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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/00 20200101AFI20241122BHJP
【FI】
D06F33/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020521836
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019201
(87)【国際公開番号】W WO2019230384
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018102058
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】池水 麦平
(72)【発明者】
【氏名】脇田 克也
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】長馬 望
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0000574(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0065086(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内に横軸の回転軸を中心に回転可能に設けられた洗濯槽と、
前記水槽内に水を給水する給水部と、
前記水槽内に溜められた前記水を加熱する加熱部と、
前記水槽内に溜められた前記水の水位を検知する水位検知部と、
洗濯運転、および、前記水槽内に溜められた前記水を前記加熱部に加熱させ、前記加熱によって発生した蒸気で前記水槽内を除菌する槽除菌ステップを含む槽洗浄運転を実行する制御部とを備え、
前記回転軸は、所定角度で前上がりに傾斜して配設され、
前記制御部は、前記槽除菌ステップにおいて、前記水槽内に溜められる前記水の第1の水位を、前記洗濯運転で設定される最低の水位より低く、かつ、前記洗濯槽の低位側である後方側の下端が水面に接する水位より高く、かつ、前記洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水する第2の水位より低くなるように制御するとともに、前記加熱部による前記水槽内の前記水の昇温中に前記洗濯槽を前記水槽内の水が前記水槽の上面まで到達するほど巻き上げられない低速で回転駆動するように制御する洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記槽洗浄運転において前記水槽内を洗浄するすすぎステップをさらに実行し、
前記制御部は、前記すすぎステップにおいて、前記水槽内に溜められる前記水の水位を、前記洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水するように制御し、かつ、前記洗濯槽を前記槽除菌ステップ時より高速で、前記水槽内の水が巻き上げられ、前記水槽の上面まで到達する高速回転で回転駆動するように制御する請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記槽洗浄運転においては、前記水槽および前記洗濯槽の洗浄が行われ、
前記制御部は、前記槽洗浄運転において、前記槽除菌ステップ後に前記水槽内を洗浄するすすぎステップを実行する請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記洗濯機は、前記水槽内の前記水を前記水槽の底部から前記洗濯槽内へ導くように設けられた循環水路と、前記循環水路を通して前記水槽内の前記水を循環させるポンプとを
有し、
前記制御部は、前記槽洗浄運転において、前記ポンプを駆動し前記水槽内の前記水を前記循環水路に通して循環させるように制御する請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記すすぎステップにおいて、前記水槽内に溜められる水位は、前記第1の水位よりも水位が高い請求項2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯を行う洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯機においては、長期間の使用時において、水槽の内面または洗濯槽の外面に洗剤カスまたは汚れが堆積する。洗剤カスまたは汚れを栄養源または生息場所として、菌またはカビが繁殖する。これによって、洗濯後において洗濯機内または衣類から不快臭が発生する場合、または、洗濯した衣類に上述した汚れの一部が付着する場合がある。
【0003】
また、洗浄性能を向上させるために、洗濯槽内の洗濯衣類に洗濯水を吐出する機能であるシャワー機能を備えた洗濯機がある。この洗濯機においては、水槽内の洗濯水を循環させて洗濯槽内へ吐出させるための循環水路が設けられているものがある。しかし、循環水路は手入れが困難であることから、汚れ物質が循環水路内に堆積し、その堆積物を生息場所として菌またはカビが繁殖しやすい。そのため、循環水路内で不快臭が発生したり、洗濯衣類へ菌またはカビが付着したり、それらの代謝物またはバイオフィルムの付着が発生したりして、洗濯を行ったにもかかわらず、衣類が汚れる場合がある。
【0004】
