(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
B60P 3/22 20060101AFI20241122BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
B60R13/00
(21)【出願番号】P 2020183637
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山代 幸広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政貴
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-341585(JP,A)
【文献】特開2019-166922(JP,A)
【文献】特開2015-214195(JP,A)
【文献】特開2017-159714(JP,A)
【文献】特開平10-333582(JP,A)
【文献】特開2019-038522(JP,A)
【文献】実開昭61-128684(JP,U)
【文献】米国特許第04178710(US,A)
【文献】特開昭58-194639(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0126278(KR,A)
【文献】国際公開第2019/021693(WO,A1)
【文献】実開昭49-067236(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/22
B60R 13/00
B62D 33/06
G09F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、
そのキャビンの前面における中心部よりも下部に設けられ、前記キャビンの前方における物体を検出するセンサと、
前記キャビンの前面に設けられた内側標示板およびその内側標示板よりも前記キャビンの前方側に配置された外側標示板が重ね合わされ、前記内側標示板および前記外側標示板の上端同士がヒンジによって回動可能に接続された標示器と、
を備えた運搬車両であって、
前記標示器は、前記外側標示板を前記ヒンジを中心に上方へ回動させて開いた開状態と下方へ回動させて閉じた閉状態とのそれぞれにおいて前記センサの検出範囲よりも上方となるように設けられ、
前記内側標示板には、その端部の一部を除去した切欠部が設けられ、
前記外側標示板は、前記閉状態の前記外側標示板の少なくとも一部が前記切欠部と対応する位置に存在するように形成され、
前記外側標示板における、前記内側標示板の切欠部と対応する位置には、前記外側標示板を前記キャビンに前記開状態で固定する開固定具が設けられることを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記外側標示板は、前記開状態の前記外側標示板が前記キャビンにもたれかかった状態で前記キャビンに支持されることを特徴とする請求項
1記載の運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両に関し、特に、標示器がセンサによって誤検知されるのを抑制できると共に、標示器の表示による周囲への注意喚起をより効果的に行うことができる運搬車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるバルクローリ1(運搬車両)の運転台2(キャビン)の前面には、「高圧ガス」等と記された標示器が設けられている。その標示器は、運転台2の前面に設けられた内側標示板とその内側標示板よりも運転台2の前方側に配置した外側標示板とを重ね合わせ、これらの下端同士をヒンジで回動可能に接続される。これにより、外側標示板を下方へ回動させて開いた開状態と上方へ回動させて閉じた閉状態とで異なる表示ができるので、バルクローリ1の積載物や作業状態を臨機応変に周囲の作業員や通行人に表示できる。
【0003】
運搬車両のキャビン前面における中心部よりも下部には、キャビンの前方における障害物を検出するためのセンサが設けられることがある。かかるセンサによって障害物が検知された場合は、衝突防止のため車両の発進が抑制される。センサがキャビン前面における中心部よりも下部に設けられることで、キャビンの前方における高さの低い障害物が精度良く検出され、衝突防止に繋げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-159714号公報(例えば、
