(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】2自由度電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 16/04 20060101AFI20241122BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H02K16/04
H02K21/16 M
(21)【出願番号】P 2021573010
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047259
(87)【国際公開番号】W WO2021149420
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2020008623
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 禎之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康孝
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-517994(JP,A)
【文献】特開2016-025700(JP,A)
【文献】特開2006-034024(JP,A)
【文献】特開2005-237162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/04
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転磁界を形成する環状の第1ステータと、
回転磁界を形成する環状の第2ステータと、
第1極性に着磁された複数の第1磁極と、前記第1極性と異なる第2極性に着磁された複数の第2磁極と、を含み、前記第1ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、前記第1ステータが形成する回転磁界により回転移動する環状の第1ロータと、
複数の前記第1磁極と、複数の前記第2磁極と、を含み、前記第1ロータ及び前記第2ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、直進移動及び回転移動可能に支持される駆動軸と、
を少なくとも有し、
前記第1ロータの前記複数の第1磁極は、周方向に向かうに従い軸方向に傾斜する傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置されており、
前記第1ロータの前記複数の第2磁極は、前記第1ロータの前記複数の第1磁極が並ぶ方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記第1ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、第1方向及び該第1方向に交差する第2方向に沿って配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って配置されて
おり、
前記駆動軸は、
前記第2ステータが形成する回転磁界により前記回転移動を行い、
前記第2ステータが形成する回転磁界により前記駆動軸に生じる第1回転力と、前記第1ステータが形成する回転磁界により前記第1ロータが回転移動するのに伴って、前記第1回転力と反対方向に前記駆動軸に生じる第2回転力と、前記駆動軸に生じる前記直進移動の方向の推力と、に基づいて、前記直進移動を行う、
2自由度電動機。
【請求項2】
前記第1方向は前記傾斜方向であり、
前記第2方向は軸方向である、
請求項1に記載の2自由度電動機。
【請求項3】
前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、前記傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、前記駆動軸の前記複数の第1磁極が並ぶ方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記駆動軸の前記複数の第1磁極と重ならないように配置されている、
請求項2に記載の2自由度電動機。
【請求項4】
前記駆動軸において、前記複数の第1磁極と着磁されていない非着磁部とが、前記傾斜方向及び軸方向において交互に配置されており、前記複数の第2磁極と前記非着磁部とが、前記傾斜方向及び軸方向において交互に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の2自由度電動機。
【請求項5】
回転磁界を形成する環状の第1ステータと、
回転磁界を形成する環状の第2ステータと、
第1極性に着磁された複数の第1磁極と、前記第1極性と異なる第2極性に着磁された複数の第2磁極と、を含み、前記第1ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、前記第1ステータが形成する回転磁界により回転移動する環状の第1ロータと、
複数の前記第1磁極と、複数の前記第2磁極と、を含み、前記第1ロータ及び前記第2ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、直進移動及び回転移動可能に支持される駆動軸と、
を少なくとも有し、
前記第1ロータの前記複数の第1磁極は、周方向に向かうに従い軸方向に傾斜する傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置されており、
前記第1ロータの前記複数の第2磁極は、前記第1ロータの前記複数の第1磁極が並ぶ方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記第1ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、第1方向及び該第1方向に交差する第2方向に沿って配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って配置されており、
複数の前記第1磁極と、複数の前記第2磁極と、を含み、前記第2ステータの内周面及び前記駆動軸の外周面に対して環状の隙間を有して設けられており、前記第2ステータが形成する回転磁界により回転移動する環状の第2ロータをさらに有する、
2自由度電動機。
【請求項6】
前記第1方向は、第1周方向に向かうに従い第1軸方向に傾斜する第1傾斜方向であり、
前記第2方向は、前記第1周方向の反対方向である第2周方向に向かうに従い前記第1軸方向に傾斜する第2傾斜方向であり、
前記第1ロータの前記複数の第1磁極は、前記第1傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んでおり、
