(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】有機化合物、発光デバイス、発光装置、電子機器、および照明装置
(51)【国際特許分類】
C07D 513/04 20060101AFI20241122BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241122BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
C07D513/04 301
C07D513/04 CSP
H05B33/14 B
C09K11/06 655
(21)【出願番号】P 2020118978
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019130550
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】荻田 香
(72)【発明者】
【氏名】夛田 杏奈
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-219078(JP,A)
【文献】特開2018-111675(JP,A)
【文献】特開2015-228460(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109232598(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0105769(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0146555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/04
H10K 50/10
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される有機化合物。
【化1】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q
1およびQ
2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、mおよびnは、それぞれ独立に0または1を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
Q
1およ
びQ
2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される有機化合物。
【化2】
(一般式(Q-1)中、R
50~R
54のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
50~R
54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-2)中、R
72~R
75のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
72~R
75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-3)中、R
76~R
80のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
76~R
80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R
55~R
62、R
63~R
71、およびR
81~R
90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項3】
一般式(G2)で表される有機化合物。
【化3】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R
1~R
8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q
1およびQ
2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
請求項3において、
Q
1およ
びQ
2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される有機化合物。
【化4】
(一般式(Q-1)中、R
50~R
54のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
50~R
54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-2)中、R
72~R
75のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
72~R
75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-3)中、R
76~R
80のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
76~R
80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R
55~R
62、R
63~R
71、およびR
81~R
90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項5】
一般式(G3)で表される有機化合物。
【化5】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q
1およびQ
2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
請求項5において、
Q
1およ
びQ
2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される有機化合物。
【化6】
(一般式(Q-1)中、R
50~R
54のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
50~R
54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-2)中、R
72~R
75のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
72~R
75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。一般式(Q-3)中、R
76~R
80のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(N
αまたはN
βのいずれか一方)と結合し、R
76~R
80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R
55~R
62、R
63~R
71、およびR
81~R
90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項7】
一般式(G4)で表される有機化合物。
【化7】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R
63~R
72、およびR
74~R
75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項8】
一般式(G5)で表される有機化合物。
【化8】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R
50~R
51、およびR
53~R
62は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項9】
一般式(G6)で表される有機化合物。
【化9】
(式中、Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R
63~R
71、R
73~R
75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立に一般式(Ar-1)、一般式(Ar-2)、または一般式(Ar-3)のいずれか一で表される有機化合物。
【化10】
(式中、R
9~R
29は、それぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。)
【請求項11】
構造式(100)、構造式(200)、または構造式(300)で表される有機化合物。
【化11】
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光デバイス。
【請求項13】
一対の電極間
に、請求項1乃至請求項11のいずれか一に記載の有機化合物を有する発光デバイス。
【請求項14】
一対の電極間
に、発光層を有し、
前記発光層は、請求項1乃至請求項11のいずれか一に記載の有機化合物を有する発光デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項11のいずれか一に記載の有機化合物を
有し、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する発光デバイス。
【請求項16】
請求項12乃至請求項15のいずれか一に記載の発光デバイ
スと、
トランジスタ、または基板の少なくとも一と、
を有する発光装置。
【請求項17】
請求項16に記載の発光装置と、
マイク、カメラ、操作用ボタン、外部接続部、または、スピーカの少なくとも一と、
を有する電子機器。
【請求項18】
請求項12乃至請求項15のいずれか一に記載の発光デバイスと、
筐体、カバー、または、支持台の少なくとも一と、
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、発光デバイス、受光デバイス、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。但し、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。すなわち、本発明の一態様は、物、方法、製造方法、または駆動方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。また、具体的には、半導体装置、表示装置、液晶表示装置などを一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間にEL層を挟んでなる発光デバイス(有機ELデバイス、発光素子ともいう)は、薄型軽量、入力信号に対する高速な応答性、低消費電力などの特性を有することから、これらを適用したディスプレイは、次世代のフラットパネルディスプレイとして注目されている。
【0003】
発光デバイスは、一対の電極間に電圧を印加することにより、各電極から注入された電子およびホールがEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、励起状態の種類としては、一重項励起状態(S*)と三重項励起状態(T*)とがあり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光デバイスにおけるそれらの統計的な生成比率は、S*:T*=1:3であると考えられている。発光物質から得られる発光スペクトルはその発光物質特有のものであり、異なる種類の物質を発光物質として用いることによって、様々な発光色の発光デバイスを得ることができる。
【0004】
この様な発光デバイスに関しては、そのデバイス特性を向上させる為に、デバイス構造の改良や材料開発等が盛んに行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様では、新規の有機化合物を提供する。また、本発明の一態様では、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する新規な有機化合物を提供する。また、本発明の一態様では、発光デバイスに用いることができる新規な有機化合物を提供する。また、本発明の一態様では、発光デバイスのEL層に用いることができる、新規な有機化合物を提供する。また、本発明の一態様は、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する新規な発光デバイスを提供する。また、本発明の一態様である発光デバイスを用いた、新規な発光装置、新規な電子機器、または新規な照明装置を提供する。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、下記一般式(G1)で表される有機化合物である。
【0008】
【0009】
上記一般式(G1)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、mおよびnは、それぞれ独立に0または1を表す。
【0010】
また、上記一般式(G1)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0011】
【0012】
上記一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0013】
上記一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0014】
上記一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80それ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0015】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機化合物である。
【0016】
【0017】
上記一般式(G2)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
上記一般式(G2)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0019】
【0020】
上記一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0021】
上記一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0022】
上記一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0023】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機化合物である。
【0024】
【0025】
上記一般式(G3)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
なお、上記一般式(G3)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0027】
【0028】
上記一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0029】
また、上記一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0030】
また、上記一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0031】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G4)で表される有機化合物である。
【0032】
【0033】
上記一般式(G4)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R63~R72、およびR74~R75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0034】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G5)で表される有機化合物である。
【0035】
【0036】
上記一般式(G5)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R50~R51、およびR53~R62は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0037】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G6)で表される有機化合物である。
【0038】
【0039】
上記一般式(G6)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R63~R71、R73~R75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0040】
上記一般式(G1)乃至一般式(G6)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に一般式(Ar-1)、一般式(Ar-2)、または一般式(Ar-3)のいずれか一で表される。
【0041】
【0042】
上記一般式(Ar-1)、一般式(Ar-2)、および一般式(Ar-3)において、R9~R29は、それぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0043】
また、本発明の別の一態様は、下記構造式(100)、構造式(200)または構造式(300)のいずれか一で表される。
【0044】
【0045】
なお、本発明の別の一態様は、上述した本発明の一態様である有機化合物を用いた発光デバイスである。なお、一対の電極間に有するEL層や、EL層に含まれる発光層に本発明の一態様である有機化合物を用いて形成した発光デバイス、も本発明の一態様に含まれることとする。また、発光デバイスに加えて、トランジスタ、基板などを有する発光装置も発明の範疇に含める。さらに、これらの発光装置に加えて、マイク、カメラ、操作用ボタン、外部接続部、筐体、カバー、支持台または、スピーカ等を有する電子機器や照明装置も発明の範疇に含める。
【0046】
なお、一対の電極間に有するEL層や、EL層に含まれる発光層に本発明の一態様である有機化合物を用いて形成された発光デバイスも本発明に含まれることとする。また、上記発光デバイスに加え、電極と接して有機化合物を有する層(例えばキャップ層)を有する場合も発光デバイスに含め、本発明に含まれることとする。また、発光デバイスに加えて、トランジスタ、基板などを有する発光装置も発明の範疇に含める。さらに、これらの発光装置に加えて、マイク、カメラ、操作用ボタン、外部接続部、筐体、カバー、支持台または、スピーカ等を有する電子機器や照明装置も発明の範疇に含める。
【0047】
本発明の一態様である有機化合物は、他の有機化合物(有機金属錯体を含む)と組み合わせて発光デバイスの発光層に用いることができる。すなわち、発光層を所望の構成とすることにより発光デバイスの高効率化を図ることも可能であるため、非常に有効である。したがって、本発明の一態様である有機化合物と、他の有機化合物を一種または複数種、組み合わせて発光層に用いた発光デバイスは、本発明の一態様に含まれるものとする。
【0048】
また、本発明の一態様は、発光デバイスを有する発光装置を含み、さらに発光装置を有する照明装置も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、または光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置に、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクターが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0049】
