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特許7591799不正検知装置、不正検知方法、及び不正検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】不正検知装置、不正検知方法、及び不正検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20241122BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20241122BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241122BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
G01N33/497 A
G16H10/00
G06Q50/10
A61B5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020064088
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021159315
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】笠原 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】久米川 功壮
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-117968(JP,A)
【文献】特開2007-212481(JP,A)
【文献】特開2015-175665(JP,A)
【文献】特許第4422592(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知装置であって、
前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を記録する測定記録手段と、
前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを前記処理実施情報に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する不正報知手段と、
を備え
前記測定記録手段は、前記所定処理として被測定者による息の吹き込みの完了の有無を記録し、前記所定処理としてアルコール測定値の記録の完了の有無を記録し、
前記不正報知手段は、前記息の吹き込みが完了していることが記録されたものの、前記アルコール測定値の記録の完了が記録されていない場合に、不正が行われたことを報知する、
不正検知装置。
【請求項2】
前記測定記録手段は、前記処理実施情報として、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われたことを示す第1識別情報、及び前記生体情報の測定が完了したことを示す第2識別情報を前記生体情報の測定毎に記録する、請求項記載の不正検知装置。
【請求項3】
前記第1識別情報は、前記生体情報の測定回数であり、前記被測定者が前記生体情報の測定動作を行った後に記録され、
前記第2識別情報は、前記生体情報の測定値であり、前記生体情報の測定が完了しなかった場合に前記測定値とは異なる情報として記録される、請求項記載の不正検知装置。
【請求項4】
前記測定記録手段は、前記生体情報測定装置の電源ボタンをオフとする操作が行われた場合に、当該操作が実行されたことを示す電源操作情報を記録する、請求項から請求項の何れか1項記載の不正検知装置。
【請求項5】
前記被測定者の前記生体情報は、前記被測定者の呼気に含まれるアルコール濃度である、請求項1から請求項の何れか1項記載の不正検知装置。
【請求項6】
被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置と情報処理装置とを備え、前記生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知システムであって、
前記生体情報測定装置は、
前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す情報を送信する送信手段、
を備え、
前記情報処理装置は、
前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を記録する測定記録手段と、
前記所定処理の実施の有無を示す情報に基づき、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを前記処理実施情報に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が
行われたことを報知する不正報知手段と、
を備え
前記測定記録手段は、前記所定処理として被測定者による息の吹き込みの完了の有無を記録し、前記所定処理としてアルコール測定値の記録の完了の有無を記録し、
前記不正報知手段は、前記息の吹き込みが完了していることが記録されたものの、前記アルコール測定値の記録の完了が記録されていない場合に、不正が行われたことを報知する、
不正検知システム。
【請求項7】
被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知方法であって、
前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を測定記録手段が記録する第1工程と、
前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを前記処理実施情報に基づいて判定手段が判定する第工程と、
前記第1工程によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを不正報知手段が報知する第工程と、
を有し、
前記測定記録手段は、前記所定処理として被測定者による息の吹き込みの完了の有無を記録し、前記所定処理としてアルコール測定値の記録の完了の有無を記録し、
前記不正報知手段は、前記息の吹き込みが完了していることが記録されたものの、前記アルコール測定値の記録の完了が記録されていない場合に、不正が行われたことを報知する、
不正検知方法。
【請求項8】
被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知装置が備えるコンピュータを、
