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特許7591910測量装置及び測量方法及び測量プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】測量装置及び測量方法及び測量プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020195717
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084096
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-041934(JP,A)
【文献】特開2020-115116(JP,A)
【文献】特開平07-270137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0296075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/14
G01B 11/00-11/30
G01S 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の測定を行う測量装置であって、基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して前記測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記基準光軸と所定の関係で前記測定対象を含む観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有し、前記演算制御部は、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせ、メッシュパターン軌跡を形成し、該メッシュパターン軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させ、前記演算部或は前記演算制御部は、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記メッシュパターン軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成して前記表示部に表示させ、表示された前記オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線と、前記メッシュパターン軌跡との交点又は交点に最も近い点を少なくとも2点を選択し、又は前記オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された曲線と、前記メッシュパターン軌跡との交点又は交点に最も近い点を少なくとも3点を選択し、前記メッシュパターン軌跡の測定結果に基づき前記交点の3次元座標を演算し、該3次元座標から前記直線又は前記曲線の式を演算する様構成された測量装置。
【請求項2】
前記演算部或は前記演算制御部は、前記メッシュパターン軌跡に沿って得られた各測定結果に対して微分処理して閾値と比較し変化点を抽出する変化点検出処理を実行し、前記変化点に直線又は曲線をフィッティングさせる様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記スキャンパターンは、前記メッシュパターン軌跡が所定の間隔で互いに交差し、前記メッシュパターン軌跡のメッシュの1辺の長さは前記測定対象迄の距離が10mである時に15cm程度となる様に設定される請求項1又は請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記測量装置本体の水平に対する傾斜を検出する姿勢検出器を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出器の検出結果に基づき前記メッシュパターン軌跡に沿って得られた測定点の鉛直方向の高さを演算する様構成された請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項5】
前記オーバレイ画像中に不要領域が指定され、前記演算部或は前記演算制御部は測定結果の中から前記不要領域内の測定結果を削除する様構成された請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項6】
前記オーバレイ画像中に測定領域が指定され、前記演算部或は前記演算制御部は前記測定領域の測定結果に基づき該測定領域の傾斜やうねりを測定する様構成された請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載の測量装置。
【請求項7】
前記測量装置本体は、前記姿勢検出器の検出結果に基づき、前記測量装置本体の高さを基準とした水平及び鉛直に対する傾斜角を演算し、該傾斜角に基づき前記オーバレイ画像中に水平線及び鉛直線を描写し、前記水平線及び鉛直線に沿って得られた測定結果に基づき前記測定対象の水平断面及び鉛直断面を測定する様構成された請求項4に記載の測量装置。
【請求項8】
基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記基準光軸と所定の関係で前記測定対象を含む観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有し、前記測定対象の測定を行う測量装置であって、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせ、メッシュパターン軌跡を形成する工程と、該メッシュパターン軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させる工程と、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記メッシュパターン軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成する工程と、該オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線と、前記メッシュパターン軌跡との交点又は交点に最も近い点を少なくとも2点選択し、又は前記オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された曲線と、前記メッシュパターン軌跡との交点又は交点に最も近い点を少なくとも3点を選択し、前記メッシュパターン軌跡の測定結果に基づき前記交点の3次元座標を演算し、該3次元座標から前記直線又は前記曲線の式を演算する工程とを有する測量方法。
