(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両制御方法
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241122BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20241122BHJP
【FI】
A01B69/00 303F
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
G05D1/00
(21)【出願番号】P 2020200120
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀崇
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137483(JP,A)
【文献】特開2019-198244(JP,A)
【文献】特開2017-123803(JP,A)
【文献】特開2019-136039(JP,A)
【文献】特開2019-141103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作を受け付ける操作部と、
画像を表示する表示部と、
自動操舵による走行の方向を示す基準走行ラインを取得する基準走行ライン取得部と、
自車の位置を示す位置情報を
繰り返し取得する位置情報取得部と、
圃場内の未作業地の外縁の位置を示す圃場情報を取得する圃場情報取得部と、
前記基準走行ラインを取得した後、手動操舵による走行中に、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁と、前記基準走行ラインに平行、且つ、最新の前記位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインと、を前記表示部に表示させ
、前記設定走行ラインを自車の移動に追従して平行移動させる表示制御部と、
手動操舵から自動操舵に切り替える操作を前記操作部が受け付けた時点の前記設定走行ラインに沿って、自動操舵により自車を走行させる走行制御部と、を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記表示制御部は、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた場合と前記条件が満たされていない場合とで、前記設定走行ラインの表示を異ならせることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記表示制御部は、
自動操舵を開始する前に前記設定走行ラインに基づいて自車の作業領域の外縁を表示させることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記表示制御部は、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた後、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁に対して前記作業領域の外縁がずれている場合に、前記作業領域のずれを示す情報を表示させることを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記走行制御部は、前記表示制御部が前記作業領域のずれを示す情報を表示させた後、自動操舵による走行を許可する操作を前記操作部が受け付けた場合に、前記設定走行ラインに沿って自動操舵により自車を走行させることを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記未作業地の外縁と自車の作業領域とから求められる推奨走行ラインを表示させ、前記設定走行ラインが前記推奨走行ラインに重なった場合に、自車が前記推奨走行ラインに到達した旨を表示させることを特徴とする請求項
1に記載の作業車両。
【請求項7】
自動操舵による走行中に前記設定走行ラインに交差する方向に自車の位置が変更された場合に、自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線に平行になるように前記基準走行ラインの方向を補正する補正部を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項8】
自動操舵による走行の方向を示す基準走行ラインと、圃場内の未作業地の外縁の位置を示す圃場情報と、
を取得し、自車の位置を示す位置情報
を繰り返し取得する情報取得工程と、
前記基準走行ラインを取得した後、手動操舵による走行中に、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁と、前記基準走行ラインに平行、且つ、最新の前記位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインと、を表示部に表示させ
、前記設定走行ラインを自車の移動に追従して平行移動させる表示制御工程と、
手動操舵から自動操舵に切り替える操作を操作部が受け付けた時点の前記設定走行ラインに沿って、自動操舵により自車を走行させる走行制御工程と、を備えることを特徴とする作業車両制御方法。
【請求項9】
前記表示制御工程において、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた場合と前記条件が満たされていない場合とで、前記設定走行ラインの表示を異ならせることを特徴とする請求項8に記載の作業車両制御方法。
【請求項10】
前記表示制御工程において、
自動操舵を開始する前に前記設定走行ラインに基づいて自車の作業領域の外縁を表示させることを特徴とする請求項8又は9に記載の作業車両制御方法。
【請求項11】