前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を記録する測定記録手段と、
前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを処理実施情報に基づいて判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する不正報知手段と、
して機能させ
前記測定記録手段は、前記所定処理として被測定者による息の吹き込みの完了の有無を記録し、前記所定処理としてアルコール測定値の記録の完了の有無を記録し、
前記不正報知手段は、前記息の吹き込みが完了していることが記録されたものの、前記アルコール測定値の記録の完了が記録されていない場合に、不正が行われたことを報知する、
ための不正検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正検知装置、不正検知方法、及び不正検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、事業用自動車、航空機、船舶、鉄道等の乗務員に対して点呼時等にアルコール検知装置を使ってアルコールチェックが広く行われている。
【0003】
ここで、アルコールチェックの不正行為の一例として、被測定者がアルコール検知装置に息を吹きかけた後、検知結果が表示される前にアルコール検知装置の電源をオフとすることがある。
【0004】
特許文献1には、飲酒チェックのためのアルコールの測定を行うアルコール測定部と、アルコール測定部による測定結果を管理側のコンピュータに送信する通信部と、測定結果を表示する表示部とを備え、表示部は通信部による送信完了後に測定結果を表示するアルコール検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4422592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図11は、アルコール検知装置に被測定者が息を吹き掛けてからアルコール濃度の測定値が表示されるまでの流れを示すフローチャートである。特許文献1に記載のアルコール検知装置では、ステップS3とステップS4との間において、被測定者がアルコール検知装置の電源をオフとするような不正行為に対応するものである。換言すると、特許文献1に記載のアルコール検知装置では、センサであるアルコール測定部が反応して測定結果を算出してから算出結果を表示部に表示するまでの間で行われる不正行為にしか対応できない。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載のアルコール検知装置では、被測定者が息を吹きかけてから測定結果を算出する前(ステップS1からステップS2の間)や、測定結果を算出している間(ステップS2からステップS3の間)に、アルコール検知装置の電源をオフとするような不正行為には対応できない。
【0008】
そこで、本発明は、被測定者が生体情報の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる、不正検知装置、不正検知方法、及び不正検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の不正検知装置は、被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知装置であって、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する不正報知手段と、を備える。
【0010】
本構成によれば、被測定者によって生体情報の測定動作が行われたにもかかわらず、生体情報の測定が完了と判定されなかった場合を不正として報知するので、例えば、被測定者が生体情報の測定動作を行った後に、被測定者が生体情報測定装置の電源をオフとするような不正も検知できる。従って本構成は、被測定者が生体情報の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる。
【0011】
上記の不正検知装置において、前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を記録する測定記録手段を備え、前記判定手段は、前記処理実施情報に基づいて、前記生体情報の測定が完了したか否かを判定してもよい。本構成によれば、完了しなかった処理は処理実施情報が記録されないので、生体情報測定装置に対して不正行為が行われたタイミングを判断できる。
【0012】
本発明の一態様の不正検知装置は、被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知装置であって、前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を、前記生体情報の測定毎に記録する測定記録手段と、前記所定処理が実施されていない前記測定を、不正が行われた前記測定として記録する不正記録手段と、を備える。
【0013】
本構成によれば、不正記録手段による記録結果を参照することで、例えば、被測定者が生体情報の測定動作を行った後に、被測定者が生体情報測定装置の電源をオフとするような不正も検知できる。従って本構成は、被測定者が生体情報の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる。
【0014】
上記の不正検知装置において、前記測定記録手段は、前記処理実施情報として、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われたことを示す第1識別情報、及び前記生体情報の測定が完了したことを示す第2識別情報を前記生体情報の測定毎に記録してもよい。本構成によれば、第1識別情報が記録された後に、対応する第2識別情報の記録状態に基づいて生体情報の測定が完了したか否かを判定するので、被測定者が生体情報の測定を開始した後に行われた不正行為をより簡易に検知できる。
【0015】
上記の不正検知装置において、前記第1識別情報は、前記生体情報の測定回数であり、前記被測定者が前記生体情報の測定動作を行った後に記録され、前記第2識別情報は、前記生体情報の測定値であり、前記生体情報の測定が完了しなかった場合に前記測定値とは異なる情報として記録されてもよい。本構成によれば、被測定者が生体情報の測定動作を行った後の不正行為をより簡易に検知できる。
【0016】
