(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ヒートボルトユニット、ダイリップ調整装置、押出成形用ダイ、押出成形装置、及びヒートボルトユニット製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/31 20190101AFI20241122BHJP
【FI】
B29C48/31
(21)【出願番号】P 2023502010
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007561
(87)【国際公開番号】W WO2022180850
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】523212690
【氏名又は名称】アクスモールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】横溝 和哉
(72)【発明者】
【氏名】富山 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菅 祐志
(72)【発明者】
【氏名】横田 新一郎
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-021413(JP,A)
【文献】特開2007-296673(JP,A)
【文献】特開2002-011775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートボルト本体と前記ヒートボルト本体の温度を制御するヒータとを含む複数のヒートボルトと、
前記複数のヒートボルトを保持する保持部と、を備え、
前記複数のヒートボルトは、互いに並列に配置され、
前記保持部は、互いに並列に配置された前記複数のヒートボルトそれぞれの基端部を保持するヒートボルトユニット。
【請求項2】
前記ヒートボルト本体には、先端部側が開口し、当該先端部側から基端部側に向かって延びるヒータ挿入穴が形成されており、
前記ヒータは、前記ヒータ挿入穴に挿入された状態で前記ヒートボルト本体に取り付けられている請求項1に記載のヒートボルトユニット。
【請求項3】
前記ヒートボルト本体には、前記ヒータ挿入穴と当該ヒータ挿入穴外部とを連通する制御線用貫通穴が形成されている請求項
2に記載のヒートボルトユニット。
【請求項4】
前記ヒータ挿入穴に挿入された前記ヒータと前記ヒータ挿入穴の内壁との間には、熱伝導部材が配置されている請求項
2又は3に記載のヒートボルトユニット。
【請求項5】
前記保持部は、当該保持部に形成されたスリット状の溝を挟んで対向した第1部分と第2部分とを含み、
前記保持部には、前記第1部分と前記第2部分とを連通する第1ねじ穴及び第2ねじ穴が形成されており、
前記第1ねじ穴は、アクチュエータにより回転される回転軸が螺合するねじ穴であり、
前記第2ねじ穴は、前記溝の溝幅を調整するための溝幅調整用ねじが螺合するねじ穴である請求項1から4のいずれか1項に記載のヒートボルトユニット。
【請求項6】
互いに隣接する前記ヒートボルト間には、前記ヒートボルトが変形するのを抑制するための変形抑制部材が配置されている請求項1から5のいずれか1項に記載のヒートボルトユニット。
【請求項7】
前記複数のヒートボルト及び前記保持部は、金属製の一体物である請求項1から6のいずれか1項に記載のヒートボルトユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のヒートボルトユニットと、
前記ヒートボルトユニットが、前記ヒートボルトの軸方向にスライド移動可能に取り付けられたガイド部と、
前記ヒートボルトユニットを、前記ヒートボルトの軸方向にスライド移動させる駆動部と、を備えるダイリップ調整装置。
【請求項9】
ガイド凸部と、
前記ガイド凸部が挿入されるガイド溝と、をさらに備え、
前記ガイド凸部及び前記ガイド溝のうち、一方は前記保持部に設けられ、他方は前記ガイド部に設けられている請求項8に記載のダイリップ調整装置。
【請求項10】
前記ガイド凸部及び前記ガイド溝は、それぞれ、互いに当接することにより、前記ヒートボルトユニットがスライド移動する際、前記ヒートボルトの軸方向から逸脱するのを抑制する逸脱抑制部を備える請求項9に記載のダイリップ調整装置。
【請求項11】
前記ガイド凸部及び前記ガイド溝それぞれの断面形状は、逆台形形状であり、
前記逸脱抑制部は、前記ガイド凸部の前記逆台形形状のテーパ面及び前記ガイド溝の前記逆台形形状のテーパ面である請求項10に記載のダイリップ調整装置。
【請求項12】
前記駆動部は、前記ヒートボルトユニットに連結され、当該ヒートボルトユニットを、
前記ヒートボルトの軸方向にスライド移動させるアクチュエータである請求項8から11のいずれか1項に記載のダイリップ調整装置。
【請求項13】
前記アクチュエータは、サーボモータを含む請求項12に記載のダイリップ調整装置。
【請求項14】
前記駆動部は、前記ヒートボルトユニットに連結され、当該ヒートボルトユニットを、
前記ヒートボルトの軸方向にスライド移動させるリップ調整ねじである請求項8から11のいずれか1項に記載のダイリップ調整装置。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか1項に記載のダイリップ調整装置と、
前記複数のヒートボルトそれぞれの先端部が固定された可動リップと、を備えた押出成形用ダイ。
【請求項16】
前記可動リップは、前記ヒートボルトの先端部が固定されるヒートボルト固定部を含み、
前記可動リップのうち互いに隣接する前記ヒートボルト固定部間には、溝が形成されている請求項15に記載の押出成形用ダイ。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の押出成形用ダイを備えた押出成形装置。
【請求項18】
互いに並列に配置された複数のヒートボルトと、前記複数のヒートボルトそれぞれの基端部を保持する保持部と、を備えたヒートボルトユニットの製造方法であって、
前記保持部と分割予定部とを含む金属素材を用意する工程と、
互いに平行な複数のスリット状の溝を前記分割予定部に形成することにより、前記複数のヒートボルトを形成する工程と、を備えるヒートボルトユニット製造方法。
