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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】炊飯用補助容器及び炊飯方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/16 20060101AFI20241122BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A47J36/16 Z
A47J27/00 103Z
A47J27/00 103E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021088446
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181476
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】511292817
【氏名又は名称】株式会社アメイズプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】横江 俊一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紳之介
(72)【発明者】
【氏名】兼松 晟宏
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-180511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0121124(US,A1)
【文献】特開2020-199211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00、36/16~36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯用容器に米及び水が入れられた状態で加熱することにより炊飯する場合に、前記炊飯用容器に収容して使用され、炊飯時に米から水に溶け出た糖質の一部を回収する、炊飯用補助容器であって、
上方に開口し、有底状をなし、炊飯時に沸騰した湯を貯留する貯留部と、
前記貯留部より上方に設けられ、上方に向けて延びる取っ手部と、
当該炊飯用補助容器の下端部に設けられ、米の上に載置される載置部と、
を備える、炊飯用補助容器。
【請求項2】
前記炊飯用補助容器は、本体部を備え、
前記本体部は、前記載置部を構成する底部と、前記底部の外縁部から上方へ延びる周壁部と、を有し、
前記周壁部の一部が上方に延びて前記取っ手部が形成されており、
前記周壁部のうち周方向にみて前記取っ手部が設けられていない部分に、前記周壁部の高さ位置が最も低くなる最低位部が形成されており、
前記貯留部の上端位置は、前記最低位部の上端位置である、請求項1に記載の炊飯用補助容器。
【請求項3】
前記取っ手部は、前記貯留部より上方において、前記周壁部を内外に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記炊飯用容器内において沸騰して上方へ移動してきた湯を前記炊飯用補助容器の外周側から前記貯留部へ誘導可能である、請求項2に記載の炊飯用補助容器。
【請求項4】
前記貫通孔の開口形状は横長形状である、請求項3に記載の炊飯用補助容器。
【請求項5】
前記周壁部は、前記周壁部の周方向にみて前記貫通孔を左右に仕切る仕切部を備えており、
前記仕切部は、前記貫通孔の上下にそれぞれ接続されている、請求項3又は4に記載の炊飯用補助容器。
【請求項6】
前記貫通孔の下端は、前記最低位部の上端と同じ高さ位置かそれよりも高い位置になるように形成されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の炊飯用補助容器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の炊飯用補助容器を用いた炊飯方法であって、
