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  • 特許-集合電池の電極構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】集合電池の電極構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6553 20140101AFI20241122BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241122BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20241122BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20241122BHJP
   H01M 50/543 20210101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M10/6553
H01M50/528
H01M10/613
H01M10/6551
H01M50/50 101
H01M50/543
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020174672
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065894
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】319008443
【氏名又は名称】有限会社山岡
(73)【特許権者】
【識別番号】591105074
【氏名又は名称】株式会社ニチダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】山岡 英俊
(72)【発明者】
【氏名】山岡 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠志
(72)【発明者】
【氏名】森 満帆
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/060069(WO,A1)
【文献】特開2011-124056(JP,A)
【文献】特開2016-091959(JP,A)
【文献】特開2019-008885(JP,A)
【文献】特表2021-502685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6553
H01M 50/528
H01M 10/613
H01M 10/6551
H01M 50/50
H01M 50/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池の正極側、負極側にそれぞれ設けられ、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状で純ニッケルを材質としたタブ板と、銅を材質とし、前記タブ板に積層した際に電池の電極と溶接される前記タブ板の集電部位に位置する部分が省略された形状とすると共に、前記タブ板に面する側とその反対面の両面全域に各々ニッケルメッキ層が形成され、かつ正負の電極の各々のタブ板における電極と接続する面と反対面に積層されて該ニッケルメッキ層を介在物質として電気的かつ物理的に拡散接合により面接続した導電板と、を備え、前記導電板に立体的な放熱面が形成された集合電池の電極構造。
【請求項2】
前記導電板の放熱面により熱排気流路が形成されている請求項1記載の集合電池の電極構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型化を抑制して充放電時の放熱が容易かつ確実に行うことができる集合電池の電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では、例えば内燃機関を用いたり、コンセントからコードで電力を供給したりする給電手法に代わり、充電可能な複数の電池を接続して、該複数の電池を大容量の1つの電池として機能させる集合電池(又は組電池とも称される)内蔵し、この充電済みの集合電池から給電する、車、自転車、電動工具、家電が増えている。
【0003】
こうした集合電池は、上記のとおり、個々の電池の容量は小さくとも、複数を接続しているので、どうしても充電、放電、の際の電気の通り道となる部位において、その部位の材質や電極との接続具合を要因として発熱することが知られている。集合電池における発熱は例えば集合電池を収納したケースの変形、ひいては機器の破損を招く可能性があるほか、場合によっては爆発の可能性がある。そこで従来、集合電池の放熱を促すために下記の特許文献1~4が知られている。
【0004】
例えば特許文献(特開2009-301982号公報)には、電極群に電気的に接続された導電部材と金属製電池缶の内底面とがスポット溶接で接合された複数の二次電池と、前記二次電池間を電気的機械的に接続するバスバーと、一側が前記スポット溶接で接合された電池缶の内底面と反対面側の外底面に当接し、他側が前記バスバーの両端部のうち少なくとも一方の端部に固定された金属製の放熱部材とを備えた構造が開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献2(特開2010-198930号公報)には、電極端子間がバスバーを介して通電可能に接続される複数個の電池セルからなる集合電池を少なくとも2個含み、前記複数個の集合電池がさらに電気的に直列接続されて構成される組電池と、前記各集合電池における複数個の前記バスバーに対して熱の授受を行える流体を供給する流体供給手段と、前記集合電池毎に個別に設けられる通路であって、前記各集合電池の前記複数個のバスバーに向けて前記流体供給手段によって供給される前記流体が通る個別の通路と、を備えた構造が開示されている
【0006】