【請求項19】
前記ヒートボルトに、先端部側が開口し、当該先端部側から基端部側に向かって延びるヒータ挿入穴を形成する工程をさらに備える請求項18に記載のヒートボルトユニット製造方法。
【請求項20】
前記分割予定部のうち前記ヒートボルトに対応する部分に、先端部側が開口し、当該先端部側から基端部側に向かって延びるヒータ挿入穴を形成する工程をさらに備え、
前記複数のヒートボルトを形成する工程は、互いに平行な複数のスリット状の溝を前記分割予定部に形成することにより、前記ヒータ挿入穴が形成された前記複数のヒートボルトを形成する請求項18に記載のヒートボルトユニット製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートボルトユニット、ダイリップ調整装置、押出成形用ダイ、押出成形装置、及びヒートボルトユニット製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に形成されたリップ間の間隔(スリット、隙間。以下、リップ間隔と呼ぶ)からフィルム状の溶融樹脂を押し出す押出成形用ダイ(Tダイ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、リップ間隔から押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚みをその幅方向の全域に亘って均一に制御するため、押出成形用ダイの幅方向に配置された複数のヒートボルトが開示されている。リップ調整ねじを手動で回転させることにより、ヒートボルトは、その軸方向に移動して一方のリップ(可動リップ、フレキシブルリップ)を押し引きし、リップ間隔を局所的に調整する。これにより、リップ間隔からその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが均一に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のヒートボルトそれぞれのリップ調整ねじを一つずつ手動で回転させてリップ間隔を調整するには相当の時間を要するため、改善の余地がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係るヒートボルトユニットは、互いに並列に配置された複数のヒートボルトと、前記複数のヒートボルトを保持する保持部と、を備えている。保持部は、互いに並列に配置された複数のヒートボルトそれぞれの基端部を保持する。すなわち、保持部は、互いに並列に配置された複数のヒートボルトを片持ち梁状に保持する。
【発明の効果】
【0008】
前記一実施の形態によれば、リップ間隔の調整に要する時間を短縮できるヒートボルトユニット、ダイリップ調整装置、押出成形用ダイ、押出成形装置、及びヒートボルトユニット製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る押出成形装置1の全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1に記載されているダイリップ調整装置30の斜視図である。
【
図3】ダイリップ調整装置30が取り付けられたダイブロック21の斜視図である。
【
図4】
図3中のガイド凸部324及びガイド溝312a近傍の部分拡大図である。
【
図5】
図1中のヒートボルト311の先端部311d及び可動リップ21b近傍の部分拡大図である。
【
図6】複数(6本)のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量、及び1本のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量を表すグラフである。
【
図7】実施の形態2に係る押出成形装置1Aの全体構成を示す側面図である。
【
図8A】ヒータ311bをヒートボルト本体311aに取り付ける(挿入する)様子を表す図である。
【
図8B】ヒータ311bがヒートボルト本体311aに取り付けられた状態を表す図である。
【
図9】ヒートボルトユニット31の製造方法のフローチャートである。
【
図10】ヒートボルトユニット31の他の製造方法のフローチャートである。
【
図11】実施の形態3に係る押出成形装置1Bの全体構成を示す側面図である。
【
図12】Tダイ20(ダイブロック21)の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。
【0011】
(実施の形態1)
<押出成形装置の全体構成>
まず、
図1を参照して、実施の形態1に係る押出成形装置1の全体構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る押出成形装置1の全体構成を示す側面図である。
【0012】
押出成形装置1は、押出機10(溶融樹脂出口11)から押し出される溶融樹脂を、Tダイ20(押出成形用ダイ)の先端に形成されたスリット出口、すなわち、リップ間の間隔(スリット、隙間)からフィルム状に押し出す装置である。本明細書において、フィルムは、シートを含む。
【0013】
図1に示すように、押出成形装置1は、押出機10、Tダイ20、及びダイリップ調整装置30を備えている。
【0014】
押出機10は、加熱溶融された樹脂(以下、溶融樹脂と呼ぶ)を溶融樹脂出口11から押し出す装置である。押出機10は、スクリュー式押出機であってもよいし、プランジャー式押出機であってもよい。
【0015】
<Tダイの構成>
次に、
図1を参照して、Tダイ20の構成について説明する。
【0016】
Tダイ20は、押出機10から押し出される溶融樹脂をフィルム状に成形するブロック状の部材である。Tダイ20は、典型的には、金属製である。
【0017】
図1に示すように、Tダイ20は、その先端部20a及び基端部20bが水平方向に配置された状態でその基端部20b側が押出機10に取り付けられる。なお、図示しないが、Tダイ20は、その先端部20a及び基端部20bが鉛直方向に配置された状態でその基端部20b側が押出機10に取り付けられる場合もある。
【0018】
Tダイ20は、一対のダイブロック21、22を備えている。一対のダイブロック21、22は、それぞれ、互いに対向する面を含む。Tダイ20は、この互いに対向する面の間に形成される導入通路23a、マニホールド23b、及びスリット23cを含む。