【請求項9】
請求項1に記載の測量装置に於いて、前記演算部或は前記演算制御部に請求項8の各工程を実行させる測量プログラム。
【請求項10】
前記演算部或は前記演算制御部に、更に前記メッシュパターン軌跡に沿って得られた各測定結果に対して微分処理して閾値と比較し変化点を抽出する変化点検出処理を実行させ、前記変化点に直線又は曲線に対するフィッティングを実行させる請求項9に記載の測量プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定が可能な測量装置及び測量方法及び測量プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量装置を用いて測量(3次元形状や3次元座標の測定)を実施する場合、測定対象の方向角と距離を測定する必要があり、3次元レーザスキャナが用いられることが多い。
【0003】
3次元レーザスキャナにより測定対象の3次元形状を測定する場合、詳細な形状測定を行う為にはスキャン密度(点群密度)を高くする必要がある。この為、測定の際には不必要なデータが大量に取得されるので、データ処理の効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-109154号公報
【文献】特開2019-194535号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【文献】特開2016-151423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率よく測定対象の形状測定を可能とする測量装置及び測量方法及び測量プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有し、前記演算制御部は、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせ、該スキャンパターンの軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させ、前記演算部或は前記演算制御部は、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成して前記表示部に表示させ、表示された前記オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線又は曲線と、前記スキャンパターンの軌跡の交点又は交点に最も近い点の測定結果に基づき、前記直線又は曲線の式を演算する様構成された測量装置に係るものである。
【0007】
又本発明は、前記演算部或は前記演算制御部は、前記直線と前記軌跡との交点から少なくとも2点を選択し、前記曲線と前記軌跡との交点から少なくとも3点を選択する様構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記演算部或は前記演算制御部は、前記軌跡に沿って得られた各測定結果に対して変化点検出処理を実行し、予め設定された変化状態を変化点としてそれぞれ抽出し、該変化点に直線又は曲線をフィッティングさせる様構成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記スキャンパターンは、前記軌跡が所定の間隔で互いに交差し、該間隔が前記測定対象の曲率より小さく設定される様構成された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記測量装置本体の水平に対する傾斜を検出する姿勢検出器を更に具備し、前記演算制御部は、前記姿勢検出器の検出結果に基づき前記軌跡に沿って得られた測定点の鉛直方向の高さを演算する様構成された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記オーバレイ画像中に不要領域が指定され、前記演算部或は前記演算制御部は測定結果の中から前記不要領域内の測定結果を削除する様構成された測量装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記オーバレイ画像中に測定領域が指定され、前記演算部或は前記演算制御部は前記測定領域の測定結果に基づき該測定領域の傾斜やうねりを測定する様構成された測量装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有する測量装置であって、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせる工程と、前記スキャンパターンの軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させる工程と、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成する工程と、該オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線又は曲線と、前記スキャンパターンの軌跡の交点又は交点に最も近い点の測定結果に基づき、前記直線又は曲線の式を演算する工程とを有する測量方法に係るものである。
【0014】
又本発明は、上記の測量装置に於いて、該演算部或は前記演算制御部に上記の各工程を実行させる測量プログラムに係るものである。
【0015】
更に又本発明は、前記演算部或は前記演算制御部に、更に前記軌跡に沿って得られた各測定結果に対して変化点検出処理を実行させ、予め設定された変化状態を変化点としてそれぞれ抽出させ、該変化点に直線又は曲線に対するフィッティングを実行させる測量プログラムに係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有し、前記演算制御部は、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせ、該スキャンパターンの軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させ、前記演算部或は前記演算制御部は、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成して前記表示部に表示させ、表示された前記オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線又は曲線と、前記スキャンパターンの軌跡の交点又は交点に最も近い点の測定結果に基づき、前記直線又は曲線の式を演算する様構成されたので、取得されるデータ量の低減が図れると共に、測定時間の短縮を図ることができる。
【0017】
