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特許7591847デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するエクソンスプライシングエンハンサー、sgRNA、遺伝子編集ツールおよび使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するエクソンスプライシングエンハンサー、sgRNA、遺伝子編集ツールおよび使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241122BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241122BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241122BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20241122BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20241122BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A61K31/7088
A61P21/00
C12N15/864 100Z
C12N15/55 ZNA
C12N15/62 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023515078
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 CN2020119361
(87)【国際公開番号】W WO2022047876
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】202010909759.7
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523077479
【氏名又は名称】ウェストレイク ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WESTLAKE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.18,Shilongshan Road,Cloud Town,Xihu District,Hangzhou,Zhejiang 310024,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジア
(72)【発明者】
【氏名】キウ,ハン
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/152609(WO,A1)
【文献】特表2016-521555(JP,A)
【文献】特表2015-509922(JP,A)
【文献】Molecular Cell,2018年,Vol.72,p.380-394,doi:10.1016/j.molcel.2018.09.002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトDMD遺伝子エクソン51を標的とするエクソンスプライシングエンハンサーエレメントであるデュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するエクソンスプライシングエンハンサーを標的とするsgRNAであって、前記エクソンスプライシングエンハンサーエレメントのヌクレオチド配列が、以下のもの:
1)配列番号21で示される配列およびその逆相補配列;
2)配列番号22で示される配列およびその逆相補配列;または
3)配列番号24で示される配列およびその逆相補配列
を含み、該sgRNAが、以下のsgRNA:
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号19に示されるsgRNA-12;および
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号20に示されるsgRNA-13からなる、前記sgRNA。
【請求項2】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療における使用のための、請求項に記載のsgRNA。
【請求項3】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連する遺伝子編集ツールであって、シトシンデアミナーゼとCas突然変異体の融合タンパク質、請求項に記載のsgRNAおよびベクターを含む、前記遺伝子編集ツール。
【請求項4】
シトシンデアミナーゼが、AIDであり、AIDとCas9突然変異体の融合タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号1で示される、請求項に記載の遺伝子編集ツール。
【請求項5】
アデノ随伴ウイルスベクターAAVによってパッケージングされている、請求項に記載の遺伝子編集ツール。
