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  • 特許-風力発電用の風車構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】風力発電用の風車構造
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/04 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065378
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161963
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】521547611
【氏名又は名称】サンパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 尊之
(72)【発明者】
【氏名】外丸 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】杉原 健太
(72)【発明者】
【氏名】内山 久和
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101756(JP,A)
【文献】特開2001-193629(JP,A)
【文献】特開2008-127994(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145449(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0028722(US,A1)
【文献】特開2011-017293(JP,A)
【文献】特開2003-193955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸垂直翼型の風車と、
集風装置とから構成され、
前記集風装置は、前記風車に対して風の上流に、かつ、風に対向するように配置される平板状の風向板を備え、
前記風向板は、枠体と、その枠体に嵌め込まれる板本体とから構成されており、左面と、右面と、上面と、それらに囲まれた窓とを有しており、
前記左面と、前記右面と、前記上面と、前記窓とが同一平面に設けられており、
前記風向板は、前記風車の軸心周りに回転可能である、
風力発電用の風車構造。
【請求項2】
前記風向板は、前記同一平面に設けられた下面を有し、前記窓は左右面および上下面によって囲まれている、
請求項1記載の風車構造。
【請求項3】
前記左面および前記右面の幅が、それぞれ前記垂直軸垂直翼型の風車の羽根車の幅Dに対して0.5倍以上である、
請求項1または2記載の風車構造。
【請求項4】
前記風車は、フレームと、そのフレームに支持される羽根車とを備えており、
前記風向板は、前記フレームに固定されている、
請求項1から3のいずれかに記載の風車構造。
【請求項5】
前記風向板は、前記フレームに回転支持されている、
請求項4記載の風車構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電用の風車構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や安全性の問題から風力発電への関心が高まっている。このような風力発電用の風車として、垂直軸垂直翼型の風車が知られている。例えば、特許文献1には、垂直軸垂直翼型の風車の羽根支持構造が開示されている。
この垂直軸垂直翼型の風車は、風向きに応じて風車の方向を制御する必要がないため、風向きに関係なく回転させることができる。また、重さのある発電機等を地上近くに設けても回転エネルギーの伝達機構を簡単な構造にできるという利点を有している。一方、垂直軸垂直翼型の風車は、水平軸型の風車に比べて回転を始動させるのに大きなエネルギーを必要とするという課題がある。
【0003】
そこで垂直軸垂直翼型の風車へ風を効率よく集める集風機構の研究が進められている。
特許文献2には、垂直軸型風車の上側に設けられた上側集風板と、垂直軸型風車の下側に設けられた下側集風板と、垂直軸型風車の外周に設けられた外周側集風板とを備えている集風装置が開示されている。上側集風板および下側集風板は、その間隙が風車の外側から内側に向けて縮小するように上下に傾斜させている。また外周側集風板は、風車から等間隔に放射状に設けられている。つまり、隣り合う外周側集風板の間隙が風車の外側から内側に向けて縮小するように配置されている。このように特許文献1には、光レンズによって光が収束するように、インレットで風を集め、アウトレットで風を拡散する風レンズ型の集風機構が90度間隔で放射状に設けられた集風装置が開示されている。
