(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】避難支援システム、統合システム、避難支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20241122BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20241122BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20241122BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20241122BHJP
H04W 4/024 20180101ALI20241122BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20241122BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B17/00 F
G08B25/04 F
G08B25/00 510M
H04W4/024
H04W88/02 110
(21)【出願番号】P 2020116697
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】珍坂 舞
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-113357(JP,A)
【文献】特開2017-067457(JP,A)
【文献】特開2013-073300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 27/00
G08B 17/00
G08B 25/04
G08B 25/00
H04W 4/024
H04W 88/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する複数の感知器から前記検知データを取得する検知データ取得部と、
前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する経路決定部と、
前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知するための通知部と、
前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得部と、を備え、
前記経路決定部が決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化し、
前記通知部は、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、
前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う、
避難支援システム。
【請求項2】
前記複数の感知器は前記対象空間の別々の配置場所に配置されている、
請求項1に記載の避難支援システム。
【請求項3】
前記対象空間に存在する前記1以上の避難対象の居場所に関する居場所情報を取得する居場所情報取得部を備え、
前記経路決定部は、前記居場所情報に基づき、前記避難対象の居場所からの前記避難経路を決定する、
請求項1又は2に記載の避難支援システム。
【請求項4】
前記対象空間に複数の前記避難対象が存在する場合、前記経路決定部は、複数の前記避難対象のそれぞれの居場所からの複数の前記避難経路の重なりが少なくなるように、複数の前記避難経路を決定する、
請求項3に記載の避難支援システム。
【請求項5】
前記経路決定部によって決定される前記避難経路が、前記対象空間に存在する前記避難対象の数に応じて変化する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の避難支援システム。
【請求項6】
対象空間における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する複数の感知器から前記検知データを取得する検知データ取得部と、
前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する経路決定部と、
前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知するための通知部と、
前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得部と、を備え、
前記経路決定部が決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化し、
前記通知部は、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行い、
前記経路決定部は、前記画像データに基づいて前記対象空間に存在する前記避難対象の数を判断し、前記避難対象の数の判断結果に応じて前記避難経路を決定する、
避難支援システム。
【請求項7】
前記対象空間への前記1以上の避難対象の入退場状況に関する入退場情報を前記入退場管理システムから取得する入退場情報取得部を備え、
前記通知部は、前記入退場情報に基づいて、前記対象空間に存在する前記1以上の避難対象が使用する前記1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の避難支援システム。
【請求項8】
対象空間に存在する複数の避難対象の居場所に関する居場所情報を取得する居場所情報取得部と、
前記居場所情報に基づいて前記複数の避難対象の避難経路を決定する経路決定部と、
前記複数の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記複数の避難対象が使用する複数の移動通信端末に前記避難経路を通知するための通知部と、
前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得部と、を備え、
前記経路決定部は、前記複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路を、前記複数の避難経路の重なりが少なくなるように決定し、
前記通知部は、前記複数の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、
前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う、
避難支援システム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の避難支援システムと、
前記複数の感知器と、を備える、
統合システム。
【請求項10】
対象空間における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて前記対象空間における火災の有無を感知する複数の感知器から前記検知データを取得する検知データ取得処理と、
前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する経路決定処理と、
前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知するための通知処理と、