前記第1ロータの前記複数の第2磁極は、前記第1傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記第1ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されており、
前記第2ロータの前記複数の第1磁極は、前記第2傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んでおり、
前記第2ロータの前記複数の第2磁極は、前記第2傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記
第2ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されている、
請求項5に記載の2自由度電動機。
【請求項7】
前記駆動軸の前記複数の第1磁極及び前記複数の第2磁極のそれぞれは、前記第1傾斜方向に沿う端部と、前記第2傾斜方向に沿う端部を有する形状である、
請求項6に記載の2自由度電動機。
【請求項8】
前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、軸方向において互いに間隔を空けて配置されており、
前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、軸方向において互いに間隔を空けて配置されている、
請求項6又は7に記載の2自由度電動機。
【請求項9】
前記駆動軸の前記複数の第1磁極及び前記複数の第2磁極のそれぞれは、周方向に沿う端部と、軸方向に沿う端部を有する形状であって、周方向及び軸方向において互いの端部が隣接するように交互に配置されている、
請求項6に記載の2自由度電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2自由度電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の作業をロボットで行うなどの自動化が促進されている。人の作業を実現するために、ロボットは複数の自由度から構成される多自由度システムである必要があるが、搭載されるモータの台数が増加してしまう。モータの台数が増加するとロボットが大型化してしまうため、1のモータで複数の自由度を実現できることが好ましい。そこで、例えば、特許文献1には、2自由度モータ(電動機)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボット等に用いられる電動機においては、低損失化及び高出力化の観点から更なる改良が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、低損失化及び高出力化を実現可能な2自由度電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本出願において開示される発明は種々の側面を有しており、それら側面の代表的なものの概要は以下の通りである。
【0007】
(1)回転磁界を形成する環状の第1ステータと、回転磁界を形成する環状の第2ステータと、第1極性に着磁された複数の第1磁極と、前記第1極性と異なる第2極性に着磁された複数の第2磁極と、を含み、前記第1ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、前記第1ステータが形成する回転磁界により回転移動する環状の第1ロータと、複数の前記第1磁極と、複数の前記第2磁極と、を含み、前記第1ロータ及び前記第2ステータの内周面に対して環状の隙間を有して設けられており、直進移動及び回転移動可能に支持される駆動軸と、を少なくとも有し、前記第1ロータの前記複数の第1磁極は、周方向に向かうに従い軸方向に傾斜する傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置されており、前記第1ロータの前記複数の第2磁極は、前記第1ロータの前記複数の第1磁極が並ぶ方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記第1ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されており、前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、第1方向及び該第1方向に交差する第2方向に沿って配置されており、前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、前記第1方向及び前記第2方向に沿って配置されている、2自由度電動機。
【0008】
(2)(1)において、前記第1方向は前記傾斜方向であり、前記第2方向は軸方向である、2自由度電動機。
【0009】
(3)(2)において、前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、前記傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んで配置されており、前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、前記駆動軸の前記複数の第1磁極が並ぶ方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記駆動軸の前記複数の第1磁極と重ならないように配置されている、2自由度電動機。
【0010】
(4)(1)~(3)において、前記駆動軸において、前記複数の第1磁極と着磁されていない非着磁部とが、前記傾斜方向及び軸方向において交互に配置されており、前記複数の第2磁極と前記非着磁部とが、前記傾斜方向及び軸方向において交互に配置されている、2自由度電動機。
【0011】
(5)(1)において、複数の前記第1磁極と、複数の前記第2磁極と、を含み、前記第2ステータの内周面及び前記駆動軸の外周面に対して環状の隙間を有して設けられており、前記第2ステータが形成する回転磁界により回転移動する環状の第2ロータをさらに有する、2自由度電動機。
【0012】