本発明の一態様では、新規の有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様では、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する新規な有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様では、発光デバイス、または受光デバイス、または発光デバイス及び受光デバイスに共通して用いることができる新規な有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様では、発光デバイスのEL層に用いることができる、新規な有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様は、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有する新規な発光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様は、600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する新規な受光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様である発光デバイスを用いた、新規な発光装置、新規な電子機器、または新規な照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1(A)は、発光デバイスの構造について説明する図である。
図1(B)は、発光デバイスの構造について説明する図である。
【
図2】
図2(A)は、発光装置について説明する図である。
図2(B)は、発光装置について説明する図である。
図2(C)は、発光装置について説明する図である。
【
図3】
図3(A)は、発光装置について説明する上面図である。
図3(B)は、発光装置について説明する断面図である。
【
図4】
図4(A)は、モバイルコンピュータについて説明する図である。
図4(B)は、携帯型の画像再生装置について説明する図である。
図4(C)は、デジタルカメラについて説明する図である。
図4(D)は、携帯情報端末について説明する図。
図4(E)は、携帯情報端末について説明する図である。
図4(F)は、テレビジョン装置について説明する図である。
図4(G)は、携帯情報端末について説明する図である。
【
図5】
図5(A)は、電子機器について説明する図である。
図5(B)は、電子機器について説明する図である。
図5(C)は、電子機器について説明する図である。
【
図6】
図6(A)は、自動車について説明する図である。
図6(B)は、自動車について説明する図である。
【
図7】
図7(A)は、照明装置について説明する図である。
図7(B)は、照明装置について説明する図である。
【
図8】
図8は、構造式(100)に示す有機化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図9】
図9は、構造式(100)に示す有機化合物の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
【
図10】
図10は、構造式(200)に示す有機化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図11】
図11は、構造式(200)に示す有機化合物の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
【
図12】
図12は、構造式(300)に示す有機化合物の
1H-NMRチャートである。
【
図13】
図13は、構造式(300)に示す有機化合物の紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
【
図15】
図15は、発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3の電圧-放射輝度特性を示す図である。
【
図16】
図16は、発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3の電圧-電流密度特性を示す図である。
【
図17】
図17は、発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3の電圧-電流特性を示す図である。
【
図18】
図18は、発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3の発光スペクトルを示す図である。
【
図19】
図19は、発光デバイス4および発光デバイス5の電圧-放射輝度特性を示す図である。
【
図20】
図20は、発光デバイス4および発光デバイス5の電圧-電流密度特性を示す図である。
【
図21】
図21は、発光デバイス4および発光デバイス5の電圧-電流特性を示す図である。
【
図22】
図22は、発光デバイス4および発光デバイス5の発光スペクトルを示す図である。
【
図23】
図23は、発光デバイス6の電圧-放射輝度特性を示す図である。
【
図24】
図24は、発光デバイス6の電圧-電流密度特性を示す図である。
【
図25】
図25は、発光デバイス6の電圧-電流特性を示す図である。
【
図26】
図26は、発光デバイス6の発光スペクトルを示す図である。
【
図27】
図27は、有機化合物のTG-DTAの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0052】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0053】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。
【0054】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機化合物について説明する。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G1)で表される。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G1)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0055】
【0056】
なお、一般式(G1)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、mおよびnは、それぞれ独立に0または1を表す。
【0057】
なお、一般式(G1)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0058】
【0059】
なお、一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0060】
また、一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0061】
また、一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G1)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0062】
なお、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格を有することによりLUMOが深くなり、また、2つのアミノ基を有することによりHOMOが浅くなる。すなわち、比較的バンドギャップが狭い材料となるため、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する。したがって、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、発光デバイス(特に近赤外発光デバイス)の発光層において、発光物質として好適に用いることができる。また、赤色受光デバイスの活性層に好適に用いることもできる。その他、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に由来する深いLUMOを有することにより高い電子輸送性を示すため、発光デバイスや受光デバイスに好適に用いることができる。また、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、2つのアミノ基を有することによりHOMOが浅くなり、高いホール輸送性を示すため、発光デバイスや受光デバイスに好適に用いることができる。
【0063】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G2)で表される有機化合物である。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G2)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0064】
【0065】
なお、一般式(G2)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。
【0066】
なお、一般式(G2)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0067】
【0068】
なお、一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0069】
なお、一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0070】
なお、一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G2)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0071】
なお、上記一般式(G2)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格が、それぞれフェニレン基を介して結合する分子構造を有するため、600nm以上の波長領域において高い吸光度を示す。したがって、上記一般式(G2)で表される有機化合物をEL層の発光層の発光物質として用いる場合、特に600nm以上の波長領域においてホスト材料から効率良くエネルギーを移動させることができ、好ましい。また、上記一般式(G2)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、それぞれフェニレン基を介して結合する分子構造を有するため、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が直接結合した場合の構造に起因する発光波長の長波長化(発光スペクトルのピークの長波長化)を抑制し、所望の波長領域での発光が得られるように発光波長を制御(少し短波長側に制御)することが可能となる。
【0072】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G3)で表される有機化合物である。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G3)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0073】
【0074】
上記一般式(G3)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。
【0075】
なお、上記一般式(G3)において、Q1およびQ2は、それぞれ独立に一般式(Q-1)、一般式(Q-2)、または一般式(Q-3)のいずれか一で表される。
【0076】
【0077】
上記一般式(Q-1)において、R50~R54のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R50~R54のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0078】
また、上記一般式(Q-2)において、R72~R75のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R72~R75のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0079】
また、上記一般式(Q-3)において、R76~R80のいずれか一は、一般式(G3)の中の窒素(NαまたはNβのいずれか一方)と結合し、R76~R80のそれ以外は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、R55~R62、R63~R71、およびR81~R90は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0080】
なお、上記一般式(G3)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合する分子構造を有するため、600nm以上の波長領域の中でも特に700nm以上の波長領域において高い吸光度を示す。したがって、上記一般式(G3)で表される有機化合物をEL層の発光層の発光物質として用いる場合、特に700nm以上の波長領域においてホスト材料から効率良くエネルギーを移動させることができ、好ましい。また、上記一般式(G3)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合した分子構造を有するため、発光スペクトルの非常に長波長な領域に発光ピークを有する。また上記一般式(G2)で表される有機化合物と比較すると、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、フェニレン基を介することなくそれぞれ直接結合した分子構造を有するため、比較的低い温度で昇華する、すなわち昇華性に優れているといえる。
【0081】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G4)で表される有機化合物である。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G4)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0082】
【0083】
上記一般式(G4)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R63~R72、およびR74~R75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0084】
なお、上記一般式(G4)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格が、それぞれフェニレン基を介して結合し、かつカルバゾール骨格の3位が2つのアミノ基とそれぞれ結合する構造を有するため、HOMOが浅くなり、600nm以上の波長領域において高い吸光度を示す。したがって、上記一般式(G4)で表される有機化合物をEL層の発光層の発光物質として用いる場合、特に600nm以上の波長領域においてホスト材料から効率良くエネルギーを移動させることができ、好ましい。また、上記一般式(G4)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、それぞれフェニレン基を介して結合する分子構造を有するため、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が直接結合した場合の構造に起因する発光波長の長波長化(発光スペクトルのピークの長波長化)を抑制し、所望の波長領域での発光が得られるように発光波長を制御(少し短波長側に制御)することが可能となる。
【0085】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G5)で表される有機化合物である。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G5)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0086】
【0087】
上記一般式(G5)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R50~R51、およびR53~R62は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0088】
なお、上記一般式(G5)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合する分子構造を有するため、600nm以上の波長領域の中でも特に700nm以上の波長領域において高い吸光度を示す。したがって、上記一般式(G5)で表される有機化合物をEL層の発光層の発光物質として用いる場合、特に700nm以上の波長領域においてホスト材料から効率良くエネルギーを移動させることができ、好ましい。また、上記一般式(G5)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合した分子構造を有し、かつ、カルバゾールの9位がアミノフェニル基と結合するため、カルバゾールによる電子供与性の効果を抑制し、HOMOが過剰に浅くなるのを抑えることができる。従って、上記一般式(G5)で表される有機化合物は、近赤外領域に発光スペクトルのピークを有する。また、一般式(G4)で表される有機化合物と比較すると、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、フェニレン基を介することなくそれぞれ直接結合した分子構造を有するため、比較的低い温度で昇華する、すなわち昇華性に優れているといえる。
【0089】
また、本発明の別の一態様は、下記一般式(G6)で表される有機化合物である。なお、本発明の一態様である有機化合物は、下記一般式(G6)で表されるようにジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格を含む分子構造を有する。
【0090】
【0091】
なお、上記一般式(G6)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格と2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合する分子構造を有するため、600nm以上の波長領域の中でも特に700nm以上の波長領域において高い吸光度を示す。したがって、上記一般式(G6)で表される有機化合物をEL層の発光層の発光物質として用いる場合、特に700nm以上の波長領域においてホスト材料から効率良くエネルギーを移動させることができ、好ましい。また、上記一般式(G6)で表される有機化合物は、ジチアゾロキノキサリン骨格に対して、2つのアミン骨格が、それぞれ直接結合した分子構造を有し、かつ、カルバゾールの4位がアミノ基と結合するため、カルバゾールによる電子供与性の効果を抑制し、HOMOが浅くなり過ぎるのを抑えることができる。従って、上記一般式(G6)で表される有機化合物は、近赤外領域に発光スペクトルのピークを有する。
【0092】
上記一般式(G6)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R63~R71、R73~R75は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0093】
