(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ヒト網膜前駆細胞の単離および培養の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20241122BHJP
【FI】
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2021517209
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053520
(87)【国際公開番号】W WO2020069360
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ジン
(72)【発明者】
【氏名】クラッセン, ヘンリー
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-521910(JP,A)
【文献】特表2015-505459(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068266(WO,A1)
【文献】特表2017-536827(JP,A)
【文献】特開2017-035108(JP,A)
【文献】Journal of Tissue Engineering,2016, Vol.7, pp.1-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次網膜細胞をヒトドナーから得られ
たものである1つまたは1対のヒト眼球のヒト試料から単離する方法であって、前記1つまたは1対のヒト眼球が無傷の球体(複数可)、透明な角膜、正常な形状またはその任意の組合せを含む正常な形態を有し、前記方法が、
(a)前記ヒトドナーからの前記1つまたは1対のヒト眼球の採取後8時間以内に、前記ヒト試料から複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離するステップであって、前記ヒトドナーが妊娠約12週から約28週齢の胎児である、ステップと、
(b)複数の前記一次網膜細胞をプロテアーゼで消化することなくステップ(a)で単離された前記網膜試料中の複数の前記一次網膜細胞を無菌のピペットによる粉砕を通して機械的に解離させ、それによって、解離された細胞および細胞クラスターの懸濁液を生成するステップと、
(c)前記網膜試料から得られた前記一次網膜細胞の生存率、量および形態を決定するステップであって、少なくとも30×10
6
個の生存能力のある一次網膜細胞が生成されるステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)の前に、前記ヒトドナーからの採取後の前記ヒト試料がL-グルタミンを含むRPMI-1640またはAdvanced DMEM/F12を含む輸送細胞培養培地中に置かれる;ならびに/あるいは前記輸送細胞培養培地が1ミリリットルにつき約0.5~50マイクログラムのゲンタマイシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記輸送細胞培養培地が1ミリリットルにつき50マイクログラムのゲンタマイシンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、
(i)前記網膜試料を管に移すこと、
(ii)前記網膜試料を機械的に解離させて複数の解離された一次網膜細胞を生成すること、
(iii)複数の解離された前記一次網膜細胞を遠心分離によりペレットにすること、
および
(iv)上清を取り出すこと
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)が、
(i)ステップ(b)からのペレットにされた前記一次網膜細胞を約1~8℃の抗生物質を補充した培養培地に再懸濁すること、
(ii)複数の解離された前記網膜細胞を、培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに播種することであって、前記培養培地は抗生物質が補充されること、
(iii)複数の解離された前記網膜細胞を10~37℃でインキュベートすること、および
(iv)一次網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定すること
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
生存能力のある一次網膜細胞の数が約30×10
6~約1×10
9
個の生存能力のある一次網膜細胞、または約73
×10
6
~
約147×10
6
個の生存能力のある一次網膜細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生存能力のある数えられた細胞の百分率が約10%~約100%、または約68%~約85%である、請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の解離された前記網膜細胞が0.5%~10%O
2の下の37℃でインキュベートされる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単離された一次ヒト網膜細胞を培養して非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法であって、前記方法は、
(a)第1の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法によって生成される複数の一次網膜細胞を播種して複数の培養された網膜細胞を生成するステップと;
(b)第2の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに前記第1の継代において生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップと;
(c)第3の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに前記第2の継代において生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップと;
(d)複数の培養された前記網膜細胞を
冷凍保存するステップと;
を含み、
1つまたは複数のコーティングされた前記培養フラスコは、1平方センチメートル(cm
2)につき約0.5×10
4細胞から1cm
2につき約5×10
6細胞の密度で播種され、
前記第1の継代の播種密度は前記第2の継代の播種密度より大きく、および
前記第2の継代の播種密度は前記第3の継代の播種密度より大きく、
それによって非不死ヒト網膜前駆細胞の前記集団を生成する方法。
【請求項10】
1つまたは複数のさらなる継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに直前の継代によって生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記培養フラスコまたはプレートが、ゼノフリーフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシン、ラミニン、またはそれらの組合せでコーティングされている、請求項9または10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
継代の間の期間が、2~8日間、3~6日間、4~5日間、または3~4日間である、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数の前記一次網膜細胞または培養された前記網膜細胞が、0.5~10%O
2の下の37℃で培養される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の前記一次網膜細胞が前記第1の継代において、
(1)トリプシンまたはTrypLE、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または
(2)トリプシンまたはTrypLE、EDTAおよびDPBS
を含む第1の酵素溶液で解離される、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
複数の培養された前記網膜細胞が前記第2の継代において、
(1)トリプシンまたはTrypLE、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または
(2)トリプシンまたはTrypLE、EDTAおよびDPBS
を含む第2の酵素溶液で解離される、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
複数の前記一次網膜細胞が37℃で約5~20分間、
約6~10分間または約7~8分間解離される、請求項14~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複数の培養された前記網膜細胞が前記第3のまたはさらなる継代において、
(1)トリプシンまたはTrypLE、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または
(2)トリプシンまたはTrypLE、EDTAおよびDPBS
を含む第3の酵素溶液で解離される、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
複数の培養された前記網膜細胞が、少なくとも第3のまたはさらなる継代において
、37℃で約5~10分間または約5~7分間解離される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の継代で約0.5×10
6から約3.0×10
6細胞/cm
2、前記第2の継代で約0.1×10
6から約0.5×10
6細胞/cm
2、前記第3の継代で約0.03×10
6から約0.2×10
6細胞/cm
2、および第4およびさらなる継代で約10,000~約60,000細胞/cm
2の密度で細胞が培養フラスコまたはプレートに播種される、請求項9~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(d)の前記
冷凍保存が、
(i)トリプシンまたはTrypLEを使用して前記細胞を酵素的に解離させること、
(ii)過剰量の前記培養培地またはAdvanced DMEM/F12で前記解離を停止させること、
(iii)1~30分間の10×g~10,000×gの遠心分離を通して前記細胞を遠心分離すること、
(iv)培養培地に前記細胞を再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、
(v)
冷凍保存培地を加えて5~30%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度を達成すること、
(vi)各クリオバイアルに複数の細胞を等分すること、
(vii)速度制御フリーザーを使用して各バイアルを凍結させること、および
(viii)細胞の各バイアルを液体N
2に入れること
を含む、請求項9~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項3における前記
輸送細胞培養培地
、請求項5のステップ(i)における抗生物質が補充される前記培養培地、請求項5のステップ(ii)における前記1つまたは複数のコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに含有される前記培養培地、請求項9のステップ(a)における前記1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに含有される前記培養培地、請求項9のステップ(b)における前記1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに含有される前記培養培地、請求項9のステップ(c)における前記1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに含有される前記培養培地、請求項10における前記1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに含有される前記培養培地、請求項20のステップ(ii)における前記培養培地、請求項20のステップ(iv)における前記培養培地、および/または請求項20のステップ(v)における前記冷凍保存培地が
、無血清である、請求項3~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年9月27日に出願の米国特許仮出願第62/737,622号の優先権を主張し、その内容はその全体が参照により組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書に記載される対象発明は、幹細胞生物学および再生医療の分野に一般的に関する。代わりの実施形態では、ヒト試料から得られるか単離される一次網膜細胞を単離する方法が本明細書で提供される。代わりの実施形態では、網膜前駆細胞の投与によってまたは黄斑および/もしくは暗順応視覚機能を再生させることによって、網膜の疾患または状態を処置、改善または防止するための;明順応(昼間)視力を向上させるための;視力を向上させるか、黄斑機能を向上させるか、視野を向上させるかまたは暗順応(夜間)視力を向上させるための組成物および方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
網膜変性は、網膜の光受容体細胞の進行性および不可逆的衰退ならびに死によって引き起こされる悪化または変性を指す。光受容体細胞の死は、失明をもたらし得る。したがって、損傷を受け、失われた光受容体細胞を回復し、視覚機能を回復するための有効な処置の必要性が当技術分野に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示は、ヒト試料から得られるか得られた一次網膜細胞を単離する方法であって、(a)妊娠約12週から約28週齢のヒトからのヒト網膜組織の得られた試料を処理する、または処理しておくこと、(b)得られた試料を機械的に解離させること、(c)試料から得られた一次網膜細胞の生存率および量を決定すること、ならびに(d)解離された細胞および細胞クラスターの懸濁液を生成するために、得られた一次網膜細胞の形態を確認する、または確認しておくことによる方法を提供する。
【0005】
本開示の方法の一部の実施形態では、ヒト網膜組織は1つまたは1対のヒト眼球から得られる。本開示の方法の一部の実施形態では、眼球(複数可)は、無傷の球体(複数可)、透明な角膜、および/または正常な形状を含む正常な形態を有する。一部の実施形態では、ドナーからの臓器採取の直後に、胎児の眼球(ヒト網膜組織を含有する)をL-グルタミンを含むRPMI-1640培地に保存し、氷上で保存する。これらの方法のいずれでも、保存されたヒト網膜組織は採取から規定の期間内に送達され、使用される。様々な実施形態では、ヒト網膜組織は氷上で出荷され、輸送ウインドウの範囲内で送達される。非限定的な例として、輸送ウインドウは、約1~約26またはそれより長い時間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、または26時間)、例えば、約4.5~約21.5時間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、または21.5)または約7~約26時間(例えば、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、または26時間)であり得る。
【0006】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(a)の得られた試料を処理することは、(i)臓器採取後、RPMI-1640培地から眼球(複数可)を取り出して、抗生物質を補充した氷冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で1~5回(例えば、1、2、3、4または5回)すすぐこと、(ii)眼球から視神経および間葉組織を取り出して、全ての眼球外細胞を取り出すこと、(iii)眼球を、抗生物質を補充した氷冷PBSで洗浄すること、(iv)針を使用して球体の縁(limbus)に穴をあけること、(v)顕微手術はさみで縁に沿って円周方向に切り込むこと、(vi)水晶体、角膜および付随する硝子体を取り出すこと、(vii)網膜色素上皮(RPE)層から網膜(複数可)を解離させて単離された網膜を生成すること、(viii)単離された網膜(複数可)を、抗生物質を補充した氷冷培地またはPBSを含有するペトリ皿に置くことを含む。
【0007】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(b)の機械的に解離させることは、ステップ(a)で得られる網膜(複数可)を:(i)円錐管に網膜(複数可)を移すこと、(ii)網膜(複数可)を機械的に解離させて解離された網膜を生成すること、(iii)抗生物質を補充した無血清培地でペトリ皿を洗浄し、あらゆる残留している解離された網膜を含有する培地を、解離された網膜(複数可)を含有する円錐管に移すこと、(iv)解離された網膜(複数可)を遠心分離によりペレットにすること、および(v)上清を取り出すことによって機械的に解離させることを含む。一部の実施形態では、網膜の機械的解離は無菌のピペットによる粉砕を通して実行される。一部の実施形態では、解離された網膜は、1~50℃で約0~約30分間の約10~約1000×gの遠心分離を通してペレットにされる。
【0008】
本開示の方法の一部の実施形態では、(c)の一次網膜細胞の生存率および量を決定するステップは、(i)氷冷の抗生物質を補充した無血清培地にステップ(b)からのペレットにした網膜組織を再懸濁すること、(ii)網膜組織の機械的解離から得られた網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定すること、(iii)抗生物質を補充した無血清培地を含有する、フィブロネクチンでコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに細胞を播種すること、(iv)網膜細胞含有フラスコまたはプレートを10~50℃でインキュベートすることを含む。一部の実施形態では、細胞の量および生存率を、NC-200細胞カウンターによって測定する。一部の実施形態では、数えられた細胞の数は、約1~約1,000,000,000細胞である。一部の実施形態では、数えられた生存可能な細胞の百分率は、約10~約100である。一部の実施形態では、フラスコまたはプレートは、約1~約1,000,000,000細胞で播種される。一部の実施形態では、網膜細胞含有フラスコまたはプレートのインキュベーションは、0~30%CO2および0~50%O2の下の37℃においてである。
【0009】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(d)は、細胞培養フラスコまたはプレートに播種される網膜細胞が約1~約100細胞で構成される網膜細胞クラスターからなることを確認することを含む。
【0010】
本開示の方法の一部の実施形態では、PBSまたは無血清培地に補充するために使用される抗生物質はゲンタマイシンである。一部の実施形態では、抗生物質は約0~約10,000μg/mLの濃度で使用される。
【0011】
本開示は、ヒト試料から一次網膜細胞を単離する方法であって、(a)ヒト試料から複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離するステップであって、ヒト試料が妊娠約12週から約28週齢のヒトドナーからのものであるステップと、(b)複数の一次網膜細胞をプロテアーゼで消化することなくステップ(a)で単離された網膜試料中の複数の一次網膜細胞を機械的に解離させ、それによって、解離された細胞および細胞クラスターの懸濁液を生成するステップと、(c)網膜試料からの一次網膜細胞の生存率、量および形態を決定するステップであって、少なくとも30×106の生存能力のある一次網膜細胞が生成されるステップと、を含む方法を提供する。
【0012】
本開示の方法の一部の実施形態では、ヒト試料は1つまたは1対のヒト眼球である。一部の実施形態では、眼球(複数可)は、無傷の球体(複数可)、透明な角膜、正常な形状またはその任意の組合せを含む正常な形態を有する。一部の実施形態では、ステップ(a)の前に、ヒト試料はヒトドナーからの採取の後に輸送細胞培養培地中に置かれる。一部の実施形態では、輸送細胞培養培地はL-グルタミンを含むRPMI-1640またはAdvanced DMEM/F12を含む。一部の実施形態では、輸送細胞培養培地は1ミリリットル(mL)につき約0.5~50マイクログラムのゲンタマイシンを含み、必要に応じて、輸送細胞培養培地は1ミリリットルにつき約50マイクログラムのゲンタマイシンを含む。一部の実施形態では、ヒト試料は輸送細胞培養培地に置かれた直後に、例えば氷上に置くことによって約1~8℃で保存される。
【0013】
本開示の方法の一部の実施形態では、ヒト試料はヒトドナーからの採取から約7~約26時間以内に使用される。
【0014】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(a)でヒト試料から網膜試料を単離することは、(i)輸送培養培地から1つまたは1対のヒト眼球を取り出すこと、(ii)1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぐこと、(iii)1つまたは1対のヒト眼球から視神経および間葉組織を取り出すこと、(iv)1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のPBSで洗浄すること、(v)針を使用して1つまたは1対のヒト眼球の各々の球体の縁に穴をあけること、(vi)1つまたは1対のヒト眼球の縁に沿って円周方向に切り込むこと、(vii)1つまたは1対のヒト眼球から水晶体、角膜および付随する硝子体を取り出すこと、(viii)網膜色素上皮(RPE)層から網膜(複数可)を解離させて単離された網膜または1対の単離された網膜を生成すること、および(ix)単離された網膜または1対の単離された網膜を約1~8℃の培養培地またはPBS中に置くステップであって、培養培地またはPBSは抗生物質が補充されるステップを含む。一部の実施形態では、ステップ(ii)は1~5回または3回繰り返される。一部の実施形態では、ステップ(iii)では、一部または全ての眼球外細胞を取り出す。
【0015】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(b)の複数の一次網膜細胞を機械的に解離させることは、(i)網膜試料を管に移すこと、(ii)網膜試料を機械的に解離させて複数の解離された一次網膜細胞を生成すること、(iii)複数の解離された一次網膜細胞を遠心分離によりペレットにすること、および(iv)上清を取り出すことを含む。一部の実施形態では、網膜の機械的解離は無菌のピペットによる粉砕を通して実行される。一部の実施形態では、粉砕は2~50回、2~10回または4~8回実行される。一部の実施形態では、複数の解離された一次網膜細胞は4℃で約3分間の約140×gでの遠心分離によってペレットにされる。一部の実施形態では、本方法は、ステップ(ii)の後およびステップ(iii)の前に複数の解離された一次網膜細胞を、抗生物質を補充した培養培地またはPBSにより洗浄することを含む。
【0016】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の解離された一次網膜細胞は、単一細胞および細胞のクラスターを含む。
【0017】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(c)の一次網膜細胞の生存率、量および形態を決定することは、(i)ステップ(b)からのペレットにされた一次網膜細胞を約1~8℃の抗生物質を補充した培養培地に再懸濁すること、(ii)複数の解離された網膜細胞を、培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに播種するステップであって、必要に応じて細胞培養培地は抗生物質が補充されるステップ、(iii)複数の解離された網膜細胞を10~50℃でインキュベートするステップであって、必要に応じてインキュベーションは37℃で行われるステップ、および(iv)一次網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定するステップを含む。一部の実施形態では、一次網膜細胞の量および生存率を凝集細胞カウント法、血球計数器またはトリパンブルーを使用してNC-200細胞カウンターによって測定する。一部の実施形態では、生存能力のある一次網膜細胞の数は約20×106~約1×109の生存能力のある一次網膜細胞、または約73~147×106の生存能力のある一次網膜細胞である。一部の実施形態では、生存能力のある数えられた細胞の百分率は約10%~約100%、または約68%~約85%である。
【0018】
本開示の方法の一部の実施形態では、フラスコまたはプレートは、ステップ(ii)において約1~約1,000,000,000細胞で播種される。
【0019】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の解離された網膜細胞は、(1)0~30%CO2および0~50%O2の下の約37℃;(2)約37℃、5%またはそれより低いCO2および20%またはそれより低いO2;または(3)約37℃、5%またはそれより低いCO2および3%またはそれより低いO2でインキュベートされる。一部の実施形態では、複数の解離された網膜細胞は、37℃、5%またはそれより低いCO2および3%またはそれより低いO2でインキュベートされる。
【0020】
本開示の方法の一部の実施形態では、ステップ(c)の一次網膜細胞の生存率、量および形態を決定することは、(i)複数の解離された網膜細胞を顕微鏡下で視覚的に検査すること、および(ii)細胞培養フラスコまたはプレートに播種される複数の網膜細胞が約2~約1000細胞からなる網膜細胞クラスターのクラスターを含むことを確認することを含む。
【0021】
本開示の方法の一部の実施形態では、無血清培地は、(a)Advanced DMEM/F12、(b)N-2補助剤、(c)EGF(組換えヒト上皮成長因子)、(d)bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、および/または(e)GlutaMAX Iを含む。
【0022】
本開示の方法の一部の実施形態では、培養培地は無血清である。一部の実施形態では、培養培地は完全培地を含む。一部の実施形態では、培養培地は、ダルベッコの改変イーグル培地DMEM/F12、Advanced DMEM/F12、ノックアウトDMEM/F12、Neurobasal培地、ReNcellまたはUltraculture培地を含む。一部の実施形態では、培養培地はAdvanced DMEM/F12を含む。一部の実施形態では、培養培地はN-2補助剤およびGlutaMAX-Iを含む。一部の実施形態では、培養培地はB27、B27ゼノフリーまたはStemproを含む。一部の実施形態では、培養培地は細胞の生存または成長を支持する補助剤または添加剤を含む。一部の実施形態では、細胞の生存または成長を支持する補助剤または添加剤は、L-グルタミン、組換えヒト上皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、他の成長因子およびその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、抗生物質は約0.5~約50μg/mLの濃度のゲンタマイシンを含み、必要に応じてゲンタマイシンの濃度は約30μg/mLである。
【0023】
本開示は、単離された一次ヒト網膜細胞を培養して非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法であって、(a)単離された一次網膜細胞の懸濁液を、ゼノフリーフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシンまたはラミニンでコーティングした培養フラスコまたはプレートの中の無血清培地で、標準の酸素レベルで約4~6継代培養するステップ、(b)その後、懸濁液を無血清培地において低酸素レベルで追加の約3~6継代培養するステップであって、細胞は40%~90%集密で継代し、各継代で酵素によって処理して細胞を解離させ、新鮮な培養培地を加えるステップ、(c)その後細胞を低温保存し、それによって非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を作製するステップを含む方法を提供する。
【0024】
本開示の方法の一部の実施形態では、その後の懸濁液を低酸素レベルで培養するステップの後、細胞を継代せずにある期間にわたって標準の酸素レベルで細胞を成長させる。一部の実施形態では、継代の間の期間は、3~5日間(例えば、3、4または5日間)である。
【0025】