(6)(5)において、前記第1方向は、第1周方向に向かうに従い第1軸方向に傾斜する第1傾斜方向であり、前記第2方向は、前記第1周方向の反対方向である第2周方向に向かうに従い前記第1軸方向に傾斜する第2傾斜方向であり、前記第1ロータの前記複数の第1磁極は、前記第1傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んでおり、前記第1ロータの前記複数の第2磁極は、前記第1傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記第1ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されており、前記第2ロータの前記複数の第1磁極は、前記第2傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並んでおり、前記第2ロータの前記複数の第2磁極は、前記第2傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、周方向において前記2ロータの前記複数の第1磁極と重ならないように配置されている、2自由度電動機。
【0013】
(7)(6)において、前記駆動軸の前記複数の第1磁極及び前記複数の第2磁極のそれぞれは、前記第1傾斜方向に沿う端部と、前記第2傾斜方向に沿う端部を有する形状である、2自由度電動機。
【0014】
(8)(6)または(7)において、前記駆動軸の前記複数の第1磁極は、軸方向において互いに間隔を空けて配置されており、前記駆動軸の前記複数の第2磁極は、軸方向において互いに間隔を空けて配置されている、2自由度電動機。
【0015】
(9)(6)において、前記駆動軸の前記複数の第1磁極及び前記複数の第2磁極のそれぞれは、周方向に沿う端部と、軸方向に沿う端部を有する形状であって、周方向及び軸方向において互いの端部が隣接するように交互に配置されている、2自由度電動機。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の(1)~(9)の側面によれば、低損失化及び高出力化を実現可能な2自由度電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る2自由度電動機を示す正面図である。
【
図3】
図2のIII-III切断面における断面図である。
【
図4】第1実施形態の第1ロータを示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図6】第1実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図7】第1実施形態の第1ロータの磁石配置を示す図であって、第1ロータの外周面の展開平面図である。
【
図8】第1ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る2自由度電動機を示す正面図である。
【
図12】第2実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図13】第2実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図14】第2実施形態の第1ロータの磁石配置を示す図であって、第1ロータの外周面の展開平面図である。
【
図15】第2実施形態の第2ロータの磁石配置を示す図であって、第2ロータの外周面の展開平面図である。
【
図16】第1ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【
図17】第2ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【
図18】第1ロータと第2ロータとが同じ方向に回転移動する場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、推力[N]との関係を示す図である。
【
図19】第1ロータと第2ロータとが同じ方向に回転移動する場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、回転力[Nm]との関係を示す図である。
【
図20】第2ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【
図21】第1ロータと第2ロータとが反対の方向に回転移動した場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、推力[N]との関係を示す図である。
【
図22】第1ロータと第2ロータとが反対の方向に回転移動した場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、回転力[Nm]との関係を示す図である。
【
図23】第2実施形態の第1変形例の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図24】第2実施形態の第1変形例の駆動軸を着磁する着磁器を示す図である。
【
図25】第2実施形態の第2変形例に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
【
図26】第2実施形態の第2変形例の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【
図27】第2実施形態の第2変形例の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
[第1実施形態に係る2自由度電動機100の全体構成]
まず、
図1~
図4を参照して、第1実施形態に係る2自由度電動機の全体構成の概要について説明する。
図1は、第1実施形態に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る2自由度電動機を示す正面図である。
図3は、
図2のIII-III切断面における断面図である。
図4は、第1実施形態の第1ロータを示す斜視図である。
【0020】
2自由度電動機100は、いわゆるラジアルギャップ型モータであり、
図1~
図3に示すように、第1ステータ10と、第2ステータ20と、駆動軸30と、第1ロータ40とを有する。
【0021】
2自由度電動機100は、Z軸方向の推力と、θ方向の回転力を独立して発生させることができる電動機である。ここで、Z軸方向とは、駆動軸30が延伸する方向である。第1実施形態においては、
図1等に示すように、第1ステータ10側から第2ステータ20側に向かう方向を+Z方向とし、その反対方向を-Z方向とする。また、駆動軸30の周方向をθ方向とする。第1実施形態においては、
図1等に示すように、+Z方向を見た場合に、時計回り方向を+θ方向とし、その反対方向を-θ方向とする。
【0022】
[第1ステータ10及び第2ステータ20の概要]
第1ステータ10は、環状であって、回転磁界を形成する。具体的には、第1ステータ10は、コイル及びコイルが巻かれた鉄心からなる複数の電機子(不図示)がθ方向に間隔を空けて配置されており、複数の電機子に順に位相をずらして電流が供給されることで、回転磁界を形成する構造である。この回転磁界により、第1ステータ10は、第1ロータ40を回転移動させることができる。
【0023】