前記表示制御工程において、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた後、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁に対して前記作業領域の外縁がずれている場合に、前記作業領域のずれを示す情報を表示させることを特徴とする請求項10に記載の作業車両制御方法。
【請求項12】
前記表示制御工程において前記作業領域のずれを示す情報を表示させた後、自動操舵による走行を許可する操作を前記操作部が受け付けた場合に、前記走行制御工程において前記設定走行ラインに沿って自動操舵により自車を走行させることを特徴とする請求項11に記載の作業車両制御方法。
【請求項13】
前記表示制御工程において、前記未作業地の外縁と自車の作業領域とから求められる推奨走行ラインを表示させ、前記設定走行ラインが前記推奨走行ラインに重なった場合に、自車が前記推奨走行ラインに到達した旨を表示させることを特徴とする請求項
8に記載の作業車両制御方法。
【請求項14】
自動操舵による走行中に前記設定走行ラインに交差する方向に自車の位置が変更された場合に、自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線に平行になるように前記基準走行ラインの方向を補正する補正工程を備えることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の作業車両制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で作業を行う作業車両及び作業車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの作業効率を向上させる技術が検討されている。例えば、特許文献1では、手動操舵による手動走行と、基準走行ラインに平行に設定される設定走行ラインに沿って自動操舵により走行する自動走行と、を切替自在な走行機体と、手動走行と自動走行とを切替自在な切替スイッチと、切替スイッチによって手動走行から自動走行への切り替えを行った時点における走行機体の平面位置を、設定走行ラインの始点として設定する始点設定部と、を備える農作業機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で提案された構成では、設定走行ラインがどの位置に設定されるのかが、自動操舵を開始するまでわからない。そのため、設定走行ラインの位置がずれていることが自動操舵の開始後に判明し、設定走行ラインの設定のやり直しが必要になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、基準走行ラインに平行な設定走行ラインを容易に設定することのできる作業車両及び作業車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業車両は、操作を受け付ける操作部と、画像を表示する表示部と、自動操舵による走行の方向を示す基準走行ラインを取得する基準走行ライン取得部と、自車の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部と、圃場内の未作業地の外縁の位置を示す圃場情報を取得する圃場情報取得部と、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁と、前記基準走行ラインに平行、且つ、最新の前記位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインと、を前記表示部に表示させる表示制御部と、手動操舵から自動操舵に切り替える操作を前記操作部が受け付けた時点の前記設定走行ラインに沿って、自動操舵により自車を走行させる走行制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記表示制御部は、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた場合と前記条件が満たされていない場合とで、前記設定走行ラインの表示を異ならせるように構成されていてもよい。
【0008】
前記表示制御部は、前記設定走行ラインに基づいて自車の作業領域の外縁を表示させるように構成されていてもよい。
【0009】
前記表示制御部は、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた後、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁に対して前記作業領域がずれている場合に、前記作業領域のずれを示す情報を表示させるように構成されていてもよい。
【0010】
前記走行制御部は、前記表示制御部が前記作業領域のずれを示す情報を表示させた後、自動操舵による走行を許可する操作を前記操作部が受け付けた場合に、前記設定走行ラインに沿って自動操舵により自車を走行させるように構成されていてもよい。
【0011】
前記表示制御部は、前記未作業地の外縁と自車の作業領域とから求められる推奨走行ラインを表示させ、前記設定走行ラインが前記推奨走行ラインに重なった場合に、自車が前記推奨走行ラインに到達した旨を表示させるように構成されていてもよい。
【0012】
