(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】フォトルミネッセント材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20241122BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C09K11/08 A
C09K11/64
(21)【出願番号】P 2020101648
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-03-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】西村 大希
(72)【発明者】
【氏名】藤木 伸爾
(72)【発明者】
【氏名】阪根 英人
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 尚哉
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052102(JP,A)
【文献】特開2014-037492(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209033(WO,A1)
【文献】特開2018-197296(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190356(WO,A1)
【文献】特開平03-081369(JP,A)
【文献】特開2006-219359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0249327(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
C10B 33/20-39/54
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
G02B 5/20-5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射によって可視光を発光するフォトルミネッセント材料の製造方法であって、
前記方法が、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンとアンモニアと
亜鉛イオンとを含有する水溶液中で、銀原子を含有するフォトルミネッセント材料Iから銀原子を抽出することによって、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIを得ることを含み、並びに
フォトルミネッセント材料Iが、銀原子を含有するゼオライトである方法。
【請求項2】
フォトルミネッセント材料Iが、銀原子を含有するフォージャサイト型ゼオライト、銀原子を含有するA型ゼオライト、および銀原子を含有するソーダライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
銀原子を含有するフォージャサイト型ゼオライトが、5重量%以上30重量%以下の銀イオンを含有するフォージャサイト型ゼオライトである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
銀原子を含有するA型ゼオライトが、2.5重量%以上40重量%以下の銀イオンを含有するA型ゼオライトである請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
銀原子を含有するソーダライトが、0.25重量%以上51重量%以下の銀原子を含有するソーダライトである請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量とフォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量との比(フォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量/フォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量)が、3/100~9/10である請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法によって製造されたフォトルミネッセント材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトルミネッセント材料の製造方法に関する。ここで「フォトルミネッセント(photoluminescent)材料」とは、「フォトルミネッセンス(photoluminescence、即ち、光照射によって可視光を発光する現象)を利用する用途に用いられる材料」を意味する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって可視光を発光するフォトルミネッセント材料は、照明装置、液晶装置用バックライト、プラズマディスプレイなどに使用されている。
【0003】
フォトルミネッセント材料として、これまで、様々なものが開発されている。例えば、特許文献1には、銀原子(銀イオン)を含有するフォージャサイト型ゼオライトであるフォトルミネッセント材料が開示されている。また、特許文献2~4には、銀原子(銀イオン)を含有するA型ゼオライトであるフォトルミネッセント材料が開示されている。また、特許文献5には、銀原子を含有するソーダライトであるフォトルミネッセント材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-52102号公報
【文献】特開2014-37492号公報
【文献】国際公開第2017/209033号
【文献】特開2018-197296号公報
【文献】国際公開第2016/190356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~5に記載されているような銀原子を含有するフォトルミネッセント材料では、その銀原子の含有量が多いと、樹脂またはゴムと混合した際に、得られた混合物が着色する場合があった。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 光の照射によって可視光を発光するフォトルミネッセント材料の製造方法であって、
前記方法が、銀イオン以外のカチオンおよびアンモニアを含有する水溶液中で、銀原子を含有するフォトルミネッセント材料Iから銀原子を抽出することによって、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIを得ることを含み、並びに
フォトルミネッセント材料Iが、銀原子を含有するゼオライトである方法。
[2] フォトルミネッセント材料Iが、銀原子を含有するフォージャサイト型ゼオライト、銀原子を含有するA型ゼオライト、および銀原子を含有するソーダライトからなる群から選ばれる少なくとも一つである前記[1]に記載の方法。
[3] 銀原子を含有するフォージャサイト型ゼオライトが、5重量%以上30重量%以下の銀イオンを含有するフォージャサイト型ゼオライトである前記[2]に記載の方法。
[4] 銀原子を含有するA型ゼオライトが、2.5重量%以上40重量%以下の銀イオンを含有するA型ゼオライトである前記[2]または[3]に記載の方法。
[5] 銀原子を含有するソーダライトが、0.25重量%以上51重量%以下の銀原子を含有するソーダライトである前記[2]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6] 銀イオン以外のカチオンが、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンを含む前記[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7] フォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量とフォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量との比(フォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量/フォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量)が、3/100~9/10である前記[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法。
