IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

特許7591909電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法
<>
  • 特許-電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法 図1
  • 特許-電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法 図2
  • 特許-電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法 図3
  • 特許-電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20241122BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20241122BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241122BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 Z
G01R19/00 B
H02J7/00 Y
H02J13/00 301B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020195068
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083636
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】高工 大
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536133(JP,A)
【文献】特開2013-074707(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールに固定されると共に前記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置であって、
外部機器と無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信部の通信状態の変化から前記電池モジュールの落下を判断する判断部と、 前記判断部で前記電池モジュールが落下したと判断されたことを示す落下情報を記憶する記憶部と
を備え
前記判断部は、
前記無線通信部から入力される前記外部機器との通信情報に基づいて前記外部機器に対する前記電池モジュールの位置情報である相対位置情報を算出し、
前記相対位置情報に基づいて前記電池モジュールの移動距離を求め、
前記移動距離が予め定められた閾値を超えることで前記電池モジュールが落下したと判断する
ことを特徴とする電圧検出装置。
【請求項2】
前記判断部は、異なる複数位置と前記無線通信部との通信に基づいて前記無線通信部から入力された前記通信情報に基づいて前記相対位置情報を算出することを特徴とする請求項記載の電圧検出装置。
【請求項3】
電池モジュールに固定されると共に前記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置と、
前記電圧検出装置の無線通信部と通信を行う外部機器と
を備え
前記電圧検出装置は、
外部機器と無線通信を行う前記無線通信部と、
前記無線通信部の通信状態の変化から前記電池モジュールの落下を判断する判断部と、 前記判断部で前記電池モジュールが落下したと判断されたことを示す落下情報を記憶する記憶部と
を備え、
前記外部機器は、
前記電圧検出装置の前記無線通信部で受信可能な第1無線信号を放射する第1通信部と、
前記第1通信部よりも下方に配置されると共に前記電圧検出装置の前記無線通信部で受信可能な第2無線信号を放射する第2通信部と
を備える
ことを特徴とする落下判定システム。
【請求項4】
電池モジュールに固定されると共に前記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置と外部機器と無線による通信状態の変化から前記電池モジュールの落下を判断し、
前記電圧検出装置は、
前記外部機器との通信情報に基づいて前記外部機器に対する前記電池モジュールの位置情報である相対位置情報を算出し、
前記相対位置情報に基づいて前記電池モジュールの移動距離を求め、
前記移動距離が予め定められた閾値を超えることで前記電池モジュールが落下したと判断する
ことを特徴とする落下判定方法。
【請求項5】
