(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】軌きょう扛上装置
(51)【国際特許分類】
E01B 29/04 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
E01B29/04
(21)【出願番号】P 2022094846
(22)【出願日】2022-06-13
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591153145
【氏名又は名称】ユニオン建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】梶井 敏史
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】下村 満
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝則
(72)【発明者】
【氏名】小黒 教示
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-018772(JP,A)
【文献】特開2005-023719(JP,A)
【文献】米国特許第05142988(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、
前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、
前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、
前記レールクランプ機構部は、
前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、
前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、
前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、
前記昇降式レールクランプ体には、ガイド部が設けられている一方、
前記回動式レールクランプ体には、前記昇降式レールクランプ体がレールに向かって下降した際、当該回動式レールクランプ体が前記回動軸を中心に回動してその先端部がレールに向かうように前記ガイド部をガイドするガイド溝が設けられ、
レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする軌きょう扛上装置。
【請求項2】
レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、
前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、
前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、
前記レールクランプ機構部は、
前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、
前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、
前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、
前記昇降式レールクランプ体には、
前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、レールの頭部上面に当接するレール頭部上面当接部と、レールの頭部側面に当接するレール頭部側面当接部とが設けられ、
レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする軌きょう扛上装置。
【請求項3】
請求項
2記載の軌きょう扛上装置において、
前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記昇降式レールクランプ体の前記レール頭部上面当接部および前記レール頭部側面当接部は、レールの頭部の中心を介して前記回動式レールクランプ体の先端部の反対側となるレールの頭部上面と頭部側面に当接することを特徴とする軌きょう扛上装置。
【請求項4】
請求1~請求項
3のいずれか一の請求項に記載の軌きょう扛上装置において、
前記昇降式レールクランプ体には、
当該昇降式レールクランプ体が下降してレールの頭部に当接し、かつ、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記回動式レールクランプ体の回動をロックする回動式レールクランプ体ロック部が設けられていることを特徴とする軌きょう扛上装置。
【請求項5】
レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、
前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、
前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、
前記レールクランプ機構部は、
前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、
前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、
前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、
前記昇降式レールクランプ体には、
当該昇降式レールクランプ体が下降してレールの頭部に当接し、かつ、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記回動式レールクランプ体の回動をロックする回動式レールクランプ体ロック部が設けられ、
レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする軌きょう扛上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクラギに固定された状態のレールをクランプしてマクラギと共に持ち上げる軌きょう扛上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マクラギに固定されたレールであるいわゆる軌きょうを持ち上げる従来の軌きょう扛上装置として、例えば、一対のレール上を走行可能な台車と、台車上に設けられ軌きょうを台車ごと持ち上げるための扛上機構とを備え、扛上機構は、台車上の両側位置に台車の進行方向と直交する方向にそれぞれ開閉自由に支持され先端部には閉成時に各レールと係合する爪片を備えた一対の爪機構と、各爪機構を連動させて開閉動作させる駆動機構と、台車上の両側位置に設けられる一対の昇降ジャッキとを備えており、各昇降ジャッキは地面に押し付けられる台部と、台部に対する地面からの反力によって押し上げられる昇降部とを有する軌きょう扛上装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この従来の軌きょう扛上装置では、爪機構が台車上に開閉自由に支持されるとともに昇降ジャッキの昇降部に連結されているので、駆動機構により爪機構を閉じて爪片を軌きょうの各レールに係合させた状態で、昇降ジャッキの台部を地面に押し付けてその反力により昇降部を押し上げると、この昇降ジャッキの上昇よりレールおよびマクラギからなる軌きょうを持ち上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1の従来の軌きょう扛上装置では、一対の爪片それぞれで一対のレールの頭部側面とアゴ部(頭部下部)の左右両側から挟むようにクランプするため、左右の各爪片はそれぞれレール軌間外においてレール頭部側面とアゴ部(頭部下部)とに当接しているに過ぎず、横圧によるレールの倒れや滑り等で軌きょうを確実に扛上できないおそれがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、レールを確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる軌きょう扛上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る軌きょう扛上装置は、レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、前記レールクランプ機構部は、前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、前記昇降式レールクランプ体には、ガイド部が設けられている一方、前記回動式レールクランプ体には、前記昇降式レールクランプ体がレールに向かって下降した際、当該回動式レールクランプ体が前記回動軸を中心に回動してその先端部がレールに向かうように前記ガイド部をガイドするガイド溝が設けられ、レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置は、レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、前記レールクランプ機構部は、前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、前記昇降式レールクランプ体には、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、レールの頭部上面に当接するレール頭部上面当接部と、レールの頭部側面に当接するレール頭部側面当接部とが設けられ、レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置では、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記昇降式レールクランプ体の前記レール頭部上面当接部および前記レール頭部側面当接部は、レールの頭部の中心を介して前記回動式レールクランプ体の先端部の反対側となるレールの頭部上面と頭部側面に当接することも特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置では、前記昇降式レールクランプ体には、当該昇降式レールクランプ体が下降してレールの頭部に当接し、かつ、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記回動式レールクランプ体の回動をロックする回動式レールクランプ体ロック部が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る軌きょう扛上装置は、レール上を走行する台車に設けられ、マクラギに固定された状態のレールをクランプして持ち上げる軌きょう扛上装置であって、前記台車に設けられ、前記レールをクランプするレールクランプ機構部と、前記台車に設けられ、前記レールクランプ機構部によってクランプされた前記レールを持ち上げるジャッキ機構部とを備え、前記レールクランプ機構部は、前記台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、前記台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、前記ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に前記回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体をレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、前記昇降式レールクランプ体には、当該昇降式レールクランプ体が下降してレールの頭部に当接し、かつ、前記回動式レールクランプ体がレールのアゴ部に当接した際、前記回動式レールクランプ体の回動をロックする回動式レールクランプ体ロック部が設けられ、レール毎に前記回動式レールクランプ体と前記昇降式レールクランプ体とによって挟持してクランプすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る軌きょう扛上装置のレールクランプ機構部は、台車に固定されたシリンダからピストンを上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部と、台車に回動軸を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体と、ピストン先端に設けられ、レールに向かって下降してレールの頭部上面に当接すると共に、レールに向かって下降する際に回動式レールクランプ体を回動させて当該回動式レールクランプ体の先端部がレールのアゴ部に当接させる昇降式レールクランプ体とを有し、回動式レールクランプ体と昇降式レールクランプ体とによってレールをクランプする。