上記の汚れを解決するために、以下の手順で洗濯槽内の除菌を行う洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、洗濯槽を洗浄するための槽洗浄用の専用洗剤等を用いて槽洗浄工程を行った後に、加熱手段により熱せられた空気を、送風手段によって洗濯槽内に送り込んで洗濯槽内を高温にする。さらに、加熱手段もしくは洗濯槽内に少量の水を給水して洗濯槽内を高温多湿な環境にして、洗濯槽内の除菌を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-253584号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、加熱された空気を介して、洗濯機内部の水槽ならびに洗濯槽等の部材、および、水槽内に溜められた水が加熱される。また、加熱手段もしくは槽内に給水された少量の水を加熱する場合において、空気を介して、洗濯機内部の部材が加熱される。これらの加熱では、空気の熱伝導率が水または他の物質に比べて低いことから、水槽内全体の昇温に時間がかかるという問題があった。
【0007】
すなわち、空気を介して水槽および洗濯槽を加熱する場合、水槽および洗濯槽は、熱容量が大きいため温度が上昇し難いという問題がある。特に、水槽内に設けられている洗濯槽は熱容量が大きい。そのため、加熱手段で発生する熱の多くは水温の上昇に使われ、水温は水槽および洗濯槽の温度よりも速く上昇する。しかしながら、水槽や洗濯槽に備えられる各種シール部材等は、耐熱性の条件において、使用可能な温度に上限があるため、過度の水温上昇を防止する必要がある。また、水槽内に溜められた水の水温が高くなるにしたがい、水槽の下方に連結される排水経路または循環経路等の配管などを通じて、当該水が持つ熱の洗濯機外への放熱が増加する。
【0008】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、水槽内の温度を迅速に上昇させ、水槽内の除菌を効率よく行うことができる洗濯機を提供することを目的とする。
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、水槽内に回転可能に設けられた洗濯槽と、水槽内に水を給水する給水部と、水槽内に溜められた水を加熱する加熱部と、水槽内に溜められた水の水位を検知する水位検知部と、洗濯運転、および、水槽内に溜められた水を加熱部に加熱させ、加熱によって発生した蒸気で水槽内を除菌する槽除菌ステップを含む槽洗浄運転を実行する制御部とを備えている。前記制御部は、槽除菌ステップにおいて、水槽内に溜められる水の第1の水位を、洗濯運転で設定される最低の水位より低く、かつ、洗濯槽の下端が水面に接する水位より高くなるように制御する。
【0010】
これによって、加熱された水から洗濯槽へ直接熱が伝わり、効率よく洗濯槽を加熱することができる。特に、洗濯槽は、洗濯機の水槽内の部材の中で、質量および熱容量が最も大きな部品であるので、洗濯槽を効率よく加熱することによって水槽内の温度を素早く上昇させることができる。したがって、水槽内の除菌を効率よく行うことができる。また、槽除菌ステップにおいて、水槽内に溜められる水の第1の水位を、通常の洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、洗濯槽の下端が水面に接する水位より高くすることにより、水の加熱に要する時間とエネルギーを少なくすることができる。
【0011】
本発明の洗濯機は、水槽内の除菌を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の概略構成図
図2】本発明の実施の形態1における洗濯機のブロック構成図
図3】本発明の実施の形態1における洗濯機の動作を示すタイムチャート
図4】本発明の実施の形態1における水温と除菌効果の関係を示すグラフ
図5】本発明の実施の形態1における洗濯機の槽洗浄運転時の水位を示す要部の概略構成図
図6】本発明の実施の形態1における洗濯機のすすぎステップ時の水位と水流を示す模式図
図7】本発明の実施の形態2における洗濯機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明の洗濯機は、水槽内に横軸の回転軸を中心に回転可能に設けられた洗濯槽と、水槽内に水を給水する給水部と、水槽内に溜められた水を加熱する加熱部と、水槽内に溜められた水の水位を検知する水位検知部と、洗濯運転、および、水槽内に溜められた水を加熱部に加熱させ、加熱によって発生した蒸気で水槽内を除菌する槽除菌ステップを含む槽洗浄運転を実行する制御部とを備え、回転軸は、所定角度で前上がりに傾斜して配設されている。制御部は、槽除菌ステップにおいて、水槽内に溜められる水の第1の水位を、洗濯運転で設定される最低の水位より低く、かつ、洗濯槽の低位側である後方側の下端が水面に接する水位より高く、かつ、洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水する第2の水位より低くなるように制御するとともに、前記加熱部による前記水槽内の前記水の昇温中に前記洗濯槽を低速で回転駆動するように制御する。
【0014】
