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特許7591901ディジタル信号処理装置及びディジタル信号処理装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】ディジタル信号処理装置及びディジタル信号処理装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20241122BHJP
   G06F 12/00 20060101ALI20241122BHJP
   G06F 13/28 20060101ALI20241122BHJP
   G10K 15/12 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
G10H1/00 C
G06F12/00 560B
G06F13/28 310A
G10K15/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020172560
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064055
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲也
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-108122(JP,A)
【文献】特開2000-197194(JP,A)
【文献】特開平08-050480(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G06F 12/00
G06F 13/28
G10K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオデータを蓄積するための第1のバッファ・メモリと、
オーディオデータを蓄積するための第2のバッファ・メモリと、
バースト長のオーディオデータをバースト転送するDRAMと、
オーディオデータを、原音をオーディオデータに変換する際のサンプリング周期単位で遅延させる遅延手段と、
前記サンプリング周期でオーディオデータを1ワードずつ前記第1のバッファ・メモリに順に書き込み、前記第1のバッファ・メモリから前記DRAMに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御し、前記DRAMから前記第2のバッファ・メモリに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御し、前記サンプリング周期で前記第2のバッファ・メモリから前記遅延手段にオーディオデータを1ワードずつ順に出力する制御手段とを有し、
前記遅延手段が出力するオーディオデータの遅延時間は、前記DRAMの前記バースト長に依存する複数の前記サンプリング周期単位の遅延時間と、前記遅延手段の前記サンプリング周期単位の遅延時間との組み合わせにより決定されることを特徴とするディジタル信号処理装置。
【請求項2】
前記遅延手段は、
前記オーディオデータを蓄積するための複数のレジスタを含み、前記複数のレジスタに蓄積されているオーディオデータを前記サンプリング周期単位でシフトするシフト・レジスタと、
少なくとも前記複数のレジスタの出力データのうちのいずれかの出力データを選択するセレクタとを有することを特徴とする請求項1に記載のディジタル信号処理装置。
【請求項3】
前記セレクタは、前記第2のバッファ・メモリが出力するオーディオデータと、前記複数のレジスタの出力データのうちのいずれかを選択することを特徴とする請求項2に記載のディジタル信号処理装置。
【請求項4】
前記DRAMは、SDRAMであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のディジタル信号処理装置。
【請求項5】
オーディオデータを蓄積するための第1のバッファ・メモリと、
オーディオデータを蓄積するための第2のバッファ・メモリと、
バースト長のオーディオデータをバースト転送するDRAMと、
オーディオデータを、原音をオーディオデータに変換する際のサンプリング周期単位で遅延させる遅延手段とを有するディジタル信号処理装置の制御方法であって、
前記サンプリング周期でオーディオデータを1ワードずつ前記第1のバッファ・メモリに順に書き込むステップと、
前記第1のバッファ・メモリから前記DRAMに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御するステップと、
前記DRAMから前記第2のバッファ・メモリに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御するステップと、
前記サンプリング周期で前記第2のバッファ・メモリから前記遅延手段にオーディオデータを1ワードずつ順に出力するステップとを有し、
前記遅延手段が出力するオーディオデータの遅延時間は、前記DRAMの前記バースト長に依存する複数の前記サンプリング周期単位の遅延時間と、前記遅延手段の前記サンプリング周期単位の遅延時間との組み合わせにより決定されることを特徴とするディジタル信号処理装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル信号処理装置及びディジタル信号処理装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディジタル信号処理装置内で仮想シフトを行うためのアドレス回路が記載されている。アドレス回路は、インデックスレジスタに補助的なインデックスレジスタを組合せ、補助的なインデックスレジスタにインデックスレジスタの下位と同じ値を設定し、上位アドレスをインデックスレジスタより、下位アドレスを補助的なインデックスレジスタより取り出して、通常のインデックス修飾を行い、補助的なインデックスレジスタにインデックスレジスタ下位とポインタを加えた値を設定して仮想シフトのためのアドレス修飾を行う。