同様に、第2ステータ20は、環状であって、回転磁界を形成する。具体的には、第2ステータ20は、コイル及びコイルが巻かれた鉄心からなる複数の電機子(不図示)がθ方向に間隔を明けて配置されており、複数の電機子に順に位相をずらして電流が供給されることで、回転磁界を形成する構造である。この回転磁界により、第2ステータ20は、駆動軸30を駆動させることができる。
【0024】
第1ステータ10と第2ステータ20は、Z軸方向において異なる位置に設けられている。また、第1ステータ10と第2ステータ20とは独立して制御可能である。
【0025】
[第1ロータ40の概要]
第1ロータ40は、
図4に示すように、環状の回転体である。また、第1ロータ40は、駆動軸30の外周面及び第1ステータ10の内周面に対して環状の隙間を有して、回転可能に支持されている。なお、第1ロータ40は、第1ステータ10に組み込まれる不図示のベアリング等により回転可能に支持されているとよい。
【0026】
第1ロータ40は、外周面において、N極(第1極性)に着磁された複数のN極磁石41(第1磁極)を含むN極領域と、S極(第2極性)に着磁された複数のS極磁石42(第2磁極)を含むS極領域を含む。なお、第1ロータ40の内周面においては、外周面のN極領域に対応する部位がS極領域となり、外周面のS極領域に対応する部位がN極領域となる。すなわち、N極磁石41の内周面はS極であり、S極磁石42の内周面はN極である。N極磁石41及びS極磁石42は永久磁石であるとよい。後述のN極磁石31及びS極磁石32も同様に永久磁石であるとよい。
【0027】
図4に示すように、第1ロータ40に含まれる複数のN極磁石41及びS極磁石42はそれぞれ、円弧状である。また、
図4に示すように、1つのN極磁石41、及び1つのS極磁石42のθ方向における幅を45°とし、それら磁石を8つ並べることで第1ロータ40の1周を構成することとした。なお、
図4においては、周方向で隣接するN極磁石41とS極磁石42が互いに連結される構成を示すが、これに限られず、互いに離間していてもよい。この場合、N極磁石41及びS極磁石42は、着磁されていない筒状のハウジング等に支持されているとよい。
【0028】
第1ロータ40のN極領域及びS極領域はそれぞれ、駆動軸30の外周面及び第1ステータ10の内周面に対して対向して設けられている。すなわち、第1ロータ40の外周面のN極領域及びS極領域は、第1ステータ10から磁気的に影響を受けると共に、第1ロータ40の内周面のN極領域及びS極領域は駆動軸30に対して磁気的に影響を与えるように設けられている。なお、第1ロータ40における磁石配置の詳細については後述する。
【0029】
第1ロータ40は、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet Motor)モータと同様の駆動方式で、第1ステータ10に対して相対的に回転移動する。すなわち、第1ロータ40は、第1ステータ10の電機子に供給される三相電流の相変化によって形成される磁束の位置が変化し、磁束の位置変化に伴って回転移動する。
【0030】
[駆動軸30の概要]
駆動軸30は、第1ステータ10及び第2ステータ20の内周面に対して環状の隙間を有して配置されている。また、駆動軸30の外周面には、N極に着磁された複数のN極磁石31を含むN極領域と、S極に着磁されたS極磁石32を含むS極領域が設けられている。また、
図1に示すように、1つのN極磁石31、及び1つのS極磁石32のθ方向における幅を90°とし、それら磁石を4つ並べることで駆動軸30の1周を構成することとした。なお、駆動軸30における磁石配置の詳細については後述する。
【0031】
駆動軸30の外周面のN極領域は、第1ロータ40の内周面のN極領域から反発する力を受けると共に、第1ロータ40の内周面のS極領域に引き合う力を受ける。また、駆動軸30の外周面のS極領域は、第1ロータ40の内周面のN極領域に引き合う力を受けると共に、第1ロータ40の内周面のS極領域から反発する力を受ける。第1ロータ40の回転移動に伴い、第1ロータ40の磁石配置と、駆動軸30の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じると、駆動軸30は、第1ロータ40から上記反発する力及び引き合う力を受けることとなる。それにより、駆動軸30は駆動する。
【0032】
[駆動軸30の磁石配置]
図5及び
図6は、第1実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
図5及び
図6においては、N極磁石31を幅狭の斜線で示しており、S極磁石32を幅広の複数の斜線からなるハッチングで示しており、着磁されていな部分(以下、非着磁部という)を白抜きで示している。
【0033】
駆動軸30は、
図5に示すように、その外周面に、右傾斜方向(第1方向)に沿って延びるN極領域と、当該N極領域に沿って延びるS極領域とを有する。N極領域とS極領域とは交互に配置されている。なお、ここで、右傾斜方向とは、+θ方向(第1周方向)に向かうに従い+Z方向に傾斜する方向であると定義する。また、後述の左傾斜方向は、-θ方向(第2周方向)に向かうに従い+Z方向に傾斜する方向であると定義する。また、第1実施形態においては、
図5に示すように、θ方向に対する右傾斜方向の傾斜角をαとする。
【0034】
第1実施形態において、N極領域は、N極磁石31と非着磁部33とを含む帯状の領域である。同様に、S極領域は、S極磁石32と、非着磁部34とを含む帯状の領域である。
【0035】
N極領域においては、右傾斜方向に沿ってN極磁石31が互いに間隔を空けて並んで配置されている。また、N極領域においては、右傾斜方向に沿って非着磁部33が互いに間隔を空けて並んで配置されている。このように、N極領域においては、N極磁石31と非着磁部33とが交互に並んで配置されている。
【0036】
S極領域においては、右傾斜方向に沿ってS極磁石32が互いに間隔を空けて並んで配置されている。また、S極領域においては、右傾斜方向に沿って非着磁部34が互いに間隔を空けて並んで配置されている。このように、S極領域においては、S極磁石32と非着磁部34とが交互に並んで配置されている。
【0037】
また、駆動軸30のN極領域に含まれるN極磁石31と、駆動軸30のS極領域に含まれる非着磁部34とは、Z軸方向に交互に並んで配置されている。同様に、駆動軸30のS極領域に含まれるS極磁石32と、駆動軸30のN極領域に含まれる非着磁部33とは、Z軸方向に交互に並んで配置されている。
【0038】
すなわち、駆動軸30は、
図6に示すように、Z軸方向(第1方向に交差する第2方向)に沿って延びるN極領域と、Z軸方向に沿って延びるS極領域と、を含む構成であると捉えることもできる。Z軸方向に沿って延びるN極領域は、N極磁石31と非着磁部34を含む領域である。Z軸方向に沿って延びるS極領域は、S極磁石32と非着磁部33を含む領域である。
