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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/30 20060101AFI20241122BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20241122BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20241122BHJP
【FI】
H01S5/30
H01S5/343
H01L33/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020217410
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102588
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岸野 克巳
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135859(JP,A)
【文献】特開2019-149503(JP,A)
【文献】特開2019-054127(JP,A)
【文献】特開2018-133516(JP,A)
【文献】特開2004-193527(JP,A)
【文献】特開2005-059133(JP,A)
【文献】国際公開第2020/074875(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0082543(US,A1)
【文献】特開2006-049855(JP,A)
【文献】JAHANGIR, S. et al.,Red-Emitting (λ=610 nm) In0.51Ga0.49N/GaN Disk-in-Nanowire Light Emitting Diodes on Silicon,IEEE Journal of Quantum Electronics,2014年05月16日,Vol. 50, No. 7,p. 530-537,DOI: 10.1109/JQE.2014.2323952
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に第1低屈折率層を形成する工程と、
前記第1低屈折率層に、前記第1低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層を形成する工程と、
前記高屈折率層に、前記高屈折率層よりも屈折率が低い第2低屈折率層を形成する工程と、
前記第2低屈折率層、前記高屈折率層、および前記第1低屈折率層に、前記第2低屈折率層、前記高屈折率層、および前記第1低屈折率層を貫通する複数の開口部を形成する工程と、
前記開口部を形成する工程の後に、前記開口部を形成する工程で露出された前記高屈折率層に、紫外線を照射しながらエッチングを行うことにより、前記高屈折率層に形成された前記開口部の径を、前記第1低屈折率層に形成された前記開口部の径、および前記第2低屈折率層に形成された前記開口部の径よりも大きくする工程と、
複数の前記開口部の各々に、柱状部を結晶成長させる工程と、
を有し、
前記柱状部を結晶成長させる工程は、
前記第1低屈折率層に形成された前記開口部に、第1半導体層を結晶成長させる工程と、
前記高屈折率層に形成された前記開口部に、発光層を結晶成長させる工程と、
前記第2低屈折率層に形成された前記開口部に、前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層を結晶成長させる工程と、
を有し、
前記高屈折率層の材質は、光触媒である、発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記発光層の屈折率は、前記高屈折率層の屈折率よりも高い、発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーは、高輝度の次世代光源として期待されている。中でも、ナノコラムを適用した半導体レーザーは、ナノコラムによるフォトニック結晶の効果によって、狭放射角で高出力の発光が実現できると期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、n型GaN層、発光層、p型GaN層を、順次積層成長させた複数のナノコラムを有する半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-135859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体レーザーの発光層に光を閉じ込めることは、発振閾値など素子の性能を大きく左右する重要な要素である。発光層とクラッド層との屈折率差を大きくすることにより光閉じ込め係数を高めることができる。
【0006】
しかしながら、上記のようなナノコラムを有する発光装置では、発光層の材料や基板の材料に基づいて格子整合などの条件を考慮する必要があり、材料の選択肢は大幅に制限される。そのため、発光層とクラッド層との屈折率の差がとり難く、光閉じ込め係数を大きくすることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置の製造方法の一態様は、
基板に第1低屈折率層を形成する工程と、
前記第1低屈折率層に、前記第1低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層を形成する工程と、
前記高屈折率層に、前記高屈折率層よりも屈折率が低い第2低屈折率層を形成する工程と、