【請求項6】
アデノ随伴ウイルスベクターAAVのプロモーターが、Syn100プロモーターであるか、またはck8a、mhck7に基づくプロモーターである、請求項に記載の遺伝子編集ツール。
【請求項7】
アデノ随伴ウイルスウイルスベクターAAVのヌクレオチド配列が配列番号3で示される、請求項に記載の遺伝子編集ツール。
【請求項8】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療における使用のための、請求項のいずれか一項に記載の遺伝子編集ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療の分野に属し、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するジストロフィーエクソンスプライシングエンハンサー、sgRNA、遺伝子編集ツールの哺乳動物(実験動物モデルおよびヒト患者)の体内における遺伝子突然変異型遺伝性疾患の病原性突然変異に対する改変治療に関する。特に、デュシェンヌ型筋DMDのマウスモデルおよびヒト患者における遺伝子編集治療に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関WHOの定義では、希少疾患はある地域内において、罹患者数が総人口数の0.065%~0.1%を占める、よく見られない疾患である。このような疾患は、発症機序がなかなか見つからないものが多く、特異的な治療薬が少なく、患者の身体の健康に大きな危害をもたらし、その家庭にも社会にも莫大な負担がかかる。我が国の非常に大きな人口基盤のため、希少疾患の発症の絶対的な数が無視できないもので、近年、科学研究者と臨床専門家に重要視されて注目を集めている。2018年5月に、我が国の国家衛生健康委員会、科学技術部、工業・情報化部、国家薬品監督管理局、国家中医薬管理局といった五つの部門が合同で『第一次希少疾患目録』を発表し、中では、121種類の疾患が挙げられ、これによって希少疾患が我が国でさらなる重要視および注目が得られたことも示された。
【0003】
希少疾患の発症機序は遺伝子突然変異によるものが多く、複雑な多くの臨床所見につながる。診断手段の制限により、患者は疾患経過の早期で臨床症状が現れた後、大まかに単一性疾患にまとめられ、長期間の治療を経て改善しないと、初めてさらに希少未診断疾患と判断される。そのため、希少未診断疾患/希少疾患の関連研究について、進展が求められ、発症機序の探究、診断手段の最適化、発症過程の追跡、薬物標的のスクリーニングおよび遺伝子編集技術を合わせた特異的な遺伝子薬物の開発などを含むが、これらに限定されない。同時に、特殊な希少疾患の動物モデルの発見と改良も、希少疾患に対する全面的な理解および特異的な薬物の創薬を促進することができる。本発明は、筋ジストロフィー(Muscular Dystrophy)という、臨床において発見が早かったが、長期間にわたって有効な治療手段が欠けている希少疾患から切り込み、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy、DMD)を研究対象に、新たに発見されたマウスモデルを合わせ、当該疾患の遺伝子治療手段を開発して最適化し、そして遺伝子治療手段をヒトゲノム配列に応用した。
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーDMDはX染色体遺伝性疾患で、約4000人の男性新生児に1人罹患者が検出され、その病因がジストロフィンの遺伝子突然変異による発現欠失にある。DMD患者には、心筋の組織損傷と機能異常が最も致命的な脅威である。長い間、DMDは十分に有効な治療手段がなく、臨床において与えられる治療が症状の緩和に限られ、たとえば、アンジオテンシン阻害剤で心筋機能の退化による不調を緩和し、このような薬物はペリンドプリルや数種類のロール系β受容体遮断薬を含む。同時に、医療手段の向上とともに、心臓循環補助システムや呼吸補助システムなどを含む介入治療もDMD患者の症状の緩和に役に立つようになってきた。しかし、これらの治療は本質的にDMD患者の生活品質を向上させることができず、ただDMD患者の寿命を延ばすから、心臓機能の進行性退化が未だにDMD患者の一番の死因である。
【0005】
分子生物学の進展に伴い、臨床のデータ分析と合わせ、同様にジストロフィンタンパク質のコード遺伝子に突然変異があるが、DMD患者と同様の深刻な病理的過程が現れない患者が発見され、このような患者はベッカー型筋ジストロフィーBMD患者と呼ばれ、彼らが持つジストロフィンの遺伝子突然変異はタンパク質のオープンリーディングフレームの完全な破壊につながらないため、ある程度の生物学的機能のあるジストロフィンタンパク質が生成でき、重度な心筋機能障害およびほかの筋肉機能の欠陥が現れない。DMD患者の深刻な病理的過程に対し、BMD患者は寿命が顕著に影響されず、ほとんど健常者のような日常生活に戻れる。このようなBMD患者の出現は、科学研究者に、タンパク質の読み枠に影響せずに、DMD患者が持つ突然変異のエクソンスキッピングを誘発させることで、全長に近いジストロフィンタンパク質が生成するようにし、DMD患者の治療に使用することが可能であるかという、啓示を与えた。このようなアイデアは、近年、実践され、現在、すでに数種類の持つ突然変異のエクソンはこのようなプランで治療できるようになり、そのうちのいくつかは臨床実験の開始が許可された。