【0003】
特許文献2には、第1のカウンタと、第2のカウンタとを有するアドレス発生回路が記載されている。クリア手段は、第1のカウンタに対する計数制御信号により第2のカウンタの内容を選択的にゼロにクリアする。加算器は、第1のカウンタの出力と第2のカウンタの出力とを加算する。
【0004】
特許文献3には、波形信号処理部及びメモリアクセス部を有する音波形データ用ディジタル信号処理装置が記載されている。波形信号処理部は、音波形データにエフェクトを加えるための波形信号処理を、M個(Mは2以上の整数)の時分割波形信号処理によって行う。メモリアクセス部は、波形信号処理の過程において音波形データを遅延させるためにK個(KはM以下の2以上の整数)の時分割波形信号処理に対応するK個のバンクを有して外付けされるDRAMに対し、K個のバンクにK個の互いにずれたタイミングでアクセス開始を可能とするものであり、K個の時分割波形信号処理の1つから書き込み又は読み出しの要求を受けたとき、DRAMに対し、バンクにアクセス開始可能なタイミングで、対応するバンクに対する書き込み又は読み出しのための制御信号を出力することにより、音波形データの書き込み又は読み出しを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-2935号公報
【文献】特開昭62-57067号公報
【文献】特開2003-108122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3では、音波形データにエフェクトを加えるため、音波形データを遅延させる。しかし、DRAMのバースト転送を用いると、音波形データの遅延時間は、バースト長の倍数に限定されてしまう。複数の遅延信号がすべてバースト長の倍数である場合には、その周期性により強い相関が現れて、高品質のエフェクトを実現できない。
【0007】
本発明の目的は、サンプリング周期に対してバースト長の倍数の遅延時間と、サンプリング周期単位の遅延時間とを組み合わせた遅延時間を有するオーディオデータを生成することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のディジタル信号処理装置は、オーディオデータを蓄積するための第1のバッファ・メモリと、オーディオデータを蓄積するための第2のバッファ・メモリと、バースト長のオーディオデータをバースト転送するDRAMと、オーディオデータを、原音をオーディオデータに変換する際のサンプリング周期単位で遅延させる遅延手段と、前記サンプリング周期でオーディオデータを1ワードずつ前記第1のバッファ・メモリに順に書き込み、前記第1のバッファ・メモリから前記DRAMに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御し、前記DRAMから前記第2のバッファ・メモリに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御し、前記サンプリング周期で前記第2のバッファ・メモリから前記遅延手段にオーディオデータを1ワードずつ順に出力する制御手段とを有し、前記遅延手段が出力するオーディオデータの遅延時間は、前記DRAMの前記バースト長に依存する複数の前記サンプリング周期単位の遅延時間と、前記遅延手段の前記サンプリング周期単位の遅延時間との組み合わせにより決定される。
【0009】
本発明のディジタル信号処理装置の制御方法は、オーディオデータを蓄積するための第1のバッファ・メモリと、オーディオデータを蓄積するための第2のバッファ・メモリと、バースト長のオーディオデータをバースト転送するDRAMと、オーディオデータを、原音をオーディオデータに変換する際のサンプリング周期単位で遅延させる遅延手段とを有するディジタル信号処理装置の制御方法であって、前記サンプリング周期でオーディオデータを1ワードずつ前記第1のバッファ・メモリに順に書き込むステップと、前記第1のバッファ・メモリから前記DRAMに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御するステップと、前記DRAMから前記第2のバッファ・メモリに前記バースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御するステップと、前記サンプリング周期で前記第2のバッファ・メモリから前記遅延手段にオーディオデータを1ワードずつ順に出力するステップとを有し、前記遅延手段が出力するオーディオデータの遅延時間は、前記DRAMの前記バースト長に依存する複数の前記サンプリング周期単位の遅延時間と、前記遅延手段の前記サンプリング周期単位の遅延時間との組み合わせにより決定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サンプリング周期に対してバースト長の倍数の遅延時間と、サンプリング周期単位の遅延時間とを組みわせた遅延時間を有するオーディオデータを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態によるディジタル信号処理装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1のバッファ・メモリのアクセス方法を示す図である。