[8] 前記[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法によって製造されたフォトルミネッセント材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、銀イオン以外のカチオンおよびアンモニアを含有する水溶液中で、銀原子を含有するフォトルミネッセント材料Iから銀原子を抽出することによって、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIを得ることを特徴の一つとする。このような操作によって、フォトルミネッセント材料I中の発光に寄与しないサイトにある銀原子(銀イオンまたは銀クラスター)がアンミン錯体化されて前記水溶液中に溶解し、前記水溶液中の銀イオン以外のカチオンが、溶解した銀原子の代わりにフォトルミネッセント材料に取り込まれる結果、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIが得られると推定される。但し、本発明は、このような推定メカニズムに限定されない。
【0009】
銀原子の含有量の低減は、例えば、波長分散型蛍光X線装置を使用する測定によって確認することができ、また、この装置によって、フォトルミネッセント材料中の各原子(各カチオン)の含有量を測定することができる。
【0010】
銀原子の含有量が多いフォトルミネッセント材料と、樹脂またはゴムとを混合することによって得られた混合物は、黒く変色して発光強度が低下するという問題があった。一方、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料では、このような変色や発光強度の低下を抑制することができる。また、本発明の方法によって、水溶液中に溶解した銀を回収してフォトルミネッセント材料の製造に使用することができれば、製造コストの低減が期待できる。
【0011】
下記実施例および比較例で示すように、フォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量を低減することによって得られたフォトルミネッセント材料IIの発光強度は、驚くべきことに、フォトルミネッセント材料Iの発光強度と同等またはそれ以上であった。ここで「フォトルミネッセント材料IIの発光強度がフォトルミネッセント材料Iの発光強度と同等である」とは、フォトルミネッセント材料Iの発光強度を1として計算した、フォトルミネッセント材料IIの相対発光強度が0.9~1.1の範囲内であることを意味する。
【0012】
本発明に使用するフォトルミネッセント材料Iは、原料であるゼオライトのイオン交換によって製造することができる。このイオン交換は、銀イオン含有水溶液中でゼオライトを撹拌および保持することによって行うことができる。銀イオン含有水溶液としては、例えば、硝酸銀水溶液などが挙げられる。銀イオン以外のイオン(以下「他のイオン」と略称することがある。)をフォトルミネッセント材料Iに含有させる必要があれば、イオン交換に用いる銀イオン含有水溶液に、他のイオンを存在させても良いし、銀イオン含有水溶液を用いるイオン交換、および他のイオンを含有する水溶液を用いるイオン交換を、順次行っても良い。他のイオンを含有する水溶液としては、例えば、硫酸亜鉛水溶液、硝酸カルシウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液および硫酸カリウム水溶液などが挙げられる。また、水溶液中の銀イオンおよび他のイオンの濃度は、フォトルミネッセント材料Iの銀イオンおよび他のイオンの含有量の設計値に応じて、適宜調整することができる。イオン交換は室温で行うことができる。イオン交換の時間(即ち、イオン含有水溶液中のゼオライトの撹拌および保持時間)は、通常、30分以上10時間以下であり、好ましくは5時間以下である。
【0013】
フォトルミネッセント材料Iの原料であるゼオライトが、フォージャサイト型ゼオライトまたはA型ゼオライトである場合は、イオン交換後のゼオライトを、イオン含有水溶液からろ取し、水洗した後、乾燥することが好ましい。乾燥は、大気雰囲気下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下または減圧雰囲気下で行うことができる。これらの中でも操作を簡便に行うことができる、大気雰囲気下での乾燥が好ましい。乾燥時間は、通常、1時間以上30時間以下であり、好ましくは20時間以下である。乾燥温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上である。この乾燥条件は、使用するゼオライトの種類に応じて、適宜調整することができる。
【0014】
乾燥後のA型ゼオライトに、さらに焼成等の熱処理を施してもよい。熱処理は、大気雰囲気下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下または減圧雰囲気下で行うことができる。大気雰囲気下での熱処理が、操作を簡便に行うことができるため好ましい。熱処理温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。熱処理時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
【0015】
フォトルミネッセント材料Iの原料であるゼオライトがソーダライトである場合は、イオン交換後のソーダライトを、イオン含有水溶液からろ取し、水洗した後、熱処理することが好ましい。熱処理は、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下で行ってもよく、大気雰囲気下で行ってもよい。熱処理温度は、好ましくは50℃以上850℃以下、より好ましくは150℃以上600℃以下であり、ソーダライトから製造するフォトルミネッセント材料Iの種類に応じて、適宜調整することができる。このときの熱処理の時間は、好ましくは1時間以上24時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下である。
【0016】
本発明で使用するフォトルミネッセント材料Iは、好ましくは
銀原子を含有するフォージャサイト型ゼオライト(以下「フォトルミネッセント材料I-1」と略称することがある)、
銀原子を含有するA型ゼオライト(以下「フォトルミネッセント材料I-2」と略称することがある)、および
銀原子を含有するソーダライト(以下「フォトルミネッセント材料I-3」と略称することがある)
からなる群から選ばれる少なくとも一つである。以下、フォトルミネッセント材料I-1~フォトルミネッセント材料I-3について順に説明する。
【0017】
まず、フォージャサイト型ゼオライトを含むフォトルミネッセント材料I-1としては、例えば特許文献1に記載されているものが挙げられる。フォージャサイト型ゼオライトとしては、合成ゼオライトであるX型ゼオライトおよびY型ゼオライト、並びに天然ゼオライトであるフォージャサイトが挙げられる。これらの中で、X型ゼオライトが好ましい。
【0018】
フォージャサイト型ゼオライト、フォージャサイト型ゼオライトから得られるフォトルミネッセント材料I-1、およびフォトルミネッセント材料I-1から得られるフォトルミネッセント材料IIの平均粒径は、それぞれ、好ましくは0.1μm以上2μm以下、より好ましくは0.5μm以上1.5μm以下である。これらの平均粒径は、レーザ回折およびレーザ散乱法によって測定することができる。
【0019】
フォージャサイト型ゼオライト(フォージャサイト、X型ゼオライトおよびY型ゼオライト)は市販されており、容易に入手することができる。
【0020】