【0019】
導入通路23aは、押出機10が対向するTダイ20の基端部20bとマニホールド23bとを連通する通路である。導入通路23aは、Tダイ20の基端部20bからその反対側の先端部20aに向かって延びている。導入通路23aには、押出機10から押し出される溶融樹脂が導入される。
【0020】
マニホールド23bは、Tダイ20の幅方向(
図1中紙面に直交する方向)に延びた通路である。マニホールド23bは、Tダイ20の基端部20bと先端部20aとの間の中間に形成されている。マニホールド23bには、導入通路23aを通過した溶融樹脂が導入される。導入通路23aを通過した溶融樹脂は、マニホールド23bを通過することによりTダイ20の幅方向に押し広げられる。導入通路23a及びマニホールド23bはT字を構成する。導入通路23aがT字を構成する縦棒に相当し、マニホールド23bがT字を構成する横棒に相当する。
【0021】
スリット23cは、Tダイ20の先端部20aとマニホールド23bとを連通する隙間である。スリット23cは、Tダイ20の幅方向に延びている。
【0022】
一対のダイブロック21、22は、それぞれ、先端に向かって傾斜したテーパ面21a、22aを含む先端部を備えている。ダイブロック21は、可動リップ21b(フレキシブルリップ)を含む。可動リップ21bは、後述のヒートボルト311により押し引きされることにより、ダイブロック21の先端部に形成された凹部21cの底部を支点として局所的に変位することができる。ダイブロック21の先端部の先端が可動リップ21bである。
【0023】
一方、ダイブロック22は、固定リップ22bを含む。固定リップ22bは、可動リップ21bが後述のヒートボルト311により押し引きされても変位しない。ダイブロック22の先端部の先端が固定リップ22bである。可動リップ21b、固定リップ22b、及び凹部21cは、Tダイ20の幅方向に延びている。
【0024】
上記構成のTダイ20においては、押出機10から押し出される溶融樹脂は、Tダイ20の内部に設けられた導入通路23a、及びマニホールド23bをこの順に通過する。その際、溶融樹脂は、マニホールド23bを通過することによりTダイ20の幅方向に押し広げられる。このTダイ20の幅方向に押し広げられた溶融樹脂は、スリット23cを通過し、最終的に、Tダイ20の先端に形成されたスリット出口、すなわち、可動リップ21bと固定リップ22bとの間の間隔S(スリット、隙間。
図1参照。以下、リップ間隔Sと呼ぶ)からフィルム状に押し出される。このフィルム状に押し出される溶融樹脂の幅は、Tダイ20の幅に対応している。
【0025】
<ダイリップ調整装置の構成>
実施の形態1は、以下に説明するダイリップ調整装置30を備えることを特徴とする。
図2は、
図1に記載されているダイリップ調整装置30の斜視図である。
【0026】
図2に示すように、ダイリップ調整装置30は、複数のヒートボルト311を1ユニット化したヒートボルトユニット31、及びこのヒートボルトユニット31を移動させるアクチュエータ33を備えている。アクチュエータ33がヒートボルトユニット31を移動させることにより、複数のヒートボルト311が同時に移動し、複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが同時に可動リップ21bを押し引きする。これにより、複数のヒートボルト311単位でリップ間隔Sが調整される。
【0027】
以下、ダイリップ調整装置30の構成について詳細に説明する。
【0028】
図2に示すように、ダイリップ調整装置30は、ヒートボルトユニット31、ガイド部32、及びアクチュエータ33を備えている。
【0029】
ヒートボルトユニット31は、複数のヒートボルト311を1ユニット化した部材である。ヒートボルトユニット31は、複数のヒートボルト311、及び保持部312を備えている。
【0030】
ヒートボルト311は、ヒートボルト本体311a、及びヒータ311b(
図1参照)を備えている。
【0031】
ヒートボルト本体311aは、ロッド状の部材である。ヒートボルト本体311aは、典型的には、金属製である。例えば、ヒートボルト本体311aは、比較的硬度が高い鋼製(例えば、SCM440(クロムモリブデン鋼)製)である。ヒートボルト本体311aの形状は、四角柱状である。なお、ヒートボルト本体311aは、その軸方向(ロッド状の部材であるヒートボルト本体311aの長さ方向。
図1、
図2中の符号AXが示す一点鎖線が延びる方向参照)に熱膨張、又は収縮できればよく、金属製以外の材料製であってもよい。また、ヒートボルト本体311aの形状は、四角柱状以外、例えば、多角柱状又は円柱状であってもよい。
【0032】
ヒータ311bは、ヒートボルト本体311aの温度を制御する温度制御部である。例えば、ヒータ311bは、カートリッジヒータである。
【0033】
ヒートボルト本体311aには、先端部側(
図1中下側)が開口し、当該先端部側から基端部側(
図1中上側)に向かって延びる有底のヒータ挿入穴311a1(
図1中の点線参照)が形成されている。ヒータ挿入穴311a1の直径は、ヒータ311bの径より若干大きい(例えば、0.1mm程度大きい)。
【0034】
また、ヒートボルト本体311aには、ヒータ挿入穴311a1と当該ヒータ挿入穴311a1外部とを連通する貫通穴311a2(以下、制御線用貫通穴311a2と呼ぶ)が形成されている(
図1参照)。制御線用貫通穴311a2は、例えば、ヒータ挿入穴311a1の底部側(
図1中上側)と当該ヒータ挿入穴311a1外部(例えば、ヒートボルト本体311aのうちダイブロック21のテーパ面21aが対向する側の外周面)とを連通している。
【0035】
ヒータ311bは、ヒータ挿入穴311a1に挿入された状態でヒートボルト本体311aに取り付けられている。具体的には、ヒータ311bは、次のようにしてヒートボルト本体311aに取り付けられる。
【0036】
図8Aはヒータ311bをヒートボルト本体311aに取り付ける(挿入する)様子を表す図、
図8Bはヒータ311bがヒートボルト本体311aに取り付けられた状態を表す図である。
【0037】
図8Aに示すように、まず、ヒータ311bを、当該ヒータ311bを制御するための制御線cが電気的に接続された側からヒータ挿入穴311a1に挿入する(