図3図3は、第2のバッファ・メモリのアクセス方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態によるディジタル信号処理装置100の構成例を示す図である。ディジタル信号処理装置100は、例えば、リバーブを実現するエフェクト装置である。原音が発生すると、原音の直接音と遅延音が合成されて、人間の耳に到達する。直接音は、原音が人間に耳に直接到達する音である。遅延音は、原音が様々な物体に反射することにより生成される遅延時間が異なる複数の遅延音である。ディジタル信号処理装置100は、原音のオーディオデータに対して、遅延時間が異なる複数の遅延信号を生成し、原音のオーディオデータと複数の遅延信号を合成することにより、リバーブを実現する。
【0013】
ディジタル信号処理装置100は、CPU101と、プログラムROM102と、ワークRAM103と、バス104と、アナログ/ディジタルコンバータ105と、DSP106と、第1及び第2のバッファ・メモリ107と、ディジタル/アナログコンバータ108と、バス109と、SDRAM110と、SDRAM111と、遅延部114とを有する。遅延部114は、シフト・レジスタ112と、セレクタ113とを有する。以下、ディジタル信号処理装置100の制御方法を説明する。
【0014】
第1及び第2のバッファ・メモリ107の各々は、バス109に対して、32ビット(1ワード)幅のオーディオデータを入出力可能である。第1及び第2のバッファ・メモリ107は、例えば、SRAM(静的ランダムアクセスメモリ)であり、オーディオデータを蓄積することができる。
【0015】
SDRAM110及び111は、同期式動的ランダムアクセスメモリであり、DRAM(動的ランダムアクセスメモリ)の一種である。SDRAM110及び111は、例えば、DDR3のSDRAMである。
【0016】
SDRAM110は、バス109に対して、16ビット(1ワード)のオーディオデータを入出力可能である。SDRAM110は、バス109に対して、16ビット(1ワード)のオーディオデータを入出力可能である。
【0017】
第1及び第2のバッファ・メモリ107の各々は、バス109を介して、SDRAM110及び111に対して、32ビット(1ワード)のオーディオデータを入出力することができる。SDRAM110が入出力する16ビットのオーディオデータは、第1又は第2のバッファ・メモリ107が入出力する32ビットのオーディオデータのうちの上位16ビットのオーディオデータである。SDRAM111が入出力する16ビットのオーディオデータは、第1又は第2のバッファ・メモリ107が入出力する32ビットのオーディオデータのうちの下位16ビットのオーディオデータである。
【0018】
SDRAM110及び111は、バス109を介して、第1及び第2のバッファ・メモリ107の各々に対して、2ワード以上であるバースト長のオーディオデータをバースト転送可能である。すなわち、SDRAM110及び111は、バス109を介して、第1及び第2のバッファ・メモリ107の各々に対して、1つのアドレス情報を基に、バースト長のワード数のオーディオデータを連続して高速に転送する。バースト長は、例えば、4ワード又は8ワードである。以下、バースト長が8ワードである場合を例に説明する。
【0019】
CPU101は、中央処理ユニットである。プログラムROM(リードオンリーメモリ)102は、プログラムを記憶する。ワークRAM(ランダムアクセスメモリ)103は、CPU101のワーク領域として機能する。CPU101は、プログラムROM102に記憶されているプログラムをワークRAM103に展開し、ワークRAM103に展開されたプログラムを実行することにより、DSP106を制御する。DSP106は、ディジタルシグナルプロセッサであり、制御部の一種である。
【0020】
アナログ/ディジタルコンバータ105は、マイク等から原音のアナログのオーディオ信号を入力し、サンプリング周期で、アナログのオーディオ信号をディジタルの1ワード(32ビット)のオーディオデータに変換する。オーディオデータは、楽音データ又は音声データである。
【0021】
DSP106は、サンプリング周期で、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換されたディジタルのオーディオデータを第1のバッファ・メモリ107に1ワードずつ順に書き込む。なお、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105の代わりに、楽音発生装置又はオーディオ受信装置等からディジタルのオーディオデータを入力してもよい。
【0022】
次に、DSP106は、第1のバッファ・メモリ107からSDRAM110及び111にバースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータをバースト転送するように制御する。DSP106は、SDRAM110及び111のライトポインタが示すアドレスに対して、バースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータを書き込む。
【0023】
次に、DSP106は、SDRAM110及び111から第2のバッファ・メモリ107にバースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータをバースト転送するように制御する。この際、DSP106は、SDRAM110及び111のリードポインタが示すアドレスから、バースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータを読み出し、バースト転送するように制御する。DSP106は、バースト転送により、バースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータを第2のバッファ・メモリ107に書き込む。
【0024】
SDRAM110及び111のライトポインタが示すアドレスとリードポインタが示すアドレスとの差が、原音に対する遅延信号の遅延時間に対応する。この遅延時間は、サンプリング周期に対して、バースト長の倍数(8の倍数)の遅延時間である。
【0025】
