(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H05B6/12 335
(21)【出願番号】P 2021025612
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】古澤 佐登志
(72)【発明者】
【氏名】藤濤 知也
(72)【発明者】
【氏名】貞平 匡史
(72)【発明者】
【氏名】ラフィー ザリナ
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277791(JP,A)
【文献】特開2017-224171(JP,A)
【文献】特開2018-085224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を載置する載置部と、
前記載置部の下方に配置され、前記容器を加熱する一つ以上の加熱部と、
前記加熱部の略上方に設けられ、前記容器の底部周辺
であって前記容器を含まない前記載置
部の温度を第1の温度情報として検知する赤外線センサと、
前記第1の温度情報と、あらかじめ取得した前記載置部の放射率とに基づいて前記赤外線センサによって検知された前記載置部の温度を第3の温度情報へと補正し、前記第3の温度情報を用いて前記容器内の温度についての第4の温度情報を推定する容器内温度推定部と、
前記第
4の温度情報に基づいて前記加熱部の加熱量を制御する加熱制御部と
を備える加熱調理器。
【請求項2】
容器を載置する載置部と、
前記載置部の下方に配置され、前記容器を加熱する一つ以上の加熱部と、
前記加熱部の略上方に設けられ、前記容器の底部周辺であって前記容器を含まない前記載置部の温度を第1の温度情報として検知する赤外線センサと、
前記第1の温度情報と、あらかじめ取得した前記載置部の放射率とに基づいて前記赤外線センサによって検知された前記載置部の温度を第3の温度情報へと補正し、前記第3の温度情報を用いて前記容器内の温度についての第4の温度情報を推定する容器内温度推定部と、
前記加熱部の加熱量を制御する加熱制御部と、
前記容器を覆う遮蔽物の有無を推定する遮蔽物判定部と、
温度情報を選択的に出力する温度選択部と
を備え、
前記赤外線センサは、複数の画素を備え、前記容器の前記載置部よりも上方の温度を第2の温度情報としてさらに検知し、
前記第2の温度情報は、前記容器に蓋が存在する場合には前記蓋の表面温度を表し、前記容器に蓋が存在しない場合には前記容器内の温度を表し、
前記温度選択部は、前記遮蔽物判定部の判定結果に基づいて、前記第1の温度情報
を容器内温度推定部に、または前記第2の温度情報
を前記加熱制御部に出力し、
前記容器内温度推定部は、前記第1の温度情報を受信すると前記第4の温度情報を前記加熱制御部に出力し、
前記加熱制御部は、前記温度選択部
または前記容器内温度推定部が出力した温度情報に基づいて、前記加熱部の加熱量を制御する
、加熱調理器。
【請求項3】
前記温度選択部が出力した温度情報に基づいて、調理状況を判断する調理状況判断部をさらに備え、
前記加熱制御部は、前記調理状況判断部の判断結果に応じて、前記加熱部の前記加熱量を制御する、請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記載置部の上部に配置され、且つ前記加熱部によって加熱されない熱伝導板を備え、
前記容器は、前記熱伝導板上に配置され、
前記赤外線センサは、
前記載置部の温度に代えて前記容器の底部周辺
であって前記容器を含まない前記熱伝導
板の温度情報を前記第1の温度情報として検知
し、
前記容器内温度推定部は、前記第1の温度情報と、前記載置部の放射率に代えてあらかじめ取得した前記熱伝導板の放射率とに基づいて前記赤外線センサによって検知された前記熱伝導板の温度を前記第3の温度情報へと補正する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上方に設置した赤外線センサを用いて鍋内の状態を検知する加熱調理器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、加熱調理中の調理器具を含む領域の熱画像を撮影する赤外線カメラと、ユーザへ情報を通知可能な通知装置とにネットワークを介して接続し、ユーザの料理を支援する調理支援システムにおける調理支援方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている加熱調理器は、赤外線センサによって調理物の温度を判断する。そのため、赤外線センサと調理物との間に蓋等の遮蔽物が介在すると、調理物の表面から放射されるエネルギが遮蔽物により遮られ、赤外線センサが調理物の温度を検知することができなくなる。それにより、加熱調理器は、遮蔽物が介在すると、当該温度に基づく処理を適切に行うことができない。
【0006】
本開示は、赤外線センサと調理物との間に遮蔽物が介在した場合であっても、調理状況を判断できる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の加熱調理器は、容器を載置する載置部と、前記載置部の下方に配置され、前記容器を加熱する一つ以上の加熱部と、前記加熱部の略上方に設けられ、前記容器の底部周辺の前記載置部上の温度を第1の温度情報として検知する赤外線センサと、前記第1の温度情報に基づいて前記加熱部の加熱量を制御する加熱制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、赤外線センサと調理物との間に遮蔽物が介在した場合であっても、調理状況を判断できる加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る加熱調理器の概略的な構成を示す図