本開示の方法の一部の実施形態では、細胞を解離させるために使用される酵素溶液は、トリプシンまたは同等物を含む。一部の実施形態では、細胞は第1の継代で、トリプシンまたは同等物およびEDTAを約1:4の比で含む酵素溶液を使用して解離させる。一部の実施形態では、第1の継代では、トリプシンまたは同等物およびEDTAは、約1:3、1:3.1、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9、1:4.0、1:4.1、1:4.2、1:4.3、1:4.4、1:4.5、1:4.6、1:4.7、1:4.8、1:4.9または1:5.0の比である。一部の実施形態では、細胞は第1の継代で、トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBSを約1:1:3の比で含む酵素溶液を使用して解離させる。一部の実施形態では、第1の継代で、トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBSは、約1:1:2、1:1:2.1、1:1:2.2、1:1:2.3、1:1:2.4、1:1:2.5、1:1:2.6、1:1:2.7、1:1:2.8、1:1:2.9、1:1:3.0、1:1:3.1、1:1:3.2、1:1:3.3、1:1:3.4、1:1:3.5、1:1:3.6、1:1:3.7、1:1:3.8、1:1:3.9または1:1:4.0の比である。一部の実施形態では、細胞は第1の継代において約37℃で6~10分間解離させる。一部の実施形態では、細胞は第2の継代で、トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBSを約1:1:3の比で含む酵素溶液を使用して解離させる。一部の実施形態では、第2の継代でトリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBSは、約1:1:2、1:1:2.1、1:1:2.2、1:1:2.3、1:1:2.4、1:1:2.5、1:1:2.6、1:1:2.7、1:1:2.8、1:1:2.9、1:1:3.0、1:1:3.1、1:1:3.2、1:1:3.3、1:1:3.4、1:1:3.5、1:1:3.6、1:1:3.7、1:1:3.8、1:1:3.9または1:1:4.0の比である。一部の実施形態では、細胞は第2の継代で、トリプシンまたは同等物およびEDTAを約1:1の比で含む酵素溶液を使用して解離させる。一部の実施形態では、第2の継代で、トリプシンまたは同等物およびEDTAは、約1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4または1:1.5の比である。一部の実施形態では、細胞は第2の継代において約37℃で4~8分間解離させる。一部の実施形態では、細胞は第3の継代および全てのさらなる継代で、トリプシンまたは同等物およびEDTAを約1:1の比で含む酵素溶液を使用して解離させる。一部の実施形態では、第3および全てのさらなる継代で、トリプシンまたは同等物およびEDTAは、約1:0.5、1:0.6、1:0.7、1:0.8、1:0.9、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4または1:1.5の比である。一部の実施形態では、細胞は第3および全てのさらなる継代において37℃で4~8分間解離させる。一部の実施形態では、トリプシンまたは同等物は、TrypLE、例えばTrypLE ExpressまたはTrypLE Selectを含む。一部の実施形態では、解離は過剰のDMEMまたはPBSの添加によって停止される。一部の実施形態では、細胞の数および生存率は解離の後に決定される。一部の実施形態では、細胞の数および生存率は、NC-200細胞カウンターによって決定される。
【0026】
本開示は、単離された一次ヒト網膜細胞を培養して非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法であって、(a)第1継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに本明細書に記載の方法によって生成される複数の一次網膜細胞を播種して複数の培養された網膜細胞を生成するステップ;(b)第2の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに第1の継代によって生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップ;(c)第3の継代において(at a third)培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに第2の継代によって生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップ;および(d)複数の培養された網膜細胞を低温保存するステップを含み、1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートは、1平方センチメートル(cm2)につき約1×104細胞から1cm2につき約2×106細胞の密度で播種され、第1の継代の播種密度は第2の継代の播種密度より大きく、および第2の継代の播種密度は第3の継代の播種密度より大きく、それによって非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法を提供する。
【0027】
本開示の方法の一部の実施形態では、本方法は、1つまたは複数のさらなる継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに直前の継代によって生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップをさらに含む。
【0028】
本開示の方法の一部の実施形態では、培養フラスコまたはプレートはゼノフリーのフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシン、ラミニンまたはその組合せでコーティングされる。
【0029】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の一次または培養された網膜細胞は、(1)0~30%CO2および0~50%O2の下の約37℃、(2)約37℃、5%またはそれより低いCO2および20%またはそれより低いO2;または(3)約37℃、5%またはそれより低いCO2および3%またはそれより低いO2で培養される。一部の実施形態では、複数の一次または培養された網膜細胞は、約37℃、5%またはそれより低いCO2および3%またはそれより低いO2で培養される。一部の実施形態では、2つの直接連続する継代の間の期間は2~8日、3~6日、4~5日または3~4日である。一部の実施形態では、2つの直接連続する継代の間の期間は3~4日である。
【0030】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の一次網膜細胞は第1の継代において、(1)トリプシンまたは同等物、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または(2)トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBSを含む第1の酵素溶液で解離される。一部の実施形態では、トリプシン同等物はTrypLEである。一部の実施形態では、(1)TrypLEおよびEDTAは第1の酵素溶液の中で1:4の比であるか、または(2)TrypLE、EDTAおよびDPBSは1:1:3の比である。一部の実施形態では、複数の一次網膜細胞は、約37℃で約5~20分間、約6~10分間または約7~8分間解離される。一部の実施形態では、複数の一次網膜細胞、約37℃で約7~8分間。
【0031】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の培養された網膜細胞は第2の継代において、(1)トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBS、または(2)トリプシンまたは同等物、およびDPBSを含む第2の酵素溶液で解離される。一部の実施形態では、トリプシン同等物はTrypLEである。一部の実施形態では、(1)TrypLE、EDTAおよびDPBSは第2の酵素溶液の中で1:1:3の比であるか、または(2)TrypLEおよびDPBSは第2の酵素溶液の中で1:1の比である。一部の実施形態では、複数の培養された網膜細胞は、約37℃で約5~20分間、約6~10分間または約7~8分間解離される。一部の実施形態では、複数の培養された網膜細胞は、約37℃で約5~6分間解離される。
【0032】
本開示の方法の一部の実施形態では、複数の培養される網膜細胞は少なくとも第3のまたはさらなる継代において、トリプシンまたは同等物、およびDPBSを含む第3の酵素溶液で解離される。一部の実施形態では、トリプシン同等物はTrypLEを含む。一部の実施形態では、TrypLEおよびDPBSは第3の酵素溶液の中で1:1の比である。一部の実施形態では、複数の培養される網膜細胞は少なくとも第3のまたはさらなる継代において約37℃で約5~10分間または約5~7分間解離される。一部の実施形態では、少なくとも第3のまたはさらなる継代は、3~5継代を含む。
【0033】
本開示の方法の一部の実施形態では、本方法は、第2の継代の後の複数の培養される網膜細胞の解離の後に細胞の数および生存率を決定することを含む。一部の実施形態では、細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は生存能力がある。
【0034】
本開示の方法の一部の実施形態では、細胞(the c cells)は、培養フラスコまたはプレートに第1の継代で約0.5×106から約3.0×106細胞/cm2、第2の継代で約0.1×106から約0.5×106細胞/cm2、第3の継代で約0.03×106から約0.2×106細胞/cm2、ならびに第4およびさらなる継代で約10,000~約60,000細胞/cm2の密度で播種される。
【0035】
本開示は、本開示の方法を使用して生成される網膜前駆細胞を低温保存する方法であって、(i)トリプシンを使用して細胞を酵素的に解離させること、(ii)過剰量の培養培地またはAdvanced DMEM/F12で解離を停止させること、(iii)1~30分間の10×g~10,000×gの遠心分離を通して細胞を遠心分離すること、(iv)培養培地に細胞を再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、(v)低温保存培地を加えて5~30%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度を達成すること、(vi)各クリオバイアルに複数の細胞を等分すること、(vii)速度制御フリーザーを使用して各バイアルを凍結させること、および(viii)細胞の各バイアルを液体N2に入れることを含む方法を提供する。
【0036】
本開示の方法の一部の実施形態では、低温保存ステップは、(a)1:1のトリプシンまたは同等物およびDPBSを使用して細胞を酵素的に解離させること、(b)過剰量のDMEMまたはPBSで解離を停止させること、(c)1~30分間の10~10,000gの遠心分離を通して細胞をペレットにすること、(d)無血清培地に細胞を再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、(e)低温保存培地を加えて5~30%の最終DMSO濃度を達成すること、(f)各クリオバイアルに0.2~100×106細胞を等分すること、(g)-80℃で6~72時間各バイアルを凍結させること、および(h)細胞の各バイアルを液体N2に入れることによって実行される。
【0037】
本開示の低温保存の方法の一部の実施形態では、ステップ(i)のトリプシン同等物はTrypLEを含む。一部の実施形態では、低温保存培地は培養培地および10%DMSOを含む。一部の実施形態では、ステップ(vi)の複数の細胞は、1クリオバイアルにつき約0.5×106~50×106細胞、または1mLの培養培地およびDMSOにつき約0.5×106~約20×106細胞である。
【0038】
本開示の方法の一部の実施形態では、細胞および/または細胞クラスターは、細胞の生存または成長を支持する補助剤または添加剤と共に培養される。一部の実施形態では、細胞の生存または成長を支持する補助剤または添加剤は、L-グルタミン、EGFおよびbFGF(Invitrogen)からなるヒト組換え成長因子ならびに他の成長因子からなる群から選択される。
【0039】
代わりの実施形態では、前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞または非不死のヒト網膜前駆細胞の集団または複数の非不死のヒト網膜前駆細胞を含む、および必要に応じて薬学的に許容される賦形剤も含む医薬組成物が提供される。
【0040】
代わりの実施形態では、前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞または非不死のヒト網膜前駆細胞の集団または複数の非不死のヒト網膜前駆細胞を含むキットが本明細書で提供される。
【0041】
代わりの実施形態では、網膜の疾患または状態を処置、改善もしくは防止するための、明順応(昼間)視力を向上させるための、矯正視力を向上させるための、黄斑機能を向上させるための、視野を向上させるためのまたは暗順応(夜間)視力を向上させるための方法であって、(a)それを必要とする個体に、前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞もしくは非不死のヒト網膜前駆細胞の集団もしくは複数の非不死のヒト網膜前駆細胞を投与することもしくは投与しておくこと;または、(b)(i)前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞もしくは非不死のヒト網膜前駆細胞の集団もしくは複数の非不死のヒト網膜前駆細胞を提供することもしくは提供しておくこと;および(ii)網膜前駆細胞もしくは非不死のヒト網膜前駆細胞の集団もしくは複数の非不死のヒト網膜前駆細胞を、それを必要とする個体に投与することもしくは投与しておくことを含む方法が提供される。
【0042】
代わりの実施形態では、網膜の疾患もしくは状態を処置、改善もしくは防止するための、明順応(昼間)視力を向上させるための、矯正視力を向上させるための、黄斑機能を向上させるための、視野を向上させるためのまたは暗順応(夜間)視力を向上させるための医薬の製造における、前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞または非不死のヒト網膜前駆細胞の集団もしくは複数の非不死のヒト網膜前駆細胞の使用が提供される。
【0043】
代わりの実施形態では、網膜の疾患もしくは状態を処置、改善もしくは防止すること、明順応(昼間)視力を向上させること、矯正視力を向上させること、黄斑機能を向上させること、視野を向上させることまたは暗順応(夜間)視力を向上させることで使用するための、前記請求項のいずれかに記載の方法によって単離される、網膜前駆細胞または非不死のヒト網膜前駆細胞の集団もしくは複数の非不死のヒト網膜前駆細胞が提供される。
【0044】
上記の態様のいずれも、本開示の任意の他の態様と組み合わせることができる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
一次網膜細胞をヒト試料から単離する方法であって、
(a)前記ヒト試料から複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離するステップであって、前記ヒト試料が妊娠約12週から約28週齢のヒトドナーからのものであるステップと、
(b)複数の前記一次網膜細胞をプロテアーゼで消化することなくステップ(a)で単離された前記網膜試料中の複数の前記一次網膜細胞を機械的に解離させ、それによって、解離された細胞および細胞クラスターの懸濁液を生成するステップと、
(c)前記網膜試料から得られた前記一次網膜細胞の生存率、量および形態を決定するステップであって、少なくとも30×10
6
の生存能力のある一次網膜細胞が生成されるステップと
を含む方法。
(項目2)
前記ヒト試料が1つまたは1対のヒト眼球である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記眼球(複数可)が無傷の球体(複数可)、透明な角膜、正常な形状またはその任意の組合せを含む正常な形態を有する、項目2に記載の方法。
(項目4)
ステップ(a)の前に前記ヒト試料が前記ヒトドナーからの採取の後に輸送細胞培養培地中に置かれる、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記輸送細胞培養培地がL-グルタミンを含むRPMI-1640またはAdvanced DMEM/F12を含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記輸送細胞培養培地が1ミリリットルにつき約0.5~50マイクログラムのゲンタマイシンを含み、必要に応じて、前記輸送細胞培養培地が1ミリリットルにつき50マイクログラムのゲンタマイシンを含む、項目4または5に記載の方法。
(項目7)
前記ヒト試料が前記輸送細胞培養培地中に置いた直後に約1~8℃で保存される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記ヒト試料が前記ヒトドナーからの採取から約7~約26時間以内に使用される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
ステップ(a)で前記ヒト試料から前記網膜試料を単離するステップが、
(i)前記輸送培養培地から前記1つまたは1対のヒト眼球を取り出すこと、
(ii)前記1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぐこと、
(iii)前記1つまたは1対のヒト眼球から視神経および間葉組織を取り出すこと、
(iv)前記1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のPBSで洗浄すること、
(v)針を使用して前記1つまたは1対のヒト眼球の各々の球体の縁に穴をあけること、
(vi)前記1つまたは1対のヒト眼球の縁に沿って円周方向に切り込むこと、
(vii)前記1つまたは1対のヒト眼球から水晶体、角膜および付随する硝子体を取り出すこと、
(viii)網膜色素上皮(RPE)層から網膜(複数可)を解離させて単離された網膜または1対の単離された網膜を生成すること、および
(ix)単離された前記網膜または1対の単離された網膜を約1~8℃の培養培地またはPBS中に置くことであって、前記培養培地またはPBSは抗生物質が補充されることを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
ステップ(ii)が1~5回または3回繰り返される、項目9に記載の方法。
(項目11)
ステップ(iii)が一部または全ての眼球外組織および細胞を取り出す、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
ステップ(b)が、
(i)前記網膜試料を管に移すこと、
(ii)前記網膜試料を機械的に解離させて複数の解離された一次網膜細胞を生成すること、
(iii)複数の解離された前記一次網膜細胞を遠心分離によりペレットにすること、および
(iv)上清を取り出すこと
を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
網膜の前記機械的解離が無菌のピペットによる粉砕を通して実行される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記粉砕が2~50回、2~10回または4~8回実行される、項目13に記載の方法。
(項目15)
複数の解離された前記一次網膜細胞が4℃で約3分間の約140×gでの遠心分離によってペレットにされる、項目12~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
ステップ(ii)の後およびステップ(iii)の前に複数の解離された前記一次網膜細胞を抗生物質が補充された培養培地またはPBSにより洗浄することを含む、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
複数の解離された前記一次網膜細胞が単一細胞および細胞のクラスターを含む、項目12~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
ステップ(c)が、
(i)ステップ(b)からのペレットにされた前記一次網膜細胞を約1~8℃の抗生物質を補充した培養培地に再懸濁すること、
(ii)複数の解離された前記網膜細胞を、培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに播種することであって、必要に応じて前記細胞培養培地は抗生物質が補充されること、
(iii)複数の解離された前記網膜細胞を10~50℃でインキュベートすることであって、必要に応じて前記インキュベーションは37℃で行われること、および
(iv)一次網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定すること
を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
一次網膜細胞の前記量および生存率を凝集細胞カウント法、血球計数器またはトリパンブルーを使用してNC-200細胞カウンターによって測定する、項目18に記載の方法。
(項目20)
生存能力のある一次網膜細胞の数が約20×10
6
~約1×10
9
の生存能力のある一次網膜細胞、または約73~147×10
6
の生存能力のある一次網膜細胞である、項目19に記載の方法。
(項目21)
生存能力のある数えられた細胞の百分率が約10%~約100%、または約68%~約85%である、項目18~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記フラスコがステップ(ii)で約1~約1,000,000,000細胞で播種される、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
複数の解離された前記網膜細胞が
(1)0~30%CO
2
および0~50%O
2
の下の37℃、
(2)37℃、5%またはそれより低いCO
2
および20%またはそれより低いO
2
;または
(3)37℃、5%またはそれより低いCO
2
および3%またはそれより低いO
2
でインキュベートされる、項目18~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
ステップ(c)が、
(i)複数の解離された前記網膜細胞を顕微鏡下で視覚的に検査すること、および
(ii)細胞培養フラスコまたはプレートに播種される複数の前記網膜細胞が約2~約1000細胞からなる網膜細胞クラスターを含むことを確認すること
を含む、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
単離された一次ヒト網膜細胞を培養して非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法であって、
(a)第1の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに項目1~24のいずれか一項に記載の方法によって生成される複数の一次網膜細胞を播種して複数の培養された網膜細胞を生成するステップと;
(b)第2の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに前記第1の継代において生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップと;
(c)第3の継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに前記第2の継代において生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップと;
(d)複数の培養された前記網膜細胞を低温保存するステップと;
を含み、
1つまたは複数のコーティングされた前記培養フラスコは、1平方センチメートル(cm
2
)につき約0.5×10
4
細胞から1cm
2
につき約5×10
6
細胞の密度で播種され、
前記第1の継代の播種密度は前記第2の継代の播種密度より大きく、および
前記第2の継代の播種密度は前記第3の継代の播種密度より大きく、
それによって非不死ヒト網膜前駆細胞の前記集団を生成する方法。
(項目26)
1つまたは複数のさらなる継代において培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた培養フラスコまたはプレートに直前の継代によって生成される複数の培養された網膜細胞を播種するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記培養フラスコまたはプレートがゼノフリーのフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシン、ラミニンまたはその組合せでコーティングされる、項目18~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
複数の前記一次網膜細胞または培養された前記網膜細胞が、
(1)0~30%CO
2
および0~50%O
2
の下の37℃、
(2)37℃、5%またはそれより低いCO
2
および20%またはそれより低いO
2
;または
(3)37℃、5%またはそれより低いCO
2
および3%またはそれより低いO
2
で培養される、項目25~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
継代の間の期間が2~8日、3~6日、4~5日または3~4日である、項目25~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
複数の前記一次網膜細胞が前記第1の継代において、
(1)トリプシンまたは同等物、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、または
(2)トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBS
を含む第1の酵素溶液で解離される、項目25~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記トリプシン同等物がTrypLEである、項目30に記載の方法。
(項目32)
(1)前記TrypLEおよびEDTAが前記第1の酵素溶液の中で1:4の比であるか、または(2)前記TrypLE、前記EDTAおよび前記DPBSが1:1:3の比である、項目31に記載の方法。
(項目33)
複数の前記一次網膜細胞が37℃で約5~20分間、6~10分間または約7~8分間解離される、項目25~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
複数の培養された前記網膜細胞が前記第2の継代において、
(1)トリプシンまたは同等物、EDTAおよびDPBS、または
(2)トリプシン同等物およびDPBS
を含む第2の酵素溶液で解離される、項目25~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記トリプシン同等物がTrypLEである、項目34に記載の方法。
(項目36)
(1)前記TrypLE、EDTAおよびDPBSが前記第2の酵素溶液の中で1:1:3の比であるか、または(2)前記TrypLEおよびDPBSが前記第2の酵素溶液の中で1:1の比である、項目35に記載の方法。
(項目37)
複数の培養された前記網膜細胞が37℃で約5~20分間、約6~10分間または約7~8分間解離される、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
複数の培養された前記網膜細胞が前記第3のまたはさらなる継代において、トリプシンまたは同等物、およびDPBSを含む第3の酵素溶液で解離される、項目26~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記トリプシン同等物がTrypLEを含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記TrypLEおよび前記DPBSが前記第3の酵素溶液の中で1:1の比である、項目39に記載の方法。
(項目41)
複数の培養された前記網膜細胞が少なくとも前記第3のまたはさらなる継代において37℃で約5~10分間または約5~7分間解離される、項目38~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記さらなる継代が2つの継代を含む、項目38~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記第2の継代の後の複数の前記網膜細胞の解離の後に細胞数および生存率を決定することを含む、項目25~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%が生存能力のある、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記第1の継代で約0.5×10
6
から約3.0×10
6
細胞/cm
2
、前記第2の継代で約0.1×10
6
から約0.5×10
6
細胞/cm
2
、前記第3の継代で約0.03×10
6
から約0.2×10
6
細胞/cm
2
、および第4およびさらなる継代で約10,000~約60,000細胞/cm
2
の密度で細胞が培養フラスコまたはプレートに播種される、項目25~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
ステップ(d)の前記低温保存が、
(i)トリプシンまたは同等物を使用して前記細胞を酵素的に解離させること、
(ii)過剰量の前記培養培地またはAdvanced DMEM/F12で前記解離を停止させること、
(iii)1~30分間の10×g~10,000×gの遠心分離を通して前記細胞を遠心分離すること、
(iv)培養培地に前記細胞を再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、
(v)低温保存培地を加えて5~30%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度を達成すること、
(vi)各クリオバイアルに複数の細胞を等分すること、
(vii)速度制御フリーザーを使用して各バイアルを凍結させること、および
(viii)細胞の各バイアルを液体N
2
に入れること
を含む、項目25~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記培養培地が無血清である、項目8~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記培養培地が完全培地を含む、項目8~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記培地がダルベッコの改変イーグル培地DMEM/F12、Advanced DMEM/F12、ノックアウトDMEM/F12、Neurobasal培地、ReNcellまたはUltraculture培地を含む、項目8~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記培養培地がAdvanced DMEM/F12を含む、項目8~47のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記培養培地がN-2補助剤およびGlutaMAX-Iを含む、項目49または50に記載の方法。
(項目52)