前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得処理と、を含み、
前記経路決定処理で決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化し、
前記通知処理では、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、
前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う、
避難支援方法。
【請求項11】
対象空間に存在する複数の避難対象の居場所に関する居場所情報を取得する居場所情報取得処理と、
前記居場所情報に基づいて、前記複数の避難対象の避難経路を決定する経路決定処理と、
前記複数の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記複数の避難対象が使用する複数の移動通信端末に前記避難経路を通知するための通知処理と、
前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する画像データ取得処理と、を含み、
前記経路決定処理では、前記複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路を、前記複数の避難経路の重なりが少なくなるように決定し、
前記通知処理では、前記複数の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、
前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う、
避難支援方法。
【請求項12】
1以上のプロセッサに、請求項10又は11に記載の避難支援方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に避難支援システム、統合システム、避難支援方法、及びプログラムに関し、より詳細には避難を支援する避難支援システム、統合システム、避難支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災等の災害が発生した場合に、災害が発生した施設内に存在する人(避難対象)に対して、避難経路を提示するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、災害発生時に、壁などに設置された端末に避難経路を表示することで避難者を誘導する避難誘導装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、火災発生時に、予め決められた避難経路を端末に表示しているので、火災が拡大する方向に避難経路が設定されていると、安全に避難できない可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、避難対象の安全な避難を支援することができる避難支援システム、統合システム、避難支援方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の避難支援システムは、検知データ取得部と、経路決定部と、通知部と、画像データ取得部と、を備える。前記検知データ取得部は、複数の感知器から検知データを取得する。前記複数の感知器は、対象空間における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの前記検知データに基づいて、前記対象空間における火災の有無を感知する。前記経路決定部は、前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する。前記通知部は、前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知する。前記画像データ取得部は、前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する。前記経路決定部が決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。前記通知部は、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う。
本開示の一態様の避難支援システムは、検知データ取得部と、経路決定部と、通知部と、画像データ取得部と、を備える。前記検知データ取得部は、複数の感知器から検知データを取得する。前記複数の感知器は、対象空間における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの前記検知データに基づいて、前記対象空間における火災の有無を感知する。前記経路決定部は、前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する。前記通知部は、前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知する。前記画像データ取得部は、前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する。前記経路決定部が決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。前記通知部は、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う。前記経路決定部は、前記画像データに基づいて前記対象空間に存在する前記避難対象の数を判断し、前記避難対象の数の判断結果に応じて前記避難経路を決定する。
【0008】
本開示の一態様の避難支援システムは、居場所情報取得部と、経路決定部と、通知部と、画像データ取得部と、を備える。前記居場所情報取得部は、対象空間に存在する複数の避難対象の居場所に関する居場所情報を取得する。前記経路決定部は、前記居場所情報に基づいて、前記複数の避難対象の避難経路を決定する。前記通知部は、前記複数の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記複数の避難対象が使用する複数の移動通信端末に前記避難経路を通知する。前記画像データ取得部は、前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する。前記経路決定部は、前記複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路を、前記複数の避難経路の重なりが少なくなるように決定する。前記通知部は、前記複数の移動通信端末の表示部に、避難経路に係る情報と、前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う。
【0009】
本開示の一態様の統合システムは、前記避難支援システムと、前記複数の感知器と、を備える。
【0010】