これによって、水槽内に溜められる水の第1の水位を、洗濯槽の下端が水面に接する水位より高く設定することによって、加熱部で加熱された水と洗濯槽を接触させることができる。したがって、加熱された水を介して加熱部の熱を効率よく洗濯槽に伝え、素早く水槽内の温度を上昇させることができる。特に、水槽内に配設される洗濯槽は、質量および熱容量が大きいため、洗濯槽を効率よく加熱することによって、水槽内の温度を迅速に上昇させることができる。その結果、水槽内を効率的に除菌することができる。また、水槽内に溜められる水の第1の水位を、通常の洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、洗濯槽の低位側である後方側の下端が水面に接する水位より高く、かつ、洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水する第2の水位より低くすることにより、水の加熱に要する時間とエネルギーを少なくすることができる。
【0015】
さらに、制御部は、槽除菌ステップにおいて、加熱部による水槽内の水の昇温中に洗濯槽を水槽内の水が水槽の上面まで到達するほど巻き上げられない低速で回転駆動するように制御する。
【0016】
これによって、洗濯槽の周側面を順次水に浸すことができ、効率よく洗濯槽を加熱することができる。また、洗濯槽の回転によって、水槽内に溜められた温水が撹拌されるので、温水の蒸発または温水と空気との熱交換が促進される。その結果、水槽内の温度と湿度とを効率よく上昇させて、水槽内を効果的に除菌することができる。
【0017】
の発明は、特に、第の発明において、洗濯槽は、傾斜して配設され、制御部は、槽洗浄運転において水槽内を洗浄するすすぎステップをさらに実行し、制御部は、すすぎステップにおいて、水槽内に溜められる水の水位を、洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水するように制御し、かつ、洗濯槽を槽除菌ステップ時より高速で、水槽内の水が巻き上げられ、水槽の上面まで到達する高速回転で回転駆動するように制御する。
【0018】
これによって、槽除菌ステップで水槽内を効率的に除菌が行えることに加えて、すすぎステップでは、第2の水位で洗濯槽を高速回転することにより、水槽内の広い範囲を洗浄することが可能となる。特に、洗濯槽が傾斜している場合、例えば、前方側が高くなるように傾斜している場合は、洗濯槽の前方高位側の下端が水に浸かった状態で洗濯槽を回転させることにより、洗濯槽の周側面全体を水に接触させることができる。その結果、水槽内の洗浄効果を高めることができる。
【0019】
の発明は、特に、第1又は第2の発明において、槽洗浄運転においては、水槽および洗濯槽の洗浄が行われ、制御部は、槽洗浄運転において、槽除菌ステップ後に水槽内を洗浄するすすぎステップを実行するものである。
【0020】
これによって、水槽内で発生する蒸気によって水槽内の温度と湿度を高めることができ、一定温度以上の湿熱によって、水槽および洗濯槽の表面に生息する菌またはカビを死滅させることができる。そして、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等は、槽除菌ステップ後に実行されるすすぎステップで、洗い流して機外へ排出することができる。その結果、次の洗濯運転時に、水槽または洗濯槽から菌、カビ、バイオフィルム等が剥離することを抑えて被洗浄物への付着を抑制し、洗濯物を清浄に仕上げることができる。
【0021】
の発明は、特に、第の発明において、洗濯機は、水槽内の水を水槽の底部から洗濯槽内へ導くように設けられた循環水路と、循環水路を通して水槽内の水を循環させるポンプとを有し、制御部は、槽洗浄運転において、ポンプを駆動し水槽内の水を循環水路に通して循環させるように制御する。
【0022】
これによって、加熱された水が循環水路を流れて、循環水路に生息する菌またはカビを死滅させることができる。そして、循環水路から死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを剥離して、機外へと排出することができる。したがって、湿度が高くて、菌またはカビの生息場所となっている水周りの配管表面を清浄にし、洗濯運転時に、被洗浄物への汚れの付着を抑制することができる。
【0023】
の発明は、特に、第の発明において、すすぎステップにおいて、水槽内に溜められる水位は、第1の水位よりも水位が高い。
【0024】
これによって、すすぎステップでの洗浄範囲を、槽除菌ステップでの除菌範囲より広くすることができる。その結果、水槽内の洗浄効果を高めることができる。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の概略構成図である。図2は、本実施の形態における洗濯機のブロック構成図である。図3は、本実施の形態における洗濯機の槽洗浄運転時の動作を示すタイムチャートである。図4は、本実施の形態における水温と除菌効果の関係を示すグラフである。図5は、本実施の形態における洗濯機の槽洗浄運転時の水位を示す要部の概略構成図である。図6は、本実施の形態における洗濯機のすすぎステップ時の水位と水流を示す模式図である。
【0026】
図1図6において、本実施の形態の洗濯機は、洗濯槽であるドラム3の回転軸3aが水平方向(傾斜を含む)に設定された、いわゆるドラム式洗濯機である。筐体1内に弾性支持された水槽2が設けられている。水槽2内には、洗濯槽である有底円筒状のドラム3が、横軸の回転軸3aを中心に回転可能に設けられている。本実施の形態においては、ドラム3の回転軸3aは、角度θ(例えば、10度)で、ドラム3は前上がりの前方高位側に傾斜して配設されている。
【0027】
ドラム3の内周側面には、ドラム3の回転中心に向かって内方へ突出する複数のバッフル4と、水槽2内と連通する多数の小孔5が設けられている。ドラム3の前面側には開口部6が設けられている。使用者は開口部6によって、衣類等の洗濯物(以下、被洗浄物という)のドラム3への投入、および、ドラム3からの取り出しを行なう。水槽2の後面には、ドラム3を回転駆動するモータ7が配設されている。モータ7は、ブラシレス直流モータで構成され、インバータ制御によって回転速度が自在に変化可能である。