前記培養培地がB27、B27ゼノフリーまたはStemProを含む、項目49~51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記培養培地が細胞の生存または成長を支持する補助剤または添加剤を含む、項目49~52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
細胞の生存または成長を支持する前記補助剤または添加剤が、L-グルタミン、組換えヒト上皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、他の成長因子およびその組合せからなる群から選択される、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記抗生物質が約0.5~約50μg/mLの濃度のゲンタマイシンを含み、必要に応じてゲンタマイシンの濃度は約30μg/mLである、項目8~54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
ステップ(i)の前記トリプシン同等物がTrypLEを含む、項目46に記載の方法。
(項目57)
前記低温保存培地が培養培地および10%DMSOを含む、項目46~56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
ステップ(vi)の複数の前記細胞が1mLの培養培地およびDMSOにつき約0.5×10
6
から約20×10
6
細胞を含む、項目46~57のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、各継代数における網膜前駆細胞(retina progenitor cell)の平均数を示す線グラフである。網膜前駆細胞を眼球試料からプロトコールAまたはプロトコールBのいずれかを使用して単離し、同じ日に処理したか(7時間、8時間)、または一晩の輸送後に処理した(24時間)。Pは継代数を意味し、dは日数を意味する。データ点は、同じプロトコールを使用して単離され、同じ条件下で培養された全ての網膜前駆細胞の平均数の理論的算出を表す。
【0046】
【
図2】
図2は、プロトコールBを使用した実験条件および継代条件ならびにそれらと前の培養方法(プロトコールA)の比較が記載された表である。Pは継代数を意味し、dは日数を意味し、TはTrypLE Select(Invitrogen)を意味し、EはEDTA(Invitrogen)を意味し、Pはダルベッコリン酸緩衝食塩水、またはDPBS(Invitrogen)を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
胎児の眼球(および付随する網膜組織)が長距離にわたって氷上で輸送されるとき、輸送時間が非常に長くなることがある。その時間の間、網膜組織は次第によりもろくなり、構成成分の細胞の潜在的な生存率は徐々に減少する。これは、組織を離れた場所から供給しなければならないとき、細胞の製造にとって難題となるが、その理由は、最終生成物の収量(培養の任意の設定時間における)が網膜あたりの得られる生細胞の数の影響を受けるからである。しかし、増加する組織の脆さを利用して、網膜細胞を単離するために他の方法で利用される、ある特定のステップを排除することが可能である。特に、この組織は弱い粉砕だけで破壊することができるので、網膜組織を破壊するためのトリプシンの使用を排除することができる。これは実行するのがより容易であり、組織からインキュベーターまでの時間を短くする。さらに、初期の継代の間のEDTAの使用は、細胞が培養中に回復するので、この重大な期間の間の細胞へのストレスも減少させる。連続した継代にわたって次第により小さい塊に網膜を壊し、プロセスの後期まで単一細胞に解離させようとしないことによって、生存率はさらに増強され、プロセスを実行することの危険がより小さくなる。細胞の生存率が向上するにしたがって、収量への負の影響なしにトリプシンを継代プロセスに系統的に導入することができる。
【0048】
特に、出発組織が以前より実質的に長い輸送時間にさらされるとき、予想される細胞収量は悪影響を受ける可能性がある。組織の変化は直接的に対処するのが困難であるかもしれないが、単離および初期の細胞培養プロトコールを改変して、細胞喪失の原因を排除し、それによって最終収量を高めることができる。
【0049】
本明細書に記載される網膜細胞を単離する方法は、組織入手と組織培養の開始の間に長い間隔がある場合、以前の方法に優る複数の利点を有する。本明細書に記載される方法は、(1)向上した収量、(2)酵素ステップが除かれることによる実行の容易性、(3)細胞喪失を伴う細胞溶解およびDNA流出のより低いリスク、(4)組織単離からインキュベーターへのより速いプロセス、および(5)初期の継代の間の細胞生存率の向上を限定されずに含む利点を有する。
【0050】
定義
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語が下で規定される。本明細書の用語は、本明細書に記載される対象発明の具体的な実施形態を記載するために使用されるが、それらの使用は特許請求の範囲で概説される場合を除いて対象発明を限定しない。
【0051】
本明細書に記載される態様および実施形態のいずれも、本明細書に開示される任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。
【0052】
別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるそれらに類似するかまたは同等である他のプローブ、組成物、方法およびキットを本開示の実施で使用することができるが、例示的な材料および方法が本明細書に記載される。本明細書で使用される用語は特定の態様を記載することだけが目的であり、限定するものではないことを理解すべきである。
【0053】
この開示では、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」などは、米国特許法でそれらに帰される意味を有することができ、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」などを意味することができる;用語「から本質的になる」または「本質的になる」は同様に米国特許法に基づく意味を有し、これらの用語はオープンエンドであり、列挙されるものの基本的または新規の特徴が列挙されるものより多くの存在によって変更されないが先行技術の実施形態を排除する限り、列挙されるものより多くの存在を可能にする。
【0054】
具体的に明記されるか文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「a」、「an」および「the」は単数形または複数形であることが理解される。
【0055】
具体的に明記されるか文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、用語「or」は包括的であることが理解される。
【0056】
他の文脈において本明細書で使用される場合、用語「約」は、別途指示されない限り、列挙される値、例えば、量、用量、温度、時間、百分率等の+/-10%、+/-9%、+/-8%、+/-7%、+/-6%、+/-5%、+/-4%、+/-3%、+/-2%または+/-1%を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「患者」または「対象」などは本明細書で互換的に使用され、ヒト、飼育動物および農場動物、ならびに動物園動物、スポーツ動物および愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ならびにウシ、ヒツジ、ブタおよびヤギを含む農業用動物を含む、任意の哺乳動物を指す。1つの例示的な哺乳動物は、成人、小児および高齢者を含むヒトである。対象は、イヌ、ネコおよびウマを含む愛玩動物であってもよい。例示的な農業用動物は、ウシおよびヤギを含む。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」、「処置」などは、別途指示がない限り、そのような用語が適用される疾患、障害もしくは状態、またはそのような疾患、障害もしくは状態の1つまたは複数の(すなわち、全てとは限らない)症状を、治癒、後退、軽減、緩和、最小にすること、その過程を阻害すること、抑制、停止および/または防止することを指し、症状もしくは合併症の発症を防止すること、症状もしくは合併症を緩和すること、疾患、状態または障害の進行を軽減することおよび/もしくはそれを排除することのための、本明細書に記載される組成物、医薬組成物または剤形のいずれかの投与を含む。代わりの実施形態では、処置は治療的であるかまたは改善することである。
【0059】
本明細書で使用される場合、「防止すること」または「予防」は、防止すべき事物または事象、例えば、疾患、障害または状態を全部もしくは一部防止すること、または改善すること、または制御すること、またはその生成もしくは発生を低減もしくは停止させることを意味する。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「精製された」または「富化された」などは、細胞または細胞集団がそれらの正常な組織環境から取り出され、正常な組織環境と比較してより高い濃度で存在することを示す。したがって、「精製された」または「富化された」細胞集団は、網膜前駆細胞の他の細胞型をさらに含むことができ、追加の組織構成成分を含むことができ、用語「精製された」または「富化された」は必ずしも前駆細胞の存在だけを示すとも他の細胞型の存在を排除するとも限らない。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される網膜前駆細胞集団は、少なくとも5%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも15%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも(least)25%純粋、少なくとも30%純粋、少なくとも35%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも45%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも55%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも65%純粋、少なくとも70%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、または任意の増分で、5%~99%純粋(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%網膜前駆細胞)であり得る。
【0062】
「マーカー」は、観察または検出することができる任意の分子を指す。例えば、マーカーには、限定されずに、核酸、例えば特定の遺伝子の転写物、遺伝子のポリペプチド生成物、非遺伝子生成物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質または小分子(例えば、10,000ダルトン未満の分子量を有する分子)を含めることができる。代わりの実施形態では、網膜前駆細胞は、細胞集団の中の細胞の表面(「細胞表面マーカー」)、細胞集団の中の細胞の中(すなわち、細胞の核または細胞質の中)に発現させることができる、および/または「遺伝子」マーカーとしてRNAもしくはタンパク質レベルで発現させることができる1つまたは複数のマーカーの存在によって特徴付けることができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「発現する」および「発現」は、宿主細胞の中の核酸配列の転写および/または翻訳を指す。宿主細胞での目的の所望の生成物/タンパク質、例えばマーカーの発現のレベルは、細胞中に存在する対応するmRNAの量、または本実施例の場合のように、選択される配列によってコードされる目的の所望のポリペプチド/タンパク質の量に基づいて決定または「スクリーニング」することができる。例えば、選択された配列から転写されるmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、細胞性RNAへのin situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって定量または検出することができる。選択された配列によってコードされるタンパク質は、様々な抗体ベースの方法によって、例えばELISAによって、ウエスタンブロットによって、ラジオイムノアッセイによって、免疫沈降によって、タンパク質の生物学的活性の検査によって、タンパク質の免疫染色によって(例えば、免疫組織化学および免疫細胞化学を含む)、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞分取(「FACS」)分析によって、またはホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)アッセイによって検出または定量することができる。
網膜前駆細胞(RPC)
【0064】
哺乳動物の網膜前駆細胞の単離、特徴付けおよび使用は、WO2012/158910で詳細に記載され、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
脊椎動物の胚の発生では、網膜および視神経は発生中の脳の成長(outgrowth)として生じ、そのため、網膜は中枢神経系(CNS)の一部とみなされ、実際に脳組織である。網膜は、シナプスによって相互接続しているニューロンのいくつかの層による層状構造である。硝子体の最も近くから最も遠い所まで、すなわち、頭部の前方外側の最も近くから頭部の内部および後部にかけて、網膜層は以下を含む:(1)ミュラー細胞フットプレートを含む内境界膜、(2)神経節細胞核の軸索を含有する神経線維層、(3)神経節細胞の核を含有し、その軸索が視神経線維になる神経節細胞層、(4)双極細胞軸索と神経節およびアマクリン細胞の樹状突起の間のシナプスを含有する内網状層、(5)双極細胞の核および周辺細胞体(核周囲部)を含有する内顆粒層、(6)杆体小球および錐体茎でそれぞれ終わる杆体および錐体の突起を含有する外網状層、(7)杆体および錐体の細胞体を含有する外顆粒層、(8)光受容体の内部のセグメント部分をそれらの細胞核から分離する外境界膜、(9)光受容体層、および(10)立方細胞の単層である網膜色素上皮(RPE)。光に直接的に感受性であるニューロンは光受容体細胞であり、主に2つのタイプで構成される:杆体および錐体。杆体は薄暗い光の中で主に機能し、白黒の視力を提供するが、錐体は昼間視力および色の知覚を支える。光感受性の神経節細胞である第3のタイプの光受容体は、明るい日光への反射応答にとって重要である。
【0066】
ドナー胎児の網膜細胞(例えば、本明細書に記載される網膜前駆細胞)は、特に宿主錐体を含む宿主網膜に栄養性の影響を及ぼす可能性がある。この栄養性の効果は神経保護だけでなく、視覚機能の向上によって決定される残存宿主網膜細胞への急速な復活効果も有する。ドナー細胞は網膜と一体化することが可能で、細胞分化を通して光受容体(限られた数であってもよい)を置き換える。全体的効果は、網膜の臨床的に有意な程度の視覚機能を急速および持続的に回復および保護することであり、そうでなければ完全に機能不全に陥り、患者を完全に盲目にする。したがって、本明細書に記載される組成物および方法のいずれも、哺乳動物、例えばヒトの網膜において、臨床的に有意な程度の視覚機能を急速および持続的に回復し、保護するために使用することができる。例えば、本明細書に記載される組成物および方法のいずれも、病的な網膜に臨床的に有意な栄養性の影響を提供することができるか、黄斑および/または暗順応視覚機能に再生作用を提供することができる。
【0067】
本明細書に記載される組成物および集団の中の細胞は、単離された単一細胞型というよりも近縁の細胞の集団である。
【0068】
これらの細胞はそれ自体幹細胞でなく(それらは真の幹細胞の定義を満たさないので)、それらは未熟および/または可塑性である。しかし、これらの細胞は胚葉を生成することができなく(追加の操作がない場合)、および/または全ての3つの(3)胚葉を生成することができない(追加の操作がない場合)。
【0069】
さらに、これらの細胞は、網膜組織または細胞を形成するように事前に設定される。したがって、これらの細胞は、前駆体マーカーおよび網膜マーカーを発現することができる。
【0070】
網膜前駆細胞は多能性でなく、複能性であるように見えることがある。しかし、細胞は多能性状態で培養されたことがないので、それらはしたがってより安全である。一部の実施形態では、哺乳動物の胎児網膜細胞またはRPC細胞は多能性細胞系から人工的に誘導することができるが、それらは必要に応じて残存多能性細胞型の集団を含有しない。
【0071】
本明細書に記載される細胞は網膜前駆細胞(RPC)であり、それらは神経前駆体および/または神経幹細胞(NSC)から区別することができる。具体的には、そのような哺乳動物の胎児網膜またはRPC細胞は複能性であるが、NSCと同等でない。例えば、哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は脳からではなく、網膜からのものである。さらに、哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は光受容体を生成するが、脳由来の前駆体は光受容体の生成で劣る。同様に、NSCとは異なり、哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は複能性であるが希突起膠細胞を生成しない(追加の操作がない場合)。例えば、哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、光受容体を含む網膜細胞を生成する(分化する)が希突起膠細胞を生成しない。
【0072】
哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は、毛様体縁、毛様体上皮やRPEからでなく、哺乳動物の胎児の神経網膜から得られる(または、入手できる)。さらに、哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は、分化したミュラーグリアに由来するものでもなく、有糸分裂後の前駆体自体でもなく、幹細胞自体でもなく、および/または単一の単離細胞型自体でもない。
【0073】
哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、初期の胚(例えば、胚盤胞)で見出されない。さらに、哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、正常な成熟した哺乳動物(例えば、ヒト)ではいかなる有益な存在度でも見出されない。
【0074】
さらに、網膜前駆細胞は、生物体の生涯にわたって持続しない。しかし、これらの哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、発達中の(胎児の)哺乳動物(例えば、ヒト)の網膜においてそれらの天然の存在度で見出される。
【0075】
哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPCは、増殖条件下で成長させたとき大部分は有糸分裂であるが、有糸分裂後の細胞の少数派の混合物も、本明細書に記載される組成物および集団のいずれに含まれてもよい。
【0076】
哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、無関係な哺乳動物、例えばヒトにおける眼の同種移植として免疫学的に寛容される。したがって、RPCは目に入れられたときに低い免疫原性を有する。非限定的な例として、これらの哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、哺乳動物またはヒトの視力または網膜の疾患の治療的および/または予防的療法のために、硝子体腔または網膜下の空間に移植することができる。
【0077】
代わりの実施形態では、哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、腫瘍形成や他の望ましくない細胞成長のいかなるリスクも伴わない(または、実質的なリスクがない)。
【0078】
哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、スフェアもしくは粘着性の単層として、またはスフェアおよび次に単層として、および/またはスフェアおよび単層の組合せとして培養することができる。しかし、スフェアは必要ではなく、一部の実施形態では、細胞はスフェアではなく解離された細胞として、または解離された細胞およびスフェアの混合物として移植される。哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、硝子体中で合体し、必要に応じてスフェアになることができる移植された細胞を含有する。
【0079】
代わりの実施形態では、網膜前駆細胞およびそれらを含有する細胞集団は不死でもなく、それらは不死化させられもせず、不死化するように強制もされない。細胞は無期限に増殖しないが、本明細書に記載される例示的な細胞培養方法は、増殖速度および期間を向上させることができ、および/または所与の組織供与のためにドナー細胞収量を有意に向上させることができる。本明細書で使用される場合、「不死」細胞系は、無期限に分裂することができる細胞系であるが、「非不死」細胞系は限定数の継代の間分裂することができる。例えば、非不死網膜前駆細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30またはそれより多くの継代を通して分裂することができる。
【0080】
RPCは非遺伝子改変細胞であってよいか、またはそれらは当技術分野で公知である任意の方法(複数可)を使用して遺伝子改変されてもよい(例えば、安定してもしくは一時的に、または誘導可能に形質転換される)。例えば、網膜前駆細胞は、目的の1つまたは複数の異種または外因性の核酸配列を発現するように遺伝子改変することができる。核酸配列は「外因性」であってよく、そのことは、それがベクターが導入される細胞にとって外来であること、または、その配列が細胞内の配列にとって同種であるが、その配列が通常見出されない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。核酸配列には、プラスミド、アンプリコン、cDNA、mRNA、アンチセンスRNA、siRNAが含まれるが、これらの例に限定されない。用語「遺伝子」は、機能的タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする核酸単位を指す。当業者によって理解されるように、この機能的という用語は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質および変異体を発現するか発現するように適合させることができる、ゲノム配列、cDNA配列およびより小さい操作された遺伝子セグメントを含む。
【0081】
細胞を遺伝子的に改変するために、当技術分野で公知である任意の方法を使用することができる。1つの例示的な方法は、組換えウイルスベクターで遺伝子を組織の細胞に挿入することである。治療剤をコードする外因性核酸断片を標的細胞および/または組織に導入するために、当技術分野で公知であるいくつかの異なるベクター、例えばウイルスベクター、プラスミドベクター、線状DNA等のいずれか1つを使用することができる。これらのベクターは、当技術分野で公知のとおり、例えば、感染、形質導入、トランスフェクション、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム介在トランスフェクション、微粒子銃による遺伝子送達、融合性およびアニオン性リポソーム(これらは、カチオン性リポソームの使用の代わりである)を使用したリポソーム遺伝子送達、直接注入、受容体介在取り込み、マグネトポレーション、超音波などのうちのいずれかを使用して挿入することができる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、それを複製することができる細胞の中への導入のために核酸配列を挿入することができる担体核酸分子を指す。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルスおよび植物ウイルス)および人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者は、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.;Ausubel et al. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publ. Assoc. & Wiley-Intersciencesに記載される標準の組換え技術によってベクターを構築するのに十分な備えがあるはずである。改変されたポリペプチドをコードすることに加えて、ベクターはタグまたは標的化分子などの非改変ポリペプチド配列をコードすることができる。そのような融合タンパク質をコードする有益なベクターには、後の精製および分離または切断のためにグルタチオンS-転移酵素(GST)可溶性融合タンパク質を生成するのに使用するための、pINベクター、ひと続きのヒスチジンをコードするベクター、およびpGEXベクターが含まれる。
【0083】
ベクターは、主に、1つまたは複数の制御配列に「作動可能に連結する」かまたはその制御下にある遺伝子などの異種核酸分子を細胞に導入するように設計することができる。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼIIおよび他の転写活性化因子タンパク質のための開始部位の周囲に集まる1つまたは複数の転写制御モジュールを指す。目的の核酸分子の発現を促進するために、任意のプロモーター/エンハンサーの組合せ(真核生物プロモーターデータベースEPDBによる)を使用することもできる(すなわち、構成的、誘導性、抑制性、組織特異的)。さらに、in vitroまたはex vivoでのそれらの操作を容易にするために、ベクターは選択マーカーを含有することができる。ベクターはポリアデニル化シグナルを含有することもでき、それはヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子、ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子またはSV40から得ることができる。さらに、ベクターは、多重遺伝子または多シストロン性メッセージを作製するために使用される内部リボソーム結合部位(IRES)エレメントを含有することもできる。IRESエレメントは、5メチル化キャップ依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを回避し、内部の部位で翻訳を開始することができる(Pelletier, J. and Sonenberg, N. (1988) Nature 334(6180): 320-325)。IRESエレメントは、異種のオープンリーディングフレームに連結することができる。複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写することができ、各々はIRESによって分離され、多シストロン性メッセージを作製する。IRESエレメントによって、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームに利用しやすい。単一のメッセージを転写するために単一のプロモーター/エンハンサーを使用して、複数の遺伝子を効率的に発現させることができる。
【0084】
一部の実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。当技術分野で公知であるウイルスベクターには、限定されずに、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ポリオーマウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レンチウイルスベクター、エプスタイン-バーウイルスベクター、ピコルナウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターがAAVベクターである実施形態では、当技術分野で公知であるAAVベクターの任意の血清型を使用することができる。例えば、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8またはAAV9であってよい。AAVは偽型化すること、異なるウイルス血清型からのキャプシドタンパク質およびウイルスゲノム(例えば、1つのAAV血清型からの逆方向末端反復および異なる血清型からのキャプシド)をミックスすることができる。
【0085】
他の実施形態では、リポソームまたは脂質製剤に核酸配列を取り込むことができる。リポソームは、リン脂質二重層膜および内部の水性媒体によって特徴付けられる小胞構造物である。多層リポソームは、水性媒体によって分離される複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰の水性溶液に懸濁するときに自然発生的に形成される。脂質構成成分は閉鎖構造の形成の前に自己再配置を経て、水および溶解している溶質を脂質二重層の間に取り込む(Ghosh, P. C. and Bachhawat, B. K. (1991) Targeted Diagn. Ther. 4: 87-103)。市販されているリポソームまたは脂質製剤の1つの例は、Lipofectamine(Invitrogen)である。他のものには、FuGENE(Promega)、PromoFectin(PromoKine)、Affectene(Qiagen)、Polyfect(Qiagen)、Superfect(Qiagen)およびTransMessenger(Qiagen)が含まれる。
一次網膜細胞の単離
【0086】
胎児網膜細胞、例えばヒト一次網膜細胞を試料から単離する、培養する、かつ/または胎児網膜細胞の解離された懸濁液を使用するための方法が本明細書で提供される。様々な実施形態では、胎児網膜細胞の懸濁液は、組織もスキャホールドも含まない。網膜前駆細胞の単離および特徴付けのための方法、ならびにドナー組織から採取し、培養で成長させ、対象または患者への投与のために製剤化するそのような細胞を含有する組成物も提供される。
【0087】
