(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】押圧具
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
E04D5/14 F
(21)【出願番号】P 2021164720
(22)【出願日】2021-10-06
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大介
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-074390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00-15/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触部と、
水を貯留すると共に前記接触部に水を供給する第1給水部と、
水を貯留すると共に前記第1給水部に水を供給する第2給水部と、を備え
、
前記第1給水部は、水を貯留する第1貯水空間と、一端が前記第1貯水空間へ開口し他端が前記接触部へ開口する第1給水路と、を備え、
前記第2給水部は、水を貯留する第2貯水空間と、一端が前記第1給水部の前記第1貯水空間へ開口し他端が前記第2貯水空間へ開口する第2給水路と、を備える押圧具。
【請求項2】
前記接触部は、前記第1給水部から供給された水を含水保持可能なスポンジを備える請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記第1給水部が貯留する水の量は前記第2給水部が貯留する水の量よりも少ない請求項1又は2に記載の押圧具。
【請求項4】
前記第1貯水空間は、前記防水シートの押圧の方向と直交する平面に沿って延びる空間である請求項
1に記載の押圧具。
【請求項5】
前記防水シートの押圧の方向における前記第1貯水空間の高さが5mm以下である請求項
4に記載の押圧具。
【請求項6】
前記防水シートの押圧の方向に視て、前記第1給水路が前記第2給水路と異なる位置に配置されている請求項
1から
5のいずれか1項に記載の押圧具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水シート押さえパットが開示されている。この防水シート押さえパットは、防水シートを固定板に接着する防水シート接着方法の実施の際に用いられる。詳しくは、防水シート押さえパットは、固定板の加熱後に接着箇所の防水シートを弾性的に押さえて、固定板に対する防水シートの密着性を向上させるのに使用される。
【0003】
特許文献2には、防水シート施工法が開示されている。この防水シート施工法では、電磁誘導加熱により導体片が加熱され、溶けた熱溶着材層でもって防水シートが導体片に接着される。つづけて、その接着部に水を含ませた布を当てがって強制冷却が行なわれる。特許文献2には、水を含ませた布に代えて冷却具を採用する例が記載されている。この冷却具は、ケース内にピストンを設け、このピストン内に氷入の水を入れ、その水を透孔を通して耐熱性スポンジに導き、ピストンをバネを介して押し杆により押すようにしたものである。押し杆を押すと、スポンジが接着部に押しつけられてその中の水が冷却作用を行う。そして、余分の水はピストンの外側面の隙間からピストン内に循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5385655号公報
【文献】特開平8-74390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の技術によれば、接着部を強制冷却することができるので、防水シートの施工を確実に実施することができる。しかし、水を含ませた布を用いて強制冷却を行なう場合、布が含む水の量を適切に管理しないと問題が生じうる。例えば、布に含ませる水が多すぎると、防水シートの表面に多量の水が付着し、表面が滑りやすくなる。布に含ませる水が少ないと、強制冷却が適切に行なわれない。また特許文献2に記載の冷却具では、スポンジ押しつけのための機構と余分の水を回収するための機構とが設けてあり、機構が複雑である。
【0006】
本発明の目的は、簡易な構成により押圧の際に防水シートを適切に冷却できる押圧具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明の押圧具は、防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、前記防水シートと接触する接触部と、水を貯留すると共に前記接触部に水を供給する第1給水部と、水を貯留すると共に前記第1給水部に水を供給する第2給水部と、を備え、前記第1給水部は、水を貯留する第1貯水空間と、一端が前記第1貯水空間へ開口し他端が前記接触部へ開口する第1給水路と、を備え、前記第2給水部は、水を貯留する第2貯水空間と、一端が前記第1給水部の前記第1貯水空間へ開口し他端が前記第2貯水空間へ開口する第2給水路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、第1給水部から接触部に水が供給されるので、押圧された防水シートを水により適切に冷却することができる。また、接触部への水の供給が第1給水部と第2給水部により2段階で行なわれるので、押圧具を簡易な構成としつつ接触部への水の供給状態を適切なものとし易い。