前記炊飯用容器に米と水と前記炊飯用補助容器とを収容させ、前記水の量は、炊飯対象の米の量に対して前記炊飯用補助容器を使用しない場合に必要な水の量よりも、前記貯留部の容積分を加味して増量した水の量とされ、前記炊飯用補助容器は、前記水の一部が前記貯留部に入れられた状態で、前記載置部が前記米の上に載置された状態とする第1工程と、
前記第1工程の後に実行され、前記炊飯用容器を加熱して、炊飯を実行する第2工程と、
前記第2工程の後に実行され、前記炊飯の終了後に、ユーザが前記取っ手部を持って、前記炊飯用容器から前記炊飯用補助容器を取り出すことで、前記貯留部に貯留された湯を回収する第3工程と、
を備える、炊飯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯用容器内に設置されて使用される炊飯用補助容器及びその補助容器を用いた炊飯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炊飯器や土鍋などの炊飯用容器を用いて炊飯する場合に、米から水に溶け出した糖質の一部を回収することができる炊飯用補助容器及び炊飯方法が知られている(特許文献1)。炊飯用補助容器は、炊飯時に沸騰した湯を貯留する貯留部と、貯留部より上方において外周側へと突出して設けられ、炊飯用容器の上端に載置される突出部とを備えている。このため、突出部を炊飯用容器の上端に載置すると、貯留部が炊飯用容器内に配置される。
【0003】
炊飯用補助容器を炊飯用容器の上端にセットした状態で炊飯を行うと、沸騰した湯が炊飯用容器の上部へ吹き出し、貯留部に誘導される。貯留部に貯留された湯には、米から溶け出た糖質が含まれているため、ご飯の糖質を一部カットすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-199211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の炊飯用補助容器では、炊飯用容器の上端の形状や寸法によっては、突出部を炊飯用容器の上端に載置することができず、糖質を含んだ湯をうまく回収できなくなるおそれがある。このため、汎用性の面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、汎用性に優れる炊飯用補助容器及び炊飯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための炊飯用補助容器は、
炊飯用容器に米及び水が入れられた状態で加熱することにより炊飯する場合に、前記炊飯用容器に収容して使用され、炊飯時に米から水に溶け出た糖質の一部を回収する、炊飯用補助容器であって、
上方に開口し、有底状をなし、炊飯時に沸騰した湯を貯留する貯留部と、
前記貯留部より上方に設けられ、上方に向けて延びる取っ手部と、
当該炊飯用補助容器の下端部に設けられ、米の上に載置される載置部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記炊飯用補助容器を用いた炊飯方法は、
前記炊飯用容器に米と水と前記炊飯用補助容器とを収容させ、前記水の量は、炊飯対象の米の量に対して前記炊飯用補助容器を使用しない場合に必要な水の量よりも、前記貯留部の容積分を加味して増量した水の量とされ、前記炊飯用補助容器は、前記水の一部が前記貯留部に入れられた状態で、前記載置部が前記米の上に載置された状態とする第1工程と、
前記第1工程の後に実行され、前記炊飯用容器を加熱して、炊飯を実行する第2工程と、
前記第2工程の後に実行され、前記炊飯の終了後に、ユーザが前記取っ手部を持って、前記炊飯用容器から前記炊飯用補助容器を取り出すことで、前記貯留部に貯留された湯を回収する第3工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯留部は有底状をなし、その下端部に米の上に載置される載置部を有している。これにより、炊飯用容器の内部において、炊飯用補助容器を米の上面に載置した状態で炊飯を行うことができる。このため、炊飯用補助容器の一部を炊飯用容器の上端に載置して炊飯用補助容器の設置を行う構成と比較して、炊飯用容器の上端の形状や寸法による制約を受けにくい。したがって、汎用性に優れる。炊飯中においては、沸騰した湯が炊飯用容器の上部へ吹き出し、その湯が炊飯用補助容器の上方から貯留部に流入し、貯留部に一定量の湯が貯留される。これにより、米由来の糖質を含んだ湯を回収することができる。また、取っ手部は上方へ向けて延びていることから、炊飯用容器から炊飯用補助容器を取り出す際、炊飯用容器の内周面とユーザの手とが干渉しにくくなる。このように、簡単に糖質の一部を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本実施の形態に係る炊飯用補助容器の斜視図、(b)は平面図。