【0006】
2019年末まで、世界中で限られた何種類かのDMDに対する特効薬のみが市販を許可されている。中では、サレプタ・セラピューティックスは精密遺伝子療法による希少疾患の治療の開発に専念している生物技術の会社である。その会社によって研究・開発されたゴロジルセンは、米国FDAによって快速プロセスで許可されて2019年12月12日に市販され、エクソンスキッピングによるエクソン53の遺伝子突然変異と診断されたDMD患者の治療に使用される。約8%のDMD患者がこの突然変異を持つと推測されている。ゴロジルセンの本質は、アンチセンスオリゴヌクレオチドで、ジストロフィンタンパク質の配列を標的として作用を発揮する。そのため、ほかの突然変異部位に対して設計された薬物は、未だに大きな空白になっている。現在、世界中で、すでに臨床試験に入ったDMDに対する薬物を含め、競争は激しいが、需要は依然として巨大である。DMDに対する薬物は、いま、統計では、5種類市販され、6種類第III相臨床試験の段階で、19種類第II期臨床試験の段階で、さらに5種類第I期臨床試験の段階に入ったばかりである。
【0007】
指摘すべきなのは、ヒトDMD患者のうち、これらの薬物はある特定の突然変異を持つ一種類の患者のみに適するもので、ほかのDMD患者には、まだ十分な特異的な治療薬が欠けていることである。サレプタ・セラピューティックスによって研究・開発されたエテプリルセンは、アンチセンスホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)治療薬で、同社の最初のDMDを治療する市販(2016年)薬物である。しかしながら、これらの既に市販されている薬物は、治療効率が低く、持続的な投与が必要で、高価であるといった欠点があることが多い。遺伝子編集の治療方案は直接遺伝子突然変異型遺伝病の病原突然変異を標的として改変することができ、一旦編集すると、基本的に疾患を治癒する高価が得られ、大きな利点がある。
DMDという1種類の疾患のみならず、現在、世界中で、遺伝子編集ツールによって希少遺伝病を治療する応用はまだ少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、遺伝子突然変異型遺伝性希少疾患に対し、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するエクソンスプライシングエンハンサー、sgRNA、遺伝子編集ツールを、薬物として哺乳動物(疾患動物モデルおよびヒト患者)の体内における遺伝子編集治療のために提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の側面では、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連するエクソンスプライシングエンハンサーであって、ヒトDMD遺伝子エクソン51を標的とし、ヌクレオチド配列が以下のものを含むエクソンスプライシングエンハンサーを提供する:
1)配列番号21で示される配列およびその逆相補配列;
2)配列番号22で示される配列およびその逆相補配列;
3)配列番号23で示される配列およびその逆相補配列;
4)配列番号24で示される配列およびその逆相補配列。
【0010】
上記エクソンスプライシングエンハンサー(Exon Splicing Enhancer、ESE)などのエレメントを改変または遮断すると、DMD遺伝子のエクソン51のエクソンスキッピングを誘導することで、哺乳動物の体内における遺伝子編集治療を実現させることができる。たとえば、CRISPRヌクレアーゼは、DNAの二本鎖の断裂によって導入された挿入欠失断片(Insertions and deletions、Indels)でESEの構造を破壊し、アンチセンスオリゴヌクレオチドASOは、細胞中においてpre-mRNAの相応するエレメントの部位を標的とし、最終のタンパク質のアミノ酸配列に残ることを阻止する。
【0011】
また、第二の側面では、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連する特定のゲノムを標的とできる一本鎖ガイドRNA(single-strand guide RNA、sgRNA)であって、配列が以下のものを含むsgRNAを提供する:
Dmd-E4マウス突然変異部位に対する、ヌクレオチド配列が配列番号4で示されるsgRNA;