【
図2】一実施形態に係る加熱調理器の概略的な構成を示す側面図
【
図3】一実施形態に係る加熱調理器の概略的な構成を示す側面図
【
図4】一実施形態に係る加熱調理器の通信接続を示すブロック図
【
図5】一実施形態に係る加熱調理器による加熱制御処理を示すフローチャート
【
図6】一実施形態に係る加熱調理器の赤外線センサの視野領域の一例を示す図
【
図7】
図6に示す視野領域を赤外線センサが検知した温度情報の一例を示す図
【
図8】一実施形態に係る加熱調理器の赤外線センサの視野領域の一例を示す図
【
図9】赤外線センサが検知した温度の変化の一例を示すグラフ
【
図10】一実施形態に係る加熱調理器の変形例の概略的な構成を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施形態を説明する。ただし、以下に説明する構成は、本開示の一例に過ぎず、本開示は下記の実施形態に限定されることはなく、これら実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(実施形態)
図1は、本開示の実施形態に係る加熱調理器1の概略的な構成を示す図である。
図2は、加熱調理器1を側方から見た概略的な側面図である。
図2において、加熱調理器1は蓋等の遮蔽物2を有しない容器(鍋)3が載置されている。容器3には、調理対象として調理物4が収容されている。以下、基本的に
図1を参照しつつ、本開示の実施形態に係る加熱調理器1の構成を説明する。なお、
図1において、X軸方向は加熱調理器1の長手方向を示し、Y軸方向は前後方向を示し、Z軸方向は高さ方向を示す。また、X軸の正の方向を右方、負の方向を左方とする。本開示に係る加熱調理器1によれば、赤外線センサと調理物との間に蓋等の遮蔽物が介在した場合であっても、沸騰や吹きこぼれ等の容器内の調理状況を判断することができる。それによって、加熱調理器は、吹きこぼれが発生しないように加熱制御をすることができる。
【0012】
図1に示すように、加熱調理器1は、本体5、トッププレート6、加熱コイル7A~7C、赤外線センサ8、通信回路9、操作パネル10および制御装置20を備える。
【0013】
本体5は、内部に加熱コイル7A~7Cおよび制御装置20等を有する。また、本体5は、上面にトッププレート6を、側面に操作パネル10を有する。
【0014】
トッププレート6は、その上部に容器3を載置することができる載置部である。トッププレート6は、本体5の上面に配置される。トッププレート6は、加熱コイル7A~7Cが発生させる磁場が透過することができる、例えばガラスなどの材料で構成されている。
【0015】
加熱コイル7A~7Cは、容器3を加熱する加熱部であり、トッププレート6の下方に配置される。加熱コイル7A~7Cは、高周波電流が供給されると誘導磁界を発生させる。加熱コイル7A~7Cは、当該磁界によってトッププレート6上に配置された容器3の底面等を加熱し、それによって容器3内に収容された調理物4を加熱することができる。
【0016】
図1に示すように、三つの加熱コイル7A、7B、7Cを設けることにより、加熱調理器1は、三つの調理物4を同時に加熱調理可能である。
図1では、調理物4を収容する一つの容器3が加熱コイル7Aに載置された例が示されている。
【0017】
赤外線センサ8は、トッププレート6上から放射される赤外線を検知することで、当該赤外線に基づいてトッププレート6上の温度を温度情報として上方から検知する温度検出部であり、例えば、赤外線カメラ、熱画像カメラ等であってもよい。以下、赤外線センサ8が物体から放射されている赤外線を検知することで当該赤外線に基づいて当該物体の温度を検知することを、簡単に、赤外線センサ8によって温度を検知する、という。赤外線センサ8は、トッププレート6を上方から検知することができるように、トッププレート6の略上方に設けられている。赤外線センサ8は、通信回路9に接続されており、取得した温度情報を通信回路9へと出力する。
【0018】
本実施形態において、赤外線センサ8の視野領域は、例えば複数の格子状の領域(例えば32×32の1024個の領域)に分割されている。それぞれの領域が、赤外線検出素子(すなわち、画素)によって温度検知する温度検出領域である。赤外線センサ8の視野領域は、上述の格子状に限定されず、例えば、赤外線センサ8は、単一の赤外線検出素子を備え、当該素子によって所望の領域の温度を検出してもよい。また、赤外線センサ8は、複数の赤外線検出素子を備え、それぞれの素子によって、所望の複数の領域の温度を検出してもよい。
【0019】
通信回路9は、赤外線センサ8が検知した温度情報を、有線または無線により通信回線を介して、制御装置20の構成部品の一つである通信回路22へと送信するインターフェース装置である。
【0020】