上記の不正検知装置において、前記測定記録手段は、前記生体情報測定装置の電源ボタンをオフとする操作が行われた場合に、当該操作が実行されたことを示す電源操作情報を記録してもよい。本構成によれば、生体情報測定装置の電源ボタンを操作することで、不正行為が行われたことを検知できる。
【0017】
上記の不正検知装置において、前記被測定者の前記生体情報は、前記被測定者の呼気に含まれるアルコール濃度でもよい。本構成によれば、アルコール検知における不正行為を簡易に判定できる。
【0018】
本発明の一態様の不正検知システムは、被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置と情報処理装置とを備え、前記生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知システムであって、前記生体情報測定装置は、前記生体情報の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す情報を送信する送信手段、を備え、前記情報処理装置は、前記所定処理の実施の有無を示す情報に基づき、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する不正報知手段と、を備える。この態様においては、生体情報測定装置とは別体の情報処理装置で、生体情報測定装置に対する不正の有無を判定することができる。
【0019】
本発明の一態様の不正検知方法は、被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知方法であって、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを判定する第1工程と、前記第1工程によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する第2工程と、を有する。
【0020】
本発明の一態様の不正検知プログラムは、被測定者の生体情報の測定を行う生体情報測定装置に対する不正の有無を検知する不正検知装置が備えるコンピュータを、前記被測定者による前記生体情報の測定動作が行われ、かつ前記生体情報の測定が完了したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記生体情報の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する不正報知手段と、して機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被測定者が生体情報の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1実施形態のアルコール検知装置の概略外観図である。
図2図2は、第1実施形態のアルコール検知装置の機能ブロック図である。
図3図3は、第1実施形態の測定結果リストを示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態のアルコール検知処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態の測定結果リストを示す模式図である。
図6図6は、第2実施形態のアルコール検知処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、第3実施形態の測定結果リストを示す模式図である。
図8図8は、第4実施形態のアルコール検知システムの概略構成図である。
図9図9は、第4実施形態の不正検知処理の流れを示すフローチャートである。
図10図10は、他の実施形態の測定結果リストを示す模式図である。
図11図11は、アルコール検知装置に被測定者が息を吹き掛けてからアルコール濃度の測定値が表示されるまでの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0024】
(第1実施形態)
本実施形態では、生体情報を被測定者の呼気に含まれるアルコール濃度とし、生体情報測定装置をアルコール検知装置とする。また、本実施形態では被測定者を一例として、航空機の乗務員である操縦士や客室乗務員とする。航空機は例えば旅客機や貨物機等であるが、これに限らず、ビジネスジェット等、他の航空機であってもよい。
【0025】
図1は、本実施形態のアルコール検知装置10の概略外観図である。なお、本実施形態では一例として、複数の被測定者が一つのアルコール検知装置10を共有してアルコール濃度の測定(アルコール検知)を行うが、これに限らず、被測定者は各々がアルコール検知装置10を所有してアルコール検知を行ってもよい。
【0026】
アルコール検知装置10は、被測定者の呼気からアルコール濃度を測定(以下「アルコール検知」ともいう。)する装置であり、マウスピース12、表示部14及び操作部16を備える。マウスピース12の両端には、吹込口及び排気口がそれぞれ形成され、被測定者が吹込口をくわえて息を吹き込むと、マウスピース12内に吹き込まれた呼気中のアルコール濃度が測定され、吹き込まれた息は排気口から排出される。
【0027】
表示部14は、被測定者が吹き込んだ息のアルコール濃度の測定結果(以下「アルコール測定値」という。)等を表示する。操作部16は被測定者によって操作され、アルコール検知装置10の電源のオン又はオフを行うための電源ボタン、アルコール検知を開始するための測定開始ボタン、各種設定の変更等を行うための設定ボタン等が含まれる。
【0028】
ここで、本実施形態のアルコール検知装置10は、被測定者によるアルコール検知装置10に対する不正の有無を検知する不正検知機能を有する。不正検知機能は、被測定者によるアルコール濃度の測定動作が行われ、かつアルコール濃度の測定が完了したか否かを判定し、この判定によってアルコール濃度の測定が完了したと判定されなかった場合、不正であると報知する。なお、被測定者によるアルコール濃度の測定動作とは、被測定者がアルコール検知装置10に対してマウスピース12を介して息を吹き掛ける動作である。なお、アルコール濃度の測定が完了と判定されない場合とは、アルコール濃度の測定が正常に完了しなかった場合である。そして、ここでいう正常とは、例えば、アルコール濃度の測定が完了した後にアルコール検知装置10の電源がオフとされる場合である。
【0029】
このような不正検知機能によれば、被測定者によってアルコール濃度の測定動作が行われたにもかかわらず、アルコール濃度の測定が完了と判定されなかった場合を不正として報知するので、例えば、アルコール濃度の測定が開始された後に電源がオフとされるような不正が行われたことも検知できる。従って本実施形態のアルコール検知装置10は、被測定者がアルコール濃度の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる。