そのため、本発明に係る軌きょう扛上装置によれば、軌きょうを扛上する際、レールの頭部上面とアゴ部(頭部下面)とで挟んでクランプするので、左右のレールを確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の全体構成を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置の全体構成を示す正面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部およびジャッキ機構部周辺を拡大して要部拡大正面図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部の構成を示す要部拡大正面図である。
【
図6】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部の構成を示す平面図、側面図である。
【
図7】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部によるレールクランプ動作を示す動作説明図で、昇降式クランプ体本体および回動式クランプ体本体それぞれが上死点(上限)に位置している場合、上死点(上限)から少し下降または回転した状態を示す図である。
【
図8】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部によるレールクランプ動作を示す動作説明図で、
図7(b)に示す状態よりも昇降式クランプ体本体および回動式クランプ体本体それぞれがさらに下降または回転した状態を示す図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部によるレールクランプ動作を示す動作説明図で、昇降式クランプ体本体および回動式クランプ体本体それぞれがレールをクランプする直前の状態を示す図である。
【
図10】本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置におけるレールクランプ機構部によるレールクランプ動作を示す動作説明図で、昇降式クランプ体本体および回動式クランプ体本体それぞれがレールをクランプした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態の軌きょう扛上装置について図面を参照しながら具体的に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、形状や寸法なども含めあくまで本発明の一例であり、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置は、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<実施形態の軌きょう扛上装置の構成>
本発明に係る実施形態に係る軌きょう扛上装置1は、
図1~
図4等に示すようにマクラギMに固定された状態のレールRをクランプしてマクラギMと共に扛上する装置であって、レールR,R上を走行する扛上装置用台車11と、レールクランプ機構部12と、ジャッキ機構部13と、油圧ポンプ14と、発電機15と、制御装置16等を備えて構成される。
【0012】
(扛上装置用台車11)
扛上装置用台車11は、レールクランプ機構部12やジャッキ機構部13、油圧ポンプ14、制御装置16等を搭載してレールR,R上を走行する台車で、台車フレーム11aの前後左右にそれぞれ車輪11bが設けられ、台車フレーム11aの先端部には軌道車(図示せず。)等に連結される連結部11cが設けられていると共に、レールクランプ機構部12やジャッキ機構部13を固定する扛上装置ベースアーム11dが左右方向、すなわちレールR,Rに対し直交する方向で台車フレーム11aの左右両側から突出するように設けられている。
【0013】
(レールクランプ機構部12)
レールクランプ機構部12は、レールRをクランプする機構であって、レールクランプ用ピストン昇降部12aと、回動式レールクランプ体12bと、昇降式レールクランプ体12cとを有し、回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによって後述する
図7~
図10に示すような流れでレールRをクランプするように構成している。
【0014】
(レールクランプ用ピストン昇降部12a)
レールクランプ用ピストン昇降部12aは、扛上装置用台車11の扛上装置ベースアーム11dに固定され、油圧ポンプ14からの油圧によって第1シリンダ12a1から第1ピストン12a2を上下動させる機構で、図示しない近接センサ等が設けられている。
【0015】
近接センサは、レールクランプ用ピストン昇降部12aによって昇降する昇降式レールクランプ体12cの上死点(
図7(a)に示す状態)および下死点(
図10に示す状態)近傍に設け、昇降式レールクランプ体12cによる上死点(
図7(a)に示す状態)および下死点(
図10に示す状態)への近接(接近)を検知してソレノイドバルブ(図示せず。)の動作を切換え、油圧ポンプ14の駆動のオン・オフを制御するものである。
【0016】
(回動式レールクランプ体12b)
は、扛上装置用台車11に固定された扛上装置ベースアーム11dに回動軸12b1を介し回動可能に支持され、レールRに向かって回動した際、先端部をレールRのアゴ部(頭部下面)に当接する所定間隔離れた回動式クランプ体本体12b2,12b2と、回動式クランプ体本体12b2,12b2間に設けられたストッパ用ロッド12b3等から構成されており、回動式クランプ体本体12b2,12b2それぞれの対向する内側面には、昇降式レールクランプ体12cがレールRに向かって下降した際、当該回動式レールクランプ体12bが回動軸12b1を中心に回動してその先端部がレールRに向かうようにガイドローラー12c21をガイドするガイド溝12b21,12b21が設けられている。