図2】(a)は炊飯用補助容器の側面図、(b)は図1(a)のA-A線断面図。
図3】(a)は炊飯用補助容器の側面図、(b)は図1(a)のB-B線断面図、(c)は(b)のX部拡大図。
図4】炊飯工程を示す図。
図5】炊飯工程を示す図。
図6】炊飯用補助容器の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、炊飯時に使用される炊飯用補助容器の一実施の形態について図1図3を参照しながら説明する。
【0012】
図1(a)に示すように、炊飯用補助容器10は、上方に開口する容器状の本体部11を備える。本体部11は、円板状の底部12と、底部12の周縁部の全周に亘って設けられ、底部12の周縁部から斜め上方に向けて延びる周壁部13とを有している。これにより、炊飯用補助容器10は、本体部11の内側に、水分を貯留することができる。なお、本体部11(底部12及び周壁部13)は、耐熱性を有するシリコン樹脂によって一体形成されている。つまり、本体部11は、軟質材料によって形成され、変形可能となっている。
【0013】
周壁部13は、その上面部15が、全周に亘って周壁部13の外周面側から内周面側に向けてわずかに下方に傾斜している(図2(b)及び図3(b)参照)。このため、上面部15の外周端の部分が、周壁部13の上端部16となっている。
【0014】
周壁部13は、上下方向寸法が相対的に大きい第1壁部17と、上下方向寸法が相対的に小さい第2壁部21とを有する。第1壁部17及び第2壁部21は、それぞれ2つずつ設けられている。詳しくは、一対の第1壁部17が本体部11の径方向に対峙して設けられ、各第1壁部17の間が第2壁部21となっている(図1(b)参照)。なお、第1壁部17と第2壁部21とは一体となって周壁部13を構成するものであるが、説明の都合上、第1壁部17と第2壁部21とに分けて説明する。
【0015】
第1壁部17の上端部18は、側面視において、左右対称で上方に凸の山型の円弧状をなす(図2(a)参照)。詳しくは、第1壁部17は、左右方向に見た中央部が上方に盛り上がっており、その中央は本体部11の上端部16において最も上側に位置する頂部18aとなっている。換言すると、炊飯用補助容器10の上下方向寸法の最大値は、炊飯用補助容器10の下端部24から頂部18aまでの上下方向寸法L1となっている。そして、炊飯用補助容器10の上端部16の高さ位置は、頂部18aから離れるにつれて低くなっていく。
【0016】
第2壁部21の上端部22は、側面視において、左右対称で下方に凹の谷型の円弧状をなす(図3(a)参照)。詳しくは、第2壁部21は、左右方向に見た中央部が下方に凹んでおり、その中央は本体部11の上端部16において最も下側に位置する谷底部22aとなっている。換言すると、炊飯用補助容器10の上下方向寸法の最小値は、炊飯用補助容器10の下端部24から谷底部22aまでの上下方向寸法L2となっている。そして、炊飯用補助容器10の上端部16の高さ位置は、谷底部22aから離れるにつれて高くなっていく。
【0017】
そして、第1壁部17と第2壁部21との境界位置においては、第1壁部17の上下方向寸法と、第2壁部21の上下方向寸法とが等しくなっている。これにより、炊飯用補助容器10を全体として見ると、周壁部13の上端部16の高さ位置は、一方の頂部18aから各谷底部22aに近づくにつれて徐々に小さくなっていき、各谷底部22aから他方の頂部18aに近づくにつれて徐々に大きくなっていく。このため、側面視において、炊飯用補助容器10の上端部16の外形線は、山形と谷形とが交互に連続的に配置された曲線状をなしている。また、平面視において、炊飯用補助容器10は、略楕円形状をなし、各頂部18aの張り出し寸法(外径寸法D1)が、各谷底部22aの張り出し寸法(外形寸法D2)よりも大きくなっている(図1(b)参照)。