操作パネル10は、加熱調理器1を動作させるための入力装置である。操作パネル10は、本体5の前方側面に設けられている。加熱調理器1のユーザは、操作パネル10を操作することで、加熱調理器1を使用する。操作パネル10による入力情報は、制御装置20の制御回路21へと出力され、制御回路21によって処理される。操作パネル10は、加熱調理器1の電源のオン、オフ、加熱コイル7A~7Cの加熱量など、加熱調理器1を使用する上で必要な情報を表示するディスプレイ11を備えてもよい。操作パネル10は、操作入力部12を備え、例えば、あらかじめ設定されている所定のモードを動作させることができる。加熱調理器1は、例えば、料理に応じて適切な火力で加熱コイル7A~7Cを制御するモードや、吹きこぼれを防止するように自動的に火力を制御するモードを備えてもよい。
【0021】
また、本実施形態に係る加熱調理器1は、加熱コイル7A~7Cのそれぞれをユーザが操作するための複数の操作入力部13A~13Cおよび表示部14を備える。表示部14は加熱調理器1のトッププレート6の前側に配置され、加熱コイル7A~7Cの加熱量を表示する。操作入力部13A~13Cは、加熱調理器1のトッププレート6において、表示部14の前側に配置されている。ユーザは、操作入力部13~13Cを操作することで、例えば、加熱コイル7A~7Cの加熱量を制御する。操作入力部13Aと加熱コイル7A、操作入力部13Bと加熱コイル7B、操作入力部13Cと加熱コイル7Cとは、それぞれ対応している。操作入力部13Aの操作指示に応じて、後述する加熱制御部24は、加熱コイル7Aの加熱の開始又は停止を制御する。操作入力部12、13A~13Cは、物理的なボタンであってもよいし、タッチパネルであってもよい。
【0022】
上述するように、トッププレート6には容器3が載置される。容器3は、加熱調理される調理対象である調理物4を収容し、トッププレート6の下方に配置されている加熱コイル7A~7Cのいずれかによって加熱される。容器3は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅等の等の金属材料によって構成され得る。
【0023】
加熱調理中、容器3は、調理中に蓋等の遮蔽物2によって上方を覆われる可能性がある。遮蔽物2によって容器3の上方が覆われると、赤外線センサ8によって検知した容器3内に相当する領域の温度が、実際の容器3内の温度とは大きく異なってしまう可能性がある。そのため、本実施形態に係る加熱調理器1は、取得した温度情報に基づいて遮蔽物2の有無を判定し、判定結果によって加熱制御処理に用いる温度情報を選択する。
【0024】
図2に示すように容器3に遮蔽物2が取り付けられていない場合、赤外線センサ8は、容器3内の調理物4から放射されている、調理物4の放射率に応じたエネルギE1を有する赤外線を検知することができる。したがって、後述する加熱調理器1の制御回路21は、調理物4から検知した温度に基づいて、加熱量を制御することができる。
【0025】
容器3が遮蔽物2によって上方を覆われている場合、赤外線センサ8は、容器3内の調理物4から放射された赤外線を検知できない。
図3は、
図2と同じく、加熱調理器1を側方から見た概略図であり、加熱調理器1は遮蔽物2を有する容器3が載置されている。
図3に示すように容器3に遮蔽物2が取り付けられている場合、赤外線センサ8は、容器3内の調理物4から放射されている、調理物4の放射率に応じたエネルギE1を有する赤外線を検知できず、容器3を覆う遮蔽物2から放射されている、遮蔽物2の放射率に応じたエネルギE2を有する赤外線を検知する。
【0026】
そのため、赤外線センサ8が容器3に相当する領域から温度を検知し、制御回路21が、当該温度に基づいて加熱コイル7Aを制御しても、適切に制御することができない。また、後述するように、赤外線センサ8が検知する温度は、同一の温度を有していたとしても物体の放射率によって変化する。したがって、ユーザによって任意の物が使用される遮蔽物2の放射率を把握することは困難であるため、遮蔽物2の温度を把握し、当該温度から容器3内の調理物4の温度を推定することも難しい。
【0027】
そこで、本実施形態に係る加熱調理器1は、容器3が載置されているトッププレート6上の、容器3周辺から放射されているエネルギE3を赤外線センサ8によって温度として検知し、制御回路21によって当該温度の温度情報を用いて加熱コイル7A~7Cを制御する。例えば加熱調理器1の製造者であれば、トッププレート6の放射率を予め知ることができる。このように構成することで、容器3に遮蔽物2が取り付けられていたとしても、加熱調理器1は、容器3の底部周辺のトッププレート6上の温度情報に基づいて容器3の底面の温度を知ることができる。その結果、加熱調理器1は、内部の食材の加熱量を制御することができる。
【0028】
図4は、上述した構成部品および制御装置20の制御回路21の通信接続を示すブロック図である。
【0029】
上述したように、赤外線センサ8は、通信回路9と接続されている。通信回路9は、本体5内に収容されている制御装置20の通信回路22と接続されている。制御回路21は、通信回路22と接続されており、通信回路9、22を介して、赤外線センサ8で検知された温度情報を取得する。
【0030】
制御装置20は、制御回路21、通信回路22、記憶装置23を備える。
【0031】