【0017】
(昇降式レールクランプ体12c)
昇降式レールクランプ体12cは、第1ピストン12a2先端に取付けられて昇降し、レールRに向かって下降してレールRの頭部上面に当接すると共に、レールRに向かって下降する際に回動式レールクランプ体12bを回動させて当該回動式レールクランプ体12bの先端部をレールRのアゴ部に当接するもので、回動式レールクランプ体12bの先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、レールRの頭部に当接する昇降式クランプ体本体12c1と、昇降式クランプ体本体12c1上方の両側面に設けられ、回動式クランプ体本体12b2,12b2それぞれの内側面に設けられたガイド溝12b21,12b21に嵌ってガイドされるガイドローラー12c21が設けられたガイド板12c2,12c2と、昇降式クランプ体本体12c1下方に設けられ、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、回動式クランプ体本体12b2,12b2間に設けられたストッパ用ロッド12b3にロック用凹部12c31が嵌合しロックして回動式クランプ体本体12b2,12b2の回動し過ぎを防止する回動式クランプ体ストッパ12c3等を備えて構成される。
【0018】
昇降式クランプ体本体12c1は、レールRの頭部上面(踏面)に当接するレール頭部上面当接部12c11と、レールRの頭部側面に当接するレール頭部側面当接部12c12とを有しており、回動式レールクランプ体12bの先端部がレールのアゴ部(頭部下面)に当接した際、昇降式レールクランプ体12cのレール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12は、レールRの頭部の中心を介しロックして回動式レールクランプ体12bの先端部の反対側となるレールRの頭部上面と頭部側面に当接して、レールR毎に回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによって挟持してクランプするように構成している。
【0019】
(ジャッキ機構部13)
ジャッキ機構部13は、扛上装置ベースアーム11dに回動可能に取付けられた油圧ポンプ14からの油圧によって第2シリンダ13aから第2ピストン13bを上下動させる機構で、第2ピストン13b下端部の押圧板13cをレールR横の路盤等に押し当てて、扛上装置用台車11と共にレールクランプ機構部12がクランプしたレールRを持ち上げる機構部である。
【0020】
尚、扛上装置用台車11でレールR,R上を走行する場合は、ジャッキ機構部13は第2シリンダ13aをほぼ水平状態まで回動してジャッキ機構部13が扛上装置用台車11の走行を邪魔しないようにし、扛上装置用台車11を停止させて軌きょうの扛上を行う場合は、第2シリンダ13aをほぼ鉛直状態に回動して軌きょうの扛上動作を行う。
【0021】
(油圧ポンプ14)
油圧ポンプ14は、制御装置16からの指示によって油圧をレールクランプ機構部12やジャッキ機構部13等に送って第1シリンダ12a1や第2シリンダ13aを動作させる油圧ポンプである。制御装置16等を備えて構成される。
【0022】
(発電機15)
発電機15は、ガソリンエンジン等の内燃機関によって発電して油圧ポンプ14等に電源電流を供給するものである。
【0023】
(制御装置16)
制御装置16は、リモコン(図示せず。)や操作盤(図示せず。)等を操作する作業員の指示に基づいてこの軌きょう扛上装置1全体の動作を制御する装置で、作業員の指示に基づいて油圧ポンプ14を動作させて油圧をレールクランプ機構部12やジャッキ機構部13等に送って第1シリンダ12a1や第2シリンダ13aを後述するように動作させてレールRをクランプし軌きょうの扛上作業を制御する装置である。
【0024】
<実施形態の軌きょう扛上装置の動作>
次に以上のように構成された実施形態の軌きょう扛上装置の動作について、図面を参照して説明する。
【0025】
(
図7(a)の状態)
図7(a)は、レールクランプ機構部12の第1シリンダ12a1の第1ピストン12a2を引き上げた状態であり、回動式レールクランプ体12bの回動式クランプ体本体12b2,12b2は上死点である上限に位置している。尚、この
図7(a)の状態では、鉛直方向に対する回動式レールクランプ体12bの角度は、65度である。
【0026】
(
図7(b)の状態)
そして、作業員が制御装置16のリモコン(図示せず。)や操作盤(図示せず。)等を操作して制御装置16に軌きょうの扛上動作を開始すると、油圧ポンプ14が動作して油圧をレールクランプ機構部12に送って、
図7(a)から
図7(b)に示すようにレールクランプ機構部12の第1シリンダ12a1が第1ピストン12a2を下降させる。
【0027】
すると、第1ピストン12a2下端部に設けられた昇降式レールクランプ体12cも下降するため、昇降式クランプ体本体12c1の両側面に設けられたガイド板12c2,12c2も下降し、回動式クランプ体本体12b2,12b2それぞれの内側面に設けられたガイドローラー12c21,12c21もガイド溝12b21,12b21に嵌った状態で下降し、ガイド溝12b21,12b21が設けられた回動式レールクランプ体12bの回動式クランプ体本体12b2,12b2を、回動軸12b1を中心に回動させ、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部をレールRのアゴ部(頭部下面)に近付ける。尚、この
図7(b)の状態は、鉛直方向に対する回動式レールクランプ体12bの角度は50度で、時計回りに回動式クランプ体本体12b2,12b2を回動している。
【0028】
(
図8(a),(b)の状態)
さらに、油圧ポンプ14から油圧がレールクランプ機構部12に送られると、
図8(a)に示すように