前記第2低屈折率層、前記高屈折率層、および前記第1低屈折率層に、複数の開口部を形成する工程と、
複数の前記開口部の各々に、柱状部を結晶成長させる工程と、
を有し、
前記柱状部を結晶成長させる工程は、
前記第1低屈折率層に形成された前記開口部に、第1半導体層を結晶成長させる工程と、
前記高屈折率層に形成された前記開口部に、発光層を結晶成長させる工程と、
前記第2低屈折率層に形成された前記開口部に、前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層を結晶成長させる工程と、
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図2】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を説明するためのフローチャート。
図3】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図4】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】第1実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】第1参考例に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図7】第2参考例に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図8】第2実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図。
図9】第2実施形態に係る発光装置の製造工程を説明するためのフローチャート。
図10】第2実施形態に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図11】第3実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1. 第1実施形態
1.1. 発光装置
まず、第1実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る発光装置100を模式的に示す断面図である。
【0011】
発光装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、積層体20と、第1電極60と、第2電極62と、を有している。発光装置100は、例えば、半導体レーザーである。
【0012】
基板10は、例えば、支持基板12と、バッファー層14と、を有している。支持基板12は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。バッファー層14は、支持基板12上に設けられている。バッファー層14は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0013】
本明細書では、積層体20の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう)において、発光層34を基準とした場合、発光層34から第2半導体層36に向かう方向を「上」とし、発光層34から第1半導体層32に向かう方向を「下」として説明する。また、積層方向と直交する方向を「面内方向」ともいう。また、「積層体20の積層方向」とは、柱状部30の第1半導体層32と発光層34との積層方向のことである。
【0014】
積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、柱状部30と、光伝搬層40と、を有している。
【0015】
柱状部30は、バッファー層14上に設けられている。柱状部30は、バッファー層14から上方に突出した柱状の形状を有している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、正六角形などの多角形、円である。
【0016】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の発光層34を得ることができ、かつ、発光層34に内在する歪を低減することができる。これにより、発光層34で発生する光を高い効率で増幅することができる。
【0017】
なお、「柱状部の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。このことは、後述する「開口部の径」について同様である。
【0018】
柱状部30は、複数設けられている。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、1nm以上500nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状に配置されている。なお、複数の柱状部30の配置は、特に限定されず、正方格子状に配置されていてもよい。複数の柱状部30は、フォトニック結晶の効果を発現することができる。
【0019】
なお、「柱状部のピッチ」とは、所定の方向に沿って隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0020】
柱状部30は、第1半導体層32と、発光層34と、第2半導体層36と、を有している。
【0021】
第1半導体層32は、バッファー層14上に設けられている。第1半導体層32は、基板10と発光層34との間に設けられている。第1半導体層32は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。
【0022】