制御回路21は、コンピュータであり、加熱制御部24、遮蔽物判定部25、温度選択部26、容器内温度推定部27、調理状況判断部28を備える。制御回路21は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。制御回路21は、例えば記憶装置23に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、加熱制御部24による加熱処理、温度選択部26による選択処理など、制御装置20における各種の処理を実現する。制御回路21は、ハードウェアとソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、制御回路21は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような制御回路21は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。加熱制御部24、遮蔽物判定部25、温度選択部26、容器内温度推定部27、調理状況判断部28のハードウェア構成も、制御回路21と同様である。
【0032】
加熱制御部24は、例えば、加熱コイル7A~7Cに流れる電流の大きさ、電流が流れる時間等を制御することで、加熱コイル7A~7Cが容器3および調理物4に与える加熱量と加熱時間の少なくとも一方(以下、単に加熱量という)を制御することができる。加熱制御部24は、調理状況判断部28が所定の条件に達したと判定すると、上記制御を開始するように構成されてもよい。加熱制御部24は、例えば、加熱コイル7A~7Cの加熱量をあらかじめ定められた複数の段階の強さのいずれか1つに設定して、加熱量を制御する。加熱制御部24は、例えば、1400W、900W、700W等といった消費電力量、または「強」、「中」、「弱」等といった相対的な加熱量で、上記した複数の強さの段階を設定され得る。加熱制御部24は、連続的に加熱量を変更し制御できるように構成されてもよい。制御回路21は、加熱制御部24によって設定された加熱量を操作パネル10または表示部14に表示してもよい。また、加熱制御部24は、上記しているように操作入力部12、13A~13Cによって入力された指示に基づいて加熱コイル7A~7Cの加熱量を制御することができる。
【0033】
遮蔽物判定部25は、赤外線センサ8が検知した温度情報に基づいて、容器を覆う蓋等の遮蔽物2の有無を判定する。例えば、遮蔽物判定部25は、赤外線センサ8によって取得され、記憶装置23に格納されている温度情報の昇温状況と、加熱制御部24による加熱コイル7A~7Cの制御情報とに基づいて、容器3に遮蔽物2が取り付けられているか否か判定する。
【0034】
温度選択部26は、遮蔽物判定部25が判定した遮蔽物2の有無に基づいて、赤外線センサ8が検知した複数の温度のいずれを用いるか選択することができる。温度選択部26は、遮蔽物2があると判定されている場合、容器3周辺のトッププレート6上の温度である第1の温度情報を選択する。温度選択部26は、遮蔽物2がないと判定されている場合、容器3内の調理物4の温度である第2の温度情報を選択する。温度選択部26は、第1の温度情報を選択すると、当該温度情報を容器内温度推定部27へと出力する。温度選択部26は、第2の温度情報を選択すると、当該温度情報を調理状況判断部28へと出力する。
【0035】
容器内温度推定部27は、温度選択部26から第1の温度情報を入力されると、(容器3が加熱コイル7A上に配置されているため)加熱制御部24による加熱コイル7Aの加熱状況を取得する。容器内温度推定部27は、例えば、加熱コイル7A~7Cそれぞれの加熱量と、容器3を加熱した加熱時間と、容器3内の温度と、容器3周辺のトッププレート6上の温度との間の関係の情報をあらかじめ備えてもよい。このように構成することで、容器内温度推定部27は、第1の温度情報と加熱コイル7A~7Cの加熱状況とを取得すると、上記の関係の情報に基づいて、トッププレート6上の温度情報から容器3内の温度情報を推定できる。容器内温度推定部27は、推定した温度情報に基づいて、入力された第1の温度情報を補正し、補正した温度情報を調理状況判断部28へと出力する。
【0036】
調理状況判断部28は、容器内温度推定部27から出力された補正された温度情報、または温度選択部26から第2の温度情報を入力されると、容器3内の調理物4の調理状況を判断する。調理状況判断部28は、例えば、調理物4が容器3から吹きこぼれる可能性がある所定の予兆温度に達しているか否か判断する。所定の予兆温度とは、例えば、調理物4が容器から吹きこぼれる可能性がある温度であり、調理物4が水を多く含んでいる場合、水の沸点近傍の温度である。調理状況判断部28は、所定の調理状況にあると判断すると、当該情報を加熱制御部24に出力する。調理状況判断部28は、調理物4が沸点近傍の温度にある状態で、容器3に食材が投入されたことを検知することで、所定の調理状況にあると判定してもよい。
【0037】
通信回路22は、本体5内かつトッププレート6の下方に設けられており、制御回路21に接続されている。通信回路22は、赤外線センサ8が取得した温度情報を通信回路9から受信し、制御回路21へと出力する。
【0038】
通信回路22は、通信回路9と同様、有線または無線により通信回線を介して通信回路9から受信するインターフェース装置である。通信回路9、22は、通信回線を介して他の装置と接続することができてもよい。インターフェース装置は、例えばUSB(登録商標)またはイーサネット(登録商標)等の有線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。また、インターフェース装置は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、携帯電話回線等の無線通信規格に準拠した通信を行うことが可能である。