図7(b)に示す状態からさらにレールクランプ機構部12の第1シリンダ12a1が第1ピストン12a2および昇降式レールクランプ体12cが下がり、昇降式レールクランプ体12cがさらに下がることによって回動式レールクランプ体12bの回動式クランプ体本体12b2,12b2が回動軸12b1を中心にさらに時計回りに回動しロックして回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に近付き、
図8(a)に示す状態から
図8(b)に示す状態へ移行する。尚、
図8(a)の状態は、鉛直方向に対する回動式レールクランプ体12bの角度は35度、
図8(a)の状態ではその角度は20度である。
【0029】
(
図9の状態)
そして、油圧ポンプ14から油圧がレールクランプ機構部12に送られることにより、
図7(a)に示す状態から
図7(b)→
図8(a)→
図8(b)→
図9の状態に移行すると、昇降式レールクランプ体12cが下降してレールRの頭部に近付くと共に、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に近付き、昇降式レールクランプ体12cおよび回動式クランプ体本体12b2,12b2がレールRの頭部をクランプする直前状態になる。尚、
図9の状態は、鉛直方向に対する回動式レールクランプ体12bの角度は5度である。
【0030】
(
図10の状態)
そして、さらに油圧ポンプ14から油圧がレールクランプ機構部12に送られると、
図10に示すように鉛直方向に対する回動式レールクランプ体12bの角度が0度に近づくと、昇降式レールクランプ体12cがレールRの頭部に当接すると共に、昇降式レールクランプ体12cのガイドローラー12c21,12c21が嵌るガイド溝12b21,12b21によって回動を案内される回動式レールクランプ体12b,12b2先端部もレールRのアゴ部(頭部下面)に当接するため、レールR毎に回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってレールRの頭部を上下から挟持した状態でクランプすることができる。
【0031】
その際、昇降式レールクランプ体12cは、レール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12を有しており、レールRの頭部の中心を介しロックして回動式レールクランプ体12bの先端部の反対側となるレールRの頭部上面と頭部側面に当接するため、レールRのアゴ部に当接する回動式レールクランプ体12b,12b2先端部と相まって回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってレールRの頭部の中心を介しその対角線上で挟持してレールRをクランプするため、より確実にレールRをクランプすることができる。
【0032】
そして、
図10に示すように昇降式レールクランプ体12cのレール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12がそれぞれレールRの頭部上面と頭部側面に当接し、かつ、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した場合、昇降式クランプ体本体12c1下方に設けられた回動式クランプ体ストッパ12c3先端の凹部12c31が回動式クランプ体本体12b2,12b2間に設けられたストッパ用ロッド12b3に嵌合しロックして回動式クランプ体本体12b2,12b2の回動し過ぎを防止する。また図示しない近接センサが昇降式レールクランプ体12cの下降を検出しているため、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、制御装置16によって油圧ポンプ14への油圧の供給も停止される。
【0033】
これにより、回動式クランプ体ストッパ12c3およびストッパ用ロッド12b3によって昇降式レールクランプ体12cのレール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12がそれぞれレールRの頭部上面と頭部側面に当接し、かつ、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによるレールRを挟持したクランプ状態を、回動式クランプ体ストッパ12c3と回動式クランプ体本体12b2,12b2間に設けられたストッパ用ロッド12b3によってロックすることができるため、レールR毎に回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってより確実にクランプすることができる。
【0034】
レールクランプ機構部12によってレールRのクランプが完了すると、制御装置16からの指示によって油圧ポンプ14は油圧をジャッキ機構部13に送って第2シリンダ13aを動作させ、第2シリンダ13aから第2ピストン13bを下降させ、第2ピストン13b下端部の押圧板13cをレールR横の路盤等に押し当てる。
【0035】
そして、第2シリンダ13aから第2ピストン13bが繰り出させると、第2ピストン13b下端部の押圧板13cをレールR横の路盤等に押し当てた状態であるため、第2シリンダ13aを含むレールクランプ機構部12が浮上り、扛上装置ベースアーム11dを介し扛上装置用台車11も浮き上がり、扛上装置用台車11と共にレールRをクランプした状態のレールクランプ機構部12も浮上って、レールRやそのレールRに固定されたマクラギM等の軌きょうを扛上させる。
【0036】
<本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1のまとめ>
本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1のレールクランプ機構部12は、ジャッキ機構部13によって昇降する扛上装置用台車11に固定された第1シリンダ12a1から第1ピストン12a2を上下動させるレールクランプ用ピストン昇降部12aと、扛上装置用台車11に回動軸12b1を介し回動可能に支持された回動式レールクランプ体12bと、第1ピストン12a2先端に設けられ、レールRに向かって下降してレールRの頭部上面に当接すると共に、レールRに向かって下降する際に回動式レールクランプ体12bを回動させて当該回動式レールクランプ体12bの先端部をレールRのアゴ部(頭部下面)に当接させる昇降式レールクランプ体12cとを有し、回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってレールRをクランプする。
