(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】イカ釣り用のヤエン
(51)【国際特許分類】
A01K 91/06 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
A01K91/06 F
(21)【出願番号】P 2023066426
(22)【出願日】2023-04-14
【審査請求日】2024-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523134738
【氏名又は名称】株式会社サイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 義博
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-230341(JP,A)
【文献】登録実用新案第3076553(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/06
A01K 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸棒と、
前記第1の軸棒の先端に設けられた第1の掛け針、及び、
前記第1の軸棒の後端側に立設された支柱であって、その先端に、釣り糸に掛けるための第1の糸掛け部を有する第1の支柱
を備えるイカ釣り用のヤエンであって、
前記第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第1の軸棒の上方に延出するように前記第1の軸棒から分岐して設けられた第2の軸棒と、
前記第2の軸棒の先端に設けられた第2の掛け針、及び、
その先端に、釣り糸に掛けるための第2の糸掛け部を有する第2の支柱
を備え、
前記第2の軸棒の後端部と前記第1の軸棒は、回動しないように固定されており、
前記第2の支柱は前記第2の軸棒に立設されている
ことを特徴とするイカ釣り用のヤエン。
【請求項2】
長軸方向の重心位置が、前記第2の支柱よりも後方に位置することを特徴とする請求項1に記載のイカ釣り用のヤエン。
【請求項3】
前記第2の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第2の軸棒の上方に延出するように前記第2の軸棒から分岐して設けられた第3の軸棒と、
前記第3の軸棒の先端に設けられた第3の掛け針
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のイカ釣り用のヤエン。
【請求項4】
前記第2の軸棒の前記第2の掛け針と前記第2の支柱との間に第1の磁性部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のイカ釣り用のヤエン。
【請求項5】
前記第1の磁性部材と引き合う第2の磁性部材と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える餌魚用の取り付け具、及び、釣り糸を餌魚に取り付ける工程と、
前記取り付け具と前記釣り糸を取り付けた前記餌魚を水中に投入する工程、及び、
前記餌魚をイカが捕捉した後に、前記釣り糸に沿って請求項4に記載のヤエンを水中に投入する工程、
を含むことを特徴とするイカ釣り方法。
【請求項6】
軸棒と、
前記軸棒の先端に設けられた掛け針、及び、
前記軸棒の後端側に立設され、その先端に、釣り糸に掛けるための糸掛け部を有する少なくとも2つ以上の支柱、
を備えるイカ釣り用のヤエンであって、
前記軸棒の、前記掛け針と少なくとも2つ以上の前記支柱との間に第1の磁性部材を備えることを特徴とするイカ釣り用のヤエン。
【請求項7】
第1の軸棒と、
前記第1の軸棒の先端に設けられた第1の掛け針、及び、
前記第1の軸棒の後端側に立設され、その先端に、釣り糸を掛けるための糸掛け部を有する少なくとも2つ以上の支柱、
を備えるイカ釣り用のヤエンであって、
前記第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第1の軸棒の上方に延出するように前記第1の軸棒から分岐して設けられた第2の軸棒と、
前記第2の軸棒の先端に設けられた第2の掛け針
を備え、
さらに、前記第2の軸棒は、前記第2の掛け針と少なくとも2つ以上の前記支柱との間に、第1の磁性部材を備えることを特徴とするイカ釣り用のヤエン。
【請求項8】
前記第1の磁性部材と引き合う第2の磁性部材と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える餌魚用の取り付け具、及び、釣り糸を餌魚に取り付ける工程と、
前記取り付け具と前記釣り糸を取り付けた前記餌魚を水中に投入する工程、及び、
前記餌魚をイカが捕捉した後に、前記釣り糸に沿って請求項6又は7に記載のヤエンを水中に投入する工程、
を含むことを特徴とするイカ釣り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイカ釣り用のヤエンに関する。
【背景技術】
【0002】
ヤエン釣りとは、イカ、特にアオリイカの釣法の一つであり、イカの餌となる活きたアジ等の活き餌を泳がせ、イカが餌に食い付いたところで、タイミングを見計らいヤエンと呼ばれる掛け針を備えたイカ釣り用の仕掛けを投入し、餌に食い付いたイカにヤエンを引っ掛けて釣り上げる釣法である。イカ釣りに用いられるヤエンは、典型的には、軸棒と、軸棒の先端側に設けられた掛け針と、軸棒の後端側に立設された少なくとも2以上、典型的には2又は3の支柱と、該支柱の先端に備えられた糸掛け部を有している。糸掛け部には釣り糸が挿通され、これにより、ヤエンは釣り糸に吊るされる。釣り糸に吊るされた状態で海中に投入されるヤエンが釣り糸を滑り降りる様が、野猿に似ていると言われることもある。
【0003】
釣り糸に吊るされたヤエンは、釣り糸と同様、やや前方に傾斜した状態で、釣り糸に沿って降下するので、釣り糸の先端に取り付けられた餌魚及びこれを抱いているイカに到達する際、ヤエンの先端部は餌魚及びイカよりも下方に到達する。したがって、餌魚及びこれを抱いているイカまで到達したヤエンをイカに掛けるためには、掛け針を備える軸棒をイカが存在する上方に向かって跳ね上げることが重要となる。しかしながら、上述した構造を有するヤエンのような従来のヤエンにおいて、掛け針を備える軸棒の跳ね上がりは十分ではなく、イカへの掛かりは必ずしも良好なものではなかった。ヤエン釣りを行う釣り人は熟練の操作でこれを克服してきたものの、よりイカに掛かりやすいヤエンが強く望まれていた。
【0004】