非特許文献1には、鉛直方向に延びる平板形状の付加物を風車の上流側に設置したとき、いわゆる風レンズ型の集風装置に比べて、大きな出力を得られることができたとの報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2003/067079
【文献】特開2017-15094号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「周辺付加物による垂直軸型風車の発電性能向上に関する研究」/渡邉 康一、九州大学学術情報リポジトリ、平成29年1月(http://doi.org/10.15017/1807033)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1は、平面視における風車への風の流入、流出を検討しているものであり、三次元的な検討はない。
本発明は、このような事実に鑑みて、風を受けたとき効率良く回転することができる風力発電用の風車構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の風力発電用の風車構造は、垂直軸垂直翼型の風車と、集風装置とから構成され、前記集風装置は、前記風車に対して風の上流に、かつ、風に対向するように配置される平板状の風向板を備え、前記風向板は、左面と、右面と、上面と、それらに囲まれた窓とを有していることを特徴としている。
ここで「風に対向するように配置」とは、受ける風のベクトルに対して実質的に垂直になることをいう。
【0008】
本発明の風力発電用の風車構造は、風車に対して風の上流側に、窓を備えた風向板を備えているため、風向板から内側の窓に向けて流れ込む風量を増加することができる。そのため、効率よく風車を回転させることができる。
【0009】
本発明の風力発電用の風車構造であって、前記風向板は、下面を有し、前記窓は左右面および上下面によって囲まれているものが好ましい。窓の四方を風向板によって閉じることにより、一層窓に流れ込む風量を増加することができる。
本発明の風力発電用の風車構造であって、前記左右面の幅が、それぞれ前記羽根車の幅Dに対して0.5倍以上であるものが好ましい。
本発明の風力発電用の風車構造であって、前記風向板が、前記風車の軸心周りに回転可能であるものが好ましい。
本発明の風力発電用の風車構造であって、前記風車は、フレームと、そのフレームに支持される羽根車とを備えており、前記風向板は前記フレームに固定されているものが好ましい。特に、前記風向板は、前記フレームに回転支持されているものが好ましい。その場合、前記フレームが、複数本の柱と、その複数本の柱を円周方向等間隔に固定する環状の連結部材とからなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風車構造は、風車の軸に対して垂直な風を受けたときの回転効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1a、b、cは、それぞれ本発明の風力発電用の風車構造の実施形態を示す正面図、側面図、平面図である。
図2図2a、bはぞれぞれ風車構造の風車を示す平面図、側面図であり、図2c、d、eはそれぞれ風車のフレームを示す正面図、平面図、A-A線断面図であり、図2f、g、hはそれぞれ風車の羽根車を示す平面図、側面図、回転面の概略図である。
図3図3a、b、cはそれぞれ風車構造の集風装置の正面図、側面図、平面図であり、図3dは集風装置の回転を示す概略図である。
図4図4a~図4eは、それぞれ他の実施形態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1a、b、cの風車構造1は、垂直軸垂直翼型の風車100と、集風装置200とを有し、風車100はフレーム10に支持される羽根車20を備え、集風装置200は風車100に対して風の上流に配置される窓215を有する風向板210を備えている。この風車構造1を発電機と連結することにより風力発電装置として使用できる。
【0013】
風車100は、図2a、bに示すように、フレーム10と、そのフレームに回転自在に取り付けられる羽根車20とを有する。
【0014】
フレーム10は、図2c、d、eに示すように、上下方向に延びる3本の柱11と、それらの柱を円周方向等間隔に連結する2つの環状の連結部材12とを備えている。
連結部材12は、ボス13と、そのボス13から放射状に延びる3本のスポーク14と、それらのスポーク14の端部をつなぐリング15とを備えている。ボス13には、羽根車20を回転自在に支持する軸受け13aが設けられている。この連結部材12は、軸受け13aが相対するように柱11の上端および中部に配置されている。つまり、羽根車20は、上方が解放されつつ、2つの連結部材12の間に収容される。また上側の連結部材12のボス13の上面には、後述する集風装置200を回転自在に支持する支軸50が設けられている。