上記一般式(G1)乃至一般式(G6)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に一般式(Ar-1)、一般式(Ar-2)、または一般式(Ar-3)のいずれか一で表される。
【0094】
【0095】
上記一般式(Ar-1)、一般式(Ar-2)、および一般式(Ar-3)において、R9~R29は、それぞれ独立に水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。
【0096】
なお、上記一般式(G1)~(G6)、および一般式(Q-1)~(Q-3)中のいずれかにおける、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基が、置換基を有する場合、該置換基としては、炭素数1乃至6のアルキル基、または炭素数1乃至6のアルコキシ基、または炭素数3乃至7のシクロアルキル基、または炭素数7乃至10の多環式シクロアルキル基、またはシアノ基などが挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、8,9,10-トリノルボルナニル基、アダマンチル基、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9H-フルオレニル基、9,9-ジメチル-9H-フルオレニル基、9,9-ジフェニル-9H-フルオレニル基、o-ピリジル基、m-ピリジル基、p-ピリジル基、ジフェニルトリアジニル基等が挙げられる。
【0097】
また、上記一般式(G1)~(G6)、および一般式(Q-1)~(Q-3)中のいずれかにおける、R1~R29、R50~R90のいずれか一が、炭素数1乃至6のアルキル基を表す場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、等が挙げられる。
【0098】
また、上記一般式(G1)~(G6)、および一般式(Q-1)~(Q-3)中のいずれかにおける、R1~R29、R50~R90のいずれか一が、炭素数3乃至7のシクロアルキル基を表す場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0099】
また、上記一般式(G1)~(G6)、および一般式(Q-1)~(Q-3)中のいずれかにおける、R1~R29、R50~R90のいずれか一が、炭素数6乃至13のアリール基を表す場合の具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9H-フルオレニル基、9,9-ジメチル-9H-フルオレニル基、9,9-ジフェニル-9H-フルオレニル基、等が挙げられる。
【0100】
また、上記一般式(G1)~(G6)、および一般式(Q-1)~(Q-3)中のいずれかにおける、R1~R29、R50~R90のいずれか一が、炭素数6乃至13のヘテロアリール基を表す場合の具体例としては、o-ピリジル基、m-ピリジル基、p-ピリジル基、ジフェニルトリアジニル基等が挙げられる。
【0101】
次に、上述した本発明の一態様である有機化合物の具体的な構造式を下記に示す。ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
なお、上記構造式(100)~(112)、(200)~(211)、(300)~(309)、および(400)~(411)で表される有機化合物は、上記一般式(G1)で表される有機化合物の一例であるが、本発明の一態様である有機化合物は、これに限られない。
【0110】
次に、本発明の一態様であり、下記一般式(G1)で表される有機化合物のうち、m及びnが1であり、下記一般式(G1-1)で表される有機化合物の合成方法について説明する。
【0111】
【0112】
一般式(G1)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、mおよびnは、いずれも1を表す。
【0113】
【0114】
一般式(G1-1)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。
【0115】
≪一般式(G1-1)で表される有機化合物の合成方法≫
以下に、一般式(G1-1)で表される有機化合物の合成方法の一例について説明する。この有機化合物の合成には、種々の反応を適用することができる。例えば、合成スキーム(A-1)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物1)とトリアリールアミン化合物(化合物2)と、をカップリングすることにより、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物3)を得ることができる。次に合成スキーム(A-2)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物3)とトリアリールアミン化合物(化合物4)と、をカップリングすることにより、一般式(G1-1)で表される、ジチアゾロキノキサリン化合物を得ることができる。
【0116】
【0117】
【0118】
なお、上記合成スキーム(A-1)および(A-2)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R8は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、X1~X4はそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基、有機ホウ素基、ボロン酸のいずれか一を表す。
【0119】
また、上記合成スキーム(A-1)および(A-2)では、パラジウム触媒を用いた鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行う。なお、鈴木-宮浦クロスカップリング反応では、パラジウム化合物として、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、またはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等を用いることができる。また、配位子として、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、またはトリ(オルト-トリル)ホスフィン等を用いることができる。
【0120】
また、当該反応では、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。また、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エタノール、メタノール、水等を用いることができる。但し、当該反応で用いることができる試薬類は、前記試薬類に限られるものではない。
【0121】
また、上記合成スキーム(A-1)および(A-2)において行う反応は、鈴木・宮浦カップリング反応に限られるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いた熊田・玉尾・コリューカップリング反応、有機亜鉛化合物を用いた根岸カップリング反応、銅又は銅化合物を用いた反応等を用いることができる。
【0122】
なお、右田・小杉・スティルカップリング反応を用いる場合、X1及びX4はそれぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機錫基を表し、もう一方が、ハロゲン基を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方が有機錫化合物であり、もう一方の化合物がハロゲン化物であり、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方が有機錫化合物であり、もう一方の化合物がハロゲン化物である。
【0123】
また、熊田・玉尾・コリューカップリンク反応を用いる場合、X1及びX4は、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方がハロゲン化マグネシウム基を表し、もう一方が、ハロゲン基を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方がグリニヤール試薬であり、もう一方がハロゲン化物であり、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方がグリニヤール試薬であり、もう一方がハロゲン化物である。
【0124】
また、根岸カップリング反応を用いる場合、X1及びX4は、それぞれクロスカップリングを行う組み合わせにおいてどちらか一方が有機亜鉛基を表し、もう一方が、ハロゲン基を表す。すなわち、化合物1及び化合物2のうちどちらか一方が有機亜鉛化合物であり、もう一方がハロゲン化物であり、化合物3及び化合物4のうちどちらか一方が有機亜鉛化合物であり、もう一方がハロゲン化物である。
【0125】
次に、本発明の一態様であり、上記一般式(G1-1)で表される有機化合物のうち、トリアリールアミン骨格が同一の分子構造である、下記一般式(G1-2)で表される有機化合物の合成方法について説明する。
【0126】
【0127】
一般式(G1-2)において、Ar1、Ar3、Ar4は、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R4は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1は、置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じである。
【0128】
≪一般式(G1-2)で表される有機化合物の合成方法≫
以下に、一般式(G1-2)で表される有機化合物の合成方法の一例について説明する。この有機化合物の合成には、種々の反応を適用することができる。例えば、合成スキーム(B-1)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物1)に対して2当量のトリアリールアミン化合物(化合物2)をカップリングすることにより、ジチアゾロキノキサリン化合物(G1-2)を得ることができる。
【0129】
【0130】
なお、上記合成スキーム(B-1)において、Ar1、Ar3、およびAr4は、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、R1~R4は、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3乃至13のヘテロアリール基のいずれか一を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、X1~X3はそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基、有機ホウ素基、ボロン酸のいずれか一を表す。
【0131】
また、上記合成スキーム(B-1)では、上記一般式(G1-1)の合成方法と同様にパラジウム触媒を用いた鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行う。また、上記合成スキーム(B-1)において行う反応は、上記一般式(G1-1)の合成方法と同様に鈴木・宮浦カップリング反応に限られるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いた熊田・玉尾・コリューカップリンク反応、有機亜鉛化合物を用いた根岸カップリング反応、銅又は銅化合物を用いた反応等を用いることができる。
【0132】
次に、本発明の一態様であり、下記一般式(G1)で表される有機化合物のうち、m及びnが0であり、下記一般式(G1-3)で表される有機化合物の合成方法について説明する。
【0133】
【0134】
一般式(G1-3)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。
【0135】
≪一般式(G1-3)で表される有機化合物の合成方法≫
以下に、一般式(G1-3)で表される有機化合物の合成方法の一例について説明する。この有機化合物の合成には、種々の反応を適用することができる。例えば、合成スキーム(C-1)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物1)とジアリールアミン化合物(化合物5)と、をカップリングすることにより、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物6)を得ることができる。次に合成スキーム(C-2)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物6)とジアリールアミン化合物(化合物7)と、をカップリングすることにより、一般式(G1-3)で表される、ジチアゾロキノキサリン化合物を得ることができる。
【0136】
【0137】
【0138】
なお、上記合成スキーム(C-1)および(C-2)において、Ar1~Ar4は、それぞれ独立に置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1およびQ2は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、X1およびX2はそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基のいずれか一を表し、X5およびX6はそれぞれ独立に水素または有機錫基を表す。
【0139】
また、上記合成スキーム(C-1)および(C-2)において、パラジウム触媒を用いたブッフバルト・ハートウィッグ反応を行う場合、パラジウム化合物として、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、アリルパラジウム(II)クロリド(ダイマー)等を用いることができる。また、配位子として、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ヘキシル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、トリ(オルトートリル)ホスフィン、(S)-(6,6’-ジメトキシビフェニル-2,2’-ジイル)ビス(ジイソプロピルホスフィン)(略称:cBRIDP)等を用いることができる。
【0140】
また、当該反応では、ナトリウム tert-ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等を用いることができる。また、溶媒として、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。但し、当該反応で用いることができる試薬類は、前記試薬類に限られるものではない。
【0141】
また、上記合成スキーム(C-1)および(C-2)において、銅または銅化合物を用いたウルマン反応を行う場合、X1およびX2はそれぞれ独立に塩素、臭素、またはヨウ素のいずれか一を表し、X5およびX6は水素を表す。
【0142】
また、当該反応では、炭酸カリウム等の無機塩基を用いることができる。また、溶媒として、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)ピリミジノン(DMPU)、トルエン、キシレン、ベンゼン等を用いることができる。但し、当該反応(ウルマン反応)では、反応温度が100℃以上の方がより短時間かつ高収率で目的物が得られるため、沸点の高いDMPU、キシレンを用いることが好ましい。また、反応温度は150℃以上のより高温が更に好ましいため、より好ましくはDMPUを用いることとする。但し、当該反応で用いることができる試薬類は、前記試薬類に限られるものではない。
【0143】
次に、本発明の一態様であり、下記一般式(G1)で表される有機化合物のうち、m及びnが0であり、かつトリアリールアミン骨格が同一の分子構造である、下記一般式(G1-4)で表される有機化合物の合成方法について説明する。
【0144】
【0145】
一般式(G1-4)において、Ar1、Ar3、およびAr4は、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。
【0146】
≪一般式(G1-4)で表される有機化合物の合成方法≫
以下に、一般式(G1-4)で表される有機化合物の合成方法の一例について説明する。この有機化合物の合成には、種々の反応を適用することができる。例えば、合成スキーム(D-1)に示すように、ジチアゾロキノキサリン化合物(化合物1)に対して2当量のジアリールアミン化合物(化合物5)をカップリングすることにより、一般式(G1-4)で表される、ジチアゾロキノキサリン化合物を得ることができる。
【0147】
【0148】
なお、上記合成スキーム(D-1)において、Ar1、Ar3、およびAr4は、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が6乃至13のアリール基を表す。また、Q1は、置換もしくは無置換のカルバゾール骨格を有する基、または置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が18乃至30のトリアリールアミン骨格を有する基を表す。なお、トリアリールアミン骨格において3つのアリール基の構造は同じであっても異なっていてもよい。また、X1およびX2はそれぞれ独立に塩素、臭素、ヨウ素、トリフラート基のいずれか一を表し、X5は水素または有機錫基を表す。
【0149】
また、上記合成スキーム(C-1)において、上記一般式(G1-3)の合成方法と同様に、銅または銅化合物を用いたウルマン反応を行う場合、X1およびX2はそれぞれ独立に塩素、臭素、またはヨウ素のいずれか一を表し、X5は水素を表す。
【0150】
以上、本発明の一態様の有機化合物の合成方法の一例について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
【0151】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0152】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機化合物を用いることができる発光デバイスの一態様について説明する。
【0153】
<発光デバイスの構成例>
図1(A)には、一対の電極間に発光層を含むEL層を有する発光デバイスの一例を示す。具体的には、第1の電極101と第2の電極102との間にEL層103が挟まれた構造を有する。なお、EL層103は、例えば、第1の電極101を陽極とした場合、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が機能層として、順次積層された構造を有する。
【0154】
また、その他の発光デバイスの構造として、
図1(B)に示すように一対の電極間に電荷発生層104を挟んで形成される複数のEL層を有する構成(タンデム構造)とすることにより低電圧駆動を可能とする発光デバイスや、一対の電極間に微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を形成することにより光学特性を向上させた発光デバイス等も本発明の一態様に含めることとする。なお、電荷発生層は、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加したときに、隣り合う一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。
【0155】
なお、上記発光デバイスの第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、透過性および反射性を両方有する、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0156】