フォトルミネッセント材料I-1は、好ましくは5重量%以上30重量%以下の銀イオンを含有するフォージャサイト型ゼオライトであり、その銀イオン含有量は、より好ましくは7重量%以上20重量%以下である。
【0021】
本発明において、フォトルミネッセント材料IまたはIIの銀原子の含有量は、フォトルミネッセント材料IまたはII全体を基準とする値である。他の原子またはイオンの含有量についても同様である。
【0022】
フォトルミネッセント材料I-1は、銀イオン以外のイオン(以下「他のイオン」と略称することがある。)を含有していてもよい。他のイオンは1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
フォトルミネッセント材料I-1中に含まれる他のイオンは、他のイオンを含む金属塩水溶液を用いるイオン交換によってフォトルミネッセント材料I-1に導入することができる。
【0024】
フォトルミネッセント材料I-1中に含まれる他のイオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、また亜鉛イオン等が挙げられる。これらの中でも、カルシウムイオンを含有するフォトルミネッセント材料I-1は、発光強度が増大するので好ましい。
【0025】
フォトルミネッセント材料I-1が他のイオンを含有する場合、それらの各含有量は、好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0026】
次に、A型ゼオライトを含むフォトルミネッセント材料I-2について説明する。
A型ゼオライト、A型ゼオライトから得られるフォトルミネッセント材料I-2、およびフォトルミネッセント材料I-2から得られるフォトルミネッセント材料IIの平均粒径は、それぞれ、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上15μm以下である。
A型ゼオライトは市販されており、容易に入手することができる。
【0027】
フォトルミネッセント材料I-2は、好ましくは2.5重量%以上40重量%以下の銀イオンを含有するA型ゼオライトであり、より好ましくは
銀イオンおよび亜鉛イオンを含有し、銀イオン含有量が2.5重量%以上30重量%以下であり、亜鉛イオン含有量が0.5重量%以上15重量%以下であり、且つ銀イオンおよび亜鉛イオンの合計含有量が5重量%以上35重量%以下であるA型ゼオライト(以下「フォトルミネッセント材料I-2a」と略称することがある)、
セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、銀イオンと亜鉛イオンとを含有し、セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が1重量%以上25重量%以下であり、銀イオンの含有量が2.5重量%以上30重量%以下であり、且つ亜鉛イオンの含有量が0.5重量%以上15重量%以下であるA型ゼオライト(以下「フォトルミネッセント材料I-2b」と略称することがある)、並びに
銀イオンおよびアンモニウムイオンを含有し、銀イオン含有量が5重量%以上40重量%以下であり、且つアンモニウムイオン含有量が0.1重量%以上25重量%以下であるA型ゼオライト(但し、亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトを除く)(以下「フォトルミネッセント材料I-2c」と略称することがある)、
からなる群から選ばれる少なくとも一つである。以下、フォトルミネッセント材料I-2a~フォトルミネッセント材料I-2cについて、順に説明する。
【0028】
フォトルミネッセント材料I-2aとしては、例えば特許文献2に記載されているものが挙げられる。フォトルミネッセント材料I-2a中の銀イオン含有量は、より好ましくは3.5重量%以上、20重量%以下である。
【0029】
フォトルミネッセント材料I-2a中の亜鉛イオン含有量は、より好ましくは5重量%以上、7重量%以下である。
【0030】
フォトルミネッセント材料I-2a中の銀イオンおよび亜鉛イオンの合計含有量は、より好ましくは10重量%以上、25重量%以下である。
【0031】
フォトルミネッセント材料I-2a中の銀イオン:亜鉛イオンのモル比は、好ましくは1:45~8:1、より好ましくは1:5~2:1である。
【0032】
フォトルミネッセント材料I-2aは、銀イオンおよび亜鉛イオン以外のイオン(以下「他のイオン」と略称することがある)を含有していてもよい。フォトルミネッセント材料I-2aは、1種の他のイオンを含有していてもよく、2種以上の他のイオンを含有していてもよい。
【0033】
フォトルミネッセント材料I-2a中に含まれる他のイオンは、他のイオンを含む塩の水溶液を用いるイオン交換によってフォトルミネッセント材料I-2aに導入することができる。
【0034】
フォトルミネッセント材料I-2a中に含まれる他のイオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中で、アンモニウムイオンが好ましい。
【0035】
フォトルミネッセント材料I-2aが他のイオン(例えば、アンモニウムイオン)を含有する場合、その各含有量は、好ましくは1重量%以上10重量%以下である。
【0036】
フォトルミネッセント材料I-2bとしては、例えば特許文献3に記載されているものが挙げられる。フォトルミネッセント材料I-2bは、セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つのイオンを含有し、好ましくはセシウムイオンを含有する。
【0037】
フォトルミネッセント材料I-2b中のセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の合計含有量(これらが一つのみの場合は、その含有量)は、より好ましくは2重量%以上23重量%以下である。
【0038】
フォトルミネッセント材料I-2b中の銀イオン含有量は、より好ましくは3.5重量%以上28重量%以下である。
【0039】
フォトルミネッセント材料I-2b中の亜鉛イオン含有量は、より好ましくは5重量%以上13重量%以下である。
【0040】
フォトルミネッセント材料I-2bは、セシウムイオン、ルビジウムイオン、銀イオンおよび亜鉛イオン以外のイオン(以下「他のイオン」と略称することがある)を含有していてもよい。フォトルミネッセント材料I-2bは、1種の他のイオンを含有していてもよく、2種以上の他のイオンを含有していてもよい。
【0041】
フォトルミネッセント材料I-2b中に含まれる他のイオンは、他のイオンを含有する水溶液を用いるイオン交換によってフォトルミネッセント材料I-2bに導入することができる。
【0042】
フォトルミネッセント材料I-2b中に含まれる他のイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0043】
フォトルミネッセント材料I-2cとしては、例えば特許文献4に記載されているものが挙げられる。フォトルミネッセント材料I-2c中の銀イオン含有量は、より好ましくは7重量%以上35重量%以下である。
【0044】
フォトルミネッセント材料I-2c中のアンモニウムイオン含有量は、好ましくは0.1重量%以上25重量%以下、より好ましくは1重量%以上15重量%以下である。
【0045】
フォトルミネッセント材料I-2c中の銀イオンおよびアンモニウムイオンの合計含有量は、好ましくは6重量%以上40重量%以下、より好ましくは10重量%以上35重量%以下である。
【0046】
フォトルミネッセント材料I-2cは、銀イオンおよびアンモニウムイオンとは異なるイオン(但し、亜鉛イオンを除く)(以下、「他のイオン」と略称することがある)を含有していてもよい。フォトルミネッセント材料I-2cは、1種の他のイオンを含有していてもよく、2種以上の他のイオンを含有していてもよい。
【0047】
フォトルミネッセント材料I-2c中に含まれる他のイオンは、他のイオンを含有する水溶液を用いるイオン交換によってフォトルミネッセント材料I-2cに導入することができる。
【0048】