以上のような背景から、よりイカに掛かりやすいとされる種々のヤエンが提案されている。例えば、特許文献1には、先端に掛け針が固定された主杆と、主杆から分岐して斜め上前方に向かって延びた、先端に掛け針が固定された副杆と、主杆に備えられた道糸リングを備えるヤエンが開示されている。当該ヤエンによれば、イカが副杆の掛け針に掛かった場合、イカの重みで副桿が主桿に近付き、主桿の掛け針に掛かる位置になり、しかも、イカが逃げる方向に主桿の掛け針が控えているので、イカを確実に捉えることができるとされている。しかしながら、本発明者が見出した知見によれば、特許文献1に開示されているような、先端に掛け針が固定された主杆と、主杆から分岐して斜め上前方に向かって延びた、先端に掛け針が固定された副杆と、主杆に備えられた道糸リングを備えるヤエンでは、主杆及び副杆が十分に跳ね上がらず、イカへの掛かり具合は必ずしも良好ではなかった。
【0005】
そこで、イカにさらに掛かりやすいとされるヤエンとして、掛け針を有するヤエン先端部とヤエン本体とを蝶番やヒンジ等の回転軸を介して連結して、ヤエンが餌魚及び/又はこれを抱いているイカまで到達した際に、掛け針を有する先端部が前記回転軸で回動して跳ね上がるように構成された、所謂、跳ね上げ式のヤエンが種々知られている(例えば、特許文献2、3)。しかしながら、本発明者が見出した知見によれば、掛け針を備える先端部とヤエン本体とを連結する回転軸を備え、ヤエンが餌魚及び/又はこれを抱いているイカまで到達した際に、掛け針を備えるヤエン先端部が回転軸の周りで回動して跳ね上がるように構成された跳ね上げ式のヤエンは、水中を降下する途中に、水の抵抗や潮流の影響でヤエン先端部が上下動することにより、カチカチと金属の接触音が発生し、イカに気が付かれて逃げられてしまったり、掛け針が釣り糸に引っ掛かり、ヤエンが餌魚に食い付いたイカまで到達しないこともしばしばであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-230341号公報
【文献】特開2007-202438号公報
【文献】特開2018-019676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、イカ釣り用のヤエンにおける以上の状況を鑑みて為されたものであり、餌魚を抱いているイカに、より確実に掛かり得るイカ釣り用のヤエンを提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ある一側面において、イカ釣り用のヤエンであって、
第1の軸棒と、
前記第1の軸棒の先端に設けられた第1の掛け針、及び、
前記第1の軸棒の後端側に立設された支柱であって、その先端に、釣り糸に掛けるための第1の糸掛け部を有する第1の支柱
を備えるイカ釣り用のヤエンであって、
前記第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第1の軸棒の上方に延出するように前記第1の軸棒から分岐して設けられた第2の軸棒と、
前記第2の軸棒の先端に設けられた第2の掛け針、及び、
その先端に、釣り糸に掛けるための第2の糸掛け部を有する第2の支柱
を備え、
前記第2の支柱は前記第2の軸棒に立設されている
ことを特徴とするイカ釣り用のヤエンを提供することにより上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明の一側面に係る上記ヤエンは、第1の掛け針を先端に備える第1の軸棒に加え、第2の掛け針を先端に備える第2の軸棒を備えており、前記第2の軸棒は、ヤエンが餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカと当接した際に効率的に跳ね上がるように設計されている。すなわち、本発明の一側面に係る上記ヤエンにおいて、第2の軸棒は、第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第1の軸棒の上方に延出するように前記第1の軸棒から分岐して設けられており、さらに、第2の軸棒には第2の支柱が立設されている。第2の支柱は、第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして延出する第2の軸棒に立設されているので、第1の軸棒の後端側に立設された第1の支柱よりもヤエンの先端側に位置しており、したがって、釣り糸に沿って降下した上記ヤエンが餌魚又は餌魚を抱いたイカに到達した際には、第2の支柱が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカと当接することになる。第2の支柱が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカと当接し、第2の支柱をヤエンの後端側に向かって押す力が第2の支柱に作用すると、第2の軸棒が跳ね上がる。しかも、第2の支柱を押す力は、第2の軸棒と第1の軸棒の分岐点を支点とした梃子の要領で、第2の軸棒を持ち上げる力として作用するので、僅かな力で効率的に第2の軸棒を跳ね上げることができる。このように、本発明の一側面による上記ヤエンは、餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達し、これと接触した際に効率的に跳ね上がるように構成された第2の軸棒を備えているため、より確実性高くヤエンをイカに掛け得るという利点がある。
【0010】
また、以上のとおり、本発明の一側面に係る上記ヤエンにおいて、前記第2の軸棒は前記第1の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第1の軸棒の上方に延出するように第1の軸棒から分岐して設けられている。すなわち、第1の軸棒と第2の軸棒の2つの軸棒は非回動的に固定されているので、掛け針を有する2つの軸棒を蝶番やヒンジ等の回転軸を介して連結した従来の跳ね上げ式ヤエンのように、釣り糸に沿ってヤエンを降下させている間に、海水の抵抗力や潮の流れ等を受けて回転軸周りで軸棒が回動し、掛け針が釣り糸に絡まってしまったり、金属部材の接触音に異変を感じたイカに逃げられてしまうという恐れが低減される。
【0011】
ある好適な一態様において、本発明の一側面に係る上記ヤエンの長軸方向の重心位置は、前記第2の支柱よりも後方に位置し得る。ここで、ヤエンの前方とは、第1の支柱の先端側、すなわち、第1の軸棒の第1の掛け針が存在する方向を意味し、ヤエンの後方とは、その反対方向を意味する。ヤエンの長軸方向の重心位置が前記第2の支柱よりも後方に位置する場合、ヤエンが餌魚又は餌魚を抱いたイカに到達し、第2の支柱が餌魚又は餌魚を抱いたイカに当接した場合に、前記第2の支柱の先端に備えられた第2の糸掛け部を支点として、ヤエンの後端側が下がりやすく、換言すれば、ヤエンの先端側が跳ね上がりやすくなるので、ヤエンの先端側に位置する第1の掛け針と第2の掛け針がよりイカに近接するようになり、ヤエンがイカに掛かり易くなるという利点が得られる。なお、長軸方向の重心位置が第2の支柱よりも後方に位置するヤエンを使用する釣り人は、ヤエンが餌魚又は餌魚を抱いたイカに到達し、第2の支柱が餌魚又は餌魚を抱いたイカに当接した場合に、ヤエンの後端側を下がりやすく、ヤエンの先端側が跳ね上がりやすくなるよう、釣り糸を緩めてもよい。