【0015】
羽根車20は、図2f、g、hに示すように、上下に延びる回転軸21と、その回転軸21から放射状に延びる支持アーム22と、その支持アームの先端に固定される縦ブレード23とを備えている。回転軸21、支持アーム22、縦ブレード23は一体化されている。回転軸21は、フレーム10の軸受け13aに支持させることによってフレーム10に回転自在に取付けられる。この回転軸21の回転力を発電機(図示せず)に伝えることにより、風力発電装置となる。
支持アーム22は、回転軸21の上部および下部から3本ずつ放射状に延びている。しかし、その本数は特に限定されるものではない。
縦ブレード23は、上下の支持アーム22によって支持されており、回転軸21と平行に3本設けられている。この縦ブレード23の数は、特に限定されるものではないが、例えば、2個から6個が好ましく、特に、2個または3個が好ましい。縦ブレードの形状は、風車が風車の軸に対して垂直な風を受けたときに、円周方向等間隔に設けられた複数の縦ブレードに生ずる力の合力が上から見たときに時計方向(図2hのM方向)または反時計方向のモーメントを生じるようなものであれば、その形状は特に限定されるものではない。
本明細書において、羽根車の幅Dは、この縦ブレードの回転面の直径をいい、羽根車の高さHは、縦ブレードの高さをいう。
【0016】
集風装置200は、図3a、b、cに示すように、平板状の風向板210と、その風向板210をフレームに対して回転自在に支持する支持部材220とを有する。そして、風車100の上方を開放している。
【0017】
風向板210は、風車に対して風の上流側であって、かつ、風に対向するように配置される平板状のものである。詳しくは、風向板210は、長方形状の板からなり、左面211と、右面212と、上面213と、下面214と、それらに囲まれた窓215とを有している(図3a参照)。そして、窓215の幅中心は、前記風向板210の幅中心と一致し、前方視(風の上流側から見た視点)において、風車100の軸芯上にある(図1参照)。
窓215の幅Xは、羽根車の幅Dに対して、D<X<1.2D、好ましくは、D<X<1.1Dであり、特に好ましくはX≒D(実質的に同じ)である。
窓205の高さYは、羽根車の高さHに対して、H<Y<1.2H、好ましくは、H<Y<1.1Hであり、特に好ましくはY≒H(実質的に同じ)である。
【0018】
風向板210の左右面211、212は、同じ幅X1を有している。その幅X1の下限は、0.5D以上、好ましくは、0.8D以上、特に好ましくはD以上である。これにより、効率よく風を窓215に誘導し、かつ、左右面に衝突して左面または右面の外側から流れ込む乱れた風が、風車へと流れていくことを防止する。なお、幅X1が2Dより大きい場合、風車に対して集風装置が大きくなりすぎるため、好ましくない。
風向板210の上面213の高さ位置は、上面213の下端と羽根車20の上端とが実質的に同じあるいは上面213の下端が若干高い。上面213の高さ幅Y1の下限は、0.5D以上、好ましくは、0.8D以上、特に好ましくはD以上である。これにより、上面に衝突した風を効率よく窓215に誘導する。なお、幅Y1が2Dより大きい場合、風車に対して集風装置が大きくなりすぎるため、好ましくない。
風向板210の下面214の高さ位置は、下面214の上端と羽根車20の下端とが実質的に同じあるいは下面214の上端が若干低い。下面214の高さ幅Y2の下限は、特に限定されるものではないが、0.5D以上、好ましくは、0.8D以上、特に好ましくはD以上である。そして、幅Y2の上限は、2D以下である。
なお、風向板210の上面213および下面214の幅は、Dと同じが好ましい。
【0019】
風向板210は、枠体216と、その枠体内に嵌め込まれる板本体217とから構成されている。枠体216は、外枠216aと内枠216bとを有する。外枠216aの下端には車輪218が設けられている。しかし、風向板210の構造は特に限定されるものではなく、一体物であってもよく、複数の枠体を一体化したものであってもよい。なお、車輪218の回転方向を規制するべく、図3cの想像線で示すように、円状のレール250を設けてもよい。
【0020】
支持部材220は、図3dに示すように、フレームの支軸50に対して回転する回転部221と、その回転部221から風向板210の枠体216に延びる連結アーム222とを有する。この実施形態では、連結アーム222は、左右の外枠216aおよび左右の内枠216bの計4本設けられている。