電池モジュールに固定されると共に前記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置と外部機器と無線による通信状態の変化から前記電池モジュールの落下を判断し、
前記電圧検出装置は、
外部機器と無線通信部を用いて無線通信を行い、
前記無線通信部の通信状態の変化から前記電池モジュールの落下を判断し、
前記電池モジュールが落下したと判断されたことを示す落下情報を記憶し、
前記外部機器は、
前記電圧検出装置の前記無線通信部で受信可能な第1無線信号を第1通信部から放射し、
前記第1通信部よりも下方に配置される第2通信部から、前記電圧検出装置の前記無線通信部で受信可能な第2無線信号を放射する
ことを特徴とする落下判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等には、電池パックが搭載されている。電池パックは、複数の電池セルが直列接続されてモジュール化された電池モジュールや、これらの電池モジュールを制御及び管理するためのバッテリマネジメントユニットを備えている。一般的に、単一の電池パックには、複数の電池モジュールが搭載されており、これらの電池モジュールが単一のバッテリマネジメントユニットによって制御及び管理されている。
【0003】
電池パックの組み立て時等に電池モジュールを誤って落下させると、落下時の衝撃によって電池モジュールが正常に稼働しない恐れがある。このため、例えば特許文献1には、電池モジュールに対して衝撃を検知するセンサを一体的に複数設置し、電池モジュールが落下したことをメモリに記憶する二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-529856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池モジュールに対して接続された複数のセンサは、電池パックの組み立て後には電池パックに残された状態となる。つまり、電池モジュールに複数のセンサを接続すると、多数のセンサが電池パックに内蔵されることとなり、電池パックの大型化及び製造コストの増加を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電池モジュールに対して衝撃を検知するセンサを設置することなく電池モジュールの落下を記録可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、電池モジュールに固定されると共に上記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置であって、外部機器と無線通信を行う無線通信部と、上記無線通信部の通信状態の変化から上記電池モジュールの落下を判断する判断部と、上記判断部で上記電池モジュールが落下したと判断されたことを示す落下情報を記憶する記憶部とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記判断部が、上記無線通信部から入力される上記外部機器との通信情報に基づいて上記外部機器に対する上記電池モジュールの位置情報である相対位置情報を算出し、上記相対位置情報に基づいて上記電池モジュールの移動距離を求め、上記移動距離が予め定められた閾値を超えることで上記電池モジュールが落下したと判断するという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記判断部が、異なる複数位置と上記無線通信部との通信に基づいて上記無線通信部から入力された上記通信情報に基づいて上記相対位置情報を算出するという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、落下判定システムであって、第1~第3いずれかの発明である電圧検出装置と、上記電圧検出装置の上記無線通信部と通信を行う外部機器とを備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記外部機器が、上記電圧検出装置の上記無線通信部で受信可能な第1無線信号を放射する第1通信部と、上記第1通信部よりも下方に配置されると共に上記電圧検出装置の上記無線通信部で受信可能な第2無線信号を放射する第2通信部とを備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、落下判定方法であって、電池モジュールに固定されると共に上記電池モジュールに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置と外部機器と無線による通信状態の変化から上記電池モジュールの落下を判断するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部機器との無線通信が可能な無線通信部を電圧検出装置が備えており、無線通信部の通信状態に基づいて電池モジュールの落下が判断されかつ記憶される。このため、本発明によれば、電池モジュールの電圧を測定するための電圧検出装置に外部機器との通信のために設けられた無線通信部を用いることによって、新たに落下を検知するためのセンサを設置することなく、電池モジュールの落下を検知することができる。したがって、本発明によれば、電池モジュールに対して衝撃を検知するセンサを設置することなく電池モジュールの落下を記録することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における落下判定システムの概略構成を示す模式図である。