本開示の一態様の避難支援方法は、検知データ取得処理と、経路決定処理と、通知処理と、画像データ取得処理と、を含む。前記検知データ取得処理では、複数の感知器から検知データを取得する。前記複数の感知器は、対象空間における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの前記検知データに基づいて対象空間における火災の有無を感知する。前記経路決定処理では、前記複数の感知器の各々から取得する前記検知データに基づいて、前記対象空間に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する。前記通知処理は、前記1以上の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末に前記避難経路を通知する。前記画像データ取得処理は、前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する。前記経路決定処理で決定する前記避難経路が、前記対象空間において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。前記通知処理では、前記1以上の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う。
【0011】
本開示の一態様の避難支援方法は、居場所情報取得処理と、経路決定処理と、通知処理と、画像データ取得処理と、を含む。前記居場所情報取得処理では、対象空間に存在する複数の避難対象の居場所に関する居場所情報を取得する。前記経路決定処理では、前記居場所情報に基づいて、前記複数の避難対象の避難経路を決定する。前記通知処理は、前記複数の避難対象の前記対象空間への入退場を管理する入退場管理システムの管理対象である前記複数の避難対象が使用する複数の移動通信端末に前記避難経路を通知する。前記画像データ取得処理は、前記対象空間に配置されて前記対象空間を撮影する撮像部から画像データを取得する。前記経路決定処理では、前記複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路を、前記複数の避難経路の重なりが少なくなるように決定する。前記通知処理では、前記複数の移動通信端末の表示部に、前記避難経路に係る情報と、前記撮像部が前記対象空間を撮影した画像を同時に表示させるような通知を行う。
【0012】
本開示の一態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、前記避難支援方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、避難対象の安全な避難を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る避難支援システム及び統合システムの概略的なシステム構成図である。
【
図2】
図2は、同上の統合システムが備える複数の警報器及び複数のカメラの配置例を説明する図である。
【
図3】
図3は、同上の避難支援システムが通知する通知情報に基づいて移動通信端末が表示する画像の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、同上の避難支援システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。以下の実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0016】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る避難支援システム、及び避難支援システムを備える統合システムについて、
図1~
図4を用いて説明する。
【0017】
(1)概要
本実施形態の避難支援システム1は、
図1に示すように、検知データ取得部101と、経路決定部105と、を備える。検知データ取得部101は複数の感知器20から検知データを取得する。複数の感知器20は、対象空間E10(
図2参照)における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサの検知データに基づいて、対象空間E10における火災の有無を感知する。経路決定部105は、複数の感知器20の各々から取得する検知データに基づいて、対象空間E10に存在する1以上の避難対象の避難経路を決定する。経路決定部105が決定する避難経路が、対象空間E10において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。
【0018】
本実施形態の避難支援システム1は、施設5内の対象空間E10に存在する避難対象の避難を支援するために用いられる。本実施形態では避難対象が人であり、対象空間E10は避難対象である人が存在する空間である。本実施形態では、対象空間E10が例えば施設5内の空間であり、施設5としてオフィスビルを想定している。なお、施設5は、集合住宅(マンション)であってもよい。さらに、施設5は、オフィスビル、集合住宅に限らず、例えば、戸建て住宅、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等であってもよい。避難対象は施設5を利用する人である。施設5がオフィスビルである場合、避難対象はこの施設5で働く人を含み、施設5を一時的に利用する人を含んでもよい。
【0019】
本実施形態の避難支援システム1は、施設5に設けられたLAN(Local Area Network)等のネットワークNT1を介して、複数の感知器20と通信可能に構成されており、複数の感知器20から火災関連事象の検知データを取得する。
【0020】
複数の感知器20は、火災に関連する火災関連事象を検知する検知機能と、施設5での火災の発生を検知した場合に報知する警報機能とを有し、災害に関する報知動作を行う。火災関連事象は、火災及び火災の前兆に伴って発生する事象であり、例えば温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む。なお、火災関連事象は、火災によって生じる不完全燃焼ガス(一酸化炭素、二酸化炭素など)の増加等を含んでもよいし、火災の要因となる事象(例えば液体燃料又は気体燃料の漏出、短絡事故などの発生)を含んでもよい。本実施形態では、一例として、複数の感知器20は、温度及び煙の濃度の検知データに基づいて火災の有無を感知し、火災に関する報知動作を行う。すなわち、複数の感知器20は、火災の発生時に警報音等の音を出力する。
【0021】
避難支援システム1は、複数の感知器20のいずれかから火災を感知したことを示す検知結果を受信すると、複数の感知器20から取得した火災関連事象の検知データに基づいて経路決定部105が避難対象の避難経路を決定する。ここで、経路決定部105が決定する避難経路は、対象空間E10において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。つまり、対象空間E10において火災が拡大する拡大範囲によって避難経路が変化するので、避難対象に対して火災を回避しながら避難が可能な避難経路を避難対象に通知することが可能になり、避難対象の安全な避難を支援することができる。
【0022】
(2)構成
以下、本実施形態に係る避難支援システム1について図面を参照して詳しく説明する。なお、以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0023】
(2.1)構成