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外側標示板を閉状態にした標示器をセンサの直上に設けた場合、外側標示板を開状態にすると、外側標示板の一部がセンサの検出範囲内となり、センサは外側標示板を障害物と誤検出してしまう虞がある。一方で、標示器をセンサよりも下方に設けた場合は、外側標示板を開状態にしても標示器はセンサの検出範囲外とできるが、標示器がキャビンの低い位置に設けられることになるので、標示器が周囲から目立たなくなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、標示器がセンサによって誤検知されるのを抑制できると共に、標示器の表示による周囲への注意喚起をより効果的に行うことができる運搬車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の運搬車両は、キャビンと、そのキャビンの前面における中心部よりも下部に設けられ、前記キャビンの前方における物体を検出するセンサと、前記キャビンの前面に設けられた内側標示板およびその内側標示板よりも前記キャビンの前方側に配置された外側標示板が重ね合わされ、前記内側標示板および前記外側標示板の上端同士がヒンジによって回動可能に接続された標示器と、を備えたものであり、前記標示器は、前記外側標示板を前記ヒンジを中心に上方へ回動させて開いた開状態と下方へ回動させて閉じた閉状態とのそれぞれにおいて前記センサの検出範囲よりも上方となるように設けられ、前記内側標示板には、その端部の一部を除去した切欠部が設けられ、前記外側標示板は、前記閉状態の前記外側標示板の少なくとも一部が前記切欠部と対応する位置に存在するように形成され、前記外側標示板における、前記内側標示板の切欠部と対応する位置には、前記外側標示板を前記キャビンに前記開状態で固定する開固定具が設けられる。
【0008】
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の運搬車両によれば、標示器は、外側標示板を上方へ回動させて開いた開状態と下方へ回動させて閉じた閉状態とにおいて、センサの検出範囲よりも上方となるように設けられる。これにより、標示器をセンサの検出範囲外とできるので、標示器がセンサによって障害物と誤検出されるのを抑制できるという効果がある。また、標示器をセンサの検出範囲よりも上方の、車体の上部に配置できる。これにより、標示器を周囲から目立たせることができるので、標示器による注意喚起を効果的に行うことができるという効果もある。
また、内側標示板には、その端部の一部を除去した切欠部が設けられ、外側標示板は、閉状態の外側標示板の少なくとも一部が切欠部と対応する位置に存在するように形成される。作業員は、閉状態の外側標示板において、内側標示板の切欠部と対応する位置に存在する外側標示板の一部を切欠部側から押し上げることで、外側標示板を上方へ容易に回動させ、外側標示板を開状態にできるという効果もある。
更に外側標示板における、内側標示板の切欠部と対応する位置には、外側標示板をキャビンに開状態で固定する開固定具が設けられるので、運搬車両の作業中の振動等によって開状態の外側標示板が不意に閉状態となるのを抑制できる。更にかかる開固定具が内側標示板の切欠部と対応する位置に設けられるので、外側標示板を閉状態とした際に、開固定具と内側標示板との干渉を抑制できる。これにより、開固定具によって内側標示板4bが損傷するのを防止できるという効果もある。
【0010】
【0011】
請求項2記載の運搬車両によれば、請求項1記載の運搬車両の奏する効果に加え、次の効果を奏する。外側標示板は、開状態の外側標示板が車体にもたれかかった状態で車体に支持される。これにより、作業員が手等で支持することなく外側標示板の開状態を維持できるという効果がある。
【0012】
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、外側標示板を閉状態とした場合のタンクローリの正面図であり、(b)は、外側標示板を開状態とした場合のタンクローリの正面図である。
【
図2】(a)は、
図1(a)の矢印IIa方向におけるタンクローリの部分側面図であり、(b)は、
図1(b)の矢印IIb方向におけるタンクローリの部分側面図である。