前記作業車両は、自動操舵による走行中に前記設定走行ラインに交差する方向に自車の位置が変更された場合に、自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線に平行になるように、前記設定走行ラインの方向を補正する補正部を備えていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る作業車両制御方法は、自動操舵による走行の方向を示す基準走行ラインと、自車の位置を示す位置情報と、圃場内の未作業地の外縁の位置を示す圃場情報と、を取得する情報取得工程と、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁と、前記基準走行ラインに平行、且つ、最新の前記位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインと、を表示部に表示させる表示制御工程と、手動操舵から自動操舵に切り替える操作を操作部が受け付けた時点の前記設定走行ラインに沿って、自動操舵により自車を走行させる走行制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
前記表示制御工程において、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた場合と前記条件が満たされていない場合とで、前記設定走行ラインの表示を異ならせてもよい。
【0015】
前記表示制御工程において、前記設定走行ラインに基づいて自車の作業領域の外縁を表示させてもよい。
【0016】
前記表示制御工程において、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた後、前記圃場情報が示す前記未作業地の外縁に対して前記作業領域の外縁がずれている場合に、前記作業領域のずれを示す情報を表示させてもよい。
【0017】
前記表示制御工程において前記作業領域のずれを示す情報を表示させた後、自動操舵による走行を許可する操作を前記操作部が受け付けた場合に、前記走行制御工程において前記設定走行ラインに沿って自動操舵により自車を走行させてもよい。
【0018】
前記表示制御工程において、前記未作業地の外縁と自車の作業領域とから求められる推奨走行ラインを表示させ、前記設定走行ラインが前記推奨走行ラインに重なった場合に、自車が前記推奨走行ラインに到達した旨を表示させてもよい。
【0019】
前記作業車両制御方法は、自動操舵による走行中に前記設定走行ラインに交差する方向に自車の位置が変更された場合に、自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線に平行になるように前記基準走行ラインの方向を補正する補正工程を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基準走行ラインに平行な設定走行ラインを容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの構成を模式的に示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る測位部及び基地局を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御の流れ図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る基準走行ラインの設定画面を示す図である。
【
図7A】基準走行ライン設定後に第1領域に表示される図形である。
【
図7B】基準走行ライン設定後の第2領域を示す図である。
【
図8A】開始位置への移動中に第1領域に表示される図形である。
【
図8B】開始位置への移動中の第2領域を示す図である。
【
図9】開始位置への移動中に第1領域に表示される図形の拡大図である。
【
図10】開始位置への移動中に第1領域に表示される図形の拡大図である。
【
図11】開始位置への移動後に第1領域に表示される図形の拡大図である。
【
図12A】自動刈取開始条件が満たされた場合に第1領域に表示される図形である。
【
図12B】自動刈取開始条件が満たされた場合の第2領域を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態の第1変形例に係る処理の流れ図である。
【
図14A】本発明の一実施形態の第1変形例に係る設定画面の第1領域に表示される図形である。
【
図14B】本発明の一実施形態の第1変形例に係る設定画面の第2領域を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態の第2変形例に係る処理の流れ図である。
【
図16A】本発明の一実施形態の第2変形例に係る設定画面の第1領域に表示される図形である。
【
図16B】本発明の一実施形態の第2変形例に係る設定画面の第2領域を示す図である。
【
図17A】本発明の一実施形態の第2変形例に係る設定画面の第1領域に表示される図形である。
【
図17B】本発明の一実施形態の第2変形例に係る設定画面の第2領域を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態の第3変形例に係る処理の流れ図である。
【
図19A】本発明の一実施形態の第3変形例に係る設定画面の第1領域に表示される図形である。
【
図19B】本発明の一実施形態の第3変形例に係る設定画面の第2領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るコンバイン1(作業車両の一例)について説明する。
【0023】
最初に、コンバイン1の概要について説明する。
図1は、コンバイン1の左側面図である。
図2は、コンバイン1の構成を模式的に示す平面図である。
図3は、コンバイン1の電気的構成を示すブロック図である。
図4は、測位部34及び基地局39を示すブロック図である。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0024】
[コンバインの概要]
コンバイン1は、自動操舵で走行しながら穀稈の刈取作業を行う自動刈取作業の機能を備えている。自動操舵の場合、速度制御は、自動でも手動でも可能である。また、コンバイン1は、操舵と速度制御を手動で行うことも可能である。