【0018】
炊飯用補助容器10は、水分を貯留する貯留部25を備えている。本体部11のうち谷底部22a以下の領域が、貯留部25に相当する。すなわち、貯留部25の上端部27の高さ位置は、谷底部22aの高さ位置と等しくなっている。貯留部25の内側には、谷底部22aから底部12の表面までの深さD3を有する貯留空間26が形成されている。貯留空間26が、貯留部25内において、水分を貯留することができる有効容積となっている(図2(b)及び図3(b)参照)。
【0019】
炊飯用補助容器10は、貯留部25の上方に一対の取っ手部31を備えている。本実施形態では、第1壁部17の一部が取っ手部31に相当している。詳しくは、第1壁部17のうち貯留部25の上端部27よりも上方の領域が、取っ手部31となっている。すなわち、各取っ手部31は、貯留部25の上端部27から斜め上方に向けて延びており、本体部11の径方向に対峙するようにして設けられている。なお、各取っ手部31の構成は互いに同一であるため、以下では、各取っ手部31のうち1の取っ手部31について説明する。
【0020】
取っ手部31は、取っ手部31(第1壁部17)を厚み方向に貫通する貫通孔33を有している(図2(a)参照)。貫通孔33は、左右対称で横長の、上方に凸となる略二等辺三角形状の開口とされている。このため、貫通孔33の下端部34は水平に延びていることになる。そして、貫通孔33の下端部34は、貯留部25の上端部27よりも上方(すなわち、周壁部13の谷底部22aよりも上方)に位置している。換言すると、炊飯用補助容器10の下端部24から貫通孔33の下端部34までの上下方向寸法L3は、上下方向寸法L2よりも大きくなっている。
【0021】
貫通孔33は、貫通孔33の左右方向に見た中央部に仕切部36を有している。仕切部36は、貫通孔33の上面及び下面を繋いで上下に延びており、貫通孔33を左右に仕切るように設けられている。これにより、貫通孔33は、2つの開口部33a,33bから構成された状態となっている。
【0022】
2つの開口部33a,33bは、仕切部36を挟んで左右対称に形成されており、それぞれ横長の略直角三角形状に開口している。各開口部33a,33bは、指を入れることが可能な大きさとなっている。また、各開口部33a,33bは、周壁部13の内周面側の角部に対して面取りが施されている(図3(c)参照)。
【0023】
以上より、炊飯用補助容器10は、全体として有底状をなし、その下端部24(底部12の下面部)が、平面状に形成されている。これにより、炊飯用補助容器10を、本体部11の開口を上方に向けた状態で、対象物上にバランスよく載置することができる。また、炊飯用補助容器10は、全体として、下部よりも上部が広がる(下方に向けて狭くなる)形状となっている。
【0024】
次に、炊飯用補助容器10を用いた炊飯方法について図4及び図5を参照しながら説明する。本実施形態では、炊飯器具として炊飯器41を使用する場合を例にとって説明する。なお、炊飯器41は、炊飯用容器としての内釜41aと、蓋41bとを有する電子ジャーである。
【0025】
炊飯に際しては、まず、図4(a)に示すように、内釜41a内に米51と水52と炊飯用補助容器10とを収容する。この際、水52の量は、炊飯用補助容器10を使用しないで炊飯する場合よりも増量されている。詳しくは、水52の量は、米51の量に対して使用する通常量の水52aに、貯留部25の容積分の水52bを加えた水量とされている。炊飯用補助容器10は、貯留部25を水52の一部で満たした状態で、開口を上方に向けて、米51の上に載置する(第1工程)。この場合、本体部11の重さと貯留部25に満たされた水52bの重みとによって、炊飯用補助容器10は水52aに対しては沈められた状態となり、底部12が米51に当接した状態で安定的に位置決めされる。つまり、炊飯用補助容器10は、その下端部24(底部12の下面部)が、米の上に載置される載置部としての役割を有している。
【0026】