【
図3】(a)は、外側標示板を閉状態とした場合の標示器を表す図であり、(b)は、外側標示板を開状態とした場合の標示器を表す図である。
【
図4】(a)は、第2実施形態における外側標示板を閉状態とした場合のタンクローリの正面図であり、(b)は、第2実施形態における外側標示板を開状態とした場合のタンクローリの正面図である。
【
図5】(a)は、第2実施形態における外側標示板を閉状態とした場合の標示器を表す図であり、(b)は、第2実施形態における外側標示板を開状態とした場合の標示器を表す図である。
【
図6】(a)は、変形例における内側標示板の先端における右側に切欠部を設けた標示器を表す図であり、(b)は、別の変形例における内側標示板の先端における左右に切欠部を設けた標示器を表す図であり、(c)は、更に別の変形例における内側標示板の左端に切欠部を設けた標示器を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1(a)は、外側標示板4aを閉状態とした場合のタンクローリ1の正面図であり、
図1(b)は、外側標示板4aを開状態とした場合のタンクローリ1の正面図であり、
図2(a)は、
図1(a)の矢印IIa方向におけるタンクローリ1の部分側面図であり、
図2(b)は、
図1(b)の矢印IIb方向におけるタンクローリ1の部分側面図である。
図1,2において、矢印U-Dはタンクローリ1の上下方向を、矢印F-Bは、タンクローリ1の前後方向を、矢印L-Rはタンクローリ1の左右方向を、それぞれ示しており、
図3,4も同様とする。
【0016】
タンクローリ1は、タンク(図示せず)に液体等の積載物を積載して運搬する車両(運搬車両)である。タンクローリ1のキャビン2の前面には、ソナー3と標示器4とが設けられる。ソナー3は、超音波を用いてキャビン2の前方の物体を検出するセンサであり、キャビン2の前面における中心部よりも下部に左右2つ並べて設けられる。ソナー3によってキャビン2の前方に物体が存在すると検出された場合は、タンクローリ1の発進が抑制される。これにより、キャビン2の前方の物体との接触や衝突を回避することができる。また、ソナー3がキャビン2の前面における中心部よりも下部に設けられることで、キャビン2前方の路面上に置かれた高さの低い物体も確実に検出できる。
【0017】
標示器4は、タンクローリ1の積載物や作業状況を周囲に注意喚起するための表示(標示)用の器具であり、ソナー3よりも上方に設けられる。なお、標示器4の具体的な配置は後述する。標示器4は、長方形状の板状の部材である外側標示板4a及び内側標示板4bを、ヒンジ4cで回動可能に接続して構成される。具体的には、
図2(a)に示す通り、キャビン2の前面に設けられた内側標示板4bと、その内側標示板4bよりもキャビン2の前面側に配置された外側標示板4aとを重ね合わせ、これらの上端同士をヒンジ4cで接続して構成される。これによって、外側標示板4aはヒンジ4cを中心として上下方向に回動可能に構成される。
【0018】
本実施形態では、外側標示板4aを下方に回動させ、内側標示板4bに重ね合わせて閉じた状態を「閉状態」といい、外側標示板4aを上方に回動させて開きキャビン2に支持された状態を「開状態」という。また、外側標示板4a及び内側標示板4bにおけるヒンジ4c側の端部を「基端」といい、外側標示板4a及び内側標示板4bにおけるヒンジ4cの対向側の端部を「先端」という。
【0019】
標示器4は、
図1(a),(b)に示す通り、外側標示板4aを閉状態とした場合(
図1(a))と、外側標示板4aを開状態とした場合(
図1(b))とで、それぞれ「高圧ガス」と「充てん作業中 火気厳禁」との異なる文言が表示される。これにより、タンクローリ1の積載物や作業状態を臨機応変に周囲の作業員や通行人に提示できる。
【0020】
次に、
図2を参照して標示器4のキャビン2における配置を説明する。標示器4は、上記したソナー3よりも上方であって、外側標示板4aを閉状態とした場合(
図2(a))と、外側標示板4aを開状態とした場合(
図2(b))とのそれぞれで、標示器4の全体がソナー3の検出範囲の上端である上端Uaよりも上方となるように配置される。これにより、標示器4がソナー3の検出範囲外となるので、標示器4をソナー3が障害物と誤検出するのを抑制できる。また、標示器4は、ソナー3よりも上方、即ちキャビン2において高い位置に設けることができるので、標示器4の表示による周囲への注意喚起をより効果的に行うことができる。