【0039】
また、駆動軸30において、展開平面視における、N極磁石31、S極磁石32、及び非着磁部33、34の平面形状をそれぞれ、Z軸方向に延びる辺(端部)と、右傾斜方向に延びる辺(端部)とを含む平行四辺形とした。
【0040】
[第1ロータ40の磁極配置]
図7は、第1実施形態の第1ロータの磁石配置を示す図であって、第1ロータの外周面の展開平面図である。なお、第1ロータ40は、内周面側から見た場合においても、
図7に示す磁石配置と同様の磁極配置をとるものである。
図7においては、
図5等と同様に、N極磁石41を幅狭の複数の斜線で示しており、S極磁石42を幅広の複数の斜線で示しており、非着磁部43を白抜きで示している。
【0041】
第1実施形態においては、第1ロータ40の磁石配置を、駆動軸30の磁石配置とほぼ同様とした。すなわち、第1ロータ40において、複数のN極磁石41は、右傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶように配置されている。また、複数のS極磁石42も、右傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶように配置されている。また、N極磁石41は、θ方向においてS極磁石42と重ならないように配置されている。
【0042】
また、第1ロータ40のN極磁石41及びS極磁石42の形状についても、駆動軸30のN極磁石31及びS極磁石32とほぼ同様とした。
【0043】
[駆動軸30の駆動原理:θ方向]
駆動軸30は、いわゆるSPM(Surface Permanent Magnet Motor)モータと同様の駆動方式で、第2ステータ20に対して相対的に回転移動する。すなわち、第2ステータ20において電流を流すことにより回転磁界を形成すると、駆動軸30にθ方向の力が作用する。それにより、駆動軸30はθ方向に回転移動する。なお、第2ステータ20に流す電流の向きを変えることにより、駆動軸30を+θ方及び-θ方向のいずれかに回転移動させることができる。
【0044】
このように、第1実施形態に係る2自由度電動機100においては、第1ステータ10を駆動することなく、第2ステータ20を駆動させることにより、駆動軸30を回転移動させることができる。すなわち、θ方向の回転力を独立して発生させることができる。
【0045】
[駆動軸の駆動原理:Z軸方向]
図8は、第1ロータ40の回転移動に伴って駆動軸30に作用する磁力を示す図である。上述のように、第1ステータ10により回転磁界を形成すると、第1ロータ40にθ方向の回転力が作用する。第1ロータ40がθ方向に回転移動することにより、第1ロータ40の磁石配置と、駆動軸30の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じる。その際に、駆動軸30には磁力が生じる。
【0046】
具体的には、第1ロータ40が-θ方向に回転した場合、駆動軸30には、
図8に示すように、右傾斜方向に対して直交する方向に磁力Fが生じる。磁力Fは、
図8に示すように、+Z方向に作用する推力F×cosαと、-θ方向に作用する回転力F×sinαとの合力である。
【0047】
磁力Fは式(1)に示す位相差θmr1に応じて発生する。式(1)において、θr1及びθmは第1ロータ40及び駆動軸30のθ方向における回転角を示し、zmはZ軸方向における駆動軸30の位置を示す。また、θrp及びθmpは第1ロータ40及び駆動軸30それぞれのθ方向における磁石配置の周期(θ方向における1つの磁石の幅)を示す。lpは、Z軸方向における磁石配置の周期(Z軸方向における1つの磁石の幅)を示す。第1実施形態においては、θrp=45°、θmp=90°とした。
【0048】
[数1]
θmr1=θr1-θm+(π/lp)×zm・・・(1)
【0049】
以上述べたように、第1実施形態の構成においては、駆動軸30には、第2ステータ20が形成する回転磁界によるθ方向の回転力と、第1ロータ40の回転移動により生じるZ軸方向の推力及びθ方向の回転力が作用する。
【0050】
駆動軸30を独立して直線移動させるには、第2ステータ20が形成する回転磁界によるθ方向の回転力と、第1ロータ40の回転移動により生じる-θ方向の回転力F×Sinαとが打ち消し合うように、第1ステータ10及び第2ステータ20を制御するとよい。回転力が打ち消し合うことにより、駆動軸30は、第1ステータ10及び第2ステータ20に対して相対的に直線移動のみを行うこととなる。それにより、Z軸方向の推力を独立して発生させることができる。
【0051】
2自由度電動機100においては、第1ステータ10及び第2ステータ20と、第1ロータ40と、駆動軸30とが互いに物理的に非接触であるため、摩擦による損失を防ぐことができ、その結果高出力化を実現することができる。また、出力部であるステータを2つ設ける構成を採用することにより、より高い出力を出すことが可能となる。また、第1ロータ40及び駆動軸30に含まれる磁石が矩形であるため、螺旋状の磁石を採用する構成と比較して、構成が簡易であり、製造が容易である。また、第1ロータ40及び駆動軸30のN極領域及びS極領域は非着磁部を含むため、使用する磁石の量を少なくすることができる。その結果、コストを低減することができる。
【0052】
[第2実施形態に係る2自由度電動機200の全体構成]
次に、
図9~
図22を参照して、第2実施形態に係る2自由度電動機200について説明する。なお、Z軸方向、θ方向、右傾斜方向等の各方向の定義は、第1実施形態と同様とし、その説明については省略する。また、N極磁石及びS極磁石については、第1実施形態と同じ符号を用いて説明する。
【0053】
図9は、第2実施形態に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
図10は、第2実施形態に係る2自由度電動機を示す正面図である。
図11は、
図10のXI-XI切断面における断面図である。
図12は、第2実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
図13は、第2実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
図14は、第2実施形態の第1ロータの磁石配置を示す図であって、第1ロータの外周面の展開平面図である。
図15は、第2実施形態の第2ロータの磁石配置を示す図であって、第2ロータの外周面の展開平面図である。
【0054】
2自由度電動機200は、2自由度電動機100と同様に、Z軸方向の推力と、θ方向の回転力を独立して発生させることができる電動機である。2自由度電動機200は、第1ステータ210と、第2ステータ220と、駆動軸230と、第1ロータ240と、第2ロータ250とを有する。
