましい。
【0028】
ボス部21は、第1ケース20の前面部20Aから開口部側(後方)に延び、ネジ42の軸を挿入可能な筒状に形成されている。また、ボス部21の筒内にはネジ溝が形成されている。ボス部21は、例えば、前面部20Aの内面に対して略垂直に形成され、第1ケース20の開口部またはその近傍まで延びている。或いは、ボス部21は開口部を超えて第2ケース30の内部まで延びていてもよい。
【0029】
ネジ挿入部31は、第2ケース30のボス部21と対向する位置において、ネジ42を挿入可能な筒状に形成されている。ネジ挿入部31は、例えば、第2ケース30の後面部30Aから開口部またはその近傍まで延び、後面部30Aに対して略垂直に形成されている。また、ネジ挿入部31は後方に向かって開口している。即ち、後面部30Aには、ネジ挿入部31の開口が形成されている。
【0030】
本実施形態では、ネジ挿入部31の先端がボス部21の先端に当接している。ネジ挿入部31の先端には、ネジ42の軸を通す孔が形成されている。この孔は、ネジ42の軸を通し、頭を通さない大きさを有する。後面部30Aの開口からネジ挿入部31の筒内に挿入されたネジ42は、この孔から軸が延出し、孔の縁部に頭が引っ掛かった状態で係止されている。そして、ネジ挿入部31から延出したネジ42の軸がボス部21に締結されることで、第1ケース20と第2ケース30がネジ止めされる。
【0031】
図5は、係合部41の拡大図である。図4および図5に示すように、バッテリケース13は、さらに、第1ケース20と第2ケース30を固定する係合部41を備える。係合部41は、固定部40で固定された状態よりも内部空間14が拡大した状態で、第1ケース20と第2ケース30の連結状態を維持する機能を有する。係合部41は、バッテリケース13の左右両側において、固定部40から離れた別の部分に形成されている。
【0032】
ここで、「固定部40が外れたとき」とは、例えば、ネジ42がボス部21から抜けた場合や、図7のようにボス部21等の破断により固定部40による2つのケースの固定が維持できなくなった場合を意味する。係合部41は、固定部40が外れてバッテリケース13が前後方向に広がったときに第1ケース20と第2ケース30の連結状態を確保し、2つのケースが分離してケースが大きく開くことを防ぐ。
【0033】
係合部41は、バッテリケース13の側面部に形成されている。この場合、セル50と横方向に並ぶ位置に係合部41が形成されていてもよい。係合部41は、例えば、バッテリケース13の上部と下部に2つずつ、合計4つ設けられている。係合部41は、バッテリケース13の上部において、横方向に並んで左右両側に1つずつ配置され、バッテリケース13の下部においても同様に、左右両側に1つずつ配置される。なお、係合部41の数は、固定部40の数より多くてもよい。
【0034】
係合部41は、第1ケース20の側面部20Bに形成された爪22と、第2ケース30の側面部30Bに形成された舌片部32とを含む。爪22は、側面部20Bの内面からケースの内側に突出した凸部である。舌片部32は、側面部30Bの端から第1ケース20側に延出し、側面部20Bよりもケースの内側に配置されている。また、舌片部32には、爪22が挿入される受け部として開口33が形成されている。舌片部32は側面部20Bの内面に沿って配置され、開口33には外側から爪22が挿入されている。
【0035】
係合部41は、内部空間14が拡大した状態、例えばセル50の膨張によって固定部40が外れたときに、爪22が開口33の縁部に係止される。これにより、固定部40が外れても、第1ケース20と第2ケース30の連結状態が維持される。爪22の突出長さは、開口33の縁部にしっかり引っ掛かって容易に外れない長さに設定される。例えば、爪22の突出長さ>舌片部32の厚みであり、爪22は舌片部32の内面を超えてケースの内側に突出している。
【0036】
爪22は、開口33の縁部に引っ掛かる前側端部と、前側端部と反対側の後側端部とを有する。爪22の前側端部は、例えば、側面部20Bの内面に対して略垂直に形成されている。この場合、爪22が開口33の縁部に引っ掛かり易くなる。他方、爪22の後側端部は、例えば、爪22が先細り形状となるように傾斜している。爪22は、第1ケース20と第2ケース30を重ね合わせたときに、後側端部が舌片部32の先端部に当接し、舌片部32の先端部を乗り越えて開口33に挿入される。このため、爪22の後側端部を斜面にすることで、開口33への爪22の挿入がスムーズになる。
【0037】
舌片部32は、上記のように、側面部30Bの端から前方に延出し、側面部20Bの内面に沿って配置される。開口33は、舌片部32が延出する前後方向に長く、開口33内において爪22が前後方向に移動可能な大きさで形成されている。開口33の前後方向長さは、例えば、爪22の前後方向長さの1.5倍~5倍である。他方、開口33の上下方向長さは、開口33に爪22が挿入可能な範囲で、爪22の上下方向長さに近似することが好ましい。
【0038】