【0021】
また、
図2(b)に示す通り、開状態の外側標示板4aは、キャビン2にもたれかかった状態で支持される。即ち開状態の外側標示板4aと内側標示板4bとの開き方向側(即ち矢印F方向側)のなす角θが、190度となるように構成される。更に開状態の外側標示板4aはキャビン2に支持された場合に、外側標示板4aの重心位置がヒンジ4cよりもキャビン2の後方側(即ち矢印B方向側)となるように構成される。これにより、作業員が手等で支持することなく、外側標示板4aの開状態を維持することできる。
【0022】
更に、開状態の外側標示板4aと内側標示板4bとの開き方向側のなす角θが190度となるように構成されることで、開状態の外側標示板4aと内側標示板4bとによる面を略平坦とできる。これにより、かかる面による表示(文言)を周囲から視認しやすいものとできる。なお、なす角θは、190度に限られず、190度以上でも190度以下でも良い。
【0023】
また標示器4は、キャビン2の前面における中心部に設けられる。これにより、タンクローリ1の前方に位置する作業員や通行人にとって、標示器4を視認しやすいものとできる。ここで、キャビン2の前面は、走行時の空気抵抗を低減させるため、キャビン2の中心部における平坦な面とキャビン2の幅方向側の湾曲した面とで形成されている(図示せず)。標示器4がこのうちの平坦なキャビン2の前面の中心部に設けられることで、標示器4をキャビン2に容易かつ強固に固定することができる。
【0024】
次に
図3を参照して、標示器4の構成を説明する。
図3(a)は、外側標示板4aを閉状態とした場合の標示器4を表す図であり、
図3(b)は、外側標示板4aを開状態とした場合の標示器4を表す図である。
図3(a)に示す通り、閉状態とした外側標示板4aにおけるキャビン2の前面側の面の先端の中央部には磁石による開固定具4dが設けられる。
【0025】
以下「閉状態とした外側標示板4aにおけるキャビン2の前面側の面」(即ち
図3(a)に表される外側標示板4aの面)のことを「外側標示板4aの表面」といい、「閉状態とした外側標示板4aにおけるキャビン2側の面」のことを「外側標示板4aの裏面」という。
【0026】
外側標示板4aの表面は、外側標示板4aを開状態とした場合にキャビン2に面する面であり、外側標示板4aの表面に設けられた開固定具4dによって、開状態の外側標示板4aがキャビン2に固定される。これにより、タンクローリ1の作業中の振動等によって、開状態の外側標示板4aが不意に閉状態となる事態を抑制できる。
【0027】
また、開固定具4dが設けられる外側標示板4aの表面の先端における中央部は、開状態の外側標示板4aにおいて(
図2(b)参照)、キャビン2に支持(当接)される位置でもある。このような位置に開固定具4dを設けることで、開固定具4dを開状態の外側標示板4aとキャビン2との間に直接配置させることができる。これにより、開固定具4dによる外側標示板4aとキャビン2との固定をより強固なものにできる。
【0028】
更に開固定具4dは、外側標示板4aの先端、即ち回転中心であるヒンジ4cが設けられる外側標示板4aの基端の対向側に設けられる。これにより、ヒンジ4cに生じるモーメントは最も大きくなる。よって、開状態の外側標示板4aが、タンクローリ1の積載物の払い出し作業による振動等で閉状態となるのを抑制できる。一方で、タンクローリ1の積載物の払い出し作業後に、外側標示板4aと内側標示板4bとの開き方向側のなす角θ(
図2(b)参照)を180度未満となるまで外側標示板4aを回動させることで、外側標示板4aの自重と、ヒンジ4cに生じるモーメントと、後述の第1閉固定具4f(
図3(b)参照)とにより、外側標示板4aを閉状態にすることができる。
【0029】
また、
図2(b)に示す通り、開状態における外側標示板4aの先端がヒンジ4cよりもキャビン2の後方側に位置するので、外側標示板4aの先端に設けられる開固定具4dもヒンジ4cよりもキャビン2の後方側に位置する。これにより、開固定具4dを設けた外側標示板4aにおいても、開状態ではその重心位置をヒンジ4cよりもキャビン2の後方側とできるので、外側標示板4aの開状態を好適に維持することできる。
【0030】
また
図3(b)に示す通り、内側標示板4bの先端の中央部には、その一部を除去した切欠部4eが設けられる。一方で外側標示板4aの表面において内側標示板4bの切欠部4eと対応する位置(即ち正面視(矢印F-B方向視)において切欠部4eと重なる位置)は、切欠部が設けられない。