また、炊飯用補助容器10の上端部16における最大の外径寸法D1は、内釜41aの内径寸法よりも小さくなっている。これにより、炊飯用補助容器10と、内釜41aの内周面との間に空間が確保されている。
【0027】
なお、内釜41a内に水52及び炊飯用補助容器10を入れる際の手順については、特に限定されない。例えば、内釜41a内に水52を全量注いでから、貯留部25が空の状態の炊飯用補助容器10を収容し、その後、炊飯用補助容器10を水52中に沈めるようにして、水52の一部を貯留部25に導入するようにしてもよい。他にも、内釜41a内に米51に対して使用する通常量の水52aだけを収容してから、炊飯用補助容器10を収容するようにしてもよい。この場合、炊飯用補助容器10を内釜41aに収容してから、貯留部25に増量分の水52bを注ぐようにしてもよいし、貯留部25に増量分の水52bを入れてから、炊飯用補助容器10を内釜41aに収容するようにしてもよい。
【0028】
続いて、図4(b)に示すように、炊飯器41の蓋41bを閉状態とするとともに、炊飯器41を起動する。このまま所定時間加熱して、米51を炊き上げる(第2工程)。炊き上げの開始からある程度時間が経過すると、沸騰した湯53(米51から溶け出した糖質を含む湯)が上昇し、炊飯用補助容器10の上方に向けて移動する。
【0029】
上述のとおり、炊飯用補助容器10は、第2壁部21において、上下方向寸法が相対的に小さくなっている。これにより、沸騰した湯53は、第2壁部21を乗り越えて、貯留部25に流入することができる。また、第1壁部17の貯留部25よりも上方の部分(すなわち、取っ手部31)には、貫通孔33が形成されている。これにより、沸騰した湯53は、当該貫通孔33を通じて貯留部25に流入することもできる。つまり、沸騰した湯53は、炊飯用補助容器10の四方から貯留部25に対して流入することができる。
【0030】
本実施の形態では、貯留部25を水52bで満たして炊飯を開始しているため、貯留部25に沸騰した湯53が流入すると、流入した湯54の一部は、第2壁部21を乗り越えたり、貫通孔33を通過したりして、炊飯用補助容器10の外部に流出することになる。この際、湯54のうち貯留部25の外部に流出していく部分は上澄み部分であって、糖質を多く含んだ部分は貯留部25の下部に蓄積する。つまり、炊飯用補助容器10は、貯留部25の上方において、炊飯用補助容器10の内外での湯の交換を行いながら、貯留部25に糖質を回収していくようになっている。
【0031】
米51が炊き上がった後は、図5(a)に示すように、炊飯用補助容器10の一対の取っ手部31を持って、貯留部25に貯留された湯54がこぼれないようにしつつ、炊飯器41から炊飯用補助容器10を取り出す(第3工程)。
【0032】
なお、炊飯用補助容器10で糖質を含んだ湯54を回収した後は、貯留部25内に貯留された湯54を廃棄することになる。例えば、第3工程の後で貯留部25内の湯54を廃棄する場合には、一対の取っ手部31を持って炊飯用補助容器10を持ち上げるとともに、谷底部22aを乗り越えさせるようにして湯54を捨てるとよい。この際、炊飯用補助容器10は軟質素材で形成されているため、一対の取っ手部31を持って炊飯用補助容器10を持ち上げた際に、取っ手部31同士を近づけるようにして炊飯用補助容器10を変形させることができる(図5(b)参照)。これにより、炊飯用補助容器10は、第2壁部21に湯54の流路が形成され、当該流路が各第1壁部17によって覆われた状態となる。このため、よりスムーズ且つ安全に貯留部25内の湯54を廃棄することができる。
【0033】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏することができる。
【0034】
・炊飯用補助容器10は、その下端部24に円板状の底部12を備えているため、底部12を米51の上に載置することにより、炊飯用補助容器10を炊飯器41の内釜41a内に配置することができる。これにより、炊飯用補助容器の一部を炊飯用容器の上端に載置して炊飯用補助容器の設置を行う構成と比較して、炊飯用容器の上端部の形状や寸法による制約を受けにくい。したがって、汎用性に優れる。
【0035】