また、上述した発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0157】
なお、上述した、タンデム構造は、電荷発生層を挟んで形成される複数のEL層を有する構成であるが、複数のEL層は、それぞれ発光層を有しており、各発光層の発光色は、自由に組み合わせることができる。例えば、第1の電極101側から積層される、第1のEL層が有する第1の発光層を赤色、緑色、黄色、または青色のいずれか、その上に電荷発生層を介して積層される、第2のEL層が有する第2の発光層を赤色、緑色、黄色、または青色のいずれか、さらにその上に電荷発生層を介して積層される、第3のEL層が有する第3の発光層を赤色、緑色、黄色、または青色のいずれか、とすることができる。
【0158】
また、上述した、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造は、例えば、発光デバイスの第1の電極101を反射電極とし、第2の電極102を半透過・半反射電極とすることにより形成することができる。すなわち、発光デバイスの第1の電極101が、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電性材料(透明導電膜)との積層構造からなる反射電極である場合、透明導電膜の膜厚を制御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層113から得られる光の波長λに対して、第1の電極101と、第2の電極102との電極間距離がmλ/2(ただし、mは自然数)近傍となるように調整するのが好ましい。これにより、EL層103から得られる発光を強めることができる。
【0159】
また、発光層113から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、第1の電極101から発光層の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、第2の電極102から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、をそれぞれ(2m’+1)λ/4(ただし、m’は自然数)近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層113における正孔(ホール)と電子との再結合領域を示す。
【0160】
このような光学調整を行うことにより、発光層113から得られる特定の単色光のスペクトルを狭線化させ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0161】
但し、上記の場合、第1の電極101と第2の電極102との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域から第2の電極102における反射領域までの総厚ということができる。しかし、第1の電極101や第2の電極102における反射領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101と第2の電極102の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、第1の電極101と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるということができる。しかし、第1の電極101における反射領域や、所望の光が得られる発光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101の任意の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0162】
以上のように、発光デバイスが、マイクロキャビティ構造を有する場合、EL層が共通であっても、電極間の光学距離を変えることで、異なる波長の光(単色光)を取り出すことができる。従って、異なる発光色を得るための塗り分け(例えば、RGB)が不要となり、高精細化が可能となる。また、着色層(カラーフィルタ)との組み合わせも可能である。また、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能なため、低消費電力化を図ることができる。
【0163】
<第1の電極および第2の電極>
第1の電極101および第2の電極102を形成する材料としては、上述した両電極の機能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。
【0164】
なお、これらの電極の作製には、スパッタ法や真空蒸着法を用いることができる。
【0165】
<正孔注入層>
正孔注入層111は、陽極である第1の電極101や電荷発生層104からEL層(103、103a、103b)に正孔(ホール)を注入する層であり、有機アクセプタ材料(電子受容性材料)を含む層である。
【0166】
正孔注入層111には、有機アクセプタ材料(電子受容性材料)および正孔輸送性材料を用いることができる。この場合の有機アクセプタ材料は、正孔輸送性材料に対し、電子受容性を示す物質である。具体的には、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物が挙げられる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、また低分子化合物だけでなく高分子化合物等を用いることができる。また、正孔輸送性材料としては、HOMOの深い材料が好ましく、具体的には、そのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質が好ましい。このように正孔輸送性材料が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となる。
【0167】
また、有機アクセプタ材料としては、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物等を用いることもできる。なお、正孔注入層111は、このような有機アクセプタ材料のみで形成してもよく、また、正孔輸送性材料と組み合わせて用いても良い。
【0168】
なお、電子吸引基を有する有機化合物としては、例えば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合複素環化合物に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0169】
上記の正孔輸送性材料としては、公知の材料を用いることができるが、特にHOMOの深い正孔輸送性材料を用いる場合には、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることが好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。
【0170】
なお、上記の正孔輸送性材料(HOMOの深い正孔輸送性材料を含む)としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-6cm2/Vs以上である正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、これらの材料が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、長寿命な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0171】
以上のような正孔輸送性材料としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(4-ビフェニリル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(4-ビフェニル)-N-(9、9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)等を挙げることができる。
【0172】
なお、正孔注入層111は、公知の様々な成膜方法を用いて形成することができるが、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0173】
<正孔輸送層>
正孔輸送層112は、正孔注入層111によって、第1の電極101から注入された正孔を発光層113に輸送する層である。
【0174】
正孔輸送層112は、上述した正孔輸送性材料の他に公知の正孔輸送性材料を用いることができる。また、正孔輸送層112は、積層構造を有していても良い。なお、積層構造を有する場合、発光層側の層には、電子ブロック層としての機能を持たせても良い。
【0175】
また、正孔注入層111に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位と、正孔輸送層112に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位との比較において、正孔輸送層112に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位が、正孔注入層111に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位よりも深く、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択することが好ましい。なお、両方とも同じ材料であると正孔の注入がスムーズとなるため、より好ましい。
【0176】
また、正孔輸送層112が積層構造を有する場合、正孔注入層111側に形成される正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位と、発光層113側に形成される正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位との比較において、後者のHOMO準位が前者のHOMO準位よりも深いほうが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。なお、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が上記の関係を有することにより、各層への正孔注入がスムーズに行われ、駆動電圧の上昇や発光層113における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0177】
なお、正孔注入層111、および正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格が好ましい。また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料の正孔輸送性骨格が、隣り合う層同士で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。
【0178】
また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料が、隣り合う層で同一であると、陰極方向に隣り合う層への正孔の注入がよりスムーズとなるため好ましい。
【0179】
<発光層>
本発明の一態様である、有機化合物は、発光層に用いることが好ましい。特に発光層における発光物質(ゲスト材料)として用いることが好ましい。なお、本実施の形態で説明する発光デバイスにおいて、発光層113は、単層構造でも複数の発光層が積層された構造でも良い。なお、複数の発光層が積層される場合、各発光層が異なる機能を有するように発光層を形成することが好ましい。
【0180】
発光層113には、発光物質(ゲスト材料)と、発光物質を分散させるホスト材料(1種または複数種)を用いることが好ましい。
【0181】
なお、発光物質(ゲスト材料)としては、本発明の一態様である有機化合物以外にも、蛍光を発する物質(蛍光発光物質)、燐光を発する物質(燐光発光物質)、熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料、その他の発光物質等を用いることができる。また、有機化合物(ホスト材料)としては、電子輸送性材料や正孔輸送性材料の他、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。なお、正孔輸送性材料や電子輸送性材料等の具体例としては、本明細書中に記載された材料や公知の材料を適宜、単数もしくは複数種用いることができる。
【0182】
発光層113のゲスト材料として用いることができる蛍光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0183】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0184】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができる燐光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0185】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)3])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[(1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色の燐光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
【0186】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色の燐光発光を示す化合物であり、500nm~600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0187】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色の燐光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0188】
また、以上で述べた以外にも公知の燐光物質を用いることができる。
【0189】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができるTADF材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0190】
フラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
【0191】
【0192】
その他にも、下記の構造式に示すように、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環式芳香族化合物を用いてもよい。
【0193】
【0194】
該複素環式芳香族化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0195】
また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。
【0196】
なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。
【0197】
このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0198】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0199】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料と同じ機能を有する。
【0200】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その接線とX軸との交点の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その接線とX軸との交点の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0201】
また、発光層113のゲスト材料として、TADF材料を用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0202】
次に、発光層113のホスト材料として用いることができる正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0203】
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、上記正孔輸送性材料の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0204】
また、発光層113のホスト材料として用いることができる電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。その他にも、後述する電子輸送層114に用いることができる電子輸送性材料を用いることもできる。
【0205】
ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,4’-(2,3-ジシアノジベンゾ[f,h]キノキサリン-7,10-ジイル)ビス(トリフェニルアミン)(略称:2,3CN-7,10TPA2DBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、などのジアジン骨格を有するヘテロアリール化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有するヘテロアリール化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有するヘテロアリール化合物やピリジン骨格を有するヘテロアリール化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有するヘテロアリール化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0206】
また、発光層113のホスト材料としてTADF材料を用いる場合にも、先に挙げたものを同様に用いることができる。なお、TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光中心物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光中心物質がエネルギーアクセプターとして機能する。従って、ホスト材料としてTADF材料を用いることは、ゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合に非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0207】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0208】
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数が3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0209】
また、発光層113のゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。なお、アントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。
【0210】
また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。
【0211】