【0031】
従って作業員は、閉状態とした外側標示板4aの裏面に、内側標示板4bの切欠部4eのキャビン2側から接触可能となる。これにより作業員が、内側標示板4bの切欠部4eから外側標示板4aの裏面を押し上げることで、外側標示板4aが上方に回動されるので、外側標示板4aを容易に開状態とすることができる。
【0032】
また、外側標示板4aの裏面には、開固定具4dを外側標示板4aに固定するための止め具4d1が設けられる。切欠部4eは、内側標示板4bにおいて、外側標示板4aを閉状態とした際の開固定具4d及び止め具4d1に対応する位置(即ち正面視において切欠部4eと重なる位置)に存在するように形成される。これにより、外側標示板4aを閉状態とした際に、止め具4d1と内側標示板4bとが干渉することがないので、止め具4d1によって内側標示板4bが損傷するのを防止できる。
【0033】
外側標示板4aと内側標示板4bとには、外側標示板4aを閉状態で固定するための第1閉固定具4fと、第2閉固定具4gとが設けられる。第1閉固定具4fは、受け部4f1と磁石4f2とで構成される所謂マグネットキャッチであり、受け部4f1と磁石4f2とが磁気によって吸着されることで外側標示板4aを閉状態で固定するものである。
【0034】
第2閉固定具4gは、爪部4g1と連結部4g2とで構成される所謂キャッチクリップであり、爪部4g1と連結部4g2とが連結されることで外側標示板4aを閉状態で固定するものである。
【0035】
外側標示板4aを開状態から閉状態とした場合、第1閉固定具4fと第2閉固定具4gとの2種類の固定具によって、外側標示板4aの閉状態が固定される。これにより、タンクローリ1の作業中の振動等によって、閉状態の外側標示板4aが不意に開状態となるのを抑制できる。
【0036】
また、第1閉固定具4fを磁気による吸着方式とすることで、第2閉固定具4gの爪部4g1と連結部4g2との連結を容易に行うことができる。具体的には、第1閉固定具4fによって外側標示板4aの端部が内側標示板4bの端部に引き寄せられるが、この引き寄せられる方向が第2閉固定具4gにおいて爪部4g1と連結部4g2とを連結させる方向と一致するように構成されている。即ち上記した外側標示板4aの自重と、ヒンジ4cに生じるモーメントと、第1閉固定具4fの磁気による吸着とによって、爪部4g1と連結部4g2とを連結させることができる。よって、作業員による外側標示板4aの閉状態の固定を容易にすることができる。
【0037】
次に、
図4,5を参照して本発明の第2実施形態を説明する。上記した第1実施形態では、内側標示板4bと外側標示板4aとの上端同士を接続した「上開き」の標示器4をタンクローリ1に設置した。これに対して第2実施形態では、内側標示板14bの左端および右端のそれぞれに、外側標示板14a1及び外側標示板14a2を接続した「観音開き」(横開き)の標示器14をタンクローリ11に設置する。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
図4(a)は、第2実施形態における外側標示板14aを閉状態とした場合のタンクローリ11の正面図であり、
図4(b)は、第2実施形態における外側標示板14aを開状態とした場合のタンクローリ11の正面図である。
図4(a),(b)に示す通り、第2実施形態の標示器14は、キャビン2の前面における中心部であって、ソナー3の検出範囲の上端Ua(
図2参照)よりも上方に設けられる。
【0039】
標示器14は、キャビン2の前面に設けられた内側標示板14bと、その内側標示板4bよりもキャビン2の前面側に配置された外側標示板14a1,14a2とから構成される。具体的に、外側標示板14a1と外側標示板14a2とを内側標示板14bに重ね合わせ、内側標示板14bと外側標示板14a1との左端同士をヒンジ14c1で接続し、内側標示板14bと外側標示板14a2との右端同士をヒンジ14c2で接続することで構成される。また、外側標示板14a1,14a2のそれぞれの幅(即ち矢印L-R方向の長さ)は、内側標示板14bの幅の略半分に設定される。
【0040】
これによって、外側標示板14a1はヒンジ14c1を中心として、また外側標示板14a2はヒンジ14c2を中心として、それぞれ左右方向に回動可能に構成されることで、標示器14は左右両側の外側標示板14a1,14a2を左右方向に開閉可能な「観音開き」(横開き)に構成される。