ヒトDMD遺伝子のエクソン50に対する、ヌクレオチド配列が配列番号7に示されるsgRNA;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号8に示されるsgRNA-1;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号9に示されるsgRNA-2;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号10に示されるsgRNA-3;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号11に示されるsgRNA-4;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号12に示されるsgRNA-5;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号13に示されるsgRNA-6;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号14に示されるsgRNA-7;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号15に示されるsgRNA-8;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号16に示されるsgRNA-9;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号17に示されるsgRNA-10;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号18に示されるsgRNA-11;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号19に示されるsgRNA-12;
ヒトDMD遺伝子のエクソン51に対する、ヌクレオチド配列が配列番号20に示されるsgRNA-13。
【0012】
前記sgRNAは、遺伝子編集ツールと合わせ、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療する薬物の製造のために使用することができる。
【0013】
また、第三の側面では、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関連する遺伝子編集ツールであって、シトシンデアミナーゼとCas突然変異体の融合タンパク質、請求項2に記載のsgRNAおよびベクターを含む遺伝子編集ツールを提供する。前記ベクターは、よく使用される生物プラスミドで、たとえば、AAVベクタープラスミド、pCDNA3.1プラスミドなどが挙げられる。
さらに、シトシンデアミナーゼは、AID、apobecなどでもよいが、好ましくは、シトシンデアミナーゼはAIDで、AIDとCas9突然変異体の融合タンパク質のアミノ酸配列および核酸配列はそれぞれ配列番号1および配列番号2で示される。
【0014】
さらに、前記遺伝子編集ツールは、アデノ随伴ウイルスベクターAAVによってパッケージングされている。アデノ随伴ウイルスAAVはAID-Cas9融合タンパク質およびsgRNAを発現する核酸配列を標的細胞に送達し、細胞中においてDNA編集機能を持つタンパク質およびガイド機能を持つsgRNA分子を発現させることができ、中では、sgRNAはAID-Cas9融合タンパク質を標的細胞における特定のゲノム部位にガイドし、病原突然変異を誘導改変し、不活性化させて疾患を治療する目的を実現させることができる。
さらに、前記アデノ随伴ウイルスベクターAAVのプロモーターはSyn100プロモーターまたはck8a、mhck7などに基づいて設計されたプロモーターである。
さらに、アデノ随伴ウイルスベクターAAVのヌクレオチド配列は配列番号3で示される。
【0015】
また、本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療する薬物の製造における上記遺伝子編集ツールの使用を提供する。
本発明の有益な効果は以下の通りである。
本発明は、DMDマウスモデルおよびヒトDMD患者が持つ病原突然変異を例とし、遺伝子編集ツールを設計・構築することにより、アデノ随伴ウイルスAAVで体内レベルにおいてDMDマウスモデルに対する治療を実現させた。同時に、ヒトDMD患者の病原突然変異に対しても、遺伝子編集方案を設計し、細胞レベルにおいて病原突然変異に対する改変を実現させた。本発明は、遺伝子突然変異型遺伝性希少疾患に対する創造的な治療手段を提供し、多くの遺伝性希少疾患に画期的な治療効果が期待される。
図面の説明
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、遺伝子編集ツールを含む機能エレメントの構成で、中では、Aは別々のウイルスパッケージング、Bは合同のウイルスパッケージングである。
図2図2は、新規なDMDマウス疾患モデルDmd-E4に対する治療のフロー図で、中では、Aは新生マウスの予防的治療、Bは成年マウスの修復的治療である。
図3図3は、AAVプラスミドの一部のシーケンシング結果である。A図はSyn100プロモーターのシーケンシング比較結果、B図はAIDとCas9突然変異体融合タンパク質のシーケンシング比較結果、C図はU6プロモーターのシーケンシング比較結果である。
【0017】