したがって、アントラセン骨格である、9,10-ジフェニルアントラセン骨格、およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格やジベンゾカルバゾール骨格)を両方有する物質が、ホスト材料としてより好ましい。なお、上記の正孔注入・輸送性を向上させる観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格やジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:BH513)等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい。
【0212】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性材料と、正孔輸送性材料とを混合することが好ましい。電子輸送性材料と、正孔輸送性材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性材料と電子輸送性材料の含有量の重量比は、正孔輸送性材料:電子輸送性材料=1:19~19:1とすればよい。
【0213】
なお、上記のように、ホスト材料が複数種の物質を混合してなる場合、その一部に燐光発光物質を用いることができる。燐光発光物質は、発光中心材料として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0214】
また、上記のように混合された材料同士が、励起錯体を形成しても良い。この場合の材料の組み合わせとして、発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。また、このような構成を用いることで駆動電圧を低下させることができるため好ましい。
【0215】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、燐光発光物質であってもよい。この場合、逆項間交差により三重項励起エネルギーを効率良く一重項励起エネルギーへと変換することができる。
【0216】
なお、励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性材料のHOMO準位が電子輸送性材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性材料のLUMO準位が電子輸送性材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0217】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性材料の発光スペクトル、電子輸送性材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0218】
<電子輸送層>
電子輸送層114は、第2の電極102から注入された電子を発光層113に輸送する層であり、発光層113に接して設けられる。なお、電子輸送層114は、電子輸送性材料を含む層である。電子輸送層114に用いる電子輸送性材料は、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。また、電子輸送層114は、電子輸送性材料、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体を用いても良い。この場合、電子輸送性材料として、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料を用いることが好ましい。なお、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上1×10-5cm2/Vs以下であると好ましいが、1×10-7cm2/Vs以上5×10-5cm2/Vs以下であるとより好ましい。
【0219】
なお、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、例えば、アントラセン骨格を有する有機化合物や、アントラセン骨格と複素環骨格を有する有機化合物などを用いることが好ましい。したがって、本発明の一態様である、キノキサリン誘導体を電子輸送性材料として用いることが好ましい。その他、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性材料の一部、または上記蛍光発光物質に組み合わせてホスト材料として用いることが可能な材料として挙げたものを電子輸送層114に用いることができる。
【0220】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体としては、リチウムやナトリウム等の有機錯体が好ましく、特に、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)が好ましい。
【0221】
また、電子輸送層114に用いる、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料の電子移動度(電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度)は、発光層113に用いるホスト材料の電子移動度よりも小さいことが好ましい。電子輸送層における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
【0222】
また、電子輸送層114にアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体を含む場合には、これらの含有量の異なる2層以上で構成されていてもよく、特に発光層との界面におけるこれらの含有量が多い構成とするのが好ましい。
【0223】
<電子注入層>
電子注入層115は、第2の電極102からの電子の注入効率を高めるための層であり、第2の電極102の材料の仕事関数の値と、電子注入層115に用いる材料のLUMO準位の値とを比較した際、その差が小さい(0.5eV以下)材料を用いることが好ましい。従って、電子注入層115には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)リチウム酸化物(LiOx)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。
【0224】
また、
図1(B)に示す発光デバイスのように、2つのEL層(103a、103b)の間に電荷発生層104を設けることにより、複数のEL層が一対の電極間に積層された構造(タンデム構造ともいう)とすることもできる。なお、本実施の形態において
図1(A)で説明する、正孔注入層(111)、正孔輸送層(112)、発光層(113)、電子輸送層(114)、電子注入層(115)のそれぞれは、
図1(B)で説明する、正孔注入層(111a、111b)、正孔輸送層(112a、112b)、発光層(113a、113b)、電子輸送層(114a、114b)、電子注入層(115a、115b)のそれぞれと、機能や用いる材料は共通である。
【0225】
<電荷発生層>
なお、
図1(B)の発光デバイスにおける電荷発生層104は、第1の電極(陽極)101と第2の電極(陰極)102との間に電圧を印加したときに、陽極である第1の電極101側のEL層103aに電子を注入し、陰極である第2の電極102側のEL層103bに正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層104は、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプタ)が添加された構成(P型層)であっても、電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された構成(N型層)であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。また、上記P型層と、後述する電子リレー層および電子注入バッファ層のいずれか一又は両方を組み合わせて形成されていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層104を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0226】
電荷発生層104において、正孔輸送性材料に電子受容体が添加された構成(P型層)とする場合、正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。
【0227】
また、電荷発生層104において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成(N型層)とする場合、電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0228】
上記で、P型層との組み合わせが好ましいとして示した電子リレー層は、電子注入バッファ層とP型層との間に設けることで、電子注入バッファ層とP型層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。なお、電子リレー層は、少なくとも電子輸送性材料を含み、電子リレー層に含まれる電子輸送性材料のLUMO準位は、P型層における電子受容性物質のLUMO準位と、電子注入バッファ層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層に用いられる電子輸送性材料におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層に用いられる電子輸送性材料としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0229】
電子注入バッファ層には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0230】
また、電子注入バッファ層が、電子輸送性材料と電子供与性物質を含んで形成される場合には、電子供与性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性材料としては、先に説明した電子輸送層を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0231】
なお、
図1(B)では、EL層103が2層積層された発光デバイスの構成を示したが、異なるEL層の間に電荷発生層を設けることにより3層以上のEL層の積層構造としてもよい。
【0232】
また、上記の電荷発生層は、上述した電子注入層の代わりに用いることもできる。なお、この場合には、陽極側から電子注入バッファ層、電子リレー層、P型層の順に積層されることが好ましい。
【0233】
<基板>
本実施の形態で示した発光デバイスは、様々な基板上に形成することができる。なお、基板の種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。
【0234】
なお、ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどが挙げられる。また、可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などが挙げられる。
【0235】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特に発光デバイスのEL層に含まれる機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))、および電荷発生層104については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法、ナノインプリント法等)などの方法により形成することができる。
【0236】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスのEL層(103、103a、103b)を構成する各機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))や電荷発生層104は、上述した材料に限られることはなく、それ以外の材料であっても各層の機能を満たせるものであれば組み合わせて用いることができる。一例としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いることができる。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0237】
以上のような構成を有する発光デバイスにおいて、本発明の一態様である有機化合物をEL層(具体的には、発光層)に用いることで、850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有し、または600nmよりも長波長な領域に吸収スペクトルのピークを有する新規な発光デバイスとすることが可能である。その他にも、本発明の一態様である有機化合物を受光デバイスの活性層に用いることで、赤色から近赤外の領域の光(850nmよりも長波長な領域に発光スペクトルのピークを有する光)を受光するセンサである、受光デバイスとすることもできる。
【0238】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0239】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。なお、
図2(A)に示す発光装置は、第1の基板201上のトランジスタ(FET)202と発光デバイス(203R、203G、203B、203W)が電気的に接続されてなるアクティブマトリクス型の発光装置であり、複数の発光デバイス(203R、203G、203B、203W)は、共通のEL層204を有し、また、各発光デバイスの発光色に応じて、各発光デバイスの電極間の光学距離が調整されたマイクロキャビティ構造を有する。また、EL層204から得られた発光が第2の基板205に形成されたカラーフィルタ(206R、206G、206B)を介して射出されるトップエミッション型の発光装置である。
【0240】
図2(A)に示す発光装置は、第1の電極207を反射電極として機能するように形成する。また、第2の電極208を半透過・半反射電極として機能するように形成する。なお、第1の電極207および第2の電極208を形成する電極材料としては、他の実施の形態の記載を参照し、適宜用いればよい。
【0241】
また、
図2(A)において、例えば、発光デバイス203Rを赤色発光デバイス、発光デバイス203Gを緑色発光デバイス、発光デバイス203Bを青色発光デバイス、発光デバイス203Wを白色発光デバイスとする場合、
図2(B)に示すように発光デバイス203Rは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Rとなるように調整し、発光デバイス203Gは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Gとなるように調整し、発光デバイス203Bは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Bとなるように調整する。なお、
図2(B)に示すように、発光デバイス203Rにおいて導電層210Rを第1の電極207に積層し、発光デバイス203Gにおいて導電層210Gを第1の電極207に積層することにより、光学調整を行うことができる。
【0242】
第2の基板205には、カラーフィルタ(206R、206G、206B)が形成されている。なお、カラーフィルタは、可視光のうち特定の波長域を通過させ、特定の波長域を阻止するフィルタである。従って、
図2(A)に示すように、発光デバイス203Rと重なる位置に赤の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Rを設けることにより、発光デバイス203Rから赤色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Gと重なる位置に緑の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Gを設けることにより、発光デバイス203Gから緑色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Bと重なる位置に青の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Bを設けることにより、発光デバイス203Bから青色発光を得ることができる。但し、発光デバイス203Wは、カラーフィルタを設けることなく白色発光を得ることができる。なお、1種のカラーフィルタの端部には、黒色層(ブラックマトリックス)209が設けられていてもよい。さらに、カラーフィルタ(206R、206G、206B)や黒色層209は、透明な材料を用いたオーバーコート層で覆われていても良い。
【0243】
図2(A)では、第2の基板205側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置を示したが、
図2(C)に示すようにFET202が形成されている第1の基板201側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としても良い。なお、ボトムエミッション型の発光装置の場合には、第1の電極207を半透過・半反射電極として機能するように形成し、第2の電極208を反射電極として機能するように形成する。また、第1の基板201は、少なくとも透光性の基板を用いる。また、カラーフィルタ(206R’、206G’、206B’)は、
図2(C)に示すように発光デバイス(203R、203G、203B)よりも第1の基板201側に設ければよい。
【0244】
また、
図2(A)において、発光デバイスが、赤色発光デバイス、緑色発光デバイス、青色発光デバイス、白色発光デバイスの場合について示したが、本発明の一態様である発光デバイスはその構成に限られることはなく、黄色の発光デバイスや橙色の発光デバイスを有する構成であっても良い。なお、これらの発光デバイスを作製するためにEL層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層など)に用いる材料としては、他の実施の形態の記載を参照し、適宜用いればよい。なお、その場合には、また、発光デバイスの発光色に応じてカラーフィルタを適宜選択する必要がある。
【0245】
以上のような構成とすることにより、複数の発光色を呈する発光デバイスを備えた発光装置を得ることができる。
【0246】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0247】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。
【0248】
本発明の一態様である発光デバイスのデバイス構成を適用することで、アクティブマトリクス型の発光装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。なお、アクティブマトリクス型の発光装置は、発光デバイスとトランジスタ(FET)とを組み合わせた構成を有する。従って、パッシブマトリクス型の発光装置、アクティブマトリクス型の発光装置は、いずれも本発明の一態様に含まれる。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光デバイスを適用することが可能である。
【0249】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について
図3を用いて説明する。
【0250】
なお、
図3(A)は発光装置を示す上面図であり、
図3(B)は