【0012】
本発明の一側面に係る上記ヤエンの長軸方向の重心位置は、例えば、錘を用いることにより適宜調整し得る。すなわち、ある好適な一態様において、本発明の一側面に係る上記ヤエンは、さらに、錘を備えていても良い。当業者であれば、適宜の重さの錘を、適宜の位置に設けることにより、ヤエンの重心位置を調整し得る。錘の位置、形、素材に特段の制限はなく、釣り人の好みに応じて適宜の位置や素材を採用し得るが、位置に関して言えば、典型的には、第1の軸棒に備えられていることが好ましく、第1の軸棒の第1の軸棒と第2の軸棒の分岐点よりも後方に備えられていることがより好ましい。素材に関して言えば、例えば、鉛、タングステン、スズ、鉄、ステンレス、タングステン合金、真鍮などの比較的比重の大きい金属素材が用いられ得るが、これらに限定されない。なお、錘の形状にも特段の制限はないが、典型的には、海水から受ける抵抗力が小さい紡錘型(ナツメ型又は楕円型)の錘が用いられ得る。錘は、半田付け、溶接及び/又は接着剤等の適宜の固定手段により固定することができるし、貫通孔を有する錘を軸棒を通し、軸棒上で移動可能な構成としてもよい。
【0013】
また、ある好適な一態様において、本発明の一側面に係る上記ヤエンは、さらに、前記第2の軸棒の先端方向に鋭角をなして前記第2の軸棒の上方に延出するように前記第2の軸棒から分岐して設けられた第3の軸棒と、前記第3の軸棒の先端に設けられた第3の掛け針を備えていてもよい。第3の軸棒は第2の軸棒から分岐して、前記第2の軸棒の上方に延出するように設けられているので、ヤエンが餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際、第3の軸棒の先端に設けられた第3の掛け針は、第2の軸棒の先端に設けられた第2の掛け針と比較して、より上方、すなわち、イカに近接した位置にあり得る。したがって、本発明の一側面に係る上記ヤエンが以上のような構成を備えている場合には、さらに確実性高くヤエンをイカに掛けることができるという利点が得られ得る。
【0014】
一方、ある好適な一態様において、本発明の一側面に係るヤエンは、さらに、前記第2の軸棒の前記第2の掛け針と前記第2の支柱との間に第1の磁性部材を備え得る。換言すれば、前記第2の軸棒の前記第2の支柱よりも先端側で、前記第2の掛け針よりも後端側に第1の磁性部材を備えていてもよいということになる。本発明の一態様に係る上記ヤエンは、前記第1の磁性部材と引き合う第2の磁性部材と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える餌魚用の取り付け具と共に用いられることで、より確実性高くイカに掛け得るものである。すなわち、本発明の一側面に係る上記ヤエンが餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達すると、上記ヤエンが備える第1の磁性部材と、餌魚の腹部に取り付けられた第2の磁性部材とが引き合うことで、前記第1の磁性部材とともに、前記第1の磁性部材が取り付けられた第2の軸棒が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに向かって跳ね上がるので、第2の軸棒が備える第2の掛け針をイカにより確実に掛けることができるという利点が得られ得る。
【0015】
第1の磁性部材及び第2の磁性部材は、磁力により引き合うことができる限りにおいて、どのような材料で構成されていても良いが、少なくともいずれか一方は永久磁石であることが好ましい。永久磁石としては、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、コバルト磁石、アルニコ磁石等が挙げられる。これらの永久磁石は、例えば、耐食性を高めるために適宜のコーティング層により被覆されていても良い。餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段に特段の制限はないが、例えば、釣り針やクリップ等が用いられ得る。当該釣り針はカエシ(モドリ、カエリと言われることもある。)のある釣り針であることが好ましい。餌魚用の取り付け具としては、第1の磁性部材と引き合うことができる磁性を有する材料で構成されている限りにおいて、例えば、市販の腹オモリや腹ナマリ等の釣り具やダブルクリック、目玉クリップ等のクリップを用いても良い。
【0016】
本発明の一側面に係る上記ヤエンと、餌魚用の取り付け具とは、両者を組み合わせて、例えば、イカ釣り用の仕掛けキットの形態で提供されてもよい。
【0017】
なお、第1の磁性部材を備えている本発明の一側面に係る上記ヤエンによれば、より確実性高くイカを掛け得ることは勿論であるが、従来知られていた他のヤエンの軸棒に磁性部材を備えるように構成しても良い。すなわち、本発明のさらに他の一側面によれば、
軸棒と、
前記軸棒の先端に設けられた掛け針、及び、
前記軸棒の後端側に立設され、その先端に、釣り糸に掛けるための糸掛け部を有する少なくとも2つ以上の支柱、
を備えるイカ釣り用のヤエンであって、
前記軸棒の、前記掛け針と少なくとも2つ以上の前記支柱との間に第1の磁性部材を備えることを特徴とするイカ釣り用のヤエンもが提供される。本発明の一態様に係る当該ヤエンは、前記第1の磁性部材と引き合う第2の磁性部材と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える餌魚用の取り付け具と共に用いられることで、より確実性高くイカに掛け得るものであることは、上述したのと同様である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、餌魚に食い付いているイカに、より確実に掛かり得るイカ釣り用のヤエンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)を示す図である。
【
図2】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)が備える第1の糸掛け部(113)を拡大して示す図である。
【
図3】ヤエン釣りにおける本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)の動作を示す図である。
【
図4】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)の動作を、第2の軸棒を有さず、第2の支柱が第1の軸棒に立設されている従来型のヤエン(400)の動作と比較して示す図である。
【
図5】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(200)を示す図である。
【