SDRAM110及び111の代わりに、SRAMを用いて、遅延信号を生成することも可能であるが、遅延時間が長い遅延信号を生成するためには、大容量のSRAMが必要になる。SRAMは、SDRAM110及び111に比べ、高価であるデメリットがある。そこで、本実施形態では、SDRAM110及び111を用いて、遅延信号を生成可能にすることにより、コストを低減することができる。また、SDRAM110及び111のバースト転送を用いることにより、リアルタイムで多数の遅延信号を高速に生成することができる。
【0026】
次に、DSP106は、サンプリング周期で、第2のバッファ・メモリ107に転送されたオーディオデータを1ワード単位で読み出し、その読み出したオーディオデータを遅延部114に出力する。
【0027】
遅延部114は、シフト・レジスタ112とセレクタ113とを有し、第2のバッファ・メモリ107から読み出されたオーディオデータをサンプリング周期単位で遅延させ、遅延させたオーディオデータを遅延信号としてDSP106に出力する。
【0028】
シフト・レジスタ112は、第2のバッファ・メモリ107から読み出されたオーディオデータを蓄積するための複数のレジスタを含み、複数のレジスタに蓄積されているオーディオデータをサンプリング周期単位でシフトする。セレクタ113は、少なくとも複数のレジスタの出力データのうちのいずれかの出力データを選択し、選択した出力データを原音に対する遅延信号としてDSP106に出力する。セレクタ113の選択は、原音に対する遅延信号の遅延時間に対応する。
【0029】
次に、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された原音のオーディオデータと、上記の遅延信号とを合成し、合成後のオーディオデータをディジタル/アナログコンバータ108に出力する。なお、DSP106が必ずしも合成しなくてもよく、DSP106の外部の装置が合成してもよい。
【0030】
ディジタル/アナログコンバータ108は、サンプリング周期で、ディジタルの1ワード(32ビット)のオーディオデータをアナログのオーディオ信号に変換し、アナログのオーディオ信号をオーディオシステムに出力する。オーディオシステムは、アンプ及びスピーカを有し、アンプによりオーディオ信号を増幅し、増幅したオーディオ信号をスピーカにより発音する。これにより、原音に対してリバーブの効果が付与された音が発音される。
【0031】
図2は、第1のバッファ・メモリ107のアクセス方法を示す図である。第1のバッファ・メモリ107は、8ワードのオーディオデータを蓄積可能なリングバッファである。サンプリング周期T0~T8は、それぞれ、アナログ/ディジタルコンバータ105のサンプリング周期である。
【0032】
サンプリング周期T0では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(0)を、第1のバッファ・メモリ107の第1のアドレスに書き込む。
【0033】
サンプリング周期T1は、サンプリング周期T0に対して、1サンプリング周期後のサンプリング周期である。サンプリング周期T1では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(1)を、第1のバッファ・メモリ107の第2のアドレスに書き込む。
【0034】
サンプリング周期T2は、サンプリング周期T0に対して、2サンプリング周期後のサンプリング周期である。サンプリング周期T2では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(2)を、第1のバッファ・メモリ107の第3のアドレスに書き込む。
【0035】
同様に、サンプリング周期T3~T6では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(3)~W(6)を、第1のバッファ・メモリ107の第4~第7のアドレスにそれぞれ書き込む。
【0036】
サンプリング周期T7は、サンプリング周期T0に対して、7サンプリング周期後のサンプリング周期である。サンプリング周期T7では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(7)を、第1のバッファ・メモリ107の第8のアドレスに書き込む。
【0037】
DSP106は、サンプリング周期T7で、第1のバッファ・メモリ107に蓄積されている8ワードのオーディオデータW(0)~W(7)をSDRAM110及び111にバースト転送し、8ワードのオーディオデータW(0)~W(7)をSDRAM110及び111に書き込む。
【0038】
サンプリング周期T8(T0)は、サンプリング周期T0に対して、8サンプリング周期後のサンプリング周期である。サンプリング周期T8(T0)では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(8)を、第1のバッファ・メモリ107の第1のアドレスに書き込む(上書きする)。
【0039】
同様に、サンプリング周期T9~T15では、DSP106は、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された1ワードのオーディオデータW(9)~W(15)を、第1のバッファ・メモリ107の第2~第8のアドレスにそれぞれ書き込む(上書きする)。
【0040】
その後、DSP106は、サンプリング周期T15で、第1のバッファ・メモリ107に蓄積されている8ワードのオーディオデータW(8)~W(15)をSDRAM110及び111にバースト転送し、8ワードのオーディオデータW(8)~W(15)をSDRAM110及び111に書き込む。
【0041】
以下、同様に、DSP106は、8サンプリング周期毎に、第1のバッファ・メモリ107に蓄積されているオーディオデータをSDRAM110及び111に8ワード単位でバースト転送する。
