(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】フライ食品用バッターミックス、フライ食品、およびフライ食品の作製方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20241122BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241122BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
(21)【出願番号】P 2020142460
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】506009453
【氏名又は名称】オルガノフードテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 健未
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200186(JP,A)
【文献】特開昭62-014756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/157
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂加工でん粉と
G4アミラーゼとを含
み、
フライ食品用バッターミックスにおける小麦粉の配合率が、30質量%以下であることを特徴とするフライ食品用バッターミックス。
【請求項2】
油脂加工でん粉を含むフライ食品用バッターミックスに用いられ、
G4アミラーゼを含む
バッターミックス用添加剤であって、
前記フライ食品用バッターミックスにおける小麦粉の配合率が、30質量%以下であることを特徴とするバッターミックス用添加剤。
【請求項3】
請求項
1に記載のフライ食品用バッターミックスと水とを含むことを特徴とするフライ食品用バッター液。
【請求項4】
請求項
1に記載のフライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液が具材に付着されて調理されたことを特徴とするフライ食品。
【請求項5】
請求項
1に記載のフライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液を具材に付着させる工程を含むことを特徴とするフライ食品の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ食品用バッターミックス、そのフライ食品用バッターミックスを用いたフライ食品、およびフライ食品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら、パン粉付けフライ、唐揚げ等のフライ食品の作製において、バッター液を調製するためにバッターミックスが用いられることがある。バッターミックスは、主に小麦粉や澱粉等を含み、バッター液は、バッターミックスと水とを混合して得られる。例えば、バッター液を畜肉類、魚介類、野菜類等の具材に付着させて、油ちょうすることにより、フライ食品が得られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、日本産小麦品種由来の小麦粉を45質量%以上含み、さらにプロテアーゼおよびアミラーゼを含む、揚げ物用バッターミックスが記載されている。
【0004】
豚カツ等用のバッターミックスにおいて、結着性の良好な油脂加工でん粉をベースにするのが一般的であるが、食感の硬さが問題となっている。油脂加工でん粉の代わりに小麦粉を使用すると食感は軟らかくなるが、具材との結着性が悪化してしまうという問題があった。
【0005】
したがって、具材との結着性が良好であり、フライ食品に用いた場合に歯切れ良くソフトな食感にすることができるバッター液を調製するためのバッターミックスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際特許出願公開第2018/070506号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、具材との結着性が良好であり、フライ食品に用いた場合に歯切れ良くソフトな食感にすることができるバッター液を調製するためのフライ食品用バッターミックス、そのフライ食品用バッターミックスを用いたフライ食品、およびフライ食品の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、油脂加工でん粉とG4アミラーゼとを含み、フライ食品用バッターミックスにおける小麦粉の配合率が、30質量%以下である、フライ食品用バッターミックスである。
【0011】
本発明は、油脂加工でん粉を含むフライ食品用バッターミックスに用いられ、G4アミラーゼを含むバッターミックス用添加剤であって、前記フライ食品用バッターミックスにおける小麦粉の配合率が、30質量%以下である、バッターミックス用添加剤である。
【0013】
本発明は、前記フライ食品用バッターミックスと水とを含む、フライ食品用バッター液である。
【0014】
本発明は、前記フライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液が具材に付着されて調理された、フライ食品である。
【0015】