【0030】
図2は、本実施形態のアルコール検知装置10で実行されるアルコール検知及び不正検知に関する機能ブロック図である。本実施形態において、図2に示される各機能は一例としてアルコール検知装置10が備えるコンピュータによって実行される。なお、これに限らず、各機能は、アルコール検知装置10が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実現されてもよい。
【0031】
アルコール検知装置10は、操作制御部20、アルコール濃度測定部22、画像表示制御部24、記憶部26、データ送受信部28、及び不正検知部30を備える。
【0032】
操作制御部20は、被測定者による操作部16に対する操作に応じた制御、例えばアルコール検知装置10のオン、オフ等やアルコール検知の開始を指示する。
【0033】
アルコール濃度測定部22は、操作部16に含まれる測定開始ボタンが操作された後に、マウスピース12から吹き込まれた息のアルコール濃度を測定(算出)し、アルコール測定値として出力する。
【0034】
画像表示制御部24は、表示部14の表示状態を制御する。
【0035】
記憶部26は、不揮発性メモリであり、アルコール検知装置10で実行されるアルコール検知及び不正検知に関するプログラム、アルコール検知装置10特有のID(以下「測定器ID」という。)等の各種データ、及びアルコール測定値等が記録された測定結果リスト40A(図3参照)を記憶する。
【0036】
データ送受信部28は、他の情報処理装置(タブレット端末やサーバ等)との間で情報の送受信を有線又は無線で行う。なお、アルコール検知装置10と他の情報処理装置とにおける情報の送受信は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルを用いた有線通信、WiFi等による無線通信、Bluetooth等の近距離無線通信等で行われる。
【0037】
不正検知部30は、被測定者によるアルコール検知装置10に対する不正の有無を検知するものであり、測定記録部32、不正判定部34、及び不正報知記録部36を備える。
【0038】
測定記録部32はアルコール濃度の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報を記録する。本実施形態の処理実施情報は、一例として、被測定者によるアルコール濃度の測定動作が行われたことを示す第1識別情報、及びアルコール濃度の測定が完了したことを示す第2識別情報である。すなわち、本実施形態における処理実施情報が記録される所定処理は、被測定者によるアルコール濃度の測定動作と、アルコール濃度の測定完了である。
【0039】
図3は、本実施形態の測定結果リスト40Aの一例を示す。すなわち、本実施形態の測定記録部32は、処理実施情報をアルコール濃度の測定毎に記録することで、リスト化する。
【0040】
測定結果リスト40Aは、被測定者によってアルコール検知が実施された日付及び時刻、測定者ID、通算測定回数、アルコール濃度の測定結果、不正判定の欄が設けられ、アルコール検知が行われる毎に各欄に対応する数値等が時系列で記録される。なお、測定者IDは、被測定者毎に割り当てられるIDであり、アルコール検知装置10に入力される。また、通算測定回数は、アルコール検知装置10によって実施されたアルコール検知の総回数であり、被測定者がアルコール濃度の測定動作を行った後に記録される。
【0041】
本実施形態は、被測定者によるアルコール濃度の測定動作が行われたことを示す第1識別情報をアルコール濃度の通算測定回数とし、アルコール濃度の測定が完了したことを示す第2識別情報をアルコール測定値とする。そして、被測定者によるアルコール濃度の測定動作が行われた後にアルコール検知装置10の電源がオフされる等して、アルコール濃度の測定が完了しなかった場合には、アルコール濃度の欄にはアルコール測定値とは異なる情報が記録される。本実施形態では異なる情報の一例として、「null」と記録される。
【0042】
不正判定部34は、被測定者によるアルコール濃度の測定動作が行われ、かつアルコール濃度の測定が完了したか否かを判定する。本実施形態の不正判定部34は、第2識別情報であるアルコール測定値に基づいてアルコール濃度の測定が完了したか否かを判定する。すなわち、測定結果リスト40Aにおけるアルコール濃度の欄が「null」となっているアルコール検知は、アルコール濃度の測定結果が算出する前に、電源ボタンをオフ操作したり、電池を取り外すなどにより、不正が行われた可能性が考えられる。このため、不正判定部34は、アルコール濃度の欄が「null」となっているアルコール検知を不正として判定する。
【0043】
このように、本実施形態の不正検知部30は、第1識別情報が記録された後に、対応する第2識別情報の記録状態に基づいてアルコール濃度の測定が完了したか否かを判定するので、被測定者がアルコール濃度の測定を開始した後に行われた不正行為をより簡易に検知できる。
【0044】
不正報知記録部36は、不正判定部34によってアルコール濃度の測定が完了したと判定されなかった場合、不正が行われたことを報知する。報知の例としては、表示部14に不正が行われた通算測定回数及び測定者ID等を表示し、予め設定された情報処理装置の画面に通算測定回数、測定器ID、及び測定者ID等を表示する。また、報知として、予め設定されたE-mailアドレスに対して通算測定回数、測定器ID、及び測定者ID等が送信されてもよい。さらに、アルコール検知装置10にスピーカーが搭載されている場合には音による報知が行われてもよい。これにより、航空機の乗務員にアルコール検知を行わせる担当者や管理者は、不正が行われたことを認識できる。
【0045】
また、本実施形態の不正報知記録部36は、所定処理が実施されていないアルコール濃度の測定を、不正が行われた測定として記録する。具体的には、不正報知記録部36は、測定結果リスト40Aに対して、所定処理が実施されていない測定に対応する不正判定の欄に“不正”と記録する。一方、所定処理が実施された測定に対応する不正判定の欄には、“正常”と記録される。
【0046】
図4は、アルコール検知装置10によって実行されるアルコール検知処理の流れを示すフローチャートである。なお、図4に示されるアルコール検知処理は、アルコール検知装置10が備える操作部16に含まれる測定開始ボタンを被測定者が操作した場合に開始される。