【0042】
以上のように、DSP106は、サンプリング周期T0~T8で、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換されたオーディオデータを1ワードずつ第1のバッファ・メモリ107に順に書き込み、8サンプリング周期で、第1のバッファ・メモリ107からSDRAM110及び111にバースト長のオーディオデータをバースト転送するように制御する。
【0043】
図3は、第2のバッファ・メモリ107のアクセス方法を示す図である。第2のバッファ・メモリ107は、8ワードのオーディオデータを蓄積可能なリングバッファである。サンプリング周期T0~T3は、それぞれ、アナログ/ディジタルコンバータ105のサンプリング周期である。
【0044】
遅延部114は、シフト・レジスタ112と、セレクタ113とを有する。シフト・レジスタ112は、オーディオデータを蓄積するための7個のレジスタ112a~112gを含み、7個のレジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをサンプリング周期単位でシフトする。セレクタ113は、第2のバッファ・メモリ107が出力するオーディオデータと、7個のレジスタ112a~112gの出力データのうちのいずれかを選択する。
【0045】
サンプリング周期T0では、DSP106は、SDRAM110及び111に記憶されているバースト長のワード数(8ワード)のオーディオデータW(0)~W(7)を、第2のバッファ・メモリ107にバースト転送する。
【0046】
図2では、DSP106は、第1のバッファ・メモリ107に蓄積されているオーディオデータをSDRAM110及び111のライトポインタが示すアドレスに書き込む。図3のサンプリング周期T0では、DSP106は、オーディオデータをSDRAM110及び111のリードポインタが示すアドレスから読み出す。SDRAM110及び111のライトポインタが示すアドレスとリードポインタが示すアドレスとの差が、原音に対する遅延信号の遅延時間に対応する。この遅延時間は、サンプリング周期の8の倍数(バースト長の数の倍数)である。
【0047】
サンプリング周期T0では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107の第1のアドレスに蓄積されている1ワードのオーディオデータW(0)を読み出し、読み出したオーディオデータW(0)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。シフト・レジスタ112のレジスタ112gには、オーディオデータW(0)が蓄積される。
【0048】
サンプリング周期T1では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107の第2のアドレスに蓄積されている1ワードのオーディオデータW(1)を読み出し、読み出したオーディオデータW(1)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。シフト・レジスタ112は、レジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをシフトする。レジスタ112fには、オーディオデータW(0)が蓄積される。レジスタ112gには、オーディオデータW(1)が蓄積される。
【0049】
サンプリング周期T2では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107の第3のアドレスに蓄積されている1ワードのオーディオデータW(2)を読み出し、読み出したオーディオデータW(2)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。シフト・レジスタ112は、レジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをシフトする。レジスタ112eには、オーディオデータW(0)が蓄積される。レジスタ112fには、オーディオデータW(1)が蓄積される。レジスタ112gには、オーディオデータW(2)が蓄積される。
【0050】
サンプリング周期T3では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107の第4のアドレスに蓄積されている1ワードのオーディオデータW(3)を読み出し、読み出したオーディオデータW(3)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。シフト・レジスタ112は、レジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをシフトする。レジスタ112dには、オーディオデータW(0)が蓄積される。レジスタ112eには、オーディオデータW(1)が蓄積される。レジスタ112fには、オーディオデータW(2)が蓄積される。レジスタ112gには、オーディオデータW(3)が蓄積される。
【0051】
同様に、サンプリング周期T4~T6では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107に蓄積されているオーディオデータW(4)~W(6)を読み出し、読み出したオーディオデータW(4)~W(6)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。
【0052】
サンプリング周期T7では、DSP106は、第2のバッファ・メモリ107の第8のアドレスに蓄積されている1ワードのオーディオデータW(7)を読み出し、読み出したオーディオデータW(7)をシフト・レジスタ112及びセレクタ113に出力する。シフト・レジスタ112は、レジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをシフトする。レジスタ112a~112gには、それぞれ、オーディオデータW(0)~W(7)が蓄積される。