図8A中の符号AR2が示す矢印参照)。
図8Bに示すように、ヒータ311bは、外周面(全周)がヒータ挿入穴311a1の内壁(内周面)により囲まれた状態でヒータ挿入穴311a1内に配置される。その際、制御線cを、制御線用貫通穴311a2を介してヒータ挿入穴311a1外部に引き出す。制御線cは、正面側ではなく、ダイブロック21側(
図8B中右側)に引き出される。これにより、正面方向(
図1中の矢印AR1参照)から見た場合、制御線cが視認されるのが防止され、すっきりした見栄えが実現される。
【0038】
次に、
図5に示すように、連結部材40の一方の凸部41及びヒートボルト311の先端部311dを連通する貫通穴H2、H3及びヒータ311bに形成された貫通穴H4に挿入されたねじN3を、可動リップ21b(ダイブロック21)にねじ止めする。これにより、ヒータ311bがヒータ挿入穴311a1から抜けるのが防止される。
【0039】
以上のようにして、ヒータ311bは、ヒートボルト本体311aに取り付けられる。その際、ヒータ311bの外周面(全周)がヒータ挿入穴311a1の内壁(内周面)により囲まれた状態で取り付けられるため、熱伝導効率が向上する。ヒータ311bの外周面(全周)とヒータ挿入穴311a1の内壁との間に熱伝導部材(図示せず)を配置するのが望ましい。これにより、熱伝導効率がさらに向上する。熱伝導部材は、例えば、熱伝導グリス、熱伝導シートである。
【0040】
ヒータ311bには、制御部(図示せず)が電気的に接続されている。制御部は、ヒータ311bの加熱温度を制御する。ヒートボルト本体311aは、加熱温度に応じて、その軸方向に熱膨張、又は収縮する。
【0041】
複数のヒートボルト311は、互いに並列に配置されている。
【0042】
保持部312は、並列に配置された複数のヒートボルト311を保持する部材である。具体的には、保持部312は、並列に配置された複数のヒートボルト311それぞれの基端部311cを保持する。すなわち、保持部312は、複数のヒートボルト311を片持ち梁状に保持する。これにより、各々のヒートボルト311がその軸方向に熱膨張、又は収縮する際、各々のヒートボルト311の先端部311d(自由端部)が、保持部312に対してその軸方向に移動することができる。この移動する各々のヒートボルト311の先端部311dは、後述のように可動リップ21bを押し引きする。
【0043】
保持部312は、典型的には、金属製である。なお、保持部312は、並列に配置された複数のヒートボルト311を保持できればよく、金属製以外の材料製であってもよい。また、保持部312の形状は、どのような形状であってもよい。
【0044】
複数のヒートボルト311及び保持部312は、一体物であってもよいし、互いに別体の複数のヒートボルト311及び保持部312を組み合わせた組立物であってもよい。なお、
図2中、6本のヒートボルト311を例示しているが、ヒートボルト311は複数であればよく、6本に限定されない。
<ヒートボルトユニット製造方法>
次に、ヒートボルトユニット31の製造方法について説明する。
【0045】
図9は、ヒートボルトユニット31の製造方法のフローチャートである。
【0046】
図9に示すように、まず、保持部312と分割予定部とを含む金属素材を用意する(ステップS10)。分割予定部とは、ヒートボルトユニット31のうち複数のヒートボルト本体311aに分割される前の部分(図示せず)をいう。
【0047】
次に、互いに平行な複数のスリット状の溝GV1(
図2参照)を分割予定部に形成する(ステップS11)。これにより、複数のヒートボルト本体311aが形成される。スリット状の溝GV1は、例えば、回転ブレードやワイヤーカットにより形成することができる。なお、スリット状の溝GV1は、ヒートボルト本体311aの先端部側から基端部側まで延びている。
【0048】
次に、ヒートボルト本体311aにヒータ挿入穴311a1を形成する(ステップS12)。ヒータ挿入穴311a1は、例えば、ドリルにより形成することができる。
【0049】
以上のようにして、ヒートボルトユニット31を製造することができる。
【0050】
次に、ヒートボルトユニット31の他の製造方法について説明する。
【0051】
図10は、ヒートボルトユニット31の他の製造方法のフローチャートである。
【0052】
図10に示すように、まず、保持部312と分割予定部とを含む金属素材を用意する(ステップS20)。次に、スリット状の溝GV1(
図2参照)形成前に、分割予定部のうちヒートボルト本体311aに対応する部分にヒータ挿入穴311a1を形成する(ステップS21)。次に、互いに平行な複数のスリット状の溝GV1(
図2参照)を分割予定部に形成する(ステップS22)。
【0053】
以上のようにして、ヒートボルトユニット31を製造してもよい。このようにすれば、スリット状の溝GV1形成後にヒータ挿入穴311a1を形成する場合(
図9参照)と比べ、ヒータ挿入穴311a1を精度よくかつ容易に形成することができる。
【0054】
ヒートボルトユニット31は、ヒートボルト311の軸方向にスライド移動可能にガイド部32に取り付けられている。具体的には、ヒートボルトユニット31は、次のように取り付けられている。
【0055】
図3は、ダイリップ調整装置30が取り付けられたダイブロック21の斜視図である。説明の都合上、
図3中、ダイブロック22は、省略してある。
図4は、
図3中のガイド凸部324及びガイド溝312a近傍の部分拡大図である。
【0056】
図3に示すように、ガイド部32には、ガイド凸部324が設けられている。一方、保持部312には、ガイド凸部324が挿入されるガイド溝312aが設けられている。反対に、ガイド部32には、ガイド溝312aが設けられ、一方、保持部312には、ガイド凸部324が設けられていてもよい。
【0057】
ガイド凸部324及びガイド溝312aは、それぞれ、ヒートボルト311の軸方向に延びている。
図4に示すように、ガイド凸部324及びガイド溝312aそれぞれの断面形状(ヒートボルト311の軸に直交する平面による断面形状)は、逆台形形状である。ガイド凸部324のテーパ面321a(逆台形形状のテーパ面)とガイド溝312aのテーパ面312a1(逆台形形状のテーパ面)は、互いに当接(概ね面接触)している。
【0058】