図2】電池モジュールと電圧検出装置とのより詳細な構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態における落下判定システムでの落下判定処理を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の第2実施形態における落下判定システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る電圧検出装置、落下判定システム及び落下判定方法の一実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態の落下判定システムSの概略構成を示す模式図である。本実施形態の落下判定システムSは、電池モジュールMに接続されて電池モジュールMと一体的に設けられた電圧検出装置Aと、電圧検出装置Aと無線通信可能な検査設備Bとを備えている。なお、図1は模式図であり、本実施形態の特徴の一部を構成する無線通信に関するアンテナを大きく図示している。
【0018】
図2は、電池モジュールMと電圧検出装置Aとのより詳細な構成を示すブロック図である。この図に示すように、電圧検出装置Aが接続された電池モジュールMは、図2に示すように、直列接続された複数の電池セル(セル)を備え、各電池セルの合計電圧を出力電圧とする二次電池である。
【0019】
このような電池モジュールM及び電圧検出装置Aは、電池モジュールM同士が直列接続された状態で電池パックに組み込まれて車両に搭載される。車両に搭載された電圧検出装置Aは、不図示のバッテリマネジメントユニットの制御の下に、電池モジュールMの各電池セルの電圧の検出や、電池セルの電圧の均等化処理を行う。電圧検出装置Aは、図2に示すように、電圧検出部1と、複数の放電部2と、記憶部3と、均等化処理部4と、送受信部6(無線通信部)とを備えている。
【0020】
電圧検出部1は、各電池セルのプラス電極の電位とマイナス電極の電位とを所定のタイムインターバルでサンプリングすることによりアナログ値であるセル電圧を検出する。また、この電圧検出部1は、各電池セルのセル電圧を所定分解能のデジタル値に変換し、当該デジタル値であるセル電圧をセル電圧検出値として記憶部3に順次出力する。
【0021】
上述したように電池モジュールは二次電池であり、放電と充電とを行い得る。複数の放電部2は、電池モジュールMにおける電池セルについて、その充電状態を均等化するために電池セルごとに設けられた電子スイッチと抵抗器との直列回路である。
【0022】
これら放電部2は、均等化処理部4によってON状態とOFF状態とが操作されるスイッチングトランジスタ等の電子スイッチと当該電子スイッチに直列接続されると共に所定の抵抗値を有する抵抗器から構成されている。各電池セルに対応する放電部2の電子スイッチは、複数の電池セルが均等化するON状態とOFF状態とが均等化処理部4によって設定される。
【0023】
記憶部3は、電圧検出部1から入力されるセル電圧検出値を記憶する。このような記憶部3は、例えばリングバッファとして機能する半導体メモリである。また、本実施形態において記憶部3は、判断部5によって電池モジュールMが落下したと判断された場合には、その判断結果(落下情報)が判断部5から入力されると共に、落下情報を記憶する。
【0024】
また、本実施形態において記憶部3は、判断部5が電池モジュールMの落下を判断するための途中処理にて算出する値を一時的に記憶する。例えば、本実施形態において記憶部3は、電池モジュールMの検査設備Bに対する位置情報である相対位置情報を一時的に記憶する。
【0025】
また、記憶部3は、判断部5が電池モジュールMの落下を判断するために用いる閾値として、落下判定値を予め記憶している。この落下判定値は、電池モジュールMが位置検知を開始した初期位置(初回検知位置)から現在位置までの移動距離の許容値を示す閾値である。この落下判定値を超えて、電池モジュールMが移動した場合に本実施形態において電池モジュールが落下したと判断される。
【0026】