【0039】
記憶装置23は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置23は、通信回路22が受信した温度情報を格納し、制御回路21は、格納した情報を利用することができる。記憶装置23は、例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置23は、上述しているように、制御装置20が制御回路21によって行う各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。記憶装置23は、加熱コイル7A~7Cによって出力された加熱量および赤外線センサ8が検知した温度等を記憶することができる。また、記憶装置23は、第1の温度情報を第2の温度情報との差異が低減されるように容器内温度推定部27によって第1の温度情報を補正するための計算式等を格納してもよい。
【0040】
図5は、本実施形態に係る加熱調理器1の制御回路21によって行われる加熱制御処理を示すフローチャートである。まず、制御回路21は、加熱制御部24によって加熱コイル7Aに電流を流し、容器3を加熱する(S1)。次に、制御回路21は、赤外線センサ8が検知した温度を温度情報として取得し(S2)、遮蔽物判定部25によって昇温の傾向から容器3の上部における遮蔽物2の有無を判定する(S3)。
【0041】
遮蔽物2があると判定した場合、制御回路21は、温度選択部26によって、赤外線センサ8が検知した温度のうち容器3の底部周辺のトッププレート6上について検出している温度である第1の温度情報を選択的に出力する(S4)。次に、制御回路21は、出力された第1の温度情報を調理状況判断部28によって補正し、出力する(S5)。
【0042】
遮蔽物2がないと判定した場合、制御回路21は、温度選択部26によって、赤外線センサ8が検知した温度のうち容器3内について検出している領域の温度である第2の温度情報を選択的に出力する(S6)。
【0043】
制御回路21は、調理状況判断部28によって、補正された第1の温度情報、または第2の温度情報に基づいて、容器3内に収容されている調理物4の調理状況を判断する(S7)。制御回路21は、所定の予兆温度になったと判断すると、加熱制御部24によって加熱コイル7Aに流す電流量を制御し、容器3への加熱量を制御する(S8)。制御回路21は、所定の予兆温度になったと判断しない場合、ステップS1へと戻り、加熱コイル7Aによる容器3の加熱を継続する。遮蔽物2の有無を判定している場合、ステップS3を省略してもよい。また、遮蔽物2の有無を判定せず、第1の温度情報を用いて加熱制御処理を行う場合、制御回路21は、ステップS3を省略してもよい。
【0044】
本実施形態に係る加熱調理器1は、このようにして容器3に遮蔽物2が取り付けられているか否かを判断し、判断結果に基づいて容器3に収容されている調理物4の温度を推定し、容器3に対する加熱を制御する。
【0045】
図6は、本実施形態に係る加熱調理器1の赤外線センサ8によって検知されている視野領域の一例である。
図7は、
図6に示されている視野領域について、赤外線センサ8で検知された温度の一例である。なお、
図7は簡略化のため、マトリクス状に配置された領域のみを記載しているが、赤外線センサ8は、当該マトリクス状の領域のそれぞれにおいて、温度を検知することができる。上記の領域はそれぞれ、所定の温度範囲の温度が検知された領域として分けられる。
図6および
図7に示すように、本実施形態に係る赤外線センサ8はトッププレート6を斜方から撮影しているため、容器3底部周辺のトッププレート6のうち、容器3後方のトッププレート6上の温度を第1の温度情報として検知するがこれに限定されない。例えば、赤外線センサ8をトッププレート6の略直上に配置すると、赤外線センサ8は容器3底部周辺の全周にわたってトッププレート6上の温度を第1の温度情報として検知できる。制御回路21は、容器3から任意の距離にある画素(例えば、容器3から数画素以内の距離にある画素)によって検知した温度を第1の温度情報として取得してもよい。また、制御回路21は、加熱量に基づいて閾値温度を設け、当該閾値温度以上の温度を検知した画素の温度を第1の温度情報または第2の温度情報として取得してもよい。
【0046】
図7に示すように、上述の視野領域では、加熱コイル7Aに対応する位置のトッププレート6上に遮蔽物2を有しない容器3が配置され、加熱されている。赤外線センサ8が視野領域を検知した温度による温度情報は、
図7に示すように、検知された温度および位置によって複数の領域T1、T2、T3、T4に分類され得る。領域T1、T2、T3、T4の温度は、昇温すると、T1>T3>T2>T4の関係を有し得る。
【0047】
領域T1は、容器3内の調理物4の温度を赤外線センサ8が検知した領域である。領域T2は、容器3の温度、および下記領域T3の周辺のトッププレート6上の温度を赤外線センサ8が検知した領域である。領域T3は、容器3の周辺のトッププレート6上の温度を赤外線センサ8が検知した領域である。領域T4は、容器3から離れているトッププレート6上の温度を赤外線センサ8が検知した領域である。
【0048】