図4図4は、AAV治療によってDmd-E4マウスのジストロフィン発現欠陥による疾患表現型の修復に成功した結果の概略図である。中では、A図は、治療されたDmd-E4マウスの心臓におけるRNAに対して逆転写PCRを行い、エクソン3とエクソン5からプライマーを設計し、突然変異を持つエクソン4がスキップすることが検出され、Dmdはマウスのジストロフィンタンパク質をコードする遺伝子で、GapdhはPCRの内部参照である。B図は、キャピラリー電気泳動による定量方法を利用し、エクソン4のスキップしたバンドとスキップしていない(すなわち、含む)バンドに含まれる核酸量の比率を確認した。C図は、エクソンのスキップしたバンドに対してサンガーシーケンシングを行い、エクソン4は完全にスキップし、エクソン3とエクソン5が連結したことを確認したものである。D図は、治療されたDmd-E4マウスの心臓におけるタンパク質に対してイムノブロット検出を行い、WTマウスおよび未治療のマウスのサンプルを陽性および陰性対照とし、VCLは大分子量の内部参照である。E図は、D図におけるバンドの定量的統計である。F図は、免疫蛍光染色の方法によって治療されたDmd-E4マウスの心臓におけるジストロフィンタンパク質の発現状況を検出し、二つの治療後のサンプルを含む。G図は、小動物心臓超音波検出の方法によってDmd-E4マウスの心臓関連生理構造の改変がAAV治療後に修復されたかということを考察した。H図は、F図の定量で、ジストロフィン陽性発現細胞が占める比率を数値化した。P値:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0018】
図5図5は、AAV治療でDmd-E4マウスの筋肉機能の回復および生存期間の延長に成功したものである。A図は、治療されたDmd-E4マウスの血清におけるクレアチンキナーゼの含有量を測定し、WTおよび未治療のDmd-E4マウスのサンプルを対照とした。B図は、HE染色とマッソン染色の方法により、治療されたDmd-E4マウスの心筋炎症細胞の浸潤と線維化の程度を評価した。C図は、マッソン染色の結果から、治療されたDmd-E4マウスの心筋線維化程度の回復状況を定量的に統計した。D図は、マイクロCTの方法により、Dmd-E4マウスの脊柱弯曲の程度を検出し、WTマウスおよび未治療のマウスのサンプルを対照とした。E図は、D図における脊柱弯曲程度の定量的統計である。F図は、テンション装置によって治療されたDmd-E4マウスの全身筋肉の最大張力の循環収縮過程における降下の幅を検出した。G図は、WTマウスおよびAAV治療と未治療のDmd-E4マウスの生存期間の統計である。H図は、Dmd-E4マウスの心筋細胞における遺伝子編集の分子生物学的証拠で、相応する細胞のpre-mRNAに対して逆転写PCRを行った後、ハイスループットシーケンシングを行ったところ、sgRNAが標的とする部位の近くに、予想された突然変異があることがわかり、これはDmd-E4マウスの心臓疾患の表現型に対して治療を行う分子的基礎と根拠になる。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0019】
図6図6は、遺伝子編集ツールがヒト細胞においてDMD遺伝子の相応する改変の誘導に成功したものである。A図は、K562細胞系において二つのsgRNAのスクリーニングに成功し、エクソン51のスキップを誘導することができ、図は編集されたK562細胞からRNAを抽出して逆転写PCRを行った結果で、二つのsgRNAを併用すると、効率的にエクソン50が欠失したK562細胞がエクソン51をスキップするように誘導することができることが示された。B図は、正常のヒトiPSとDMDエクソン50が欠失した細胞においてDMD遺伝子のエクソン51のスキップを誘導した。C図は、免疫蛍光検出の方法によって編集されたiPS細胞においてジストロフィンタンパク質の発現が回復したことが確認された。D図は、ウエスタンブロッティングの方法によって編集されたiPS細胞においてジストロフィンタンパク質の発現が回復したことが確認された。E図は、D図におけるタンパク質発現の回復の定量的統計である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的な実施形態
本発明は、DMDマウスモデルおよびヒトDMD患者が持つ病原突然変異を例とし、遺伝子編集ツールを設計・構築することにより、病原突然変異に対する改変を実現させた。以下、具体的な実施例および図面を合わせて本発明をさらに説明する。
【0021】
実施例1 遺伝子編集ツールを持つAAVウイルス
本発明によって設計された遺伝子編集ツールは、図1に示すように、AIDを例とし、相応する配列をAAVプラスミドにクローニングし、以下の工程を含む。
【0022】
まず、XhoIおよびNotIの酵素切断部位を基にpAAV2骨格ベクター(addgeneから購入されたが、これに限定されない)二重酵素切断を行った。同時に遺伝子編集ツールにおけるAIDとCas9の融合タンパク質のアミノ酸配列を設計し、アミノ酸配列および核酸配列はそれぞれ配列番号1および配列番号2で示される。コドンを最適化した後、そのまま二本鎖DNA断片を合成し、Syn100プロモーターおよびテール付加シグナルなどのエレメントと共にAAV骨格ベクターに連結し、AID-Cas9突然変異体融合タンパク質を発現するAAVベクタープラスミドを得たが、その配列が配列番号3で示される。また、プライマー合成およびPCRの方法を利用し、U6プロモーター、H1プロモーターおよび7SKプロモーターの配列と病原突然変異のエクソンの切断部位を認識するsgRNAを連結し、同時にSyn100プロモーターとテール付加シグナルで緑色蛍光タンパク質および関連エレメントを発現させることで、タンパク質発現タグを増加させて遺伝子編集効率の向上を促進させてもよい。また、合同のウイルスパッケージングのAAVプラスミドで遺伝子編集ツールを構築し、AIDとCas9の融合タンパク質の発現エレメントに加え、U6プロモーターと病原突然変異のエクソンの切断部位を標的とするsgRNAを連結し、4.9 kbp挿入配列のAAVプラスミドベクターを構築してもよい。関連プラスミドのクローニングの一部の結果は下記図3に示す。