フォトルミネッセント材料I-2c中に含まれる他のイオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなどのアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;ニッケルイオン、銅イオン、マンガンイオン、アルミニウムイオンなどの他の金属イオン等が挙げられる。これらの中で、セシウムイオンが好ましい。
【0049】
フォトルミネッセント材料I-2cが他のイオンを含有する場合、その含有量(2種以上の他のイオンが含まれる場合は、他のイオンの合計含有量)は、好ましくは0.1重量%以上40重量%以下である。
【0050】
ソーダライトを含むフォトルミネッセント材料I-3としては、例えば特許文献5に記載されているものが挙げられる。フォトルミネッセント材料I-3は、銀イオン含有水溶液にソーダライトを撹拌および保持することによってイオン交換を行った後、ろ取し、水洗した後、得られたイオン交換ソーダライトを熱処理することによって製造することができる。熱処理条件は、銀原子の含有量、また亜鉛原子が必要な場合にはその含有量によって異なる。なお、フォトルミネッセント材料I-3の製造において、室温より高い温度での乾燥は熱処理に包含される。ソーダライトは、現在安価に大量生産されているA型ゼオライトの副産物として、容易に入手することができる。
【0051】
ソーダライト、ソーダライトから得られるフォトルミネッセント材料I-3、およびフォトルミネッセント材料I-3から得られるフォトルミネッセント材料IIの平均粒径は、それぞれ、好ましくは0.05μm以上500μm以下、より好ましくは0.5μm以上50μm以下である。
【0052】
フォトルミネッセント材料I-3は、好ましくは0.25重量%以上51重量%以下の銀原子を含有するソーダライトであり、より好ましくは
0.25重量%以上10重量%以下の銀原子を含有するソーダライト(以下「フォトルミネッセント材料I-3a」と略称することがある)、
300℃未満の温度での熱処理を経て製造された、12重量%以上18重量%以下の銀原子を含有するソーダライト(以下「フォトルミネッセント材料I-3b」と略称することがある)、
20重量%以上31重量%以下の銀原子および7重量%以上17重量%以下の亜鉛原子を含有するソーダライト(以下「フォトルミネッセント材料I-3c」と略称することがある)、並びに
300℃以上850℃以下の温度での熱処理を経て製造された、33重量%以上51重量%以下の銀原子および0.5重量%以上11重量%以下の亜鉛原子を含有するソーダライト(以下「フォトルミネッセント材料I-3d」と略称することがある)
からなる群から選ばれる少なくとも一つである。フォトルミネッセント材料I-3aおよびフォトルミネッセント材料I-3bは、いずれも、シュウ酸アニオンを含有しないことが好ましい。以下、フォトルミネッセント材料I-3a~フォトルミネッセント材料I-3dについて説明する。
【0053】
フォトルミネッセント材料I-3b(銀原子の含有量:12重量%以上18重量%以下)は、300℃未満の温度での熱処理を経て製造されることが必要である。一方、フォトルミネッセント材料I-3d(銀原子の含有量:33重量%以上51重量%以下)は、300℃以上の温度での熱処理を経て製造されることが必要である。なお、銀原子の含有量が0.25重量%以上10重量%以下である場合(フォトルミネッセント材料I-3a)および銀原子の含有量が20重量%以上31重量%以下である場合(フォトルミネッセント材料I-3c)では、300℃以上または300℃未満のいずれかの温度での熱処理を経て製造することができる。
【0054】
フォトルミネッセント材料I-3を製造するための熱処理温度が異なるのは、銀原子の含有量の違いによって、発光のために必要な銀原子の形態がソーダライト中で異なるためであると推定される。低温の熱処理で得られるソーダライト中では、銀原子は銀イオンの形態で存在し、また高温の熱処理で得られるソーダライト中では、銀原子は銀イオンまたは銀クラスターの形態であるか、またはその一部が銀イオンの形態であり、残りが銀クラスターの形態であると推定される。
【0055】
フォトルミネッセント材料I-3aを製造するための熱処理の温度は、好ましくは50℃以上850℃以下、より好ましくは100℃以上700℃以下、さらに好ましくは150℃以上600℃以下である。フォトルミネッセント材料I-3aを製造するための熱処理の時間は、好ましくは1時間以上24時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下である。
【0056】
フォトルミネッセント材料I-3bを製造するための熱処理の温度は、300℃未満であることが必要であり、好ましくは50℃以上300℃未満、より好ましくは100℃以上270℃以下、さらに好ましくは150℃以上250℃以下である。フォトルミネッセント材料I-3bを製造するための熱処理の時間は、好ましくは1時間以上24時間、より好ましくは2時間以上16時間以下である。
【0057】
フォトルミネッセント材料I-3cを製造するための熱処理の温度は、好ましくは50℃以上850℃以下、より好ましくは100℃以上700℃以下、さらに好ましくは150℃以上600℃以下である。フォトルミネッセント材料I-3cを製造するための熱処理の時間は、好ましくは1時間以上24時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下である。
【0058】
フォトルミネッセント材料I-3dを製造するための熱処理の温度は、300℃以上850℃以下であることが必要であり、好ましくは300℃以上700℃以下、より好ましくは350℃以上650℃以下、さらに好ましくは400℃以上600℃以下である。フォトルミネッセント材料I-3dを製造するための熱処理の時間は、好ましくは1時間以上12時間以下、より好ましくは2時間以上8時間以下である。
【0059】
銀原子の含有量が18重量%以下であるフォトルミネッセント材料I-3aおよびフォトルミネッセント材料I-3bでは、発光のために亜鉛原子は必要ではない。但し、フォトルミネッセント材料I-3aおよびフォトルミネッセント材料I-3bも、亜鉛原子を含有していてもよい。一方、銀原子の含有量が20重量%以上であるフォトルミネッセント材料I-3cおよびフォトルミネッセント材料I-3dでは、発光のために、銀原子に加えて亜鉛原子が必要である。銀原子の含有量が多くなると亜鉛原子が必要となるのは、上述したように銀原子の含有量の違いによって、発光のために必要な銀原子の形態がソーダライト中で異なるためであると推定される。
【0060】
フォトルミネッセント材料I-3は、銀原子および亜鉛原子以外の原子(以下「他の原子」と記載する)および/またはイオン(以下「他のイオン」)を含有していてもよい。他の原子としては、例えば、銀および亜鉛以外の遷移金属原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、ハロゲン原子等が挙げられる。他のイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。但し、フォトルミネッセント材料I-3aおよびフォトルミネッセント材料I-3bは、シュウ酸アニオンを含有しないことが好ましい。
【0061】
フォトルミネッセント材料I-3a中の銀原子の含有量は、好ましくは2.5重量%以上10重量%以下、より好ましくは3.5重量%以上8重量%以下である。フォトルミネッセント材料I-3aは、亜鉛原子を含有していてもよい。フォトルミネッセント材料I-3a中の亜鉛原子の含有量は、好ましくは25重量%以下、より好ましくは5重量%以上25重量%以下である。
【0062】
フォトルミネッセント材料I-3b中の銀原子の含有量は、好ましくは12重量%以上18重量%以下、より好ましくは13重量%以上17重量%以下である。フォトルミネッセント材料I-3bは、亜鉛原子を含有していてもよい。フォトルミネッセント材料I-3b中の亜鉛原子の含有量は、好ましくは0重量%以上21重量%以下、より好ましくは5重量%以上21重量%以下である。
【0063】