さらに、例えば特許文献3(特開2010-244732号公報)には、電極端子間がバスバーによって直列接続される複数個の電池セルからなる集合電池と、前記集合電池の表面から突出する位置に配置される複数個の前記バスバーまたは前記電極端子に対して熱を授受する流体を供給する流体供給手段と、前記集合電池の前記バスバー間を仕切り、前記集合電池の外側空間に複数の通路を形成する仕切り部材と、を備え、前記流体供給手段によって供給される前記流体は、前記複数の通路に分かれて前記集合電池の外側空間を流通する構造が開示されている。
【0007】
また、例えば特許文献4(特開2013-214354号公報)には、複数の電池が配列されて筐体内に収納された電池モジュールであって、前記電池は、該電池の電極部に、前記電池内で発生したガスを電池外に排出する開放部を有しており、前記筐体は、前記電池の電極部周囲の電池ケースに当接して配設された分離板によって、前記複数の電池と前記複数の電池の隙間に充填された冷却液、或いは、冷却剤を収容する収納部と、前記電極部の開放部から排出されるガスを前記筐体外に排気する排気室とに区画されており、前記電極部の開放部は、前記分離板に形成された貫通孔を介して、前記排気室に連通している構造が開示されている。
【0008】
しかしながら、従来の特許文献1~4は、以下の問題があった。特許文献1はバスバーにおける電極の接点部に放熱部材がピンポイントで設けられているだけであって放熱効果が高いとは言えない。特許文献2,3は物理的に流体供給手段を備えているから構造が大型化する。特許文献4は冷却液あるいは冷却剤を収容する収納部を要する分だけ構造が大型化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-301982号公報
【文献】特開2010-198930号公報
【文献】特開2010-244732号公報
【文献】特開2013-214354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする問題は、上記特許文献1~4含めた従来のものは、放熱効果が低ければ長時間使用による発熱(蓄熱)でケースの変形、爆発の可能性が高くなり、また、限られたスペースにおいて放熱のための構造が大型化してしまうと電池を小型化する必要が生じ、よって集合電池の容量が小さくなってしまうといったように、別の課題が生じる点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の電池の正極側、負極側にそれぞれ設けられ、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状で純ニッケルを材質としたタブ板と、銅を材質とし、前記タブ板に積層した際に電池の電極と溶接される前記タブ板の集電部位に位置する部分が省略された形状とすると共に、前記タブ板に面する側とその反対面の両面全域に各々ニッケルメッキ層が形成され、かつ正負の電極の各々のタブ板における電極と接続する面と反対面に積層されて該ニッケルメッキ層を介在物質として電気的かつ物理的に拡散接合により面接続した導電板と、を備え、前記導電板に立体的な放熱面が形成された構造とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状のタブ板とし、このタブ板と導電板が電気的かつ物理的に面接続しているので、電極間を接続する従来のバスバー相当構成に比べて、圧倒的に導電面積を拡大することができ、発熱の要因となる抵抗値を下げることができ、そもそもの発熱を抑制できる。
【0013】
また、本発明は、正負の電極の各々のタブ板において電極と接続する面と反対面に電気的かつ物理的に面接続した導電板を設けて、この導電板に立体的な放熱面を形成しているので、正負のそれぞれの1つの電極、すなわちタブ板から発生した熱が、大面積の導電板に直接かつ余すことなく伝達され、この導電板に形成された立体的な放熱面から伝達された熱が逃がされるから、高い放熱効果を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明は、そもそもの発熱が抑制され、また、大面積の1つの正負それぞれの電極からの発熱を同じく大面積の導電板に伝達させて、導電板に形成した放熱面から放熱する構造であるため、放熱や冷却のための別途の部材や空間が不要となり、構造の大型化が抑制され、ひいては電池容量の維持に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の集合電池の電極構造の導電板と放熱面側を示す斜視図である。
図2】本発明の集合電池の電極構造の部分拡大斜視図である。
図3】本発明の集合電池の電極構造のタブ板側を示す斜視図である。
図4】本発明の集合電池の電極構造を示す図1におけるA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、集合電池構造における放熱効果の向上と放熱構造の小型化という一見して相反する目的を、複数の電池の正極側、負極側にそれぞれ設けられ、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状で純ニッケルを材質としたタブ板と、銅を材質とし、前記タブ板に積層した際に電池の電極と溶接される前記タブ板の集電部位に位置する部分が省略された形状とすると共に、前記タブ板に面する側とその反対面の両面全域に各々ニッケルメッキ層が形成され、かつ正負の電極の各々のタブ板における電極と接続する面と反対面に積層されて該ニッケルメッキ層を介在物質として電気的かつ物理的に拡散接合により面接続した導電板と、を備え、前記導電板に立体的な放熱面が形成された構造とすることで達成した。
【0017】
放熱面とは、本発明の場合、導電板と同素材で一体的に形成されており、具体的には導電板の(放熱)面積を増やすために設けているが、タブ板の面領域をはみ出して放熱面の面積を稼ぐことはない。すなわち、具体的には、導電板はタブ板と同等あるいは製作上必要な部分だけを省略した若干小さい面積とされ、この導電板の面積領域内に導電板の面から突出したピンや様々なパターンの壁面を形成することで放熱面とされる。
【0018】