発光層34は、第1半導体層32上に設けられている。発光層34は、第1半導体層32と第2半導体層36との間に設けられている。発光層34は、電流が注入されることで光を発生させる。発光層34は、例えば、ウェル層33と、バリア層35と、を有している。ウェル層33は、例えば、i型のInGaN層である。バリア層35は、i型のGaN層である。発光層34は、ウェル層33とバリア層35とから構成されたMQW(Multiple Quantum Well)構造を有している。図示の例では、ウェル層33は、3層設けられている。バリア層35は、4層設けられている。
【0023】
なお、発光層34を構成するウェル層33およびバリア層35の数は、特に限定されない。例えば、ウェル層33は、1層だけ設けられていてもよく、この場合、発光層34は、SQW(Single Quantum Well)構造を有している。
【0024】
第2半導体層36は、発光層34上に設けられている。第2半導体層36は、第1半導体層32と導電型の異なる層である。第2半導体層36は、例えば、Mgがドープされたp型のGaN層などである。第1半導体層32および第2半導体層36は、発光層34に光を閉じ込める機能を有するクラッド層である。
【0025】
なお、図示はしないが、第1半導体層32と発光層34との間に、OCL(Optical Confinement Layer)が設けられていてもよい。また、発光層34と第2半導体層36との間に、EBL(Electron Blocking Layer)が設けられていてもよい。
【0026】
光伝搬層40は、基板10上に設けられている。発光層34で発光した光は、光伝搬層40を伝搬する。光伝搬層40は、絶縁層であることが好ましい。光伝搬層40が絶縁層であれば、第1電極60と第2電極62との間の電流経路を定め易い。
【0027】
光伝搬層40は、第1低屈折率層42と、高屈折率層44と、第2低屈折率層46と、を有している。
【0028】
第1低屈折率層42は、バッファー層14上に設けられている。第1低屈折率層42は、例えば、酸化シリコン層である。
【0029】
高屈折率層44は、バッファー層14上に設けられている。高屈折率層44は、第1低屈折率層42と第2低屈折率層46との間に設けられている。高屈折率層44の屈折率は、第1低屈折率層42の屈折率および第2低屈折率層46の屈折率よりも高い。高屈折率層44は、例えば、酸化チタン層、酸化アルミニウム層である。
【0030】
第2低屈折率層46は、高屈折率層44上に設けられている。第2低屈折率層46の屈折率は、第1低屈折率層42の屈折率と、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2低屈折率層46は、例えば、酸化シリコン層である。
【0031】
第1低屈折率層42、高屈折率層44、および第2低屈折率層46には、複数の開口部50が形成されている。開口部50は、光伝搬層40を積層方向に貫通している。開口部50には、柱状部30が設けられている。柱状部30の形状は、開口部50によって規定される。
【0032】
第1低屈折率層42は、隣り合う柱状部30の第1半導体層32の間に設けられている。第1半導体層32の屈折率は、例えば、第1低屈折率層42の屈折率よりも高い。高屈折率層44は、隣り合う柱状部30の発光層34の間に設けられている。発光層34の屈折率は、例えば、高屈折率層44の屈折率よりも高い。第2低屈折率層46は、隣り合う柱状部30の第2半導体層36の間に設けられている。第2半導体層36の屈折率は、例えば、第2低屈折率層46の屈折率よりも高い。
【0033】
図示の例では、積層方向において、高屈折率層44の第1低屈折率層側の端44aの位置と、発光層34の第1半導体層32側の端34aの位置とは、同じである。積層方向において、高屈折率層44の第2低屈折率層側の端44bの位置と、発光層34の第2半導体層36側の端34bの位置とは、同じである。第1低屈折率層42に形成された開口部50の径、高屈折率層44に形成された開口部50の径、および第2低屈折率層46に形成された開口部50の径は、例えば、互いに等しい。
【0034】
発光装置100の発光層34が設けられている部分(以下、「発光層部分」ともいう)の面内方向における平均屈折率は、発光装置100の第1半導体層32が設けられている部分(以下、「第1半導体層部分」ともいう)の面内方向における平均屈折率、および発光装置100の第2半導体層36が設けられている部分(以下、「第2半導体層部分」ともいう)の面内方向における平均屈折率よりも大きい。
【0035】
発光装置100では、p型の第2半導体層36、不純物がドープされていないi型の発光層34、およびn型の第1半導体層32により、pinダイオードが構成される。発光装置100では、第1電極60と第2電極62との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、発光層34に電流が注入されて発光層34において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。発光層34で発生した光は、光伝搬層40を面内方向に伝搬し、複数の柱状部30によるフォトニック結晶の効果により定在波を形成して、発光層34で利得を受けてレーザー発振する。そして、発光装置100は、+1次回折光および-1次回折光をレーザー光として、積層方向に出射する。
【0036】
なお、図示はしないが、支持基板12とバッファー層14との間、または支持基板12の下に反射層が設けられていてもよい。該反射層は、例えば、DBR(Distributed Bragg Reflector)層である。該反射層によって、発光層34において発生した光を反射させることができ、発光装置100は、第2電極62側からのみ光を出射することができる。
【0037】