図6】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(300)を示す図である。
【
図7】ヤエン釣りにおける本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(300)の動作を示す図である。
【
図8】本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(500)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明のイカ釣り用のヤエンが図示したものに限られないことは勿論である。
【0021】
<実施の形態1>
図1に本発明の一実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)を示す。ヤエン(100)は、直線状の第1の軸棒(110)と、同じく直線状の第2の軸棒(120)を有しており、第2の軸棒(120)は、第1の軸棒(110)の途中から分岐して、第1の軸棒(110)の先端方向に鋭角をなして、第1の軸棒(110)の上方に延出するように設けられている。第1の軸棒(110)の先端には第1の掛け針(111)が備えられており、第1の軸棒(110)の後端には第1の支柱(112)が立設されている。第1の支柱(112)の先端には、第1の糸掛け部(113)が設けられている。第1の軸棒(110)の後端部には、錘(114)が固定されている。一方、第2の軸棒(120)の先端には第2の掛け針(121)が備えられており、第2の軸棒(120)は、その後端部において第1の軸棒(110)に固定されている。第2の軸棒(120)の後端部近傍には、第2の支柱(122)が立設されており、第2の支柱(122)の先端には第2の糸掛け部(123)が設けられている。なお、図示するように、第1の掛け針(111)と、第2の掛け針(121)、第1の糸掛け部(113)、第2の糸掛け部(123)は略直線上に配置されている。
【0022】
ヤエン(100)の寸法は図示したとおりではあるが、第1の軸棒(110)の全長は約300mmであり、第1の軸棒(110)の後端に立設された第1の支柱(112)の高さは約30mm、第1の支柱の先端に設けられた第1の糸掛け部(113)の高さは約10mmである。一方、第2の軸棒(120)の全長は、第1の軸棒(110)の全長よりも短く、約200mmであり、第2の軸棒(120)の後端部近傍に立設された第2の支柱(122)の高さは、第1の支柱(113)の高さよりも低く約20mm、第2の支柱(122)の先端に設けられた第2の糸掛け部(123)の高さは約10mmである。
【0023】
第1の軸棒(110)及び第1の支柱(112)は、例えば、直径0.5mm~2.0mm程度、典型的には、直径0.8mm~1.2mm程度のステンレス鋼線やピアノ線等の線材から構成されており、第1の軸棒(110)及び第1の支柱(112)は、半田付け、溶接、金属バンド、及び/又は接着剤等の固定手段に固定されている。なお、第1の軸棒(110)と第1の支柱(112)は一つの線材から一体として形成されていてもよい。第2の軸棒(120)及び第2の支柱(122)の素材、寸法等についても、第1の軸棒(110)及び第1の支柱(112)と基本的に同様であるが、第2の軸棒(120)の跳ね上がり性を高めるという観点からは、第2の軸棒(120)の直径を、第1の軸棒(110)の直径と比較して小さくしてもよい。
【0024】
図1に示すとおり、本発明の一実施態様に係るヤエン(100)において、第2の軸棒(120)は、第1の軸棒(210)の先端方向に鋭角(α)をなして上方に延出するように第1の軸棒(110)から分岐している。第2の軸棒(120)と第1の軸棒(110)は、その分岐点(BP1)、すなわち、第2の軸棒(120)の後端部と第1の軸棒(110)の結合点で非回動的に固定されている。第2の軸棒(120)と第1の軸棒(110)は、例えば、半田付け、溶接、金属バンド、及び/又は接着剤等の固定手段により固定され得る。なお、第2の軸棒(120)と、第1の軸棒(110)の先端方向がなす鋭角(α)の角度に特段の制限はないが、例えば、0.5~10°、0.5~5°、1~3°であり得る。
【0025】
ヤエン(100)の第1の軸棒(110)の先端には、第1の掛け針(111)が備えられている。本例において、第1の掛け針(111)は、ひねりの入った2本の針をV字型に組み合わせたヒネリ針から構成され、第1の掛け針(111)の針先はヤエン上方に向けて配置されている。本発明に係るヤエンに用いられる掛け針は本例のものに限られず、イカを掛けることができる限りにおいて、基本的にどのような掛け針を用いてもよく、当業者であれば、釣り人の好み等に応じて適宜の掛け針を採用し得る。掛け針を構成する針の形状は、例えば、カエシのないスレ針(ストレート針と言われることもある。)、カエシが外側に設けられた針(アウトバーブ針と言われることもある。)、カエシが内側に設けられた針、僅かなカエシが入った針(半スレ針と言われることもある。)、ひねりの入ったヒネリ針、または、これらの組み合わせであり得る。なお、「カエシ」は、モドリやカエリと呼ばれることもある。また、掛け針を構成する針の本数にも特段の制限はなく、例えば、1本、2本、又は2本以上であり得るが、イカへの刺さり込みやすさ及びイカの保持力の観点からは、2本以上であることが好ましい。掛け針が2本以上の針から構成される場合、2本の針をV型に組み合わせて、所謂、V型の掛け針としてもよいし、2本以上の針を錨型に組み合わせ、所謂、錨型の掛け針としてもよい。錨型の掛け針を構成する針の本数は、例えば、4本、5本、6本、8本又は8本以上であり得る。
【0026】
なお、本例において、第1の軸棒(110)は、掛け針として、第1の掛け針(111)のみを備えているが、これに加えて、さらに掛け針を備えていても良い。第1の軸棒(110)が、さらに掛け針を備える場合、その数は、例えば、1個、2個、3個又はそれ以上であり得る。第1の軸棒(110)における掛け針の間隔に特段の制限はないが、例えば、10~60mm、20~50mmであり得る。
【0027】
第2の掛け針(121)については、特に断りがない限り、第1の掛け針(111)についてと同様であるので、簡便のため説明を省略する。
【0028】
図1に示すとおり、ヤエン(100)において、第1の掛け針(111)は、第2の掛け針(121)よりヤエンの先端側に位置している。ヤエンから逃げようとするイカは、ヤエンから離れる方向、すなわち、ヤエンの先端側に向かって逃げようとするので、本例のヤエン(100)のように、第1の掛け針(111)が第2の掛け針(121)よりもヤエンの先端側に位置する構成を備える場合には、第2の掛け針(121)と接触する又は第2の掛け針(121)に掛かる等したイカが逃げようとする方向に第1の掛け針(111)が存在するので、よりイカが掛かりやすいという利点がある。なお、本例のように、第2の軸棒(120)よりも長い第1の軸棒(110)を用いることにより、第1の掛け針(111)は、第2の掛け針(121)よりヤエンの先端側に配置され得る。