・炊飯用補助容器10は、上方に開口した形状となっているため、炊飯中に沸騰した湯53が内釜41aの上部へ吹き出すと、その湯53が炊飯用補助容器10の上方から貯留部25に流入し、貯留部25に一定量の湯54が貯留される。これにより、米由来の糖質を含んだ湯を回収することができる。このように、簡単に糖質の一部を除去することができる。
【0036】
・炊飯用補助容器10を、内釜41aの内部において米51の上に載置して使用する場合、炊飯後に炊飯用補助容器10を内釜41aから取り出す際に、炊飯による高温にユーザの手が晒される懸念がある。そこで、本実施形態の炊飯用補助容器10の取っ手部31は、貯留部25の上端部から斜め上方に延びるような構成とした。これにより、ユーザは、炊飯後に炊飯用補助容器10を内釜41aから取り出すに際して、貯留部25よりも上方に突き出た取っ手部31を持つことができる。したがって、炊飯用補助容器10の取り出しに際して、炊飯による高温にユーザの手が晒されることを抑制できる。
【0037】
また、取っ手部31が斜め上方に延びる構成としたことで、取っ手部31が水平方向に延びる構成とした場合と比較して、炊飯用補助容器10の外径寸法を抑えることができる。これにより、内釜41aに収容する際に、取っ手部31が内釜41aの上端につかえてしまうことを抑制できる。したがって、比較的小型の炊飯器41であっても使用でき、汎用性に優れる。また、糖質の回収量を増やすべく、炊飯用補助容器10を大容量化しやすい。
【0038】
さらに、炊飯用補助容器10と内釜41aの内周面との間に空間を確保しやすくなるため、ユーザが炊飯用補助容器10を内釜41aから取り出す際に、ユーザの手が熱い状態の内釜41aに触れてしまうことを抑制することができる。
【0039】
・炊飯用補助容器10の周壁部13は、相対的に上下方向寸法が大きい部分(第1壁部17)と小さい部分(第2壁部21)とから構成される。そして、第1壁部17の上部(詳しくは、貯留部25の上端部27よりも上方の部分)は、取っ手部31に相当する。これにより、ユーザは、第1壁部17の上部を持って炊飯用補助容器10を持ち上げるとともに、第2壁部21を乗り越えさせるようにして、貯留部25内の湯54を捨てることができる。
【0040】
・炊飯用補助容器10において、第1壁部17及び第2壁部21は、それぞれ2つずつ設けられている。詳しくは、一対の第1壁部17が、径方向に対峙して設けられており、第2壁部21が、各第1壁部17に挟まれて設けられている。これにより、ユーザは、各第1壁部17の上部(取っ手部31)を持って、バランスが良い状態で炊飯用補助容器10を持ち上げることができる。
【0041】
また、ユーザは、貯留部25に貯留された湯54を捨てるに際して、一対の第1壁部17の上部を持って炊飯用補助容器10を持ち上げるとともに、各取っ手部31の間の領域から湯54を捨てることができる。このように、ユーザは、貯留部25に貯留された湯54を容易に捨てることができる。
【0042】
・貯留部25の上端部27から上方に延びる取っ手部31を設ける構成とした場合、取っ手部31が、貯留部25の内外での湯の交換を妨げてしまうおそれがある。ここで、本実施の形態では、取っ手部31に、貫通孔33(開口部33a,33b)が形成されている。貫通孔33は、内釜41a内において沸騰して上方へ移動してきた湯54を、炊飯用補助容器10の外周側から貯留部25へ誘導可能なものとなっている。これにより、貯留部25の内外での湯の交換を円滑に保つことができるため、米51から溶け出した糖質を効率よく回収することができる。
【0043】
また、取っ手部31に貫通孔33を形成することで、炊飯用補助容器10の上部を軽量化できるため、炊飯用補助容器10の重心が高くなることを抑制できる。したがって、炊飯用補助容器10の安定性がより向上する。
【0044】
貫通孔33は、その下端部34が、周壁部13の谷底部22aよりも上方に位置している。これにより、貯留部25の深さD3を最大限確保することができるため、より多くの糖質を含んだ湯54を回収できるようになる。また、炊飯用補助容器10を持ち上げて、各取っ手部31の間の領域から湯54を廃棄する際に、貫通孔33から湯54がこぼれてしまうことを抑制することができる。
【0045】