又本発明によれば、基準光軸を有する測量装置本体と、該測量装置本体と通信可能な操作パネルとを具備し、前記測量装置本体は、測距光を照射し、反射測距光を受光して測定対象迄の距離と反射強度を測定する測距部と、前記基準光軸に対して前記測距光を偏向する光軸偏向部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、前記測定対象を含み、前記基準光軸と所定の関係で観察画像を取得する測定方向撮像部と、演算制御部とを有し、前記操作パネルは、操作部と、表示部と、演算部とを有する測量装置であって、前記射出方向検出部に前記測距光の射出方向を検出させながら前記光軸偏向部に所定のスキャンパターンでスキャンさせる工程と、前記スキャンパターンの軌跡に沿って前記測距部に前記測定対象を測定させる工程と、前記測定方向撮像部で撮像された観察画像上に前記軌跡と重ね合せてオーバレイ画像を作成する工程と、該オーバレイ画像上で前記測定対象の稜線や輪郭に沿って描写された直線又は曲線と、前記スキャンパターンの軌跡の交点又は交点に最も近い点の測定結果に基づき、前記直線又は曲線の式を演算する工程とを有するので、取得されるデータ量の低減が図れると共に、測定時間の短縮を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例を示す概略図である。
図2】測量装置本体を示す概略ブロック図である。
図3】操作パネルの概略ブロック図である。
図4】観察画像とメッシュパターンの軌跡とを重ね合せたオーバレイ画像を示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施例に係る形状測定を説明する説明図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る形状測定を説明する説明図である。
図7】本発明の第2の実施例に係る形状測定を説明するフローチャートである。
図8】本発明の第3の実施例に係る形状測定を説明する説明図である。
図9】(A)は水平線を用いた鉛直断面を測定する場合の説明図であり、(B)は鉛直線を用いた水平断面を測定する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
図1は本発明の実施例の概略を示す図であり、図1中、1はモノポール支持方式の測量装置、2は測定対象を示す。
【0021】
前記測量装置1は、主に、一脚(モノポール)3、該一脚3の上端に設けられた測量装置本体4、前記一脚3の適宜位置に、例えば測定作業者が立ち姿勢で操作し易い位置に、操作パネル7が設けられる。
【0022】
該操作パネル7は、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。前記操作パネル7が前記一脚3に取付けられた状態で操作可能である。又、前記操作パネル7を前記一脚3から分離し、該操作パネル7単体で操作可能としてもよい。該操作パネル7と前記測量装置本体4とは、有線、無線等各種通信手段を介してデータ通信が可能となっている。
【0023】
又、前記一脚3の前記操作パネル7より下方の位置に1本の補助脚6が折畳み可能に取付けられている。
【0024】
前記一脚3の下端は尖端となっており、該下端は基準点R(測定の基準となる点)に設置される。又、前記一脚3の下端から前記測量装置本体4の機械中心(測量装置本体4に於ける測定の基準となる点)迄の距離は既知となっている。
【0025】
前記測量装置本体4の光学系は、およそ水平方向に延出する基準光軸Oを有し、該基準光軸Oは前記一脚3の軸心Pと直交する線に対して所定角度下方に傾斜する様に設定される。従って、前記一脚3が鉛直に設定されると前記基準光軸Oは水平に対して前記所定角度下方に傾斜する。
【0026】
前記補助脚6は、上端で前記一脚3に折畳み可能に連結され、前記補助脚6は折畳み状態では、前記一脚3と密着し、密着した状態を保持する様なロック機構(図示せず)が設けられる。或は簡易的に前記一脚3と前記補助脚6とを束ねるバンド(図示せず)が設けられてもよい。前記補助脚6が折畳まれた状態で、作業者が一脚3を把持し、測定を実行できる。
【0027】
前記補助脚6は、上端を中心に所定の角度回転し、前記一脚3から離反させることが可能となっており、離反させた位置で固定可能となっている。前記補助脚6を使用することで、前記測量装置本体4は該補助脚6と前記一脚3との2点支持となり、前記測量装置本体4の支持は安定し、前記測量装置本体4による測定の安定性が向上する。尚、前記補助脚6は、1本の場合を説明したが2本であってもよい。この場合、前記一脚3は自立可能となる。
【0028】
前記測量装置本体4は、測距部24(後述)、測定方向撮像部21(後述)を有している。前記測距部24の光学系の基準光軸が前記基準光軸Oである。前記測定方向撮像部21の測定方向光軸61は前記基準光軸Oに対して所定角ずれた関係となっており、又前記測定方向撮像部21と前記測距部24との距離及び位置関係は既知となっている。前記測距部24と前記測定方向撮像部21は前記測量装置本体4の筐体内部に収納されている。
【0029】
図2を参照して、前記測量装置本体4の概略構成を説明する。
【0030】
該測量装置本体4は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、演算制御部14、第1記憶部15、撮像制御部16、画像処理部17、第1通信部18、光軸偏向部19、姿勢検出器20、前記測定方向撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23を具備し、これらは筐体25に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13、前記光軸偏向部19等は、測距部24を構成する。
【0031】
前記測距光射出部11は、射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0032】
前記測距演算部13は前記発光素子27を発光させ、前記発光素子27はレーザ光線を発する。前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたレーザ光線を測距光33として射出する。尚、レーザ光線としては、連続光或はパルス光、或は特許文献3に示される断続変調光のいずれが用いられてもよい。
【0033】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象2からの反射測距光34が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸35とする。
【0034】