フォトルミネッセント材料I-3c中の銀原子の含有量は、好ましくは20重量%以上31重量%以下、より好ましくは22重量%以上31重量%以下である。フォトルミネッセント材料I-3c中の亜鉛原子の含有量は、好ましくは7重量%以上17重量%以下、より好ましくは8.5重量%以上17重量%以下である。
【0064】
フォトルミネッセント材料I-3d中の銀原子の含有量は、好ましくは33重量%以上50.5重量%以下、より好ましくは35重量%以上49重量%以下である。フォトルミネッセント材料I-3d中の亜鉛原子の含有量は、好ましくは0.5重量%以上11重量%以下、より好ましくは0.8重量%以上11重量%以下である。
【0065】
フォトルミネッセント材料Iから銀原子を抽出するための水溶液(以下「抽出水溶液」と略称することがある)は、銀イオン以外のカチオンおよびアンモニアを含有する。銀イオン以外のカチオンは、アンモニウムイオンなどの非金属イオンであってもよく、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンなどの金属イオンであってもよい。
【0066】
銀イオン以外のカチオンは、好ましくはアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンを含む。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンが好ましい。アルカリ土類金属イオンとしては、ストロンチウムイオン、バリウムイオンが好ましい。銀イオン以外のカチオンは、より好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオンおよびバリウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含み、さらに好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオンおよびバリウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含み、特に好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、およびストロンチウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含み、最も好ましくはナトリウムイオンおよび/またはストロンチウムイオンを含む。
【0067】
銀イオン以外のカチオンは、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。例えば、銀イオン以外のカチオンとして、二種以上のアルカリ金属イオンを使用してもよく、アルカリ金属イオンおよびその他のカチオン(例えば亜鉛イオン)を使用してもよい。
【0068】
銀および亜鉛を含有するフォトルミネッセント材料I-2aまたはI-2bでは、銀イオンとともに亜鉛イオンが抽出されると、発光強度が低下する場合がある。そのため、フォトルミネッセント材料I-2aまたはI-2bを使用する場合、銀イオン以外のカチオンが、亜鉛イオンを含むことが好ましい。亜鉛イオンを使用することによって、フォトルミネッセント材料I-2aまたはI-2bから得られるフォトルミネッセント材料IIの発光強度の低下を抑制することができる。
【0069】
銀イオン以外のカチオンとして、原子量の小さいカチオン(例えば、ナトリウムイオン)を使用することによって、フォトルミネッセント材料IIの密度を、フォトルミネッセント材料Iの密度よりも低くすることができる。低密度のフォトルミネッセント材料は、高密度のフォトルミネッセント材料に比べて、樹脂、ゴム、溶剤等との混合物中で、良好な分散状態を維持することができる。
【0070】
また、抽出水溶液を使用することによるフォトルミネッセント材料Iから銀原子を抽出する操作(以下「抽出操作」)は、1回だけ行ってもよく、2回以上行ってもよい。1種の抽出水溶液(例えば、ナトリウムイオンおよびアンモニアを含む抽出水溶液)を使用して、抽出操作を2回以上行ってもよい。また、異なる2種以上の抽出水溶液を使用して、抽出操作を2回以上行ってもよい。例えば、ナトリウムイオンおよびアンモニアを含む抽出水溶液を使用して抽出操作を行った後、カリウムイオンおよびアンモニアを含む抽出水溶液を使用して抽出操作を行ってもよい。
【0071】
フォトルミネッセント材料Iから銀原子を効率的に抽出するために、抽出水溶液中の銀イオン以外のカチオンの濃度(2種以上のカチオンを使用する場合は、それらの濃度の合計)は、好ましくは0.3重量%以上20重量%以下、より好ましくは0.45重量%以上20重量%以下である。同様の理由から、抽出水溶液中のアンモニアの濃度は、好ましくは0.12重量%以上30重量%以下、より好ましくは0.18重量%以上30重量%以下である。
【0072】
銀イオン以外のカチオンとしてアルカリ金属イオンのみを使用する場合、抽出水溶液中のアルカリ金属イオンの濃度の好ましい範囲は、上述した抽出水溶液中の銀イオン以外のカチオンの濃度の好ましい範囲と同じである。銀イオン以外のカチオンとして、アルカリ金属イオン以外のカチオンと、アルカリ金属イオンとを併用する場合、抽出水溶液中のアルカリ金属イオンの濃度(2種以上のアルカリ金属イオンが使用する場合は、それらの濃度の合計)は、好ましくは0.05重量%以上10重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。
【0073】
銀イオン以外のカチオンとしてアルカリ土類金属イオンのみを使用する場合、抽出水溶液中のアルカリ土類金属イオンの濃度の好ましい範囲は、上述した抽出水溶液中の銀イオン以外のカチオンの濃度の好ましい範囲と同じである。銀イオン以外のカチオンとして、アルカリ土類金属イオン以外のカチオンと、アルカリ土類金属イオンとを併用する場合、抽出水溶液中のアルカリ土類金属イオンの濃度(2種以上のアルカリ土類金属イオンを使用する場合は、それらの濃度の合計)は、好ましくは0.05重量%以上10重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。
【0074】
銀イオン以外のカチオンとして亜鉛イオンのみを使用する場合、抽出水溶液中の亜鉛イオンの濃度の好ましい範囲は、上述した抽出水溶液中の銀イオン以外のカチオンの濃度の好ましい範囲と同じである。銀イオン以外のカチオンとして、亜鉛イオン以外のカチオンと、亜鉛イオンとを併用する場合、抽出水溶液中の亜鉛イオンの濃度は、好ましくは0.15重量%以上0.30重量%以下、より好ましくは0.20重量%以上0.26重量%以下である。
【0075】
抽出水溶液は、水と混和する有機溶媒を含有していてもよい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類などが挙げられる。有機溶媒の含有量は、銀イオンの抽出水溶液への溶解の観点から、抽出水溶液全体の50重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。なお、有機溶媒の含有量は、抽出水溶液全体を基準とする値である。抽出水溶液は、有機溶媒を含有しないことが最も好ましい。
【0076】
フォトルミネッセント材料Iから銀原子を効率的に抽出するために、抽出水溶液の使用量は、フォトルミネッセント材料Iの1gに対して、好ましくは5~500mL、より好ましくは7.5~300mL、さらに好ましくは10~100mLである。
【0077】
抽出操作における抽出水溶液の温度は、カチオンの溶解度とアンモニアの揮発性の観点から、好ましくは0~30℃、より好ましくは5~25℃である。抽出操作の時間は、アンモニアの揮発性、および銀のアンミン錯体化に要する反応時間の観点から、好ましくは5分~24時間、より好ましくは10分~16時間である。
【0078】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-1を使用する場合、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.9重量%以上18重量%以下であり、より好ましくは1.2重量%以上15重量%以下である。