・取っ手部31に貫通孔33を設けた場合、取っ手部31の強度が低下して、炊飯用補助容器10を持ち上げたときの取っ手部31の破損や変形が懸念される。ここで、本実施の形態では、貫通孔33は、左右方向に見た中央部に、その上面と下面とを繋ぐように形成された仕切部36を有している。これにより、取っ手部31の強度を確保できるため、炊飯用補助容器10を持ち上げたときの取っ手部31の破損や変形を抑制することができる。
【0046】
・各開口部33a,33bの開口寸法は、ユーザの手指が入る大きさとなっている。これにより、ユーザが炊飯用補助容器10を持ち上げる際に、開口部33a,33bに手指を引っ掛けることができるため、炊飯用補助容器10が手から滑り落ちることを抑制することができる。
【0047】
なお、ユーザが手にミトンを装着している場合には、開口部33a,33bに手指を入れにくくなることが懸念される。かかる場合においては、仕切部36をつまむようにすることで、取っ手部31に必要以上の負荷をかけることなく、炊飯用補助容器10を持ち上げることができる。なお、炊飯用補助容器10を持ち上げる際に、取っ手部31の開口部33a,33bよりも上方の部分をつまむようにした場合であっても、仕切部36が設けられていない構成と比べて取っ手部31の強度が高いため、取っ手部31がちぎれるようなことは起こりにくい。
【0048】
・貫通孔33を構成する開口部33a,33bは、正面視における開口形状がいずれも横長となっている。すなわち、貯留部25の内外で湯を交換可能な領域がより幅広になることから、内釜41a内において上昇する湯54の流れに偏りがある場合であっても、沸騰した湯53を炊飯用補助容器10の内側へと良好に導くことができる。
【0049】
・貫通孔33(開口部33a,33b)の下端部34は、水平となっている。これにより、湯が下端部34を乗り越えやすくなるため、貫通孔33を通じた貯留部25の内外での湯の交換を、より円滑にすることができる。
【0050】
・周壁部13の上面部15は、外周側から内周側に向けてわずかに下方に傾斜している。また、各開口部33a,33bは、周壁部13の内周面側の角部に対して面取りが施されている。これらにより、貯留部25に流入した湯54の上澄み部分が、貯留部25から流出しやすくなる。したがって、貯留部25の内外での湯の交換を、より円滑にすることができる。
【0051】
・炊飯用補助容器10は、周壁部13が底部12から斜め上方に向けて延びており、下部よりも上部が広がった形状となっている。これにより、上部よりも下部が広がった形状の炊飯用補助容器10よりも、沸騰した湯53による押し上げの影響を受けにくくなる。したがって、炊飯用補助容器10の安定性がより向上する。
【0052】
また、第1壁部17(取っ手部31)に設けられた貫通孔33は、沸騰した湯53が内釜41aの上部に上がってくる際に、当該湯53が上がってくる方向を向いて開口している状態となる。これにより、より効率的に沸騰した湯53を貯留部25に導入することができる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0054】
(1)上記実施形態では、貫通孔33の下端部34が貯留部25の上端部27よりも上方にあったが、貫通孔33の下端部34と貯留部25の上端部27(すなわち、周壁部13の谷底部22a)とを同じ高さにしてもよい。この場合でも、貯留部25の最大容積は確保される。また、取っ手部31で炊飯用補助容器10を持ち上げた場合、一対の取っ手部31同士が近くなる側に変形して貫通孔33の下端部34が谷底部22aよりも高い位置になることから、炊飯用補助容器10を持ち上げる際に手に近い貫通孔33からの湯54の流出は抑制される。
【0055】
(2)上記実施形態では、底部12の下面部が平面状となるような構成としたが、底部12の下面部に凹凸を設けてもよい。以下、図6図2(b)に対応する断面図)を参照しつつ例示する。例えば、図6(a)に示すように、底部12が下面に複数のスパイク61を有する構成とすることができる。この場合、内釜41aに層をなすように米51を収容した状態で、当該米51の層にスパイク61を差し込むようにして、米51の上に炊飯用補助容器10を載置する。これにより、炊飯時における炊飯用補助容器10の安定性を高めることができる。
【0056】