均等化処理部4は、送受信部6から入力される操作命令に基づいて各々の放電部2を操作する操作部である。すなわち、この均等化処理部4は、電池モジュールMの各電池セルに対する均等化処理命令が送受信部6を介して入力されると、放電部2における各電子スイッチをON/OFFさせることにより各セル電圧を均等化させる。
【0027】
例えば、電池モジュールMにおいて互いに直列接続された電池セルのうち、ある電池セルのセル電圧が他の電池セルのセル電圧よりも高い電圧である場合、均等化処理部4は、セル電圧が高い電池セルに並列接続された放電部2の電子スイッチのみをON状態に設定することにより電池セルを強制放電させる。この結果、電池セルのセル電圧が低下して他の電池セルのセル電圧に対して均等化される。
【0028】
判断部5は、送受信部6の検査設備Bとの通信状態の変化から電池モジュールMの落下を判断する。具体的には、判断部5は、一定のインターバル期間ごとに検査設備Bの後述する2箇所の情報送信部B1から放射される送信信号に基づいて電池モジュールMの検査設備Bに対する位置を複数回検出する。これらの検出位置の変化(すなわち検査設備Bとの通信状態の変化)に基づいて、電池モジュールMが下方に向けて加速を続け、なおかつ一定期間における移動距離が落下判定値を超えた場合に、判断部5は、電池モジュールMが落下したと判断する。
【0029】
送受信部6は、検査設備Bから無線受信する通信部であり、検査設備Bから飛来する電波を受信するアンテナを備えている。この送受信部6は、検査設備Bから受信する電波に含まれる位置情報検出用信号を抽出し、位置情報検出用信号を判断部5に出力する。本実施形態においては、例えば、検査設備Bの異なる位置に設けられた2箇所の情報送信部B1から位相が同期したパルス信号が位置情報検出用信号として出力され、これらの位置情報検出用信号の受信時刻の差に基づいて、判断部5が電池モジュールMの検査設備Bに対する位置を検出する。なお、検査設備Bに情報送信部B1を1つのみ設け、位置情報検出用信号の到達時間や強度に基づいて、電池モジュールMの検査設備Bに対する位置を検出するようにしても良い。
【0030】
なお、この送受信部6は、電池モジュールM及び電圧検出装置Aが車両に搭載された状態では、不図示のバッテリマネジメントユニットと無線通信にてデータの送受信を行う。また、本実施形態において、記憶部3、均等化処理部4、判断部5及び送受信部6は、電池モジュールM及び電圧検出装置Aが車両に搭載された状態にて、電池モジュールMの均等化処理や電池モジュールMの電圧情報等の無線通信処理の制御を行うマイコンによって具現化された機能部である。つまり、電池モジュールMの均等化処理や電池モジュールMの電圧情報等の無線通信処理を実行するマイコンを備える電圧検出装置であれば、新たなハードウェアを搭載することなく本実施形態の判断部や送受信部を設けることが可能となる。
【0031】
図1に戻り、検査設備Bは、電池モジュールMを電池パックとして組み込む前に電池モジュールMの検査を行うための装置である。なお、検査設備Bによる検査は、電池モジュールMの落下に関するものではなく、一般的に電池モジュールMに対して動作確認を行うための検査である。このような検査設備Bに対して、電圧検出装置Aと無線通信を行うための情報送信部B1が設けられている。
【0032】
このような情報送信部B1は、検査設備Bに必ずしも設ける必要はない。情報送信部B1を独立した装置とすることも可能である。また、検査設備Bと異なる機能を有する装置に対して情報送信部B1を設けるようにしても良い。これらの場合には、情報送信部B1や検査設備Bと異なる機能を有する装置が、電圧検出装置Aと無線通信可能な外部機器となる。
【0033】
情報送信部B1は、電圧検出装置Aの送受信部6で受信する位置情報検出用信号を電波として放射するものであり、送信用のアンテナを備えている。このような情報送信部B1は、検査設備Bに対して上下方向に離間して2つ(複数)設けられている。より具体的には、本実施形態においては、電圧検出装置のAの送受信部6で受信可能な第1位置情報検出用信号(第1無線信号)を放射する上方情報送信部B2(第1通信部)と、上方情報送信部B2よりも下方に配置されると共に電圧検出装置Aの送受信部6で受信可能な第2位置情報検出用信号(第2無線信号)を放射する下方情報送信部B3(第2通信部)とが検査設備Bに備えられている。
【0034】
次に、図3を参照して、本実施形態の落下判定システムSによる落下判定処理(落下判定方法)について説明する。なお、図3は、本実施形態の落下判定システムSによる落下判定処理について説明するフローチャートである。なお、落下判定処理の主体は、特に断りがなければ、電圧検出装置Aの判断部5である。
【0035】