【0028】
水槽2内に給水する給水配管8は、水道の蛇口(図示せず)に接続され、給水部である給水弁9が設けられている。洗剤を投入する洗剤ケース10は、給水配管8と連通接続されている。洗剤ケース10は、給水路11を介して、水槽2と連通接続される。これにより、給水配管8から洗剤ケース10および給水路11を流れる水は、水槽2内に流入する。
【0029】
水槽2内の洗濯水は、排水経路12を通って機外へ排出される。排水経路12は、排水部である排水弁13と、排水フィルター14とを有する。洗濯水は、水槽2の底部に設けられた排水口15から排水フィルター14を経由し、開かれた排水弁13を通って機外へ排出される。排水フィルター14は、洗濯運転中に洗濯水が循環する位置に設けられ、被洗浄物から外れたボタン等を捕集する。この排水フィルター14は、筐体1の前面側から脱着可能に構成されている。
【0030】
循環水路16は、水槽2内の洗濯水を排水口15から水槽2内の前部に位置する開口部6側へと導くように設けられている。循環水路16には、洗濯水を循環させるポンプ17と吐出口18が設けられている。ポンプ17は、筐体1内の底部に設置され、排水フィルター14の下流側に配設されている。吐出口18は、ポンプ17の駆動により洗濯水をドラム3内に向けて吐出する。
【0031】
ヒータ19は、水槽2内に溜められた水を加熱する加熱部である。ヒータ19は、水槽2内の底部に配設され、水槽2内に所定量の水が溜められると水没する。水位検知部20は、水槽2内に給水された洗濯水の水位を検知する。温度検知部21は、水槽2内の水の温度を検知する。温度検知部21は、サーミスタ等で構成され、水槽2下部の浸水部に配設される。
【0032】
制御部22は、筐体1内に設けられ、入力される情報に基づいて、各種構成要素を制御して、洗濯運転および槽洗浄運転などを実行する。具体的には、制御部22には、図2のブロック構成図に示すように、布量検知部23で検知した被洗浄物の量と、水位検知部20で検知した洗濯水の水位と、温度検知部21で検知した水の温度と、回転検知部24で検知したドラム3の駆動量(例えば、回転数)等が、情報として入力される。制御部22は、これらの入力に基づいて、モータ7、給水弁9、排水弁13、ポンプ17、ヒータ19等を制御し、洗いステップ、すすぎステップ、脱水ステップ等を逐次制御して洗濯運転を実行する。
【0033】
また、制御部22は、後述するように、水槽2およびドラム3の洗浄を行う槽洗浄運転を実行する。槽洗浄運転は、槽除菌ステップと、すすぎステップとを少なくとも含む。槽除菌ステップは、ヒータ19によって水槽2内に溜められた水を加熱し、発生した蒸気で水槽2内を除菌する。すすぎステップは、槽除菌ステップ後に実行され、水槽2、ドラム3、循環水路16等を洗浄する。
【0034】
なお、使用者は、筐体1の前面に設けられた開閉自在な扉25を開くことにより、ドラム3の前面側に設けられた開口部6から被洗浄物を出し入れすることができる。また、筐体1の前面側上部に操作表示部26が設けられる。使用者は、操作表示部26を操作することによって、洗濯機を運転するための設定を行うことができる。また、操作表示部26には、設定内容および運転状況等が表示される。
【0035】
以上のように構成された洗濯機について、以下、その動作および作用を説明する。
【0036】
最初に、洗濯物を洗う、洗濯運転について説明する。洗濯運転は、少なくとも、洗いステップ、すすぎステップ、脱水ステップを含む。
【0037】
使用者は、扉25を開いて開口部6からドラム3内に被洗浄物を投入する。そして、使用者は操作表示部26の電源スイッチ(図示せず)を入れ、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始する。
【0038】
初めに、洗いステップが実行される。制御部22は、運転を開始すると、ドラム3内に投入された被洗浄物の量を布量検知部23によって検知する。被洗浄物の量は、ドラム3の回転時にモータ7にかかるトルク量またはモータ7の電流値等から検知することができる。制御部22は、検知された被洗浄物の量に応じて、水槽2内に給水する水量を設定する。また、制御部22は、洗濯運転の各ステップを実行する時間を設定する。さらに、制御部22は被洗浄物の量に応じて、予め設定された洗剤量から目安となる洗剤量を決定し、操作表示部26に表示する。使用者は、表示された洗剤量にしたがって洗剤を洗剤ケース10に投入する。
【0039】
次に、制御部22は、給水弁9を開く。これにより、水道からの水は、洗剤ケース10を経由して水槽2内に給水される。給水配管8を通って洗剤ケース10に入った水は、洗剤ケース10の中に投入されている洗剤を溶かし、洗濯水として水槽2内に供給される。このとき、排水弁13は閉じられているため、洗濯水は水槽2内の底部に溜まる。水槽2内の底部に溜まった洗濯水は、小孔5からドラム3内に流入する。
【0040】
次に、制御部22は、水位検知部20によって水槽2内に給水される水量を検知する。制御部22は、給水された水量が、被洗浄物の量に応じて設定された所定の水量になったと判断すると、給水弁9を閉じる。なお、制御部22は、給水中において、被洗浄物がドラム3の中で転動する回転数(例えば、20rpm)にて一方向へドラム3を回転駆動する。これによって、被洗浄物への洗濯水の浸透が加速される。なお、水槽2内の洗濯水の水位は、洗濯水の被洗浄物への吸水によって設定水位から低下する。そこで、制御部22は、給水弁9を再び開いて、洗濯槽2内に補給し、洗濯水の水位を設定水位に戻す。