【0047】
まず、ステップ100では、不正検知部30が記憶部26から測定器IDを読み込む。
【0048】
次のステップ102では、不正検知部30が記憶部26に記憶されている測定結果リスト40Aから通算測定回数Dnを読み込む。読み込まれる通算測定回数は、測定結果リスト40Aの末尾であって、時系列的に最後の通算測定回数である。
【0049】
次のステップ104では、読み込んだ通算測定回数Dnに対応するアルコール測定値Rn、すなわち、前回実施されたアルコール濃度の測定結果を不正検知部30が測定結果リスト40Aから読み込む。
【0050】
次のステップ106では、前回のアルコール測定値Rnがあるか否かを不正判定部34が判定し、肯定判定の場合はステップ110へ移行する一方、否定判定の場合はステップ108へ移行する。なお、前回のアルコール測定値Rnがない場合とは、上述のように測定結果リスト40Aにおけるアルコール濃度の欄が「null」となっていた場合である。なお、ステップ106において肯定判定の場合は、測定記録部32が測定結果リスト40Aにおける通算測定回数Dnに対応する不正判定の欄に“正常”と記録する。
【0051】
ステップ108では、前回のアルコール検知において不正が行われたことを不正報知記録部36が報知すると共に、不正報知記録部36が測定結果リスト40Aにおける通算測定回数Dnに対応する不正判定の欄に“不正”と記録し、ステップ110へ移行する。
【0052】
ステップ110では、被測定者がマウスピース12を介してアルコール検知装置10に息を吹き掛ける。息の吹き掛けは、アルコール濃度測定部22によって検知される。なお、被測定者による息の吹き掛けが、被測定者によるアルコール濃度の測定動作の開始に相当する。
【0053】
なお、ステップ106からステップ108へ移行した場合であっても、被測定者によるアルコール検知は行われる。この理由は、不正を行った被測定者と、今からアルコール検知を行おうとする被測定者は必ずしも同一人物とは限らないためである。
【0054】
次のステップ112では、不正検知部30が通算測定回数Dnのインクリメント(Dn=Dn+1)を行う。
【0055】
次のステップ114では、測定記録部32が通算測定回数Dn+1を測定結果リスト40Aに新たに記録する。
【0056】
次のステップ116では、測定記録部32が時刻Tn+1を通算測定回数Dn+1に対応させて測定結果リスト40Aに記録する。なお、このとき、測定日及び測定者ID等も測定結果リスト40Aに記録される。
【0057】
次のステップ118では、アルコール濃度測定部22がマウスピース12から吹き込まれた息のアルコール測定値Rn+1を算出する。
【0058】
次のステップ120では、測定記録部32がアルコール測定値Rn+1を通算測定回数Dn+1に対応させて測定結果リスト40Aに記録する。
【0059】
次のステップ122では、画像表示制御部24がアルコール測定値Rn+1を表示部14に表示させ、本アルコール検知処理を終了する。なお、アルコール検知処理を終了すると共に、データ送受信部28が測定結果リスト40Aを所定の情報処理装置に送信してもよい。
【0060】
なお、図4のアルコール検知処理は、前回のアルコール検知において不正が行われた場合にステップ108で報知するが、これに限らず、ステップ122の後に前回のアルコール検知において不正が行われたことを報知してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態のアルコール検知装置10は、被測定者によってアルコール濃度の測定動作が行われたにもかかわらず、アルコール濃度の測定が完了と判定されなかった場合を不正として報知するので、例えば、被測定者がアルコール濃度の測定動作を行った後に、被測定者がアルコール検知装置10の電源をオフとするような不正も検知できる。従って、本実施形態のアルコール検知装置10は、被測定者がアルコール濃度の測定動作を行った後の不正行為をより確実に検知できる。
【0062】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の測定記録部32は、アルコール濃度の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報としてフラグを記録する。
【0063】
図5は、第2実施形態の測定結果リスト40Bを示す模式図であり、測定結果リスト40Aの記録内容に加えて、処理実施情報としてフラグA,B,Cのオン(ON)又はオフ(OFF)が記録される。フラグAは、所定処理として通算測定回数のインクリメントが完了した場合にオンとされる。フラグBは、所定処理として被測定者による息の吹き込みが完了した場合にオンとされる。フラグCは、測定結果リスト40Bへのアルコール測定値の記録が完了した場合にオンとされる。
【0064】
図5の例では、不正があった通算測定回数348回目のアルコール検知において、フラグA,Bがオンとされたものの、フラグCがオフのままとされているので、被測定者による息の吹き込みが完了したものの、アルコール測定値の記録が完了する前に何らかの不正が行われたと判定される。このように本実施形態の測定結果リスト40Bによれば、完了しなかった処理は処理実施情報(フラグ)が記録されないので、アルコール検知装置10に対して不正行為が行われたタイミングを判断できる。
【0065】
図6は、本実施形態のアルコール検知処理の流れを示すフローチャートである。なお、図6に示されるアルコール検知処理は、アルコール検知装置10が備える操作部16に含まれる測定開始ボタンを被測定者が操作した場合に開始される。
【0066】
まず、ステップ200では、不正検知部30がフラグA,B,Cをリセットする。これにより、フラグA,B,Cは全てオフとなる。なお、ここでいうリセットされるフラグA,B,Cとは、測定結果リスト40Bに記録されたフラグA,B,Cではなく、フラグA,B,Cのオン・オフを記憶する記憶部26の所定領域である。
【0067】
次のステップ202では、不正検知部30が記憶部26から測定器IDを読み込む。
【0068】
次のステップ204では、不正検知部30が記憶部26に記憶されている測定結果リスト40Aから通算測定回数Dnを読み込む。
【0069】
次のステップ206では、読み込んだ通算測定回数Dnに対応するアルコール測定値Rnを不正検知部30が測定結果リスト40Bから読み込む。
【0070】
次のステップ208では、前回のアルコール測定値Rnがあるか否かを不正判定部34が判定し、肯定判定の場合はステップ212へ移行する一方、否定判定の場合はステップ210へ移行する。なお、ステップ208において肯定判定の場合は、測定記録部32が測定結果リスト40Bにおける通算測定回数Dnに対応する不正判定の欄に“正常”と記録する。