ヒートボルトユニット31は、ガイド凸部324がガイド溝312aに挿入され、かつ、ガイド凸部324のテーパ面とガイド溝312aのテーパ面とが互いに当接した状態でガイド部32に取り付けられている。ガイド凸部324のテーパ面321a及びガイド溝312aのテーパ面312a1は、互いに当接することにより、ヒートボルトユニット31がスライド移動する際、ヒートボルトユニット31がヒートボルト311の軸方向から逸脱すること(例えば、ヒートボルトユニット31がガイド部32から浮き上がること)を抑制する逸脱抑制部(逸脱抑制面)である。逸脱抑制部は、ガイド凸部324のテーパ面321a及びガイド溝312aのテーパ面312a1以外の面等であってもよい。
【0059】
これにより、ヒートボルトユニット31がガイド溝312aに沿ってヒートボルト311の軸方向にスライド移動する際、ヒートボルトユニット31がヒートボルト311の軸方向から逸脱することが抑制される。すなわち、ヒートボルト311の軸方向から逸脱することなく、ヒートボルトユニット31は、ガイド溝312aに沿ってヒートボルト311の軸方向にスライド移動することができる。
【0060】
なお、ガイド凸部324及びガイド溝312aは、省略してもよい(ガイド凸部324及びガイド溝312aを省略してもヒートボルトユニット31がヒートボルト311の軸方向にスライド移動可能な場合)。
【0061】
図2に示すように、ヒートボルトユニット31には、アクチュエータ33が連結されている。
【0062】
アクチュエータ33は、ヒートボルトユニット31を、ヒートボルト311の軸方向にスライド移動させる駆動部である。アクチュエータ33は、アクチュエータ本体331、及びロッド332を備えている。
【0063】
アクチュエータ本体331は、サーボモータ(図示せず)、及びサーボモータの回転力を、ロッド332をその軸方向に押し出し又は引き込む推進力に変換する機構(図示せず)を内蔵したリニアアクチュエータである。
【0064】
図1に示すように、アクチュエータ本体331は、ガイド部32に設けられた保持部321にねじN1、N2により固定されている。ロッド332は、保持部321に形成された貫通穴H1に挿入され、かつ、ヒートボルト311の軸方向に延びている。
【0065】
ロッド332の先端部は、ガイド部32に取り付けられたヒートボルトユニット31の保持部312に固定されている。例えば、ロッド332の先端部が保持部312に螺合することにより、ロッド332の先端部は、保持部312に固定されている。
【0066】
アクチュエータ33には、制御部(図示せず)が電気的に接続されている。制御部は、ロッド332の移動方向(押出方向又は引込方向)及び移動量(押出量又は引込量)を制御する。これにより、アクチュエータ33は、アクチュエータ本体331に対してロッド332をその軸方向に押し出し又は引き込む。これにより、ロッド332が固定されたヒートボルトユニット31が、ガイド溝312aに沿ってヒートボルト311の軸方向(アクチュエータ33側又は反アクチュエータ33側)にスライド移動する。
【0067】
リップ間隔Sから押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚みをTダイ20の幅方向の全域に亘って均一にするため、
図3に示すように、Tダイ20(ダイブロック21)には、その幅方向に複数のダイリップ調整装置30が取り付けられている。ダイリップ調整装置30は、ガイド部32に設けられた固定部322をダイブロック21に固定(例えば、ねじ固定)することにより、ダイブロック21に取り付けられる。
【0068】
その際、複数のヒートボルト311の配置方向は、Tダイ20(ダイブロック21)の幅方向に一致している。なお、
図3中、5つのダイリップ調整装置30を取り付けた例を図示してあるが、これに限らず、Tダイ20(ダイブロック21)の幅に応じて1以上の任意の数のダイリップ調整装置30をTダイ20(ダイブロック21)に取り付けてもよい。
【0069】
各々のヒートボルト311の先端部311dは、可動リップ21bに固定されている(
図1参照)。具体的には、各々のヒートボルト311の先端部311dが、可動リップ21bに固定された断面U字状の連結部材40により可動リップ21bに固定されている。
【0070】
ヒートボルト311の先端部311dを可動リップ21bに固定する構成についてさらに詳細に説明する。
【0071】
図5は、
図1中のヒートボルト311の先端部311d及び可動リップ21b近傍の部分拡大図である。
【0072】
図5に示すように、まず、連結部材40の一方の凸部41をヒートボルト311の先端部311dに形成された溝311eに挿入し、かつ、連結部材40の他方の凸部42を可動リップ21bに形成された溝21b1に挿入する。
【0073】
次に、連結部材40の一方の凸部41及びヒートボルト311の先端部311dを連通する貫通穴H2、H3に挿入されたねじN3を可動リップ21bにねじ止めする。
【0074】
その際、連結部材40の一方の凸部41の形状が先細りの楔形であるため、ねじN3を可動リップ21bにねじ込むことにより、この楔形の一方の凸部41がヒートボルト311の先端部311dを他方の凸部42に押し付ける。これにより、ヒートボルト311の先端部311d(先端面)及び可動リップ21bは、両者間に隙間なく密着した状態で互いに強固に固定される。
【0075】
これにより、後述のようにヒートボルト311の先端部311dが可動リップ21bを反可動リップ21b側(アクチュエータ33側)に引く際、バックラッシュが発生することなく、可動リップ21bを反可動リップ21b側に引くことができる。
【0076】
以上のようにダイリップ調整装置30をTダイ20に取り付けた場合、
図1に示すように、各々のヒートボルト311(ヒータ311b)が、ダイブロック21のテーパ面21aに沿って(対向して)このテーパ面21aの近くに配置される。そこで、各々のヒートボルト311(ヒータ311b)の熱がダイブロック21に伝熱するのを抑制するため、ダイブロック21のテーパ面21aには、断熱材50が取り付けられている。
【0077】
<ダイリップ調整装置の動作例>
次に、上記構成のダイリップ調整装置30の動作例について説明する。
【0078】