前記基準光軸O上に前記光軸偏向部19が配設される。該光軸偏向部19の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部19によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31又は前記測距光軸35と合致或は所定の関係となっている。
【0035】
前記反射測距光34が前記光軸偏向部19を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ38が配設される。又、前記受光光軸31上に受光素子39、例えばアバランシフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ38は、前記反射測距光34を前記受光素子39に結像する。該受光素子39は、前記反射測距光34を受光し、受光信号を発生し、前記測距演算部13に入力される。該測距演算部13は前記演算制御部14の制御に従って前記発光素子27を発光させ、受光信号との往復時間と光速に基づき前記測定対象2迄の測距値を求める。又、受光信号には前記反射測距光34を受光した際の受光強度の情報も含んでおり、前記演算制御部14によって、前期測距値のデータと共に反射強度データとして前記第1記憶部15に格納される。
【0036】
前記第1通信部18は、前記測定方向撮像部21で取得した画像データ、前記画像処理部17で処理された画像データ、前記測距部24が取得した測距データ、或は前記第1記憶部15に格納されたデータを前記操作パネル7に送信し、更に該操作パネル7からの操作コマンドを受信する。
【0037】
前記第1記憶部15には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、操作コマンド作成プログラム、前記姿勢検出器20からの姿勢検出結果に基づき前記一脚3の傾斜角、傾斜方向を演算し、更に傾斜角の鉛直成分(前記一脚3の測定対象2に対する前後方向の傾斜角)、傾斜角の水平成分(前記一脚3の測定対象2に対する左右方向の傾斜角)を演算する傾斜角演算プログラム、前記測距光33によるスキャンの密度を制御する為のスキャン制御プログラム、前記光軸偏向部19の偏向作動を制御する為の偏向制御プログラム、回転前後の画像をマッチングするマッチングプログラム、回転前後の画像を合成する合成プログラム、回転前後の画像に基づき回転角を演算する回転角演算プログラム、1つの測定位置での1周期のスキャン中に前記測量装置本体4が動いたかどうかを確認する確認プログラム、各種演算を実行する演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又、測距データ、反射強度データ、測角データ、傾斜角データ、画像データ等の各種データが格納される。
【0038】
前記演算制御部14は、前記測量装置本体4の作動状態に応じて、前記各種プログラムを展開し、画像と測定データ(測距データ、反射強度データ、測角データ)との関連付け等を実行する。
【0039】
前記光軸偏向部19について説明する。
【0040】
該光軸偏向部19は、一対のディスクプリズム41,42から構成される。該ディスクプリズム41,42は、それぞれ同径の円板形であり、前記基準光軸Oと直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記ディスクプリズム41は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズムを有している。同様に、前記ディスクプリズム42も、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズムを有している。尚、前記ディスクプリズム41を構成する三角プリズムと、前記ディスクプリズム42を構成する前記三角プリズムは、全て同一偏角の光学特性を有している。
【0041】
各三角プリズムの幅、形状は全て同じでもよく、或は異なっていてもよい。尚、中心に位置する前記三角の幅は、前記測距光33のビーム径よりも大きくなっており、該測距光33は中心に位置する三角プリズムのみを透過する様になっている。中心以外に位置する三角プリズムについては、多数の小さい三角プリズムで構成してもよい。
【0042】
更に、中心の前記三角プリズムについては、光学ガラス製とし、中心以外の前記三角プリズムについては、光学プラスチック製としてもよい。
【0043】
前記光軸偏向部19の中央部(中心の前記三角プリズム)は、前記測距光33が透過し、射出される測距光偏向部となっている。前記光軸偏向部19の中央部を除く部分(中心の前記三角プリズムの両端部及び中心以外の前記三角プリズム)は、前記反射測距光34が透過し、入射する反射測距光偏向部となっている。
【0044】
前記ディスクプリズム41,42は、それぞれ前記基準光軸Oを中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記ディスクプリズム41,42は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光33の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光34の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
【0045】
前記ディスクプリズム41の外周にはリングギア45が嵌設され、駆動ギア47を介してモータ48により回転駆動される。同様に、ディスクプリズム42の外周にはリングギア46が嵌設され、駆動ギア49を介してモータ50により回転駆動される。
【0046】
前記モータ48,50は、回転角を検出できるモータ、或は駆動入力値に対応した回転をするモータ、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ48,50の回転量を検出してもよい。該モータ48,50の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ48,50が個別に制御されるので、前記測距光33のスキャン軌跡を任意の2次元パターンでスキャンすることができる。
【0047】
該2次元パターンでスキャンとしては、例えば特許文献2に開示された花びら模様のスキャンパターンを用いたスキャン(以後花びらスキャン)も可能である。又、前記花びらスキャンの一周期は一連の軌跡を作り、メッシュ状のパターン軌跡(以後メッシュパターン軌跡)を形成することができる。該メッシュパターン軌跡のメッシュサイズは前記モータ48,50の回転比によって決まる(例えば双方の回転が逆回転で3~4倍の比率)。
【0048】