【0079】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-2aを使用する場合、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.3重量%以上18重量%以下、より好ましくは0.4重量%以上16重量%以下である。
【0080】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-2bを使用する場合は、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.3重量%以上25重量%以下、より好ましくは0.4重量%以上22重量%以下である。
【0081】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-2cを使用する場合は、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.3重量%以上31重量%以下、より好ましくは0.4重量%以上28重量%以下である。
【0082】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-3aを使用する場合、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上7.2重量%以下、より好ましくは0.2重量%以上6.4重量%以下である。
【0083】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-3bを使用する場合は、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.39重量%以上15重量%以下、より好ましくは0.52重量%以上14重量%以下である。
【0084】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-3cを使用する場合は、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは0.66重量%以上27重量%以下、より好ましくは0.88重量%以上25重量%以下である。
【0085】
フォトルミネッセント材料Iとしてフォトルミネッセント材料I-3dを使用する場合は、上述の抽出操作によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量は、好ましくは1.05重量%以上44重量%以下、より好ましくは1.4重量%以上39重量%以下である。
【0086】
本発明の方法によって得られるフォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量と、フォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量との比(フォトルミネッセント材料IIの銀原子の含有量/フォトルミネッセント材料Iの銀原子の含有量)は、好ましくは3/100~9/10、より好ましくは1/25~3/4、さらに好ましくは1/20~1/2である。ここで、前記比で使用する含有量の単位は「重量%」である。
【0087】
本発明は、上述の方法によって製造されたフォトルミネッセント材料(即ち、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料II)を提供する。フォトルミネッセント材料IIは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、フォトルミネッセント材料IIを、他のフォトルミネッセント材料と組み合わせて使用してもよい。フォトルミネッセント材料IIは、例えば、照明装置、発光塗料、発光繊維、樹脂成形品、ゴム成形品、発光素子、センサー等に使用することができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0089】
以下の実施例および比較例で使用した原料(例えば、A型ゼオライト)は、特段の記載がない限り、同じメーカー(例えば、ユニオン昭和社)から入手した同じ物である。
【0090】
また、得られたフォトルミネッセント材料の特性を、次のようにして評価した。
フォトルミネッセント材料の組成を、リガク社製の走査型蛍光X線分析装置ZSX Primus III+によって測定し、それを基にフォトルミネッセント材料1モルあたりの質量(A)を算出した。次に、リガク社製の全自動多目的X線回折装置 SmartLabによってフォトルミネッセント材料の格子定数を測定し、それを3乗してフォトルミネッセント材料1分子あたりの体積(B、単位:cm3)を算出した。これらの数値から、以下の式によってフォトルミネッセント材料の密度(単位:g/cm3)を算出した。
密度(g/cm3)=A(g)/アボガドロ定数(6.02×10-23)/B(cm3)
さらに、このフォトルミネッセント材料の発光強度を、堀場製作所社製の蛍光分光光度計FluoroMax-4によって測定した。
【0091】
実施例1
(1)フォトルミネッセント材料I(銀原子を含有するA型ゼオライト)の製造
A型ゼオライト(ユニオン昭和社製、平均粒径5μm、交換可能カチオンとしてナトリウムイオンを11重量%含有)5.00g、硝酸銀(乾庄貴金属社製、純度99.8重量%)0.93g、硝酸亜鉛六水和物(キシダ化学社製、純度99重量%)2.85gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌および保持した。その後、撹拌をやめ、吸引濾過により固体を回収し、回収した固体を、105℃で16時間乾燥後、230℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)5.95gを得た。
【0092】
(2)銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIの製造
硝酸ナトリウム(ナカライテスク社製、純度99重量%)0.28g、硝酸亜鉛六水和物0.33g、アンモニア水(キシダ化学社製、アンモニアの濃度28.7重量%)1.5mLおよびイオン交換水30mLを混合して、抽出水溶液を得た(抽出水溶液中のナトリウムイオンの濃度0.24重量%、亜鉛イオンの濃度0.23重量%、アンモニアの濃度1.20重量%)。
【0093】
得られた抽出水溶液に、上記(1)で得られたフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)1.00gを投入し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させ、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料0.98gを得た。
【0094】
比較例1:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)
実施例1(1)で製造したフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)を比較例1として使用した。
【0095】
比較例2:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)の製造
A型ゼオライト5.00g、硝酸銀0.093g、硝酸亜鉛六水和物2.85gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌および保持した。その後撹拌をやめ、吸引濾過により固体を回収し、回収した固体を、105℃で16時間乾燥後、230℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)5.60gを得た。
【0096】
実施例1(2)並びに比較例1および2で得られたフォトルミネッセント材料の組成および密度を表1に示す。また、比較例1で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度を1として計算した、実施例1(2)並びに比較例1および2で得られたフォトルミネッセント材料の相対発光強度を表1に示す。