本発明は、前記フライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液を具材に付着させる工程を含む、フライ食品の作製方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、具材との結着性が良好であり、フライ食品に用いた場合に歯切れ良くソフトな食感にすることができるバッター液を調製するためのフライ食品用バッターミックス、そのフライ食品用バッターミックスを用いたフライ食品、およびフライ食品の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<フライ食品用バッターミックスおよびバッターミックス用添加剤>
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスは、油脂加工でん粉とアミラーゼとを含む。
【0019】
本実施形態に係るバッターミックス用添加剤は、油脂加工でん粉を含むフライ食品用バッターミックスに用いられ、アミラーゼを含む。
【0020】
本発明者らは、油脂加工でん粉にアミラーゼを添加したバッターミックスによって、具材との結着性が良好であり、フライ食品に用いた場合に歯切れ良くソフトな食感にすることができるバッター液が得られることを見出した。
【0021】
アミラーゼは、デンプンやグリコーゲンを分解する酵素の一種であり、G4アミラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ等がある。
【0022】
G4アミラーゼは、エキソマルトテトラオヒドロラーゼとも呼ばれ、4個のグルコース単位ずつ切断する酵素である。α-アミラーゼは、1,4-α-D-グルカングルカノヒドロラーゼとも呼ばれる。β-アミラーゼは、1,4-α-D-グルカングルカノマルトヒドロラーゼとも呼ばれる。アミラーゼとしては、フライ食品に用いた場合の食感が良好である点から、G4アミラーゼを含むことが好ましい。
【0023】
G4アミラーゼは、G4アミラーゼを含む酵素の複合製剤として添加してもよい。G4アミラーゼを含む酵素の複合製剤としては、例えば、オルガノフードテック社製G4-4150(G4アミラーゼを0.8質量%含有、その他に賦形剤を含む)を用いることができる。α-アミラーゼは、α-アミラーゼを含む酵素の複合製剤として添加してもよい。α-アミラーゼを含む酵素の複合製剤としては、例えば、ダニスコ社製 GRINDAMYL MAX-LIFE E5、ナガセケムテックス社製 スピターゼCP-3、天野エンザイム社製 ビオザイムA、エイチビィアイ社製 液化酵素T等を用いることができる。β-アミラーゼは、マルトース生成アミラーゼを含む酵素の複合製剤として添加してもよい。マルトース生成アミラーゼを含む酵素の複合製剤としては、例えば、ダニスコ社製 GRINDAMYL MAX-LIFE100、ナガセケムテックス社製 β-アミラーゼ#1500S、天野エンザイム社製 β-アミラーゼF「アマノ」、エイチビィアイ社製 ハイマルトシンGLH等を用いることができる。
【0024】
油脂加工でん粉は、例えば加熱熟成処理(国際特許出願公開第2019/004308号参照)等の方法によりでん粉の粒子表面を油脂でコーティングしたものである。でん粉は、食品の製造に一般に用いられるものであればよく、例えば、小麦粉でん粉、えんどうでん粉、緑豆でん粉、馬鈴薯でん粉、タピオカでん粉、米でん粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘蔗でん粉、またはこれらの加工でん粉等が挙げられる。これらのうち、コストおよび効果等の点から、タピオカでん粉やタピオカ加工でん粉が好ましい。
【0025】
表面コーティングに用いられる油脂としては、例えば、アマニ油、エゴマ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、とうもろこし油、綿実油、ひまわり油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、またはこれらの分別油、脱臭油、加熱油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられ、エゴマ油等の三価以上の不飽和脂肪酸含量が多い食用油脂が好ましい。
【0026】
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスにおいて、アミラーゼの含有量は、例えば、油脂加工でん粉に対して0.00045~0.048質量%の範囲であり、0.0009~0.032質量%の範囲であることが好ましい。アミラーゼの含有量が油脂加工でん粉に対して0.00045質量%未満であると、十分な食感改良効果が得られない場合があり、0.048質量%を超えると、食感が劣化する場合がある。
【0027】
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスにおいて、バッターミックスにおける小麦粉の配合率が30質量%以下であることが好ましく、小麦粉を実質的に含まないこと、すなわちバッターミックスにおける小麦粉の配合率が10質量%以下であることがより好ましい。バッターミックスにおける小麦粉の配合率が30質量%を超えると、具材との結着性が大きく悪化する場合がある。
【0028】
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスは、油脂加工でん粉、アミラーゼの他に、小麦粉、でん粉、油脂加工でん粉以外の加工でん粉、大豆粉、コーンフラワー、米粉、粉末油脂、ショートニング、微粉パン粉、セルロース、食塩、糖類、香辛料、膨脹剤、乳化剤、調味料、香辛料抽出物、香料、増粘剤、アミラーゼ以外の酵素、pH調整剤等の他の成分を含んでもよい。
【0029】
他の成分の含有量は、特に制限はないが、例えば、バッターミックスにおける配合率が、0~30質量%の範囲である。
【0030】