【0041】
次に、制御部22は、給水が終わるとポンプ17を駆動する。これによって、水槽2内の底部に溜まった水は、排水口15から循環水路16へ導かれる。循環水路16へ流入した水は、循環水路16を流れ、吐出口18からドラム3内へ吐出される。これにより、被洗浄物に浸透した洗濯水は、小孔5から水槽2内に流出し、排水口15から循環水路16を通る経路で循環する。
【0042】
次に、制御部22は、モータ7によってドラム3を所定の回転数(例えば、42rpm)で、所定時間毎に交互に正逆回転駆動し、被洗浄物の叩き洗いを実行する。叩き洗いにおいては、被洗浄物がバッフル4によってドラム3の回転方向へ持ち上げられた後、ドラム3内の上部から落下して洗浄が行われる。制御部22は、上記の洗いステップを設定された所定時間(例えば、10分間)実行する。その後、制御部22は、排水弁13を開いて洗濯水を機外へ排出し、洗いステップを終了する。制御部22は、洗いステップに続いて、すすぎステップ、脱水ステップの順に実行し、洗濯運転を終了する。すすぎステップ、脱水ステップの詳細な説明は省略する。
【0043】
なお、上述の洗濯水は、洗濯機で使用される水の総称である。つまり、洗濯水は、洗濯機に給水される洗剤を含まない水や、投入された洗剤などを含む洗い水、すすぎステップで洗剤成分および汚れなどを洗い流す、すすぎ水などを含む。
【0044】
次に、槽洗浄運転について説明する。槽洗浄運転は、洗濯運転とは別に行われ、水槽2、ドラム3、循環水路16等を洗浄する。槽洗浄運転は、少なくとも、槽除菌ステップ、排水ステップ、すすぎステップ、および、排水ステップを有し、これらのステップが順に実行される。
【0045】
使用者は、操作表示部26の電源スイッチ(図示せず)を入れ、槽洗浄運転を設定した後、スタートスイッチ(図示せず)を操作して運転を開始する。初めに、槽除菌ステップが実行される。
【0046】
制御部22は、槽除菌ステップを開始すると、図3のタイムチャートに示すように、給水弁9を開く。これにより、水道からの水は、給水配管8を通り洗剤ケース10を経由して水槽2内に給水される。このとき、洗剤ケース10の中に洗剤は投入されていないため、洗剤を含まない水が水槽2内に給水される。水槽2内の底部に溜まった水は、小孔5からドラム3内に流入する。
【0047】
次に、制御部22は、水槽2内に給水される水量を水位検知部20で検知する。制御部22は、水位検知部20の出力に基づいて、所定の水位L1まで給水して給水弁9を閉じる。水位L1は、ドラム3の後方側の下端3bが水面に接する水位より高く(図5参照)、通常の洗濯運転で給水される最低水位より低い水位に設定されている。なお、水位L1は、ヒータ19が水没する水位である。
【0048】
次に、制御部22は、給水後、温度検知部21の出力に基づいてヒータ19への通電を制御し、水槽2の底部に溜められた水を加熱する。その結果、水槽2内に蒸気が発生する。このとき、加熱された水とドラム3の下部とが接触しているため、ドラム3が温水で直接加熱される。したがって、質量および熱容量の大きいドラム3が効率よく加熱されて、水槽2内の温度を迅速に上昇させることができる。
【0049】
そして、制御部22は、ヒータ19への通電とほぼ同時、もしくはその前後から、ドラム3を低速(例えば、20rpm)で回転駆動する。これにより、ドラム3の周側面を温水で全体的に加熱することができる。また、加熱された水が撹拌されて蒸気の発生を促進することができる。すなわち、水槽2内の水の加熱による昇温中に、ドラム3は回転駆動され、水槽2内を低温の段階から素早く加熱することができる。
【0050】
このように、水槽2内を加熱することで、水槽2内を除菌することができる。除菌のための水槽2内の温度は、50度以上90度以下に昇温させることが望ましい。一般的に、カビまたは菌の除菌は高温であるほど有利である。しかしながら、所定の温度以上に設定すると、洗濯機の構造体である樹脂材料の耐熱温度に対する考慮が必要である。また、供給された水を加熱して高温にするのに時間がかかる。したがって、より短時間、低温でも高温時と同じ除菌効果を実現するために、上述のとおり、水槽2内の温度は、50度以上90度以下に昇温させることが望ましい。
【0051】
図4は、カビに対する加熱温度および保持時間(横軸)と、除菌効果(縦軸)の関係を示している。加熱温度の関係は、図4において温度a<温度b<温度cである。例えば、温度a=45度、温度b=48度、温度c=50度である。
【0052】
加熱温度が低温になるほどカビまたは菌の死滅に要する時間が長くなる。より短い時間で、生息しているカビまたは菌の数を減少させるためには、加熱温度が高いほど有利であることが確認される。
【0053】
例えば、菌数を1.0E+07から1.0E+05に減少させるのに要する時間を比較する。温度aでは10分超であるのに対して、温度cでは5分未満に短縮される。また、同じ保持時間で減少する菌数を比較する。保持時間0分から5分のあいだで、温度aでは菌数が1.0E+07から1.0E+06程度に減少するのに対して、温度cでは菌数が1.0E+07から1.0E+02未満まで減少する。そこで、本実施の形態では、カビに対する加熱温度を50度とする。
【0054】