この支持部材220によって、風向板210の幅の中心Oは、フレームの連結部材12の外周を回転する。つまり、風向板210を回転させることにより、風向板210を常に風車100より風の上流側に位置させることができる。距離Zは風向板210の回転に邪魔にならなければ、近いほどよい(図3c参照)。一方、距離Zが離れすぎていると、風向板210の窓の効果が薄れる。例えば、風向板210とフレームとの距離Zは、0≦Z<0.5D、0≦Z<0.2D、0≦Z<0.1D、実質的にZ=0とするのが好ましい。
なお、この支持部材220の構造は、風向板210をフレーム10に対して回転自在に支持するものであれば、特に限定されるものではない。
【0021】
このように構成された風車構造1は、風の向きに対して風の上流側に窓を有した鉛直状の風向板210を有しているため、窓を介して効率よく風を風車に導くことができる。
また風車構造1は、風向板210を風車100の周りに回転させることができるため、風の向きに応じて風向板が風車に対して風の上流側となるように動かすことができる。
【0022】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
風車は、垂直軸垂直翼型のものであれば、その構造は特に限定されるものではない。例えば、フレームを備えず、固定された回転軸と、その周りに回転する羽根車とからのみ構成されていてもよい。
風車のフレームについて、上記の実施形態のフレームは、3本の柱11と、2個の連結部材12とから構成されているが、羽根車20を回転自在に支持するものであれば、その構造は特に限定されるものではない。なお、羽根車20の上方が解放されているものが好ましい。一方、複数本の柱と、それらの柱を円周方向等間隔に連結するものは、強度が保てて好ましい。例えば、図4aに示すように、3本の柱11と、1個の連結部材12と、下端に軸受け13aとを有するフレーム10や、図4bに示すように、柱11と連結する補強リング70を風車の高さに応じて1個または複数個設けてもよい。さらに、図4cに示すように、複数個の羽根車20を上下に収容できるようにしてもよい。その場合、上下端の連結部材以外の連結部材12aは、上下面に軸受けを設けるのが好ましい。また上述の実施形態では、複数の柱を円周方向等間隔に連結する連結部材を紹介したが、複数の柱を連結するものであれば、特に限定されない。しかし、連結部材は環状であるのが好ましい。また例えば、環状の連結部材12のリング15としては、円形でなくても、多角形であってもよい。しかし、円形や正多角形が回転する羽根車を安定して支持できる。
【0023】
風車の羽根車について、回転軸と縦ブレードとの間を支持アーム22で連結していたが、支持アーム22の代わりに、羽根車20が回転したときに上向きの揚力が働くような横ブレードを用いてもよい。また羽根車20は、回転軸21を回転させているが、フレームに固定された軸の周りを回転する構造としてもよい。
【0024】
集風装置の風向板について、上記実施形態では、風向板210は、窓215の下方に下面214備えていたが、図4dに示すように、なくてもよい。さらに、図4cのように上下に羽根車20が設けられた多段式の風車に対しては、図4eに示すように、風向板210も多段式にするのが好ましい。しかし、一番上の風車のみに風向板の上面を設け、下側の風車に対しては左右面だけとなるようにしてもよい。
集風装置の回転機構について、上記実施形態では、風向板がフレームに対して回転自在に支持されているが、風車の軸心周りに回転可能であれば、その構造は特に限定されない。例えば、風車の軸芯のみに回転自在に支持されてもよい。また集風装置を独立して回転させてもよい。さらに、フレームと集風装置とを一体化させて、フレームと一体に回転するようにしてもよい。
【0025】
上述したように、風車構造は、発電機に取り付けることにより、風力発電装置となる。またここでは図示していないが、風の向きに応じて風向板210の位置を計算する計算装置と、その計算に基づいて回転部221を回転させる駆動装置とを設けることにより、一層、効率よく風力発電装置として作動させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 風車構造
100 風車
10 フレーム
11 柱
12 連結部材
12a 連結部材
13 ボス
13a 軸受け
14 スポーク
15 リング
20 羽根車
21 回転軸
22 支持アーム
23 縦ブレード
50 支軸
70 補強リング
200 集風装置
205 窓
210 風向板
211 左面
212 右面
213 上面
214 下面
215 窓
216 枠体
216a外枠
216b内枠
217 板本体
218 車輪
220 支持部材
221 回転部
222 連結アーム
250 レール
図1
図2
図3
図4