本実施形態の避難支援システム1は、施設5内の対象空間E10に存在する避難対象の避難を支援するために用いられる。施設5には、対象空間E10において火災の有無を感知するための複数の感知器20が設けられている。ここにおいて、施設5には、避難支援システム1と複数の感知器20とを備える統合システム2が適用されている。以下、統合システム2が備える感知器20及び避難支援システム1について説明する。
【0024】
(2.1.1)感知器
複数の感知器20は、施設5内の対象空間E10における火災の有無を感知する。以下、複数(図示例では、4つ)の感知器20を区別する場合には、感知器21,22,23,24と記載する。施設5内の対象空間E10は、壁などで区切られた複数の空間E1~E4を含む。複数の空間E1~E4の壁には出入口が設けられており、各空間E1~E4は外部との出入りが自由になっている。
図2の例では、感知器21が空間E1に、感知器22が空間E2に、感知器23が空間E3に、感知器24が空間E4に、それぞれ設置されている。つまり、複数の感知器20は、対象空間E10の別々の配置場所に配置されている。したがって、避難支援システム1は、対象空間E10の別々の配置場所に配置された複数の感知器20の検知データに基づいて、対象空間E10での火災の拡大範囲、あるいは、火災がこれから拡大していく方向を検知することができる。避難支援システム1では、経路決定部105が決定する避難経路が火災の拡大範囲に応じて変化するので、避難対象に対して火災を回避しながら避難が可能な避難経路を通知することが可能になる。
【0025】
複数の感知器20の各々は、温度センサ201と、煙センサ202と、報知部203と、通信部204と、制御部205と、を備える。複数の感知器20の各々には個別の識別IDが割り当てられている。
【0026】
温度センサ201は、例えばサーミスタ等の感温素子を含み、周囲の温度に応じた検知データを出力する。
【0027】
煙センサ202は、例えば光電式の煙検知部を有し、周囲の煙の濃度に応じた検知データを出力する。
【0028】
報知部203は、光及び音の少なくとも一方で警報を発する。
【0029】
通信部204は、避難支援システム1と互いに通信可能に構成されている。本開示において「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又は中継器若しくはネットワークNT1を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。ネットワークNT1は施設5内に設けられたLAN(Local Area Network)等のネットワークである。なお、本実施形態では、通信部204は無線通信方式で中継器と通信を行い、中継器及びネットワークNT1を介して避難支援システム1と通信を行う。また、本実施形態では、通信部204は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)又は免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。
【0030】
制御部205は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、制御部205として機能する。プログラムは、ここでは制御部205のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0031】
制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202から定期的に検知データを取得し、温度センサ201及び煙センサ202の検知データに基づいて、感知器20が配置された対象空間E10における火災の有無を検知する。具体的には、制御部205は、煙センサ202から入力される検知データに基づき、煙センサ202によって検知された煙の濃度と所定の濃度閾値との高低を比較する。制御部205は、煙の濃度が濃度閾値未満であれば火災は発生していないと判断し、煙の濃度が濃度閾値以上であれば火災が発生したと判断する。また、制御部205は、温度センサ201から入力される検知データに基づいて濃度閾値を補正する処理を行う。制御部205は、温度の検知データに基づき、温度が高くなるにつれて煙の濃度閾値を小さくするように、つまり高温時ほど感度が高くなるように濃度閾値を補正する。なお、制御部20が火災の有無を判断する判断手法は上記の手法に限定されず、適宜変更が可能である。
【0032】
制御部205は、火災が発生したと判断すると、報知部203を制御して報知動作を行わせる。これにより、感知器20は、当該感知器20の周囲にいる人に火災の発生を報知することができる。
【0033】
また、通信部204が、避難支援システム1から検知データの送信を要求する送信要求を受信すると、制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202から検知データを取得する。そして、制御部205は、温度センサ201及び煙センサ202の検知データと当該感知器20の識別IDとを、通信部204から中継器及びネットワークNT1を介して避難支援システム1へ送信させる。
【0034】
ところで、本実施形態において、複数の感知器20は、いわゆる連動型の防災機器であり、いずれの感知器で火災を検出しても、他の感知器と連動して(他の感知器と共に)、警報音の発報を行うように構成されている。火元の位置にある感知器(連動元)は、例えば、「ビュービュー火事です。」という警報音の発報を行う。一方、他の感知器(連動先)は、火元の位置を特定できるような警報音の発報を行う。
【0035】
例えば、感知器21で火災を検出すると、感知器21は、警報音を発報し、他の感知器20に施設5の火災を検知したこと(つまり、火災の発生を検知したこと)を通知する。他の感知器20は、上記通知を受け取ると、警報音を発報する。さらに、感知器21は、施設5の火災を検知したこと(検知結果)を、避難支援システム1に送信する。
【0036】
なお、複数の感知器20のうち一の感知器20(例えば、感知器21)を親機とし、他の感知器20(例えば、感知器22,23,24)を子機としてもよい。子機である感知器22が火災を検出すると、感知器22は、警報音を発報するとともに、親機である感知器21に、施設5の火災を検知したこと(つまり、火災の発生を検知したこと)を表す情報を検知結果として送信する。感知器21は、検知結果を受け取ると、警報音を発報し、他の子機(感知器23,24)に発報指示を送信する。さらに、感知器21は、感知器22の検知結果を避難支援システム1に送信する。感知器21から発報指示を受け取った感知器23,24は、警報音を発報する。また、感知器21が火災を検出すると、感知器21は、警報音を発報し、子機(感知器22~24)に発報指示を送信する。さらに、感知器21は、感知器21の検知結果を避難支援システム1に送信する。感知器21から発報指示を受け取った他の感知器20(感知器22~24)は、警報音を発報する。
【0037】
(2.1.2)避難支援システム
本実施形態では避難支援システム1が避難支援装置10によって実現されている。避難支援装置10は、施設5に設けられた複数の機器と通信可能である。複数の機器は、上述した複数の感知器20と、複数の空間E1~E4にそれぞれ設けられた複数のカメラ30と、を含む。複数(図示例では、4つ)のカメラ30を区別する場合には、カメラ31,32,33,34と記載する。本実施形態では、カメラ31は空間E1に、カメラ32は空間E2に、カメラ33は空間E3に、カメラ34は空間E4に、それぞれ設けられている(