上記構成のダイリップ調整装置30によれば、ロッド332の移動方向(押出方向又は引込方向)及び移動量(押出量又は引込量)を制御することにより、リップ間隔Sを複数のヒートボルト311単位で局所的に調整(粗調整)することができる。
【0079】
具体的には、アクチュエータ33によりロッド332を押出方向に所定量押し出すことにより、このロッド332に連結されたヒートボルトユニット31が、ガイド部32に設けられたガイド溝312aに沿って可動リップ21b側にスライド移動する。その際、ガイド凸部324のテーパ面321aとガイド溝312aのテーパ面312a1とが互いに当接しているため(
図4参照)、ヒートボルトユニット31は、ヒートボルト311の軸方向から逸脱することなく、ガイド部32に設けられたガイド溝312aに沿って可動リップ21b側にスライド移動する。
【0080】
これにより、ヒートボルトユニット31に設けられた複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが、同時に可動リップ21bを固定リップ22b側に押す。これにより、可動リップ21bが凹部21cの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22bに接近する。これにより、リップ間隔Sが局所的に狭くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが局所的に減少する。
【0081】
反対に、アクチュエータ33によりロッド332を引込方向に所定量引き込むことにより、このロッド332に連結されたヒートボルトユニット31が、ガイド部32に設けられたガイド溝312aに沿って反可動リップ21b側(アクチュエータ33側)にスライド移動する。その際、ガイド凸部324のテーパ面321aとガイド溝312aのテーパ面312a1とが互いに当接しているため(
図4参照)、ヒートボルトユニット31は、ヒートボルト311の軸方向から逸脱することなく、ガイド部32に設けられたガイド溝312aに沿って反可動リップ21b側にスライド移動する。
【0082】
これにより、ヒートボルトユニット31に設けられた複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが、同時に可動リップ21bを反可動リップ21b側に引く。その際、ヒートボルト311の先端部311d(先端面)及び可動リップ21bが連結部材40により両者間に隙間なく密着した状態で互いに強固に固定されているため(
図5参照)、ヒートボルト311は、バックラッシュが発生することなく、可動リップ21bを反可動リップ21b側に引くことができる。
【0083】
これにより、可動リップ21bが凹部21cの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22bから離れる。これにより、リップ間隔Sが局所的に広くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが局所的に増加する。
【0084】
以上の調整(粗調整)は、リップ間隔Sからフィルム状の溶融樹脂が押し出される前に実施してもよいし、リップ間隔Sからフィルム状の溶融樹脂が押し出されている最中に実施してもよい。
【0085】
また、上記構成のダイリップ調整装置30によれば、ヒータ311bの加熱温度を制御することにより、リップ間隔Sを単一のヒートボルト311単位で局所的に調整(微調整)することができる。
【0086】
具体的には、ヒータ311bの加熱温度を上昇させることにより、ヒートボルト311が熱膨張してその軸方向の長さが増加する。その際、ヒートボルト311が片持ち梁状に保持部312に保持されているため、ヒートボルト311の先端部311d(自由端部)が保持部312に対して可動リップ21b側に移動して可動リップ21bを固定リップ22b側に押す。
【0087】
これにより、可動リップ21bが凹部21cの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22bに接近する。これにより、リップ間隔Sが局所的に狭くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが局所的に減少する。
【0088】
反対に、ヒータ311bの加熱温度を低下させることにより、ヒートボルト311が収縮してその軸方向の長さが減少する。その際、ヒートボルト311が片持ち梁状に保持部312に保持されているため、ヒートボルト311の先端部311d(自由端部)が保持部312に対して反可動リップ21b側(アクチュエータ33側)に移動して可動リップ21bを反可動リップ21b側に引く。その際、ヒートボルト311の先端部311d(先端面)及び可動リップ21bが連結部材40により両者間に隙間なく密着した状態で互いに強固に固定されているため(
図5参照)、ヒートボルト311は、バックラッシュが発生することなく、可動リップ21bを反可動リップ21b側に引くことができる。
【0089】
これにより、可動リップ21bが凹部21cの底部を支点として局所的に変位して固定リップ22bから離れる。これにより、リップ間隔Sが局所的に広くなる。その結果、リップ間隔Sからその後に押し出されるフィルム状の溶融樹脂の厚さが局所的に増加する。
【0090】
以上の調整(微調整)は、典型的には、リップ間隔Sからフィルム状の溶融樹脂が押し出されている最中に自動的に継続して実施される。
【0091】
<リップの変位量>
次に、複数のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量、及び1本のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量について説明する。
【0092】
図6は、複数(6本)のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量、及び1本のヒートボルト311によりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量を表すグラフである。このグラフの横軸は、
図3中、複数のヒートボルト311の先端部311dが固定されたリップ範囲LAに対応している。
【0093】