また、図6(b)に示すように、底部12の中央部が貯留部25の貯留空間26に向けて陥入している構成とすることができる。底部12の下面は、その周縁部が中央部よりも相対的に下方に突出した状態となっている。このため、当該相対的に下方に突出した部分を米51の層に差し込むようにすることで、炊飯時における炊飯用補助容器10の安定性を高めることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、第1壁部17のうち貯留部25よりも上方となる部分が、取っ手部31としての機能を有するような構成としたが、これに限定されない。取っ手部31は、第1壁部17の一部を形成するものである必要はなく、第1壁部17とは別部材であってもよい。
【0058】
(4)上記実施形態では、周壁部13が、上下方向寸法が相対的に大きくなる部分(第1壁部17)と小さくなる部分(第2壁部21)とを設けたが、これに限定されない。例えば、壁部の上下方向寸法が全周に亘って一定となる構成としてもよい。かかる構成においても、取っ手部が、壁部の上端部よりも上方に延びるようになっていればよい。
【0059】
(5)上記実施形態では、周壁部13の上下方向寸法は、最大値(上下方向寸法L1)となる部分から最小値(上下方向寸法L2)となる部分にかけて、徐々に変化する構成としたが、これに限定されない。例えば、側面視において、周壁部13の上端部16の外形線が、段差を形成している構成としてもよい。炊飯用補助容器10を持ち上げた際のバランスが良く、貯留部25内の湯54を捨てやすい構成であればよい。
【0060】
(6)上記実施形態では、一対の取っ手部31が径方向に対峙して設けられる構成としたが、これに限定されない。取っ手部は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ただし、炊飯用補助容器10を持ち上げた際のバランスの取りやすさや、貯留部25に貯留された湯54の捨てやすさの点から、上記実施形態の構成が好ましい。
【0061】
(7)上記実施形態では、貫通孔33に仕切部36を設けたが、仕切部36は必須の構成ではない。また、貫通孔の開口の形状及び寸法についても限定されるものではなく、湯が貫通孔を通過できるものであれば、貫通孔に指が入らないものであってもよい。
【0062】
(8)上記実施形態では、周壁部13の上面部15は、炊飯用補助容器10の外周面側から内周面側にかけて傾斜する構成としたが、水平となっていてもよい。また、上記実施形態では、各開口部33a,33bは、周壁部13の内周面側の角部に対して面取りが施されているが、当該面取りは必須ではない。
【0063】
(9)上記実施形態では、炊飯用補助容器10は、下部よりも上部が広がった形状となっているが、これに限定されない。炊飯用補助容器は、下部と上部とで外形寸法が同等であってもよいし、上部よりも下部が広がった形状としてもよい。ただし、炊飯用補助容器の成形のしやすさ、貯留部の内外での湯の交換効率、炊飯用補助容器の安定性といった点から、上記実施形態の構成が好ましい。
【0064】
(10)上記実施形態では、底部12の形状は平面視で略円形状としたが、多角形状等、その他の形状であってもよい。
【0065】
(11)上記実施形態では、第3工程の完了後に、貯留部25内の湯54を捨てるようにしたが、第2工程の後であれば、貯留部25の湯54を廃棄するタイミングは限定されない。このため、例えば、第3工程を実行する前に湯54の取り出しを行うようにしてもよい。この場合、おたま等を使用して、内釜41aに収容された状態の炊飯用補助容器10から、貯留部25内の湯54を掬い出し、その後内釜41aから炊飯用補助容器10を取り出すようにする。このように、第3工程の実行前に、貯留部25内の湯54をある程度掬い出しておくことで、炊飯用補助容器10を持ち上げた際に湯54がこぼれてしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…炊飯用補助容器、12…底部(載置部)、25…貯留部、31…取っ手部、33…貫通孔、41a…内釜(炊飯用容器)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6