ヒト試料から一次網膜細胞を単離するための本明細書に記載される方法は、複数の一次網膜細胞を消化するためにプロテアーゼの使用を必要とせず、そのことは、プロテアーゼまたは機械的解離およびプロテアーゼ消化の組合せを使用する方法と比較して、より多くの数の生存能力のある一次網膜細胞をもたらす。
【0088】
一態様では、本開示は、ヒト試料から一次網膜細胞を単離する方法であって、(a)ヒト試料から複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離するステップと、(b)ステップ(a)で単離された網膜試料中の複数の一次網膜細胞を機械的に解離させ、それによって細胞および細胞クラスターの解離された懸濁液を生成するステップと、(c)網膜試料からの一次網膜細胞の生存率、量、形態またはその組合せを決定するステップとを含む方法を提供する。ヒト試料は、ヒトドナーから単離される。ドナーは、17から約20週齢であってよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される一次網膜細胞を単離する方法は、少なくとも30×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成し、それらは次に培養されて網膜前駆細胞を生成する。
【0089】
一部の実施形態では、試料は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、非ヒト霊長類またはヒトから単離される目または1対の目である。一部の実施形態では、試料は農業用動物、例えば、ウマ、ウシまたはヒツジに由来する。
【0090】
細胞集団を単離および/または培養するために使用する試料は、健康な対象(すなわち、網膜疾患を持っていない個体)から、病的な対象から採取することができ、新鮮な網膜細胞集団だけでなく、冷凍網膜細胞集団も含むことができる。供与源には、限定されずに、胚、胎児、小児または成体の組織から得られる完全な目、または網膜組織、または他の供与源が含まれる。本明細書に記載される方法は、他の網膜前駆細胞特異的マーカーの正の選択による細胞単離のための、さらなる富化または精製の手順またはステップを含むことができる。網膜前駆細胞および細胞集団は、任意の哺乳動物種または対象、例えばヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、ハムスター等から取得または採取することができる。
【0091】
一部の実施形態では、細胞は、網膜がその後に形成される段階で、但し、光受容体の外部セグメントが網膜全体に完全に形成される前、および網膜の血管化が完了するか実質的に完了する前に、哺乳動物の胎児網膜から採取される。段階は、ヒト胎児では一般的に妊娠約12週から約28週(例えば、約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28週)の胎児年齢である。一部の実施形態では、段階は、妊娠17週齢から約20週齢であってよい。ネコまたブタの網膜前駆細胞などのより大きな哺乳動物からの非ヒト細胞の場合、段階は、一般的に妊娠約3週から約11週(例えば、約3、4、5、6、7、8、9、10または11週)の胎児年齢である。例えば、The Retina and Its Disorders, Besharse, J. and Bok, D., Academic Press, (2001)、の中のAnand-Apte, B. and Hollyfield, J. G. "Developmental Anatomy of the Retinal and Choroidal Vasculature."を参照する。しかし、細胞は出産後または新生児哺乳動物の組織から採取することもできる。
【0092】
一部の実施態様では、試料はヒト試料である。一部の実施形態では、ヒト試料はヒトドナーからの1つまたは1対の眼球である。一部の実施形態では、ヒトドナーは妊娠約12週から約28週齢である。一部の実施形態では、ヒトドナーは妊娠約17週から約20週齢である。一部の実施形態では、ドナーのより狭い年齢範囲の使用は、製造中の網膜前駆細胞の最終収量の一貫性を向上させる。
【0093】
一部の実施形態では、試料は1つまたは1対のヒト胎児眼球である。一部の実施形態では、眼球は正常な形態を有する。正常な形態は、無傷の球体(複数可)、透明な角膜、正常な形状またはこれらの特性の任意の組合せなどの特性の視診によって決定することができる。
【0094】
一部の実施形態では、ヒト網膜組織は氷上で出荷し、輸送ウインドウの範囲内で送達することができる。輸送ウインドウは、目的地または出発地点で細胞をある期間、例えば氷上で、または約1~8℃もしくは約4℃の温度の冷蔵庫で保持することを含むことができる。一部の実施形態では、輸送ウインドウは、約1~40時間、約7~40時間、約1~34時間、約7~34時間、約1~26時間、約4~26時間、約7~26時間、約8~26時間、約4~18時間、約7~18時間、または約8~18時間である。一部の実施形態では、輸送ウインドウは、約1時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、約5時間、約5.5時間、約6時間、約6.5時間、約7時間、約7.5時間、約8時間、約8.5時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間または約26時間である。非限定的な例として、輸送ウインドウは、約1~約26(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5または26)、例えば、約4.5~約21.5時間(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21または21.5)または約7~約26時間(例えば、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5または26時間)であり得る。
【0095】
一部の実施形態では、試料はドナーからの採取の後に哺乳動物細胞培養培地に置かれる。試料の輸送の間に使用することができる哺乳動物の細胞培養培地には、基礎細胞培養培地および複合細胞培養培地の両方が含まれる。輸送の間に使用される基礎細胞培養培地の非限定的な例には、限定されずに、とりわけ最小必須培地イーグル、ADC-1、LPM(ウシ血清アルブミンを含まない)、F10(Ham)、F12(Ham)、DCCM1、DCCM2、RPMI1640、BGJ培地(Fitton-Jackson改変の有る無し)、基礎培地イーグル(BME-アール塩ベースを添加)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM-無血清)、Advanced DMEM/F-12、Yamane、IMEM-20、Glasgow改変イーグル培地(GMEM)、Leibovitz L-15培地、McCoyの5A培地、培地M199(M199E-アール塩ベース(sale base)を含む)、培地M199(M199H-ハンク塩ベースを含む)、最小必須培地イーグル(MEM-E-アール塩ベースを含む)、最小必須培地イーグル(MEM-H-ハンク塩ベースを含む)および最小必須培地イーグル(非必須アミノ酸を含まないMEM-NAA)、例えば、培地199、CMRL 1415、CMRL 1969、CMRL 1066、NCTC 135、MB 75261、MAB 8713、DM 145、ウィリアムズのG、Neuman & Tytell、Higuchi、MCDB 301、MCDB 202、MCDB 501、MCDB 401、MCDB 411、MDBC 153およびUltracultureが挙げられる。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地は、RPMI-1640を含む。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地はL-グルタミンを補充したRPMI-1640を含む。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地は、Advanced DMEM/F-12を含む。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地は、完全培地を含む。例えば、輸送のために使用される細胞培養培地は、N-2補助剤、B27ゼノフリー、B27、StemPro、上皮成長因子(EGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)またはGlutaMAX Iの1つまたは複数を補充した基礎培地を含む。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地は、1つまたは複数の抗生物質を含む。例えば、輸送のために使用される細胞培養培地は、1ミリリットル(mL)につき約30~100マイクログラム(μg)の、または約0.5~約50μg/mLのゲンタマイシンを含む。一部の実施形態では、輸送のために使用される細胞培養培地は、約50μg/mLのゲンタマイシンを含む。
【0096】
一部の実施形態では、ヒト試料は輸送細胞培養培地の中に置いた直後に約1~8℃で保存される。一部の実施形態では、ヒト試料は輸送細胞培養培地の中に置いた直後に約4℃で保存される。例えば、ヒト試料は輸送細胞培養培地の中に置いた直後に氷上で保存される。
【0097】
本開示は、ヒト試料、例えば、妊娠約12~28週齢のヒトドナーからの1つまたは1対の眼球を含む試料から、複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離する方法を提供する。
【0098】
網膜前駆細胞は、組織試料の処理の後か同時に他の組織構成成分から精製することができる。例えば、前駆細胞は、組織試料が細胞成長のために好適な条件下で、および細胞を培養シャーレに接着させるのに十分な時間培養された後に、他の細胞および組織構成成分から精製することができる。ある特定の実施形態では、細胞の精製は、培養の間に組織試料から移動し、培地中に存在するかまたはフィブロネクチンもしくは他の基質またはフィーダー細胞層にゆるく付着する細胞を得ることを含む。これらの細胞は、ルーチンの方法で、例えば、その中の細胞をペレットにするために培地を取り除き、遠心分離し、培養シャーレ中の残存細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)またはハンクス平衡塩溶液などの溶液で洗浄して、接着細胞層としてゆるく結合したそれらの細胞を取り外すことによって得ることができる。この洗浄溶液は、細胞を得るためにその後遠心分離することもできる。網膜前駆細胞および細胞集団の精製は、脂質などの残存組織材料を含むある特定の不溶性組織構成成分から細胞を分離することをさらに含むことができる。細胞は、例えば、密度勾配の使用、遠心分離、フローサイトメトリーもしくは磁気細胞分離(MACS)による選別、および濾過またはその組合せを含む、公知であり当技術分野で利用可能な任意の手段によって他の組織構成成分から分離することができる。細胞を精製する具体的な方法の例は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,777,231号に記載される。1つまたは複数の特定の細胞型を取り出すために、負の分離方法を用いることもできる。
【0099】
組織は、処理または「解離させる」こともできる。例えば、1つまたは1対の眼球などの組織は処理または切開して網膜を単離し、網膜を解離させて複数の一次網膜細胞および細胞クラスターを生成することができる。これらの一次網膜細胞および細胞クラスターは、本明細書に記載されるように次に培養して、複数の網膜前駆細胞を生成する。
【0100】
したがって、本開示は、ヒト試料から複数の一次網膜細胞を含む網膜試料を単離する方法を提供する。ヒト試料は、例えば、妊娠約12~28週齢のヒトドナーからの1つまたは1対の眼球を含む。一部の実施形態では、本方法は、(i)輸送培養培地から1つまたは1対のヒト眼球を取り出すこと、(ii)1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)ですすぐこと、(iii)1つまたは1対のヒト眼球から視神経および間葉組織を取り出すこと、(iv)1つまたは1対のヒト眼球を、抗生物質を補充した約1~8℃のPBSで洗浄すること、(v)針を使用して1つまたは1対のヒト眼球の各々の球体の縁に穴をあけること、(vi)例えば1対のマイクロシザーズを使用して、1つまたは1対のヒト眼球の縁に沿って円周方向に切り込むこと、(vii)1つまたは1対のヒト眼球から水晶体、角膜および付随する硝子体を取り出すこと、(viii)網膜色素上皮(RPE)層から網膜(複数可)を解離させて単離された網膜または1対の単離された網膜を生成すること、および(ix)単離された網膜または1対の単離された網膜を約1~8℃の培養培地またはPBS中に置くことであって、培養培地またはPBSは抗生物質が補充されることを含む。様々なステップで試料をすすぐ(または、洗浄する)ことは、1~5回またはそれより多く繰り返すことができる。例えば、試料は1、2、3、4または5回すすぐことができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成される網膜試料は、眼球外の細胞を含まないかまたは実質的に含まない。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して単離される網膜試料は、解離されて単離された網膜細胞および網膜細胞のクラスターを生成し、それらは培養されて網膜前駆細胞を生成する。一部の実施形態では、網膜試料の解離は機械的である。一部の実施形態では、解離は、(i)網膜試料を管に移すこと、(ii)網膜試料を機械的に解離させて複数の解離された一次網膜細胞を生成すること、(iii)複数の解離された一次網膜細胞を遠心分離によりペレットにすること、および(iv)上清を取り出すことを含む。機械的解離は、無菌のピペットによる粉砕を限定されずに含む、当技術分野で公知の任意の手段によって達成することができる。一部の実施形態では、粉砕は、複数回、例えば2~50回、2~10回または2~8回、または網膜試料が好適なサイズの細胞クラスターの状態になるまで実行される。一部の実施形態では、粉砕は4~8回実行される。
【0102】
一部の実施形態では、網膜試料の解離は、プロテアーゼによる消化を含む。一部の実施形態では、網膜試料の解離は、プロテアーゼによる消化および機械的解離を含む。一部の実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。好適なトリプシン組成物は当業者に公知であり、TrypLE(Thermo Fisher Scientific)、TrypLE Select(Invitrogen)およびTrypLE Express(Invitrogen)が限定されずに含まれる。例えば、単離された網膜は、未希釈のTrypLE Expressの中でピペット操作することができる。トリプシンなどのプロテアーゼの活性(activity or proteases)は、反応を停止するための過剰のプロテアーゼフリーの培地の添加によって中和することができる。例えば、5倍、10倍、15倍または20倍過剰の培養培地を、解離された網膜を含む混合物に加えることができる。
【0103】
細胞および/または細胞クラスターの「解離された懸濁液」を作製するために、解離は、物理的解離によっておよび/または他の組織構成成分からの細胞の遊離を容易にする酵素調製物への曝露によって実行することができる。そのような酵素の例には、マトリックスメタロプロテイナーゼ、クロストリパイン、パパイン、トリプシン、トリプシン様、ペプシン、ペプシン様、中性プロテアーゼ型およびコラゲナーゼが限定されずに含まれる。好適なタンパク質分解酵素は、米国特許第5,079,160号;第6,589,728号;第5,422,261号;第5,424,208号;および第5,322,790号に記載される。例えば、酵素調製物はトリプシンを単独で、または1つまたは複数の追加の酵素と組み合わせて含むことができる。望ましくない細胞または結合組織を取り除き、最終的には単一細胞培養物をもたらすか、またはサイズ、すなわち「小」、「中間」および「大」によって規定することができる細胞クラスターを含むことができるように、酵素的解離を、例えば、細かく刻むこと、ピペット操作すること、細断すること、ホモジナイズすること、磨砕すること、凍結融解すること、浸透圧により衝撃を与えることによる物理的解離と併用して実行することができる。細胞クラスターサイズは主観的であり、本明細書に開示される対象発明の実施において異なってもよい。本明細書に記載される単離された一次網膜細胞は、単離された細胞および細胞のクラスターを含む。単離された一次網膜細胞のクラスターは、約2~5000細胞、2~4000細胞、2~3000細胞、2~2000細胞、2~1000細胞、2~100細胞、50~5000細胞、50~4000細胞、50~3000細胞、50~2000細胞、50~1000細胞、50~100細胞、500~5000細胞または500~1000細胞であってよい。
【0104】
複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、細胞を濃縮するために、細胞を洗浄もしくはすすぐために、または細胞培養培地を変更するために、遠心分離を通してペレットにすることができる。例えば、複数の解離された一次網膜細胞は、必要に応じて抗生物質を補充した培養培地またはPBSで洗浄することができる。複数の解離された一次網膜細胞は、約100×g(遠心力)~約1000×g、約100×g~約500×g、約140×g~約300×gの遠心分離を通してペレットにすることができる。一部の実施形態では、複数の解離された一次網膜細胞は約140×gでの遠心分離によってペレットにされる。一部の実施形態では、複数の解離された一次網膜細胞は約300×gでの遠心分離によってペレットにされる。遠心分離は、約1分~30分間であってよい。例えば、複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30分間遠心分離することができる。遠心分離は、細胞の生存率を維持するのに必要な任意の温度であってよい。一部の実施形態では、複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、約0℃~50℃で遠心分離される。一部の実施形態では、複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、約4℃で遠心分離される。一部の実施形態では、複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、約18℃~24℃で遠心分離される。一部の実施形態では、複数の単離された一次網膜細胞を含む組成物は、約37℃で遠心分離される。
【0105】
本明細書に記載される方法の一部の実施形態では、本方法は、(i)解離され、ペレットにされた一次網膜細胞を約1~8℃の抗生物質を補充した培養培地に再懸濁すること、(ii)複数の解離された網膜細胞を、培養培地を含有する1つまたは複数のコーティングされた細胞培養フラスコまたはプレートに播種することであって、必要に応じて細胞培養培地は抗生物質が補充されること、(iii)複数の解離された網膜細胞を約10~50℃でインキュベートすることであって、必要に応じてインキュベーションは約37℃で行われること、および(iv)一次網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定することを含む。フラスコまたはプレートは、任意の適当な密度で播種することができる。例えば、フラスコまたはプレートには、約1~約1,000,000,000細胞で播種されてもよい。あるいは、フラスコまたはプレートには、1平方センチメートル(cm2)につき約10,000~約5×106細胞で播種することができる。さらなる代替形態として、フラスコまたはプレートには、1平方センチメートル(cm2)につき約0.50×106~約2.5×106細胞で播種することができる。さらなる代替形態として、フラスコまたはプレートには、1平方センチメートル(cm2)につき約0.82×106~約2.06×106細胞で播種することができる。さらなる代替形態として、フラスコまたはプレートには、1cm2につき約0.1×106~約20×106細胞、1cm2につき約1×106~約20×106細胞、1cm2につき約2×106~約20×106細胞、1cm2につき約3×106~約20×106細胞、1cm2につき約4×106~約20×106細胞、1cm2につき約5×106~約20×106細胞、1cm2につき約6×106~約20×106細胞、1cm2につき約7×106~約20×106細胞、1cm2につき約8×106~約20×106細胞、1cm2につき約9×106~約20×106細胞、1cm2につき約10×106~約20×106細胞、1cm2につき約0.2×106~約10×106細胞、1cm2につき約0.2×106~約5×106細胞、1cm2につき約0.2×106~約4×106細胞、1cm2につき約0.2×106~約3×106細胞、1cm2につき約0.2×106~約2×106細胞、1cm2につき約0.5×106~約10×106細胞、1cm2につき約0.5×106~約5×106細胞、1cm2につき約0.5×106~約4×106細胞、1cm2につき約0.5×106~約3×106細胞または1cm2につき約0.5×106~約2.5×106細胞で播種することができる。
【0106】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、約20×106~約1×109の生存能力のある一次網膜細胞、約20×106~約1×108の生存能力のある一次網膜細胞、約20×106~約1×107の生存能力のある一次網膜細胞、約30×106~約1×109の生存能力のある一次網膜細胞、約30×106~約1×108の生存能力のある一次網膜細胞、約30×106~約1×107の生存能力のある一次網膜細胞、約20×106~約147×106の生存能力のある一次網膜細胞、約20×106~約100×106の生存能力のある一次網膜細胞、または約73×106~約147×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約20×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約30×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約35×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約30×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約45×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約50×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、少なくとも約20×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約30×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約40×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約50×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約60×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約70×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約80×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約90×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約100×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約120×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約140×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約145×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約147×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約150×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約170×106の生存能力のある一次網膜細胞、少なくとも約190×106の生存能力のある一次網膜細胞、または少なくとも約200×106の生存能力のある一次網膜細胞を生成する。
【0107】
細胞の形態、数および生存率
網膜試料からの一次網膜細胞および一次網膜細胞から生成される網膜前駆細胞の生存率、量および形態を決定する方法が本明細書で提供される。
【0108】
細胞の形態は、任意の好適な方法を使用した光学顕微鏡法を通して決定することができる。好適な光学顕微鏡法による方法は当業者に公知であり、微分干渉コントラスト、ノマルスキー、ホフマン変調コントラストおよびその変異形、蛍光顕微鏡法および共焦顕微鏡法が限定されずに含まれる。必要に応じて、単離された一次網膜細胞の1つまたは複数のマーカーのための組織化学的染色を使用することができる。
【0109】
細胞の数および生存率は、NC200 Automated Cell Counter(Chemometec)および凝集細胞カウント法を使用して測定することができる。あるいは、またはさらに、細胞の数および生存率は、トリパンブルーまたは血球計数器を使用して測定することができる。
【0110】
一部の実施形態では、生存能力のある数えられた細胞の百分率は約10%~約100%、または約68%~約85%である。
【0111】
哺乳動物の胎児の網膜またはRPC細胞は、例えば本明細書に記載されるように、量的に異なる遺伝子プロファイルを発現する;または、それらは量的に異なる可溶性因子プロファイルを発現する;または、それらは量的に異なる表面マーカープロファイルを発現する。さらに、哺乳動物の胎児の網膜細胞またはRPC細胞は、固定でもなく、一定でも、不変でもない遺伝子プロファイルを有する。むしろ、それらは培養において経時的に量的にダイナミックに変化する遺伝子プロファイルを有する。
【0112】
本明細書に開示される対象発明は、規定の細胞培養方法によって単離され、特徴的なマーカーを発現する哺乳動物の網膜前駆細胞を含有する細胞集団に関する。細胞集団は、哺乳動物から単離され、in vitroで成長させる細胞の培養物であってよい。例えば、培養物は、培養プレート、シャーレ、フラスコまたはバイオリアクターで培養される細胞または接着細胞の懸濁液を含むことができる。試料は均一であるか不均一であってもよく、それは本明細書に規定される1つまたは複数のマーカーの発現によって決定することができる。本明細書に開示される細胞集団は混合細胞集団であり、未分化のおよび分化した細胞の混合物を含有することができる。本明細書に規定される網膜前駆細胞に特徴的なマーカーの相対発現レベルは、集団の中の細胞の間で変化することができる。
【0113】
網膜前駆細胞は、細胞表面マーカーおよび非表面(「遺伝子」)マーカーを含む分子マーカーのそれらの発現によって特徴付けることができる。特定のマーカーに関して細胞を「陽性」または「陰性」と呼ぶことは当技術分野で一般的であるが、実際の発現レベルは量的に決定される。細胞表面の(または、他の場所に位置する)分子の数は数ログ(several logs)異なることができるが、なお「陽性」と特徴付けることができる。当業者は、染色が陰性である、すなわちマーカー特異的試薬の結合レベルが対照、例えばアイソタイプがマッチした対照と検出可能的に異ならない細胞は、少量のマーカーを発現することができることも理解する。標識化(「染色」)のレベルの特徴付けは、細胞集団の間の微細な区別を可能にする。細胞の染色強度はフローサイトメトリーによって監視することができ、ここではレーザーが(特異的試薬、例えば抗体が結合する細胞表面マーカーの量に比例する)蛍光色素の量的レベルを検出する。特異的試薬への結合強度ならびに細胞サイズおよび光散乱などの他のパラメータに基づいて細胞集団を分離するために、フローサイトメトリーまたはFACSを使用することもできる。染色の絶対レベルは特定の蛍光色素および試薬調製物によって異なることがあるが、データは対照に正規化させることができる。
【0114】
分布を対照に正規化させるために、各細胞は特定の染色強度を有するデータポイントとして記録される。これらのデータポイントは対数スケールによって提示することができ、ここでは、測定単位は任意の(arbitrary)染色強度である。例として、試料の中で最も明るく染色された細胞は、未染色細胞より4logも強いことがある。このように提示される場合、最も高いlogの染色強度に入る細胞は明るいが、最も低い強度のものは陰性である。「低い」陽性染色の細胞はアイソタイプがマッチした対照の明るさを超えるレベルの染色を有するが、集団で通常見出される最も明るく染色する細胞ほど強くない。低い陽性の細胞は、試料の陰性のおよび明るく染色される陽性の細胞と異なる特有の特性を有することができる。代わりの対照は、その表面上に定義された密度のマーカーを有する基材、例えば、強度についての陽性対照を提供する、作製されたビーズまたは細胞系を利用することができる。
【0115】
マーカーの発現は、網膜前駆細胞および細胞集団が由来する網膜組織の培養の間変化させることができる。例えば、マーカー発現の差には、酸素レベル(例えば、大気の酸素条件、すなわち「正常酸素圧」条件;または「低酸素」条件としても知られる低酸素条件)などの培養条件が影響することができる。非限定的な例として、低酸素条件は、約0.5%~10%酸素(例えば、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10%)を含むことができる。一部の実施形態では、低酸素条件は、約0.5%~5%、約1%~5%または約1%~3%を含むことができる。当業者は、網膜前駆細胞および細胞集団のマーカー発現が静的でなく、1つまたは複数の培養条件、例えば、培地、酸素レベル、継代数、培養時間等の関数として変化することができることを認識している。
【0116】