【0029】
なお、より詳細には、本例において、第1の掛け針(111)は第2の掛け針(121)より、ヤエンの長軸方向に約25mm先端側に位置しているが、第1の掛け針(111)と第2の掛け針(121)の間隔は、本例の間隔に限られず、ヤエンの全長、ターゲットとなるイカの大きさ、餌魚の大きさ等に応じて適宜設定され得る。第1の掛け針と第2の掛け針の間隔は、例えば、10mm~60mm、20mm~50mmであり得る。なお、第1の掛け針(111)と第2の掛け針(121)の間隔とは、ヤエンの長軸方向の間隔を意味する。
【0030】
また、ヤエン全体における第1の掛け針(111)、第2の掛け針(121)の位置に特段の制限はなく、ヤエンの全長、ターゲットとなるイカの大きさ、餌魚の大きさ等に応じて適宜設定され得るが、第2の支柱(122)と第2の掛け針(121)と間には、餌魚がおさまる程度の間隔があることが好ましい。餌魚の大きさにもよるが、第2の支柱(122)と第2の掛け針(121)との間の間隔は、例えば、100~300mm、150~250mm、180~220mmであり得る。なお、第2の支柱と第2の掛け針の間隔とは、ヤエンの長軸方向の間隔であり得る。
【0031】
一方、第1の支柱(112)の先端には、釣り糸に掛けるための第1の糸掛け部(113)が設けられている。
図2に第1の糸掛け部(113)を拡大して示す。
図2に示すように、第1の糸掛け部(113)は、釣り糸を挿通する糸挿通部(113a)と、釣り糸を保持する円形の糸保持空間(113b)から構成されている。糸挿通部(113a)には僅かな隙間があり、この隙間から釣り糸を挿通する仕組みとなっている。第1の糸掛け部(113)は、糸保持空間(113b)の上部で、糸保持空間(113b)に保持される釣り糸と係合し、これによりヤエン(100)は釣り糸に吊るされる。また、本例において、第1の糸掛け部(113)は、第1の支柱(112)を構成するステンレス鋼線やピアノ線等の線材をペンチ等で曲げ加工することによって形成されている。糸掛け部は、釣り糸を挿通する糸挿通部と、挿通した釣り糸を保持する糸保持空間を有し、ヤエンを釣り糸に摺動可能に吊るすことができる限りにおいて、どのような形状や構造であってもよく、当業者であれば、釣り人の好み等に応じて適宜の糸掛け部を採用し得る。例えば、糸保持空間の形状は円形に限られず、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形や楕円形、らせん状の形状であってもよい。また、糸掛け部には、さらに、ラインローラー等が備えられていてもよい。第2の糸掛け部(123)については、特に断りがない限り、第1の糸掛け部(113)についてと同様であるので、簡便のため説明を省略する。
【0032】
また、
図1に示すとおり、本例において、第2の支柱(122)は、第1の支柱(112)と比較して相対的にヤエンの先端側に位置し、ヤエンの先端側に位置する第2の支柱(122)の高さは、第1の支柱(112)の高さよりも低く構成されている。前述したとおり、ヤエン(100)は第1の支柱(112)の先端に設けられた第1の糸掛け部(113)と第2の支柱(122)の先端に設けられた第2の糸掛け部(123)で、釣り糸に吊るされ、この状態で、釣り糸に沿って降下するところ(例えば、
図3aを参照されたい。)、相対的にヤエンの先端側に位置する第2の支柱(122)の高さが、第1の支柱(112)の高さよりも低く構成されている場合には、その分、ヤエンの先端側(第2の支柱側)が後端側(第1の支柱側)と比較して、釣り糸に対し相対的に持ち上がるので、釣り糸に沿って降下するヤエンの先端部は、餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに近接するようになる。したがって、ヤエンの先端側に位置する第2の支柱(122)の高さは、第1の支柱(112)の高さよりも低く構成されているヤエン(100)によれば、掛け針(111、121)がよりイカに掛かり易くなるという利点が得られる。なお、第2の支柱(122)の高さが第1の支柱(112)の高さよりも低すぎると、ヤエンの先端側の相対的な位置が高くなりすぎ、ヤエンの先端部に設けられた掛け針(111、121)が釣り糸に絡まる恐れがある。第1の支柱の高さと第2の支柱の高さは、当業者が釣り人の好み或いはヤエン投入時の釣り糸の傾斜の角度等に応じて適宜設定し得るものであるが、以上のような観点から、第1の支柱の高さと第2の支柱の高さは、第1の糸掛け部と、第2の糸掛け部と、第1の掛け針と、第2の掛け針が略同一直線上に位置するように調整されるか、第1の糸掛け部と第2の糸掛け部とを結ぶ直線の0.1~5mm程度下方又は上方に第1の掛け針と第2の掛け針が位置するように調整されることが好ましい。
【0033】
また、
図1に示すとおり、本例のヤエン(100)において、第2の軸棒(120)には第2の支柱(122)が立設されている。すなわち、第2の支柱(122)は、第2の軸棒(120)と第1の軸棒(110)の分岐点(BP1)よりも第2の軸棒(120)の先端側の位置に立設されているということになる。このように、第2の支柱(122)が第2の軸棒(120)と第1の軸棒(110)の分岐点(BP1)よりも第2の軸棒(120)の先端側の位置に立設されているヤエン(100)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達し(
図3a)、その第2の支柱(122)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接して、第2の支柱(122)をヤエン(100)の後端側に向かって押す力が作用すると、この力は、主として、分岐点(BP1)を支点とする梃子の要領で、第2の軸棒(120)の先端部を跳ね上げるように作用する(
図3b)。このようにして、第2の軸棒(120)が優先して跳ね上がる本実施態様に係るヤエン(100)によれば、第2の掛け針(121)がイカに掛かり易く、ヤエンをより確実性高くイカに掛けることができる(
図3c)。
【0034】
本実施態様に係るヤエン(100)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際の動きを、先端に掛け針を備えた第2の軸棒を有するものの、第2の支柱が第2の軸棒に立設されておらず、第2の軸棒と第1の軸棒の分岐点よりも第1の軸棒の後端側の位置に立設された従来型のヤエン(400)を比較対象として、
図4に示す。
図4bに示すとおり、従来型のヤエン(400)においては、ヤエンの先端側に位置する第2の支柱(415)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際に、第2の支柱(415)に作用する第2の支柱(415)をヤエンの後端側に向かって押す力は、専ら、第2の糸掛け部(416)を支点としてヤエン(400)全体を持ち上げるように作用するので、第2の軸棒(421)はヤエン(400)全体が持ち上げられるのに伴って跳ね上がるに過ぎない(