図6中、実線のグラフは、ヒートボルトユニット31をスライド移動させることにより、複数(6本)のヒートボルト311が同時にリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量を表す。一方、点線のグラフは、1本のヒートボルト311(
図3中、右端から3本目の位置のヒートボルト311)を熱膨張させることによりリップ間隔Sを調整した場合の可動リップ21bの変位量を表す。なお、点線のグラフは、その中央が実線のグラフの中央に一致するように描いてある。
【0094】
図6を参照すると、1本のヒートボルト311により、すなわち、単一のヒートボルト311単位でリップ間隔Sを調整する場合と比べ、複数のヒートボルト311により同時に、すなわち、複数のヒートボルト311単位でリップ間隔Sを調整する方が、より広い範囲でリップ間隔Sが調整されるため、リップ間隔Sの調整に要する時間を短縮できることが分かる。
【0095】
以上説明したように、実施の形態1によれば、ダイリップ調整装置30は、複数のヒートボルト311を1ユニット化したヒートボルトユニット31、及びこのヒートボルトユニット31を移動させるアクチュエータ33を備えているため、次の効果を奏する。すなわち、アクチュエータ33がヒートボルトユニット31を移動させることにより、複数のヒートボルト311が同時に移動し、複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが同時に可動リップ21bを押し引きする。
【0096】
これにより、複数のヒートボルト311単位でリップ間隔Sが調整される。これにより、単一のヒートボルト311単位でリップ間隔Sを調整する場合と比べ、より広い範囲でリップ間隔Sが調整されるため、リップ間隔Sの調整に要する時間を短縮できる。
【0097】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0098】
実施の形態2は、アクチュエータ33に代えて、以下に説明するリップ調整ねじ34(リップ調整ボルト)を備えたダイリップ調整装置30Aを備えることを特徴とする。
【0099】
図7は、実施の形態2に係る押出成形装置1Aの全体構成を示す側面図である。
【0100】
図7に示すように、ダイリップ調整装置30Aは、複数のヒートボルト311を1ユニット化したヒートボルトユニット31、及びこのヒートボルトユニット31を移動させるリップ調整ねじ34を備えている。手動(工具を用いる場合も含む)でリップ調整ねじ34を回転させることにより、複数のヒートボルト311が同時に移動し、複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが同時に可動リップ21bを押し引きする。これにより、複数のヒートボルト311単位でリップ間隔Sが調整される。
【0101】
以下、ダイリップ調整装置30Aの構成について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0102】
図7に示すように、ダイリップ調整装置30Aは、ヒートボルトユニット31、ガイド部32、及びリップ調整ねじ34を備えている。
【0103】
リップ調整ねじ34は、ヒートボルトユニット31を、ヒートボルト311の軸方向にスライド移動させる駆動部である。リップ調整ねじ34は、外ねじ341のピッチと内ねじ342のピッチが異なる(外ねじ341のピッチ>内ねじ342のピッチ)差動ねじである。
【0104】
リップ調整ねじ34の外ねじ341は、ガイド部32に設けられた保持部323に螺合している。リップ調整ねじ34の内ねじ342には、ロッド344が螺合している。ロッド344は、ヒートボルト311の軸方向に延びている。ロッド344の先端部は、ガイド部32に取り付けられたヒートボルトユニット31の保持部312に固定されている。例えば、ロッド344の先端部が保持部312に螺合することにより、ロッド344の先端部は、保持部312に固定されている。
【0105】
<ダイリップ調整装置の動作例>
次に、上記構成のダイリップ調整装置30Aの動作例について説明する。
【0106】
上記構成のダイリップ調整装置30Aによれば、手動(工具を用いる場合も含む)でリップ調整ねじ34を回転させることにより、ロッド344は、その軸方向に微小送りされる。例えば、リップ調整ねじ34を一回転させた場合、外ねじ341のピッチと内ねじ342のピッチの差分だけロッド344は、その軸方向に微小送りされる。
【0107】
これにより、ロッド344が固定されたヒートボルトユニット31が、ガイド溝312aに沿ってヒートボルト311の軸方向(リップ調整ねじ34側又は反リップ調整ねじ34側)にスライド移動する。これにより、リップ間隔S(可動リップ21bと固定リップ22bとの間の間隔)を複数のヒートボルト311単位で局所的に調整(粗調整)することができる。この具体的な調整動作については、上記実施の形態1で説明した動作と同様であるため、説明を省略する。
【0108】
また、上記構成のダイリップ調整装置30Aによれば、ヒータ311bの加熱温度を制御することにより、リップ間隔Sを単一のヒートボルト311単位で局所的に調整(微調整)することができる。この具体的な調整動作については、上記実施の形態1で説明した動作と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
以上説明したように、実施の形態2によれば、ダイリップ調整装置30Aは、複数のヒートボルト311を1ユニット化したヒートボルトユニット31、及びこのヒートボルトユニット31を移動させるリップ調整ねじ34を備えているため、次の効果を奏する。すなわち、手動(工具を用いる場合も含む)でリップ調整ねじ34を回転させることにより、複数のヒートボルト311が同時に移動し、複数のヒートボルト311それぞれの先端部311dが同時に可動リップ21bを押し引きする。これにより、複数のヒートボルト311単位でリップ間隔Sが調整される。これにより、単一のヒートボルト311単位でリップ間隔Sを調整する場合と比べ、より広い範囲でリップ間隔Sが調整されるため、リップ間隔Sの調整に要する時間を短縮できる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0110】
実施の形態3は、アクチュエータ33が、以下に説明する回転軸を有するアクチュエータ33Bであることを特徴とする。