図2参照)。つまり、カメラ31~34はそれぞれ感知器21~24に1対1に対応し、カメラ31~34の各々は、感知器21~24のうちの対応する1つと同じ配置場所に配置され、当該感知器が火災の有無を感知する場所の様子を撮像する。また、避難支援装置10は、対象空間E10への避難対象の入退場を管理する入退場管理システム60とも通信可能である。
【0038】
避難支援装置10は、
図1に示すように、記憶部11、第1通信部12、第2通信部13及び制御部14を備える。
【0039】
避難支援装置10は、例えばプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部14として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0040】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から選択されるデバイスで構成される。
【0041】
記憶部11は、複数の感知器20と複数の空間E1~E4とを、複数の感知器20の各々が配置された配置場所に基づいて、一対一に記憶している。例えば、記憶部11は、感知器21と空間E1とを、感知器22と空間E2とを、感知器23と空間E3とを、感知器24と空間E4とを、それぞれ対応付けて記憶している。
【0042】
記憶部11は、複数のカメラ30と複数の空間E1~E4とを、複数のカメラ30の各々が配置された配置場所に基づいて、一対一に記憶している。例えば、記憶部11は、カメラ31と空間E1とを、カメラ32と空間E2とを、カメラ33と空間E3とを、カメラ34と空間E4とを、それぞれ対応付けて記憶している。
【0043】
記憶部11は、複数の空間E1~E4の配置関係に係る情報を記憶している。例えば、記憶部11は、施設5のフロアごとの平面図を記憶している(
図2参照)。複数の空間E1~E4の配置関係に係る情報は施設5のBIM(Building Information Modeling)から取得した情報でもよい。
【0044】
記憶部11は、複数の空間E1~E4の各々から対象空間E10の外部へと至る経路を記憶している。例えば、記憶部11は、複数の空間E1~E4の各々から対象空間E10の外部へ至る経路として、経路R1,R2を記憶している。ここで、対象空間E10の外部は、例えば施設5の出入口を含む。
【0045】
また、記憶部11には、避難支援システム1が避難を支援する1以上の避難対象の識別ID、及び1以上の避難対象が使用する1以上の移動通信端末40のアドレス情報(IPアドレス又はメールアドレス等)が登録されている。
【0046】
第1通信部12は、ネットワークNT1を介して複数の感知器20、複数のカメラ30、及び入退場管理システム60と通信を行うための通信インタフェースを含んでいる。第2通信部13は、移動体通信網などのネットワークNT2を介して、移動通信端末40と通信を行うための通信インタフェースを含んでいる。
【0047】
制御部14は、
図1に示すように、検知データ取得部101、居場所情報取得部102、画像データ取得部103、入退場情報取得部104、経路決定部105及び通知部106を有する。
【0048】
検知データ取得部101は、いずれかの感知器20から火災の検知結果を受信すると、第1通信部12経由で複数の感知器20に検知データの送信要求を定期的に送信する。検知データ取得部101は、送信要求に応じて各感知器20から送信された検知データを第1通信部12経由で取得し、取得した検知データを送信元の感知器20の識別IDと対応付けて記憶部11に記憶する。つまり、記憶部11には、複数の感知器20のそれぞれについて検知データが格納されている。
【0049】
居場所情報取得部102は、居場所情報検知システム50から対象空間E10に存在する1以上の避難対象の居場所に関する居場所情報を第1通信部12経由で取得する。居場所情報は、例えば、対象空間E10内で避難対象が存在する場所の座標(三次元座標、又は避難対象が存在する階での二次元座標)の情報、又は、避難対象が存在する空間(例えば部屋など)を特定する情報等を含み得る。居場所情報検知システム50は、例えばLPS(Local Positioning System)等の測位システムを利用して、避難対象が使用する移動通信端末40の位置情報を検知する。居場所情報検知システム50は、移動通信端末40の位置情報を、当該移動通信端末40の居場所を示す居場所情報として検知する。なお、居場所情報検知システム50は、移動通信端末40がGPS(Global Positioning System)を利用して検出する位置情報を取得し、この位置情報を避難対象の居場所情報として検知してもよい。
【0050】
画像データ取得部103は、対象空間E10を撮影する撮影部(つまり複数のカメラ30)から、画像データを取得する。具体的には、避難支援システム1がいずれかの感知器20から火災の検知結果を受信すると、画像データ取得部103は、画像データの送信要求を複数のカメラ30に定期的に送信し、複数のカメラ30から画像データを取得する。
【0051】
入退場情報取得部104は、入退場管理システム60から第1通信部12経由で、入退場管理システム60の管理対象である1以上の避難対象の入退場情報を取得する。入退場管理システム60は、1以上の避難対象の対象空間E10への入退場を管理する。入退場管理システム60は、例えば、対象空間E10の出入口に設置されたカードリーダを有している。また、入退場管理システム60では、対象空間E10に出入りするユーザ(施設5を利用する人であって避難対象となる人)に予めIDカードが付与されている。ユーザが対象空間E10に入場する際、又は、ユーザが対象空間E10から外に出る際に、ユーザがIDカードをカードリーダにかざすことによって、カードリーダはIDカードに記憶されたID情報を読み取る。入退場管理システム60は、カードリーダがIDカードから読み取ったID情報に基づいて、対象空間E10へのユーザの入退場を管理する。そして、入退場管理システム60は、避難支援システム1からの送信要求を受信すると、ユーザ(避難対象)の入退場状況に関する入退場情報を避難支援システム1に送信する。入退場情報取得部104は、対象空間E10への1以上の避難対象の入退場状況に関する入退場情報を入退場管理システム60から取得する。入退場情報は、避難対象が対象空間E10内に入場しているか、対象空間E10から退場しているかを示す情報を少なくとも含む。
【0052】
入退場情報取得部104は、避難支援システム1がいずれかの感知器20から火災の検知結果を受信すると、入退場管理システム60に入退場情報の送信を要求する要求信号を送信する。入退場管理システム60は避難支援システム1から要求信号を受信すると、入退場情報を避難支援システム1に送信する。
【0053】