第1電極60は、バッファー層14上に設けられている。バッファー層14は、第1電極60とオーミックコンタクトしていてもよい。第1電極60は、第1半導体層32と電気的に接続されている。図示の例では、第1電極60は、バッファー層14を介して、第1半導体層32と電気的に接続されている。第1電極60は、発光層34に電流を注入するための一方の電極である。第1電極60としては、例えば、バッファー層14側から、Cr層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いる。
【0038】
第2電極62は、第2半導体層36上に設けられている。図示の例では、第2電極62は、さらに、第2低屈折率層46上に設けられている。第2電極62は、第2半導体層36と電気的に接続されている。第2半導体層36は、第2電極62とオーミックコンタクトしていてもよい。第2電極62は、発光層34に電流を注入するための他方の電極である。第2電極62としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などを用いる。
【0039】
1.2. 発光装置の製造方法
次に、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る発光装置100の製造方法を説明するためのフローチャートである。図3図5は、第1実施形態に係る発光装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0040】
図3に示すように、支持基板12上に、バッファー層14を結晶成長させる(ステップS11)。バッファー層14の結晶成長は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法を用いたエピタキシャル成長である。本工程により、基板10を形成することができる。
【0041】
次に、バッファー層14上に、第1低屈折率層42、高屈折率層44、および第2低屈折率層46を、この順で形成する(ステップS12)。具体的には、バッファー層14上に、第1低屈折率層42上を形成する。次に、第1低屈折率層42に、高屈折率層44上を形成する。次に、高屈折率層44に、第2低屈折率層46を形成する。低屈折率層42,46および高屈折率層44は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スピンコート法によって形成される。本工程により、光伝搬層40を形成することができる。
【0042】
図4に示すように、第2低屈折率層46上に、高屈折率層44、および第1低屈折率層42に、複数の開口部50を形成する(ステップS13)。開口部50は、例えば、フォトリソグラィーおよびドライエッチングによって行われる。開口部50は、バッファー層14の上面が露出するように形成される。
【0043】
図5に示すように、複数の開口部50の各々に、柱状部30を結晶成長させる。(ステップS14)。具体的には、第1低屈折率層42に形成された開口部50に、第1半導体層32を結晶成長させる。次に、高屈折率層44に形成された開口部50に、発光層34を結晶成長させる。次に、第2低屈折率層46に形成された開口部50に、第2半導体層36を結晶成長させる。半導体層32,36および発光層34の結晶成長は、例えば、MOCVD法、MBE法を用いたエピタキシャル成長である。本工程により、積層体20を形成することができる。
【0044】
図1に示すように、バッファー層14上に第1電極60を形成し、第2半導体層36上に第2電極62を形成する(ステップS15)。第1電極60および第2電極62は、例えば、真空蒸着法などにより形成される。なお、第1電極60および第2電極62の形成順序は、特に限定されない。
【0045】
以上の工程により、発光装置100を製造することができる。
【0046】
1.3. 作用効果
発光装置100の製造方法では、基板10に第1低屈折率層42を形成する工程と、第1低屈折率層42に、第1低屈折率層42よりも屈折率が高い高屈折率層44を形成する工程と、高屈折率層44に、高屈折率層44よりも屈折率が低い第2低屈折率層46を形成する工程と、第2低屈折率層46、高屈折率層44、および第1低屈折率層42に、複数の開口部50を形成する工程と、複数の開口部50の各々に、柱状部30を結晶成長させる工程と、を有する。柱状部30を結晶成長させる工程は、第1低屈折率層42に形成された開口部50に、第1半導体層32を結晶成長させる工程と、高屈折率層44に形成された開口部50に、発光層34を結晶成長させる工程と、第2低屈折率層46に形成された開口部50に、第1半導体層32と導電型の異なる第2半導体層36を結晶成長させる工程と、を有する。
【0047】
そのため、発光装置100の製造方法では、隣り合う柱状部の第1半導体層の間、隣り合う柱状部の発光層の間、および隣り合う柱状部の第2半導体層の間に、同じ屈折率を有する層が設けられている場合に比べて、発光層部分の面内方向における平均屈折率と、第1半導体層部分の面内方向における平均屈折率と、の差を大きくすることができる。さらに、発光層部分の面内方向における平均屈折率と、第2半導体層部分の面内方向における平均屈折率と、の差を大きくすることができる。これにより、光閉じ込め係数を大きくすることができ、図1に示すように、発光層34に閉じ込められる光の強度を大きくすることができる。したがって、発振閾値を低くすることができる。なお、図1では、光の強度と、積層方向の位置と、の関係を模式的に示すグラフを図示している。
【0048】
さらに、発光装置100の製造方法では、第2低屈折率層46、高屈折率層44、および第1低屈折率層42に、複数の開口部50を形成した後に、複数の開口部50の各々に柱状部30を結晶成長させる。そのため、発光層部分と、第1半導体層および第2半導体層部分と、で面内方向における平均屈折率の差をつけ易く、光閉じ込め係数を大きくする。