【0071】
ステップ210では、前回のアルコール検知において不正が行われたことを不正報知記録部36が報知すると共に、不正報知記録部36が測定結果リスト40Bにおける通算測定回数Dnに対応する不正判定の欄に“不正”と記録し、ステップ212へ移行する。
【0072】
ステップ212では、被測定者がマウスピース12を介してアルコール検知装置10に息の吹き掛けを開始する。息の吹き掛けの開始は、アルコール濃度測定部22によって検知される。
【0073】
次のステップ214では、不正検知部30が通算測定回数Dnのインクリメント(Dn=Dn+1)を行う。
【0074】
次のステップ216では、不正検知部30が記憶部26におけるフラグAをオンとすると共に、測定記録部32が通算測定回数Dn+1及びフラグAのオン状態を測定結果リスト40Bに新たに記録する。なお、このとき、通算測定回数Dn+1に対応させて時刻Tn+1、測定日及び測定者ID等を測定記録部32が測定結果リスト40Bに記録する。また、測定記録部32は、測定結果リスト40Bにおける通算測定回数Dn+1に対応するフラグBの欄とフラグCの欄にオフと記録する。
【0075】
次のステップ218では、被測定者がアルコール検知装置10に息の吹き掛けを終了する。息の吹き掛けの終了は、アルコール濃度測定部22によって検知される。
【0076】
次のステップ220では、不正検知部30が記憶部26におけるフラグBをオンとすると共に、測定記録部32が測定結果リスト40Bにおける通算測定回数Dn+1に対応するフラグBをオンと記録する。
【0077】
次のステップ222では、アルコール濃度測定部22がマウスピース12から吹き込まれた息のアルコール測定値Rn+1を算出する。
【0078】
次のステップ224では、不正検知部30が記憶部26におけるフラグCをオンとすると共に、測定記録部32が測定結果リスト40Bにおける通算測定回数Dn+1に対応するアルコール測定値Rn+1を記録し、フラグCをオンと記録する。
【0079】
次のステップ226では、画像表示制御部24がアルコール測定値Rn+1を表示部14に表示させ、本アルコール検知処理を終了する。なお、アルコール検知処理を終了すると共に、データ送受信部28が測定結果リスト40Bを所定の情報処理装置に送信してもよい。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のアルコール検知装置10は、アルコール濃度の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示すフラグをオフからオンへ切り替えて、測定結果リスト40Bに記録する。従って、測定結果リスト40Bを参照することで、アルコール検知装置10に対して不正行為が行われたタイミングを判断可能となる。
【0081】
なお、図6のアルコール検知処理は、ステップ214で通算測定回数Dnのインクリメントした後にフラグAをオンとするが、これに限らず、フラグAをオンとするタイミングは、アルコール検知の開始に相当するタイミングであればよく、例えば、ステップ212で息の吹き掛けを開始した後でもよい。
【0082】
また、フラグA,B,Cは、オン又はオフが切り替えられるだけでなく、例えば、オン又はオフとなった回数が記録される形態でもよい。この形態の場合、全てのフラグA,B,Cにおいてオン又はオフとなった回数が一致しない場合には、不正と判定される。
【0083】
また、本実施形態におけるアルコール検知装置10は、ステップ226の、画像表示制御部24がアルコール測定値Rn+1を表示部14に表示させるタイミングで、測定結果リスト40Bに基づいて不正の判定を行ってもよい。これにより、今回のアルコール検知に対する不正の有無を判定することができる。
【0084】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の測定記録部32は、アルコール検知装置10の電源ボタンをオフとする操作が行われた場合に、当該操作が実行されたことを示す電源操作情報を記録する。
【0085】
図7は、本実施形態の測定結果リスト40Cを示す模式図である。測定結果リスト40Cは、測定結果リスト40Bの記録内容に加えて、電源操作情報として電源フラグのオン(ON)又はオフ(OFF)が記録される。
【0086】
測定結果リスト40Cは、通算測定回数Dn+1が記録されると共に、電源フラグがオフと記録される。そして、アルコール検知装置10は、操作部16に含まれる電源ボタンがオフ操作された場合に、記憶部26における電源フラグの記憶領域をオフとする。その後、測定記録部32が測定結果リスト40Cの電源フラグをオンに記録した後に、アルコール検知装置10が電源をオフとする。従って、測定結果リスト40Cにおける電源フラグの欄は、電源ボタンがオフ操作されるまでオンのままとなる。
【0087】
ここで、アルコール検知装置10の電源をオフとする場合に想定される被測定者の行為としては、電源ボタンをオフ操作することや、アルコール検知装置10の電池を取り外すこと、アルコール検知装置10に電力を供給するACアダプタを抜くことが想定される。
【0088】
すなわち、アルコール検知に対して不正が行われかつ、電源フラグがオフとなった場合には、被測定者が電源ボタンをオフ操作することで不正が行われたと判断できる。一方、アルコール検知に対して不正が行われかつ、電源フラグがオンのままの場合には、被測定者が電源ボタンをオフ操作しない他の手法、例えば電池を取り外すことやACアダプタを抜くことで不正が行われたと判断できる。
【0089】
図7の例では、不正があった通算測定回数348回目のアルコール検知において、電源フラグがオフとなっている。このため、348回目のアルコール検知では、被測定者による息の吹き込みが完了した後であって、アルコール測定値の記録が完了する前に電源ボタンをオフ操作することによってアルコール検知を強制的に中断させる不正が行われたと判断できる。このように本実施形態の測定結果リスト40Cによれば、アルコール検知装置10の電源ボタンをオフとすることで、不正行為が行われたことを検知できる。
【0090】
なお、測定結果リスト40Cには電池残量を示す情報が付加されてもよい。電池残量が“0”となったことにより、アルコール検知装置10の電源がオフとなった場合には、電源フラグはオフのままとなる。しかしながら、測定結果リスト40Cに電池残量を示す情報が付加されることにより、電源フラグがオフのままであっても不正行為でアルコール検知が中断されたのではないと判断できる。一方、電池残量が十分であるにもかかわらず、アルコール検知の途中でアルコール検知装置10の電源がオフとなった場合には、不正が行われたとも判断できる。