【0025】
図1に示されるように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9と、を備えている。コンバイン1は、いわゆる自脱型コンバインであって、走行部2によって走行しながら、刈取部3で刈り取った穀稈(刈取対象物)を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。また、コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8から供給された動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。なお、普通型コンバインに本発明が適用されてもよい。
【0026】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられている。刈取部3は、機体フレーム10の前方に設けられている。脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8及び操縦部9は、機体フレーム10の上方に設けられている。刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8及び操縦部9は、機体フレーム10に設けられている。本体部12は、機体フレーム10、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8及び操縦部9を含み、走行部2に支持されている。つまり、コンバイン1は、走行部2が本体部12を支持して走行するように構成されている。
【0027】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられた左右一対のクローラ式走行装置11を備えている。クローラ式走行装置11は、トランスミッション(図示省略)を介してエンジン27に接続され、エンジン27が発生する動力によって回転する。左右のクローラ式走行装置11の回転駆動が独立制御されることで、前進、後進及び旋回を行う。
【0028】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられている。刈取部3は、圃場Hの穀稈を刈取可能とする下降位置と、穀稈を刈取不能とする上昇位置と、の間で昇降可能に設けられている。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16と、を備えている。デバイダ13は、圃場Hの穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15の後側上方、且つ、本体部12の左側に設けられており、切断装置15によって切断された穀稈を後方へ搬送する。
【0029】
脱穀部4は、刈取部3の後方、且つ、本体部12の左側に設けられている。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19と、を備えている。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、さらに脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0030】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられている。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示省略)と、藁屑排出装置(図示省略)と、を備えている。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によってさらに穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0031】
貯留部6は、脱穀部4の右方に設けられている。貯留部6は、グレンタンク24と、排出装置25、とを備えている。グレンタンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置25は、オーガ等で構成され、グレンタンク24に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0032】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられている。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示省略)と、排藁切断装置(図示省略)と、を備えている。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出する。
【0033】
動力部8は、走行部2の前側上方に設けられている。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備えている。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。
【0034】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられている。操縦部9は、運転席29と、タッチパネルを備える端末30(
図3参照)と、複数の操作具(図示省略)と、を備えている。運転席29は、例えば、本体部12の右側に設けられ、作業者が着座する椅子等を含んでいる。端末30は、運転席29に着座した作業者によって操作可能な位置(例えば、作業者の右前方又は左前方)に設けられている。端末30は、後述する機体カメラ32、固定カメラ43、空撮カメラ57で撮影された画像等を表示する表示部64であるとともに、コンバイン1に対する操作を受け付ける操作部63でもある。複数の操作具は、運転席29に着座した作業者によって操作されるものであり、コンバイン1の操向を操作するハンドル、エンジン27の回転速度(コンバイン1の走行速度)を調整するアクセル、刈取部3を昇降させる昇降スイッチ等を含んでいる。