【0009】
本発明において、前記接触部は、前記第1給水部から供給された水を含水保持可能なスポンジを備えると好適である。
【0010】
本構成によれば、スポンジが第1給水部から供給された水を含水保持できるので、防水シートを更に適切に冷却することができる。
【0011】
本発明において、前記第1給水部が貯留する水の量は前記第2給水部が貯留する水の量よりも少ないと好適である。
【0012】
本構成によれば、第1給水部から接触部へ水が過度に供給される事態が抑制され、防水シートを更に適切に冷却することができる。
【0014】
本構成によれば、第2貯水空間の水が接触部へ供給されるまでに、第2給水路、第1貯水空間、及び第1給水路を経由することになる。これにより、接触部へ水が過度に供給される事態が抑制され、防水シートを更に適切に冷却することができる。
【0015】
本発明において、前記第1貯水空間は、前記防水シートの押圧の方向と直交する平面に沿って延びる空間であると好適である。
【0016】
本構成によれば、第1貯水空間が防水シートの押圧の方向と直交する平面に沿って延びるので、防水シートの押圧の方向における押圧具の寸法増加を抑制しつつ、第1貯水空間として必要な空間容積を確保することが可能となる。
【0017】
本発明において、前記防水シートの押圧の方向における前記第1貯水空間の高さが5mm以下であると好適である。
【0018】
本構成によれば、第1貯水空間の高さが5mm以下であり比較的小さいので、第1貯水空間の全体に水が行き渡りやすい。従って、接触部の全体に水を供給しやすい。
【0019】
本発明において、前記防水シートの押圧の方向に視て、前記第1給水路が前記第2給水路と異なる位置に配置されていると好適である。
【0020】
本構成によれば、第2給水路からの水が直接第1給水路22へ進むのではなく、第1貯水空間の内部を移動してから第1給水路へ進むことになる。これにより、第1給水部から接触部への水の供給を緩やかにし、接触部への過度な水の供給を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】押圧具の内部構造を示す縦断面正面図である。
【
図4】
図1におけるIV-IV矢視図であり、押圧具の底面図である。
【
図5】
図2におけるV-V矢視図であり、外蓋の平面図である。
【
図6】
図2におけるVI-VI矢視図であり、内蓋の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る押圧具1の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0023】
以下の説明では、各図面に示されるように、押圧具1において接触部10が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具96に対して防水下地94が位置する側を下側と定義し、図中の矢印DWで示す。押圧具1においてボトル2が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具96に対して防水シート98が位置する側を上側と定義し、図中の矢印UPで示す。
図1で示される側を正面として前後左右を定義し、各図面において、前を矢印FR、後を矢印BK、左を矢印LH、右を矢印RHで示す。
【0024】
押圧具1は、防水シート接着工法において、防水シート98の押圧に用いられる。詳しくは、押圧具1は、防水下地94に固定した防水シート固定具96の固定面96bに防水シート98を配置した後に防水シート固定具96を加熱して防水シート98を防水シート固定具96に接着する防水シート接着工法において、防水シート固定具96の加熱の後に防水シート98の押圧に用いられる。
【0025】
押圧具1は、ボトル2、接続部材3、内蓋4、外蓋5、及びスポンジ6を備える。
【0026】
ボトル2は、内部に水WAを貯留可能な有底円筒状の部材である。ボトル2は、本実施形態ではボトル2は金属製である。ボトル2が真空断熱層を有してもよい。その場合、ボトル2の内部に貯留される水Wの温度上昇を抑制でき、防水シート8を更に適切に冷却することができる。ボトル2が樹脂製であってもよい。ボトル2は、外面の下部に形成された雄ネジ2aと、底部2bと、を備える。ボトル2は、押圧具1が使用状態(
図1)にあるとき、底部2bが上側に位置する姿勢となる。
【0027】
接続部材3は、円筒状の樹脂製の部材である。接続部材3が金属製であってもよい。接続部材3は、内面の上部に形成された雌ネジ3aと、外面の下部に形成された雄ネジ3bと、を備える。