制御部22は、温度検知部21によって、水槽2内の洗濯水の水温を検知する。制御部22は、水温が設定温度T1に到達したことを検知すると、ヒータ19を制御して、設定温度T1付近の温度を所定時間維持する。例えば、設定温度T1が55度の場合、制御部22は、水温が55度に到達するとヒータ19をOFFする。また、制御部22は、水温が53度に低下するとヒータ19をONする。以上のように、ヒータ19をONまたはOFFすることにより、水槽2内の温度を50度以上に保持することができる。なお、制御部22は、水温が設定温度T1に到達後も、槽除菌ステップを終了するまで、ドラム3の回転駆動を継続して行う。
【0055】
また、制御部22は、水温が設定温度T1に到達するとポンプ17を駆動する。これにより、以下のように、水槽2内の加熱された水が循環水路16に流れて循環する。水槽2内の加熱された水は、水槽2の底部に設けられた排水口15から吸引され、排水フィルター14を通過して循環水路16へ導かれる。循環水路16へ流入した水は、吐出口18からドラム3内へ吐出される。そして、ドラム3内へ吐出された水は小孔5から水槽2内に流出し、排水口15から循環水路16を通る経路で循環する。
【0056】
以上のように、循環水路16を通る経路を加熱水が流れて循環することで、循環水路16を通る経路内に生息する菌またはカビを死滅させて除菌することができる。このとき、制御部22は、ポンプ17を低速で駆動させ、菌やカビを加熱水と長時間、接触させることが好ましい。具体的には、加熱水が、循環水路16を通る経路内を、滞留することなく、流れる程度の速度で加熱水を循環させればよい。ポンプ17の駆動は、連続または間欠のいずれでもよい。
【0057】
制御部22は、上記の槽除菌ステップを予め設定された所定時間(例えば、水温が設定温度T1に到達後10分間)実行し、ヒータ19の通電を停止する。
【0058】
次に、制御部22は、槽除菌ステップ続いて排水ステップを実行する。排水ステップでは、槽除菌ステップで使用した加熱水を排水する。そのために、制御部22は、排水弁13を開く。これによって、加熱水は、排水口15から排水経路12を通して機外へ排水される。
【0059】
次に、制御部22は、槽除菌ステップ、排水ステップに続いてすすぎステップを実行する。すすぎステップでは、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを、水槽2またはドラム3の壁面から剥ぎ取り、洗い流す。以下、すすぎステップについて詳細を説明する。
【0060】
まず、制御部22は、給水弁9を開き、水位検知部20の出力に基づいて、所定水位L2まで水槽2内に水を給水する。これを図5の概略構成図に示す。所定水位L2は、槽除菌ステップ時の所定水位L1より高い。例えば、水位L2は、前方側(図5の左側)が高くなるように傾斜したドラム3では、高位側の下端3cが浸水する水位に設定されている。
【0061】
制御部22は、水槽2内に給水される水量を水位検知部20で検知する。制御部22は、水位検知部20の出力に基づいて、所定の水位L2まで給水して給水弁9を閉じる。水槽2内に所定水位L2まで水が溜められると、ドラム3の下部が水に十分に浸かった状態となる。なお、水位検知部20は、水槽2内に給水される水量を検知することで水位L1、L2を検知してもよい。
【0062】
制御部22は、所定水位L2まで水が溜められると、ドラム3を槽除菌ステップ時より高速(例えば、100rpm)で回転駆動する。これにより、水槽2内の水は、ドラム3の高速回転によって上方へ巻き上げられ、水槽2の上面まで到達する。図6に示されるように、前方側(図6の左側)が上向きに傾いたドラム3では、高位側の下端3cが水に浸っているため、ドラム3全体を洗浄することができる。
【0063】
以上のように、制御部22は、槽除菌ステップ後にすすぎステップを実行する。これにより、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを、水槽2またはドラム3の壁面から剥がすことができ、洗い流すことができる。
【0064】
このとき、制御部22は、水位検知部20によって所定の水位L2を検知すると、給水弁9を閉じてポンプ17を駆動する。これにより、水槽2内の水が循環水路16を流れて循環し、除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを、循環水路16内の壁面から剥がすことができる。制御部22は、上記のすすぎステップを予め設定された所定時間(例えば、30分間)実行し、ドラム3の回転駆動を停止する。
【0065】
最後に、制御部22は、すすぎステップに続いて排水ステップを実行する。排水ステップでは、水槽2内および循環水路16内の水を機外に排水する。水槽2内および循環水路16内の水には、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れが含まれる。
【0066】
制御部22は、排水弁13を開いて水槽2内および循環水路16内の水を排水する。その後、ドラム3を高速(例えば、300rpm)で短時間回転させる。これによって、ドラム3に付着している水滴などが機外へ排出され、制御部22は排水ステップを終了し、槽洗浄運転を完了する。
【0067】
以上のように、本実施の形態の洗濯機は、水槽2内に回転可能に設けられたドラム3と、水槽2内に水を給水する給水弁9と、水槽2内に溜められた水を加熱するヒータ19と、水槽2内に溜められた水の水位を検知する水位検知部20と、洗濯運転、および、水槽内に溜められた水を加熱部に加熱させ、加熱によって発生した蒸気で水槽内を除菌する槽除菌ステップを含む槽洗浄運転を実行する制御部22とを備えている。制御部22は、槽除菌ステップにおいて、水槽2内に溜められる水の第1の水位L1を、洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、ドラム3の下端3bが水面に接する水位より高くなるように制御する。ドラム3が傾斜している場合、第1の水位L1は、ドラム3の低位側である後方側の下端が水面に接する水位よりも高く、かつ、前記洗濯槽の高位側である前方側の下端が浸水する第2の水位より低くなるように制御するとともに、前記加熱部による前記水槽内の前記水の昇温中に前記洗濯槽を前記水槽内の水が前記水槽の上面まで到達するほど巻き上げられない低速で回転駆動するように制御する。