尚、メッシュパターン軌跡は、一周期分の花びらスキャン軌跡を複数回分合成してもよく、複数のスキャンパターンを組合わせてもよい。例えば、花びらスキャンを一周期実行する毎に、所定のステップ角だけ前記ディスクプリズム41,42を回転させる処理を繰返すことで、高密度のメッシュパターン軌跡を得ることができる。
【0049】
前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ48,50の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ48,50の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50の回転角に基づき、前記ディスクプリズム41,42の回転位置を演算する。
【0050】
更に、前記射出方向検出部22は、前記ディスクプリズム41,42の屈折率と、該ディスクプリズム41,42を一体とした時の回転位置、両ディスクプリズム41,42間の相対回転角とに基づき、各パルス光毎の前記測距光33の前記基準光軸Oに対する偏角、射出方向をリアルタイムで演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部14を介して第1記憶部15に格納される。
【0051】
前記姿勢検出器20は、前記測量装置本体4の水平、又は鉛直に対する傾斜角を検出し、検出結果は前記演算制御部14に入力される。又、前記姿勢検出器20として、チルトセンサ等の傾斜検出器が用いられ、更に、特許文献4に開示された姿勢検出器を使用することができる。
【0052】
前記測定方向撮像部21は、前記測量装置本体4の前記基準光軸Oと平行な前記測定方向光軸61と、該測定方向光軸61に配置された撮像レンズ62とを有している。前記測定方向撮像部21は、前記ディスクプリズム41,42による最大偏角と略等しい、例えば50°~60°の画角を有するカメラである。
【0053】
又、前記測定方向撮像部21は、静止画像又は連続画像或は動画像がリアルタイムで取得可能である。本実施例では、前記画像は前記操作パネル7の前記表示部68に静止画像の観察画像として表示される。
【0054】
尚、前記測定方向撮像部21の撮像素子63は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記撮像素子63上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記測定方向光軸61を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記撮像画像素子63上での位置が特定される。又、前記測定方向光軸61と前記基準光軸Oとの関係(距離)が既知であるので、前記測距部24による測定位置と前記撮像素子63上での位置(画素)との相互関連付けが可能である。前記撮像素子63から出力される画像信号は、前記撮像制御部16を介して前記第1記憶部15に格納、或は前記画像処理部17に入力される。
【0055】
前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21の撮像を制御する。前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、前記動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと、前記測量装置本体4でスキャンし測距するタイミングとの同期を取っている。
【0056】
前記操作パネル7について図3を参照して略述する。
【0057】
該操作パネル7は、上記した様に、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。又、着脱可能な場合は、前記操作パネル7を前記一脚3から取外し、前記操作パネル7単体の状態で、作業者が保持し、操作可能としてもよい。
【0058】
前記操作パネル7は、主に演算部65、第2記憶部66、前記第2通信部67、前記表示部68、操作部69を具備している。尚、前記表示部68をタッチパネルとし、該表示部68に前記操作部69を兼用させてもよい。前記表示部68をタッチパネルとした場合には、前記操作部69は省略することができる。
【0059】
前記第2記憶部66には、前記測量装置本体4との間で通信を行う為の通信プログラム、前記測定方向撮像部21で取得した画像、前記測距部24で測定した測定情報、前記姿勢検出器20の検出結果(姿勢データ)等を前記表示部68に表示させる為の表示プログラム、該表示部68に表示された画像に対して直線や円等を書込む為の書込みプログラム、書込まれた直線や円と前記測距光33のスキャン軌跡との交点を演算する為の交点演算プログラム、交点の演算結果に基づき直線や円の式を演算する為の演算プログラム、前記操作部69で操作された情報から前記測量装置本体4へのコマンドを作成する為のコマンド作成プログラム等の各種プログラムが格納されている。又、前記第1記憶部15に格納された測距データ、反射強度データ、測角データ、傾斜角データ、画像データ等の各種データは前記第1通信部18と前記第2通信部67を介して転送されて格納され、前記操作パネル7は測量装置本体4と分担或は分散処理を可能にしている。
【0060】
前記第2通信部67は、前記第1記憶部15に格納された各種のデータを前記演算制御部14、前記第1通信部18を経由して受信し、又、コマンドデータを送信する。
【0061】
前記表示部68は、前記測量装置本体4の測定状態、距離、偏角、反射光量等の測定結果等を表示し、前記測定方向撮像部21が取得した観察画像、或は前記画像処理部17で画像処理された画像を表示する。又、前記表示部68は、前記測定方向撮像部21が取得した画像と前記測距光33の前記花びらスキャンの軌跡(前記メッシュパターン軌跡78)とを重ね合せたオーバレイ画像79を表示可能である。
【0062】
本実施例では、特許文献2に示される測量装置と同様の測定作用により測定を実行する。前記測距光33は前記基準光軸Oを中心とした所定のスキャンパターンによりスキャンされる。例えば、この時のスキャンパターンとして、前記花びらスキャンが適用される。又、前記基準光軸Oは前記測定方向撮像部21が取得した観察画像の中心と所定関係となっている。従って、前記測距光軸35は、前記観察画像上で、前記基準光軸Oを中心として所定のスキャンパターンを描く様に偏向される。
【0063】
尚、前記操作パネル7として、例えばスマートフォン、タブレットが用いられてもよく、ノートパソコンで代用してもよい。
【0064】
次に、図4図5に於いて、第1の実施例に於ける前記測定対象2の形状測定について説明する。尚、以下の説明では、前記表示部68が前記操作部69を兼用する場合について説明している。
【0065】