【0053】
その後、ディジタル信号処理装置100は、上記のサンプリング周期T0~T7の処理を繰り返す。DSP106は、8サンプリング周期で、SDRAM110及び111から第2のバッファ・メモリ107にバースト長(8ワード)のオーディオデータをバースト転送するように制御し、サンプリング周期で、第2のバッファ・メモリ107から遅延部114にオーディオデータを1ワードずつ順に遅延部114に出力する。
【0054】
シフト・レジスタ112は、7個のレジスタ112a~112gに蓄積されているオーディオデータをサンプリング周期単位でシフトする。7個のレジスタ112a~112bは、それぞれ、自己が蓄積しているオーディオデータをセレクタ113に出力する。
【0055】
セレクタ113は、遅延時間の設定に応じて、第2のバッファ・メモリ107から読み出されるオーディオデータと、7個のレジスタ112a~112gの出力データのうちのいずれかを選択し、原音に対する遅延信号をDSP106に出力する。
【0056】
セレクタ113は、第2のバッファ・メモリ107から読み出されるオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、サンプリング周期の8の倍数の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0057】
また、セレクタ113は、レジスタ112gが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×1の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0058】
また、セレクタ113は、レジスタ112fが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×2の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0059】
また、セレクタ113は、レジスタ112eが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×3の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0060】
また、セレクタ113は、レジスタ112dが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×4の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0061】
また、セレクタ113は、レジスタ112cが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×5の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0062】
また、セレクタ113は、レジスタ112bが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×6の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0063】
また、セレクタ113は、レジスタ112aが出力するオーディオデータを選択し、その選択したオーディオデータをDSP106に出力すると、(サンプリング周期の8の倍数)+(サンプリング周期)×7の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。
【0064】
以上のように、遅延部114は、サンプリング周期の8の倍数(バースト長の倍数)の遅延時間を有する遅延信号だけでなく、サンプリング周期単位の遅延時間を有する遅延信号を生成することができる。遅延部114が出力するオーディオデータの遅延時間は、SDRAM110及び111のバースト長に依存する複数サンプリング周期単位の遅延時間と、遅延部114のサンプリング周期単位の遅延時間との組み合わせにより決定される。
【0065】
なお、遅延部114は、シフト・レジスタ112及びセレクタ113を用いる場合に限定されない。例えば、遅延部114は、SRAMのランダムアクセスを用いて、オーディオデータをサンプリング周期単位で遅延させてもよい。
【0066】
DSP106は、セレクタ113から遅延信号を入力し、アナログ/ディジタルコンバータ105により変換された原音のオーディオデータと遅延信号とを合成する。遅延部114は、時分割処理により、遅延時間が異なる複数の遅延信号を生成し、DSP106は、原音のオーディオデータと複数の遅延信号を合成することにより、高品質のリバーブを実現することができる。
【0067】
複数の遅延信号がすべてサンプリング周期のバースト長の倍数である場合には、その周期性により強い相関が現れて、高品質のリバーブを実現できない。本実施形態によれば、遅延部114は、サンプリング周期のバースト長の倍数の遅延時間を有する遅延信号だけでなく、サンプリング周期単位の遅延時間を有する遅延信号を生成することができるので、高品質のリバーブを実現することができる。
【0068】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 ディジタル信号処理装置
101 CPU
102 プログラムROM
103 ワークRAM
104 バス
105 アナログ/ディジタルコンバータ
106 DSP
107 バッファ・メモリ
108 ディジタル/アナログコンバータ
109 バス
110,111 SDRAM
112 シフト・レジスタ
113 セレクタ
114 遅延部
図1
図2
図3