また、本発明は、上記構成において、導電板の放熱面により熱排気流路が形成されている構成であってもよい。この熱排気流路とは、高温空気を目的とする方向に対流効果により速やかに移動させるものであり、例えば放熱面を上記壁面で構成する場合においては放熱面同士の隙間の狭い部分と広い部分との差を設けたりすればよい。こうすることで、発生した熱は、滞留することなく速やかに集合電池の全体構造における放熱に適した個所へ移動させることができる。
【実施例
【0019】
以下、本発明の集合電池の電極構造について、図面を参照して説明する。1は、例えば電動工具のいわゆるバッテリーパック内に収納されて電力供給を行い、該バッテリーパック外に取り出して充電を行うことができるバッテリーカートリッジのケース内部に設けられた複数の充電池(以下、電池と記す)の正極側、負極側にそれぞれ設けられた、本発明の集合電池の電極構造(以下、電極構造1と記す)であり、次の構成とされている。
【0020】
電極構造1は、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状のタブ板2、正負の電極の各々のタブ板2において電極と接続する面と反対面に電気的かつ物理的に面接続した導電板3、そして、導電板3に立体的な放熱面3Aが形成された構造である。
【0021】
例えば、本例におけるタブ板2は、各電池の正極と負極のそれぞれの端子に電気的に接続する集電部位2aが形成されている。タブ板2は、例えば本例では、厚み0.15mm純ニッケルを材質としたものを用いている。
【0022】
タブ板2における集電部位2aは、図示するように、例えば打ち抜き加工により該タブ板2から集電部位2aが一体的に残るように形成すればよく、集電部位2aの形状は、充電池Bとの溶接が容易かつ確実となるような形状とすればよい。
【0023】
導電板3は、タブ板2における電極に臨む側と反対側の面に配置され、例えば本例では銅でなる面状の部位が1.0mmのものを用いている、また、本例では図示しないが、例えば、導電板3は、タブ板2に面する側と、この反対面との両面、後述の放熱面3Aも含めた全域に、各々ニッケルメッキ層が形成されている。
【0024】
導電板3にニッケルメッキ層を形成している理由は、導電板3の酸化防止のためである。なお、導電板3におけるタブ板2に積層される側のニッケルメッキ層は、該タブ板2と電気的かつ物理的に、例えば本例では拡散接合により面接続する際に、タブ板2と導電板3の両素材に拡散される介在物質となる。
【0025】
さらに、導電板3は、本例では例えば、配置された複数の電池の電極上に載置して個々の電極と集電部位2aを溶接する際に導電板3が邪魔とならないように、タブ板2の集電部位2a部分は省略された形状とされている。電極と集電部位2aの接続に邪魔とならないならば、集電部位2aにも導電板3が存在する形状であっても構わない。また、導電板3の図示長尺方向の一端部には、入出力端子3aが形成されている。
【0026】
また、導電板3のタブ板2に面する側と反対面には、例えば本例においては、該導電板3と同素材で一体的に、該導電板3の面状部位から垂直に突設され、図示長尺方向に延びた放熱面3Aが形成される。本例において、放熱面3Aは、集電部位2a部位で省略されている箇所と入出力端子3aの設けられた個所を除き、つまり、導電板3の通電面において図示長尺方向に途切れなく、図示短尺方向に所定間隔を存して形成されている。
【0027】
この放熱面3A同士の、図示短尺方向の間隔が、本例では例えば熱排気流路3Bとされている。すなわち、この熱排気流路3Bが形成されていることにより、本例の場合、図示しないが、バッテリーカートリッジのケースは、導電板3における入出力端子3aが設けられた側とその反対側を両端とする方向にわずかながらケース内外と流通する隙間があり、この隙間へ高温空気を速やかに移動させることが可能となっている。
【0028】
なお、放熱面3Aの形状、また、放熱面3Aによる熱排気流路3Bの形状、については本例に限らず、様々な変形が可能である。しかし、放熱面3Aは、タブ板2の(輪郭)外形を超えて形成されること、バッテリーカートリッジのケースの内空間を超えて形成されることは、小型化の観点から望ましくない。
【0029】
タブ板2と導電板3は、例えば本例の場合、タブ板2と導電板3とを積層し、真空炉にて、導電板3の材料の融点の9割程度の温度で一定時間保持し、後に急冷する、ことで電気的かつ物理的に面接続している。なお、タブ板2と導電板3の電気的かつ物理的に面接続する手法は、上記に限らず、タブ板2と導電板3との面接触率は特に問わない。
【0030】
本例における上記構成の電極構造1は、タブ板2と導電板3とが電気的かつ物理的に面接続されているから、導電面積が拡大することなり、よって、発熱の要因となる抵抗値を下げる、つまりそもそもの発熱を抑制することができる。
【0031】
一般的に、抵抗値が高い物質に通電すると熱としてロスが生じ、すなわち抵抗値を下げれば、発熱を抑えることができる。本発明の電極構造1は、複数の正負それぞれの電極の同極同士を各々一面に集合して1つの正極、1つの負極とする面状のタブ板2とし、このタブ板2と導電板3が電気的かつ物理的に面接続しているから、導電面積を拡大することととなり、よってまず発熱そのものを抑制できる。
【0032】
また、本発明の電極構造1は、導電板3に立体的な放熱面3Aを形成しているので、正負のそれぞれの1つの電極、すなわちタブ板2から発生した熱は導電板3つまり放熱面3Aに直接かつ直ちに伝達され、放熱面3Aから放熱され、また、放熱面3Aによる熱排気流路3Bにより放熱面3Aからの熱を所定の方向に迅速かつ的確に排出(移動)させることができるから、高い放熱効果を得ることができる。
【0033】
そのうえ、本発明の電極構造1は、導電板3に放熱面3や熱排気流路3Bが一体的に形成されるので、つまり集合電池としての必要構成要素にこれらが設けられるので、放熱、冷却、のためにバッテリーカートリッジのケース内空間の変更や大型化又は電池容量の下げる変更などが必要とならず、既存のバッテリーカートリッジのケース規格を流用できるか又は小型化に寄与できる。
【符号の説明】
【0034】
1 (集合電池の)電極構造
2 タブ板
2a 集電部位
3 導電板
3A 放熱面
3B 熱排気流路
図1
図2
図3
図4