図3(A)を鎖線A-A’で切断した断面図である。アクティブマトリクス型の発光装置は、第1の基板301上に設けられた画素部302、駆動回路部(ソース線駆動回路)303と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)(304a、304b)を有する。画素部302および駆動回路部(303、304a、304b)は、シール材305によって、第1の基板301と第2の基板306との間に封止される。
【0251】
また、第1の基板301上には、引き回し配線307が設けられる。引き回し配線307は、外部入力端子であるFPC308と電気的に接続される。なお、FPC308は、駆動回路部(303、304a、304b)に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC308にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。なお、これらFPCやPWBが取り付けられた状態は、発光装置に含まれる。
【0252】
【0253】
画素部302は、FET(スイッチング用FET)311、FET(電流制御用FET)312、およびFET312と電気的に接続された第1の電極313を有する複数の画素により形成される。なお、各画素が有するFETの数は、特に限定されることはなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0254】
FET309、310、311、312は、特に限定されることはなく、例えば、スタガ型や逆スタガ型などのトランジスタを適用することができる。また、トップゲート型やボトムゲート型などのトランジスタ構造であってもよい。
【0255】
なお、これらのFET309、310、311、312に用いることのできる半導体の結晶性については特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。なお、結晶性を有する半導体を用いることで、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0256】
また、これらの半導体としては、例えば、第14族の元素、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体などを用いることができる。代表的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体、インジウムを含む酸化物半導体などを適用することができる。
【0257】
駆動回路部303は、FET309とFET310とを有する。なお、駆動回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されても良い。また、外部に駆動回路を有する構成としても良い。
【0258】
第1の電極313の端部は、絶縁物314により覆われている。なお、絶縁物314には、ネガ型の感光性樹脂や、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶縁物314の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これにより、絶縁物314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0259】
第1の電極313上には、EL層315及び第2の電極316が積層形成される。EL層315は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を有する。
【0260】
なお、本実施の形態で示す発光デバイス317の構成は、他の実施の形態で説明した構成や材料を適用することができる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極316は外部入力端子であるFPC308に電気的に接続されている。
【0261】
また、
図3(B)に示す断面図では発光デバイス317を1つのみ図示しているが、画素部302において、複数の発光デバイスがマトリクス状に配置されているものとする。画素部302には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスをそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスの他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)等の発光が得られる発光デバイスを形成してもよい。例えば、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスに上述の数種類の発光が得られる発光デバイスを追加することにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。なお、カラーフィルタの種類としては、赤(R)、緑(G)、青(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等を用いることができる。
【0262】
第1の基板301上のFET(309、310、311、312)や、発光デバイス317は、第2の基板306と第1の基板301とをシール材305により貼り合わせることにより、第1の基板301、第2の基板306、およびシール材305で囲まれた空間318に備えられた構造を有する。なお、空間318には、不活性気体(窒素やアルゴン等)や有機物(シール材305を含む)で充填されていてもよい。
【0263】
シール材305には、エポキシ樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シール材305には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。また、第2の基板306は、第1の基板301に用いることができるものを同様に用いることができる。従って、他の実施形態で説明した様々な基板を適宜用いることができるものとする。基板としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から第1の基板301及び第2の基板306はガラス基板であることが好ましい。
【0264】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0265】
また、アクティブマトリクス型の発光装置を可撓性基板に形成する場合、可撓性基板上にFETと発光デバイスとを直接形成しても良いが、剥離層を有する別の基板にFETと発光デバイスを形成した後、熱、力、レーザ照射などを与えることによりFETと発光デバイスを剥離層で剥離し、さらに可撓性基板に転載して作製しても良い。なお、剥離層としては、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。また可撓性基板としては、トランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などが挙げられる。これらの基板を用いることにより、耐久性や耐熱性に優れ、軽量化および薄型化を図ることができる。
【0266】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0267】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光デバイス、本発明の一態様である発光デバイスを有する発光装置を適用して完成させた様々な電子機器や自動車の一例について、説明する。なお、発光装置は、本実施の形態で説明する電子機器において、主に表示部に適用することができる。
【0268】
図4(A)乃至
図4(E)に示す電子機器は、筐体7000、表示部7001、スピーカ7003、LEDランプ7004、操作キー7005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子7006、センサ7007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7008、等を有することができる。
【0269】
図4(A)はモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ7009、赤外線ポート7010、等を有することができる。
【0270】
図4(B)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示部7002、記録媒体読込部7011、等を有することができる。
【0271】
図4(C)はテレビ受像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ7014、シャッターボタン7015、受像部7016、等を有することができる。
【0272】
図4(D)は携帯情報端末である。携帯情報端末は、表示部7001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報7052、情報7053、情報7054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末を収納した状態で、携帯情報端末の上方から観察できる位置に表示された情報7053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0273】
図4(E)は携帯情報端末(スマートフォンを含む)であり、筐体7000に、表示部7001、操作キー7005、等を有することができる。なお、携帯情報端末は、スピーカ7003、接続端子7006、センサ7007等を設けてもよい。また、携帯情報端末は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。ここでは3つのアイコン7050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報7051を表示部7001の他の面に表示することもできる。情報7051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリーの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報7051が表示されている位置にはアイコン7050などを表示してもよい。
【0274】
図4(F)は、大型のテレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)であり、筐体7000、表示部7001、等を有することができる。また、ここでは、スタンド7018により筐体7000を支持した構成を示している。また、テレビジョン装置の操作は、別体のリモコン操作機7111、等により行うことができる。なお、表示部7001にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7001に表示される画像を操作することができる。
【0275】
図4(A)乃至
図4(F)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図4(A)乃至
図4(F)に示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0276】
図4(G)は、腕時計型の携帯情報端末であり、例えばスマートウォッチとして用いることができる。この腕時計型の携帯情報端末は、筐体7000、表示部7001、操作用ボタン7022、7023、接続端子7024、バンド7025、マイクロフォン7026、センサ7029、スピーカ7030等を有している。表示部7001は、表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、この携帯情報端末は、例えば無線通信可能なヘッドセットとの相互通信によりハンズフリーでの通話が可能である。なお、接続端子7024により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。充電動作は無線給電により行うこともできる。
【0277】
ベゼル部分を兼ねる筐体7000に搭載された表示部7001は、非矩形状の表示領域を有している。表示部7001は、時刻を表すアイコン、その他のアイコン等を表示することができる。また、表示部7001は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0278】
なお、
図4(G)に示すスマートウォッチは、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。
【0279】
また、筐体7000の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。
【0280】
なお、本発明の一態様である発光装置および本発明の一態様である発光デバイスを有する表示装置は、本実施の形態に示す電子機器の各表示部に用いることができ、長寿命な電子機器を実現できる。
【0281】
また、発光装置を適用した電子機器として、
図5(A)乃至(C)に示すような折りたたみ可能な携帯情報端末が挙げられる。
図5(A)には、展開した状態の携帯情報端末9310を示す。また、
図5(B)には、展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。さらに、
図5(C)には、折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0282】
表示部9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示部9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示部9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。なお、本発明の一態様の発光装置は、表示部9311に用いることができる。また、長寿命な電子機器を実現できる。表示部9311における表示領域9312は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【0283】
また、発光装置を適用した自動車について、
図6(A)(B)に示す。すなわち、発光装置を、自動車と一体にして設けることができる。具体的には、
図6(A)に示す自動車の外側のライト5101(車体後部も含む)、タイヤのホイール5102、ドア5103の一部または全体などに適用することができる。また、
図6(B)に示す自動車の内側の表示部5104、ハンドル5105、シフトレバー5106、座席シート5107、インナーリアビューミラー5108、フロントガラス5109等に適用することができる。その他、ガラス窓の一部に適用してもよい。
【0284】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置や表示装置を適用した電子機器や自動車を得ることができる。なお、その場合には、長寿命な電子機器を実現できる。なお、適用できる電子機器や自動車は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野において適用することが可能である。
【0285】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0286】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用して作製される照明装置の構成について
図7を用いて説明する。
【0287】
図7(A)、(B)は、照明装置の断面図の一例を示す。なお、
図7(A)は基板側に光を取り出すボトムエミッション型の照明装置であり、
図7(B)は、封止基板側に光を取り出すトップエミッション型の照明装置である。
【0288】
図7(A)に示す照明装置4000は、基板4001上に発光デバイス4002を有する。また、基板4001の外側に凹凸を有する基板4003を有する。発光デバイス4002は、第1の電極4004と、EL層4005と、第2の電極4006を有する。
【0289】
第1の電極4004は、電極4007と電気的に接続され、第2の電極4006は電極4008と電気的に接続される。また、第1の電極4004と電気的に接続される補助配線4009を設けてもよい。なお、補助配線4009上には、絶縁層4010が形成されている。
【0290】
また、基板4001と封止基板4011は、シール材4012で接着されている。また、封止基板4011と発光デバイス4002の間には、乾燥剤4013が設けられていることが好ましい。なお、基板4003は、
図7(A)のような凹凸を有するため、発光デバイス4002で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0291】
図7(B)の照明装置4200は、基板4201上に発光デバイス4202を有する。発光デバイス4202は第1の電極4204と、EL層4205と、第2の電極4206とを有する。
【0292】
第1の電極4204は、電極4207と電気的に接続され、第2の電極4206は電極4208と電気的に接続される。また第2の電極4206と電気的に接続される補助配線4209を設けてもよい。また、補助配線4209の下部に、絶縁層4210を設けてもよい。
【0293】
基板4201と凹凸のある封止基板4211は、シール材4212で接着されている。また、封止基板4211と発光デバイス4202の間にバリア膜4213および平坦化膜4214を設けてもよい。なお、封止基板4211は、
図7(B)のような凹凸を有するため、発光デバイス4202で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0294】
また、これらの照明装置の応用例としては、室内の照明用であるシーリングライトが挙げられる。シーリングライトには、天井直付型や天井埋め込み型等がある。なお、このような照明装置は、発光装置を筐体やカバーと組み合わせることにより構成される。
【0295】
その他にも床面に灯りを照射し、足元の安全性を高めることができる足元灯などへの応用も可能である。足元灯は、例えば、寝室や階段や通路などに使用するのが有効である。その場合、部屋の広さや構造に応じて適宜サイズや形状を変えることができる。また、発光装置と支持台とを組み合わせて構成される据え置き型の照明装置とすることも可能である。
【0296】
また、シート状の照明装置(シート状照明)として応用することも可能である。シート状照明は、壁面に張り付けて使用するため、場所を取らず幅広い用途に用いることができる。なお、大面積化も容易である。なお、曲面を有する壁面や筐体に用いることもできる。
【0297】
なお、上記以外にも室内に備えられた家具の一部に本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用し、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0298】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0299】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0300】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機化合物、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’,6,7-テトラフェニル-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジアミン(略称:YGA2TDQn)の合成方法について説明する。なお、YGA2TDQnの構造を以下に示す。
【0301】
【0302】