網膜前駆細胞および細胞集団は、1つまたは複数の、2つまたはそれより多くの、3つまたはそれより多くの、4つまたはそれより多くの、5つまたはそれより多くの、6つまたはそれより多くの、7つまたはそれより多くの、8つまたはそれより多くの、9つまたはそれより多くの、10個またはそれより多くの、11個またはそれより多くの、12個またはそれより多くの、13個またはそれより多くの、15個またはそれより多くの、16個またはそれより多くの、17個またはそれより多くの、18個またはそれより多くの、19個またはそれより多くの、20個またはそれより多くの、25個またはそれより多くの、30個またはそれより多くの本明細書に規定されるマーカー、または、最高50個のその間の任意の増分またはそれより多くのマーカーを発現することができる。
一次網膜細胞および網膜前駆細胞(RPC)を培養する
【0117】
移植および治療適用のための網膜前駆細胞の集団を生成するために、一次網膜細胞および網膜前駆細胞を培養する方法が、本明細書で提供される。
【0118】
本明細書に記載される方法は、大量の生細胞を生成することができる。例えば、本明細書に記載される方法は、採取時に約1,000,000,000個の網膜前駆細胞またはそれより多くを生成することができる。一部の実施形態では、細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は生存能力がある。
【0119】
一部の実施形態では、細胞の改変を回避するために、ドナー細胞は抗生物質なしで培養することができる。さらに、抗生物質なしでも不顕性微生物によるコンタミネーションを除外することができるので、非常に低い継代の細胞の使用が可能である。代わりの実施形態では、低い継代の細胞の使用は、形質転換および/または腫瘍形成の低いリスクを有する。さらに、低い継代の細胞の使用は、発達中の網膜に存在する天然の細胞に最も近い。
【0120】
一部の実施形態では、一次網膜細胞および網膜前駆細胞は、抗生物質を使用して培養される。好適な抗生物質には、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびゲンタマイシンが限定されずに含まれる。一部の実施形態では、抗生物質はゲンタマイシンを含む。一部の実施形態では、ゲンタマイシンは、約0.5~50μg/mL、例えば、約0.5~40μg/mL、約5~50μg/mLまたは約5~35μg/mLの濃度である。一部の実施形態では、ゲンタマイシンは約50μg/mLの濃度である。一部の実施形態では、ゲンタマイシンは約30μg/mLの濃度である。
【0121】
RPCの成長および培養のために、任意の好適な基礎培地を使用することができる。細胞培養は、制御された条件の下で、一般的にそれらの天然の環境の外で細胞が成長する過程を記載する。細胞集団は、当技術分野で公知である任意の細胞培養培地で成長または培養される。用語「基礎培地」は、細胞成長を支持することができる任意の培地を指す。基礎培地は、亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウムおよびカリウム、ビタミン、グルコース、緩衝系および主要なアミノ酸などの標準的な無機塩を提供する。本発明で使用することができる基礎培地には、限定されずに、とりわけ、最小必須培地イーグル、ADC-1、LPM(ウシ血清アルブミンを含まず)、F10(Ham)、F12(Ham)、DCCM1、DCCM2、RPMI 1640、BGJ培地(Fitton-Jackson改変の有る無し)、基礎培地イーグル(BME-アール塩ベースを添加)、ダルベッコの改変イーグル培地(DMEM-無血清)、Yamane、IMEM-20、Glasgow改変イーグル培地(GMEM)、Leibovitz L-15培地、McCoyの5A培地、培地M199(M199E-アール塩ベースを含む)、培地M199(M199H-ハンク塩ベースを含む)、最小必須培地イーグル(MEM-E-アール塩ベースを含む)、最小必須培地イーグル(MEM-H-ハンク塩ベースを含む)および最小必須培地イーグル(非必須アミノ酸を含むMEM-NAA)、例えば、培地199、CMRL 1415、CMRL 1969、CMRL 1066、NCTC 135、MB 75261、MAB 8713、DM 145、ウィリアムズのG、Neuman & Tytell、Higuchi、MCDB 301、MCDB 202、MCDB 501、MCDB 401、MCDB 411、MDBC 153およびUltracultureが含まれる。代わりの実施形態では、本明細書に開示される網膜前駆細胞の培養で使用するための培地は、Advanced DMEM/F12およびUltracultureである。いくつかのこれらの培地は、Methods in Enzymology, Volume LVIII, "Cell Culture," pp. 62-72に要約される。
【0122】
一部の実施形態では、培地は、ダルベッコの改変イーグル培地DMEM/F12、Advanced DMEM/F12、ノックアウトDMEM/F12、Neurobasal培地、ReNcellまたはUltraculture培地を含む。一部の実施形態では、培地はDMEM/F12を含む。
【0123】
「順化培地」は、基本培地または基礎培地と比較して改変された培地を指す。例えば、培地の順化は、栄養素および/または成長因子などの分子を基本培地に加えることまたは基本培地で見出される元のレベルから減少させることができる。培地は、ある特定のタイプの細胞が一定期間ある特定の条件下において培地中で成長し、維持されることを可能にすることによって順化することができる。例えば、網膜前駆細胞が規定の時間、規定の温度で規定の組成の培地の中で拡大、分化するかまたは維持されることを可能にすることによって、培地を順化することができる。当業者が理解するように、ほぼ無限の一群の順化培地を生成するために、細胞、培地タイプ、期間および環境条件の多数の組合せを使用することができる。
【0124】
細胞培養補助剤または添加剤の例には、限定されずに、細胞の生存または成長を支えることにおける血清の役割を部分的または完全に置き換えるための成分が含まれる。例えば、補助剤は、インスリン、トランスメタロプロテイン、微量元素、ビタミンまたは他の因子を含むことができる。これらの因子は基礎培地に一般的に含まれていないが、細胞の培養で一般的に使用される血清によって供給される。補助剤または添加剤は、細胞成長を支える以下の構成成分の少なくとも1つまたは複数を含むことができる:1つまたは複数のインスリンまたはその代替物、1つまたは複数のトランスメタロプロテインまたはその代替物、1つまたは複数の微量元素(例えば、セレニウム、鉄、亜鉛、銅、コバルト、クロム、ヨウ素、フッ化物(fluoride)、マンガン、モリブデン、バナジウム、ニッケル、スズ)、1つまたは複数のビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンB群)、1つまたは複数の塩(例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩またはリン酸塩)、1つまたは複数の緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水、HEPES緩衝液)、1つまたは複数のアミノ酸(例えば、L-グルタミン)、1つまたは複数のホルモン、ホルモン様化合物または成長因子(例えば、トランスフェリン、EGF、NGF、ECGF、PDGF、FGF、IGF、LIF、インターロイキン、インターフェロン、TGF、および/またはVEGF、グルカゴン、コルチコステロイド、バソプレシン、プロスタグランジンおよび他の成長因子など)、血清アルブミンまたはその代替物、1つまたは複数の炭水化物(グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、リボース、解糖代謝産物)、1つまたは複数の抗生物質および/または抗真菌剤(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ファンギゾン)、および1つまたは複数の脂質(例えば、遊離のおよびタンパク結合脂肪酸、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、エタノールアミン)。例示的な補助剤は、N-2(N2)補助剤を含む。多くの市販の血清代替添加剤、例えばノックアウト血清代替物(KOSR)、N2、B27、StemPro(本明細書で時にはStemproと呼ばれる)、インスリン-トランスフェリン-セレニウム補助剤(ITS)およびG5は周知であり、当業者に直ちに利用できる。これらの添加剤は明確に規定された成分によって特徴付けられるので、その構成成分の濃度は培地中におけるその割合に基づいて決定することができる。一部の実施形態では、培養培地はヒト上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を含む。
【0125】
非限定的な例として、細胞および/または小さい細胞クラスターは、無血清培地または血清含有培地、ならびに抗生物質および抗真菌剤を含有するか、または抗生物質も抗真菌剤も含有しない無菌環境で約1、2、3、4、5、6、7、8、9または10以下またはそれより多い継代にわたって培養される。細胞および/または小さい細胞クラスターは、基礎培養培地(例えば、ダルベッコの改変イーグル培地:栄養混合物F-12(商標)(DMEM/F12(商標))培地またはAdvanced DMEM/F12(商標)培地(Gibco-Invitrogen-Life Technologies、Carlsbad Calif.))、または、ULTRACULTURE(商標)培地(BioWhittaker-Lonza Walkersville,Inc.、Walkersville、Md.)中、必要に応じてN2補助剤(Invitrogen)またはB27もしくはB27ゼノフリー(Invitrogen)、L-グルタミンまたはGlutaMaxまたはGlutaMAX-I(Invitrogen)、ならびに、例えばEGFおよびbFGF(Invitrogen)を含むヒト組換え成長因子、または他の成長因子とともに培養される。例えば、DMEM/F12(商標)培地はヒト細胞のために使用され、ULTRACULTURE(商標)培地はネコまたはイヌの細胞のために使用される。
【0126】
一部の実施形態では、細胞および/または細胞クラスターは、少なくとも1、2、3、4または5継代にわたって培養される。一部の実施形態では、細胞および/または細胞クラスターは、5継代より長く培養される。一部の実施形態では、培養培地は、ダルベッコの改変イーグル培地DMEM/F12、Advanced DMEM/F12、ノックアウトDMEM/F12、Neurobasal培地、ReNcellおよびUltraculture培地を含む。一部の実施形態では、培養培地はAdvanced DMEM/F12を含む。
【0127】
一部の実施形態では、培養培地は、Advanced DMEM/F12、N-2補助剤、GlutaMAX I、組換えヒト上皮成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を含む。一部の実施形態では、培養培地は、B27、B27ゼノフリーまたはStemProをさらに含む。一部の実施形態では、培養培地は、ゲンタマイシンを約30μg/mLの濃度で含む。
【0128】
培養培地には、必要に応じてアルブミン、またはヒトもしくはネコもしくはイヌのアルブミン、または組換えアルブミン、またはアルブミンを補充することもできる。非限定的な例として、アルブミンは、約1.0mg/mlの初期濃度を有するような量で加えることができる。
【0129】
哺乳動物の網膜前駆細胞の培養物は、低減された血清を含有するかまたは無血清の培地で生成することができる。血清の例には、中でも、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、新生仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ヒト血清、ウサギ血清、ラット血清、マウス血清が含まれる。ある特定の培養条件下で、血清濃度は、約0.05v/v%~約20v/v%(例えば、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、1、1.5、2、2.5、3、3.5、5、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5または20%)の範囲であってよい。例えば、一部の分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、または約20%(v/v)未満であってよい。一部の実施形態では、網膜前駆細胞および網膜前駆細胞を含む細胞集団は、血清なし(「無血清」)で、血清代替物なしでおよび/またはいかなる補助剤なしで成長させる。
【0130】
網膜前駆細胞または網膜前駆細胞を含有する細胞集団は、「ゼノフリー」条件の下で培養される。「ゼノフリー」または「ゼノゲンフリー」は、ある特定の種の細胞(例えば、ヒト細胞)が、ヒト生成物または補助剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ヒト血清)が存在するだけで、他の種からの生成物は存在しない下で成長するかまたは培養される条件を指す。これは、ヒトへの移植のために使用される細胞にとって特に重要である。様々な不確定の動物由来の生成物に曝露させた細胞は、移植拒絶、免疫反応およびウイルスまたは細菌感染症、プリオンおよび未確認の人畜共通感染症のリスクの増加のために、それらを臨床適用にとって望ましくないものにする。そのうえ、ヒトでの使用または非ヒト哺乳動物での使用(例えば、獣医学的使用)を含む全ての哺乳動物での使用のために、細胞は、正常な核型、または例えばマイコプラズマ、グラム陰性細菌(例えば、エンドトキシン試験)、真菌などによる感染症もしくはコンタミネーションの存在についてスクリーニングされる。細胞は、テロメラーゼ活性アッセイ、hTERT遺伝子発現および軟寒天における成長、またはヌードマウスにおける腫瘍形成によって、腫瘍原性またはがん性表現型への形質転換についてスクリーニングすることもできる。そのようなアッセイは当技術分野で公知であり、十分に当業者の理解の範囲内である。
【0131】
網膜前駆細胞または網膜前駆細胞を含有する細胞集団は、フィーダー細胞層(例えば、胚性または成体線維芽細胞)の上で、または細胞外マトリックススキャホールドもしくは基材、例えばコラーゲン、エンタクチン、ヘパリン硫酸プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、ゼラチンまたはマトリゲルの存在下で培養することができる。例えば、PURECOL(登録商標)コラーゲンは、純度(>99.9%のコラーゲン含有量)、機能および入手可能なほとんどの天然様コラーゲンのための全コラーゲンの標準として知られている。PURECOL(登録商標)コラーゲンは、概ね97%のI型コラーゲンであり、残りはIII型コラーゲンで構成され、表面のコーティングに理想的であり、細胞を培養するための薄層の調製または固体ゲルとしての使用をもたらす。当技術分野で公知であるスキャホールドまたは基材の別の例は、CELLstart(Invitrogen)である。
【0132】
一部の実施形態では、細胞培養条件は、37℃、5%CO2に設定したインキュベーター内での細胞の成長を含むことができる。一次網膜細胞、網膜前駆細胞またはそれを含有する細胞集団は、正常酸素圧または大気の条件(約20%O2)の下で培養することができ、妊娠の間の発達中の胎児網膜の酸素レベルに近似する条件、すなわち、「低い」または「低酸素」条件、例えば、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%または10%酸素、またはその間の任意の増分の下で成長させることもできる。一部の実施形態では、細胞培養条件は、以下に設定したインキュベーター内での細胞の増殖を含むことができる:(1)0~30%CO2および0~50%O2の下の37℃、(2)37℃、5%またはそれより低いCO2および20%またはそれより低いO2;または(3)37℃、5%またはそれより低いCO2および3%またはそれより低いO2。
【0133】
プレーティング密度は、粘着培養における培養培地の容量あたりの細胞数または1cm2あたりの細胞数を指す。これに関連した類似用語は「集密」であり、それは細胞培養シャーレまたはフラスコの中の細胞の数の尺度として一般的に使用され、細胞によるシャーレまたはフラスコのカバレージを指す。例えば、100パーセントの集密度は、シャーレが細胞によって完全に覆われ、したがって細胞が成長するための余地がもはや残されていないことを意味するが、50パーセントの集密度は、シャーレのおおよそ半分が覆われ、細胞が成長する余地がなおあることを意味する。
【0134】
一部の実施形態では、本方法は第1の継代を含み、第1の継代は培養フラスコまたはプレートを1平方センチメートル(cm2)につき約0.5×106~約3.0×106細胞、約0.5×106~約5.0×106細胞/cm2、約0.55×106~約4.0×106細胞/cm2、約0.55×106~約3.0×106細胞/cm2、約0.55×106~約2.5×106細胞/cm2、または約0.55×106~約2.1×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第1の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.5×106~約3.0×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第1の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.59×106~約2.29×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。
【0135】
一部の実施形態では、本方法は第2の継代を含み、第2の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.05×106~約1×106細胞/cm2、約0.07×106~約0.80×106細胞/cm2、約0.10×106~約0.5×106細胞/cm2、約0.10×106~約0.4×106細胞/cm2、約0.13×106~約0.35×106細胞/cm2、または約0.14×106~約0.32×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第2の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.1×106~約0.5×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第2の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.14×106~約0.43×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。
【0136】
一部の実施形態では、本方法は第3の継代を含み、第3の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.01×106~約0.5×106細胞/cm2、約0.02×106~約0.45×106細胞/cm2、約0.03×106~約0.40×106細胞/cm2、約0.04×106~約0.30×106細胞/cm2、約0.05×106~約0.20×106細胞/cm2または約0.05×106~約0.10×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第3の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.03×106~約0.2×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第3の継代は培養フラスコまたはプレートを約0.05×106~約0.1×106細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。
【0137】
一部の実施形態では、本方法は第4の、および必要に応じてさらなる継代を含み、第4のおよびさらなる継代は培養フラスコまたはプレートを約10,000~約60,000細胞/cm2、約10,000~約50,000細胞/cm2、約10,000~約40,000細胞/cm2、約20,000~約60,000細胞/cm2、約20,000~約50,000細胞/cm2、または約20,000~約40,000細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第4の継代は培養フラスコまたはプレートを約10,000~約60,000細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。一部の実施形態では、第4の継代は培養フラスコまたはプレートを約20,000~約40,000細胞/cm2の密度の細胞で播種することを含む。
【0138】
一部の実施形態では、本方法は培養フラスコをより初期の継代ではより高い密度の、および後の継代ではより低い密度の細胞で播種することを含む。理論によって縛られることを望まないが、最初の数継代の間、細胞は細胞クラスターから単一細胞に転換され、クラスターから細胞へのこの段階的転換は、本明細書に記載される方法の細胞生存率の増加に寄与すると考えられる。後期の継代は単一細胞として播種され、播種密度は速やかに低下し、その後一貫するようになる。非限定的な例として、細胞は培養フラスコまたはプレートに第1の継代で約0.5×106~約3.0×106細胞/cm2、第2の継代で約0.1×106~約0.5×106細胞/cm2、第3の継代で約0.03×106~約0.2×106細胞/cm2、および第4およびさらなる継代で約10,000~約60,000細胞/cm2の密度で播種される。さらなる非限定的な例として、細胞は培養フラスコまたはプレートに第1の継代で約0.59×106~約2.29×106細胞/cm2、第2の継代で約0.14×106~約0.32×106細胞/cm2、第3の継代で約0.05×106~約0.1×106細胞/cm2、および第4およびさらなる継代で約20,000~約40,000細胞/cm2の密度で播種される。
【0139】
一部の実施形態では、直接連続する継代の間の期間は2~8日、3~6日、4~5日または3~4日である。一部の実施形態では、継代の間の期間は4日である。一部の実施形態では、直接連続する継代の間の期間は3日である。
【0140】
一部の実施形態では、継代プロトコールは生細胞の数の標的閾値を含み、これらの標的閾値が満たされない場合、細胞培養は終了される。例えば、90,000,000未満、100,000,000、110,000,000、120,000,000、130,000,000、140,000,000または150,000,000の生細胞が生成される場合、細胞培養は第3継代(P3)の終わりに終了することができる。さらなる例として、200,000,000未満、250,000,000未満、300,000,000未満、350,000,000未満、400,000,000未満、450,000,000未満または500,000,000未満の生細胞が生成される場合、細胞培養は第4継代(P4)の終わりに終了することができる。
【0141】
継代(継代培養または細胞を分けることとしても知られる)は、少数の細胞を新しい容器に移すことを含む。細胞は、それらを定期的に分ける場合、より長時間培養することができるが、その理由は、そのことが長期にわたる高い細胞密度に関連した老化を回避するからである。懸濁培養は、より多くの量の新鮮な培地で希釈したいくつかの細胞を含有する少量の培養物で容易に継代される。粘着培養のために、細胞は先ず切り離す必要がある。これは、トリプシン-EDTAもしくはトリプシン同等物およびEDTAなどの酵素混合物、または細胞解離緩衝液のような非酵素溶液で一般的に実行される;しかし、様々な酵素または非酵素ミックスまたは調製物がこの目的のために利用可能である。次に少数の剥離した細胞を使用して、新しい培養物を播種することができる。
【0142】
一部の実施形態では、細胞は、第1、第2および第3の継代で異なるトリプシンまたは同等物を含む溶液で処理される。例示的なプロトコールでは、細胞は第1の継代ではTrypLEおよびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を1:4の比で含む第1の酵素溶液で、第2継代ではTrypLE、EDTAおよびダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS)を1:1:3の比で含む第2の酵素溶液で、第3および以降のあらゆる継代ではTrypLEおよびDPBSを1:1の比で含む第3の酵素溶液で処理される。さらなる例示的なプロトコールでは、細胞は第1の継代ではTrypLE、EDTAおよびPBSを1:1:3の比で含む第1の酵素溶液で、第2の継代ではTrypLEおよびDPBSを1:1の比で含む第2の酵素溶液で、第3および以降のあらゆる継代ではTrypLEおよびDPBSを1:1の比で含む第3の酵素溶液で処理される。細胞は、トリプシンまたは同等の溶液で約5~20分間、約6~10分間、約5~10分間、約7~8分間または約5~7分間処理することができる。細胞生存率、数および/または形態は、任意の継代で決定することができる。例えば、細胞培養を終了するべきかどうか決定するために、または細胞播種密度を決定するために、第3および第4継代で細胞生存率および数を決定することができる。ほとんどの一次細胞培養は限られた寿命を有し、無期限に増殖しない。ある特定の回数の集団倍加(ヘイフリック限界と呼ばれる)の後、細胞は老化の過程を経、一般的に生存率を保持したまま分裂を停止する。一部の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は例えば10継代以下培養することができ、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10継代、継代される。一部の実施形態では、RPCは標準の酸素条件の下で約4~6(例えば、4、5または6)回継代され、および必要に応じて、その後低い酸素条件の下で約1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)継代、培養される。
【0143】
代わりの実施形態では、細胞は(標準の酸素条件で、低い酸素条件で、および/またはその任意の組合せで)5回より多く、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20継代またはそれより多く、継代することができる。ある特定の実施形態では、網膜前駆細胞および細胞集団は、約5~32(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31または32)継代、培養される。当業者は、細胞を32継代より多く(すなわち、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50またはそれより多くの継代)培養するために当技術分野で公知である他の方法を使用することができることを認識する。
【0144】
本明細書に記載される方法を使用して細胞を継代するために、フラスコ、プレートまたは細胞スタックなどの任意の好適な容器を使用することができる。例示的なフラスコには、T25およびT75フラスコが含まれる。CellStacks(CS)は、例えば、コーニングから入手可能であるスタック培養チャンバーである。一部の実施形態では、フラスコ、プレートまたは細胞スタックはコーティングすることができる。フラスコ、プレートおよび細胞スタックは、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(DPBS)に希釈したフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシンまたはラミニンでコーティングすることができる。一部の実施形態では、フラスコ、プレートまたは細胞スタックはフィブロネクチンでコーティングされる。一部の実施形態では、フィブロネクチンはゼノフリーである。必要に応じて、フラスコ、プレートまたは細胞スタックは、その中に細胞を置く前に培地ですすぐことができる。
【0145】
様々な実施形態では、細胞の試料は、病原体、細菌、エンドトキシン、真菌、マイコプラズマ、ウイルス、肝炎ウイルスまたはHIVウイルスの存在についてスクリーニングされる。細胞の試料は、正常な核型の存在;生存率;および/または腫瘍原性についてスクリーニングすることもできる。必要に応じて、細胞の試料は、テロメラーゼ活性の上昇を示さない。
【0146】
これらの方法のいずれにおいても、網膜細胞および/または網膜組織は、単離、選択、および/または培養の前または後に冷凍することができる。細胞の冷凍は、当技術分野で一般的に使用される任意の低温保存剤および/または技術を使用して達成することができる。当技術分野で公知である任意のプロトコールを使用して、冷凍細胞を使用前に解凍することができる。
【0147】
細胞の生存率は、本明細書に記載される方法のいずれかでのそれらの使用前に検査することができる。代わりの実施形態では、非限定的な例として、低温保存の前に細胞の少なくとも70%(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%)は生存能力がある。代わりの実施形態では、解凍後、細胞の少なくとも70%(例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%)は生存能力がある。同様に、細胞培養物回収の際、代わりの実施形態では、細胞の少なくとも70%(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%)は生存能力がある。任意の段階における生細胞の数の決定は、当業者のルーチンレベルの範囲内である。
【0148】