図4b)。これに対して、
図4aに示すとおり、本実施態様に係るヤエン(100)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接したときには、第2の支柱(122)に作用する第2の支柱(122)をヤエン(100)の後端側に向かって押す力は、ヤエン(100)全体を持ち上げるだけでなく、分岐点(BP1)を支点とする梃子の要領で、第2の軸棒(120)の先端部を跳ね上げるように作用するので、より効率的に第2の掛け針(121)が跳ね上がる(
図4a)。
【0035】
一方、
図1に示すとおり、本実施態様に係るヤエン(100)は、第1の軸棒(110)の後端部に錘(114)を備えており、これにより、ヤエン(100)の長軸方向の重心位置が第2の支柱(122)よりも第1の軸棒(110)の後端側、より具体的には、第1の支柱(112)と第2の支柱(122)の間の長軸方向の距離をL(本例においては100mm)とした場合に、第2の支柱(122)よりも第1の軸棒(110)の0.2L(本例においては20mm)後端側の位置に位置するように調整されている。本例のように、ヤエン(100)の長軸方向の重心位置が第2の支柱(122)よりも後方に位置する場合、ヤエン(100)の第2の支柱(122)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際、第2の支柱(122)の第2の糸掛け部(123)を支点としてヤエン(100)の後端側が下がりやすく、換言すれば、ヤエン(100)の先端側が跳ね上がり易くなるので、掛け針(111、121)がイカに掛かり易いという利点が得られる。一方、ヤエン(100)の長軸方向の重心位置が第1の軸棒(110)のより後端側に位置すれば位置するほど、ヤエン(100)の先端側が跳ね上がり易くなるものの、ヤエン(100)の第2の支柱(122)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際、第2の支柱(122)を押す力が、梃子の要領で第2の軸棒(120)を持ち上げるよりも、むしろ、第2の糸掛け部(123)を支点としてヤエン(100)全体を跳ね上げるように作用してしまう場合がある。したがって、ヤエンの長軸方向の重心位置に特段の制限はないものの、以上のような観点を総合すると、ヤエンの長軸方向の重心位置は、第1の支柱(112)と第2の支柱(122)の間の長軸方向の距離をLとした場合に、第2の支柱(122)よりも第1の軸棒(110)の0.05L~0.4L後端側、より好ましくは、0.1L~0.3L後端側、さらに好ましくは0.15L~0.25L後端側であり得る。
【0036】
なお、本発明に係るヤエンは、典型的には、ヤエン本体の製造加工に用いられる素材、例えば、ステンレス鋼そのままの銀色等であり得るが、任意の色に塗装されていても良い。本発明に係るヤエンが塗装される場合、その色に特段の制限はなく、どのような色であってもよい。例えば、イカに気づかれにくいとされる黒色や茶色であってもよいし、ヤエンの視認性の観点から、黄色、オレンジ色、黄緑色等にしてもよいし、その中間の赤色であってもよい。当業者であれば、釣り人の好み等に応じて、適宜の色を採用し得る。
【0037】
以下、アオリイカを釣る場合を例として、本実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(100)についてより詳細に説明する。
【0038】
本実施態様に係るヤエン(100)を使用して、アオリイカ(S)を釣る場合、典型的には、まず、釣り糸(L)の先端に備えられた尾針(「掛け針」と言われることもある。)を餌魚である活きアジ(M)のゼイゴ付近に取り付け、アジ(M)を海中で泳がせ、この状態で、アタリがあるまで待つ。海中を泳ぎ回るアジ(M)をアオリイカ(S)が発見して、これを捕捉する場合、アオリイカ(S)は二本の触腕を用いて、典型的にはアジ(M)に横側から抱き付く。アオリイカ(S)はアジ(M)を横抱きすると、まず、自らの縄張りへアジ(M)を移動させようと走り出す。典型的には、ここで釣り糸が引かれるので、釣り人はアタリがあると分かることになる。しばらくすると、釣り糸(L)の引きがおさまる。このとき、アオリイカ(S)がアジ(M)を縦に抱き直し、アジ(M)を食べ始めていると考えられ、この状態では、アオリイカ(S)はアジ(M)を放しにくくなる。そこで、釣り人は、アオリイカ(S)がアジ(M)を放さないよう細心の注意を払いながら、釣り糸(L)を徐々に引き寄せ、アオリイカ(S)との距離が近付いたら、ヤエン(100)の第1の糸掛け部(113)及び第2の糸掛け部(123)に釣り糸(L)を挿通し、ヤエン(100)を釣り糸(L)に吊るして、海中に投入する。
【0039】
ヤエン(100)がアジ(M)及び/又はアジ(M)を抱いたアオリイカ(S)に到達すると(
図3a)、ヤエン(100)の第2の支柱(122)がアジ(M)及び/又はアジ(M)を抱いたアオリイカ(S)に当接し、第2の掛け針(121)を先端に備える第2の軸棒(120)が跳ね上がり(
図3b)、跳ね上がった第2の掛け針(123)がアオリイカ(S)に掛かる(
図3c)。このようにしてヤエン(100)がアオリイカ(S)に掛かった後には、ヤエン(100)がアオリイカ(S)から外れないように注意を払いながら、アオリイカ(S)を引き寄せ、タモ等で捕獲すればよい。
【0040】
<実施の形態2>
次に、本発明の他の実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(200)について説明する。
【0041】
図5にヤエン(200)を示す。ヤエン(200)は、実施の形態1のヤエン(100)と同様、第1の軸棒(210)と、第1の軸棒(210)の先端に設けられた第1の掛け針(211)と、第1の軸棒(210)の後端に立設された第1の支柱(212)、及び、第1の支柱(212)の先端に設けられた第1の糸掛け部(213)を備えている。また、第1の軸棒(210)の先端方向に鋭角をなして延出するように第1の軸棒(210)から分岐して設けられた第2の軸棒(220)と、第2の軸棒(220)の先端に設けられた第2の掛け針(221)、第2の軸棒(220)に立設された第2の支柱(222)、及び、第2の支柱の先端に設けられた第2の糸掛け部(223)を備え、第2の支柱(222)は、第2の軸棒(220)と第1の軸棒(210)の分岐点(BP2)よりも第2の軸棒(220)の先端側の位置に立設されている。また、ヤエン(200)は、錘(214)を備えており、これにより、ヤエン(200)の長軸方向の重心位置が、第2の支柱(222)よりも後方に位置するように調整されている。
【0042】