図7に示すように、赤外線センサ8によって検知される調理物4の温度情報と、容器3の温度情報との間には差異がある。赤外線センサ8は、物体から放射される、放射率に応じたエネルギを備える赤外線を検出して、当該赤外線が有するエネルギを温度に換算する。しかし、物体の温度が同じであったとしても、物体の材料および表面状態によって物体の表面から放射されるエネルギは異なり、放射率は異なる。
【0049】
放射率は、0~1の間の数値で表され、ある物体の放射率が1に近いほど、当該物体は多くの熱エネルギを放射する。例えば、水は、1に非常に近い放射率を有し、その放射率は、0.95程度である。
【0050】
一方、容器3を構成する材料である金属は、水に比べると非常に低い放射率(例えば、0.1~0.4程度の放射率)を有する。したがって、調理物4の温度と容器3の温度とが同一であったとしても赤外線センサ8が検知する温度情報には大きな差異が生じる。そのため、領域T1と領域T2のように異なる温度を備えるような領域が検知され得る。
【0051】
上述しているように加熱コイル7Aは容器3を加熱するが、トッププレート6を直接加熱しない。しかし、トッププレート6において、容器3が載置されている部位は、加熱された容器3の熱が伝わり、温度が上昇する。トッププレート6を構成する材料であるガラスは、上述した金属に比べると水に近い放射率(例えば、0.9~0.95程度の放射率)を有する。したがって、調理物4が水を多く含み、かつ調理物4とトッププレート6とが同等の温度である場合、赤外線センサ8は、調理物4とトッププレート6とで同等の温度を検知し得る。すなわち、上述の領域T1と領域T3は、当該領域の実際の温度が同等である場合、赤外線センサ8によって同等の温度が検知され得る。また、トッププレート6の放射率は、設計時に把握することができるため、制御回路21は、容器内温度推定部27によって、当該放射率に基づいて、赤外線センサ8で検知した温度を補正することができる。
【0052】
トッププレート6は、容器3から離れた位置にあると容器3の熱が伝わらないため、例えば室温程度の温度を有する。赤外線センサ8は、そのような領域については室温程度を検知する。領域T2のように容器3周辺のトッププレート6のさらに周辺は、容器3の熱が伝えられたトッププレート6の熱が伝播するため、室温より高く、上記領域T3より低い温度が検知される。このようにして、赤外線センサ8によって検知された温度の温度情報は、上記のような複数の領域に分類され得る温度を有する。
【0053】
図8は、赤外線センサ8で検知された温度の別の一例である。
図8に示す温度は、
図6に示す視野領域において、容器3に遮蔽物2が取り付けられた状態での温度を検知している。容器3に遮蔽物2が取り付けられていると、容器3内の調理物4から放射される、調理物4の放射率に応じたエネルギを備える赤外線が遮蔽物2によって遮蔽される。したがって、赤外線センサ8は、
図7に示す状態とは異なり、容器3内の調理物4の温度を検知する代わりに、遮蔽物2の放射率に応じたエネルギを備える赤外線を検知することで遮蔽物2の温度を検知する。
図8に示す領域T5は、遮蔽物2の温度を赤外線センサ8が検知した領域である。
【0054】
制御回路21は、遮蔽物判定部25によって、上述した赤外線センサ8が検知した温度に基づいて、遮蔽物2の有無を判定する。制御回路21は、容器3が配置されている領域の容器3内の温度を検知していると推定される領域T1または領域T5の温度と、容器3が配置されている領域の容器3周辺のトッププレート6上の温度を検知していると推定される領域T3の温度とを比較する。例えば、制御回路21は、容器3が遮蔽物2で覆われていない場合、温度が高い領域を、容器3内に相当する領域を検知しているとして領域T1と推定してもよい。また、制御回路21は、赤外線センサ8の視野領域において、容器3が載置され得る領域を設定し、当該領域から検知した温度を容器3内の温度または遮蔽物2の温度として検知してもよい。このように設定することで、容器3が遮蔽物2で覆われている場合など、温度が昇温しない場合であっても、制御回路21は、上記の領域T1または領域T5に該当する領域を推定することができる。
【0055】
制御回路21は、領域T1の昇温傾向と、領域T3の昇温傾向とを比較することで、遮蔽物2の有無を判定する。後述するように、領域T3の温度は、領域T1の温度よりも遅れて昇温する。したがって、制御回路21は、例えば、領域T3の温度が室温に比べて十分に高い50度等の所定温度を超えているにもかかわらず、領域T1の温度が当該所定温度を超えていない場合、遮蔽物2が取り付けられていると判定してもよい。また、制御回路21は、加熱制御部24によって加熱コイル7Aに流れている電流の状態から、加熱状況を判断し、遮蔽物2の有無を判定してもよい。例えば、数分間等の所定の期間、加熱しているにもかかわらず領域T1の温度が所定温度を超えていない場合、遮蔽物2が取り付けられていると判定してもよい。
【0056】
遮蔽物2の有無の判定は、上記のような赤外線センサ8によって検知された温度を用いる方法に限定されない。例えば、赤外線センサ8とは別のカメラを加熱調理器1の上方に設け、当該カメラが容器3を撮像することで、制御回路21は、撮像された画像または映像に基づいて遮蔽物2の有無を判定してもよい。加熱調理器1のユーザが操作パネル10を操作し、遮蔽物2を取り付けていることを入力することで、制御回路21は、当該入力情報に基づいて遮蔽物2の有無を判定してもよい。