したがって、本開示は、本明細書に記載される単離および培養方法を使用して生成される複数の網膜前駆細胞を低温保存する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、(i)トリプシンまたは同等物を使用して細胞を酵素的に解離させること、(ii)過剰量の培養培地またはAdvanced DMEM/F12で解離を停止させること、(iii)1~30分間の10×g~10,000×gの遠心分離を通して細胞を遠心分離すること、(iv)培養培地に細胞を再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、(v)低温保存培地を加えて5~30%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度を達成すること、(vi)各クリオバイアルに複数の細胞を等分すること、(vii)速度制御フリーザーを使用して各バイアルを凍結させること、および(viii)細胞の各バイアルを液体N2に入れることを含む。当技術分野で公知である任意の好適な凍結方法を使用することができる。例えば、細胞は、-80℃フリーザーに置かれたCryo 1C冷凍用容器を使用して冷凍することができる。一部の実施形態では、トリプシン同等物は、TrypLE、例えばTrypLE ExpressまたはTrypLE Select(例えば、ThermoFisherまたはInvitrogen)である。一部の実施形態では、低温保存培地は培養培地および20%DMSOを含む。一部の実施形態では、低温保存培地は、10%DMSOの最終濃度を達成するために、1:1の比で細胞および細胞培養培地に加えられる。一部の実施形態では、複数の網膜前駆細胞を1クリオバイアルにつき約0.5×106~50×106細胞で等分し、冷凍する。一部の実施形態では、複数の網膜前駆細胞を培地(例えば培養培地プラス10%DMSO)1mLにつき約0.5×106~約40×106細胞、培地1mLにつき約0.5×106~約20×106細胞、培地1mLにつき約0.5×106~約10×106細胞、培地1mLにつき約1×106~約40×106細胞、培地1mLにつき約1×106~約20×106細胞、培地1mLにつき約1×106~約10×106細胞、培地1mLにつき約10×106~約30×106細胞、培地1mLにつき約10×106~約20×106細胞、培地1mLにつき約2×106~約10×106細胞、培地1mLにつき約2×106~約8×106細胞、または培地1mLにつき約2×106~約5×106細胞で等分し、冷凍する。一部の実施形態では、複数の網膜前駆細胞を培地1mLにつき約0.5×106~約20×106細胞で等分し、冷凍する。一部の実施形態では、複数の網膜前駆細胞を培地1mLにつき約2×106~約8×106細胞で等分し、冷凍する。一部の実施形態では、複数の網膜前駆細胞を培地1mLにつき約10×106細胞で等分し、冷凍する。一部の実施形態では、クリオバイアルは、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mLまたは約10mLの低温保存培地(例えば、培養培地プラスDMSO)および網膜前駆細胞を含有する。一部の実施形態では、クリオバイアルは約1mLの培地および網膜前駆細胞を含有する。一部の実施形態では、クリオバイアルは約5mLの培地および網膜前駆細胞を含有する。
【0149】
ある特定の実施形態では、氷上(例えば、0~4℃で)で保持したとき、最終製剤は最適な生存率(例えば、少なくとも85%)を最高4時間またはそれより長く(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間またはそれより長く)保持することが示されている。これは、次に、局所の臨床部位への細胞調製物の局所輸送を可能にする。
【0150】
1回の提供(donation)あたりの細胞収量を大きく増強するために、低い酸素条件の下の細胞のさらなる拡大を使用することができる。例えば、一部の実施形態では、細胞は合計5~12回(すなわち、5、6、7、8、9、10、11または12回)またはそれより多くの回数継代することができる。非限定的な例として、一実施形態では、これは、標準の酸素条件における4~6継代(すなわち、4、5または6)の後の3~6継代(すなわち、3、4、5または6)の二次性の低酸素拡大を含むことができる。しかし、当業者は、継代の総数が約1~32またはそれより多くの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32またはそれより多くの)継代であってよいこと、および、これは1~20またはそれより多くの(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20またはそれより多くの)継代の二次性の低酸素拡大を含むことができることを認識する。全継代の適当な数ならびに低酸素継代の数の決定は、当技術分野のルーチンレベルの範囲内である。この二次性の低酸素培養継代の使用は、hRPCのワーキングバンク(例えば、標準の酸素条件下での培養に由来するもの)からの収量を大きく増加させる。例えば、標準の正常酸素バンクからの細胞を解凍し、さらなる1~20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)継代にわたって低酸素条件下で拡大させることができる。
【0151】
より少ない低酸素細胞継代の使用が可能であるが、生じる収量はおそらくより低いだろう。そのうえ、より多くの低酸素細胞継代の使用も可能であるが、これは潜在的表現型ドリフトのために、生じる生成物が不完全であり、有効性の喪失および/または望ましくない遺伝子異常の蓄積を伴うリスクの増加を潜在的に有するだろう。
【0152】
二次性の低酸素培養継代の後、一部の実施形態では、網膜前駆細胞は、それらが1時間から最高5日の短い期間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、24、36、48、60、72、84、96、108または120時間)、標準の酸素条件下で成長することが可能になる「回復期間」を経る。代わりの実施形態では、この回復期間の間、細胞は、いかなるさらなる継代を受けることなく成長することが可能である。
【0153】
したがって、1つの非限定的な例では、本明細書に記載される組成物および方法のいずれかで使用するための網膜前駆細胞は、(a)標準の酸素条件下での数継代の培養、続く(b)低酸素条件下での数継代の培養、必要に応じて続く(c)さらなる継代なしの設定された期間の標準の酸素条件下での培養を含む「ハイブリッド」アプローチを使用して生成することができる。標準の酸素条件および/または低酸素条件の下の継代の適当な回数、ならびに回復期間の適当な期間の決定は、当技術分野のルーチンレベルの範囲内である。
【0154】
この新しい培養方法を使用して生成される生じた細胞生成物は、in vitroおよび動物で試験され、二次性の低酸素培養を経なかった細胞生成物によるものと類似の結果が観察された。
【0155】
当業者は、全体のプロセスへのこの二次性の低酸素構成成分の追加は、最初の切開およびプレーティングなどの複雑な手順が不要であり、実行される継代は強く増殖する細胞で全く規格化されるという点で、自動化された製造方法に資することを認識する。
【0156】
既存のRPCの人工多能性幹細胞(iPS)変換および続くより原始的な増殖状態での拡大によって、RPCをさらに生成させることができる。iPSは、次に当技術分野で公知の任意の方法(複数可)を使用して、RPCに戻し再分化させることができる。このシナリオでは、RPCとして付与される前の後成的インプリンティングは、細胞をそれらの元の状態に戻し再転換するのを助け、それによって、RPC収量を増加させ、および/または高収量同種異系生成物の安全性を促進する(すなわち、多能性細胞によるコンタミネーションを回避することによって)。この拡大方法は、臨床的に証明されたRPC試料に由来する、RPCの非常に大きく、潜在的に無限の(非老化)供与源を、胎児の組織調達を繰り返す必要性なしに提供する可能性がある。
【0157】
上記のようなRPCに由来するそのような系であってもなくても、RPCは、多能性細胞系からさらに製造することができる。そのような誘導には、RPCを採取し、精製し、さらに拡大させることができる、原始的網膜構造を含有する「胚様体」への部分的分化、すなわち、眼杯誘導体が含まれ得る。
【0158】
iPSのためのドナー細胞が毛様体上皮または虹彩から得られる、自家細胞を使用した類似の方法を実行し得るが、その理由は、これらの組織の両方とも外科医にとって利用しやすく、網膜と重なる(正確に同じではないが)発達上のインプリンティングを有するからである。
【0159】
組成物および製剤
本明細書に記載の網膜前駆細胞および細胞集団を、経口、非経口、吸入噴霧によって、経鼻、局所、髄腔内、髄腔内、脳内、硬膜外、頭蓋内または直腸を含む任意のまたは種々の手段によって投与するための組成物として製剤化することができる。本明細書に開示される組成物および製剤は、薬学的にまたは獣医学的に許容される液体、担体、アジュバントおよびビヒクルを含有してよく、液体、錠剤、カプセル、埋込み物、エアロゾル、ゲル、リポソーム、ナノ粒子などの形態であってよい。
【0160】
網膜前駆細胞および細胞集団を対象に医薬または動物用組成物の形態で投与することができる。「薬学的に許容される」という句は、動物またはヒトに投与された場合に有害反応、アレルギー性反応、やその他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適切なそれらの混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルを含むありとあらゆる水性担体および非水性担体を含む。
【0161】
薬学的に許容される担体は、必要に応じて、調製物内での細胞生存を向上させることができるタンパク質であるアルブミン(例えば、ヒトアルブミン)を含み得る。
【0162】
同様に、本明細書に開示される組成物または調製物のいずれかは、長期にわたって低温(2℃~10℃)保存されている細胞における保管後の壊死およびアポトーシスのレベルを調節するために設計された商業的に入手可能な低温保管用溶液/製剤である賦形剤HypoThermosol(登録商標)-FRS(HTS-FRS)(BioLife Solutions、Inc.)も含み得る(例えば、米国特許第6,921,633号;米国特許第6,632,666号;およびWO2005/009766を参照されたい)。
【0163】
アルブミンおよび/またはHTSの添加を使用して、本明細書に開示される調製物のいずれかの中での網膜前駆細胞の生存時間を最大で約24時間(すなわち、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、または約24時間)延長することができる。
【0164】
適当な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、分散の場合では必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性物質を使用することによって維持することができる。これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含有し得る。滅菌手順によって、ならびに種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸などを含めることによっての両方で微生物の存在の防止を確実にすることができる。例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張化剤も組成物に含めることが望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅延させる剤を含めることにより、注射可能な医薬形態の持続的吸収をもたらすことができる。それは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体および剤の使用は当技術分野において周知である。
【0165】
網膜前駆細胞または細胞集団を有効量で対象に投与しなければならない。「有効量」または「治療有効量」は、所望の効果を生じさせる組成物の量を指す。有効量は、例えば、送達される分子または薬剤(本発明では網膜前駆細胞または細胞集団)、治療剤が使用される適応症、投与経路、ならびに対象または患者のサイズ(体重、体表または器官サイズ)および状態(年齢および全体的な健康)に一部依存する。したがって、臨床医または医師が、最適な治療効果が得られるように、投与量の用量設定をし、投与経路を改変することができる。特定の目的のための特定の薬剤の有効量を、当業者に周知の方法を使用して決定することができる。本明細書において定義されている任意の組成物について、有効量を最初に細胞培養アッセイにおいてまたはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、もしくはサルなどの動物モデルにおいてのいずれかで推定することができる。動物モデルを使用して、妥当な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、ヒトへの投与のための有用な用量および経路を決定することができる。
【0166】
本明細書中に記載される組成物の有効量の例としては、5μl、10μl、15μl、20μl、25μl、50μl、100μl、150μl、200μl、250μl、300μl、350μl、400μl、450μl、500μlまたは5000μl(5ml)までの任意の増分の体積(例えば、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950、3000、3050、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、3950、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300、4350、4400、4450、4500、4550、4600、4650、4700、4750、4800、4850、4900、4950または5000μl)の細胞懸濁液が挙げられる。
【0167】
体積の下限および上限は送達系および/または方法によって限定される。例えば、Kayikcuiglu, O. R. et al, (2006) Retina 26 (9): 1089-90を参照されたい。例えば、硝子体切除術を行わずに投与する場合の体積の上限は、眼圧の上昇に起因しておよそ200μlである。硝子体切除術を行って硝子体腔へ投与する場合の体積の上限は、硝子体腔の体積によって限定され、最大、5mlまたはそれよりも多くを含有し得る。網膜下注射の上限は網膜剥離に起因して最大200μlであり得る。代替の実施形態では、これらの体積としては、1用量あたり1000~10,000,000細胞のいずれか、または1用量あたり1000~2000細胞、1用量あたり2000~3000細胞、1用量あたり3000~4000細胞、1用量あたり400~5000細胞、1用量あたり5000~6000細胞、1用量あたり6000~7000細胞、1用量あたり7000~8000細胞、1用量あたり8000~9000細胞、1用量あたり9000~10,000細胞、1用量あたり10,000~15,000細胞、1用量あたり15,000~20,000細胞、1用量あたり20,000~25,000細胞、1用量あたり25,000~30,000細胞、1用量あたり30,000~35,000細胞、1用量あたり35,000~40,000細胞、1用量あたり40,000~45,000細胞、1用量あたり45,000~50,000細胞、1用量あたり50,000~55,000細胞、1用量あたり55,000~60,000細胞、1用量あたり60,000~65,000細胞、1用量あたり65,000~70,000細胞、1用量あたり70,000~75,000細胞、1用量あたり75,000~80,000細胞、1用量あたり80,000~85,000細胞、1用量あたり85,000~90,000細胞、1用量あたり90,000~95,000細胞、1用量あたり95,000~100,000細胞、1用量あたり100,000~125,000細胞、1用量あたり125,000~150,000細胞、1用量あたり150,000~200,000細胞、1用量あたり200,000~250,000細胞、1用量あたり250,000~300,000細胞、1用量あたり300,000~350,000細胞、1用量あたり350,000~400,000細胞、1用量あたり400,000~450,000細胞、1用量あたり450,000~500,000細胞、1用量あたり500,000~550,000細胞、1用量あたり550,000~600,000細胞、1用量あたり600,000~650,000細胞、1用量あたり650,000~700,000細胞、1用量あたり700,000~750,000細胞、1用量あたり750,000~800,000細胞、1用量あたり800,000~850,000細胞、1用量あたり850,000~900,000細胞、1用量あたり900,000~950,000細胞、1用量あたり950,000~1,000,000細胞または1用量あたり1000細胞~10,000,000細胞における任意の増分が挙げられる。投与量は、当然、投与の頻度および持続時間に従って変動し得る。代替的な実施形態では、本明細書に記載の組成物中の細胞の投与量は、例えば、100μl当たり細胞50万個など、小さな体積中に多数の細胞を含む。細胞数は、例えば、血球計、分光測定、コールターカウンター、フローサイトメトリーなどの当技術分野で公知の任意の方法によって数えることができる。投与を1回施行することもでき、いくつかの処置の経過にわたって施行することもできる。
【0168】
組成物は、例えば、米国特許第7,585,517号に記載されている経強膜送達;米国特許第7,883,717号に記載されている、患者の眼の内部への送達のための持続放出送達デバイス;米国特許第5,378,475号もしくは5,466,233に記載されている、眼の硝子体領域への挿入のためのデバイス;または例えば米国特許出願公開第20110112470号もしくは同第20100256597号(患者の眼への標的化投与のためのマイクロニードルが記載されている)に記載されている通り、皮下シリンジもしくは斜めの挿入経路の使用によって;または、例えば米国特許出願公開第20100209478号に記載されている通り、涙点を通過する寸法を有する親水性ポリマーハイドロゲルを介して;または、例えば、米国特許出願公開第20100191176号に記載されている、ヒト眼内の網膜下腔へのアクセスをもたらすデバイスを含む、経強膜送達によって、または当技術分野で公知の任意の方法もしくはプロトコールによって、眼(特に硝子体腔または網膜下腔)、硝子体腔もしくは網膜下腔、網膜、脳、神経またはCNSへの非経口投与用に製剤化することもできる。当業者によって決定される通り前房穿刺を実行することもできる。方法は、特に硝子体内に置くことに関して、手順中および/または手順後に球体を縫合することを必要としない。しかし、硝子体切除術手順を利用する方法に関しては、例えば、細胞を網膜下腔内に置く場合には、球体の縫合が必要になり得る。
【0169】
本明細書に開示される組成物を、例えば、米国特許出願公開第200500480021号に記載されている通り、種々の注入技法も含む注射経路による髄腔内、脳内 硬膜外、皮下、静脈内、筋肉内および/または動脈内投与用に製剤化することもできる。投与は、カテーテルもしくはポンプ、例えば、髄腔内ポンプ、または埋込み型医療デバイスを使用することによって行うことができる。代替的な実施形態では、方法は、米国特許第7,388,042号;同第7,381,418号;同第7,379,765号;同第7,361,332号;同第7,351,423号;同第6,886,568号;同第5,270,192号;および米国特許出願公開第20040127987号;同第20080119909号;同第20080118549号;同第20080020015号;同第20070254005号;同第20070059335号;同第20060128015号に記載されているものなどの、本明細書に開示される網膜前駆細胞、細胞集団、または組成物を含有する埋込み物および人工臓器、バイオリアクター系、細胞培養系、プレート、ディッシュ、管、ビンおよびフラスコなどの投与または移植も伴い得る。
【0170】
網膜前駆細胞または細胞集団を含有する組成物を、必要に応じて、1つまたは複数の薬物と共投与することができる。薬物の非限定的な例としては、抗血管新生剤、例えば、アンジオスタチン、アネコルタブ酢酸エステル、トロンボスポンジン、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤および抗血管内皮成長因子(抗VEGF)薬、例えば、ラニビズマブおよびベバシズマブ、ペガプタニブ、スニチニブおよびソラフェニブ、ならびに抗血管新生効果を有する種々の公知の小分子および転写阻害剤のいずれか;例えば、アセブトロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、エスモロール(asmolol)、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール、レボブノロールおよびチモロールなどのベータ遮断剤を含むアドレナリン作動性アンタゴニストなどの緑内障用薬剤を含む公知の眼科用薬物のクラス;アドレナリン作動性アゴニストまたは交感神経刺激剤、例えば、エピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジン(aparclonidine)、およびブリモニジン;副交感神経刺激薬またはコリン作動性アゴニスト、例えば、ピロカルピン、カルバコール、ホスホリンヨウ素、およびフィゾスチグミン、サリチル酸、アセチルコリン塩化物、エゼリン、ジイソプロピルフルオロリン酸、臭化デメカリウム);ムスカリン作用薬;局所的および/または全身性薬剤、例えば、アセタゾラミド(acetozolamide)、ブリンゾラミド、ドルゾラミドおよびメタゾラミド、エトキシゾラミド、ダイアモックス、およびジクロフェナミド(dichlorphenamide)を含む炭酸脱水酵素阻害剤;散瞳・毛様体筋麻痺剤、例えば、アトロピン、シクロペントレート、サクシニルコリン、ホマトロピン、フェニレフリン、スコポラミンおよびトロピカミド;プロスタグランジン、例えば、プロスタグランジンF2アルファ、抗プロスタグランジン薬、プロスタグランジン前駆体、またはビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストおよび/もしくはウノプロストンなどのプロスタグランジン類似薬剤を挙げることができる。
【0171】
薬物の他の例として、これだけに限定されないが、例えば、ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21-リン酸、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸、プレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾロン、フルオロメトロン(fluroometholone)、ロテプレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルチカゾン、フルドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ロテプレドノール、リメキソロン、および例えば、アスピリン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナク、およびケトロラク、サリチル酸、インドメタシン、ナキソプレン、ピロキシカムおよびナブメトンジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダクおよびトルメチンを含む非ステロイド性抗炎症剤などのグルココルチコイドおよびコルチコステロイドを含む抗炎症剤;セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブのようなCOX-2阻害剤;例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノグリコシド、例えばゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシンおよびストレプトマイシンを含む抗生物質などの抗感染薬または抗菌剤;シプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシンなどのフルオロキノロン;バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、トリメトプリムおよびスルファセタミド;アンホテリシンB、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン、ナイスタチンおよびミコナゾールなどの抗真菌薬;クロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジンおよびキニーネなどの抗マラリア剤;エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピンおよびリファブチンなどの抗マイコバクテリウム剤;ならびに/またはアルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール(thiobendazole)、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール(iodoquinaol)、イベルメクチン、パロマイシン、プラジカンテル、およびトリメトレキサート(trimatrexate)などの駆虫性薬剤も挙げることができる。
【0172】
薬物の他の例として、これだけに限定されないが、抗ウイルス剤、例えば、イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、アシクロビル、シドホビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、トリフルリジンおよびホスカルネット;プロテアーゼ阻害剤、例えば、リトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビルおよびネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、例えば、アバカビル、ddl、3TC、d4T、ddC、テノホビルおよびエムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンツおよびネビラピン;他の抗ウイルス剤、例えば、インターフェロン、リバビリンおよびトリフルリジン(trifluridiene);エルタペネム、イミペネムおよびメロペネムのようなカルバペネム系薬を含む抗細菌剤;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタジジム(ceftaxidime)、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシムおよびロラカルベフ;他のマクロライドおよびケトライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシンおよびテリスロマイシン;アモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジクロサキシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラリシン、およびチカルシリンを含むペニシリン(クラブラン酸を伴うものおよび伴わないもの);テトラサイクリン、例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびテトラサイクリン;ならびに/またはアズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リネゾリド、ニトロフラントインおよびバンコマイシンなどの他の抗細菌薬も挙げることができる。
【0173】
薬物の他の例として、これだけに限定されないが、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、セチリジン(cetrizine)、ピリラミン、プロフェンピリダミンを含む抗アレルギー薬などの免疫調節剤;アルデスロイキン、アダリムマブ、アザチオプリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト、ヒドロキシクロロキン、インフリキシマブ、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、およびスルファサラジン;抗ヒスタミン剤、例えば、アゼラスチン、エメダスチン、ロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、プロメタジンおよびレボカバスチン;免疫学的薬物(例えば、ワクチンおよび免疫刺激薬);肥満細胞安定剤、例えば、クロモリンナトリウム、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル(nedocrimil)、オロパタジンおよびペミロラスト 毛様体切除剤(pemirolastciliary body ablative agents)、例えば、ゲンチマイシン(gentimicin)およびシドホビル;ならびに、ベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロスポリンおよびピロカルピンなどの他の眼科用薬剤;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;充血除去薬、例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン;脂質または降圧性脂質;ドーパミン作動性アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、例えば、キンピロール、フェノルドパム、およびイボパミン;血管痙攣阻害剤;血管拡張薬;降圧剤;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;アンジオテンシン-1受容体アンタゴニスト、例えば、オルメサルタン;微小管阻害剤;分子モーター(ダイニンおよび/またはキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨格調節剤、例えば、サイトカラシン、ラトランクリン、スウィンホリドA、エタクリン酸、H-7、およびRho-キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害剤;細胞外マトリックスのモジュレーター、例えば、tert-ブチルヒドロキノロンおよびAL-3037A;アデノシン 受容体アゴニストおよび/もしくはアンタゴニスト、例えば、N-6-シクロフェキシルアデノシンおよび(R)-フェニルイソプロピルアデノシン;セロトニンアゴニスト;ホルモン剤、例えば、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロンホルモン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子;例えば、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、形質転換成長因子ベータ、ソマトトロピン、フィブロネクチン、結合組織成長因子、骨形態形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来の神経栄養因子(GDNF)、インスリン様成長因子(IGF)、および神経成長因子(NGF)を含む成長因子アンタゴニストまたは成長因子;ならびに/または、サイトカイン、例えば、インターロイキン、CD44、コチリン、オステオポンチン、プレイオトロフィン、ミッドカイン、血管内皮成長因子(VEGF)、および血清アミロイドAなどの血清アミロイドも挙げることができる。