【0023】
AAVベクタープラスミドの構築が完成された後、既存文献[Grieger, J., Choi, V. & Samulski, R. Production and characterization of adeno-associated viral vectors. Nat Protoc 1, 1412-1428 (2006).]に従い、パッケージングして精製し、力価が1 × 1013 v.g./mLの血清型がAAV9のAAVウイルスを得た。別々のウイルスパッケージングの場合、比率で混合して使用し、合同のウイルスパッケージングの場合、そのまま体内治療に使用してもよい。
【0024】
実施例2 遺伝子編集ツールを持つAAVによるDMDモデルマウスに対する体内治療
本実施例では、心臓機能異常を持つ新規なDMDマウス疾患モデルDmd-E4を選択し、当該モデルは江蘇集萃薬康生物科技有限公司から購入できるが、これに限定されない。Dmd-E4は6-8週で心臓が心筋肥大、線維化などの表現型が現れ、8か月程度で心臓機能の重度な退化が現れる。この過程はDMD患者の心臓の病理的過程を好適にシミュレートしている。このモデルに対し、シトシンデアミナーゼとCas9で遺伝子編集ツールを設計し、病原突然変異のエクソンを標的とし、その5’切断部位の近くで突然変異を誘導し、スキップさせ、タンパク質のオープンリーディングフレームに影響しないように、最大限にジストロフィンタンパク質の発現を残し、その生物学的機能を回復させる。
【0025】
具体的に、実施例1の方法によって遺伝子編集ツールを構築し、中では、設計されたDmd-E4マウスの突然変異部位に対するsgRNAの配列が配列番号4で示され、得られたDmd-E4マウスの突然変異部位に対するsgRNAを発現するAAVベクタープラスミドの配列が配列番号5で示される。AID-Cas9融合タンパク質とDmd-E4マウスに対するsgRNAを同一のAAVベクタープラスミドに含む相応する配列は配列番号6で示される。
血清型がAAV9のウイルスを選択し、合成して精製し、そして新生マウスの予防的治療と成年マウスの修復的治療の2種類の方案でDmd-E4小鼠に対する治療を行ったが、図2の通りである。
【0026】
(A)新生マウスの遺伝子治療
群分け:Dmd-E4マウスのホモ接合KOの雌と雄を交尾させ、雌マウスが妊娠した後、雌と雄のマウスを別々のケージに分け、2日おきに妊娠した雌マウスが出産したか観察し、新生Dmd-E4マウスが生まれると、性別を観察し、雄マウスを3-5匹選んで実験群とし、別途に3-5匹の雄マウスを陰性対照群とした。
投与:50-75 μLの遺伝子編集ツールを持つアデノ随伴ウイルスAAV(力価1013 v.g./ mL)を腹腔注射または顔面静脈注射の手段で投与し、同時に対照マウスに等体積の無菌PBSを投与し、さらに母マウスと共に通常通り飼育した。
【0027】
サンプル採取と検出:マウスが2か月程度まで成長すると、実験群と対照群以外、同齢のWT雄マウスを3-5匹取り、同時に以下のような処理を行った。マウスを麻酔した後、まず、前脛骨筋の機能テスト、心臓超音波検査などを行い、さらに心臓の動静脈血を採取してマウスを殺処分し、遠心して血清を分離した後、-80℃で保存し、同時に心筋、骨格筋、前脛骨筋、背筋、肝臓、脳部、腎臓などの組織を収集し、そしてそのタンパク質、RNA、ゲノムDNAを抽出し、また免疫蛍光染色、ヘマトキシリン・エオジン染色などに十分な組織を残した。
【0028】
図4Aに示すように、治療されたDmd-E4マウスの心臓におけるRNAに対して逆転写PCRを行い、エクソン3とエクソン5からプライマーを設計し、突然変異を持つエクソン4がスキップすることが検出された。同時に、キャピラリー電気泳動による定量方法を利用し、エクソン4のスキップしたバンドとスキップしていない(すなわち、含む)バンドに含まれる核酸量の比率を確認した。結果は図4Bに示す。さらに、エクソン4がスキップしたバンドに対してサンガーシーケンシングを行い、図4Cに示すように、エクソン4は完全にスキップし、エクソン3とエクソン5が連結した。図3D-Fは、マウスの心臓におけるタンパク質に対してイムノブロット検出を行ったが、中では、図4Dはバンドの図で、図3Eは3D図におけるバンドの定量的統計で、図4Fはジストロフィンタンパク質の発現状況で、結果から、治療されたDmd-E4は顕著にジストロフィンタンパク質の発現が回復したことがわかる。さらに、小動物心臓超音波検出の方法によってDmd-E4マウスの心臓関連生理構造の改変がAAV治療後に修復されたかということを考察した。結果は図4Gに示すように、治療されたDmd-E4マウスの心臓関連生理構造が基本的に修復されたことがわかる。