経路決定部105は、避難支援システム1がいずれかの感知器20から火災の検知結果を受信すると、検知データ取得部101が複数の感知器20から取得する検知データに基づいて火災の拡大範囲を推定する。複数の感知器20は対象空間E10内で異なる配置場所にそれぞれ配置されているので、複数の感知器20から取得する検知データに基づいて、複数の感知器20がそれぞれ設置されている配置場所での火災の状況を推定でき、その推定結果に基づいて現在及び将来の火災の拡大範囲を推定する。経路決定部105は、対象空間E10における火災の拡大範囲を推定すると、火災の拡大範囲を通らないような避難経路、換言すれば火災の程度がより少ない場所を通るような避難経路を決定する。なお、経路決定部105は、居場所情報に基づいて、避難対象の居場所からの避難経路を決定する。つまり、経路決定部105は、火災の拡大範囲と避難対象の居場所とに基づいて、避難対象の(現在の)居場所からの避難経路を決定している。
【0054】
通知部106は、経路決定部105が決定した避難経路を含む通知情報を、第2通信部13経由で避難対象が使用する移動通信端末40に送信する。なお、通知部106は、画像データ取得部103が取得した複数のカメラ30の画像のうち、避難対象が存在する空間に設けられたカメラ30の画像を通知用画像として取得する。そして、通知部106は、避難経路及び通知用画像を含む通知情報を第2通信部13経由で移動通信端末40に送信する。
【0055】
(2.1.3)移動通信端末
ここでは、移動通信端末40の構成について説明する。
【0056】
移動通信端末40は、例えばプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが移動通信端末40としての機能を実現する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0057】
移動通信端末40は、ネットワークNT2を介して、避難支援システム1(避難支援装置10)と通信可能に構成されている。
【0058】
移動通信端末40は、避難支援装置10から通知情報を受け取ると、移動通信端末40が備える表示部41(
図3参照)に、受け取った通知情報を基づいた画面G1を表示する。表示部41は、例えば液晶ディスプレイや有機EL(electroluminescence)ディスプレイのような薄型のディスプレイ装置である。
【0059】
画面G1は、
図3に示すように、第1表示領域G11及び第2表示領域G12を含む。
【0060】
第1表示領域G11では、通知情報に含まれる避難経路に係る情報が、複数の空間E1~E4の配置関係に係る情報である平面図と共に表示される。例えば、経路決定部105によって決定された避難経路R10が平面図に重畳されて表示される。第2表示領域G12では、通知情報に含まれる画像が表示される。すなわち、第2表示領域G12では、避難対象が存在する空間を撮影した通知用画像が表示される。
【0061】
(3)動作
ここでは、避難支援システム1(避難支援装置10)の動作について、
図4を用いて説明する。
【0062】
複数の感知器20のいずれかが火災を検知すると、複数の感知器20が連動して火災を報知し、例えば親機である感知器21が避難支援システム1に火災の検知結果を送信する。
【0063】
避難支援システム1の制御部14が第1通信部12を介して火災の検知結果をトリガ情報として受信すると(S1)、避難支援システム1は、対象空間E10に存在する避難対象の避難経路を決定して、当該避難対象に通知する処理を開始する。
【0064】
まず、検知データ取得部101が、第1通信部12を介して複数の感知器20に検知データの送信を要求する要求信号を送信し、要求信号に応じて複数の感知器20から送信された検知データを取得する(S2)。
【0065】
次に、入退場情報取得部104が、第1通信部12を介して入退場管理システム60に入退場情報の送信を要求する要求信号を送信し、要求信号に応じて入退場管理システム60から送信された入退場情報を取得する(S3)。避難支援システム1は、入退場情報に基づいて、対象空間E10に存在する避難対象を検知する。対象空間E10に避難対象が存在しない場合、避難支援システム1は以下の処理を行わず、対象空間E10に避難対象が存在する場合のみ、避難支援システム1は以下の処理を行う。
【0066】
居場所情報取得部102は、第2通信部13を介して、対象空間E10に存在する避難対象が使用する移動通信端末40に対して、居場所情報の送信を要求する要求信号を送信し、要求信号に応じて移動通信端末40から送信された居場所情報を取得する(S4)。避難支援システム1は、移動通信端末40から取得した居場所情報に基づいて、移動通信端末40を使用する避難対象の現在の居場所を把握する。
【0067】
また、画像データ取得部103が、第1通信部12を介して複数のカメラ30に画像データの送信を要求する要求信号を送信し、要求信号に応じて複数のカメラ30から送信された画像データを取得する(S5)。
【0068】
経路決定部105は、複数の感知器20から取得した検知データに基づいて対象空間E10における火災の拡大範囲を推定する。経路決定部105は、複数の感知器20がそれぞれ配置された複数の配置場所での火災関連事象(例えば温度及び煙の濃度)の検知データに基づいて、複数の配置場所での火災の状況(火災が発生しているか否か、発生している場合は火災の規模)を判断する。そして、経路決定部105は、複数の配置場所での火災の状況を元に対象空間E10内での現在の火災の拡大範囲を推定する。
図2の例のように空間E3で火災が発生している場合、経路決定部105は、対象空間E10において火災が発生している空間E3を含む範囲、例えば空間E3及び空間E3につながる廊下E5を含む範囲を拡大範囲E20と推定する。
【0069】
なお、避難支援システム1がいずれかの感知器20から火災の検知結果を受信すると、検知データ取得部101が複数の感知器20から検知データを定期的に取得してもよい。経路決定部105は、複数の配置場所での火災の状況の時間的な変化に基づいて、現在から避難対象の避難が終了すると予測される時点までの期間における火災の拡大範囲を推定してもよい。
【0070】
そして、経路決定部105は、火災の拡大範囲E20を推定すると、避難対象の居場所情報に基づいて、避難対象の現在の居場所から対象空間E10の外部へと至る避難経路を決定する。
図2の例では、避難対象U1,U2が存在する空間E1から外部に至る2つの経路R1,R2が存在するが、経路R2は火災の拡大範囲E20を通るので、経路決定部105は経路R1を避難対象U1,U2の避難経路R10に決定する(S6)。
【0071】
避難経路R10が決定されると、通知部106は、避難経路R10と、避難対象U1,U2が存在する空間の画像とを含む通知情報を生成する(S7)。そして、通知部106は、生成した通知情報を、第2通信部13から避難対象U1,U2がそれぞれ使用する移動通信端末40に送信する。通知部106は、入退場管理システム60の管理対象である1以上の避難対象(例えば避難対象U1,U2)が使用する1以上の移動通信端末40に避難経路を通知するので、避難対象U1,U2は、移動通信端末40に表示された通知情報を確認することができる。したがって、避難対象U1,U2は、自身の避難経路R10を把握することができ、火災の拡大範囲を考慮して決定された避難経路R10で避難することによって、安全な避難を行うことが可能になる。また、通知部106は、入退場情報に基づいて、対象空間E10に存在する避難対象が使用する移動通信端末40に避難経路R10を通知しており、避難経路を通知する必要がある避難対象に対して確実に避難経路R10を通知することができる。