【0049】
例えば、図6に示すように、基板1010上に柱状部1030を結晶成長させた後、CVD法によって、第1低屈折率層1042、高屈折率層1044、および第2低屈折率層1046を形成した場合、低屈折率層1042,1046および高屈折率層1044は、基板10および柱状部1030の凹凸を反映した形状を有する。そのため、発光層1034が設けられている部分と、半導体層1032,1036が設けられている部分とで、面内方向における平均屈折率の差をつけ難く、光閉じ込め係数を大きくすることができない。さらに、隣り合う柱状部1030の間に空隙Gが形成され易い。図示の例では、発光層1034の積層方向における位置と、光の強度のピーク位置とは、ずれている。
【0050】
また、図7に示すように、基板2010上に柱状部2030を結晶成長させた後、スピンコート法によって、第1低屈折率層2042を形成した場合、第1低屈折率層2042と柱状部2030との境界において、表面張力によって第1低屈折率層2042が持ち上がる。そのため、積層方向において、第1低屈折率層2042の位置の制御が難しくなる。図示の例では、第1低屈折率層2042は、発光層2034の側面を覆っている。また、隣り合う柱状部2030の間の距離が大きいと、隣り合う柱状部2030の間に空隙が
形成されてしまう。柱状部2030は、第1半導体層2032と、発光層2034と、第2半導体層2036と、を有している。
【0051】
発光装置100の製造方法では、上記のような問題を回避することができ、光閉じ込め係数の大きい発光装置100を製造することができる。なお、図6は、第1参考例に係る発光装置を模式的に示す断面図である。また、図7は、第2参考例に係る発光装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0052】
さらに、発光装置100の製造方法では、低屈折率層42,46および高屈折率層44に開口部50を形成した後に、開口部50に柱状部30を結晶成長させるため、柱状部30の形状を開口部50によって規定することができる。柱状部を結晶成長させた後に、低屈折率層および高屈折率層を形成すると、柱状部は、上部ほど径が大きくなるため、面内方向における平均屈折率の制御が難しくなる。発光装置100の製造方法では、このような問題を回避することができ、光閉じ込め係数の大きい発光装置100を製造することができる。
【0053】
さらに、発光装置100の製造方法では、半導体層32,36の高さおよび径を、低屈折率層42,46によって制御できるため、光学的および電気的の表面において、任意の構造設計がし易くなる。
【0054】
発光装置100の製造方法では、発光層34の屈折率は、高屈折率層44の屈折率よりも高い。そのため、発光層の屈折率が高屈折率層の屈折率よりも低い場合に比べて、発光層34で発光した光は、高屈折率層44よりも発光層34に閉じ込められ易く、大きな利得を得ることができる。
【0055】
なお、上記では、InGaN系の発光層34について説明したが、発光層34としては、出射される光の波長に応じて、電流が注入されることで発光可能な様々な材料系を用いることができる。例えば、AlGaN系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、InP系、GaP系、AlGaP系などの半導体材料を用いることができる。
【0056】
2. 第2実施形態
2.1. 発光装置
次に、第2実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る発光装置200を模式的に示す断面図である。以下、第2実施形態に係る発光装置200において、上述した第1実施形態に係る発光装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
上述した発光装置100では、図1に示すように、第1低屈折率層42に形成された開口部50の径、高屈折率層44に形成された開口部50の径、および第2低屈折率層46に形成された開口部50の径は、互いに等しかった。
【0058】
これに対し、発光装置200では、図8に示すように、高屈折率層44に形成された開口部50の径D1は、第1低屈折率層42に形成された開口部50の径D2、および第2低屈折率層46に形成された開口部50の径D3よりも大きい。図示の例では、径D2および径D3は、互いに等しい。
【0059】
2.2. 発光装置の製造方法
次に、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る発光装置200の製造方法を説明するためのフローチャートである。図10は、第2実施形態に係る発光装置200の製造工程を模式的に示
す断面図である。
【0060】
図9に示すステップS21,S22,S23は、上述した図2に示すステップS11,S12,S13と、それぞれ基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0061】
発光装置200の製造方法では、ステップS23の後、開口部50を形成する工程で露出された高屈折率層44に光を照射しながらエッチングを行う(ステップS24)。高屈折率層44に照射される光は、例えば、紫外線である。エッチングは、例えば、ドライエッチングである。
【0062】
高屈折率層44の材質は、光触媒である。具体的には、高屈折率層44の材質は、酸化チタン、酸化アルミニウムである。一方、低屈折率層42,46の材質は、光触媒ではない。具体的には、低屈折率層42,46の材質は、酸化シリコンである。そのため、高屈折率層44は、低屈折率層42,46に比べて、紫外線の照射によりエッチング速度が速くなる。これにより、図10に示すように、高屈折率層44に形成された開口部50の径D1を、第1低屈折率層42に形成された開口部50の径D2、および第2低屈折率層46に形成された開口部50の径D3よりも大きくすることができる。その結果、ボーイング形状を有する開口部50を形成することができる。