【0057】
制御回路21は、遮蔽物判定部25によって遮蔽物2がないと判定すると、温度選択部26によって、赤外線センサ8が検知した領域T1の温度を第2の温度情報として、調理状況判断部28へと出力する。
【0058】
制御回路21は、遮蔽物判定部25によって遮蔽物2があると判定すると、温度選択部26によって、赤外線センサ8が検知した領域T3の温度を第1の温度情報として、容器内温度推定部27へと出力する。そして、制御回路21は、容器内温度推定部27によって、第1の温度情報から容器3内の温度情報を推定し、推定した温度情報を調理状況判断部28へと出力する。
【0059】
制御回路21は、調理状況判断部28によって、容器3内の調理物4の調理状況を判断する。制御回路21は、例えば、上述しているように、調理物4が容器3から吹きこぼれる可能性がある所定の予兆温度に達しているか否か判断する。
【0060】
制御回路21は、調理物4の温度が予兆温度に達していると判断すると、加熱制御部24へと予兆温度に到達していることを含む情報を出力する。そして、制御回路21は、加熱制御部24によって、加熱コイル7Aの加熱量を制御し、調理物4の吹きこぼれを防止する。加熱量の制御は、例えば、加熱量の低減、加熱の一時的な停止等によって行われる。また、制御回路21は、加熱量が大きな状態での加熱と、加熱量が小さな状態での加熱を繰り返し行うことで、加熱量を調整してもよい。
【0061】
制御回路21は、調理物4の温度が予兆温度に達していないと判断すると、上述しているように、加熱コイル7Aによる加熱を継続する。
【0062】
図9は、
図7に示す温度分布において、加熱コイル7A上に配置された容器3を加熱した際の領域T1、T3およびT4の温度の変化の一例を示すグラフである。上記温度は、それぞれ、領域T1の一部、領域T3の一部および領域T4の一部の平均温度を示す。制御回路21が加熱コイル7Aによって容器3を加熱すると、グラフに示すように領域T1および領域T3の温度が時間の経過とともに上昇する。これに対して、領域T4の温度は、加熱によって変化せず、略一定の温度を保つ。また、領域T3の温度は、領域T1の温度よりも遅れて昇温する。これは、上述したように、領域T3は、領域T1の熱が伝わることで昇温するためである。
【0063】
このように、容器3底部周辺のトッププレート6上の温度である領域T3の温度(すなわち、第1の温度情報)は、容器3内の温度である領域T1の温度と比べて、差異が生じ得る。したがって、制御回路21は、第1の温度情報を用いて加熱制御部24を制御する場合、容器内温度推定部27において第1の温度情報を補正することで、調理状況判断部28での調理状況の判断の精度を向上させることができる。
【0064】
図10は、本実施形態にかかる加熱調理器の変形例を側方から示す図である。本実施例に係る加熱調理器は、上記した実施形態の構成に加えて、熱伝導性が高く且つ放射率が既知のプレート15がトッププレート6上に配置されている。
【0065】
トッププレート6を構成する材料の一例であるガラスは、熱伝導性が低く、加熱されている容器3の熱がトッププレート6へ伝わるのに時間がかかる。したがって、赤外線センサ8が検出した容器3の周辺の温度は、容器3内の調理物4の温度と比べて非常に昇温が遅くなる可能性がある。本変形例に記載するように、容器3の底部とトッププレート6との間に熱伝導性が高いプレート15を配置すれば、容器3は、容器3の温度を効率的にプレート15に伝えることができる。したがって、プレート15は、容器3に近い温度によるエネルギE4を放射するため、赤外線センサ8は、プレート15上の温度を検知することで、トッププレート6上の温度よりも容器3の調理物4の温度に近い温度を検知することができる。プレート15は既知の放射率で構成されているため、制御回路21は、当該放射率を考慮することで、赤外線センサ8によって検知した温度から、より正確な調理物4の温度を推定することができる。
【0066】
本実施形態に係る加熱調理器1の制御回路21は、赤外線センサ8によって取得された温度情報に基づいて遮蔽物2の有無を判定し、用いる温度情報を選択しているが、これに限定されない。制御回路21は、例えば、遮蔽物2の有無を判断することなく、容器3周辺のトッププレート6上の温度を用いて加熱制御処理を行ってもよい。このように構成することで、加熱調理器1は、単一の素子のみを備えた赤外線センサ8を用いることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る制御回路21は、赤外線センサ8によって容器3周辺のトッププレート6上の温度を検知しているがこれに限定されない。制御回路21は、例えば、熱電対のような接触型の温度検出部、または赤外線センサとは別の温度検出部を用いて、容器3周辺のトッププレート6の上部、または容器3の底部を含む容器3周辺のトッププレート6の下部の温度を検知し用いてもよい。このように構成することで、加熱調理器1は、単一の素子のみを備えた赤外線センサ8を用いて、上述した実施形態と同様の処理を行うことができる。すなわち、制御回路21は、単一の素子のみを備えた赤外線センサ8で容器3内に相当する領域の温度を検知した温度情報と、温度検出部による温度情報とを比較することで遮蔽物2の有無を判定することができる。それによって、制御回路21は、容器3内の調理物4の温度を適切に把握し、加熱制御処理を行うことができる。