【0028】
内蓋4は、有底円筒状の樹脂製の部材である。内蓋4が金属製であってもよい。内蓋4は、内面の上部に形成された雌ネジ4aを備える。内蓋4は、更に、外Oリング4b、内Oリング4c、及び底部4dを備える。内蓋4の外面の下部に溝が形成され、その溝に外Oリング4bがはめ込まれている。内蓋4の底部4dの上面の外周部に溝が形成され、その溝に内Oリング4cがはめ込まれている。
【0029】
外蓋5は、有底円筒状の樹脂製の部材である。外蓋5が金属製であってもよい。外蓋5は底部5a及び環状突起5bを備えている。環状突起5bは、外蓋5の内面(側壁)の下部に形成された、内面から内側へ突出する突起である。環状突起5bは、
図5に示されるように、外蓋5の内面全体にわたって周状に設けられている。
【0030】
スポンジ6は、水WAを含水保持可能な円盤状のスポンジである。スポンジ6の材質は、例えば、発泡ウレタン、発泡ゴム、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)などである。
【0031】
ボトル2の雄ネジ2aと接続部材3の雌ネジ3aとの螺合により、接続部材3がボトル2に装着される。接続部材3の雄ネジ3bと内蓋4の雌ネジ4aとの螺合により、内蓋4が接続部材3に装着される。円筒状の外蓋5に内蓋4の下部が挿入されることにより、外蓋5が内蓋4に装着される。両面粘着テープ(図示省略)により、スポンジ6が外蓋5の底部5aの下面に貼り付けられる。以上のようにして、ボトル2、接続部材3、内蓋4、外蓋5、及びスポンジ6が一体の押圧具1として組み立てられる。
【0032】
内蓋4の内Oリング4cが接続部材3の下面と接触することにより、接続部材3と内蓋4との間からの水WAの漏れが抑制される。内蓋4の外Oリング4bが外蓋5の内面と接触することにより、内蓋4と外蓋5との間からの水WAの漏れが抑制される。
【0033】
以上説明した押圧具1は、
図3に示されるように、防水シート98と接触する接触部10と、水WAを貯留すると共に接触部10に水WAを供給する第1給水部20と、水WAを貯留すると共に第1給水部20に水WAを供給する第2給水部30と、を備える。
【0034】
本実施形態では、接触部10は、上述したスポンジ6を備えている。スポンジ6は、第1給水部20から供給された水WAを含水保持可能である。
図1に示されるように、接触部10が、防水シート固定具96の突出部位96a(後述)よりも大きいと好ましい。詳しくは、接触部10の外縁が、防水シート固定具96の固定面96bの外縁96cよりも外側に位置すると好ましい。
【0035】
第1給水部20は、水WAを貯留する第1貯水空間21と、一端が第1貯水空間21へ開口し他端が接触部10へ開口する第1給水路22と、を備えている。
【0036】
第1貯水空間21は、内蓋4の底部4dの下面と外蓋5の底部5aの上面との間の空間である。第1貯水空間21は、防水シート98の押圧の方向(上下方向)と直交する平面に沿って延びる空間である。本実施形態では、防水シート98の押圧の方向(上下方向)における第1貯水空間21の高さHが5mm以下である。第1貯水空間21の高さH1が3mm以下であると更に好ましい。ここで、外蓋5の環状突起5bにより、内蓋4が外蓋5の内部に過度に入り込むことが抑制され、第1貯水空間21の高さHが過度に小さくなることが抑制される。
【0037】
第1給水路22は、外蓋5の底部5aを上下に貫通する孔である。本実施形態では、
図5に示されるように、4つの第1給水路22が外蓋5に設けられている。4つの第1給水路22は、有底円筒状である外蓋5の中心軸を中心とする1つの円の上に配置されている。
【0038】
第2給水部30は、水WAを貯留する第2貯水空間31と、一端が第1給水部20の第1貯水空間21へ開口し他端が第2貯水空間31へ開口する第2給水路32と、を備えている。
【0039】
第2貯水空間31は、ボトル2の底部2bの下面と内蓋4の底部4dの上面との間の空間である。
図3の例では、第2貯水空間31に水WAと氷ICとが貯留されている。なお、
図3から明らかなように、第1給水部20(第1貯水空間21)が貯留する水WAの量は、第2給水部30(第2貯水空間31)が貯留する水WAの量よりも少ない。
【0040】
第2給水路32は、内蓋4の底部4dを上下に貫通する孔である。本実施形態では、
図6に示されるように、4つの第2給水路32が内蓋4に設けられている。4つの第2給水路32は、有底円筒状である内蓋4の中心軸を中心とする1つの円の上に配置されている。
【0041】
本実施形態では、
図4に示されるように、防水シート98の押圧の方向(上下方向)に視て、第1給水路22が第2給水路32と異なる位置に配置されている。詳しくは、第2給水路32が、第1給水路22を45°回転させた位置に配置されている。
【0042】