ここまでのヤエン(200)の構造は、実施の形態1のヤエン(100)と同様であるが、ヤエン(200)は、さらに、第2の軸棒(220)の先端方向に鋭角をなして第2の軸棒(220)の上方に延出するように第2の軸棒(220)から分岐して設けられた第3の軸棒(230)を備え、第3の軸棒(230)の先端には第3の掛け針(231)が備えられている。第3の軸棒(230)は第2の軸棒(220)から分岐して設けられているので、第2の支柱(222)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに当接した際に、第2の軸棒(220)とともに効率的に跳ね上がる。しかも、第3の軸棒(230)の第3の掛け針(231)は、第2の軸棒(220)の第2の掛け針(221)よりも上方に備えられているので、よりイカに掛かり易い。このように第3の軸棒(230)及び第3の掛け針(231)を備える本実施形態に係るヤエン(200)によれば、さらに確実にヤエンをイカに掛けることができるという利点が得られ得る。
【0043】
なお、
図5に示すとおり、ヤエン(200)において、第2の軸棒(220)は第3の軸棒(230)よりも長く、第2の掛け針(221)は第3の掛け針(231)よりヤエンの先端側に位置している。より詳細には、本例において、第2の掛け針(221)は第3の掛け針(231)より、ヤエンの長軸方向に25mm先端側に位置している。第2の掛け針(221)と第3の掛け針(231)の間隔は、本例の間隔に限られず、ヤエンの全長、ターゲットとなるイカの大きさ、餌魚の大きさ等に応じて適宜設定され得ることは、既に第1の掛け針と第2の掛け針の間隔について述べたと同様である。
【0044】
また、ヤエン全体における第3の掛け針(231)の位置に特段の制限はなく、ヤエンの全長、ターゲットとなるイカの大きさ、餌魚の大きさ等に応じて適宜設定され得る。ただし、第3の掛け針(231)を備えるヤエン(200)においては、第2の支柱(222)と第3の掛け針(231)と間には、餌魚がおさまる程度の距離があることが好ましい。餌魚がおさまる程度の距離については、既に述べたとおりである。
【0045】
<実施の形態3>
次に、本発明の他の実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(300)について説明する。
【0046】
図6にヤエン(300)を示す。ヤエン(300)は、実施の形態1のヤエン(100)と同様、第1の軸棒(310)と、第1の軸棒(310)の先端に設けられた第1の掛け針(311)と、第1の軸棒(310)の後端に立設された第1の支柱(312)、及び、第1の支柱(312)の先端に設けられた第1の糸掛け部(313)を備えている。また、第1の軸棒(310)の先端方向に鋭角(δ)をなして第1の軸棒(310)の上方に延出するように第1の軸棒(310)から分岐して設けられた第2の軸棒(320)と、第2の軸棒(320)の先端に設けられた第2の掛け針(321)、第2の軸棒(320)に立設された第2の支柱(322)、及び、第2の支柱の先端に設けられた第2の糸掛け部(323)を備え、第2の支柱(322)は、第2の軸棒(320)と第1の軸棒(310)の分岐点(BP4)よりも第2の軸棒(320)の先端側の位置に立設されている。また、ヤエン(300)は、錘(314)を備えており、これにより、ヤエン(300)の長軸方向の重心位置が第2の支柱(322)よりも後方に位置するように調整されている。
【0047】
以上に説明したヤエン(300)の構造は、実施の形態1のヤエン(100)の構造と基本的に同様であるが、ヤエン(300)は、さらに、第2の軸棒(320)に第1の磁性部材(324)を備えている点において、実施の形態1のヤエン(100)と相違する。図示するとおり、第1の磁性部材(324)は、第2の軸棒(320)に設けられ、その位置は、第2の掛け針(321)と第2の支柱(322)の間である。後述するとおり、第1の磁性部材(324)は、餌魚の腹部に取り付けられる第2の磁性部材(325)と結合させるためのものであるので、第1の磁性部材(324)は、第2の軸棒(320)の餌魚の腹部に対応する位置に設けられていることが好ましい。第2の軸棒(320)の餌魚の腹部に対応する位置は、餌魚の大きさ等にもよるが、例えば、第2の支柱(322)から先端側に、60~150mm、又は80~120mm離れた位置であり得る。
【0048】
本実施形態に係るヤエン(300)が備える第1の磁性部材(324)は、磁性を持つ部材である限りにおいて、基本的にどのようなものであってもよい。敢えて例示するのであれば、例えば、磁石であり得、より好ましくは、永久磁石であり得る。永久磁石としては、例えば、ネオジウム磁石、コバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石などが含まれるが、これらに限定されない。第1の磁性部材(324)が装着された第2の軸棒(320)の跳ね上がり性という観点からは、永久磁石は磁力の強いものであることが好ましく、この観点からは、例えば、ネオジウム磁石又はコバルト磁石等が好適に用いられ得る。一方、海水に対する耐食性という観点からは、フェライト磁石又はコバルト磁石であることが好ましい。海水に対する耐食性を高めるために、第1の磁性部材の表面は適宜のコーティング手段によりコーティングされていても良い。
【0049】
本実施態様に係るヤエン(300)は、前記第1の磁性部材(324)と引き合う第2の磁性部材(325)と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える餌魚用の取り付け具と共に用いられることで、より確実性高くイカに掛け得るものである。その動作を
図7に示す。
図7に示すとおり、第2の軸棒(320)に第1の磁性部材(324)を備える本実施態様に係るヤエン(300)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達すると(
図7a)、第2の軸棒(320)に備えられた第1の磁性部材(324)が、餌魚の腹部に取り付けられた取り付け具の第2の磁性部材(325)と引き合う。第2の磁性部材(325)は、餌魚の腹部に固定されているため、第1の磁性部材(324)を備える第2の軸棒(320)が磁力により跳ね上があり、ヤエン(300)がイカに掛かることになる(
図7b)。このように、本実施形態に係るヤエン(300)によれば、より確実にヤエンの跳ね上げが達成されるので、ヤエンをより確実性高くイカに掛け得るという利点がある。
【0050】