<YGA2TDQnの合成>
4,9-ジブロモ-6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン1.0g(2.0mmol)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)ジフェニルアミン1.4g(4.1mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)0.4g(0.9mmol)、およびナトリウム tert-ブトキシド0.5g(5.5mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にキシレン20.0mL、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.1mg(0.2mmol)を加え、100℃で1.5時間、120℃で2.8時間、150℃で3.0時間攪拌した。
【0303】
攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:7)により精製し、目的の黒色固体を0.3g 収率13%で得た。
【0304】
さらに、得られた黒色固体0.16gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力1.2×10-2Pa、350℃で加熱した。昇華精製後、目的物の黒色固体を0.11g、回収率67%で得た。合成スキームを下記式(a-1)に示す。
【0305】
【0306】
なお、上記合成法で得られた黒色固体の核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H-NMRチャートを
図8に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機化合物、YGA2TDQnが得られたことがわかった。
【0307】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ=7.14-7.43(m,40H),8.14(d,J=8.0Hz,4H)。
【0308】
≪YGA2TDQnの物性について≫
次に、YGA2TDQnのトルエン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。
【0309】
吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計(日本分光 FP-8600)を用いた。得られたトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定結果を
図9に示す。横軸は波長、縦軸は強度を表す。
【0310】
図9の結果より、YGA2TDQnのトルエン溶液では、737nm付近に吸収ピークが見られ、925nm(励起波長739nm)付近に発光ピークが見られた。
【0311】
次に、YGA2TDQnのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。算出方法を以下に示す。
【0312】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。
【0313】
また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20以上25℃以下)で行った。
【0314】
また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0315】
また、CV測定を100回繰り返し行い、100サイクル目の測定での酸化-還元波と、1サイクル目の酸化-還元波を比較して、化合物の電気的安定性を調べた。
【0316】
この結果、YGA2TDQnの酸化電位Ea[V]の測定において、HOMO準位は-5.48eVであることがわかった。一方、還元電位Ec[V]の測定において、LUMO準位は-3.93eVであることがわかった。また、酸化-還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては87%、Ec測定においては97%のピーク強度を保っていたことから、YGA2TDQnは酸化及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【実施例2】
【0317】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(200)で表される本発明の一態様である有機化合物、N,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-4-イル)-N,N’6,7-テトラフェニル-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジアミン(略称:PCA2TDQn)の合成方法について説明する。なお、PCA2TDQnの構造を以下に示す。
【0318】
【0319】
<ステップ1;N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-4-アミンの合成>
4-ブロモ-9-ジフェニル-9H-カルバゾール3.0g(9.3mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド2.7g(27.9mmol)を200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン33.0mL、アニリン0.90ml(20.0mmol)、トリ(tert-ブチル)ホスフィンの10%ヘキサン溶液0.5mL、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)48mg(0.1mmol)を加え、80℃で4.0時間攪拌した。
【0320】
攪拌後、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し油状物を得た。得られた油状物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=3:2)により精製し、目的物を3.0g 収率97%で得た。ステップ1の合成スキームを下記式(b-1)に示す。
【0321】
【0322】
<ステップ2;4,9-ビス(N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-4-アミン)-6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾール[3,4-g]キノキサリンの合成>
4,9-ジブロモ-6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾール[3,4-g]キノキサリン1.0g(2.0mmol)、N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-4-アミン1.5g(4.4mmol)、およびナトリウム tert-ブトキシド0.6g(6.0mmol)を100mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にキシレン20.0mL、およびビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.1mg(0.2mmol)を加え、100℃で2.5時間、120℃で6.8時間攪拌した。
【0323】
攪拌後、この混合物をフロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=2:7)により精製し、黒色固体を得た。得られた固体をトルエンとヘキサンで再結晶し、目的の黒色固体を0.9g、収率46%で得た。
【0324】
さらに、得られた黒色固体0.9gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製条件は、圧力2.3×10-2Pa、305℃で1日、315℃で一晩、320℃で2時間、330℃で2時間加熱した。昇華精製後、目的物の黒色固体を0.1g、回収率9%で得た。ステップ2の合成スキームを下記式(b-2)に示す。
【0325】
【0326】
なお、上記ステップ2で得られた黒色固体の核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H-NMRチャートを
図10に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(200)で表される本発明の一態様である有機化合物、PCA2TDQnが得られたことがわかった。
【0327】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ=6.59(d,J=8.0Hz,4H),6.73(t,J=8.0Hz,4H),6.87(t,J=7.5Hz,2H),6.92-6.98(m,8H),7.03(t,J=7.5Hz,2H),7.18-7.29(m,10H),7.39(d,J=8.0Hz,2H),7.45-7.52(m,2H),7.64(d,J=5.0Hz,8H),7.74(d,J=8.0Hz,2H)。
【0328】
≪PCA2TDQnの物性について≫
次に、PCA2TDQnのトルエン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。
【0329】
吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計(日本分光 FP-8600)を用いた。得られたトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定結果を
図11に示す。横軸は波長、縦軸は強度を表す。
【0330】
図11の結果より、PCA2TDQnのトルエン溶液では、732nm付近に吸収ピークが見られ、882nm(励起波長730nm)付近に発光ピークが見られた。
【0331】
次に、PCA2TDQnのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。なお、測定方法および算出方法は、実施例1と同じ方法を用いた。
【0332】
この結果、PCA2TDQnの酸化電位Ea[V]の測定において、HOMO準位は-5.28eVであることがわかった。一方、還元電位Ec[V]の測定において、LUMO準位は-3.86eVであることがわかった。また、酸化-還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては80%、Ec測定においては94%のピーク強度を保っていたことから、PCA2TDQnは酸化及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【実施例3】
【0333】
≪合成例3≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(300)で表される本発明の一態様である有機化合物、N,N-[(6,7-ジフェニル[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジイル)ジ-4,1-フェニレン]ビス(N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン)(略称:PCAP2TDQn)の合成方法について説明する。なお、PCAP2TDQnの構造を以下に示す。
【0334】
【0335】
<ステップ1;N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミンの合成>
3-ヨード-9-フェニルカルバゾール16g(45mmol)、アニリン4.1mL(45mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)0.37g(0.90mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド8.6g(90mmol)、およびトルエン225mLを、還流管を付けた500mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した。この混合物にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.26g(0.45mmol)を加え、1.5時間還流した。
【0336】
その後、この混合物に水を加えて得られる水層と有機層のうち、水層をトルエンで抽出した。次に抽出により得られた抽出液と、有機層とを合わせて水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた混合物を、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:1)により精製し、目的の白色固体を14g、収率94%で得た。ステップ1の合成スキームを下記式(c-1)に示す。
【0337】
【0338】
<ステップ2;N-(4-クロロフェニル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミンの合成>
次に、ステップ1で得られたN,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン5.0g(15mmol)、1-クロロ-4-ヨードベンゼン3.6g(15mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)0.12g(0.30mmol)、ナトリウム tert-ブトキシド2.9g(30mmol)、およびトルエン75mLを、還流管を付けた200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した。この混合物にビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)86mg(0.15mmol)を加え、80℃で4時間攪拌した。
【0339】
その後、この混合物に水を加えて得られる水層と有機層のうち、水層をトルエンで抽出した。さらに得られた抽出液と、有機層とを合わせて水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた混合物を、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体をエタノールとアセトンで再結晶し、目的の白色固体を4.0g、収率60%で得た。ステップ2の合成スキームを下記式(c-2)に示す。
【0340】
【0341】
<ステップ3;N,9-ジフェニル-N-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミンの合成>
次に、上記ステップ2で得られたN-(4-クロロフェニル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン3.0g(6.7mmol)、ビス(ピナコレート)ジボロン1.7g(6.7mmol)、酢酸カリウム1.3g(13mmol)、キシレン30mLを、還流管を付けた200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した。この混合物に[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物55mg(67μmol)を加え、5時間還流させた。次いで、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)60mg(0.15mmol)を加え、更に19時間還流させた。
【0342】
その後、この混合物に水を加えて得られる水層と有機層のうち、水層をトルエンで抽出した。次に抽出により得られた抽出液と、有機層とを合わせて水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた混合物を、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を高速クロマトグラフィー(HPLC)(移動相:クロロホルム)により精製し、目的の白色固体を2.8g、収率78%で得た。ステップ3の合成スキームを下記式(c-3)に示す。
【0343】
【0344】
なお、上記ステップ3で得られた白色固体の核磁気共鳴分光法(1H-NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、ステップ3における目的物、N,9-ジフェニル-N-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミンが得られたことがわかった。
【0345】
1H NMR(ジクロロメタン-d2,500MHz):δ=7.99(d,J=7.5Hz,1H),7.93(d,J=1.5Hz,1H),7.65-7.56(m,6H),7.49(t,J=7.5Hz,1H),7.40-7.37(m,3H),7.28-7.20(m,4H),7.15(dd,J=8.5,1.0Hz,2H),7.04-6.99(m,3H),1.30(s,12H).
【0346】
<ステップ4;PCAP2TDQnの合成>
次に、上記ステップ3で得られた、N,9-ジフェニル-N-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン2.2g(4.0mmol)、4,9-ジブロモ-6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾール[3,4-g]キノキサリン1.0g(2.0mmol)、トリ(オルトートリル)ホスフィン24mg(80μmol)、2M炭酸カリウム水溶液4mL、トルエン15mL、およびエタノール5mLを、還流管を付けた200mL三口フラスコに入れ、フラスコ内を脱気、窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)9.0mg(40μmol)を加え、8時間還流した。
【0347】
その後、この混合物に水を加えて得られる水層と有機層のうち、水層をトルエンで抽出した。次に抽出により得られた抽出液と、有機層とを合わせて水と飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた混合物を、フロリジール(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:540-00135)、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531-16855)、アルミナの順に積層したろ過材に通して吸引ろ過した。得られたろ液を濃縮し固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒はヘキサン:トルエン=1:4)と高速クロマトグラフィー(HPLC)(移動相:クロロホルム)により精製し、目的の青緑色固体を0.63g、収率27%で得た。合成スキームを下記式(c-4)に示す。
【0348】
【0349】
なお、上記反応で得られた青緑色固体の核磁気共鳴分光法(
1H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、
1H-NMRチャートを
図12に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(300)で表される本発明の一態様である有機化合物、PCAP2TDQnが得られたことがわかった。
【0350】
1H NMR(ジクロロメタン-d2,300MHz):δ=8.13(d,J=1.8Hz,2H),8.06(d,J=7.8Hz,2H),7.94(d,J=9.3Hz,4H),7.68-7.61(m,12H),7.53-7.23(m,30H),7.11-7.05(m,2H).