図4は、前記表示部68に表示された前記観察画像に、花びらスキャンによる前記メッシュパターン軌跡78を重ねて表示させた前記オーバレイ画像79を示している。尚、図4中では、該オーバレイ画像79中に前記メッシュパターン軌跡78が全て含まれる様に構成され、前記観察画像が所定のサイズに画像処理されている。
【0066】
又、該観察画像は、例えば前記測定対象2として室内を撮影したものであり、天井82、床83、柱84、台85、時計86、窓87、扉88、照明89、パネル91等種々の部材が含まれている。
【0067】
前記メッシュパターン軌跡78中には、前記測距光33の軌跡で形成された複数の略ひし形状のメッシュ92が形成される。ここで、前記測定対象2の物体形状は、人工的な物体であり、直線と曲線とから構成されている。従って、本実施例では、前記メッシュパターン軌跡78のスキャン密度、即ち前記メッシュ92の1辺のサイズは、前記測定対象2が有する曲線部の曲率より小さくなる様設定される。例えば、本実施例では、測定間隔(測定点密度)を通常のスキャナの全周スキャンと同程度(測距レートは数+KHz以上、例えば距離が10mで測距間隔5mm以下)とし、前記測定対象2迄の距離が10mである時に前記メッシュ92の一辺の長さを15cm程度となる様に設定している。
【0068】
作業者は、前記表示部68中の前記オーバレイ画像79を参照し、前記表示部68を介して所望の部材の一部を選択する。或は、前記表示部68を介して、前記メッシュパターン軌跡78と直線である部屋や柱の角(稜線)や曲線である部材の輪郭等をなぞり、前記オーバレイ画像79中に直線又は曲線を描写する。
【0069】
又、作業者は、前記メッシュパターン軌跡78と描写した直線との交点のうち少なくとも2点、或は前記メッシュパターン軌跡78と描写した曲線との交点のうち少なくとも3点を指定する。前記演算部65は、指定された交点の前記オーバレイ画像79中での位置と、前記メッシュパターン軌跡78上の測定点の測定結果に基づき、指定された交点の3次元座標を演算する。尚、指定された交点と合致する測定点が存在しない場合には、前記交点に隣接する2つの測定点の3次元座標に基づき、前記交点の3次元座標を内挿により求めることができる。
【0070】
図5は、前記オーバレイ画像79中の任意の位置に描写された直線又は曲線、及び前記メッシュパターン軌跡78と直線又は曲線との交点を示している。例えば、前記柱84の鉛直方向に延出する稜線の上部先端(始点)と下部先端(終点)を指定し、稜線に沿った直線93を描写し、該直線93と前記メッシュパターン軌跡78との交点のうちの少なくとも 2点、即ち交点94a,94bを選択する。
【0071】
前記直線93と前記交点94a,94bが選択されると、前記演算部65は、前記交点94a,94bの3次元座標を演算すると共に、該交点94a,94bを結んだ直線の式、即ち前記直線93の式を演算し、該直線93の始点と終点を求める。尚、指定した前記交点94a,94bが実際の交点とずれていた場合には、前記演算部65は、前記交点94a,94bと最も近い実際の交点を選択する。
【0072】
ここで、前記直線93と前記メッシュパターン軌跡78との交点のうちの少なくとも2点の選択に於いては、該直線93中の始点と終点に最も近い前記メッシュパターン軌跡78との交点としてもよい。又、前記直線93と前記メッシュパターン軌跡78との交点を多数点選択し、最小二乗法による直線フィッティングをして求めてもよい。
【0073】
又、作業者は、前記時計86の輪郭に沿って曲線95を描写し、該曲線95と前記メッシュパターン軌跡78との交点のうちの少なくとも3点、即ち交点96a,96b,96cを選択する。前記演算部65は、前記交点96a,96b,96cの3次元座標を演算する。又、前記演算部65は、該交点96a,96b,96cの3次元座標に基づき、長径及び短径を調整した楕円をフィッティングさせ、前記時計86の輪郭の円又は楕円(前記曲線95)の式を演算する。尚、前記曲線95と前記メッシュパターン軌跡78との交点を、多数点選択し、最小二乗法による円又は楕円フィッティングをして求めてもよく、或は曲線の式を求めてもよい。
【0074】
同様に、前記オーバレイ画像79中の指定された全ての稜線及び輪郭に対して、直線又は曲線を順次描写し、前記メッシュパターン軌跡78と直線との少なくとも2つの交点、前記メッシュパターン軌跡78と曲線との少なくとも3つの交点を順次指定する。
【0075】
図5中では、直線97と交点98a,98b、直線99と交点101a,101b、直線102と交点103a,103b、直線104と交点105a,105b、直線106と交点107a,107bがそれぞれ描写され、指定されている。
【0076】
尚、描写した直線の一部は交差する。例えば、前記直線93と前記直線97、前記直線99と前記直線106は交差する。前記直線93と前記直線97の交点108は、前記交点94a,94bの3次元座標に基づき求められた直線の式と、前記交点98a,98bの3次元座標に基づき求められた直線の式との交点を演算することで得られる。同様に、前記直線99と前記直線106の交点109は、前記交点101a,101bの3次元座標に基づき求められた直線の式と、前記交点107a,107bの3次元座標に基づき求められた直線の式との交点を演算することで得られる。
【0077】
又、各直線の式が得られることで、障害物により測定できなかった交点、即ち前記オーバレイ画像79中に存在していない交点についても演算することができる。例えば、図5中では、前記直線104と前記直線106の一部(波線)が前記台85によって隠れ、前記直線104と前記直線106との交点も前記台85によって隠れている。本実施例では、前記直線104と前記直線106の式が求められるので、演算により前記直線104と前記直線106との交点(推定交点)111を演算することができる。
【0078】
又、作業者は、前記オーバレイ画像79中から所定の部材に含まれ、且つ前記メッシュパターン軌跡78の内部に位置する1点を指定することができる。図5中では、前記天井82に含まれる点112、前記照明89に含まれる点113、前記床83に含まれる点114がそれぞれ指定される。
【0079】
前記演算部65は、前記点112,113,114の周辺に位置する前記メッシュパターン軌跡78上の測定結果に基づき、内挿により前記点112,113,114の3次元座標を演算する。
【0080】
上記の処理により、前記測定対象2の柱や壁面間の境界、部材の輪郭や高さ等、種々のデータを測定することができ、前記測定対象2の形状を測定することができる。
【0081】