【0091】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図8は、本実施形態のアルコール検知システム1の概略構成図である。アルコール検知システム1は、アルコール検知装置10が測定記録部32を備え、管理用の情報処理装置50が不正判定部34及び不正報知記録部36を備える。なお、図8の例では、アルコール検知装置10と情報処理装置50とは、USBケーブル52を用いて有線により通信により行うが、これに限られず、アルコール検知装置10と情報処理装置50とは無線によって通信が行われてもよい。
【0092】
本実施形態のアルコール検知装置10は、測定結果リスト40を情報処理装置50へ所定タイミングで送信し、情報処理装置50は、測定結果リスト40に基づいて不正判定を行い、不正があった場合に報知を行う。なお、アルコール検知装置10が測定結果リスト40を情報処理装置50へ送信するタイミングは、例えば、アルコール検知装置10の電源ボタンがオン操作されたタイミングであったり、電源ボタンがオフ操作されたタイミングである。
【0093】
なお、アルコール検知装置10では、測定結果リスト40に基づいた不正判定を行わないため、アルコール検知装置10から情報処理装置50に送信される測定結果リスト40には不正判定の欄はなく、情報処理装置50によって不正判定の欄が記録される。すなわち、情報処理装置50は、測定結果リスト40に基づいて不正判定を通算測定回数毎に行い、不正がない場合には情報処理装置50が不正判定の欄に“正常”と記録し、不正があった場合には情報処理装置50が不正判定の欄に“不正”と記録する。これにより、測定結果リスト40によって通算測定回数毎に不正の有無を確認できると共に、情報処理装置50は不正判定を行っていない通算測定回数を判定できる。
【0094】
図9は、本実施形態の情報処理装置50で実行される不正検知処理の流れを示すフローチャートである。なお、図9に示される不正検知処理は、情報処理装置50がアルコール検知装置10からの測定結果リスト40を受信する毎に、情報処理装置50が備える不正判定部34によって行われる。なお、情報処理装置50は、受信した測定結果リスト40を記録媒体に記憶する。
【0095】
まず、ステップ300では、不正判定部34が測定結果リスト40を読み込む。
【0096】
次のステップ302では、不正判定部34がアルコール測定値を参照することで不正判定を行い、不正がない場合(肯定判定の場合)はステップ306へ移行し、不正がある場合(否定判定の場合)はステップ304へ移行する。なお、不正判定部34は、不正判定の欄に何ら記録されていない通算測定回数を不正判定の対象とする。
【0097】
次のステップ304では、不正が行われたことを不正報知記録部36が報知し、ステップ306へ移行する。
【0098】
ステップ306では、情報処理装置50が測定結果リスト40の不正判定の欄をステップ302の判定結果に基づいて記録し、本不正検知処理を終了する。
【0099】
また、アルコール検知装置10は、測定記録部32が測定結果リスト40に対して新たな記録を行う毎に、測定結果リスト40を情報処理装置50へ送信してもよい。この場合、例えば、通算測定回数Dn+1が記録された測定結果リスト40が送信されたものの所定時間(例えば5分)の経過後に新たな測定結果リスト40が送信されない場合、情報処理装置50はアルコール検知装置10に対して不正が行われたと判定してもよい。この場合の不正は、アルコール検知装置10の電源をオフとする以外に、アルコール検知装置10と情報処理装置50との間の通信を遮断することが考えられる。これにより、情報処理装置50は、アルコール検知装置10に対する不正をリアルタイムで判定できる。
【0100】
また、図8においては、タブレット端末が情報処理装置50である例が表されているが、アルコール検知システム1の構成はこれに限らない。例えば、図示されていないサーバが情報処理装置50として構成されていてもよい。この場合、アルコール検知装置10は、直接又はタブレット端末等の中継機を介して、測定結果リスト40を情報処理装置50であるサーバに対して送信してもよい。
【0101】
また、サーバが情報処理装置50としてアルコール検知システム1が構成されている場合には、情報処理装置50であるサーバが採用している時刻情報を、アルコール検知装置10を用いて測定した時刻として用いてもよい。例えば、情報処理装置50であるサーバが測定結果リスト40を受信したときに、サーバが受信したときのサーバの時刻情報を用いて測定結果リスト40の時刻を記録又は更新してもよい。アルコール検知装置10を用いて測定した時刻として、情報処理装置50であるサーバが採用している時刻情報を用いるため、アルコール検知装置10又は中継機であるタブレット端末等の時刻情報が正確でない場合にも、アルコール検知装置10を用いて測定が行われた時刻を正確に管理できる。
【0102】
また、第4実施形態において、アルコール検知装置10とは異なる情報処理装置50が採用している機能を、アルコール検知装置10に対する不正の有無の判定に用いてもよい。例えば、情報処理装置50であるサーバが顔認証機能を採用している場合には、アルコール検知装置10を用いて測定している間の顔写真を中継機であるタブレット端末等で撮像し、撮像した顔写真を顔認証機能に適用し、アルコール検知装置10を用いて測定している被測定者を特定してもよい。このように、アルコール検知装置10とは異なる情報処理装置50が採用している機能をアルコール検知装置10に対する不正の有無の判定に用いることによって、アルコール検知装置10に対する不正の有無の判定のさらなる精度向上が期待できる。
【0103】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0104】
例えば、上記実施形態では被測定者の生体情報として呼気に含まれるアルコール濃度を検知する形態について説明したが、本実施形態はこれに限られず、例えば、被測定者の呼気から検知可能な生体情報であれば、他の生体情報であってもよい。また、生体情報は被測定者の呼気から検知されるものに限らず、例えば、血液や唾液、組織の一部等、被測定者(被験者)の検体から検知可能な生体情報であってもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、被測定者を航空機の乗務員とする形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。被測定者は、バス、タクシー、トラック、及びバイク等の事業用自動車や船舶、鉄道の乗務員であってもよい。また、被測定者は、航空機や車両の乗務員に限らず、病院、工場、店舗、オフィス等で勤務する就業者や経営者であってもよい。