【0351】
≪PCAP2TDQnの物性について≫
次に、PCAP2TDQnのトルエン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。
【0352】
吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)日本分光 FP-8600)を用いた。得られたトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルの測定結果を
図13に示す。横軸は波長、縦軸は強度を表す。
【0353】
図13の結果より、PCAP2TDQnのトルエン溶液では、654nm付近に吸収ピークが見られ、821nm(励起波長654nm)付近に発光波長のピークが見られた。
【0354】
PCAP2TDQnのHOMO準位およびLUMO準位をサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出した。なお、測定方法および算出方法は、実施例1と同じ方法を用いた。
【0355】
この結果、PCAP2TDQnの酸化電位Ea[V]の測定において、HOMO準位は-5.34eVであることがわかった。一方、還元電位Ec[V]の測定において、LUMO準位は-3.79eVであることがわかった。また、酸化-還元波の繰り返し測定において1サイクル目と100サイクル後の波形と比較したところ、Ea測定においては94%、Ec測定においては92%のピーク強度を保っていたことから、PCAP2TDQnは酸化及び還元に対する耐性が非常に良好であることが確認された。
【実施例4】
【0356】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスとして、実施例1で説明したN,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’,6,7-テトラフェニル-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジアミン(略称:YGA2TDQn)(構造式(100))を発光層に用いた発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3について、デバイス構造、作製方法およびその動作特性について説明する。なお、発光デバイス1は、発光層においてTTA(三重項-三重項消滅)の構成を有する蛍光発光デバイスである。また、発光デバイス2は、発光層において励起錯体から蛍光発光物質へ励起エネルギーが供与される構成を有する蛍光発光デバイスである。また、発光デバイス3は、熱活性化遅延蛍光を発することが可能な物質(TADF材料)から蛍光発光物質へ励起エネルギーが供与される構成を有する蛍光発光デバイスである。本実施例で用いる発光デバイスのデバイス構造を
図14に示し、具体的な構成について表1に示す。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0357】
【0358】
【0359】
≪発光デバイスの作製≫
本実施例で示す発光デバイスは、
図14に示すように基板900上に形成された第1の電極901上に正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、電子注入層915が順次積層され、電子注入層915上に第2の電極903が積層された構造を有する。
【0360】
まず、基板900上に第1の電極901を形成した。電極面積は、4mm2(2mm×2mm)とした。また、基板900には、ガラス基板を用いた。また、第1の電極901は、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、70nmの膜厚で成膜して形成した。
【0361】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0362】
次に、第1の電極901上に正孔注入層911を形成した。正孔注入層911は、真空蒸着装置内を1×10-4Paに減圧した後、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベンゼン(略称:DBT3P-II)と酸化モリブデンとを、DBT3P-II:酸化モリブデン=1:0.5(質量比)とし、膜厚が110nmとなるように共蒸着して形成した。
【0363】
次に、正孔注入層911上に正孔輸送層912を形成した。正孔輸送層912は、発光デバイス1の場合は、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)を用い、膜厚が20nmになるように蒸着して形成した。また、発光デバイス2および発光デバイス3の場合は、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)を用い、膜厚が20nmになるように蒸着して形成した。
【0364】
次に、正孔輸送層912上に発光層913を形成した。
【0365】
発光層913は、発光デバイス1の場合は、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、ルブレン、およびYGA2TDQnを用い、重量比がcgDBCzPA:ルブレン:YGA2TDQn=0.5:0.5:0.05となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。また、発光デバイス2の場合は、9,9’-(ピリミジン-4,6-ジイルジ-3,1-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzP2Pm)、トリス[2-(1H-ピラゾール-1-イル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppz)3])、およびYGA2TDQnを用い、重量比が4,6mCzP2Pm:[Ir(ppz)3]:YGA2TDQn=0.8:0.2:0.05となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。また、発光デバイス3の場合は、4,6mCzP2Pm、4,4’-(2,3-ジシアノジベンゾ[f,h]キノキサリン-7,10-ジイル)ビス(トリフェニルアミン)(略称:2,3CN-7,10TPA2DBq)、およびYGA2TDQnを用い、重量比が4,6mCzP2Pm:2,3CN-7,10TPA2DBq:YGA2TDQn=0.5:0.5:0.05となるように共蒸着した。なお、膜厚は、30nmとした。
【0366】
次に、発光層913上に電子輸送層914を形成した。
【0367】
電子輸送層914は、4,6mCzP2Pmの膜厚が20nm、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)の膜厚が15nmとなるように順次蒸着して形成した。
【0368】
次に、電子輸送層914上に電子注入層915を形成した。電子注入層915は、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0369】
次に、電子注入層915上に第2の電極903を形成した。第2の電極903は、アルミニウムを蒸着法により、膜厚が200nmとなるように形成した。なお、本実施例において、第2の電極903は、陰極として機能する。
【0370】
以上の工程により、基板900上に一対の電極間にEL層902を挟んでなる発光デバイスを形成した。なお、上記工程で説明した正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914、電子注入層915は、本発明の一態様におけるEL層を構成する機能層である。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0371】
また、上記に示すように作製した発光デバイスは、別の基板(図示せず)により封止される。なお、別の基板(図示せず)を用いた封止の際は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、紫外光により固化するシール剤を塗布した別の基板(図示せず)を基板900上に固定し、基板900上に形成された発光デバイスの周囲にシール剤が付着するよう基板同士を接着させた。封止時には365nmの紫外光を6J/cm2照射しシール剤を固化し、80℃にて1時間熱処理することによりシール剤を安定化させた。
【0372】
≪発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性測定の結果として電圧-放射輝度特性を
図15、電圧-電流密度特性を
図16、電圧-電流特性を
図17にそれぞれ示す。
【0373】
また、11mA/cm2付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表2に示す。
【0374】
【0375】
また、各発光デバイスに11mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図18に示す。
図18に示す通り、発光デバイス1、発光デバイス2、および発光デバイス3の発光スペクトルは、879nm付近にピークを有しており、いずれも発光層913に含まれる、YGA2TDQnの発光に由来していることが示唆される。
【実施例5】
【0376】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスとして、実施例2で説明したN,N-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-4-イル)-N,N’,6,7-テトラフェニル-[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジアミン(略称:PCA2TDQn)(構造式(200))を発光層に用いた発光デバイス4、および発光デバイス5について、デバイス構造とその動作特性について説明する。なお、発光デバイス4は、発光層においてTTA(三重項-三重項消滅)の構成を有する蛍光発光デバイスである。また、発光デバイス5は、熱活性化遅延蛍光を発することが可能な物質(TADF材料)から蛍光発光物質へ励起エネルギーが供与される構成を有する蛍光発光デバイスである。
【0377】
本実施例で作製した発光デバイス4および発光デバイス5のデバイス構造は、実施例4で示した
図14と同様の構造であるが、デバイス構造を構成する各層の具体的な構成については表3に示す通りである。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0378】
【0379】
【0380】
≪各発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性測定の結果として電圧-放射輝度特性を
図19、電圧-電流密度特性を
図20、電圧-電流特性を
図21にそれぞれ示す。
【0381】
また、12mA/cm2付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表4に示す。
【0382】
【0383】
また、各発光デバイスに12mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図22に示す。
図22に示す通り、各発光デバイスの発光スペクトルは、いずれも893nm付近にピークを有しており、発光層913に含まれる、PCA2TDQnの発光に由来していることが示唆される。
【実施例6】
【0384】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスとして、N,N-[(6,7-ジフェニル[1,2,5]チアジアゾロ[3,4-g]キノキサリン-4,9-ジイル)ジ-4,1-フェニレン]ビス(N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン)(略称:PCAP2TDQn)(構造式(300))を発光層に用いた発光デバイス6について、デバイス構造とその動作特性について説明する。なお、発光デバイス6は、発光層において熱活性化遅延蛍光を発することが可能な物質(TADF材料)から蛍光発光物質へ励起エネルギーが供与される構成を有する蛍光発光デバイスである。
【0385】
本実施例で作製した発光デバイス6のデバイス構造は、実施例4で示した
図14と同様の構造であるが、デバイス構造を構成する各層の具体的な構成については表5に示す通りである。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0386】
【0387】
【0388】
作製した発光デバイス6の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、発光デバイス6の動作特性測定の結果として電圧-放射輝度特性を
図23、電圧-電流密度特性を
図24、電圧-電流特性を
図25にそれぞれ示す。
【0389】
また、12mA/cm2付近における発光デバイス6の主な初期特性値を以下の表6に示す。
【0390】
【0391】
また、発光デバイス6に12mA/cm
2の電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、
図26に示す。
図26に示す通り、発光デバイス6の発光スペクトルは、820nm付近にピークを有しており、発光層913に含まれる、PCAP2TDQnの発光に由来していることが示唆される。
【実施例7】
【0392】
本実施例では、本発明の一態様である有機化合物、YGA2TDQn(100)、PCA2TDQn(200)、およびPCAP2TDQn(300)について、熱重量分析を行った。なお、分析に用いた測定装置は、TG-DTA(Thermogravimeter-Differential Thermal Analyzer)である。また、測定に用いた上記の有機化合物の構造式を以下に示す。
【0393】
【0394】
また、熱重量分析による測定結果を
図27に示す。なお、
図27において、横軸に温度、縦軸に重量減少率をそれぞれ示す。
【0395】
測定結果より、YGA2TDQnやPCA2TDQnの重量減少開始温度(測定開始時よりも重量が5%減少する温度)は、PCAP2TDQnに比べて100℃程度低かった。従って、YGA2TDQnやPCA2TDQnの方が、PCAP2TDQnに比べて昇華性が高く、低温での蒸着が可能であることが確認された。
【0396】
なお、このように温度による重量減少率の違いは、分子構造に起因するものと考えられる。すなわち、YGA2TDQnやPCA2TDQnは、中心骨格である、6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾール[3,4-g]キノキサリンが、アミノ基と直接結合する構造を有するのに対して、PCAP2TDQnは、フェニレン基を介してアミノ基と結合する構造を有する。
【0397】
従って、本発明の一態様である有機化合物のうち、中心骨格である、6,7-ジフェニル-[1,2,5]チアジアゾール[3,4-g]キノキサリンが、アミノ基と直接結合する構造を有する有機化合物は、低温での成膜を行う上では特に有用であると言える。
【符号の説明】
【0398】
101 第1の電極
102 第2の電極
103 EL層
103a、103b EL層
104 電荷発生層
111、111a、111b 正孔注入層
112、112a、112b 正孔輸送層
113、113a、113b 発光層
114、114a、114b 電子輸送層
115、115a、115b 電子注入層
200R、200G、200B 光学距離
201 第1の基板
202 トランジスタ(FET)
203R、203G、203B、203W 発光デバイス
204 EL層
205 第2の基板
206R、206G、206B カラーフィルタ
206R’、206G’、206B’ カラーフィルタ
207 第1の電極
208 第2の電極
209 黒色層(ブラックマトリックス)
210R、210G 導電層
301 第1の基板
302 画素部
303 駆動回路部(ソース線駆動回路)
304a、304b 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
305 シール材
306 第2の基板
307 引き回し配線
308 FPC
309 FET
310 FET
311 FET
312 FET
313 第1の電極
314 絶縁物
315 EL層
316 第2の電極
317 発光デバイス
318 空間
900 基板
901 第1の電極
902 EL層
903 第2の電極
911 正孔注入層
912 正孔輸送層
913 発光層
914 電子輸送層
915 電子注入層
4000 照明装置
4001 基板
4002 発光デバイス
4003 基板
4004 第1の電極
4005 EL層
4006 第2の電極
4007 電極
4008 電極
4009 補助配線
4010 絶縁層
4011 封止基板
4012 シール材
4013 乾燥剤
4015 拡散板
4200 照明装置
4201 基板
4202 発光デバイス
4204 第1の電極
4205 EL層
4206 第2の電極
4207 電極
4208 電極
4209 補助配線
4210 絶縁層
4211 封止基板
4212 シール材
4213 バリア膜
4214 平坦化膜
4215 拡散板
5101 ライト
5102 ホイール
5103 ドア
5104 表示部
5105 ハンドル
5106 シフトレバー
5107 座席シート
5108 インナーリアビューミラー
7000 筐体
7001 表示部
7002 第2表示部
7003 スピーカ
7004 LEDランプ
7005 操作キー
7006 接続端子
7007 センサ
7008 マイクロフォン
7009 スイッチ
7010 赤外線ポート
7011 記録媒体読込部
7014 アンテナ
7015 シャッターボタン
7016 受像部
7018 スタンド
7022、7023 操作用ボタン
7024 接続端子
7025 バンド、
7026 マイクロフォン
7029 センサ
7030 スピーカ
7052、7053、7054 情報
9310 携帯情報端末
9311 表示部
9312 表示領域
9313 ヒンジ
9315 筐体