【0055】
[第1ステータ210及び第2ステータ220の概要]
第1ステータ210は、
図1等に示した第1ステータ10とスロット数は異なるが、他の基本的な構造は同様であり、環状であって、回転磁界を形成するものである。第1ステータ210は、回転磁界を形成することにより、第1ロータ240を駆動させることができる。
【0056】
同様に、第2ステータ220は、
図1等に示した第2ステータ220とスロット数は異なるが、他の基本的な構造は同様であり、環状であって、回転磁界を形成するものである。第2ステータ220は、回転磁界を形成することにより、第2ロータ250を駆動させることができる。
【0057】
第1ステータ210と第2ステータ220は、Z軸方向において異なる位置に設けられている。また、第1ステータ210と第2ステータ220とは独立して制御可能である。
【0058】
[第1ロータ240及び第2ロータ250の概要]
外観の図示は省略するが、第1ロータ240は、環状の回転体である。また、第1ロータ240は、駆動軸230の外周面及び第1ステータ210の内周面に対して環状の隙間を有して、回転可能に支持されている。
【0059】
第2ロータ250も環状の回転体である。第2ロータ250は、駆動軸230の外周面及び第2ステータ220の内周面に対して環状の隙間を有して、回転可能に支持されている。
【0060】
第1ロータ240は、外周面において、N極に着磁された複数のN極磁石41を含む帯状のN極領域と、S極に着磁された複数のS極磁石42を含む帯状のS極領域を含む。なお、第1ロータ240の内周面においては、外周面のN極領域に対応する部位がS極領域となり、外周面のS極領域に対応する部位がN極領域となる。すなわち、N極磁石41の内周面はS極であり、S極磁石42の内周面はN極である。
【0061】
第1ロータ240のN極領域及びS極領域はそれぞれ、駆動軸230の外周面及び第1ステータ210の内周面に対して対向して設けられている。すなわち、第1ロータ240の外周面のN極領域及びS極領域は、第1ステータ210から磁気的に影響を受けると共に、第1ロータ240の内周面のN極領域及びS極領域は駆動軸230に対して磁気的に影響を与えるように設けられている。第1ロータ240における磁石配置の詳細については後述する。
【0062】
同様に、第2ロータ250は、N極に着磁された複数のN極磁石41を含む帯状のN極領域と、S極に着磁された複数のS極磁石42を含む帯状のS極領域を含む。
【0063】
第2ロータ250のN極領域及びS極領域はそれぞれ、駆動軸230の外周面及び第2ステータ220の内周面に対して対向して設けられている。すなわち、第2ロータ250のN極領域及びS極領域は、第2ステータ220から磁気的に影響を受けると共に、第2ロータ250のN極領域及びS極領域駆動軸230に対して磁気的に影響を与えるように設けられている。第2ロータ250における磁石配置の詳細については後述する。
【0064】
図10に示すように、第2ロータ250に含まれる複数のN極磁石41及びS極磁石42はそれぞれ、円弧状である。また、
図10に示すように、1つのN極磁石41、及び1つのS極磁石42のθ方向における幅を45°とし、それら磁石を8つ並べることで第2ロータ250の1周を構成することとした。なお、第1ロータ240も同様とした。
【0065】
[駆動軸230の概要]
駆動軸230は、第1ロータ240及び第2ロータ250の内周面に対して環状の隙間を有して配置されている。また、駆動軸230の外周面には、N極に着磁された複数のN極磁石31を含む帯状のN極領域と、S極に着磁されたS極磁石32を含む帯状のS極領域が設けられている。また、駆動軸230においては、1つのN極磁石31、及び1つのS極磁石32のθ方向における幅を180°とし、それら磁石を2つ並べることで駆動軸230の1周を構成することとした。駆動軸230における磁石配置の詳細については後述する。
【0066】
駆動軸230の外周面のN極領域は、第1ロータ240及び第2ロータ250の内周面のN極領域から反発する力を受けると共に、第1ロータ240及び第2ロータ250の内周面のS極領域に引き合う力を受ける。また、駆動軸230の外周面のS極領域は、第1ロータ240及び第2ロータ250の内周面のN極領域に引き合う力を受けると共に、第1ロータ240及び第2ロータ250の内周面のS極領域から反発する力を受ける。
【0067】
第1ロータ240の回転移動に伴い、第1ロータ240の磁石配置と、駆動軸230の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じると、駆動軸330は、第1ロータ240から上記反発する力及び引き合う力を受けることとなる。また、第2ロータ250の回転移動に伴い、第2ロータ250の磁石配置と、駆動軸230の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じると、駆動軸230は、第2ロータ250から上記反発する力及び引き合う力を受けることとなる。このように、駆動軸230は、第1ロータ240及び第2ロータ250から磁気的に力を受けることにより駆動する。
【0068】
[駆動軸230の磁石配置]
図12及び
図13は、第2実施形態の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。
図12及び
図13においては、N極磁石31を幅狭の斜線で示しており、S極磁石32を幅広の複数の斜線からなるハッチングで示しており、非着磁部を白抜きで示している。
【0069】
駆動軸230は、
図12に示すように、その外周面に、右傾斜方向に沿って延びるN極領域と、当該N極領域に沿って延びるS極領域とを有する。N極領域とS極領域とは交互に配置されている。また、第2実施形態においては、
図12に示すように、θ方向に対する右傾斜方向の傾斜角をαとする。
【0070】
第2実施形態において、N極領域は、N極磁石31と非着磁部33とを含む領域である。同様に、S極領域は、S極磁石32と、非着磁部34とを含む領域である。
【0071】
N極領域においては、右傾斜方向に沿ってN極磁石31が互いに間隔を空けて並んで配置されている。また、N極領域においては、右傾斜方向に沿って非着磁部33が互いに間隔を空けて並んで配置されている。このように、N極領域においては、N極磁石31と非着磁部33とが交互に並んで配置されている。
【0072】
S極領域においては、右傾斜方向に沿ってS極磁石32が互いに間隔を空けて並んで配置されている。また、S極領域においては、右傾斜方向に沿って非着磁部34が互いに間隔を空けて並んで配置されている。このように、S極領域においては、S極磁石32と非着磁部34とが交互に並んで配置されている。