【0072】
なお、火災発生時に対象空間E10に複数の避難対象が存在する場合、経路決定部105は、複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路の重なりが少なくなるように、複数の避難経路を決定することが好ましい。ここにおいて、避難経路が重なるとは、複数の避難対象に対して決定される複数の避難経路が部分的に同じ区間を通ることと、複数の避難経路が互いに交差することを含む。例えば、複数の避難対象に対して決定される複数の避難経路が同じ通路、階段、又はドアなどを通る場合、複数の避難経路が重なる場所で、避難中の避難対象が混雑し、避難の妨げになる可能性がある。そこで、経路決定部105は、複数の避難対象のそれぞれの居場所からの複数の避難経路の重なりが少なくなるように、複数の避難対象の一部を別の避難経路で避難させたり、避難経路の一部を変更したりすることで、避難時の混雑を緩和することができる。
【0073】
また、経路決定部105によって決定される避難経路が対象空間E10に存在する避難対象の数に応じて変化してもよい。避難対象の数が多い場合は避難対象の数が少ない場合に比べて、避難経路として使用される通路などが広いことが好ましい。例えば、複数の避難対象の避難経路の候補として、通路幅は相対的に狭いが避難に必要な時間は相対的に短い第1経路と、通路幅は相対的に広いが避難に必要な時間は相対的に長い第2経路とがある場合、経路決定部105は、避難対象の数に応じて第1経路及び第2経路のいずれかを選択する。経路決定部105は、避難対象の数が所定の基準値以上であれば避難経路として第2経路を選択し、避難対象の数が基準値未満であれば避難経路として第1経路を選択する。これにより、避難支援システム1は、避難対象の数に応じて最適な避難経路を決定することができる。
【0074】
ここで、経路決定部105は、居場所情報に基づいて、対象空間E10に存在する避難対象の数を求めてもよいし、カメラ30から取得する画像データに基づいて対象空間E10に存在する避難対象の数を判断してもよい。経路決定部105は、カメラ30から取得する画像データを画像処理することで、対象空間E10に存在する避難対象の数を推定する。そして、経路決定部105は、避難対象の数の判断結果に応じて避難経路を決定しており、避難対象の数の大小に応じて最適な避難経路を決定することができる。
【0075】
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、避難支援システム1と同様の機能は、避難支援方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る避難支援方法は、検知データ取得処理と、経路決定処理と、を含む。検知データ取得処理では、複数の感知器20から検知データを取得する。複数の感知器20は、対象空間E10における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサ201,201の検知データに基づいて対象空間E10における火災の有無を感知する。経路決定処理では、複数の感知器20の各々から取得する検知データに基づいて、対象空間E10に存在する1以上の避難対象U1,U2の避難経路R10を決定する。経路決定処理で決定する避難経路R10が、対象空間E10において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。別の態様に係る避難支援方法は、居場所情報取得処理と、経路決定処理と、を含む。居場所情報取得処理では、対象空間E10に存在する複数の避難対象U1,U2の居場所に関する居場所情報を取得する。経路決定処理では、居場所情報に基づいて、複数の避難対象U1,U2の避難経路R10を決定する。経路決定処理では、複数の避難対象U1,U2のそれぞれの居場所からの複数の避難経路R10を、複数の避難経路R10の重なりが少なくなるように決定する。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、コンピュータシステムに、上記の避難支援方法を実行させるためのプログラムである。
【0076】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0077】
本開示における避難支援システム1又は避難支援システム1の避難支援方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における避難支援システム1又は避難支援システム1の避難支援方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0078】
また、避難支援システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは避難支援システム1に必須の構成ではなく、避難支援システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、避難支援システム1の少なくとも一部の機能、例えば、避難支援システム1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、避難支援システム1は、施設5の内部に設けられているが、この構成に限定されない。避難支援システム1は、施設5の外部に設けられてもよい。避難支援システム1が施設5の外部に設けられる場合、避難支援システム1と、複数の感知器20及び複数のカメラ30とは、ネットワークNT2を介して通信可能に構成される。
【0080】
上記実施形態では、避難支援システム1は、施設5内において火災が発生した空間E3と同じ階にいる避難対象U1,U2の避難経路を決定して通知しているが、施設5内で火災が発生した階とは別の階にいる避難対象の避難経路を決定して通知してもよい。
【0081】
また、上記の実施形態において、経路決定部105は、居場所情報に基づいて複数の避難対象の避難経路を決定してもよい。すなわち、経路決定部105は、複数の避難経路のそれぞれの居場所からの複数の避難経路を、複数の避難経路の重なりが少なくなるように決定してもよい。これにより、複数の避難対象が避難する場合に、避難経路の混雑を低減でき、複数の避難対象がスムーズに避難できるようにすることで、避難対象の安全な避難を支援することができる。
【0082】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の避難支援システム(1)は、検知データ取得部(101)と、経路決定部(105)と、を備える。検知データ取得部(101)は、複数の感知器(20)から検知データを取得する。複数の感知器(20)は、対象空間(E10)における温度と煙の濃度との少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサ(201,201)の検知データに基づいて、対象空間(E10)における火災の有無を感知する。経路決定部(105)は、複数の感知器(20)の各々から取得する検知データに基づいて、対象空間(E10)に存在する1以上の避難対象(U1,U2)の避難経路(R10)を決定する。経路決定部(105)が決定する避難経路(R10)が、対象空間(E10)において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。