【0097】
【0098】
実施例1(2)で得られたフォトルミネッセント材料は、比較例1で得られたものよりも銀原子の含有量が低減されているが、実施例1(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、比較例1で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0099】
実施例1(2)および比較例2で得られたフォトルミネッセント材料の銀原子の含有量は同等であるが、実施例1(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、銀原子を低減させる工程を含まない比較例2で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0100】
実施例2
(1)フォトルミネッセント材料I(銀原子を含有するソーダライト)の製造
A型ゼオライト10.00g、水酸化ナトリウム(ナカライテスク社製、純度97重量%)25.60gおよびイオン交換水38.40gを混合し、得られた混合物を、95℃で16時間静置した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させ、ソーダライト(平均粒径3μm、交換可能カチオンとしてナトリウムイオンを12重量%含有)10.00gを得た。
【0101】
得られたソーダライト5.00g、硝酸銀0.070g、硝酸亜鉛六水和物1.85g、硝酸カリウム(ナカライテスク社製、純度99重量%)2.51gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させたのち、230℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)5.57gを得た。
【0102】
(2)銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIの製造
硝酸ナトリウム0.28g、硝酸カリウム0.25g、アンモニア水0.4mLおよびイオン交換水30mLを混合して、抽出水溶液を得た(抽出水溶液中のナトリウムイオンの濃度0.25重量%、カリウムイオンの濃度0.31重量%、アンモニアの濃度0.33重量%)。
【0103】
得られた抽出水溶液に、上記(1)で得られたフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)1.00gを投入し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させ、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料0.99gを得た。
【0104】
比較例3:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)
実施例2(1)で製造したフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)を比較例3として使用した。
【0105】
比較例4:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)の製造
ソーダライト5.00g、硝酸銀0.018g、硝酸亜鉛六水和物1.85g、硝酸カリウム2.51gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させたのち、230℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)5.58gを得た。
【0106】
実施例2(2)並びに比較例3および4で得られたフォトルミネッセント材料の組成および密度を表2に示す。また、比較例3で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度を1として計算した、実施例2(2)並びに比較例3および4で得られたフォトルミネッセント材料の相対発光強度を表2に示す。
【0107】
【0108】
実施例2(2)で得られたフォトルミネッセント材料は、比較例3で得られたものよりも銀原子の含有量が低減されているが、実施例2(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、比較例3で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0109】
実施例2(2)および比較例4で得られたフォトルミネッセント材料の銀原子の含有量は同等であるが、実施例2(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、銀原子を低減させる工程を含まない比較例4で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0110】
実施例3
(1)フォトルミネッセント材料I(銀原子を含有するX型ゼオライト)の製造
硝酸銀0.60g(富士フイルム和光純薬社製)をイオン交換水に溶解して、100mLの水溶液を調製した。得られた水溶液に、X型ゼオライト(東ソー社製、平均粒径5μm、交換可能カチオンとしてナトリウムイオンを8重量%含有)3.00gを加え、得られた混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、70℃で24時間乾燥させ、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)4.05gを得た。
【0111】
(2)銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料の製造
硝酸ナトリウム2.19gおよびアンモニア水3.6mLをイオン交換水に混合して、100mLの抽出水溶液を得た(抽出水溶液中のナトリウムイオンの濃度0.56重量%、アンモニアの濃度0.88重量%)。
【0112】
得られた抽出水溶液に、上記(1)で得られたフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)3.00gを投入し、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、70℃で24時間乾燥させ、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料2.36gを得た。
【0113】
比較例5:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)
実施例3(1)で製造したフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)を比較例5として使用した。
【0114】
比較例6:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)の製造
硝酸銀0.033gをイオン交換水に溶解して、100mLの水溶液を調製した。得られた水溶液に、X型ゼオライト0.95gを加え、得られた混合物を25℃で2時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、70℃で24時間乾燥させ、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するX型ゼオライト)1.00gを得た。
【0115】
実施例3(2)並びに比較例5および6で得られたフォトルミネッセント材料の組成および密度を表3に示す。また、比較例5で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度を1として計算した、実施例3(2)並びに比較例5および6で得られたフォトルミネッセント材料の相対発光強度を表3に示す。
【0116】
【0117】
実施例3(2)で得られたフォトルミネッセント材料は、比較例5で得られたものよりも銀原子の含有量が低減されているが、実施例3(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、比較例5で得られたフォトルミネッセント材料のものと同等であった。