【0073】
また、駆動軸230のN極領域に含まれるN極磁石31と、駆動軸230のS極領域に含まれる非着磁部34とは、左傾斜方向に交互に並んで配置されている。同様に、駆動軸230のS極領域に含まれるS極磁石32と、駆動軸230のN極領域に含まれる非着磁部33とは、左傾斜方向に交互に並んで配置されている。
【0074】
すなわち、駆動軸230は、
図13に示すように、左傾斜方向に沿って延びるN極領域と、左傾斜方向に沿って延びるS極領域と、を含む構成であると捉えることもできる。左傾斜方向に沿って延びるN極領域は、N極磁石31と非着磁部34を含む領域である。左傾斜方向に沿って延びるS極領域は、S極磁石32と非着磁部33を含む領域である。
【0075】
また、駆動軸230において、展開平面視における、N極磁石31、S極磁石32、及び非着磁部33、34の平面形状をそれぞれ、右傾斜方向に延びる辺(端部)と、左傾斜方向に延びる辺(端部)とを含む平行四辺形(ひし形)とした。
【0076】
[第1ロータ240の磁極配置]
図14は、第2実施形態の第1ロータの磁石配置を示す図であって、第1ロータの外周面の展開平面図である。なお、第1ロータ240は、内周面側から見た場合においても、
図14に示す磁石配置をとるものである。
【0077】
第2実施形態においては、第1ロータ240の磁石配置を、第1実施形態の第1ロータ40と同様とした。すなわち、第1ロータ240において、複数のN極磁石41は、右傾斜方向(第1傾斜方向)に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って並ぶように配置されている。同様に、複数のS極磁石42は、右傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って並ぶように配置されている。また、N極磁石41は、θ方向においてS極磁石42と重ならないように配置されている。
【0078】
[第2ロータ250の磁極配置]
図15は、第2実施形態の第2ロータの磁石配置を示す図であって、第2ロータの外周面の展開平面図である。なお、第2ロータ250は、内周面側から見た場合においても、
図15に示す磁石配置をとるものである。
【0079】
第2ロータ250において、
図15に示すように、複数のN極磁石41は、左傾斜方向(第2傾斜方向)に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って並ぶように配置されている。同様に、複数のS極磁石42は、左傾斜方向に沿って互いに間隔を空けて並ぶと共に、Z軸方向に沿って並ぶように配置されている。また、N極磁石41は、θ方向においてS極磁石42と重ならないように配置されている。
【0080】
[駆動軸230の駆動原理:θ方向]
図16は、第1ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
図17は、第2ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【0081】
第1ステータ210により回転磁界を形成すると、第1ロータ240にθ方向の回転力が作用する。第1ロータ240がθ方向に回転移動することにより、第1ロータ240の磁石配置と、駆動軸230の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じる。その際に、駆動軸230には磁力が生じる。
【0082】
具体的には、第1ロータ240が-θ方向に回転した場合、駆動軸230には、
図16に示すように、右傾斜方向に対して直交する方向に磁力Fが生じる。磁力Fは、
図16に示すように、+Z方向に作用する推力F×cosαと、-θ方向に作用する回転力F×sinαとの合力である。
【0083】
図16に示す磁力Fは、上述の式(1)に示す位相差θ
mr1に応じて発生する。第2実施形態においては、θ
rp=90°、θ
mp=180°とした。
【0084】
また、第2ステータ220により回転磁界を形成すると、第2ロータ250にθ方向の回転力が作用する。第2ロータ250がθ方向に回転移動することにより、第2ロータ250の磁石配置と、駆動軸230の磁石配置との間にθ方向において位相差が生じる。その際に、駆動軸230には磁力が生じる。
【0085】
具体的には、第2ロータ250が-θ方向に回転した場合、すなわち、第1ロータ240と同じ方向に回転した場合、駆動軸230には、
図17に示すように、左傾斜方向に対して直交する方向に磁力Fが生じる。磁力Fは、
図16に示すように、-Z方向に作用する推力F×cosαと、-θ方向に作用する回転力F×sinαとの合力である。
【0086】
図17に示す磁力Fは式(2)に示す位相差θ
mr2に応じて発生する。式(2)において、θ
r2及びθ
mは第2ロータ250及び駆動軸230のθ方向における回転角を示し、z
mはZ軸方向における駆動軸230の位置を示す。また、θ
rp及びθ
mpは第2ロータ250及び駆動軸230それぞれのθ方向における磁石配置の周期(θ方向における1つの磁石の幅)を示す。l
pは、Z軸方向における磁石配置の周期(Z軸方向における1つの磁石の幅)を示す。第2実施形態においては、θ
rp=90°、θ
mp=180°とした。
【0087】
[数2]
θmr2=θr2-θm-(π/lp)×zm・・・(2)
【0088】
以上述べたように、第2実施形態の構成においては、駆動軸230には、第1ロータ240の回転移動により生じるZ軸方向の推力及びθ方向の回転力と、第2ロータ250の回転移動により生じるZ軸方向の推力及びθ方向の回転力と、が作用する。
【0089】
駆動軸230を独立して回転移動させるには、第1ロータ240の回転移動により生じる+Z方向の推力F×cosαと、第2ロータ250の回転により生じる-Z方向の推力F×cosαとが打ち消し合うように、第1ステータ210及び第2ステータ220を制御するとよい。推力が打ち消し合うことにより、駆動軸230は、第1ステータ210及び第2ステータ220に対して相対的に回転移動のみを行うこととなる。それにより、θ方向の回転力を独立して発生させることができる。
【0090】
図18は、第1ロータと第2ロータとが同じ方向に回転移動する場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、推力[N]との関係を示す図である。
【0091】
図18に示すように、第1ロータ240の回転移動により生じるZ軸方向の推力と、第2ロータ250の回転により生じるZ軸方向の推力とが打ち消し合うように、第1ステータ210及び第2ステータ220を制御することにより、駆動軸230はZ軸方向に移動しない。
【0092】