上述の様に、第1の実施例では、所定のスキャンパターンにより前記測定対象2を2次元スキャンし、作業者が前記表示部68を介して前記測定対象2の直線又は曲線を前記オーバレイ画像79に描写する。又、前記スキャンパターンと前記直線との少なくとも2点の交点、又は前記スキャンパターンと前記曲線との少なくとも3点の交点の3次元座標に基づき直線及び曲線を演算し、該直線及び曲線の演算結果に基づき前記測定対象2の形状を測定している。
【0082】
又、第1の実施例では、例えば前記測定対象2迄の距離を10m、10mの位置でのスキャン上の測距間隔を5mm、前記メッシュ92の1辺を15cmとした前記メッシュパターン軌跡78により前記測定対象2をスキャンしている。
【0083】
従って、同一の条件で通常のレーザスキャナにより全周スキャンを実行し、形状測定を実行した場合と比べて、取得されるデータ量を1/30程度迄低減することができる。更に、測定時間も大幅に短縮することができる。
【0084】
又、前記メッシュ92の間隔を前記測定対象2が有する曲線部の曲率よりも小さくすることで、前記測定対象2の形状測定を実質的に正しく実行することができる。
【0085】
又、前記測定対象2の直線及び曲線と前記メッシュパターン軌跡78との交点が演算されることで、直線及び曲線に前記メッシュパターン軌跡78の測定範囲外に位置する部分があっても測定可能であり、例えば室内の柱角部(直線93の両端)等の3次元座標を演算できると共に、前記台85に遮られて測定できなかった交点等の3次元座標も演算により求めることが可能になるという特徴がある。
【0086】
又、前記測量装置本体4は前記姿勢検出器20を有し、該姿勢検出器20の検出結果に基づき、各測定点の基準点Rに対する鉛直基準の高さ及び座標を演算することができる。従って、例えば前記床83に対する各部材の高さを演算することができる。
【0087】
又、姿勢検出器20の検出結果に基づき前記観察画像を鉛直画像へと変換することができるので、前記測量装置本体4の傾斜に拘らず、作業者が鉛直画像に基づき作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。
【0088】
更に、前記オーバレイ画像79中の指定した点が、前記メッシュパターン軌跡78の軌跡上に位置しない点であったとしても、周辺に位置する軌跡上の測定点の測定結果に基づき、内挿により演算可能である。従って、スキャン密度を高くする必要がなく、取得データ数の低減が図れると共に、測定時間の短縮を図ることができる。
【0089】
次に、図6及び図7のフローチャートを参照し、本発明の第2の実施例に係る形状測定について説明する。尚、図5中、図4中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
第1の実施例では、作業者が表示部68(図3参照)を介して部材の稜線や輪郭に沿って直線又は曲線を描写し、描写した直線又は曲線とメッシュパターン軌跡78との複数の交点を作業者が指定し、指定した複数の交点の3次元座標に基づき直線又は曲線の式を演算していた。
【0091】
第2の実施例では、演算部65(図3参照)が部材の稜線や輪郭に沿って自動で直線や曲線を描写すると共に、直線や曲線の式を演算する様になっている。
【0092】
STEP:01 先ず一脚3(図1参照)の下端を基準点Rに合致させた状態で、前記測量装置本体4(基準光軸O)を測定対象2へと向ける。
【0093】
STEP:02 基準光軸Oが前記測定対象2に向けられると、演算制御部14(図2参照)は、前記花びらスキャンを実行する(該花びらスキャンにより一連の測定データが得られる)。又、該花びらスキャンと並行して、前記演算制御部14は、測定方向撮像部21(図2参照)による観察画像の撮影を実行させる。
【0094】
STEP:03 前記演算制御部14は一周期毎に所定のステップ角で前記花びらスキャンを所定周期分実行する。花びらスキャンにより、前記メッシュパターン軌跡78上で測定された各測定点の3次元座標を演算し、前記観察画像のデータと共に前記第1記憶15に格納する。又、前記第1記憶15に格納されたデータは前記第1通信部18及び前記第2通信部67を介して第2記憶部66に転送される。
【0095】
STEP:04 前記演算部65は前記基準光軸Oと測定方向光軸61(図2参照)との所定の関係に基づき、測定結果と前記観察画像とを関連づけ、前記オーバレイ画像79を作成する。
【0096】
STEP:05 前記演算部65は所定周期分の前記花びらスキャンによる一連の測定データに対して予め設定された変化状態(例えば単調でない変化)を変化点115として検出する変化点検出処理(例えば微分処理して閾値比較)を実行する。
【0097】
STEP:06 前記演算部65は、前記変化点115を抽出して前記メッシュパターン軌跡78上に位置づけ、前記変化点115を壁面と壁面との境界や柱の角部等、或は反射強度変化が大きい境界部等としての状態認識に使用する。尚、前記測定データの前記変化点115前後の測距データ値を比較することで、前記花びらスキャンが凸の稜線或は反射強度変化(弱から強)を通過したのか、凹の稜線或は反射強度変化(強から弱)を通過したのかが判断できる。
【0098】
STEP:07 指定された直線又は曲線に対して前記演算部65は、前記変化点115として抽出した複数の点を、直線又は曲線にフィッティングさせ、直線又は曲線の式を求める。図6中では、柱84の角部で検出された複数の変化点115に対して、直線93をフィッティングさせ、直線式を求めている。
【0099】
STEP:08 前記演算部65は、前記測定対象2に存在する他の指定された直線又は曲線(図示せず)に対する変化点についても同様に直線又は曲線をフィッティングさせる。指定された全ての変化点に対する直線又は曲線のフィッティングが完了し、式が演算されることで、前記測定対象2に対する形状測定を終了する。
【0100】
尚、直線の端点については、第1の実施例と同様、直線同士の交点を端点としてもよいし、作業者が前記表示部68を介して指定してもよい。或は、前記オーバレイ画像79に対する画像処理により直線の端点(即ち、部屋の角部)を検出してもよい。又、前記メッシュパターン軌跡78が前記測定対象2の全域を含む場合には、前記メッシュパターン軌跡78内に全ての直線部が存在することとなるので、作業者が端点を指定することなく全ての端点を演算することができる。
【0101】
第2の実施例では、前記測定対象2に存在する直線部又は曲線部に対して、測定結果を変化点検出処理して得られた変化点に基づき直線又は曲線を自動でフィッティングさせている。
【0102】
従って、作業者が前記操作部69を介して手動で直線又は曲線を描写する必要がないので、作業性が向上する。又、作業者が目視で直線部又は曲線部を確認する必要がないので、ズレなく正確な直線又は曲線を描写することができ、測定精度を向上させることができる。
【0103】