図4(a)に示す外側標示板14a1を右方に、外側標示板14a2を左方にそれぞれ回動させて外側標示板14a1,14a2を閉じた状態(閉状態)と、
図4(b)に示す外側標示板14a1を左方に、外側標示板14a2を右方にそれぞれ回動させて外側標示板14a1,14a2を開いた状態(開状態)とで、「高圧ガス」と「充てん作業中 火気厳禁」との異なる文言が表示される。
【0041】
次に
図5を参照して、標示器14の構成を説明する。
図5(a)は、第2実施形態における外側標示板14a1,14a2を閉状態とした場合の標示器14を表す図であり、
図5(b)は、第2実施形態における外側標示板14a1,14a2を開状態とした場合の標示器14を表す図である。
図5(a)に示す通り、閉状態の外側標示板14a1,14a2の表面における車両中心側の先端には、それぞれ開固定具14dが設けられる。開固定具14dは磁石で構成され、開状態の外側標示板14a1,14a2が、それぞれ開固定具14dによってキャビン2に固定される。
【0042】
ここでキャビン2の前面は、走行時の空力抵抗を低減させるため曲面状に形成されている(図示せず)。具体的にキャビン2の前面は、上面視においてキャビン2の前面の中心部を前端部とした円弧状に形成されている。よって、開状態の外側標示板14a1,14a2の先端は、キャビン2の前面の中央部の内側標示板4bよりも後方でキャビン2に固定される。これにより、開状態の外側標示板4aと内側標示板4bとの開き方向側のなす角θ(図示せず)が180度以上となり、キャビン2の側方にいる通行人でも開状態における外側標示板14a1,14a2の文言の一部を視認できるので、標示器14の表示による注意喚起をより広範囲に行うことができる。
【0043】
また
図5(b)に示す通り、外側標示板14a1,14a2の裏面の先端と内側標示板4bの表面とには、外側標示板14a1,14a2の閉状態を固定する閉固定具14fが設けられる。具体的に、閉固定具14fは所謂マグネットキャッチであり、内側標示板4bの表面の略中心部に設けられる受け部14f1と、外側標示板14a1,14a2の裏面における先端にそれぞれ設けられる磁石14f2とで構成される。外側標示板14a1,14a2を閉状態とした際に受け部14f1と磁石14f2とが磁気によって吸着されることで、外側標示板14a1,14a2の閉状態が固定される。
【0044】
以上説明した通り、第2実施形態の標示器14は、内側標示板14b2の左端にヒンジ14c1を介して外側標示板14a1が接続され、内側標示板14b2の右端にヒンジ14c2を介して外側標示板14a2が接続されることで、観音開き(横開き)に構成される。その標示器14は、キャビン2の前面におけるソナー3の検出範囲の上端Uaよりも上方に配置される。従って、外側標示板14a1,14a2を閉状態とした場合でも、開状態とした場合でも標示器14をソナー3の検出範囲の外側とした状態を維持できる。
【0045】
これにより、標示器14がソナー3によって障害物と誤検出されるのを抑制できるので、標示器14をキャビン2に設けることによって、タンクローリ11が発進できなくなる事態を抑制できる。また、標示器14は、ソナー3よりも上方、即ちキャビン2において高い位置に配置できる。これにより、標示器14の表示による周囲への注意喚起をより効果的に行うことができる。
【0046】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0047】
第1実施形態では、切欠部4eを内側標示板4bの先端の中央に1か所形成した。しかし、これに限られず、切欠部4eを内側標示板4bの先端の中央以外の他の位置に形成しても良いし、切欠部4eを内側標示板4bに複数形成しても良い。例えば、
図6(a)の標示器40に示すように、内側標示板40bの先端における右側に切欠部40eを設けても良いし、
図6(b)の標示器41に示すように、内側標示板41bの先端における左右のそれぞれに切欠部41eを設けても良い。また、
図6(c)の標示器42に示すように、内側標示板42bの左端に切欠部42e設けても良い。
【0048】
これらの場合、
図6(a)~
図6(c)に示すように、開固定具40d,41d,42dをそれぞれ切欠部40e,41e,42eと対応する位置に設けることが好ましい。また、標示器4,40,41,42において、切欠部4e,40e,41e,42eを非形成としても良い。