まず、判断部5は、電池モジュールM(すなわち電圧検出装置A)の検査設備Bに対する現在位置を取得する(ステップS1)。ここでは、判断部5は、送受信部6から入力される検査設備Bとの通信情報である第1位置情報検出用信号と第2位置情報検出用信号とに基づいて、電池モジュールMの現在位置(相対位置情報)を算出する。例えば、判断部5は、第1位置情報検出用信号と第2位置情報検出用信号の位相の差分に基づいて電池モジュールMの位置を算出する。
【0036】
判断部5は、ステップS1において電池モジュールMの位置を算出すると、算出した電池モジュールMの現在位置を記憶部3のバッファ[n」の領域に記憶させる(ステップS2)。
【0037】
続いて、判断部5は、先に算出されて記憶部3のバッファ[n-1]の領域に記憶された相対位置情報と、ステップS1で算出した現在位置との差分を今回移動距離として算出する(ステップS3)。なお、バッファ[n-1]の領域に相対位置情報が記憶されていない場合には、判断部5は、今回移動距離を0とする。判断部5は、ステップS3で算出した今回移動距離を記憶部3に記憶させる。
【0038】
続いて、判断部5は、今回移動距離と前回移動距離とを比較する(ステップS4)。なお、前回移動距離とは、繰り返しステップS3で今回移動距離が算出された場合において、直前に求められた今回移動距離を意味する。なお、前回移動距離が記憶部3に記憶されていない場合には、ステップS4において、今回移動距離と前回移動距離との差がないものとする。
【0039】
ステップS4において今回移動距離が前回移動距離以下である場合には、判断部5は、後述する初回検知位置が記憶部3に記憶されている場合には初回検知位置を消去(ステップS5)し、その後に記憶部3におけるバッファの[n]の値を1つ進め(ステップS6)、再びステップS1に戻って現在位置の取得を行う。
【0040】
一方で、ステップS4において今回移動距離が前回移動距離よりも大きい場合には、判断部5は、記憶部3のバッファ[n]に記憶された現在位置を初回検知位置として記憶部3に記憶させる(ステップS7)。なお、既に記憶部3に初回検知位置が記憶されている場合には、判断部5はステップS7を省略する。
【0041】
続いて、判断部5は、記憶部3に記憶された現在位置から初回検知位置を減算した値と記憶部3に予め記憶された落下判定値とを比較する(ステップS8)。ここで、現在位置から初回検知位置を減算した値が落下判定値よりも小さい場合には、判断部5は、ステップS5に移行し、記憶部3におけるバッファの[n]の値を1つ進めた後、再びステップS1に戻って現在位置の取得を行う。
【0042】
一方で、判断部5は、現在位置から初回検知位置を減算した値が落下判定値以上である場合には、電池モジュールMが落下したと判断する(ステップS9)。判断部5は、電池モジュールMが落下したと判断した場合には、落下情報を生成して記憶部3に記憶させて落下判定処理を完了する。
【0043】
このように、本実施形態においては、電池モジュールMの空気抵抗が小さく、落下する電池モジュールMが重力によって加速することを利用し、ステップS4で今回移動距離が前回移動距離よりも大きい場合にステップS8に移行するようにしている。また、本実施形態においては、落下する電池モジュールMの移動距離は時間と共に増加することを利用し、ステップS8で現在位置から初回検知位置を減算した値が落下判定値以上である場合に電池モジュールMが落下したと判断する。
【0044】
なお、本実施形態においては、電池モジュールMが上方から下方に向けて落下した場合のみならず、電池モジュールMが水平方向に加速を伴って移動する場合や下方から上方に向けて加速を伴って移動する場合も、落下情報を記憶することができる。落下情報が記憶されるほどの加速が電池モジュールMに作用することは、電池モジュールMが車両に搭載されていない状態の通常の運用においては想定されておらず、何らかの異変が生じたものと考えられる。このため、このような想定されていない異変が電池モジュールMに生じたことを落下情報により把握することができる。
【0045】
なお、例えば、電池モジュールMを電池パックとして組み立てる直前に行われる検査や、電池パックが組み立てられた後に行われる検査にて、記憶部3に落下情報が格納されているかの確認作業を行うことで、電池モジュールMが以前に落下した痕跡があるか否かの判定を行うことが可能となる。
【0046】
以上のような本実施形態の電圧検出装置Aは、電池モジュールMに固定されると共に電池モジュールMに含まれる複数の電池セルの電圧を検出する。また、本実施形態の電圧検出装置Aは、検査設備Bと無線通信を行う送受信部6と、送受信部6の通信状態の変化から電池モジュールMの落下を判断する判断部5と、判断部5で電池モジュールMが落下したと判断されたことを示す落下情報を記憶する記憶部3とを備えている。
【0047】