本実施形態では、セル50が膨張していない状態において、爪22が開口33の後端側に位置している。そして、爪22の前側端部と開口33の前端との間には、所定の隙間が存在する。この隙間の前後方向に沿った長さLが、セル50が膨張して固定部40が外れたときのバッテリケース13の拡大代となる。長さLが短すぎると、セル50の膨張による力で係合部41が破断することが想定される。他方、長さLが長すぎると、バッテリケース13が大きく開くことになるため、これらの点を考慮して適切な長さに設定する必要がある。好適な長さLの一例は、1~30mmである。
【0039】
第1ケース20には、第2ケース30側に延びて第2ケース30とオーバーラップし、内部空間14が拡大した状態で内部空間14を隠す延出部23が設けられていることが好ましい。延出部23は、少なくとも側面部20Bの端部に形成され、例えば、上下方向に沿って側面部20Bの上端部から下端部まで一定の幅で形成されている。延出部23は、さらに、上面部20Cおよび下面部20Dの端部に形成されていてもよく、第1ケース20の開口部を囲むように枠状に形成されていてもよい。
【0040】
延出部23の前後方向長さは、例えば、バッテリケース13の拡大代である上記長さLと略同じである。この場合、セル50が膨張してバッテリケース13が前後方向に拡大したときに、内部空間14の露出を防ぐことができる。なお、延出部23の前後方向長さは、長さLより長くてもよい。延出部23は、バッテリケース13の側面部において舌片部32と干渉しないように、舌片部32よりもケースの外側に形成されている。
【0041】
延出部23は、第2ケース30の外面を覆うように延出していてもよいが、好ましくは第2ケース30の壁の中に差し込まれる。本実施形態では、第2ケース30の側面部30Bの端部に溝34が形成されている。延出部23が第1ケース20の開口部を囲む枠状に形成される場合、上面部30Cおよび下面部30Dの端部にも、延出部23が差し込まれる溝34が形成されていることが好ましい。
【0042】
図6はバッテリ10の側面図、図7はバッテリ10の横方向断面図(セル50等の図示省略)、図8は係合部41の拡大図であって、セル50が膨張してバッテリケース13が拡大した状態を示す。
【0043】
図6図8に示すように、バッテリケース13の内部空間14に収容されたセル50が大きく膨張すると、固定部40が外れてバッテリケース13が前後方向に拡大する。図7では、セル50の膨張によりボス部21が破断し、固定部40による固定が外れた場合を示している。係合部41は、上記のように、セル50の膨張によって固定部40が外れたときに、爪22が開口33の縁部に引っ掛かって係止されるように構成されている。
【0044】
係合部41には、セル50が膨張していない状態において、爪22の前側端部と開口33の前端との間に長さLの隙間が存在する。このため、バッテリケース13は前後方向に長さLだけ拡大可能であり、セル50が膨張したときに、爪22は開口33の後方から前方に移動し、爪22の前側端部が開口33の前端に引っ掛かって係止される。この長さLを適切な範囲に設定することで、セル50が大きく露出しない程度にバッテリケース13の拡大を許容し、第1ケース20と第2ケース30の連結状態を維持することができる。
【0045】
また、第1ケース20には、第2ケース30とオーバーラップする延出部23が設けられているため、バッテリケース13が前後方向に拡大したときに、延出部23によって第1ケース20と第2ケース30の隙間が覆われ、内部空間14の露出が抑制される。本実施形態では、バッテリケース13の拡大に伴って延出部23の全体が溝34から抜け出し、延出部23が内部空間14の周囲を覆う。
【0046】
バッテリケース13は、セル50が膨張して内部空間14が拡大した状態において、充電器およびバッテリ設置部12に嵌合しないように構成されていることが好ましい。充電器およびバッテリ設置部12にはバッテリケース13の下部が差し込まれるが、この差し込みができなくなる状態までケースを拡大させればよい。この場合、その後のバッテリ10の継続使用を防止できる。具体的には、バッテリケース13の前後方向長さが、充電器およびバッテリ設置部12のケースが差し込まれる部分の長さよりも長くなるように、拡大代である長さLが設定される。
【0047】
或いは、バッテリケース13は、セル50が膨張して内部空間14が拡大した状態においても、充電器およびバッテリ設置部12に嵌合するように構成されていてもよい。バッテリ10が充電器またはバッテリ設置部12に設置された状態でバッテリケース13が拡大することも想定されるが、この場合、ケースの下部の拘束が緩和されるので、ケースの拡大がスムーズになる。なお、バッテリ10の継続使用を防止するため、バッテリケース13の拡大をトリガーとしてセル50の充放電を禁止する手段を別途設けることが好ましい。
【0048】
以上のように、上記構成を備えたバッテリ10によれば、バッテリケース13の内部空間14に収容されたセル50が大きく膨張した場合に、第1ケース20と第2ケース30が分離してケースが大きく開くことを抑制できる。セル50が大きく膨張して固定部40が外れたとしても、係合部41によって、内部空間14の拡大を許容しつつ、2つのケースの連結状態が維持される。このため、セル50が大きく露出するようなバッテリケース13の破損が抑制される。また、バッテリケース13によれば、セル50の膨張を吸収するための余分な空間をケース内に設ける必要がなく、バッテリ10の小型化を図ることができる。
【0049】