【0174】
他の治療剤としては、これだけに限定されないが、例えばルベゾール(lubezole)、ニモジピンおよび関連する化合物、および血流増強剤、ナトリウムチャネル遮断薬、メマンチンなどのグルタミン酸阻害剤、神経栄養因子、一酸化窒素合成酵素阻害剤を含む、神経保護剤;遊離基スカベンジャーまたは抗酸化剤;キレート化化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;新タンパク質合成を低減する化合物;放射線療法剤;光線力学的療法剤;遺伝子治療剤;遺伝子修飾因子;ならびにドライアイ薬、例えば、シクロスポリンA、鎮痛薬、およびヒアルロン酸ナトリウム;アルファ遮断剤、例えば、ドキサゾシン、プラゾシンおよびテラゾシン;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピンおよびベラパミル;他の抗高血圧剤、例えば、クロニジン、ジアゾキシド、フェノルドパム(fenoldopan)、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベンザミン、エポプロステノール、トラゾリン、トレプロスチニルおよび硝酸に基づく薬剤;ヘパリンおよびヘパリン類似物質、例えば、ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリンおよびフォンダパリヌクスを含む抗凝固剤;他の抗凝固剤、例えば、ヒルジン、アプロチニン、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、ワルファリンおよびキシメラガトラン;ならびに/または、抗血小板剤、例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、ジピリダモール、オプチフィバチド(optifibatide)、チクロピジンおよびチロフィバンを挙げることができる。
【0175】
他の治療剤としては、これだけに限定されないが、プロスタグランジンPDE-5阻害剤および他のプロスタグランジン剤、例えば、アルプロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィルおよびバルデナフィル;トロンビン阻害剤;抗血栓形成剤(antithrombogenic agent);抗血小板凝集剤;血栓溶解剤および/または線維素溶解剤、例えば、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼおよびウロキナーゼ;抗増殖性薬剤、例えば、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセルおよびミコフェノール酸;レボチロキシン、フルオキシメステロン(fluoxymestrone)、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステロン、ラロキシフェンおよびタモキシフェンを含むホルモン関連薬剤;カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル3などのアルキル化剤、ならびにブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシンおよびプリカマイシンなどのプロカルバジン抗生物質様薬剤を含む抗悪性腫瘍剤;抗増殖性薬剤(例えば、1,3-シスレチノイン酸、5-フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチン);代謝拮抗剤、例えば、シタラビン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリンおよび5-フルオロウラシル(5-FU);免疫調節剤、例えば、アルデスロイキン、イマチニブ、リツキシマブおよびトシツモマブ;有糸分裂阻害剤、ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチンおよびビンクリスチン;放射性薬剤、例えば、ストロンチウム89;ならびに/または他の抗悪性腫瘍剤、例えば、イリノテカン、トポテカンおよびミトタンを挙げることができる。
【0176】
RPCの投与および処置方法
細胞懸濁剤として調製され、網膜疾患を有する患者を処置するための同種異系移植片として使用される培養網膜前駆細胞の方法およびその使用も本発明で提供される。例えば、未成熟哺乳動物由来の培養異種細胞集団、例えばヒト網膜の使用を含む、またはそれからなる、細胞に基づく治療が本発明で提供される。
【0177】
本明細書に記載の細胞集団および関連する組成物を対象または患者に種々の異なる手段によって提供することができる。非限定的な例として、それらは、局所的に、例えば、実際にまたは潜在的に傷害または疾患がある部位に提供することができる。一部の実施形態では、組成物を可能性のあるまたは実際に傷害または疾患がある部位に注射するために、シリンジまたは針を使用して提供することができる。他の実施形態では、組成物を全身的に提供し、例えば、静脈内または動脈内の血流に投与する。特定の投与経路は、主に、処置または防止される疾患または傷害の場所および性質に依存する。したがって、本明細書に記載の方法は、細胞集団または組成物を、これだけに限定されないが、眼内、経口、非経口、静脈内、動脈内、鼻腔内、および筋肉内投与を含む任意の公知かつ利用可能な方法または経路で提供するステップを含む。
【0178】
適切な投与量および処置レジメンの決定は、当技術分野で一般に公知であり、医師から得られる情報に基づいて容易に達成することができる。
【0179】
非限定的な例として、細胞用量は、約300,000~約500,000細胞(例えば、300,000、310,000、320,000、330,000、340,000、350,000、360,000、370,000、380,000、390,000、400,000、410,000、420,000、430,000、440,000、450,000、460,000、470,000、480,000、490,000または500,000細胞)または500,000~3000,000細胞(例えば、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、1,100,000、1,200,000、1,300,000、1,400,000、1,500,000、1,600,000、1,700,000、1,800,000、1,900,000、2,000,000、2,100,000、2,200,000、2,300,000、2,400,000、2,500,000、2,600,000、2,700,000、2,800,000、2,900,000または3,000,000細胞)であり得る。
【0180】
観察された有効性に関する結果は両方の用量範囲間で大まかに同様である。しかし、患者の眼の小帯が弱くなっている場合、細胞の用量が大きくなるほど(例えば、2~9百万個の細胞)、細胞が視軸中で存続する、後部水晶体嚢(posterior lens capsule)に粘着する、および/または前房に侵入する(偽前房蓄膿)リスクが増大する可能性がある。さらに、移植片生存の持続時間は、用量、したがって元の移植片サイズに比例し得る可能性があることが当業者には理解されよう。
【0181】
硝子体腔中への同種異系hRPCの投与頻度が重要である。種々の実施形態では、その後の投与(すなわち、「再投与」)を患者の同じ眼に対して行うこともでき、他眼に対して行うこともできる。他眼への再投与は、動物モデルならびに幾人かの患者のどちらにおいても、その後の免疫後遺症を伴うことなく実行されており、それにより、再投与の忍容性が両側性に良好であることを示唆する(およびおそらく、動物において3回まで実行されている通り、同じ眼に対しても良好である)。
【0182】
移植片は、RPを有する患者において1年またはそれよりも長く生存し得る。しかし、移植片はおよそ1~1.5年後に硝子体から消失する傾向があるので、これにより、およそ1~2年の時間枠内での再投与は、侵襲的すぎるわけではない可能性があり、実際、大多数の場合における今後の標準になる可能性があることが示唆される。
【0183】
本明細書に開示される方法のいずれかでは、処置は、単回処置または複数回(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれよりも多くの)処置を伴う。特に、防止目的に関しては、ある特定の実施形態では、潜在的に網膜損傷を引き起こす恐れがあるストレス後に精製された細胞集団を投与することが意図されている。
【0184】
一実施形態では、細胞集団および組成物は、対象の硝子体腔または網膜下腔への単回注射として局所的に投与することができる。
【0185】
本明細書に記載の組成物および方法は任意の特定の作用機構に限定されないが、例示的な作用機構は拡散性および/または栄養性である。エビデンスは、アポトーシス軌道(apoptotic trajectory)から光処理能の再生への切り替えをもたらす、瀕死の宿主錐体の栄養性再プログラミングに関する概念と一致する。これは直接的なものまたは間接的なものであり得る。他の眼組織の関与は除外されない。この機構により、胎児神経網膜細胞の不均一な混合物である移植片の硝子体または網膜下腔内への配置が可能になる。
【0186】
硝子体への配置により、拡散に基づく処置効果が増強される。この機構により、胎児神経網膜細胞の不均一な混合物である移植片を視軸の外に置き、それでもなお患者の黄斑を処置することが可能になる。さらに、この例示的な処置により、世界的に困窮している患者への利用可能性を高め得るので、硝子体への配置を、処置を著しく簡素化するために使用する。さらに、硝子体への配置は、脈管構造に対して離れていることにより免疫寛容に役立ち得る。硝子体への配置により、網膜下手術の潜在的な併発症が回避され、全身麻酔のリスクが回避され、網膜内に孔を作る(網膜切開)(網膜剥離、出血のリスクを起こす)必要がなく、かつ/または患者の網膜に限局性剥離を行う必要がない(限局性剥離により、光受容体の損傷または消失、網膜裂孔、出血、全体的な網膜剥離がもたらされる恐れがあり、RPでは、薄い萎縮性の接着性網膜の剥離が難しい/危険な手順である)ことが当業者には理解されよう。
【0187】
一部の実施形態では、適切な針のサイズおよび長さを使用して細胞を硝子体腔内に配置する。送達の効率を向上させ、シリンジ内に保持されることに起因する製品の浪費を回避するために、シリンジのデッドスペースは最小(例えば、1マイクロリットル)であることが理想的である。短針(例えば、31G(ゲージ)で5/16インチ長または30Gで1/2インチ長)の使用により、最大の利便性(すなわち、臨床または診療の場での使用のための適合性)が可能になる。しかし、より長い針の長さ(例えば、27Gまたは25Gで5/8インチ長)の使用により、硝子体内のさらに後(後部)、黄斑に接近した最適な配置(手術視野の下で使用される)が可能になる。妥当な針サイズおよび長さの決定は、当業者の常套的なレベルの範囲内に入る。妥当な針サイズおよび長さを選択する際には、細胞が針を通過した後に細胞生存率が必要な閾値を上回ったままになることが重要である。
【0188】
前部硝子体内への細胞の配置は単純であり、かつ、最大の安全性および利便性を可能にするものである。対照的に、後部硝子体(後極付近)への配置には、針の先端を直接視覚化して、網膜の貫通傷害を回避する必要がある。しかし、これにより、全体的な処置効果を向上させることができ、また、最適な配置および有効性を表すことができる。
【0189】
網膜細胞の置換えが可能であるが、これは臨床的有効性のためには必要ない。同様に、網膜へのドナー細胞遊走が可能であるが、臨床的有効性のためには必要ない;網膜回路網へのドナー細胞の組込みが可能であるが、有効性のためには必要ない;宿主網膜の外顆粒層/黄斑へのドナー細胞の組込みが可能であるが、有効性のためには必要ない;および/または、網膜内へのドナー細胞の組込みが可能であるが、持続的な移植片生存には必要ない。
【0190】
一部の実施形態では、RPC細胞を硝子体腔内に注射し、その場合、必要に応じての、硝子体切除術や網膜下手術は必要にならない。しかし、一部の実施形態は、硝子体ゲルを除去し、注射された細胞の後部硝子体(例えば、眼の後極の近傍の最適な場所)への移動性および浸透を最適化するために、硝子体切除術、中心部硝子体切除術、および/または硝子体溶解剤のうちの1つまたは複数の必要に応じた使用を伴い得る。一部の場合では、外科的な硝子体切除術の使用により、眼内への細胞の配置を増強することができる。
【0191】
細胞を網膜下腔内に埋め込む(例えば、注射する)ことができる、または、細胞を任意の標準の眼内注射手順を使用して、例えば、皮下組織または斜め挿入経路を使用して眼内に埋め込む(例えば、注射する)ことができる。一部の実施形態では、網膜切開も眼内ガスもシリコンオイルも必要ない。
【0192】
あるいは、当業者によって決定される通り、状況に応じて、前房穿刺を必要に応じて実行することができる。一部の実施形態では、手順中および/または手順後に球体の縫合の必要はない。
【0193】
本明細書に開示される方法のいずれかは、対象の全身性免疫抑制を必要とせずに、表面麻酔下で組成物を硝子体腔に直接投与するステップを含み得る。さらに、移植片の組織型分類および患者または対象とのマッチングは必要ないが、所望であれば、例えば、当業者に公知の任意の組織型分類およびマッチング技法を使用してそれを行うことができる。
【0194】
記載の通り、本明細書に記載の方法のいずれかでは、表面麻酔のみを使用することができ、例えば、局所麻酔、部分麻酔、全身麻酔は使用しない。しかし、一部の場合では、局所麻酔、部分麻酔または全身麻酔を投与中に追加でまたは代わりに使用することができる。本明細書に開示される方法における使用に適した適切な局所麻酔薬の例としては、限定することなく、メプリカイン、プロパラカイン、プリロカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、ピクリン酸ブタンベン、クロロプロカイン、コカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジクロニン、エチドカイン、ヘキシルカイン、ケタミン、リドカイン、メピバカイン、プラモキシン、プロカイン、テトラカイン、サリチル酸ならびにそれらの誘導体、エステル、塩および混合物が挙げられる。
【0195】
ある特定の実施形態では、抗炎症および/または免疫抑制(すなわち、全身性免疫抑制)は必要ない。さらに、一部の場合では、移植片生存が、例えば、1年を含めておよび1年を超えて、何カ月にもわたって認められるので、臨床経験から、どれも必要ないことが裏付けられる。
【0196】
しかし、必要であれば、抗炎症および/または免疫抑制治療を手術後の滴剤として含めることができる。例えば、患者を、注入後に部ステロイド外用点眼剤を用いて処置し、投与を1週間漸減するか、あるいは、最大2週間後に、持続的な処置後炎症のエビデンスが臨床的に示された場合に注入後にステロイド外用点眼剤を用いて処置する。
【0197】
代替的な実施形態では、手術後に床上安静が必須ではなく、かつ/または「うつ伏せ」体位の必要もない。これらの方法は、外来処置で実行することができ、いかなる一晩入院も必要のない可能性がある。
【0198】
一部の実施形態では、投与の間、注射された細胞が硝子体ゲル内で、視力にとって最も重要な網膜の部分である眼の後極への定着を最大にするために、リクライニング座位から患者の頭部をできるだけ水平に後ろに傾ける。患者は、この体位をおよそ30分またはそれよりも長く、患者が許容できるだけ維持すべきである。さらに、投与後、患者は、自宅で仰向けになって上を見て過ごすべきである。
【0199】
本明細書に記載の組成物および方法のいずれかは、網膜疾患または状態、例えば、アッシャー病、網膜色素変性症(RP)、変性網膜疾患、加齢黄斑変性(AMD)、滲出型AMDもしくは萎縮型AMD、地図状萎縮、網膜光受容体疾患、糖尿病性網膜症、嚢胞様黄斑浮腫、ぶどう膜炎、網膜剥離、網膜損傷、黄斑円孔、黄斑部毛細血管拡張症、外傷性もしくは医原性網膜損傷、神経節細胞もしくは視神経細胞疾患、緑内障もしくは視神経症、未熟児網膜症、網膜血管閉塞、または虚血性視神経症などの虚血性網膜疾患を処置、改善、または防止するため;または、明順応(昼間)視力を向上させるため;または、矯正視力を向上させる、もしくは黄斑機能を向上させる、もしくは視野を向上させる、もしくは暗順応(夜間)視力を向上させるために胎児神経網膜細胞(例えば、網膜前駆細胞)の不均一な混合物を伴うまたは使用する。
【0200】
同様に、本明細書に記載の組成物または方法のいずれかを使用して、急速な効果、最高矯正視力の増加、黄斑機能の向上、および/または中心固視の保護または回復の可能性をもたらすことができる。
【0201】
本明細書に開示される組成物および方法のいずれかの使用または実行の結果、種々の全身的利益、例えば、概日リズム、下垂体機能、ホルモンの放出、血管緊張などに対する光の効果に関連し得る身体の向上におそらく起因する、処置を受けた個体の外見の変化;視覚能力の向上感;通院非依存の向上;健康な状態(well-being)の向上感;および/または日常生活動作の向上がもたらされる。
【0202】
代替的な実施形態では、本明細書に開示される組成物および方法のいずれかの使用または実行により、望ましくない細胞成長、例えば、腫瘍;感染症、例えば、あらゆる眼内手順に対するリスクである眼内炎(endopthalmitis);疾患の伝染(しかし、プリオンまたは狂牛病は排除することが難しい場合がある);ぶどう膜炎および/または急性移植片拒絶;眼圧の上昇;閉塞隅角;低眼圧(hypotony);網膜剥離;および/または新生血管形成の発生は生じない。
【0203】
本明細書に記載の使用および方法により、これだけに限定されないが、明順応(昼間)視力の向上、最高矯正視力の増加、黄斑機能の向上、中心固視の保護または回復、視野の向上、暗順応(夜間)視力の向上、音に対する感受性の増加または向上、および対側性眼の視力の向上を含む、哺乳動物対象における網膜の臨床的に有意な程度の視覚機能を急速にかつ持続可能に回復および/または保護することができる。他の変化としては、種々の全身的利益、例えば、概日リズム、下垂体機能、ホルモンの放出、血管緊張に対する光の効果に関連し得る、身体の向上に起因する外見の変化; 視覚能力の向上感;通院非依存の向上;健康な状態の向上感;および/または日常生活動作の向上を挙げることができる。そのような視覚の変化は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。
【0204】
視覚的利益は迅速なものであり得、処置後1週間以内に生じ得るが、より長い期間にわたって徐々に増える利益として生じる場合もある。網膜細胞の置換えおよび/または網膜、網膜回路網、または外顆粒層もしくは黄斑へのドナー細胞の遊走が生じ得るが、臨床的有効性のためには必要ない;網膜へのドナー細胞の遊走が起こり得るが、臨床的有効性のためには必要ない。
【0205】
本明細書に開示される網膜前駆細胞組成物を用いた処置に起因する視覚の向上を含む視覚の変化の測定を、これだけに限定されないが、眼底検査、最高矯正視力(BCVA)、IOP、細隙灯検査、フルオレセイン血管造影(FA)、光干渉断層撮影法(OCT)、立体眼底撮影、網膜電図検査(ERG)、錐体フリッカー網膜電図検査、視野測定(視野)、マイクロペリメトリー、暗順応、迷路通り抜け技能(maze negotiating skill)、視動性/視運動応答、瞳孔反射、視覚誘発電位(VIP)、および補償光学走査型レーザー検眼鏡検査(AOSLO)を含む標準の眼科検査技法を使用して達成することができる。
【0206】
in vivo動物データから、硝子体内RPCが、これだけに限定されないが、ミュラー細胞(網膜変性における活性化の増強および/またはグルタミンシンテターゼ(GS)の局所的発現の増加);糖尿病性網膜症における血管区画(血管透過性(漏出)が少なく、かつ/または網膜内VEGFレベルの低下に起因した虚血が少ない);網膜変性におけるマクロファージの動員の増強;網膜変性におけるbFGF(神経栄養因子)の局所的発現の増加;カスパーゼ3の発現の減少が減少したこと(網膜細胞死が少ないことを示す)を含む、疾患のある網膜における複数の細胞型に影響を及ぼす手段であることも示唆された。したがって、RPCの投与は、様々な他の網膜疾患、障害、および状態に有用であり得る。
【0207】
さらに、注射を受けていない他眼における有効性の徴候の点からクロスオーバー処置効果の予備エビデンスが観察されている。具体的には、これはRCSラットにおいて認められ(光受容体の組織学的レスキューおよびERG記録)、患者のサブセットにおいても認められており(視力検査)、これは、注射を受けた眼の範囲を越えて拡張し得る「体液性」処置効果のエビデンスであるようである。この効果は、血液循環を通じたサイトカインおよび/もしくはエキソソームの拡散、免疫モジュレーション、またはその両方の結果であり得る可能性がある。
【0208】
同様に、動物におけるin vivoデータから、オステオポンチンタンパク質(OPN)単独での単回硝子体内注射により、hRPCによってもたらされる処置効果の全てではないが一部が再現されることが示唆される。しかし、プレイオトロフィン(PTN)および/またはミッドカインの単回投与の効果は、OPNを用いたこれらの知見とは、網膜細胞集団のタイミングおよび特異的応答に関して異なる。
【0209】
動物におけるin vivoデータから、RPC由来エキソソームの単回硝子体内注射により、いくらかの程度まで、hRPCによってもたらされる処置効果が再現されることも示唆される。
【0210】
キットおよび指示
本明細書に開示される方法(例えば、網膜疾患もしくは状態を処置する、または胎児神経網膜細胞の不均一な混合物を作製もしくは単離する)のいずれかにおける使用に適した本明細書に記載の組成物のいずれか(例えば、胎児神経網膜細胞の不均一な混合物)を、それらを使用するための指示を含めて含有するキットも提供される。組成物、製造製品、または細胞の混合物もしくは培養物(例えば、胎児神経網膜細胞の不均一な混合物)を含有するキットも提供され、必要に応じて、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するための指示をさらに含む。
【0211】
キットは、培養物中の細胞として提供されるか、新鮮なもしくは凍結した細胞として提供されるか、または対象への投与のために組成物として製剤化された細胞として提供されるかにかかわらず、本明細書に記載の哺乳動物網膜前駆細胞を含有する細胞集団も含み得る。同様に、キットは、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するための指示をさらに含み得る。一部の実施形態では、そのようなキットは、本明細書に記載の網膜前駆細胞の1つもしくは複数のマーカーに結合する作用物質(例えば、抗体またはオリゴヌクレオチドプライマー)および/または基礎培地もしくは馴化培地を追加で含有し得る。例えば、適切なキットは、1つまたは複数のマーカーに特異的な抗体を含有する第1の容器であって、前記抗体が、例えば、蛍光マーカーまたは磁気ビーズとコンジュゲートすることによって単離または検出のために適合させたものである容器と、基礎培地または馴化培地を含有する第2の容器とを含み得る。キットは、本発明で提供される細胞集団の調製に有用な1つまたは複数の追加の試薬、例えば、細胞培養培地、細胞外マトリックスをコーティングした細胞培養皿、および/または組織処理に適した酵素などをさらに含み得る。キットは、組織試料から得られた網膜前駆細胞または細胞集団を単離する、精製する、および/または増加させるためのキットの使用に関する指示も含み得る。同様に、キットは、患者もしくはドナーから組織試料を得るための手段、および/または得られた組織試料を保持するための容器をさらに含有し得る。
【0212】
動物への適用
本明細書に記載の組成物および方法のいずれかは、動物への適用にも使用することができる。例えば、ネコ科の動物のRPCの成長、およびジストロフィーのネコおよび他の動物、例えば、任意の哺乳動物ペット、一般的な飼い慣らされたおよび希少な野生哺乳動物種、動物園の動物、農場動物、競技動物(例えば、競争犬または競走馬)などにおける網膜への治療的適用。
【0213】
広範囲にわたる近親交配の結果として、失明を引き起こす遺伝子を有する飼い慣らされた動物がいくつか存在する。これらとしては、ネコ、イヌ、およびウマ、ならびにおそらく他の種を含んだ。
【0214】
同様に、本明細書に記載の組成物および方法を使用した処置が有益である、野生動物および飼育動物において生じる網膜疾患および傷害が存在する。
【0215】
製造品、埋込み物および人工臓器
胎児神経網膜細胞の不均一な混合物を含有する本明細書に記載の組成物を1つまたは複数含む埋込み物および人工臓器、バイオリアクター系、細胞培養系、プレート、ディッシュ、管、ビンおよびフラスコなども提供される。
【0216】
非限定的な例として、胎児神経網膜細胞の不均一な混合物を含有するバイオリアクター、埋込み物、ステント、人工臓器または同様のデバイスがさらに本発明で提供される;例えば、米国特許第7,388,042号;同第7,381,418号;同第7,379,765号;同第7,361,332号;同第7,351,423号;同第6,886,568号;同第5,270,192号;および米国特許出願公開第20040127987号;同第20080119909号(耳介埋込み物が記載されている);同第20080118549号(眼埋込み物が記載されている);同第20080020015号(生物活性創傷被覆材が記載されている);同第20070254005号(心臓弁バイオプロテーゼ、血管移植片、半月板埋込み物が記載されている);同第20070059335号;同第20060128015号(肝臓埋込み物が記載されている)に記載されているものと類似したまたは記載されている埋込み物。
【0217】
実施形態の列挙
本発明は、以下に列挙する例示的な実施形態参照することによって定義することができる:
【0218】
1.ヒト試料から得られる一次網膜細胞を単離する方法であって、
解離された細胞および細胞クラスターの懸濁液を生成するために、
a)妊娠約12週齢から約28週齢までのヒトドナーから得られたヒト網膜組織の試料を処理するステップと、
b)得られた試料を機械的に解離させるステップと、
c)試料から得られた一次網膜細胞の生存率および量を決定するステップと、
d)得られた一次網膜細胞の形態を確認するステップと
を含む、方法。
【0219】
2.ヒト網膜組織が、1つまたは1対のヒト眼球から得られたものである、実施形態1に記載の方法。
【0220】
3.眼球(複数可)が無傷の球体、透明な角膜、正常な形状、またはそれらの任意の組合せを含む正常な形態を有する、実施形態2に記載の方法。
【0221】
4.ヒトドナーからの組織採取の直後に、ヒト網膜組織が、L-グルタミンを含むRPMI-1640培地中に保存され、氷上で保存される、実施形態1に記載の方法。
【0222】
5.保存されたヒト網膜組織が、採取から規定の期間内に送達され、使用される、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
6.規定の期間が約7~約26時間を含む、実施形態5に記載の方法。
【0224】
7.ステップ(a)が
a)組織採取後、RPMI-1640培地から眼球(複数可)を取り出し、抗生物質を補充した氷冷リン酸緩衝食塩水(PBS)で1~5回すすぐこと、
b)眼球から視神経および間葉組織を取り出して、全ての眼球外細胞を取り出すこと、
c)眼球を、抗生物質を補充した氷冷のPBSで洗浄すること、
d)針を使用して球体の縁に穴をあけること、
e)顕微手術用はさみを用いて縁に沿って円周方向に切り込むこと、
f)水晶体、角膜、および付随する硝子体を取り出すこと、
g)網膜色素上皮(RPE)層から網膜(複数可)を解離させて単離された網膜を生成すること、
h)単離された網膜(複数可)を、抗生物質を補充した氷冷培地またはPBSを含有するペトリ皿に置くこと
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0225】
8.ステップ(b)が、ステップ(a)において得られた網膜(複数可)を、
a)網膜(複数可)を円錐管に移すこと、
b)網膜(複数可)を機械的に解離させて解離された網膜を生成すること、
c)抗生物質を補充した無血清培地でペトリ皿を洗浄し、あらゆる残留している解離された網膜を含有する培地を、解離された網膜(複数可)を含有する円錐管に移すこと、
d)解離された網膜(複数可)を遠心分離によりペレットにすること、および
e)上清を取り出すこと
によって機械的に解離させることを含む、実施形態1に記載の方法。
【0226】
9.網膜の機械的解離が無菌のピペットによる粉砕を通して実行される、実施形態8に記載の方法。
【0227】
10.解離された網膜が、1~50℃、10~1000gで0~30分の期間にわたる遠心分離によってペレットにされる、実施形態8に記載の方法。
【0228】
11.ステップ(c)が、
a)ステップ(b)からのペレットにされた網膜組織を氷冷の抗生物質を補充した無血清培地に再懸濁すること、
b)網膜の機械的解離組織から得られた網膜細胞および網膜細胞クラスターの量および生存率を決定すること、
c)細胞を、フィブロネクチンでコーティングされた、抗生物質を補充した無血清培地を含有する細胞培養フラスコに播種すること、
d)網膜細胞を含有するフラスコを10~50℃でインキュベートすること
を含む、実施形態1に記載の方法。
【0229】
12.細胞の量および生存率をNC-200細胞カウンターによって測定する、実施形態11に記載の方法。
【0230】
13.数えられた細胞数が、約1~約1,000,000,000である、実施形態11に記載の方法。
【0231】
14.生存能力のある数えられた細胞の百分率が約10~約100である、実施形態11に記載の方法。
【0232】
15.フラスコが約1~約1,000,000,000細胞で播種される、実施形態11に記載の方法。
【0233】
16.網膜細胞を含有するフラスコのインキュベーションが、0~30%CO2および0~50%O2の下の37℃である、実施形態11に記載の方法。
【0234】