【0029】
さらに、Dmd-E4マウスの筋肉機能および生存期間が回復および延長したかということを検証した。図5Aはマウスの血清におけるクレアチンキナーゼ含有量の測定結果で、図から、WTおよび未治療のDmd-E4マウスのサンプルと比べ、治療されたDmd-E4マウスはクレアチンキナーゼ含有量が顕著に低下したことがわかる。HE染色とマッソン染色の方法により、治療されたDmd-E4マウスの心筋炎症細胞の浸潤と線維化の程度を評価し、同時に、マッソン染色の結果から、治療されたDmd-E4マウスの心筋線維化程度の回復状況を定量的に統計したが、結果は図5B-5Cに示すように、治療されたDmd-E4マウスの心筋線維化の程度が顕著に改善されたことがわかる。
【0030】
さらに、マイクロCTの方法により、Dmd-E4マウスの脊柱弯曲の程度を検出し(図5D-5E)、テンション装置によって治療されたDmd-E4マウスの全身筋肉の最大張力の循環収縮過程における降下の幅を検出した(図5F)が、結果のいずれからも、Dmd-E4マウスが治療後、脊柱弯曲の程度が緩和され、同時にマウスの全身筋肉の張力が増強し、そしてDmd-E4マウスの生存期間が大幅に延長したことが示された。図5Hは、Dmd-E4マウスの心筋細胞における遺伝子編集の分子生物学的証拠で、相応する細胞のpre-mRNAに対して逆転写PCRを行った後、ハイスループットシーケンシングを行ったところ、sgRNAが標的とする部位の近くに、予想された突然変異があることがわかり、これはDmd-E4マウスの心臓疾患の表現型に対して治療を行う分子的基礎と根拠になる。
上記結果から、本発明の遺伝子編集ツールが有効に新生Dmd-E4マウスを治療および予防することができることが示された。
【0031】
(B)成年マウスの遺伝子治療
群分け:4-6週齢のホモ接合KOのDmd-E4マウスを実験群として遺伝子治療を与え、4-6週齢のホモ接合KOのDmd-E4マウスを対照群として等量のPBSを投与して処理した。
投与:約50 μLの遺伝子編集ツールを持つアデノ随伴ウイルスAAV(力価1013 v.g./ mL)を尾静脈注射または骨格筋インサイチュ注射の手段で投与し、同時に対照マウスに等体積の無菌PBSを投与した。
【0032】
サンプル採取と検出:マウスが治療されてから2か月程度で、実験群と対照群以外、同齢のWT雄マウスを3-5匹取り、同時に以下のような処理を行った。マウスを麻酔した後、まず、前脛骨筋の機能テスト、心臓超音波検査などを行い、さらに心臓の動静脈血を採取してマウスを殺処分し、遠心して血清を分離した後、-80℃で保存し、同時に心筋、骨格筋、前脛骨筋、背筋、肝臓、脳部、腎臓などの組織を収集し、そしてそのタンパク質、RNA、ゲノムDNAを抽出し、また免疫蛍光染色、ヘマトキシリン・エオジン染色などに十分な組織を残した。
【0033】
結果から、AAVを遺伝子編集ツールの輸送媒体とし、突然変異のエクソンに対する効率的な遺伝子修復を実現させることができることが示された。治療されたDmd-E4マウスでは、心筋および多くの筋肉組織のいずれにも病原エクソンがスキップしたことが観察され、そしてそれによってジストロフィンタンパク質の発現が回復し、同時に心筋損傷の表現型も明らかに修復され、成年Dmd-E4マウスの治療ができた。
【0034】
実施例3 ヒト人工多能性幹細胞iPSCのDMDモデルに対する遺伝子編集によるジストロフィンタンパク質発現の回復の成功
本発明では、同時に、ヒト細胞に対する遺伝子編集治療の実施に成功した。まず、健常者の末梢血単核球から人工多能性幹細胞(iPSC)を構築した後、CRISPR-cas9の方法によって特異的にジストロフィンのコード遺伝子DMDのエクソン50を削除し、ジストロフィンタンパク質のコード配列にシフト突然変異をさせることで、DMD患者をシミュレートする突然変異型を構築し、好適なDMD疾患モデル細胞になった。この細胞に対し、DMD遺伝子のエクソン51の一連の潜在的なエクソンスプライシング調節エレメントを標的とするように、AIDとCas9の融合タンパク質および相応するsgRNAの配列を設計し、本実施例で使用されたsgRNAが配列番号19で示されるsgRNA-12および配列番号20で示されるsgRNA-13で、sgRNA-12は主に配列番号21、配列番号22で示されるエクソンスプライシングエンハンサーを標的とする。sgRNA-13は主に配列番号24で示されるエクソンスプライシングエンハンサーを標的とする。
【0035】
上記二つのsgRNA-12はヒトK562細胞系においてスクリーニングして得られ、エクソン51のスキップを誘導することができ、図6Aに示すように、編集されたK562細胞からRNAを抽出した後、逆転写PCRを行った結果、二つのsgRNAはいずれも突然変異を誘導することができ、併用すると、効率的にエクソン50が欠失したK562細胞がエクソン50をスキップするように誘導することが可能であることが示された。同時に、エクソン51のスキップを誘導することで、エクソン50が欠失したiPS細胞におけるジストロフィンタンパク質のオープンリーディングフレームを回復させ、さらにジストロフィンタンパク質の発現を再構築することができる。具体的な実施形態は以下の通りである。