【0083】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0084】
第2の態様の避難支援システム(1)では、第1の態様において、複数の感知器(20)は対象空間(E10)の別々の配置場所に配置されている。
【0085】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0086】
第3の態様の避難支援システム(1)は、第1又は2の態様において、居場所情報取得部(102)を備える。居場所情報取得部(102)は、対象空間(E10)に存在する1以上の避難対象(U1,U2)の居場所に関する居場所情報を取得する。経路決定部(105)は、居場所情報に基づき、避難対象(U1,U2)の居場所からの避難経路(R10)を決定する。
【0087】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0088】
第4の態様の避難支援システム(1)では、第3の態様において、対象空間(E10)に複数の避難対象(U1,U2)が存在する場合、経路決定部(105)は、複数の避難対象(U1,U2)のそれぞれの居場所からの複数の避難経路(R10)の重なりが少なくなるように、複数の避難経路(R10)を決定する。
【0089】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0090】
第5の態様の避難支援システム(1)では、第1~4のいずれかの態様において、経路決定部(105)によって決定される避難経路(R10)が、対象空間(E10)に存在する避難対象(U1,U2)の数に応じて変化する。
【0091】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0092】
第6の態様の避難支援システム(1)は、第5の態様において、対象空間(E10)を撮影する撮像部(30)から画像データを取得する画像データ取得部(103)を備える。経路決定部(105)は、画像データに基づいて対象空間(E10)に存在する避難対象(U1,U2)の数を判断し、避難対象(U1,U2)の数の判断結果に応じて避難経路(R10)を決定する。
【0093】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0094】
第7の態様の避難支援システム(1)では、第1~6のいずれかの態様において、入退場管理システム(60)の管理対象である1以上の避難対象(U1,U2)が使用する1以上の移動通信端末(40)に避難経路(R10)を通知するための通知部(106)を備える。入退場管理システム(60)は、1以上の避難対象(U1,U2)の対象空間(E10)への入退場を管理する。
【0095】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0096】
第8の態様の避難支援システム(1)は、第7の態様において、対象空間(E10)への1以上の避難対象(U1,U2)の入退場状況に関する入退場情報を入退場管理システム(60)から取得する入退場情報取得部(104)を備える。通知部(106)は、入退場情報に基づいて、対象空間(E10)に存在する1以上の避難対象(U1,U2)が使用する1以上の移動通信端末(40)に避難経路(R10)を通知する。
【0097】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0098】
第9の態様の避難支援システム(1)は、居場所情報取得部(102)と、経路決定部(105)と、を備える。居場所情報取得部(102)は、対象空間(E10)に存在する複数の避難対象(U1,U2)の居場所に関する居場所情報を取得する。経路決定部(105)は、居場所情報に基づいて、複数の避難対象(U1,U2)の避難経路(R10)を決定する。経路決定部(105)は、複数の避難対象(U1,U2)のそれぞれの居場所からの複数の避難経路(R10)を、複数の避難経路(R10)の重なりが少なくなるように決定する。なお、第9の態様については、それ単独でも実施し得る態様であって、第1~8のいずれかの態様を前提とすることは必須ではない。
【0099】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0100】
第10の態様の統合システム(2)は、第1~9のいずれかの態様の避難支援システム(1)と、複数の感知器(20)と、を備える。
【0101】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0102】
第11の態様の避難支援方法は、検知データ取得処理と、経路決定処理と、を含む。検知データ取得処理では、複数の感知器(20)から検知データを取得する。複数の感知器(20)は、対象空間(E10)における温度及び煙の濃度の少なくとも一方を含む火災関連事象を検知するセンサ(201,201)の検知データに基づいて対象空間(E10)における火災の有無を感知する。経路決定処理では、複数の感知器(20)の各々から取得する検知データに基づいて、対象空間(E10)に存在する1以上の避難対象(U1,U2)の避難経路(R10)を決定する。経路決定処理で決定する避難経路(R10)が、対象空間(E10)において発生する火災の拡大範囲に応じて変化する。
【0103】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0104】
第12の態様の避難支援方法は、居場所情報取得処理と、経路決定処理と、を含む。居場所情報取得処理では、対象空間(E10)に存在する複数の避難対象(U1,U2)の居場所に関する居場所情報を取得する。経路決定処理では、居場所情報に基づいて、複数の避難対象(U1,U2)の避難経路(R10)を決定する。経路決定処理では、複数の避難対象(U1,U2)のそれぞれの居場所からの複数の避難経路(R10)を、複数の避難経路(R10)の重なりが少なくなるように決定する。
【0105】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0106】
第13の態様のプログラムは、1以上のプロセッサに、第11又は12の態様の避難支援方法を実行させるためのプログラムである。
【0107】
この態様によれば、避難対象(U1,U2)の安全な避難を支援することができる。
【0108】
上記態様に限らず、実施形態に係る避難支援システム(1)及び統合システム(2)の種々の構成(変形例を含む)は、避難支援方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0109】
第2~第8の態様に係る構成については、避難支援システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 避難支援システム
2 統合システム
20 感知器
30 撮像部
40 移動通信端末
60 入退場管理システム
101 検知データ取得部
102 居場所情報取得部
103 画像データ取得部
104 入退場情報取得部
105 経路決定部
106 通知部
201 温度センサ(センサ)
202 煙センサ(センサ)
E10 対象空間
R10 避難経路
U1,U2 避難対象