17.ステップ(d)が、細胞培養フラスコに播種された網膜細胞が約1~約100細胞を含有する網膜細胞クラスターからなることを確認することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0235】
18.PBSまたは無血清培地への補充に使用される抗生物質がゲンタマイシンである、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
19.抗生物質が約0~約10,000μg/mLの濃度で使用される、実施形態1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
20.無血清培地が、
a)Advanced DMEM/F12
b)N-2補助剤、
c)EGF(組換えヒト上皮成長因子)、
d)bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、および
e)GlutaMAX I
を含む、実施形態1から19のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
21.単離された一次ヒト網膜細胞を培養して非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を生成する方法であって、
a)単離された一次網膜細胞の懸濁液を、ゼノフリーのフィブロネクチン、オルニチン、ポリリシン、またはラミニンでコーティングされた培養フラスコまたはプレート中の無血清培地中、標準の酸素レベルで、約4~6継代培養するステップ、
b)その後、懸濁液を無血清培地において低酸素レベルで追加の約3~6継代培養するステップであって、細胞を40%~90%集密で継代し、各継代において酵素で処理して細胞を解離させ、新鮮な培養培地を加えるステップ、および
c)その後、細胞を低温保存し、それによって、非不死ヒト網膜前駆細胞の集団を作製するステップ
を含む方法。
【0239】
22.その後の懸濁液を低酸素レベルで培養するステップの後、細胞を継代せずにある期間にわたって標準の酸素レベルで成長させる、実施形態21に記載の方法。
【0240】
23.継代の間の期間が3~5日間である、実施形態21に記載の方法。
【0241】
24.細胞を解離させるために使用される酵素溶液がトリプシンまたは同等物を含む、実施形態21に記載の方法。
【0242】
25.細胞が継代1においてトリプシンまたは同等物およびEDTAを1:4の比で含む酵素溶液を使用して37℃で6~10分間解離される、実施形態21に記載の方法。
【0243】
26.細胞が継代2においてトリプシンまたは同等物およびDPBSを1:1:3の比で含む酵素溶液を使用して37℃で4~8分間解離される、実施形態21に記載の方法。
【0244】
27.細胞が継代3およびさらなる継代の全てにおいてトリプシンまたは同等物、EDTA、およびDPBSを1:1の比で含む酵素溶液を使用して37℃で4~8分間解離される、実施形態21に記載の方法。
【0245】
28.解離が過剰量のDMEMまたはPBSの添加によって停止される、実施形態21に記載の方法。
【0246】
29.解離後に細胞数および生存率が決定される、実施形態21に記載の方法。
【0247】
30.細胞数および生存率がNC-200細胞カウンターによって決定される、実施形態21に記載の方法。
【0248】
31.ステップ(c)の低温保存が、
a)1:1のトリプシンまたは同等物およびDPBSを使用して細胞を酵素的に解離させること、
b)過剰量のDMEMまたはPBSで解離を停止させること、
c)細胞を10~10,000gで1~30分間の遠心分離によりペレットにすること、
d)細胞を無血清培地に再懸濁し、総細胞数および生存率を決定すること、
e)低温保存培地を加えて5~30%の最終DMSO濃度を達成すること、
f)0.2~100×106細胞を各クリオバイアルに等分すること、
g)各バイアルを-80℃で6~72時間凍結させること、および
h)細胞の各バイアルを液体N2に入れること
によって実行される、実施形態21に記載の方法。
【0249】
32.細胞および/または細胞クラスターが細胞生存または成長を支持する補助剤または添加剤と共に培養される、実施形態21に記載の方法。
【0250】
33.細胞生存または成長を支持する補助剤または添加剤が、L-グルタミン、EGFおよびbFGF(Invitrogen)からなるヒト組換え成長因子、ならびに他の成長因子からなる群から選択される、実施形態32に記載の方法。
【実施例】
【0251】
(実施例1)
一次網膜細胞の単離:プロトコールA
一次ヒト網膜細胞の単離を4.5~21.5時間の輸送間隔に対して特別に最適化されたプロトコールに従って調製し、ここで、輸送間隔は組織を採取した時からドナー組織を受領した時まで測定する。
1.妊娠17~18週齢の胎児からの、Lグルタミン(BioWhittaker)を含むRPMI-1640培地を含む15mlの管中の1つまたは1対の眼球を氷上で運送し、4.5~21.5時間以内に送達する。受領したら、眼球(複数可)を肉眼で見える異常について検査する:球体は無傷である、角膜は透明である、眼球は正常な形状を有する。ステップ2~8は層流フード内で無菌技法を使用して実行する。
2.眼球全体を、抗生物質を含有する低温のPBS40ml(50mlの管中)によって3回(3つの異なる管中で)すすぐ。
3.視神経および残りの間葉組織を取り出した。この手法を、網膜単離物の脳由来細胞による可能性のあるコンタミネーションを回避するために取る。抗生物質を含有する低温のPBSによってさらに1回すすぐ。
4.解剖顕微鏡下で、255/8針を有する1mlのシリンジを使用して縁に穴をあけ、顕微手術用はさみを使用して縁に沿って切り込むことによって眼球を円周方向に開き、角膜、水晶体および付随する硝子体を取り出す。網膜をRPEから慎重に裂きとり(teased away)、冷DMEM/F12を約2ml含有する小さなペトリ皿中に採取する。
5.網膜を、1mLのチップを使用して潔く(manfully)小片に分けてペトリ皿に入れ(2~5回)、15mLの低温の円錐底管に移し、ペトリ皿を低温のPBS 1mLによって2~3回すすぎ、15mLの管に加え、1000rpm(179×g)で5分間遠心沈殿させ、10mLのピペットおよび磨いたガラスピペットによって上清を完全に取り除く。
6.希釈していないTrypLE Express(Invitrogen)0.8mLを室温で40秒間にわたって穏やかに加え、1mLのチップを使用してゆっくりとピペッティングし(約10回)、低温の新鮮な培地(無血清)10mLを加えてTrypLE Expressを中和し、1000rpm(179g)で4分間遠心沈殿させ、上清を取り除き、低温の新鮮な培地(SM)1.5mlを使用してペレットを再懸濁し、磨いたガラスピペットを使用して約10回ピペッティングし、追加の6.5mLの培地を加え、細胞生存率および細胞数をTrypan Blue(Invitrogen)染色によって決定し、Countess(Invitrogen)によってまたは手作業で数え、約1.3×106細胞/mlであり、約92%が生細胞であり、約10×106細胞クラスター/全体であり、約80%が小/中クラスターである。細胞を2つの、フィブロネクチンでコーティングしたT75(実施例5を参照されたい)に播種し、その後、5%CO2、3%または20%O2下の37℃でインキュベートする(必要に応じて37℃、5%~10%CO2、1%~20%O2でインキュベート)。
注:規定された細胞計数。
・単一細胞:約6~8μm、1細胞を含有する。
・小クラスター:約15~40μm、約2~30細胞を含有する。
・中クラスター:約40~100μm、約30~80細胞を含有する。
・大クラスター:約100~150μm、>80細胞を含有する。
得られた細胞集団中:約80~90%が小クラスターまたは中クラスターであり、約9~18%が単一細胞であり、約1~2%が大クラスターである。
小/中クラスターを「1つ」として数える場合、総細胞数は約10×106である。
単一細胞を「1つ」として数える場合、総細胞数は約240×106である。
7.手順全体:45分~1時間10分(必要に応じて2時間以内)。
8.約1.5時間後に、90%の細胞が底部に沈下した(組織が新鮮な場合、例えば4.5時間の氷上での運送、そうでない場合、例えば21.5時間の氷上での運送は、約6時間で底部に沈下する)、90%が小さな塊であり、10%が単一細胞である。一般に、90%が生細胞であり(良好)、IncuCyteによって評価して、細胞密度は>10%集密になる(約20%がより良好である)。写真を撮る。
【0252】
(実施例2)
一次網膜細胞の単離:プロトコールB
一次ヒト網膜細胞の単離を7~26時間の輸送間隔に対して特別に最適化されたプロトコールに従って実行し、ここで、輸送間隔は、組織を採取した時からドナー組織を受領した時まで測定する。
1.妊娠17~20週齢の胎児組織提供からの、Lグルタミン(BioWhittaker)を含むRPMI-1640培地を含有する15mlの管中の1つまたは1対の眼球を氷上に保ったままで運送し、7~26時間の輸送ウインドウ内に送達する。プロトコールは、より広範な輸送ウインドウにも役立ち得る。受領したら、眼球(複数可)を肉眼で見える異常について検査する:球体は無傷である、角膜は透明である、眼球は正常な形状を有するべきである。50μg/mLのゲンタマイシンをRPMI-1640およびLグルタミン輸送培地に加えて潜在的な組織コンタミネーションを防止する。ステップ2~8は層流バイオセーフティキャビネット内で無菌技法を使用して実行する。
2.無傷の眼球を、抗生物質を含有する低温のPBS40ml(50mlの管中)で3回(3つの異なる管中で)すすぐ。30μg/mLのゲンタマイシンを使用する。ゲンタマイシンは、抗生物質アレルギーを有する患者の除外を回避するためにペニシリンまたはストレプトマイシンの代わりに使用される。
3.視神経および残りの間葉組織を眼(複数可)から取り出して、網膜単離物の眼球外細胞による可能性のあるコンタミネーションを回避する。抗生物質を含有する低温のPBSでさらに1回すすぐ。
4.解剖顕微鏡下で、255/8針を有する1mlのシリンジを使用して球体の縁に穴をあけ、顕微手術用はさみを使用して縁に沿って切り込むことによって眼球を円周方向に開き、角膜、水晶体および付随する硝子体を取り出し、廃棄する。網膜を下にあるRPE層から慎重に裂きとり、ゲンタマイシン(ゲンタマイシン30μg/ml)を含む低温の完全培地約2mLを含有する小さなペトリ皿に移す。
5.網膜を15mLの円錐管に移す。網膜を、1mlのピペットチップによる穏やかな粉砕(4~8回)を使用して小片に分ける。ペトリ皿中に網膜組織が残留している場合には、ゲンタマイシンを含む低温の完全培地1mLを使用して皿を1~2回すすぎ、網膜組織を含有する15mlの管に加える。15mLの管を移して遠心分離し、4℃、140×gで3分間遠心沈殿させ、吸引し、上清を完全に取り除く。
6.ペレットを、ゲンタマイシンを含む低温の新鮮な培地1.0mLに1mLのチップ、ピペットを使用して再懸濁し、懸濁液を4~5回穏やかにピペッティングし、追加の15mLの培地を加える。細胞生存率および細胞数をNC-200により凝集細胞計数方法を使用して決定する。この方法では、正確な細胞数を得ることができると同時に細胞クラスターが維持され、これは、最初の細胞培養、および組織の細胞への変換に重要であり得る。細胞生存率は68~85%の範囲内に入ることが予測され、生細胞数は約73~147×106になることが予測される。細胞を、フィブロネクチンで予めコーティングした3×T25(または1~2つのT75)フラスコ(実施例5を参照されたい)に播種し、その後、5%CO2、20%O2下の37℃でインキュベートする(注:20%はステップ1についてである:組織からシードバンク、これは、低酸素条件下で行うこともできる。しかし、ここでの目的は、新しい生成物を20%酸素下で成長した先の生成物にできるだけ近く保つことであった。ステップ2:シードバンクから生成バンクを、低酸素3%培養物を使用して行って細胞増殖を延長する)。
7.細胞を顕微鏡下で調べる:培養物は小~中サイズのクラスター、それに加えていくらかの単一細胞から主になることが予測される(後者は生存不能である可能性が高い)。
8.単離手順全体の持続時間:約30~60分(酵素を特別に省略するこのプロトコールは酵素に基づく単離プロトコールよりも実行が著しく速く、かつ単純である)。
【0253】
(実施例3)
細胞培養:プロトコールA
ヒト網膜前駆細胞を、実施例1に記載の方法で単離された網膜細胞から培養した:
1.培地交換:2日毎に培地を90%交換する。
2.継代:細胞を60~80%集密、必要に応じて40~90%集密でTrypLE Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~6分のインキュベーションによって継代する。解離を、古い培地または低温のPBS10mlを加えることによって停止させる。細胞生存率および細胞数をTrypan Blue(Invitrogen)染色によって決定し、Countess(Invitrogen)によってまたは手作業で数え、細胞生存率>90%である。細胞を新しいフィブロネクチンでコーティングしたフラスコ/プレートに密度1~6.7×104/cm2(初期継代6.7×104クラスター/cm2)、後期後代:2×104/cm2)で播種する。
3.細胞凍結:細胞を、TrypLE Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~6分間のインキュベーションによって採取する。解離を、古い培地または低温のPBS10mlを加えることによって停止させる。1000rpm(179×g)で5分間遠心沈殿させ、細胞を新鮮な培地または低温のPBS中に再懸濁する。細胞生存率および細胞数をTrypan Blue(Invitrogen)染色によって決定し、Countess(Invitrogen)によってまたは手作業で数える。1000rpm(179×g)で5分間遠心沈殿させ、細胞を細胞凍結培地中に再懸濁し、0.5~5×106細胞を各クリオバイアル(Greiner)に等分する。Cryo 1℃凍結容器(NALGENE)に入れ、-80℃冷凍庫に入れて一晩(またはそれよりも長く、<2週間)置き、液体窒素タンクに移す。
4.細胞の解凍:細胞を液体窒素から出し、37Cのウォーターバス中に、結晶が消失するまで2~3分間入れておき、すぐに1mlのチップで低温の15mlの円錐底管1つに移し、バイアルを低温の新鮮な培地で2回すすぎ、低温の新鮮な培地12mlを15mlの管にゆっくりと、最初の1mlは一滴ずつ加え、穏やかに振とうする。800rpm(115g)で3分間遠心沈殿させる。上清を廃棄し、細胞ペレットを新鮮な培地中に再懸濁し、上記の通り細胞数および生存率を決定する。新しいコーティングされたフラスコに播種し、上記の条件でインキュベートする。
5.移植のための細胞の調製:細胞を、TrypLE Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~6分のインキュベーションによって採取する。解離を、古い培地または低温のPBS10mlを加えることによって停止させる。1000rpm(179×g)で5分間遠心沈殿させ、細胞を低温のHBSS10ml中に再懸濁し、細胞生存率および細胞数をTrypan Blue(Invitrogen)染色によって決定し、Countess(Invitrogen)によってまたは手作業で数える。1000rpm(179×g)で5分間遠心沈殿させ、細胞を低温のHBSS中に再懸濁し、移植用の細胞懸濁液、患者に対してはHBSS 100μl中0.5×106細胞、ラットに対してはHBSS 2μl中30,000細胞を作製する。
【0254】
(実施例4)
細胞培養:プロトコールB
ヒト網膜前駆細胞を、実施例2に記載の方法で単離された網膜細胞から培養した:
1.培地交換:100%培地交換、0日目~3日目以外は2日毎に交換。開放系、閉鎖系、および半閉鎖系の全てが培地の交換および細胞の継代に役立ち得る。必要に応じて、培地を毎日交換することができる。
2.継代:細胞を、4~5日毎に15~95%集密、必要に応じて40~95%集密で継代する。方法は継代数によって異なる。細胞を3~4日毎、または3~5日毎に継代することもできる。
継代1:TrypLE Select(Invitrogen)+EDTA(Invitrogen)、1:4、37℃で7~8分間のインキュベーション。
継代2:TrypLE Select(Invitrogen)+EDTA(Invitrogen)+DPBS(Invitrogen)、1:1:3、37℃で5~6分間のインキュベーション。T
継代3およびその後:TrypLE select(Invitrogen)+DPBS、1:1、37℃で5~7分のインキュベーション。
必要に応じてTrypLE Express、トリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)を使用することができる。クラスターの解離を、DMEMまたはPBS(10ml)を加えることによって停止させる。細胞生存率および細胞数をNC-200によって決定する。予測される細胞生存率>70%。細胞を新しいフィブロネクチンでコーティングされたフラスコ/プレートに3~67×104/cm2(初期継代67×104/cm2、後の継代:3×104/cm2)の密度で播種する。
3.低温保存:細胞を、TrypLE Select/Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物を使用し、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~7分間のインキュベーションで採取する。解離を、DMEMまたはPBSを加えることによって停止する。次いで、50mlの管について:490×gで7分間、500mlの円錐ビンについて、700×gで8分間遠心沈殿させ、細胞を新鮮な培地中に再懸濁する。細胞生存率および細胞数を、NC200を使用して決定する。同量の2×低温保存培地(20%DMSO)を加えて細胞懸濁液について最終的な10%DMSOを達成する。0.5~10×106細胞を各クリオバイアルに等分する(Themofisherまたは類似品)。Cryo 1℃凍結容器(NALGENE)に入れ、-80℃冷凍庫に入れて一晩(またはそれよりも長く、<2週間)置き、液体窒素タンクに移す。
4.細胞の解凍:細胞を液体窒素から出し、37℃のウォーターバス中に結晶が消失するまで2~3分間入れておき、次いで、すぐに1mlのチップを使用して低温の15mlの円錐底管1つに移し、バイアルを低温の新鮮な培地で1~2回すすぎ、低温の新鮮な培地9~12mlを15mlの管にゆっくりと加え、1200rpm(300g)で5分間遠心沈殿させる。上清を廃棄し、細胞ペレットを新鮮な培地中に再懸濁し、上記の通り細胞数および生存率を決定する。新しいコーティングされたフラスコに播種し、上記の条件下でインキュベートする。
5.移植のための細胞の調製:細胞を、TrypLE Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~6分のインキュベーションによって採取する。解離を、DMEMを加えることによって停止させる。細胞懸濁液を300gで5分遠心沈澱させ、次いで、細胞を低温のBSS Plus(またはBSS/DPBS/HBSS)0.5~3ml中に再懸濁する。細胞生存率および細胞数を、Trypan Blue(Invitrogen)を使用して決定し、Countess(Invitrogen)によってまたは手作業でまたはNC200によって数える。300gで5分間遠心沈殿させ、細胞を低温のBSS Plus(またはBSS/DPBS/HBSS)中に再懸濁して、移植に適した投与量を生じさせる。
【0255】
(実施例5)
試薬および細胞製品の調製
完全培地の調製(無血清)
ヒト網膜前駆細胞培養するための培地を、以下の構成成分を用いて調製した:
・Advanced DMEM/F12(Invitrogen)
〇必要に応じてDMEM/F12(Invitrogenまたは他のブランド)、またはKnockOut DMEM/F12(Invitrogenまたは他のブランド)、またはneurobasal(Invitrogen)、またはUltraCULTURE(Lonza)、またはReNcell(Chemicon)、または他の同等の培地。
・N-2補助剤(Invitrogen)、
〇必要に応じてゼノフリーのB27(Invitrogenまたは他のブランド)、または非ゼノフリーのB27、またはStempro(Invitrogen)、または他の同等物。
・EGF(組換えヒト上皮成長因子):Invitrogen、必要に応じて他のブランド
・bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子):Invitrogen、必要に応じて他のブランド
・GlutaMAX I:Invitrogen、必要に応じてL-グルタミン(Invitrogenまたは他のブランド)
・ゲンタマイシン(Invitrogen)、単離および第1の継代(約4~5日)用
【0256】
継代用酵素:
・Versene溶液:Thermo Fisher(Life tech)、継代1および2において上記の説明の通り使用する。Verseneは、穏やかな非酵素的細胞解離試薬として使用するためのEDTA溶液である。Gibco(登録商標)Versene溶液(0.48mM)をリン酸緩衝食塩水(PBS)1リットル当たり0.2gのEDTA(Na4)として製剤化する。
低温保存培地の調製
【0257】
以下を含有する、培養されたヒト網膜前駆細胞を低温保存するための培地を調製した:
・90%完全培地
・10%DMSO
フラスコのコーティング
ヒト血漿フィブロネクチン(Invitrogen)、必要に応じてオルニチン、ポリ-リシン、ラミニンまたはマトリゲルをDPBS中に、濃度:1~5μg/cm2に希釈し、フード中、室温で1~3時間コーティングさせ、4Cで一晩または最大2週間保存する。使用前にAdvanced DMEM/F12ですすぐ。
【0258】
(実施例6)
細胞培養プロトコールBの追加のバージョン
ヒト網膜前駆細胞を、実施例2に記載の方法で単離された網膜細胞から培養した:
1.培地交換:100%培地交換、2日毎に交換。開放系、閉鎖系、および半閉鎖系の全てが培地の交換および細胞の継代に役立つ。必要に応じて、培地を毎日交換することができる。
2.継代:細胞を、4~5日毎に15~95%集密、必要に応じて40~95%集密で継代する。方法は継代数によって異なる。細胞を3~4日毎、または3~5日毎に継代することもできる。
継代1:TrypLE Select(Invitrogen)+EDTA(Invitrogen)、1:4、37℃で7~8分間のインキュベーション。
継代2:TrypLE Select(Invitrogen)+EDTA(Invitrogen)+DPBS(Invitrogen)、1:1:3、37℃で5~6分のインキュベーション。T
継代3およびその後:TrypLE select(Invitrogen)+DPBS、1:15~7分、37℃でインキュベーション。
必要に応じてtrypLE Express、トリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)を使用することができる。クラスターの解離を、DMEMまたはPBS(10ml)を加えることによって停止させる。
3.解離:細胞クラスターの解離を、Advanced DMEMまたはPBS(10ml)を加えることによって停止させる。細胞生存率および細胞数をNC-200によって決定する。予測される細胞生存率は>70%である。細胞を新しいフィブロネクチンでコーティングされたフラスコまたは細胞スタック(CS)に1~200×104/cm2(初期継代:2×106/cm2、後の継代:1×104/cm2)の密度で播種する。
4.低温保存:細胞を、TrypLE Select/Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物を使用し、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~7分間のインキュベーションで採取する。解離を、DEMEまたはPBSを加えることによって停止し、次いで、細胞を遠心沈澱させた。50mlの管については、細胞を490×gで7分間遠心分離する。500mlの円錐ビンについては、細胞を700×gで8分間遠心分離する。細胞を新鮮な培地中に再懸濁する。細胞生存率および細胞数を、NC200を使用して決定する。同量の2×低温保存培地(20%ジメチルスルホキシド(DMSO))を加えて、細胞懸濁液について最終的な10%DMSOを達成する。0.5~10×106細胞を各クリオバイアルに等分する(Themofisherまたは類似品)。これは、培養培地+10%DMSO1mL当たり約10×106~約40×106細胞である。細胞をCryo 1℃凍結容器(NALGENE)に入れ、容器を-80℃冷凍庫中に入れて一晩(またはそれよりも長く、<2週間)置き、次いで、液体窒素タンクに移す。あるいは、細胞を液体窒素に移す前にControl Rate Freezerを使用して細胞を凍結させることができる。
5.細胞の解凍:細胞を液体窒素から出し、37℃のウォーターバス中に結晶が消失するまで2~3分間入れておき、次いで、すぐに1mLのチップを使用して低温の15mlの円錐底管1つに入れる。バイアルを低温の新鮮な培地で1~2回すすぎ、次いで、低温の新鮮な培地9~12mLを15mlの管に加える。1200rpm(300g)で5分間遠心沈殿させる。実施例2に関して上記の通り上清を廃棄し、細胞ペレットを新鮮な培地中に再懸濁し、細胞数および生存率を決定する。細胞を新しいコーティングされたフラスコまたは細胞スタックに播種し、上記の条件下でインキュベートする。
6.移植のための細胞の調製:細胞を、TrypLE Express(Invitrogen)、必要に応じてトリプシンもしくは同等物、またはTRYP-LE EXPRESSもしくは同等物、2倍希釈(0.125%相当)、37℃で5~6分のインキュベーションによって採取する。解離を、完全培地、DMEMまたはPBSを加えることによって停止させる。細胞懸濁液を300gで5分間遠心沈澱させ、次いで、細胞を低温のBSS Plus(またはBSS/DPBS/HBSS)0.5~3ml中に再懸濁する。細胞生存率および細胞数を、Trypan Blue(Invitrogen)を使用して決定し、Countess(Invitrogen)によって、手作業でまたはNC200を使用して数える。細胞を300gで5分間遠心沈殿させ、細胞を低温のBSS Plus(またはBSS/DPBS/HBSS)中に再懸濁して、移植に適した投与量を生じさせる。
【0259】
試薬/細胞製品の調製:
【0260】
完全培地の調製(無血清):
・Advanced DMEM/F12(Invitrogen)をこのプロトコールに使用した。必要に応じて、DMEM/F12(Invitrogenまたは他のブランド)、KnockOut DEMEM/F12(Invitrogenまたは他のブランド)、またはneurobasal(Invitrogen)、UltraCULTURE(Lonza)、ReNcell(Chemicon)、または他の同等の培地を使用することができる。
・N-2補助剤(Invitrogen)、必要に応じてゼノフリーのB27(Invitrogenまたは他のブランド)、ゼノフリーではないB27、またはStempro(Invitrogen)、または他の同等物。
・EGF(組換えヒト上皮成長因子):Invitrogen、必要に応じて他のブランド。
・bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子):Invitrogen、必要に応じて他のブランド。
・GlutaMAX I:Invitrogen、必要に応じてL-グルタミン(Invitrogenまたは他のブランド)
・ゲンタマイシン(Invitrogen)、単離および第1の継代用(およそ4日、しかしそれよりも長くゲンタマイシンを使用することができる)。
【0261】
継代用酵素:
・Versene溶液:Thermo Fisher(Life tech)、継代1および2において上記の説明と同様に使用する。Verseneは穏やかな非酵素的細胞解離試薬として使用するためのEDTA溶液である。Gibco(登録商標)Versene溶液(0.48mM)をリン酸緩衝食塩水(PBS)1リットル当たり0.2gのEDTA(Na4)として製剤化する。
【0262】
低温保存培地の調製:
・90%新鮮完全培地。
・10%DMSO(ジメチルスルホキシド)(Sigma、必要に応じて他のブランド)。
【0263】
フラスコのコーティング:
・ヒト血漿フィブロネクチン(Invitrogen)を使用した。必要に応じて、オルニチン、ポリ-リシン、ラミニンまたはマトリゲルを代替として使用することができる。
・フィブロネクチンをDPBS中に希釈する。
〇濃度:1~5μg/cm2、4Cで一晩、最大で2週間コーティングさせるかまたはフード中、室温で1~3時間コーティングさせ、4Cで一晩または最大2週間保存する。
〇使用前にAdvanced DMEM/F12ですすぐ。
〇フラスコをAdvanced DMEM/F12ですすがずに使用することもできる。
【0264】
均等物
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が上記の添付明細書に記載されている。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実行または試験において使用することができるが、例示的な方法および材料がここに記載されている。
【0265】
前述の説明は、単に例示するために提示されており、本発明は開示された明確な形態に限定されるものではなく、添付されている特許請求の範囲によって限定される。
【0266】
本発明の基本的な態様から逸脱することなく、前述のものに改変を行うことができる。本発明は1つまたは複数の特定の実施形態を参照してかなり詳細に記載されているが、当業者は、本出願に詳細に開示されている実施形態に変化を生じさせてよく、それでもなおこれらの改変および改善が本発明の範囲および主旨の範囲内に入ることを理解されよう。本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書に詳細に開示されていない要素(複数可)のいずれがなくとも適切に実行することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、および「からなる(consisting of)」という用語はいずれも他の2つの用語のいずれとも置き換えることができる。したがって、用いられてきた用語および表現は、説明する用語として使用され、限定するものではなく、示され、説明されている特色の同等物またはその一部は除外されず、本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが理解される。本発明の実施形態を以下の特許請求の範囲に記載する。