【0111】
図11は、実施の形態3に係る押出成形装置1Bの全体構成を示す側面図である。
【0112】
以下、ダイリップ調整装置30Bの構成について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0113】
図11に示すように、ダイリップ調整装置30Bは、ヒートボルトユニット31、ガイド部32、アクチュエータ33B、シャフト35、及びベアリング36を備えている。
アクチュエータ33Bは、アクチュエータ本体33B1、及びアクチュエータ本体33B1に内蔵されたサーボモータ(図示せず)により回転される回転軸33B2を備えている。
【0114】
図11に示すように、アクチュエータ本体33B1は、ガイド部32に設けられた保持部321にねじN1、N2により固定されている。回転軸33B2は、保持部321に形成された貫通穴H1に挿入され、かつ、ヒートボルト311の軸方向に延びている。
【0115】
シャフト35は、基端部がアクチュエータ33Bの回転軸33B2に連結(固定)され、先端部が、ガイド部32に取り付けられたヒートボルトユニット31の保持部312に螺合している。シャフト35は、ガイド部32に設けられた固定部322に固定されたベアリング36により、回転可能に支持されている。シャフト35は、アクチュエータ33Bの回転軸33B2が回転(正回転又は逆回転)することにより、同一軸AX33B2を中心に回転する。これにより、ヒートボルトユニット31(保持部312)に対するシャフト35の先端部の螺合量が変化する。その結果、シャフト35の先端部が螺合したヒートボルトユニット31が、ガイド溝312aに沿ってヒートボルト311の軸方向(アクチュエータ33B側又は反アクチュエータ33B4側)にスライド移動する。
【0116】
次に、上記のようにヒートボルトユニット31がスライド移動する際、バックラッシュが発生するのを抑制するための構成について説明する。
【0117】
ヒートボルトユニット31の保持部312は、当該保持部312に形成されたスリット状の溝GV2を挟んで対向した第1部分312Aと第2部分312Bとを含む。
【0118】
ヒートボルトユニット31の保持部312には、第1部分312Aと第2部分312Bとを連通する第1ねじ穴H5及び第2ねじ穴H6が形成されている。
【0119】
第1ねじ穴H5には、シャフト35の先端部が螺合している。第2ねじ穴H6には、溝GV2の溝幅を調整するための溝幅調整用ねじN4が螺合している。溝幅調整用ねじN4を締め付けることにより、バックラッシュが発生することなく、ヒートボルトユニット31は、スライド移動することができる。溝幅調整用ねじN4を締め付ける程度は、バックラッシュが発生しない程度、例えば、1Nm以下であるのが望ましい。
【0120】
なお、上記構成のダイリップ調整装置30Bの動作例については、実施の形態1のダイリップ調整装置30と同様であるため、説明を省略する。
【0121】
<変形例>
次に、変形例について説明する。
【0122】
図12は、Tダイ20(ダイブロック21)の変形例である。
【0123】
図12に示すように、上記各実施の形態のTダイ20(ダイブロック21)の可動リップ21bは、ヒートボルト311の先端部311dが固定されるヒートボルト固定部21b2(複数)を含み、可動リップ21bのうち互いに隣接するヒートボルト固定部21b2間には、溝GV3が形成されていてもよい。
【0124】
このようにすれば、可動リップ21bのうち互いに隣接するヒートボルト固定部21b2間の厚みh1を、ヒートボルト固定部21b2の厚みh2より薄くすることができる。これにより、ヒートボルト311間(及びヒートボルト固定部21b2間)のピッチPを狭くしても、可動リップ21bを単一のヒートボルト311単位で局所的に変位させることができる。その結果、リップ間隔Sを単一のヒートボルト311単位で局所的に調整(微調整)することができる。
【0125】
また、上記各実施の形態では、ヒータ311bは、ヒータ挿入穴311a1に挿入され、外周面(全周)がヒータ挿入穴311a1の内壁(内周面)により囲まれた状態でヒートボルト本体311aに取り付けられる例について説明したが、これに限らない。
【0126】
例えば、ヒータ311bは、ヒートボルト本体311aの周囲(外周面)に形成された凹部に挿入された状態でヒートボルト本体311aに取り付けてもよい。また、ヒータ311bは、ヒートボルト本体311aの周囲(外周面)を取り囲んだ状態でヒートボルト本体311aに取り付けてもよい。
【0127】
なお、図示しないが、上記各実施の形態においては、互いに隣接するヒートボルト311間(スリット状の溝GV1。
図2参照)に、ヒートボルト311(ヒートボルト本体311a)が変形するのを抑制するための変形抑制部材を配置してもよい。変形抑制部材は、例えば、厚みが概ねスリット状の溝GV1の溝幅である板状部材(例えば、金属製板状部材)である。変形抑制部材は、例えば、ろう付けによりヒートボルト本体311aに固定するのが望ましい。このようにすれば、ヒートボルト311(ヒートボルト本体311a)が変形するのを抑制することができる。
【0128】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0129】
1、1A…押出成形装置
10…押出機
11…溶融樹脂出口
20…Tダイ
20a…先端部
20b…基端部
21…ダイブロック
21a…テーパ面
21b…可動リップ
21b1…溝
21c…凹部
22…ダイブロック
22a…テーパ面
22b…固定リップ
23a…導入通路
23b…マニホールド
23c…スリット
30、30A…ダイリップ調整装置
31…ヒートボルトユニット
32…ガイド部
33…アクチュエータ
34…リップ調整ねじ
40…連結部材
41、42…凸部
50…断熱材
311…ヒートボルト
311a…ヒートボルト本体
311a1…凹部
311b…ヒータ
311c…基端部
311d…先端部
311e…溝
312…保持部
312a…ガイド溝
312a1…テーパ面
321…保持部
321a…テーパ面
322…固定部
323…保持部
324…ガイド凸部
331…アクチュエータ本体
332…ロッド
341…外ねじ
342…内ねじ
344…ロッド
H1、H2…貫通穴
LA…リップ範囲
N1-N3…ねじ
S…リップ間隔