【0036】
3.1 iPS細胞の心筋細胞への分化の誘導
(1)Accutaseでマトリゲルにおいて培養されたヒトiPS細胞を、37℃で6分間消化し、DMEM培地で反応を停止させ、細胞を収集し、1500 rpmで3分間遠心し、そして顕微鏡において計数した。
(2)iPS細胞をマトリゲルでコーティングしておいた12ウェルプレートに敷き、細胞密度が10000-20000細胞/cmになるように調整し、iPS細胞をmTeSR1培地で培養し、そして10μMのROCK阻害剤(Y-27632)を入れ、4日培養し、毎日新鮮な培地に入れ替え、培地の交換時にROCK阻害剤を添加する必要がない。
(3)細胞を4日培養した後、mTeSR1培地を6μM CHIR99021含有RPMI/B27-インスリン培地に入れ替え、2日培養した。
【0037】
(4)CHIR99021刺激を撤回し、培地をRPMI/B27-インスリン培地に入れ替え、1日培養した。
(5)培地を5μM IWR1含有RPMI/B27-インスリン培地に入れ替え、2日培養した。
(6)IWR1刺激を撤回し、培地をRPMI/B27-インスリン培地に入れ替え、2日培養した。
細胞培地をRPMI/B27培地に入れ替えた後、ずっと当該培地で培養し、2日に1回培地を交換し、心筋細胞へ分化するヒト多能性幹細胞を得た。
【0038】
3.2 心筋細胞へ誘導分化するヒト多能性幹細胞における遺伝子編集ツールの形質導入
(1)形質導入の前日に、Accutaseで心筋細胞へ分化するiPS細胞を消化し、6ウェルプレートに4×10細胞で敷いた。
(2)約24h後、心筋細胞へ分化するiPSの細胞密度が60%程度に達すると、細胞培地を無耐性培地に入れ替えた。
(3)2.5μgのAIDとCas9突然変異体の融合タンパク質を発現するプラスミド(たとえば、Lenti-V2-AIDx-nSaCas9 (KKH)-Ugiプラスミド)と500 ngのUGIを発現するプラスミド(たとえば、pCDNA3.1-Ugi)および1.5μgのsgRNAプラスミドを150μlのopti-MEMにおいて均一に混合し、そして2.5μlのPLUSTM試薬を入れ、軽く均一に混合した。
【0039】
(4)12μlのLipofectamine LTXと150μlのopti-MEM培地を均一に混合し、そしてそれを工程(3)のプラスミドに入れ、軽く均一に混合し、室温で15 minインキュベートし、反応産物を(2)の心筋細胞へ分化するiPS細胞に入れた。
(5)48 h形質導入した後、形質導入された細胞に2μg/mlのピューロマイシンを入れ、3日スクリーニングした後、試薬を除き、形質導入から7日で細胞を収集して分析した。
【0040】
3.3 編集されたiPSCに対する関連指標の検出
(1)編集前後のiPSCのゲノムDNAを抽出し、相応するエクソン51が突然変異したか、検出した。
(2)編集前後のiPSCのRNAを抽出し、逆転写PCRを行い、エクソン51がRNAレベルにおいてスキップしたか、検出し、結果は図6Bに示すように、正常のヒトiPSとDMDエクソン50が欠失した細胞においてDMD遺伝子のエクソン51のスキップが誘導された。
【0041】
(3)編集前後のiPSCに対してタンパク質レベルにおいてジストロフィンタンパク質の発現を考察し、実験方法はウエスタンブロッティング、免疫蛍光染色などを含む。図6Cは、免疫蛍光検出の方法によって編集されたiPS細胞においてジストロフィンタンパク質の発現が回復したことが確認された結果である。図6Dは、ウエスタンブロッティングの方法によって編集されたiPS細胞においてジストロフィンタンパク質の発現が回復したことが確認された。図6Eは、D図におけるタンパク質発現の回復の定量的統計である。
【0042】
上記結果から、K562細胞系においてヒトDMD遺伝子エクソン51などがスキップするように誘導できる遺伝子編集手段を構築し、一連の潜在的なエクソンスキップを調節する配列エレメントを同定することができ,同時にさらにこのような遺伝子編集方案を利用し、DMD疾患モデル細胞のiPSCの治療的改変に成功し、ジストロフィンタンパク質の発現を回復させることができたことが示された。
さらに、残りの配列番号7-配列番号18で示されるsgRNA-1~sgRNA-11はいずれも本発明の相応する配列番号21-配列番号24で示されるエクソンスプライシングエンハンサーを標的とするもので、それで遺伝子編集ツールを構築した場合、効率的にエクソン51のスキップを誘導することで、ヒトDMDの治療を実現させることができる。
【0043】
もちろん、上記実施例は明確に説明するために挙げられた例にすぎず、実施形態に対する限定ではない。当業者には、上記説明に基づいてさらにほかの異なる形の変化または変更をすることができる。ここですべての実施形態を例示する必要がない。それによって派生した容易に想到できる変化または変更はまだ本発明の保護範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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