【0106】
また、上記第1~第3実施形態では、被測定者がアルコール検知を行う場合に、前回のアルコール検知に対する不正の有無を判定する形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。アルコール検知装置10は、例えば、アルコール検知装置10の電源がオンとされたタイミングで測定結果リスト40を読み込み、不正判定の欄に何ら記録されていない通算測定回数の記録に対して不正判定を行ってもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、アルコール検知装置10が一つの測定結果リスト40を生成する形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、測定結果リスト40が測定者ID毎に生成されてもよい。すなわち、アルコール検知装置10は、測定者IDの数に応じた複数の測定結果リスト40を記憶してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、測定結果リスト40にアルコール測定値が含まれる形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、図10の測定結果リスト40Dに示されるように、アルコール測定値は含まれずに、日付、時刻、測定者ID、通算測定回数、フラグA,B,C,及び電源フラグ等を含んで構成されてもよい。すなわち、測定結果リスト40Dは、不正判定のみに用いることとなり、息に含まれるアルコール濃度という個人情報は不正判定に用いられないこととなる。
【0109】
また、上記実施形態では、被測定者によるアルコール濃度の測定動作の開始を、被測定者によるアルコール検知装置10への息の吹き掛けとする形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、アルコール検知装置10の電源をオンとしたタイミングをアルコール濃度の測定動作の開始としてもよいし、又、吹き掛けた息が所定の圧力や量となったタイミングをアルコール濃度の測定動作の開始としてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、測定結果リスト40に基づいて不正判定を行う形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、アルコール検知装置10におけるアルコール濃度の測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す処理実施情報(フラグ)を情報処理装置50が逐次受信し、処理実施情報の受信状態に基づいて不正判定を行う形態としてもよい。より具体的には、第2実施形態で示したフラグA,B,Cをアルコール検知装置10から情報処理装置50が受信する。そして、例えば、情報処理装置50がフラグAの受信したものの所定時間経過以内にフラグBを受信しない場合に、情報処理装置50はアルコール検知装置10に不正が行われたと判定する。また、情報処理装置50がフラグBの受信後であって、所定時間経過以内にフラグCを受信しない場合、情報処理装置50はアルコール検知装置10に不正が行われたと判定する。
【0111】
また、情報処理装置50によって不正の判定を行う形態では、アルコール検知装置10では測定結果リスト40を生成せず、測定開始から測定完了に至る間における所定処理の実施の有無を示す情報として、アルコール検知装置10で行われる各処理の結果やフラグに関する情報をアルコール検知装置10から情報処理装置50に送信することによって、情報処理装置50で測定結果リスト40を生成してもよい。この形態の場合、情報処理装置50は、測定結果リスト40に基づいて不正の判定を行ってもよい。
【0112】
また、アルコール検知装置10は、電源ボタンに対するオフ操作を二段階操作とし、ユーザによって一段階目の操作が行われた場合に、前回の測定値やフラグに基づいて不正の判定を行ってもよい。なお、オフ操作の二段階操作とは、例えば、一段階目で電源ボタンをオフ操作すると、表示部14に電源をオフとするか否かの確認画面が表示され、二段階目の操作として確認画面においてユーザが電源オフを選択すると、アルコール検知装置10の電源がオフとなる操作である。
【0113】
また、アルコール検知装置10から情報処理装置50へ各処理の結果やフラグに関する情報を送信する場合、アルコール検知装置10と情報処理装置50との間における通信状況が記憶されてもよい。この通信状況とは、例えばWifi等の無線通信に用いられる電波の状況である。これにより、アルコール検知装置10から情報処理装置50へ各種情報の送信が行われなくなった場合には、その原因が電源のオフであるか、通信状況の悪化(以下「通信エラー」という。)であるかの判定が可能となる。
【0114】
また、アルコール検知装置10と情報処理装置50とが各々測定結果リスト40を記憶してもよい。そして、アルコール検知装置10が記憶している測定結果リスト40と情報処理装置50が記憶している測定結果リスト40とを逐次比較し、不一致であれば通信エラーが生じていると判定されてもよい。すなわち、通信エラーが生じていない場合には、不正の有無にかかわらずアルコール検知装置10が記憶している測定結果リスト40と情報処理装置50が記憶している測定結果リスト40とが一致する。一方で、通信エラーが生じた場合には、アルコール検知装置10から情報処理装置50へ情報が送信されなくなるため、各々が記憶している測定結果リスト40に不一致が生じることとなる。これにより、アルコール検知装置10と情報処理装置50とにおける通信エラーの有無が判定できる。なお、この判定は、一例として、情報処理装置50で行われる。
【符号の説明】
【0115】
1 アルコール検知システム(不正検知システム)
10 アルコール検知装置(生体情報測定装置)
30 不正検知部(不正検知装置)
32 測定記録部(測定記録手段)
34 不正判定部(判定手段)
36 不正報知記録部(不正報知手段、不正記録手段)
50 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11