【0063】
次に、発光装置200の製造方法では、ステップS25,S26を行う。図9に示すステップS25,S26は、上述した図2に示すステップS14,S15と、それぞれ基本的に同じである。したがって、その詳細な説明を省略する。
【0064】
以上の工程により、発光装置200を製造することができる。
【0065】
2.3. 作用効果
発光装置200の製造方法では、高屈折率層44に形成された開口部50の径D1は、第1低屈折率層42に形成された開口部50の径D2、および第2低屈折率層46に形成された開口部50の径D3よりも大きい。さらに、発光層34の屈折率は、高屈折率層44の屈折率よりも高い。そのため、径D1が径D2以下の場合に比べて、発光層部分の面内方向における平均屈折率と、第1半導体層部分の面内方向における平均屈折率と、の差を大きくすることができる。さらに、径D1が径D3以下の場合に比べて、発光層部分の面内方向における平均屈折率と、第2半導体層部分の面内方向における平均屈折率と、の差を大きくすることができる。したがって、光閉じ込め係数を、より大きくすることができる。
【0066】
なお、図8では、径D1が径D2,D3よりも大きい場合における積層方向の位置と光の強度との関係を実線で示し、径D1が径D2,D3以下の場合における積層方向の位置と光の強度との関係を破線で示している。
【0067】
発光装置200の製造方法では、開口部50を形成する工程で露出された高屈折率層44に、光を照射しながらエッチングを行う工程を含み、高屈折率層44の材質は、光触媒である。そのため、発光装置200の製造方法では、容易に、径D1を径D2,D3よりも大きくすることができる。
【0068】
なお、上記では、径D2,D3が互いに等しい例について説明したが、積層方向の位置に対する光の強度分布が、第1低屈折率層42側または第2低屈折率層46側に偏る場合は、光の強度分布が偏った側の開口部50の径を小さくすることが望ましい。これにより、光の強度のピーク位置を、発光層34の位置に合わせることができる。例えば、光の強
度分布が第2低屈折率層46側に偏った場合は、第2低屈折率層46に形成された開口部50の径D3を、第1低屈折率層42に形成された開口部50の径D2よりも小さくする。
【0069】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。
【0070】
プロジェクター900は、例えば、光源として、発光装置100を有している。
【0071】
プロジェクター900は、図示しない筐体と、筐体内に備えられている赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ出射する赤色光源100R、緑色光源100G、青色光源100Bと、を有している。なお、便宜上、図11では、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bを簡略化している。
【0072】
プロジェクター900は、さらに、筐体内に備えられている、第1光学素子902Rと、第2光学素子902Gと、第3光学素子902Bと、第1光変調装置904Rと、第2光変調装置904Gと、第3光変調装置904Bと、投射装置908と、を有している。第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bは、例えば、透過型の液晶ライトバルブである。投射装置908は、例えば、投射レンズである。
【0073】
赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rに入射する。赤色光源100Rから出射された光は、第1光学素子902Rによって集光される。なお、第1光学素子902Rは、集光以外の機能を有していてもよい。後述する第2光学素子902Gおよび第3光学素子902Bについても同様である。
【0074】
第1光学素子902Rによって集光された光は、第1光変調装置904Rに入射する。第1光変調装置904Rは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第1光変調装置904Rによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0075】
緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gに入射する。緑色光源100Gから出射された光は、第2光学素子902Gによって集光される。
【0076】
第2光学素子902Gによって集光された光は、第2光変調装置904Gに入射する。第2光変調装置904Gは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第2光変調装置904Gによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0077】
青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bに入射する。青色光源100Bから出射された光は、第3光学素子902Bによって集光される。
【0078】
第3光学素子902Bによって集光された光は、第3光変調装置904Bに入射する。第3光変調装置904Bは、入射した光を画像情報に応じて変調させる。そして、投射装置908は、第3光変調装置904Bによって形成された像を拡大してスクリーン910に投射する。
【0079】