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスは、例えば、室温(20℃±5℃)で、油脂加工でん粉と、アミラーゼと、必要に応じて他の成分とを混合することによって得られる。
【0031】
本実施形態に係るフライ食品用バッターミックスの形態は特に制限されず、例えば、顆粒状、粉末状等のいずれの形態であってもよい。
【0032】
<フライ食品用バッター液>
本実施形態に係るフライ食品用バッター液は、上記フライ食品用バッターミックスと水とを含む。
【0033】
水としては、特に制限はないが、水道水、純水、軟水、硬水等が挙げられる。
【0034】
本実施形態に係るフライ食品用バッター液は、上記フライ食品用バッターミックス、水の他に、卵、牛乳、油、乳化油脂、pH調整剤等の他の成分を含んでもよい。
【0035】
本実施形態に係るフライ食品用バッター液は、例えば、室温(20℃±5℃)で、上記フライ食品用バッターミックスに水を加え、または水に上記フライ食品用バッターミックスを加え、混合することによって得られる。上記フライ食品用バッターミックスと水とを混合する前、または混合した後に必要に応じて他の成分を混合してもよい。
【0036】
本実施形態に係るフライ食品用バッター液において、上記フライ食品用バッターミックスの含有量は、例えば、水に対して20~125質量%の範囲であり、33~67質量%の範囲であることが好ましい。フライ食品用バッターミックスの含有量が水に対して20質量%未満であると、衣と具材との結着性が著しく悪化する場合があり、125質量%を超えると、得られるフライ食品の食感が著しく悪くなる場合がある。
【0037】
他の成分の含有量は、特に制限はないが、例えば、バッターミックスにおける配合率が、0~30質量%の範囲である。
【0038】
<フライ食品およびフライ食品の作製方法>
本実施形態に係るフライ食品は、上記フライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液が具材に付着されて調理された食品である。
【0039】
本実施形態に係るフライ食品の作製方法は、上記フライ食品用バッターミックスと水とを含むバッター液を具材に付着させる工程を含む。さらに、バッター液が付着された具材を調理する工程を含む。
【0040】
フライ食品としては、上記バッター液を具材に付着させて、油ちょうしたり、焼いたりして調理して得られるものであればよく、特に制限はないが、天ぷら、パン粉付けフライ、唐揚げ、コロッケ、フライドチキン、ナゲット、カレーパン等の揚げものや、油ちょうせずにオーブン等で焼いた焼き豚カツ、焼きメンチカツ、焼きコロッケ等が挙げられる。
【0041】
フライ食品に用いられる具材としては、特に制限はないが、牛、豚、鶏、馬、羊、アヒル、七面鳥等の畜肉類、エビ、イカ、タコ、カニ、アジ、サケ、カキ、白身魚等の魚介類、ナス、玉ねぎ、にんじん、ピーマン、ごぼう、じゃがいも、アスパラ等の野菜類、チーズ等の乳製品、ハム、ソーセージ等の食肉加工品、コロッケのパテ等が挙げられる。具材には、上記バッター液を付着させる前に、必要に応じて醤油、香辛料等の調味料等で下味を付けてもよい。具材には、上記バッター液を付着させた後に、パン粉、霰、揚げ玉等を付着させてもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1,4、参考例2,3、比較例1,2>
[バッター液の作製]
表1に示す組成で各材料を混合し、室温(20℃±5℃)で、ハンドミキサーで1分30秒撹拌して、油脂加工でん粉系のバッター液を作製した。なお、用いたG4アミラーゼ製剤は、G4アミラーゼ(エキソマルトテトラオヒドロラーゼ)0.8質量%、α-アミラーゼ0.3質量%、キシラナーゼ0.1質量%、食品素材98.8質量%を含有する製剤である。α-アミラーゼ製剤は、α-アミラーゼ20質量%、キシラナーゼ1質量%、食品素材79質量%を含有する製剤である。マルトース生成アミラーゼ製剤は、マルトース生成アミラーゼ9質量%、食品素材91質量%を含有する製剤である。
【0044】
【0045】
[豚カツでの食感比較]
豚ロース100gをテンダライズし、バッター液(実施例1、参考例2,3、比較例1の作製15分後のバッター液、比較例2、実施例4の作製直後のバッター液を使用)、生パン粉を付け、-60℃で60分間冷凍した後、-20℃で一晩以上(15時間)冷凍した。冷凍庫から取り出して、175℃で10分間油ちょうを行った。常温(20℃)で2時間保管後に官能評価を行い(9名のパネラー)、以下の基準で評価した。官能評価の結果を表2に示す。
【0046】
(食感の評価基準)
5点:非常に歯切れが良く、非常にソフトな食感
4点:歯切れが良く、ソフトな食感
3点:やや歯切れが良く、ややソフトな食感
2点:歯切れが悪く、硬い食感
1点:非常に歯切れが悪く、非常に硬い食感
【0047】
[結着性評価]
以下の基準で、具材との結着性を評価した。結果を表2に示す。
【0048】
(具材との結着性の評価基準)
5点:具材との結着性が非常に良い
4点:具材との結着性が良い
3点:具材との結着性がやや良い
2点:具材との結着性が悪い
1点:具材との結着性が非常に悪い
【0049】
【0050】
比較例1のバッター液を用いた場合、実施例1,4、参考例2,3、および比較例2のバッター液を用いた場合に比べて、非常に歯切れが悪く、非常に硬い食感であった。また、比較例2のバッター液を用いた場合、比較例1および実施例1,4、参考例2,3のバッター液を用いた場合に比べて、具材との結着性が悪化した。
【0051】
このように、実施例のバッターミックスを用いることによって、得られるバッター液の具材との結着性が良好であり、フライ食品に用いた場合に歯切れ良くソフトな食感にすることができた。