【0035】
コンバイン1は、機体カメラ32と、測位部34と、方位計測部33と、を備えている(
図2、3参照)。
【0036】
[機体カメラ]
機体カメラ32は、例えば、操縦部9の前側上部に設けられており、圃場Hを撮影する。
【0037】
[測位部]
測位部34は、GPS(Global Positioning System)等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置を示す位置情報を取得する。測位部34(
図3参照)は、移動通信機35と、移動GPSアンテナ36と、データ受信アンテナ37と、を備えている。移動通信機35は、移動GPSアンテナ36を介してGPS衛星から信号を受信し、受信した信号を用いてコンバイン1の位置(厳密には、移動GPSアンテナ36の位置)を算出することで、コンバイン1の位置情報を取得する。移動通信機35は、所定の時間間隔で繰り返し位置情報を取得する。移動GPSアンテナ36は、例えば、操縦部9の左側方、且つ、本体部12の左右方向の略中央に設けられている。
【0038】
[方位計測部]
方位計測部33は、例えば、角速度センサ(ジャイロセンサ)、3軸加速度センサ、地磁気センサ等であり、コンバイン1の方位を計測することで、コンバイン1の方位を示す方位情報を取得する。方位計測部33は、所定の時間間隔で繰り返し方位情報を取得する。
【0039】
[基地局]
コンバイン1の作業対象となる圃場Hの周囲の畦等には、基地局39が設置されている。基地局39は、固定通信機40と、固定GPSアンテナ41と、データ送信アンテナ42と、固定カメラ43と、を備えている。固定通信機40は、固定GPSアンテナ41を介してGPS衛星と通信することによって、基地局39の位置情報を取得する。固定通信機40は、基地局39の位置情報に基づく補正情報を、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。固定カメラ43は、圃場Hを撮影する。固定通信機40は、固定カメラ43によって撮影された画像(圃場画像)を取得し、データ送信アンテナ42を介して圃場画像を移動通信機35へ送信する。測位部34の移動通信機35は、データ受信アンテナ37を介して基地局39の固定通信機40から送信された補正情報及び圃場画像を受信する。移動通信機35は、補正情報に基づいてコンバイン1の位置情報を補正する。なお、基地局39は設置されなくてもよく、基地局39による位置情報の補正は行われなくてもよい。
【0040】
[制御装置]
制御装置45は、演算部50と、記憶部51と、通信部52と、を備えている。上記したコンバイン1の各種構成要素は、通信インターフェースを介して制御装置45に接続されている。制御装置45は、操縦部9を介した作業者からの入力操作に応じてコンバイン1の各種構成要素を制御する。
【0041】
記憶部51は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等であり、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶している。演算部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部51に記憶されたプログラムやデータを用いて演算処理を実行することで、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御する。なお、制御装置45は、プログラム等を実行するプロセッサ等に代えて、プログラムを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0042】
通信部52は、作業者が所持する携帯端末53と無線通信を行う。携帯端末53は、例えば、タッチパネルを備えるタブレットであって、コンバイン1を遠隔操作する機能を備えている。携帯端末53は、圃場Hを撮影する携帯カメラ54を備えている。また、通信部52は、ドローン等の空撮装置56と無線通信を行う。空撮装置56は、圃場Hを撮影する空撮カメラ57を備えている。作業者が端末30又は携帯端末53に空撮装置56への動作指示を入力すると、空撮装置56は通信部52から送信された動作指示に応じて動作する。なお、空撮装置56は、通信部52に代えて/加えて、携帯端末53と無線通信を行ってもよい。なお、携帯端末53と空撮装置56は、省略されてもよい。
【0043】
[端末]
端末30は、演算部60と、記憶部61と、通信部62と、操作部63と、表示部64と、を備えている。
【0044】
記憶部61は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等であり、端末30の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶している。演算部60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部61に記憶されたプログラムやデータを用いて演算処理を実行することで、端末30の各種構成要素及び各種機能を制御する。
【0045】
通信部52は、コンバイン1の制御装置45と通信を行う。コンバイン1の走行に用いられる情報が通信部62を介して制御装置45に供給される。また、コンバイン1の状態を示す情報が通信部62を介して制御装置45から取得される。
【0046】