【0068】
(実施形態のまとめ)
以上のように説明した本実施形態に係る加熱調理器は、以下のように構成してもよい。
【0069】
(態様1)加熱調理器は、容器を載置する載置部と、前記載置部の下方に配置され、前記容器を加熱する一つ以上の加熱部と、前記加熱部の略上方に設けられ、前記容器の底部周辺の前記載置部上の温度を第1の温度情報として検知する赤外線センサと、前記第1の温度情報に基づいて前記加熱部の加熱量を制御する加熱制御部と、を備える。
【0070】
これにより、加熱調理器は、赤外線センサによって検知された容器の底部周辺の載置部上の温度に基づいて、調理状況を判断することができる。したがって、加熱調理器は、赤外線センサと容器との間に遮蔽物が介在しても、調理状況を判断し、加熱部の加熱量を制御することができる。
【0071】
(態様2)態様1の加熱調理器において、前記容器を覆う遮蔽物の有無を推定する遮蔽物判定部と、温度情報を選択的に出力する温度選択部と、をさらに備え、前記赤外線センサは、複数の画素を備え、前記容器の前記載置部よりも上方の温度を第2の温度情報としてさらに検知し、前記第2の温度情報は、前記容器に蓋が存在する場合には前記蓋の表面温度を表し、前記容器に蓋が存在しない場合には前記容器内の温度を表し、前記温度選択部は、前記遮蔽物判定部の判定結果に基づいて、前記第1の温度情報と前記第2の温度情報のいずれか一方の温度情報を出力し、前記加熱制御部は、前記温度選択部が出力した温度情報に基づいて、前記加熱部の加熱量を制御してもよい。
【0072】
これにより、加熱調理器は、容器を覆う遮蔽物の有無を推定し、遮蔽物の有無に応じて、第1の温度情報と第2の温度情報のいずれを用いて加熱部の加熱量を制御するか選択することができる。これにより、遮蔽物の有無にかかわらず、加熱調理器は、加熱量を適切に制御することができる。
【0073】
(態様3)態様2の加熱調理器において、前記温度選択部が出力した温度情報に基づいて、調理状況を判断する調理状況判断部をさらに備え、前記加熱制御部は、前記調理状況判断部の判断結果に応じて、前記加熱部の前記加熱量を制御してもよい。
【0074】
これにより、加熱調理器は、赤外線センサが検知した温度による温度情報から、容器に収容されている調理物の調理状況を判断し、加熱制御処理を行うことができる。これにより、調理物が所定の予兆温度に達したことを判断すると、加熱調理器は、加熱量を制御することができ、調理物の吹きこぼれ等を防止することができる。
【0075】
(態様4)態様1から態様3のいずれか1つの加熱調理器において、前記載置部の上部に配置され、且つ前記加熱部によって加熱されない熱伝導板を備え、前記容器は、前記熱伝導板上に配置され、前記赤外線センサは、前記容器の底部周辺の前記熱伝導板上の温度情報を前記第1の温度情報として検知してもよい。
【0076】
これにより、容器の熱を熱伝導板に伝えることができ、熱伝導板の熱伝導性に基づいて容器周辺の温度をより早く容器の温度に近づけることができる。したがって、加熱調理器は、赤外線センサによって容器周辺の温度を検知しても容器との誤差を低減することができ、より適切に加熱量を制御することができる。
【0077】
(態様5)加熱調理器は、容器を載置する載置部と、前記載置部の下方に配置され、前記容器を加熱する一つ以上の加熱部と、前記容器の底部周辺の前記載置部の温度を第1の温度情報として検知する温度検出部と、前記加熱部の略上方に設けられ、前記容器の前記載置部よりも上方の温度を第2の温度情報として検知する一つ以上の画素を備えた赤外線センサと、前記容器を覆う遮蔽物の有無を推定する遮蔽物判定部と、前記遮蔽物判定部の判定結果に基づいて、前記第1の温度情報と前記第2の温度情報のいずれか一方の温度情報を出力する温度選択部と、前記温度選択部が出力した温度情報に基づいて、前記加熱部の加熱量を制御する加熱制御部と、を備え、前記第2の温度情報は、前記容器に蓋が存在する場合には前記蓋の表面温度を表し、前記容器に蓋が存在しない場合には前記容器内の温度を表す。
【0078】
これにより、赤外線センサ以外の温度検出装置を用いて、容器の底部周辺の載置部の温度を検出することができる。したがって、赤外線センサと温度検出装置を組み合わせて遮蔽物の有無を推定し、遮蔽物の有無に応じて、第1の温度情報と第2の温度情報のいずれを用いて加熱部の加熱量を制御するか選択することができる。これにより、遮蔽物の有無にかかわらず、加熱調理器は、加熱量を適切に制御することができる。
【0079】
本開示に記載の加熱調理器は、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、と、ソフトウェア資源(コンピュータプログラム)との協働などによって実現される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示によれば、赤外線センサと調理物との間に遮蔽物が介在した場合であっても、調理状況を判断できる加熱調理器を提供することができるため、この種の加熱調理器の産業分野において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 加熱調理器
2 遮蔽物
3 容器
4 調理物
6 トッププレート
7A,7B,7C 加熱コイル
8 赤外線センサ
21 制御回路
24 加熱制御部
25 遮蔽物判定部
26 温度選択部
27 容器内温度推定部
28 調理状況判断部