以上の通り構成された押圧具1において、次のようにして接触部10(スポンジ6)に水WAが供給される。第2貯水空間31に貯留された水WAが、第2給水路32を通って第1貯水空間21へ流出する。第1貯水空間21に貯留された水WAが、第1給水路22を通って接触部10へ流出する。第1給水路22から流出した水WAが、接触部10(スポンジ6)に含水保持される。
【0043】
〔防水シート接着工法〕
以下、防水シート接着工法を説明する。防水シート接着工法は、建築工事又は土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地94と称する。)に防水シート98を張り、防水シート98を防水下地94に固定する工法である。
【0044】
〔固定工程、配置工程〕
まず、防水下地94に防水シート固定具96を固定する工程(固定工程)、及び、防水シート固定具96の固定面96bに防水シート98を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地94の上に断熱パネル95を配置し、断熱パネル95の上に防水シート固定具96を配置し、固定部材97により防水下地94に防水シート固定具96を固定する。断熱パネル95は、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0045】
防水シート固定具96は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。防水シート固定具96は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。防水シート固定具96は、上に突出する突出部位96aを有する。突出部位96aの上面が、防水シート98が固定される面(固定面96b)である。本実施形態では、突出部位96aは円環形状であり、固定面96bは外縁96cと内縁96dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面96bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート98の防水シート固定具96への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。ホットメルト接着層の成分は、防水シート98の材質に合わせて選択される。例えば、防水シート98(全体、又は接着面)が塩化ビニル樹脂製である場合、接着層を塩化ビニル樹脂系とすることもできる。
【0046】
固定部材97は、チューブ状ワッシャ97aとビス97bとを備える。本実施形態では、チューブ状ワッシャ97aを防水シート固定具96の中央の穴に通した状態でチューブ状ワッシャ97aを断熱パネル95に上から貫入させ、チューブ状ワッシャ97aにビス97bを挿入し、ビス97bを防水下地94に螺合させることにより、固定部材97が防水シート固定具96を防水下地94に固定する。
【0047】
防水シート98は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート98は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0048】
〔接着工程〕
配置工程の後に、防水シート固定具96を加熱して防水シート98を防水シート固定具96に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱装置を持ち、防水シート98の上から防水シート固定具96の上に加熱装置を当てて、加熱装置を作動させ、防水シート固定具96を加熱する。加熱装置は、例えば、電磁誘導により防水シート固定具96を加熱する電磁誘導加熱装置である。防水シート固定具96が加熱されると、固定面96bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化又は溶融する。これにより、防水シート固定具96と防水シート98とが接着される。
【0049】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、
図1に示されるように、押圧具1で防水シート98を押圧して防水シート98を防水シート固定具96に密着させる工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具1を持ち、防水シート98の上から防水シート固定具96の上に押圧具1を当てて、防水シート98を押圧する。押圧具1に押されて、防水シート98が防水シート固定具96に密着する。
【0050】
押圧具1で防水シート98を押圧する際は、
図1に示されるように、押圧具1の中心と防水シート固定具96の中心とが一致するように押圧具1を配置すると好ましい。
【0051】