【0068】
これによって、ヒータ19で加熱された水とドラム3とが接触することにより、ヒータ19の熱が効率よくドラム3に伝えることができる。そして、ドラム3の放熱によって素早く水槽2内の温度を上昇させることができる。その結果、水槽2内を効率的に除菌することができる。特に、水槽2内に配設されるドラム3は、質量および熱容量が大きいので、ドラム3を効率よく加熱することによって、水槽2内の温度を迅速に上昇させることができる。また、槽除菌ステップにおいて、水槽2内に溜められる水の水位を、通常の洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、ドラム3の下端3bが水面に接する水位より高くすることにより、水の加熱に要する時間とエネルギーを少なくすることができる。
【0069】
また、ドラム3は、横軸を中心に回転駆動し、制御部22は、槽除菌ステップにおいて、水槽2内の水の昇温中にドラム3を回転駆動するように制御する。
【0070】
これによって、ドラム3の周側面を順次水に浸すことができ、ドラム3を効率よく加熱することができる。また、ドラム3の回転によって温水を撹拌することができるので、温水の蒸発または温水と空気との熱交換が促進される。その結果、水槽2内の温度と湿度を効率よく上昇させて、水槽2内を効果的に除菌することができる。
【0071】
また、ドラム3は、傾斜して配設され、制御部22は、槽洗浄運転において、水槽2内を洗浄するすすぎステップをさらに実行する。すすぎステップにおいて、ドラム3の高位側の下端3cが浸水する第2の水位L2まで給水され、かつ、ドラム3は槽除菌ステップ時より高速で回転駆動される。
【0072】
これによって、槽除菌ステップでは、水槽2内を効率的に除菌が行える。また、すすぎステップでは、高水位で高速回転とすることにより、水槽2内の広い範囲を洗浄することが可能となる。その結果、水槽2内の洗浄効果を高めることができる。特に、ドラム3が傾斜している場合、例えば、前方側が高くなるように傾斜している場合は、ドラム3の前方高位側の下端3cが水に浸かった状態でドラム3が回転することにより、ドラム3の周側面全体を水に接触させることができる。
【0073】
また、槽洗浄運転においては水槽2およびドラム3の洗浄が行われ、制御部22は槽洗浄運転において、槽除菌ステップ後にすすぎステップを実行するものである。
【0074】
これによって、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等を、すすぎステップで洗い流して機外へ排出することができる。その結果、次の洗濯運転時に、水槽2またはドラム3から菌、カビ、バイオフィルム等が剥離することを抑えて被洗浄物への付着を抑制し、洗濯物を清浄に仕上げることができる。
【0075】
また、洗濯機は、水槽2内の水を水槽2の底部からドラム3内へ導くように設けられた循環水路16と、循環水路16を通して水槽2内の水を循環させるポンプ17とを有し、制御部22は、槽洗浄運転において、ポンプ17を駆動し水槽2内の水を循環水路16に通して循環するように制御する。
【0076】
これによって、加熱された水を循環水路16に流すことで、循環水路16に生息する菌またはカビを死滅させるとともに、死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを循環水路16から剥離して、機外へと排出することができる。したがって、湿度が高くて、菌またはカビの生息場所となっている水周りの配管表面を清浄にし、洗濯運転時に、被洗浄物への汚れの付着を抑制することができる。
【0077】
また、すすぎステップの第2の水位L2は、槽除菌ステップの第1の水位L1よりも水位が高い。
【0078】
これによって、すすぎステップでの洗浄範囲を、槽除菌ステップでの除菌範囲より広くすることができる。その結果、水槽2内の洗浄効果を高めることができる。
【0079】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における洗濯機の概略構成図である。本実施の形態の特徴は、洗濯槽3の回転軸が縦方向(図7の垂直方向)に設定された、いわゆる縦型洗濯機に実施の形態1に係る洗濯機の一部を適用したものである。本実施の形態に係る構成において、実施の形態1と同一の構成は同一の符号を付して、詳細な説明は、実施の形態1のものを援用する。
【0080】
図7において、水槽2内に洗濯槽3が回転可能に設けられている。洗濯槽3内の底部に攪拌翼27が回転可能に設けられている。攪拌翼27は、モータ7によって回転駆動され、水槽2内に溜められた洗濯水を撹拌する。
【0081】
本実施の形態の縦型洗濯機においても、実施の形態1と同様に、制御部22は、水槽2および洗濯槽3等の洗浄を行う槽洗浄運転を制御する。槽洗浄運転は、洗濯運転とは別に行われ、少なくとも、槽除菌ステップ、排水ステップ、すすぎステップ、排水ステップを有し、これらのステップが順に実行される。
【0082】