尚、第2の実施例では、各種処理の前半(STEP:02~STEP:03)を前記演算制御部14、後半(STEP:04~STEP:08)を前記演算部65で分担して処理を実行したが、これに限るものではなく、分担処理の範囲或は分散処理は用途に応じて実行するものである。
【0104】
次に、図8に於いて、本発明の第3の実施例に係る形状測定について説明する。尚、図7中、図4中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0105】
第3の実施例では、表示部68(図3参照)を介して測定対象2の中から領域又は補助線を指定し、測定精度を高める様に構成されている。
【0106】
例えば、窓87(図4参照)は通常ガラス製であり、測距光33の一部を透過する。これにより、前記窓87を透過した測距光33により前記測定対象2に含まれない部材が測定される場合がある。従って、測定結果に不要なデータが混じり、誤測定の結果をもたらす。
【0107】
第3の実施例では、前記表示部68を介して作業者が前記窓87の輪郭に沿って領域を指定し、指定した領域を不要領域116として指定する。該不要領域116が指定されると、前記演算部65(図3参照)は測定結果から前記不要領域116内のデータを削除(もしくは無視)する。これにより、測定結果から不要なデータを除去することができるので、誤測定結果を排除できる。
【0108】
又、領域の指定は、天井82や床83等の平坦部に対しても実行することができる。図8は、前記表示部68を介して作業者が前記床83の一部を計測領域117として領域指定した場合を示している。
【0109】
前記計測領域117が指定されると、前記演算部65は前記計測領域117の測定結果に基づき、該計測領域117のうねりや傾斜等の面状態を測定することができる。これにより、前記測定対象2の表面形状測定が可能となる。
【0110】
又、前記表示部68を介して前記オーバレイ画像79内に補助線を引くこともできる。例えば、図8中では、パネル91(図4参照)内に描かれたマーク119の上端と下端にそれぞれ補助線118a,118bを引いている。
【0111】
該補助線118a,118b間の距離を演算することで、前記マーク119の高さを演算することができる。又、図示はしないが、前記マーク119の左右にも補助線を引くことで、前記マーク119の大きさを演算することができる。これにより、該マーク119の様に、凹凸を有さず、スキャンだけでは判別不能であった対象(絵、文字等)の測定も行うことができる。
【0112】
又、前記補助線は、中空にも引くことができる。例えば、図8中では、台85の上端と前記床83を結ぶ補助線118cが引かれている。該補助線118cの式を求めることで、該補助線118c上の任意点の3次元座標が演算可能であり、姿勢検出器20の検出結果に基づいた水平及び鉛直を基準とした3次元座標の演算も可能である。従って前記補助線118cに沿った鉛直下の床位置を演算することができる。同様に、天井82に於ける前記補助線118cに沿った鉛直上位置も演算することができる(図示せず)。
【0113】
尚、測量装置本体4は、姿勢検出器20の検出結果に基づき、前記測量装置本体4の高さを基準とした水平及び鉛直に対する傾斜角を演算することができ、演算された傾斜角に基づき、前記オーバレイ画像79中に水平線121及び鉛直線122を描写することができる。
【0114】
前記水平線121に沿って得られた測定結果は、前記測定対象2の水平断面の測定となる。又、前記鉛直線122に沿って得られた測定結果は、前記測定対象2の鉛直断面の測定となる。
【0115】
図9(A)、図9(B)は、前記水平線121及び前記鉛直線122を用いた断面データの測定例を示している。
【0116】
図9(A)は、前記測量装置本体4の高さを基準とした前記水平線121に対し、該水平線121上の2点121a,121bを指定した場合を示している。該2点121a,121bを結ぶ直線の式を演算し、該2点121a,121bの直線の水平距離(奥行き)を演算する。前記演算部65は、前記花びらスキャンによる前記メッシュパターン軌跡78の測定結果のうち、前記2点121a,121bを結ぶ直線上の任意点と奥行きが一致する測定点の測定結果を前記2点121a,121b間の鉛直断面データとして抽出することができ、又基準点Rに対する鉛直断面データに変換の演算もできる。
【0117】
図9(B)は、水平位置を任意に設定した前記鉛直線122に対し、該鉛直線122上の任意の高さに点122aを指定した場合を示している。前記演算部65は、指定した前記点122aの前記測量装置本体4の高さを基準とした高さを演算する。又、前記演算制御部14は、前記メッシュパターン軌跡78の測定結果のうち、前記点122aと高さが一致する測定点の測定結果を、前記点122aの高さの水平断面データとして抽出することができ、又基準点Rに対する高さの水平断面データに変換の演算もできる。
【0118】
尚、第1の実施例~第3の実施例では、1枚の前記観察画像と、該観察画像内で前記花びらスキャンを所定周期スキャンさせた場合について説明したが、前記花びらスキャンを所定周期スキャンする毎に前記測量装置本体4の向きを回転させ、複数の前記観察画像と前記メッシュパターン軌跡78を合成しつつ、スキャンを行う様にしてもよい。これにより、測定方向撮像部21の画角を超えた観察画像と、光軸偏向部19の偏向範囲を超えた測定結果を得ることができる。
【0119】
更に、一脚3の下端を基準点Rに合致させた状態で、動画像又は連続画像によりリアルタイムで前記観察画像を撮影しつつ、基準点Rを基準に前記測量装置1を回転させて前記花びらスキャンを実行する様にしてもよい。前記観察画像と前記花びらスキャンで得られる前記メッシュパターン軌跡78の軌跡は基準点Rを基準に関連づけられる。従って、前記測量装置1の向きを変えて観察画像と前記メッシュパターン軌跡78を取得し、それぞれの観察画像を画像マッチング処理を施して回転状況を関係づけすることで、観察画像と前記メッシュパターン軌跡78の合成拡大が可能となる。
【0120】
尚、第1の実施例~第3の実施例では、前記一脚3上に前記測量装置本体4が設けられた測量装置1について説明したが、前記測量装置本体4が三脚上に設けられた測量装置を用いてもよいのは言う迄もない。
【符号の説明】
【0121】
1 測量装置
2 測定対象
4 測量装置本体
7 操作パネル
14 演算制御部
16 撮像制御部
19 光軸偏向部
20 姿勢検出器
21 測定方向撮像部
24 測距部
33 測距光
34 反射測距光
65 演算部
68 表示部
78 メッシュパターン軌跡
79 オーバレイ画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9