このような本実施形態の電圧検出装置Aによれば、検査設備Bとの無線通信が可能な送受信部6を電圧検出装置Aが備えており、送受信部6の通信状態に基づいて電池モジュールMの落下が判断されかつ記憶される。このため、本実施形態の電圧検出装置Aによれば、電池モジュールMの電圧を測定するための電圧検出装置Aに検査設備Bとの通信のために設けられた送受信部6を用いることによって、新たに落下を検知するためのセンサを設置することなく、電池モジュールMの落下を検知することができる。したがって、本実施形態の電圧検出装置Aによれば、電池モジュールMに対して衝撃を検知するセンサを設置することなく電池モジュールMの落下を記録することが可能となる。
【0048】
また、このような電圧検出装置Aを用いた落下判定システムS及び落下判定方法によれば、電池モジュールMに固定されると共に電池モジュールMに含まれる複数のセルの電圧を検出する電圧検出装置Aと検査設備Bと無線による通信状態の変化から電池モジュールMの落下を判断する。このような落下判定システムS及び落下判定方法によれば、電池モジュールMが落下した場合には、電圧検出装置Aの記憶部3に電池モジュールMが落下したことを示す落下情報を記録することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の電圧検出装置Aにおいては、判断部5が、送受信部6から入力される検査設備Bとの通信情報に基づいて検査設備Bに対する電池モジュールMの位置情報である相対位置情報を算出し、相対位置情報に基づいて電池モジュールMの移動距離を求め、移動距離が予め定められた閾値(落下判定値)を超えることで電池モジュールMが落下したと判断する。このような工程で電池モジュールMが落下したか否かを判定することによって、簡易かつ確実に電池モジュールMが落下したことを記録することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の電圧検出装置Aにおいては、判断部5が、異なる複数位置と送受信部6との通信に基づいて送受信部6から入力された通信情報に基づいて相対位置情報を算出する。このため、検査設備Bに対する電池モジュールMの位置情報を正確に算出することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の落下判定システムSは、電圧検出装置Aの送受信部6と通信を行う検査設備Bとを備えている。つまり、本実施形態の落下判定システムSは、電圧検出装置Aの検査を行う検査設備Bが外部機器として用いられている。このため、電圧検出装置Aと無線通信を行う外部機器を別途設ける必要がない。
【0052】
また、本実施形態の落下判定システムSでは、検査設備Bが、電圧検出装置Aの送受信部6で受信可能な第1位置情報検出用信号を放射する上方情報送信部B2(情報送信部B1)と、第1通信部よりも下方に配置されると共に電圧検出装置Aの送受信部6で受信可能な第2位置情報検出用信号を放射する下方情報送信部B3(情報送信部B1)とを備えている。このように、重力方向に配列された2つの情報送信部B1が検査設備Bに設けられている。このため、落下する電池モジュールMの移動をより正確に判断部5において判断することが可能となる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0054】
図4は、本第2実施形態の落下判定システムSaの概略構成を示す模式図である。本実施形態の落下判定システムSaは、検査設備Bが情報送信部B1を1つのみ備えている。本実施形態では、例えば、情報送信部B1から時刻情報を含む無線信号が放射され、判断部5は、送受信部6で無線信号を受信した時刻と情報送信部B1から放射された電波の時刻情報との差分から電池モジュールMの検査設備Bに対する位置情報を算出する。
【0055】
このような本実施形態の落下判定システムSaにおいても、電池モジュールMの検査設備Bに対する位置情報を判断部5が算出することができる。このため、新たに落下を検知するためのセンサを設置することなく、電池モジュールMの落下を検知することができる。したがって、本実施形態の落下判定システムSaによれば、電池モジュールMに対して衝撃を検知するセンサを設置することなく電池モジュールMの落下を記録することが可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1……電圧検出部、2……放電部、3……記憶部、4……均等化処理部、5……判断部、6……送受信部(無線通信部)、A……電圧検出装置、B……検査設備(外部機器)、B1……情報送信部、B2……上方情報送信部(第1通信部)、B3……下方情報送信部(第2通信部)、M……電池モジュール、S……落下判定システム、Sa……落下判定システム

図1
図2
図3
図4