また、プロジェクター900は、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bから出射された光を合成して投射装置908に導くクロス
ダイクロイックプリズム906を有することができる。
【0080】
第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム906に入射する。クロスダイクロイックプリズム906は、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。そして、合成された光は、投射装置908によりスクリーン910上に投射され、拡大された画像が表示される。
【0081】
なお、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bは、発光装置100を映像の画素として画像情報に応じて制御することで、第1光変調装置904R、第2光変調装置904G、および第3光変調装置904Bを用いずに、直接的に映像を形成してもよい。そして、投射装置908は、赤色光源100R、緑色光源100G、および青色光源100Bによって形成された映像を、拡大してスクリーン910に投射してもよい。
【0082】
また、上記の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micro Mirror Device)が挙げられる。また、投射装置の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0083】
また、光源を、光源からの光をスクリーン上で走査させることにより、表示面に所望の大きさの画像を表示させる画像形成装置である走査手段を有するような走査型の画像表示装置の光源装置にも適用することが可能である。
【0084】
上述した実施形態に係る発光装置は、プロジェクター以外にも用いることが可能である。プロジェクター以外の用途には、例えば、屋内外の照明、ディスプレイ、レーザープリンター、スキャナー、車載用ライト、光を用いるセンシング機器、通信機器等の光源がある。
【0085】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0086】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0087】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0088】
発光装置の製造方法の一態様は、
基板に第1低屈折率層を形成する工程と、
前記第1低屈折率層に、前記第1低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層を形成する工程と、
前記高屈折率層に、前記高屈折率層よりも屈折率が低い第2低屈折率層を形成する工程と、
前記第2低屈折率層、前記高屈折率層、および前記第1低屈折率層に、複数の開口部を形成する工程と、
複数の前記開口部の各々に、柱状部を結晶成長させる工程と、
を有し、
前記柱状部を結晶成長させる工程は、
前記第1低屈折率層に形成された前記開口部に、第1半導体層を結晶成長させる工程と、
前記高屈折率層に形成された前記開口部に、発光層を結晶成長させる工程と、
前記第2低屈折率層に形成された前記開口部に、前記第1半導体層と導電型の異なる第2半導体層を結晶成長させる工程と、
を有する。
【0089】
この発光装置の製造方法によれば、光閉じ込め係数を大きくすることができる。
【0090】
発光装置の製造方法の一態様において、
前記発光層の屈折率は、前記高屈折率層の屈折率よりも高くてもよい。
【0091】
この発光装置の製造方法によれば、発光層で発光した光は、高屈折率層よりも発光層に閉じ込められ易く、大きな利得を得ることができる。
【0092】
発光装置の製造方法の一態様において、
前記高屈折率層に形成された前記開口部の径は、前記第1低屈折率層に形成された前記開口部の径、および前記第2低屈折率層に形成された前記開口部の径よりも大きくてもよい。
【0093】
この発光装置の製造方法によれば、光閉じ込め係数を、より大きくすることができる。
【0094】
発光装置の製造方法の一態様において、
前記開口部を形成する工程で露出された前記高屈折率層に、光を照射しながらエッチングを行う工程を有し、
前記高屈折率層の材質は、光触媒であってもよい。
【0095】
この発光装置の製造方法によれば、容易に、前記高屈折率層に形成された前記開口部の径を、前記第1低屈折率層に形成された前記開口部の径、および前記第2低屈折率層に形成された前記開口部の径よりも大きくすることができる。
【符号の説明】
【0096】
10…基板、12…支持基板、14…バッファー層、20…積層体、30…柱状部、32…第1半導体層、33…ウェル層、34…発光層、34a,34b…端、35…バリア層、36…第2半導体層、40…光伝搬層、42…第1低屈折率層、44…高屈折率層、44a,44b…端、46…第2低屈折率層、50…開口部、60…第1電極、62…第2電極、100,200…発光装置、900…プロジェクター、902R…第1光学素子、902G…第2光学素子、902B…第3光学素子、904R…第1光変調装置、904G…第2光変調装置、904B…第3光変調装置、906…クロスダイクロイックプリズム、908…投射装置、910…スクリーン、1010…基板、1030…柱状部、1032…第1半導体層、1034…発光層、1036…第2半導体層、1042…第1低屈折率層、1044…高屈折率層、1046…第2低屈折率層、2010…基板、2030…柱状部、2032…第1半導体層、2034…発光層、2036…第2半導体層、2042…第1低屈折率層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11