接着工程において、防水シート固定具96が加熱されるので、防水シート98の温度が上昇する。押圧工程において、押圧具1が防水シート98の上から防水シート固定具96の上に押し当てられると、接触部10に含まれる水WAが防水シート98に接触する。詳しくは、スポンジ6が圧縮されて、スポンジ6に含まれる水WAが染み出して防水シート98に接触する。水WAへの熱の移動や水WAの気化により、防水シート98、防水シート固定具96、及び固定面96bに設けられたホットメルト接着層が冷却される。押圧具1を押す力が小さくなると、圧縮されていたスポンジ6が膨張し、その際に防水シート98の表面の余分な水をスポンジ6が吸収する。
【0052】
本実施形態では、第1給水部20及び第2給水部30は、作業者からの操作を受けて可動する部位を有さない。換言すれば、第1給水部20から接触部10への水WAの供給、及び第2給水部30から第1給水部20への水WAの供給のために、押圧具1への作業者からの操作を必要としない。これにより、押圧工程の能率低下を抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、第1貯水空間21の容積が比較的小さいので、第1貯水空間21に貯留される水WAの量も比較的小さい。従って、第1給水部20から接触部10へ水WAが過度に供給される事態が抑制される。
【0054】
本実施形態では、ボトル2、接続部材3、内蓋4、及び外蓋5が、水密・気密に接続される。従って、水WA及び空気が第1貯水空間21へ出入りできる経路が、第1給水路22及び第2給水路32に限られる。従って、第1給水路22から水WAが接触部10へ流出すると、第1貯水空間21及び第2貯水空間31の内部の気圧が低下する。これにより、第1給水部20から接触部10へ水WAが過度に供給される事態が抑制される。なお、押圧具1を振ったり傾けたりした際に、第1給水路22及び第2給水路32から第1貯水空間21及び第2貯水空間31へ空気が流入し得る。これにより、第1貯水空間21及び第2貯水空間31の内部の気圧が大気圧と同等となり、第1給水部20から接触部10への水WAの流出が再び可能となる。
〔他の実施形態〕
【0055】
(1)接触部10の材質や形状は上述の例に限られない。接触部10のスポンジ6の下面が凹凸を備えてもよい。接触部10が硬質な部材であってもよい。その場合、接触部10の表面(下面)が、水WAに濡れやすい形態であると好ましい。
【0056】
なお、防水シート固定具96の形状も、円盤状に限られず、四角形などの多角形や楕円形であってもよい。接触部10の形状が、防水シート固定具96の形状に対応する形状であると好ましい。
【0057】
(2)ボトル2、接続部材3、内蓋4、及び外蓋5の接続の形態は、上述の例に限られない。ネジ式、はめ込み式、接着式など、適宜の形態が適用可能である。また、これらの部材のうちの幾つかが一体の部材として成形されてもよい。例えば、接続部材3と内蓋4とが一体の部材であってもよい。
【0058】
(3)スポンジ6を両面テープにより押圧具1に取り付ける形態には、スポンジ6の交換が容易になる利点がある。スポンジ6の押圧具1への取り付けの形態は、面ファスナー式、はめ込み式、接着式、ネジ式など、他の形態であってもよい。
【0059】
(4)防水シート接着工法では、複数の防水シート固定具96に対して接着工程と押圧工程とが順に行なわれる。接着工程と押圧工程とが次のようにして行なわれてもよい。加熱装置により加熱された第1の防水シート固定具96の上に押圧具1を置く。その状態で、隣接する第2の防水シート固定具96を加熱装置で加熱する。加熱が終了したら、押圧具1を、第1の防水シート固定具96の上から第2の防水シート固定具96の上に移動させる。このように、一つの防水シート固定具96に対して押圧工程を行なう間に他の防水シート固定具96に対して接着工程を平行して行なうことができる。
【0060】
(5)断熱パネル95、防水シート固定具96、固定部材97、及び防水シート98の形態も、上述の例に限られない。例えば、固定部材97が単なるビスやボルト等であってもよい。
【0061】
(6)押圧具1が磁石を備えてもよい。この場合、防水シート固定具96の上に押圧具1を置いた後、作業者が押圧具1から手を離しても、押圧具1の位置ずれが抑制される上に、磁石が防水シート固定具96を引きつけることにより押圧具1が防水シート98に押しつけられる。すなわち、磁石により、作業者が押圧具1から手を離しても押圧工程が適切に実行される。例えば、磁石が、外蓋5の底部5aの下面や、内蓋4の底部4dの下面などに設けられてもよい。磁石が、ネオジム磁石であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、防水シート接着工法に用いることができる。詳しくは、押圧具1を、防水シート固定具96の加熱の後に防水シート98の押圧に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 :押圧具
6 :スポンジ
10 :接触部
20 :第1給水部
21 :第1貯水空間
22 :第1給水路
30 :第2給水部
31 :第2貯水空間
32 :第2給水路
94 :防水下地
96 :防水シート固定具
96b :固定面
98 :防水シート
H :高さ
WA :水