槽除菌ステップにおいて、制御部22は、水槽2内に給水される水量を水位検知部20で検知する。制御部22は、水位検知部20の出力に基づいて、水槽2内に所定水位L1まで給水して給水弁9を閉じる。所定水位L1は、洗濯槽3の下端が水面に接する水位より高く、通常の洗濯運転で給水される最低水位より低い水位に設定されている。
【0083】
制御部22は、給水後、温度検知部21の出力に基づいてヒータ19への通電を制御し、水槽2の底部に溜められた水を加熱する。その結果、水槽2内に蒸気が発生する。このとき、加熱された水と洗濯槽3の下部とが接触しているため、洗濯槽3が温水で直接加熱される。したがって、質量および熱容量の大きい洗濯槽3が効率よく加熱されて、水槽2内の温度を迅速に上昇させることができる。
【0084】
そして、制御部22は、ヒータ19への通電とほぼ同時、もしくはその前後から、攪拌翼27を回転駆動する。この回転駆動により、水槽2内に溜められた洗濯水は撹拌される。これにより、洗濯槽3の周側面を温水で全体的に加熱することができる。また、加熱された水が撹拌されて蒸気の発生を促進することができる。すなわち、水槽2内の水の加熱による昇温中に、水槽2内を低温の段階から素早く加熱することができる。このように、水槽2内を加熱することで、水槽2内を除菌することができる。
【0085】
そして、制御部22は、温度検知部21によって、水槽2内の洗濯水の水温を検知する。制御部22は、水温が設定温度T1に到達したことを検知すると、ヒータ19をONまたはOFFする制御して、設定温度T1付近の温度を所定時間維持する。このように、水槽2内を加熱することで、水槽2および洗濯槽3の壁面に生息する菌やカビを死滅させる。
【0086】
制御部22は、上記の槽除菌ステップを予め設定された所定時間(例えば、設定温度T1に到達後10分間)実行し、ヒータ19の通電を停止する。
【0087】
次に、制御部22は、槽除菌ステップ続いて排水ステップを実行する。排水ステップでは、槽除菌ステップで使用した加熱水を排水する。そのために、制御部22は、排水弁13を開く。これによって、加熱水は排水口(図示しない)から排水経路12を通して機外へ排水される。
【0088】
次に、制御部22は、槽除菌ステップ、排水ステップに続いてすすぎステップを実行する。すすぎステップでは、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを、水槽2または洗濯槽3の壁面から剥ぎ取り、洗い流す。
【0089】
まず、制御部22は、給水弁9を開き、水位検知部20の出力に基づいて、所定水位L2まで水槽2内に水を給水して給水弁9を閉じる。そして、制御部22は、攪拌翼27を高速で回転駆動する。この回転駆動により、水槽2内で水流が発生する。そして、水面の周囲がV字状に上昇し、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れを洗い流す。このとき水槽2内に溜められる水の水位L2は、槽除菌ステップにおいて水槽2内に溜められる水の水位L1よりも高いことが好ましい。
【0090】
最後に、制御部22は、すすぎステップに続いて排水ステップを実行し、槽洗浄運転を終了する。排水ステップでは、水槽2内の水を機外に排水する。水槽2内の水には、槽除菌ステップで死滅した菌、カビ、バイオフィルム等の汚れが含まれる。制御部22は、排水弁13を開いて水槽2内の水を排水する。なお、攪拌翼27は、洗濯槽3と一体的に回転駆動してもよい。
【0091】
以上のように、本実施の形態の洗濯機は、水槽2内に回転可能に設けられた洗濯槽3と、水槽2内に水を給水する給水弁9と、水槽2内に溜められた水を加熱するヒータ19と、水槽2内に溜められた水の水位を検知する水位検知部20と、洗濯運転、および、水槽内に溜められた水を加熱部に加熱させ、加熱によって発生した蒸気で水槽内を除菌する槽除菌ステップを含む槽洗浄運転を実行する制御部22とを備えている。制御部22は、槽除菌ステップにおいて、水槽2内に溜められる水の第1の水位L1を、洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、洗濯槽3の下端が水面に接する水位より高くなるように制御する。
【0092】
これによって、ヒータ19で加熱された水と洗濯槽3とが接触することにより、ヒータ19の熱が効率よく洗濯槽3に伝えることができる。そして、洗濯槽3の放熱によって素早く水槽2内の温度を上昇させることができる。その結果、水槽2内を効率的に除菌することができる。特に、水槽2内に配設される洗濯槽3は、質量および熱容量が大きいので、洗濯槽3を効率よく加熱することによって、水槽2内の温度を迅速に上昇させることができる。また、槽除菌ステップにおいて、水槽2内に溜められる水の水位を通常の洗濯運転で設定される最低水位より低く、かつ、洗濯槽3の下端が水面に接する水位より高くすることにより、水の加熱に要する時間とエネルギーを少なくすることができる。
【0093】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、水槽内の除菌を効率よく行うことができるので、洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0094】
2 水槽
3 ドラム(洗濯槽)
7 モータ
9 給水弁(給水部)
13 排水弁(排水部)
16 循環水路
17 ポンプ
19 ヒータ(加熱部)
20 水位検知部
21 温度検知部
22 制御部
27 攪拌翼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7