図19は、第1ロータと第2ロータとが同じ方向に回転移動する場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、回転力[Nm]との関係を示す図である。
【0093】
図19に示すように、第1ロータ240の回転移動により生じるθ方向の回転力と、第2ロータ250の回転により生じるθ方向の回転力とにより、駆動軸230は回転移動する。
【0094】
[駆動軸230の駆動原理:Z軸方向]
図20は、第2ロータの回転移動に伴って駆動軸に作用する磁力を示す図である。
【0095】
第2ロータ250が+θ方向に回転した場合、すなわち、第1ロータ240と反対方向に回転した場合、駆動軸230には、
図20に示すように、左傾斜方向に対して直交する方向に磁力Fが生じる。磁力Fは、
図20に示すように、+Z方向に作用する推力F×cosαと、+θ方向に作用する回転力F×sinαとの合力である。
【0096】
駆動軸230を独立して直線移動させるには、第1ロータ240の回転移動により生じる-θ方向の回転力F×sinαと、第2ロータ250の回転により生じる+θ方向の回転力F×sinαとが打ち消し合うように、第1ステータ210及び第2ステータ220を制御するとよい。回転力が打ち消し合うことにより、駆動軸230は、第1ステータ210及び第2ステータ220に対して相対的に直線移動のみ行うこととなる。それにより、Z方向の推力を独立して発生させることができる。
【0097】
図21は、第1ロータと第2ロータとが反対の方向に回転移動した場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、推力[N]との関係を示す図である。
【0098】
図21に示すように、第1ロータ240の回転移動により生じるZ軸方向の推力と、第2ロータ250の回転により生じるZ軸方向の推力により、駆動軸230は直線方向に移動する。
【0099】
図22は、第1ロータと第2ロータとが反対の方向に回転移動した場合における、駆動軸に対する第1ロータ及び第2ロータの位相角[deg]と、回転力[Nm]との関係を示す図である。
【0100】
図22に示すように、第1ロータ240の回転移動により生じるθ方向の回転力と、第2ロータ250の回転により生じるθ方向の回転力とが打ち消し合うように、第1ステータ210及び第2ステータ220を制御することにより、駆動軸230はθ方向に回転移動しない。
【0101】
[第2実施形態の第1変形例]
図23は、第2実施形態の第1変形例の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。なお、第2実施形態の第1変形例に係る2自由度電動機は、駆動軸330における磁石配置が異なることを除いて、
図9~
図17等で示した駆動軸230の構成と同様である。
【0102】
図23に示すように、駆動軸330は、駆動軸230と同様に、その外周面に、N極領域とS極領域を含む。N極領域において、N極磁石31は、右傾斜方向及び左傾斜方向に沿って配置されている。同様に、S極領域において、S極磁石32は、右傾斜方向及び左傾斜方向に沿って配置されている。すなわち、N極磁石31及びS極磁石32は、右傾斜方向及び左傾斜方向に沿う辺(端部)を含む平行四辺形(ひし形)である。
【0103】
また、複数のN極磁石31は、Z軸方向において間隔を空けて配置されている。同様に、複数のS極磁石32は、Z軸方向において間隔を空けて配置されている。
【0104】
駆動軸330においては、駆動軸230と同様に、第1ロータ240及び第2ロータ250の回転移動により、Z軸方向の推力及びθ方向の回転力が作用する。それにより、直線移動又は回転移動を独立して発生させることができる。
【0105】
図24は、第2実施形態の第1変形例の駆動軸を着磁する着磁器を示す図である。着磁器80は、駆動軸330の外周面を着磁する磁界を発生する装置である。駆動軸330に含まれる磁石の形状に沿う形状である複数の着磁部81を有する。外周面が着磁されていない駆動軸330を着磁器80の着磁部81上に配置し、磁界を発生させることにより、駆動軸330の外周面は着磁される。
図24に示す着磁器80を用いることにより、1回の着磁動作により、駆動軸330の半周分を着磁することができる。そのため、第2実施形態の第1変形例においては、2回の着磁動作により、駆動軸330の外周面に
図23に示すN極領域及びS極領域を形成することができる。
【0106】
第2実施形態の第1変形例の構成においては、
図16等で示した構成と比較して、使用する磁石が少ない分、出力が低下する一方で、製造工程が簡易となる。
【0107】
次に、
図25~
図27を参照して、第2実施形態の第2変形例に係る2自由度電動機300について説明する。
図25は、第2実施形態の第2変形例に係る2自由度電動機を示す斜視図である。
図26及び
図27は、第2実施形態の第2変形例の駆動軸の磁石配置を示す図であって、駆動軸の外周面の展開平面図である。なお、第2実施形態の第2変形例に係る2自由度電動機は、駆動軸430における磁石配置が異なることを除いて、
図9~
図17等で示した構成と同様である。
【0108】
図25、
図26に示すように、駆動軸430は、駆動軸230と同様に、その外周面に、N極領域とS極領域を含む。N極領域に含まれるN極磁石31及びS極領域に含まれるS極磁石32は、Z軸方向に沿う辺(端部)とθ方向に沿う辺(端部)を含む矩形(長方形)である。また、N極磁石31とS極磁石32とは、θ方向及びZ軸方向において互いに端部隣接するように交互に配置されている。
【0109】
駆動軸430の磁極配置においては、第1ロータ240及び第2ロータ250に対して磁気的に、N極領域及びS極領域が右傾斜方向及び左傾斜方向に沿って設けられていると捉えることができる。
【0110】
これは、
図27に示すように、太線で囲った領域においてN極磁石31とS極磁石32が等価に設けられるため、当該領域においては、第1ロータ240及び第2ロータ250から受ける磁力が相殺される。すなわち、第1ロータ240及び第2ロータ250に対して磁気的に、太線で囲った領域は非磁極部と同等の領域となる。そのため、
図26に示す磁石配置においては、第1ロータ240及び第2ロータ250に対して磁気的に、
図16で示した磁石配置と同等とみなすことができる。そのため、駆動軸430を用いることにより、第1ロータ240及び第2ロータ250の回転移動に伴って、Z軸方向の推力及びθ方向の回転力を独立して発生させることができる。
【0111】
駆動軸430においては、各磁石の形状が、駆動軸230と比較して簡易であるため、加工が容易であり、製造コストを抑制することができる。
【0112】
以上、本発明に係る各実施形態及び変形例について説明したが、これら各実施形態及び変形例に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。