ヤエン(300)と共に用いられる上記餌魚用の取り付け具が備える第2の磁性部材(325)は、第1の磁性部材(324)と引き合うことができる限りにおいて、どのようなものであっても良い。当業者であれば、適切な磁性部材を適宜選択し得る。なお、第1の磁性部材(324)と第2の磁性部材(325)のいずれか一方は永久磁石であることが好ましい。ここで、前述したとおり、本発明に係るヤエンは、主として、金属製の材料で構成されているので、ヤエン本体が磁性を有する材料で構成されている場合がある。このような場合には、第2の磁性部材(325)が永久磁石であると、第2の磁性部材(325)は第1の磁性部材(324)のみならず、ヤエンの本体全体と引き合ってしまう恐れがあるので、第2の磁性部材(325)は永久磁石でなく、第1の磁性部材(324)が永久磁石であることが好ましい。
【0051】
また、同様の理由から、本実施形態に係るヤエン(300)の本体は、磁性を持たない材料で構成されていることが好ましい。ヤエン(300)の本体に用いられ得る磁性を持たない材料の具体例としては、例えば、非磁性のステンレス鋼線や合成樹脂が挙げられ、より具体的には、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316等のオーステナイト系のステンレス鋼線が好適に用いられ得る。本実施形態に係るヤエン(300)の本体が磁性を持たない材料で構成されている場合には、第2の磁性部材(325)と第1の磁性部材(324)が特異的に磁力で引き合うことになるので、より確実に第1の磁性部材(324)が備えらえた第2の軸棒(320)を、餌魚を抱いたイカに向かって跳ね上げることができる。
【0052】
一方、ヤエン(300)と共に用いられる上記餌魚用の取り付け具が備える餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段に特段の制限はなく、上記取り付け具を餌魚の腹部に取り付けることができる限りにおいて、基本的に、どのようなものであっても良い。このような取り付け手段としては、例えば、釣り針やクリップ等が用いられ得る。釣り針が取り付け手段として用いられる場合、当該釣り針には、カエシ(モドリ、カエリと言われることもある。)があることが好ましい。餌魚用の取り付け具としては、第1の磁性部材と引き合うことができる限りにおいて、例えば、市販の腹オモリや腹ナマリ等の釣り具や、ダブルクリップ、目玉クリップ等のクリップを用いても良い。
【0053】
<実施の形態4>
次に、本発明の他の実施態様に係るイカ釣り用のヤエン(500)について説明する。
【0054】
図8にヤエン(500)を示す。
図8に示すとおり、ヤエン(500)は、軸棒(510)と、軸棒(510)の先端側に設けられた第1の掛け針(511)及び第2の掛け針(512)、軸棒(510)の後端側に立設され、釣り糸に掛けるための糸掛け部(515、516)を先端に有する2つの支柱(513、514)、第1の軸棒に設けられた錘(517)を備える従来型のヤエンに、さらに、第1の磁性部材(518)を付加したものである。
【0055】
本実施態様に係るヤエン(500)も、実施の態様3に係るヤエン(300)と同様に、第1の磁性部材(518)と引き合う第2の磁性部材と、前記第2の磁性部材を餌魚の腹部に取り付けるための取り付け手段とを備える図示しない餌魚用の取り付け具と共に好適に用いられ得る。すなわち、本例において、第1の磁性部材(518)は軸棒(510)に設けられており、軸棒(510)の掛け針(511、512)と支柱(513、514)の間に位置しているが、実施の態様3において説明したと同様に、第1の磁性部材(518)は、餌魚の腹部に取り付けられる第2の磁性部材と結合させるためのものであるので、第1の磁性部材(518)は、ヤエン(500)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達した際に、軸棒(510)の餌魚の腹部に対応する位置に設けられていることが好ましい。軸棒(510)の餌魚の腹部に対応する位置は、餌魚の大きさ等にもよるが、例えば、軸棒の先端側に位置する支柱(514)から先端側に、60~150mm、又は80~120mm離れた位置であり得る。
【0056】
本例に係るヤエン(500)は、主杆として直線状の軸棒(510)を備えており、軸棒(510)から分岐した副杆等は備えていない。しかしながら、他の一態様においては、主杆である直線状の軸棒(510)から分岐して、軸棒(510)の先端方向に鋭角をなして、上方に延出し、先端に掛け針を有する軸棒を、副杆として備えていてもよい。すなわち、本例に係るヤエン(500)は、他の一態様において、先端に掛け針を有する2以上の軸棒を備えていてもよい。なお、ヤエン(500)に、このような副杆をさらに付加する場合には、第1の磁性部材(518)は、当該副杆に備えられていてもよい。第1の磁性部材(518)の位置に特段の制限はないが、ヤエン(500)が餌魚及び/又は餌魚を抱いたイカに到達した際に、ヤエン(500)の長軸方向で餌魚の腹部に対応する位置において、最も上方に存在する軸棒に設けられることが好ましい。その他の点については、実施の態様3において説明したと基本的に同様であるので簡便のため説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したとおり、本発明によれば、餌魚に食い付いているイカに、より確実にヤエンを掛け得るイカ釣り用のヤエンが提供される。釣り人の間で特に人気のあるアオリイカ等のイカ釣りに好適に用いることができる本発明の一側面に係るイカ釣り用のヤエンの産業上の利用可能性は多大なものである。
【符号の説明】
【0058】
<実施の形態1(
図1~
図4)>
100 ヤエン;110 第1の軸棒;111 第1の掛け針;112 第1の支柱;113 第1の糸掛け部(113a 糸挿通部、113b 糸保持空間);114 錘;120 第2の軸棒;121 第2の掛け針;122 第2の支柱;123 第2の糸掛け部;BP1 分岐点;釣り糸 L;アオリイカ S;アジ M
<実施の形態2(
図5)>
200 ヤエン;210 第1の軸棒;211 第1の掛け針;212 第1の支柱;213 第1の糸掛け部;214 錘;220 第2の軸棒;221 第2の掛け針;222 第2の支柱;223 第2の糸掛け部;230 第3の軸棒;231 第3の掛け針;BP2、BP3 分岐点
<実施の形態3(
図6、7)>
300 ヤエン;310 第1の軸棒;311 第1の掛け針;312 第1の支柱;313 第1の糸掛け部;314 錘;320 第2の軸棒;321 第2の掛け針;322 第2の支柱;323 第2の糸掛け部;324 第1の磁性部材;325 第2の磁性部材;BP4 分岐点;釣り糸 L;アオリイカ S;アジ M
<実施の形態4(
図8)>
500 ヤエン;510 第1の軸棒;511、512 掛け針;513、514 支柱;515、516 糸掛け部;517 錘、518 第1の磁性部材
<比較例:従来型のヤエン(
図4)>
400 ヤエン;410 軸棒;411 第1の掛け針;412 第1の支柱;413 第1の糸掛け部;414 錘;415 第2の支柱;416 第2の糸掛け部;420 第2の軸棒;421 第2の掛け針;BP5 分岐点