なお、上記実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、第1ケース20に凸部である爪22が、第2ケース30に凸部の受け部である開口33が形成されているが、第2ケース30に凸部が、第1ケース20に受け部が形成されていてもよい。また、上記実施形態では、第1ケース20のみに延出部23が形成されているが、2つのケースの両方に延出部が形成されていてもよい。
【0050】
図9は、実施形態の他の一例であるバッテリケース60を示す図であって、固定部61と係合部62を拡大して示す。図9に示すバッテリケース60は、ネジ63を用いて2つのケースが固定される点で、バッテリケース13と共通する。第1ケースにはボス部64が、第2ケースには筒状のネジ挿入部65がそれぞれ形成され、ネジ挿入部65の筒内に挿入されたネジ63がボス部64に締結されることで2つのケースが固定されている。一方、バッテリケース60は、1つのネジ挿入部65に固定部61と係合部62が設けられている点で、バッテリケース13と異なる。
【0051】
図9に示す例では、ネジ挿入部65の先端から離れたネジ挿入部65の中間部に固定部61が形成されている。図9(a)に示すように、固定部61は、ネジ挿入部65の内周面から内側に突出した凸部であって、ネジ63の頭を係止している。同様に、係合部62は、ネジ挿入部65の内周面から内側に突出した凸部であって、固定部61よりもネジ挿入部65の先端側に形成されている。図9(b)に示すように、セル50の膨張によって固定部61が破断した場合、ネジ63の頭が係合部62に引っ掛かって係止される。
【0052】
バッテリケース60によれば、セル50の膨張によって固定部61が外れた場合に、係合部62の機能により、固定部61で固定された状態よりも内部空間14が拡大した状態で、2つのケースの連結状態が維持される。この場合、ネジ挿入部65の筒内における固定部61と係合部62の間隔が、バッテリケース60の拡大代となる。
【0053】
なお、舌片部32に、前後方向に並ぶ2つの開口を形成し、後側の開口が固定部を、前側の開口が係合部をそれぞれ構成するものとしてもよい。或いは、前後方向長さが異なる第1開口、第2開口(前後方向長さ:第1開口<第2開口)がそれぞれ形成された2種類の舌片部を設け、第1開口が固定部を、第2開口が係合部をそれぞれ構成するものとしてもよい。
【0054】
図10は、実施形態の他の一例であるバッテリケース70を示す図であって、第1ケース71と第2ケース72の接続部分を拡大して示す。図10(a)はバッテリケース70の内圧が上昇していない通常の状態を、図10(b)はバッテリケース70の内圧が上昇してケースからガスが排気される状態をそれぞれ示す。
【0055】
図10に示すように、バッテリケース70には、内部空間14内の圧力が上昇して所定の閾値を超えたときに、外側に弾性変形して内部空間14を開放する排気部73が設けられている。図10に示す例では、排気部73は第1ケース71に設けられているが、両方のケースに設けられていてもよい。
【0056】
セル50に異常が発生した場合、セル50からバッテリケース13内にガスが噴出されて内圧が上昇することも想定されるが、バッテリケース70によれば、このような場合に排気部73からガスを逃がすことでケースの破損を抑制できる。また、排気部73は外側に開いてガスを排気した後、元の形状に戻って内部空間14を閉じることでバッテリケース70内への空気の流入を抑制でき、セル50の発火および継続的な燃焼を防止できる。
【0057】
排気部73は、例えば、第1ケース71の端部であって、第2ケース72との接続部分の一部に形成される。なお、排気部73は複数設けられていてもよい。排気部73は、他の部分よりもケースの壁の厚みが薄くなった部分であって、バッテリケース70の内圧が上昇したときに優先的に変形する。また、排気部73は可撓性を有し、弾性変形可能であることが好ましい。
【0058】
図10に示す例では、排気部73の先端部が第2ケース72の外側にオーバーラップしている。この場合、第2ケース72によって排気部73がケースの内側から支持されるため、外力に対する排気部73の強度が高くなる。また、第2ケース72の端部には、排気部73の先端部が嵌る凹部74が形成されている。排気部73の先端部が凹部74に嵌ることにより、ケースの外面がフラットになり、また内部空間14の閉塞性が向上する。
【符号の説明】
【0059】
1 電動アシスト自転車、2 フレーム、2a ヘッドパイプ、2b フロントフォーク、2c ダウンパイプ、2d シートパイプ、2e チェーンステー、2f シートステー、3a 前輪、3b 後輪、4 ハンドル、5 サドル、6 クランクアーム、7 ペダル、8 チェーン、9 前照灯、10 バッテリ、11 モータユニット、12 バッテリ設置部、13 バッテリケース、20 第1ケース、20A 前面部、20B,30B 側面部、20C,30C 上面部、20D,30D 下面部、21 ボス部、22 爪、23 延出部、24 凸部、25 把手、30 第2ケース、30A 後面部、31 ネジ挿入部、32 舌片部、33 開口、34 溝、40 固定部、41 係合部、42 ネジ、50 セル、51 保護基板
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