【0118】
実施例3(2)および比較例6で得られたフォトルミネッセント材料の銀原子の含有量は同等であるが、実施例3(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、銀原子を低減させる工程を含まない比較例6で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0119】
実施例4
(1)フォトルミネッセント材料I(銀原子を含有するA型ゼオライト)の製造
A型ゼオライト5.00g、硝酸銀0.47g、硝酸亜鉛六水和物2.49g、硝酸アンモニウム(関東化学社製、純度99重量%)1.97g、硝酸セシウム(三津和化学薬品社製、純度99重量%)2.67gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させたのち、150℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)6.30gを得た。
【0120】
(2)銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIの製造
硝酸ストロンチウム(キシダ化学社製、純度98重量%)0.58g、アンモニア水0.4mLおよびイオン交換水30mLを混合して、抽出水溶液を得た(抽出水溶液中のストロンチウムイオンの濃度0.76重量%、アンモニアの濃度0.33重量%)。
【0121】
得られた抽出水溶液に、上記(1)で得られたフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)1.00gを投入し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させ、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料0.82gを得た。
【0122】
比較例7:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)
実施例4(1)で製造したフォトルミネッセント材料I-2b(銀原子を含有するA型ゼオライト)を比較例7として使用した。
【0123】
比較例8:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)の製造
A型ゼオライト5.00g、硝酸銀0.33g、硝酸亜鉛六水和物2.85g、硝酸アンモニウム1.97g、硝酸セシウム0.53g、硝酸ストロンチウム2.90gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させたのち、150℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するA型ゼオライト)5.98gを得た。
【0124】
実施例4(2)並びに比較例7および8で得られたフォトルミネッセント材料の組成および密度を表4に示す。また、比較例7で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度を1として計算した、実施例4(2)並びに比較例7および8で得られたフォトルミネッセント材料の相対発光強度を表4に示す。
【0125】
【0126】
実施例4(2)で得られたフォトルミネッセント材料は、比較例7で得られたものよりも銀原子の含有量が低減されているが、実施例4(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、比較例7で得られたフォトルミネッセント材料のものと同等であった。
【0127】
実施例4(2)および比較例8で得られたフォトルミネッセント材料の銀原子の含有量は同等であるが、実施例4(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、銀原子を低減させる工程を含まない比較例8で得られたフォトルミネッセント材料のものよりも高かった。
【0128】
実施例5
(1)フォトルミネッセント材料I(銀原子を含有するソーダライト)の製造
実施例2(1)と同様の方法にて製造したソーダライト5.00g、硝酸銀0.070g、硝酸亜鉛六水和物2.46gおよびイオン交換水30mLを混合し、得られた混合物を、80℃で3時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させたのち、230℃で16時間焼成し、フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)5.81gを得た。
【0129】
(2)銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料IIの製造
硝酸ナトリウム0.75g、アンモニア水0.4mL、イオン交換水24mLおよびメタノール(関東化学社製、純度99.8重量%)6mLを混合して、抽出水溶液を得た(抽出水溶液中のナトリウムイオンの濃度0.68重量%、アンモニアの濃度0.44重量%、メタノールの濃度15.9重量%)。
【0130】
得られた抽出水溶液に、上記(1)で得られたフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)1.00gを投入し、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。その後、吸引濾過により固体を回収し、105℃で16時間乾燥させ、銀原子の含有量が低減されたフォトルミネッセント材料0.99gを得た。
【0131】
比較例9:フォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)
実施例5(1)で製造したフォトルミネッセント材料(銀原子を含有するソーダライト)を比較例9として使用した。
【0132】
実施例5(2)並びに比較例9で得られたフォトルミネッセント材料の組成および密度を表5に示す。また、比較例9で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度を1として計算した、実施例5(2)並びに比較例9で得られたフォトルミネッセント材料の相対発光強度を表5に示す。
【0133】
【0134】
実施例5(2)で得られたフォトルミネッセント材料は、比較例9で得られたものよりも銀原子の含有量が低減されているが、実施例5(2)で得られたフォトルミネッセント材料の発光強度は、比較例9で得られたフォトルミネッセント材料のものと同等であった。
【0135】
実験例:フォトルミネッセント材料を含有する硬化物の発光強度の測定
二液型LED用シリコーンゴム(信越化学工業社製「SCR-1012」)のA液0.75gおよびB液0.75g、並びに実施例1(2)で得られたフォトルミネッセント材料または比較例1のフォトルミネッセント材料(即ち、実施例1(1)で得られたフォトルミネッセント材料)0.05gを混合した。得られた混合物の作製直後の発光強度を堀場製作所社製の蛍光分光光度計FluoroMax-4によって測定した。その後、これら混合物を105℃の送風乾燥機内で1時間静置することによって硬化物を作製し、得られた硬化物の発光強度を、前記と同様に測定した。作製直後の混合物の発光強度を1として計算した、硬化物の相対発光強度を表6に示す。
【0136】
【0137】
比較例1のフォトルミネッセント材料を使用して得られた硬化物は、目視で変色が認められ、その発光強度は、作製直後の混合物の発光強度と比べて著しく低下した。他方、実施例1(2)で得られたフォトルミネッセント材料を使用して得られた硬化物は、変色がなく、その発光強度は、作製直後の混合物の発光強度と比べて、ほとんど変化がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の製造方法によって得られるフォトルミネッセント材料は、例えば、照明装置、発光塗料、発光繊維、樹脂成形品、ゴム成形品、発光素子、センサー等に使用することができる。