【0049】
第2実施形態では、標示器14を内側標示板14bの左端に外側標示板14a1をヒンジ14c1を介して接続し、右端に外側標示板14a2をヒンジ14c2を介して接続して構成した。しかし、これに限られず、標示器14から外側標示板14a2を省略し、内側標示板14bと外側標示板14a1とで標示器を構成しても良いし、標示器14から外側標示板14a1を省略し、内側標示板14bと外側標示板14a2とで標示器を構成しても良い。この場合、内側標示板14bに接続される外側標示板14a1,14a2の幅を内側標示板14bの幅と略同一にし、受け部14f1を内側標示板14bの表面の先端に設ければ良い。
【0050】
第1実施形態では、外側標示板4aを、開状態の外側標示板4aがキャビン2にもたれかかった状態で支持されるように構成した。しかし、これに限られず、例えば、キャビン2における外側標示板4aとの当接部をヒンジ4cよりもキャビン2の前方側とし、開状態の外側標示板4aがキャビン2にもたれからずに、キャビン2に当接するように構成しても良い。この場合、開固定具4dによって外側標示板4aの開状態が維持および固定される。
【0051】
第1実施形態では、開固定具4dを外側標示板4aの表面の先端に設けられた磁石で例示し、第2実施形態では、開固定具14dを外側標示板14a1,14a2の表面の先端に設けられた磁石で例示した。しかし、これに限られず、開固定具4d,14dをキャッチクリップや吸盤等、他の固定具で構成しても良い。更に、開固定具4d,14dを外側標示板4a,14a1,14a2の表面の先端に設けるものに限られず、例えば、開固定具4d,14dを外側標示板4a,14a1,14a2の表面における中心部や基端側等の他の位置に設けても良いし、開固定具4d,14dをキャビン2に設けても良い。また、開固定具4d,14dを外側標示板4a,14a1,14a2又はキャビン2から省略しても良い。
【0052】
第2実施形態では、外側標示板14a1,14a2の先端の表面に設けられる開固定具4dと裏面に設けられる磁石14f2とを、別々の磁石で構成した。しかし、これに限られず、1つの磁石を外側標示板14a1,14a2の先端において表面と裏面とに跨るように設け、その磁石の表面側を開固定具4dとして、磁石の裏面側を磁石14f2として用いても良い。
【0053】
第1実施形態では、第1閉固定具4fと第2閉固定具4gとによって、外側標示板4aを閉状態で固定した。しかし、これに限られず、第1閉固定具4fを省略し、第2閉固定具4gのみで外側標示板4aを閉状態で固定しても良いし、第2閉固定具4gを省略し、第1閉固定具4fのみで外側標示板4aを閉状態で固定しても良い。また、第2閉固定具4gとしてキャッチクリップを例示したが、これに限られず、吸盤等の他の固定具によって外側標示板4aを閉状態で固定しても良いし、閉状態の外側標示板4aと内側標示板4bとを、外側からクリップで挟むことで閉状態を固定しても良い。
【0054】
上記実施形態では、センサとして、キャビン2の前面における中央下部に設けられるソナー3を例示した。しかし、これに限られず、ソナー3の代わりにカメラやミリ波レーダー等、物体を検出可能な他のセンサを用いても良いし、ソナー3、カメラ及びミリ波レーダー等を複数組み合わせて用いても良い。また、ソナー3は、キャビン2の前面における中心部における下部に設けられるものに限られず、例えば、キャビン2の前面における下部の左端や右端等の他の場所に設けても良い。また、ソナー3は2つ設けられるものに限られず、2つ以上でも良いし、2つ以下でも良い。
【0055】
上記実施形態では、運搬車両として液体の積載物を運搬するタンクローリ1,11を用いて説明した。しかし、これに限られず、気体や固体を運搬するタンクローリに適用しても良いし、バルクローリ等の他の運搬車両もしくは車両に適用しても良い。
【0056】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,11 タンクローリ(運搬車両)
2 キャビン
3 ソナー(センサ)
4,14,40,41,42 標示器
4a,14a1,14a2,40a,41a,42a 外側標示板
4b,14b,40b,41b,42b 内側標示板
4c,14c1,14c2 ヒンジ
4d,14d,40d,41d,42d 開固定具
4e,40e,41e,42e 切欠部