【0037】
そのため、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1によれば、レールRは頭部上面とアゴ部(頭部下面)(頭部下面)との上下方向から挟持してクランプすることができるので、レールR毎に確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる。
【0038】
また、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1では、昇降式レールクランプ体12cには、ガイドローラー12c21を設け、回動式レールクランプ体12bには、昇降式レールクランプ体12cがレールRに向かって下降した際、当該回動式レールクランプ体12bが回動軸12b1を中心に回動してその先端部がレールRに向かうようにガイドローラー12c21をガイドするガイド溝12b21,12b21を設けている。
【0039】
そのため、レールクランプ機構部12において昇降式レールクランプ体12cを昇降させるレールクランプ用ピストン昇降部12aの1台の第1シリンダ12a1によって昇降式レールクランプ体12cを昇降させるだけでなく、回動式レールクランプ体12bを回動して、レールRを回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってレールRをクランプすることができるので、シリンダ等の油圧機構の台数を削減してコストを低減することができると共に、昇降式レールクランプ体12cと回動式レールクランプ体12bの同期も取り易くなるので、この点でもレールR毎に確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる。
【0040】
また、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1では、昇降式レールクランプ体12cには、回動式レールクランプ体12bの先端部をレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、レールRの頭部上面に当接するレール頭部上面当接部12c11と、レールRの頭部側面に当接するレール頭部側面当接部12c12とを設けている。
【0041】
そのため、回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってレールRの頭部の中心を介して当該レールRを上下方向から挟持してクランプする場合でも、昇降式レールクランプ体12cはレール頭部上面当接部12c11とレール頭部側面当接部12c12とによってレールRの頭部上面と頭部側面から当接し、昇降式レールクランプ体12cとも合わせて実質的に3方向からレールRの頭部を挟持することができるので、レールR毎にさらに確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる。
【0042】
また、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1では、回動式レールクランプ体12bの先端部をレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、昇降式レールクランプ体12cのレール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12は、レールRの頭部の中心を介しロックして回動式レールクランプ体12bの先端部の反対側となるレールRの頭部上面と頭部側面に当接するように構成している。
【0043】
そのため、回動式レールクランプ体12bおよび昇降式レールクランプ体12cは、レールRの頭部の中心を介し実質的に3方向からレールRの頭部を挟持するので、この点でもレールR毎にさらに確実にクランプした状態で軌きょうを扛上することができる。
【0044】
また、本発明に係る実施形態の軌きょう扛上装置1では、昇降式レールクランプ体12cには、当該昇降式レールクランプ体12cが下降してレールRの頭部に当接し、かつ、回動式レールクランプ体12bの先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接した際、回動式レールクランプ体12bの回動をロックする回動式クランプ体ストッパ12c3を設けている。
【0045】
そのため、昇降式レールクランプ体12cのレール頭部上面当接部12c11およびレール頭部側面当接部12c12がそれぞれレールRの頭部上面と頭部側面に当接し、かつ、回動式クランプ体本体12b2,12b2先端部がレールRのアゴ部(頭部下面)に当接してレールRをクランプした際、回動式クランプ体ストッパ12c3およびストッパ用ロッド12b3によってそのクランプ状態をロックすることができるため、レールR毎に回動式レールクランプ体12bと昇降式レールクランプ体12cとによってより確実にクランプすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 軌きょう扛上装置
11 扛上装置用台車
11a 台車フレーム
11b 車輪
11c 連結部
11d 扛上装置ベースアーム
12 レールクランプ機構部
12a レールクランプ用ピストン昇降部
12a1 第1シリンダ
12a2 第1ピストン
12b 回動式レールクランプ体
12b1 回動軸
12b2 回動式クランプ体本体
12b21 ガイド溝
12b3 ストッパ用ロッド
12c 昇降式レールクランプ体
12c1 昇降式クランプ体本体
12c2 ガイド板
12c21 ガイドローラー
12c3 回動式クランプ体ストッパ
12c31 ロック用凹部
13 ジャッキ機構部
13a 第2シリンダ
13b 第2ピストン
13c 押圧板
14 油圧ポンプ
15 発電機
16 制御装置
R レール
M マクラギ