作業者がコンバイン1の機体カメラ32,基地局39の固定カメラ43,空撮装置56の空撮カメラ57への撮影指示を端末30又は携帯端末53(以下、端末30等という。)に入力すると、制御装置45は、機体カメラ32,固定カメラ43,空撮カメラ57を制御して圃場Hを撮影させる。制御装置45は、機体カメラ32,固定カメラ43,空撮カメラ57によって撮影された圃場画像を端末30等に表示させる。作業者が携帯端末53の携帯カメラ54で撮影した圃場画像の表示指示を端末30等に入力すると、制御装置45は通信部52を介して携帯端末53を制御して圃場画像を端末30等に表示させる。なお、圃場画像の表示は行われなくてもよい。
【0047】
次に、コンバイン1の制御について詳細に説明する。
図5は、コンバイン1の制御の流れ図である。
図6は、基準走行ラインBLの設定画面を示す図である。
図7Aは、基準走行ラインBL設定後に第1領域A1に表示される図形である。
【0048】
コンバイン1(
図3参照)は、操作を受け付ける操作部63と、画像を表示する表示部64と、自動操舵による走行の方向を示す基準走行ラインBLを取得する基準走行ライン取得部71と、自車の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部72と、圃場内の未作業地の外縁の位置を示す圃場情報を取得する圃場情報取得部74と、圃場情報が示す未作業地の外縁と、基準走行ラインBLに平行、且つ、最新の位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインSLと、を表示部64に表示させる表示制御部75と、手動操舵から自動操舵に切り替える操作を操作部63が受け付けた時点の設定走行ラインSLに沿って、自動操舵により自車を走行させる制御装置45(走行制御部の一例)と、備える。
【0049】
操作部63、表示部64、基準走行ライン取得部71、位置情報取得部72、圃場情報取得部74、表示制御部75は、端末30の演算部60が記憶部61に記憶されたプログラムやデータを用いて演算処理を実行することで実現される機能である。走行制御部は、制御装置45の演算部50が記憶部51に記憶されたプログラムやデータを用いて演算処理を実行することで実現される機能である。
【0050】
[基準走行ライン取得部]
基準走行ラインBLは、始点Aと終点Bとを結ぶ直線で表される(
図7A参照)。手動操舵でコンバイン1を走行させて未刈り地H0(未作業地の一例)で刈取を行いながら、作業者が端末30に始点Aと終点Bを設定する操作を行うと(
図6参照)、端末30が始点Aと終点Bの位置情報を取得することで基準走行ラインBLが設定される。あるいは、作業者が始点Aと終点Bの座標を端末30に入力することで、基準走行ラインBLが設定されてもよい。
【0051】
[位置情報取得部、方位情報取得部、圃場情報取得部]
端末30は、コンバイン1の制御装置45経由で測位部34からコンバイン1の位置情報を所定の時間間隔で繰り返し取得し、記憶部51に格納する(位置情報取得部72の一例)。また、端末30は、方位計測部33からコンバイン1の方位情報を所定の時間間隔で繰り返し取得し、記憶部51に格納する(方位情報取得部73の一例)。また、端末30は、圃場Hの外縁の位置と、圃場H内の未刈り地H0及び既刈り地H1の外縁の位置と、を含む圃場情報を取得し、記憶部51に格納する(圃場情報取得部74の一例)。
【0052】
具体的には、手動運転で圃場Hの回り刈りを1周だけ行い、1周する間に測位部34を用いて取得した位置情報によって、圃場Hの外縁が表される。あるいは、端末30に表示された地図上で作業者が圃場Hの外縁を指定することで、圃場Hの外縁が取得されてもよい。コンバイン1の走行中の位置情報は、所定の時間間隔で更新され、更新されるたびに記憶部51に格納される。端末30は、圃場H内でコンバイン1が走行した経路(コンバイン1の位置情報の履歴)と刈取部3の刈取幅とから既刈り地H1の外縁を算出し、圃場Hの外縁と既刈り地H1の外縁とから未刈り地H0の外縁を算出する。
【0053】
[表示制御部]
表示制御部75は、圃場情報が示す未刈り地H0の外縁を端末30の表示部64に表示させる。また、表示制御部75は、基準走行ラインBLに平行且つ最新の位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインSLを表示部64に表示させる。このとき、表示制御部75は、コンバイン1の上方からの外観を模したアイコンを設定走行ラインSLの基準点に表示させる。また、表示制御部75は、取得した方位情報が示す方位に応じてアイコンの姿勢を変化させる。
【0054】
[走行制御部]
自動刈取作業において、制御装置45は、位置情報、方位情報を用いて、後述する設定走行ラインSLに沿って走行部2を自動操舵させながら走行させる。また、制御装置45は、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、穀稈の刈取、刈取後の穀稈の脱穀、穀粒や藁屑の選別、穀粒の貯留、排藁の処理等を実行させる。
【0055】
次に、コンバイン1の動作について説明する。コンバイン1は、手動操舵により未刈り地H0の刈取開始位置に移動する。刈取開始位置において作業者が端末30に表示されたメニュー画面(図示省略)で基準走行ライン取得を選択すると、端末30は、
図5の流れ図に示される処理を開始する。
図5において、ステップS01、S02は、情報取得工程の一例である。ステップS02乃至S05は、表示制御工程の一例である。ステップS06乃至S10は、走行制御工程の一例である。
【0056】
最初に、端末30は、圃場情報と基準走行ラインBLを取得する(ステップS01)。圃場情報の取得については、前述のとおりである。端末30は、基準走行ラインBLの設定画面を表示部64に表示させる(
図6参照)。設定画面において、端末30は、未刈り地H0の外縁を示す図形と、コンバイン1のアイコンと、基準走行ラインBLの始点Aを設定するためのボタンB1と、終点Bを設定するためのボタンB2と、を表示させる。また、端末30は、コンバイン1の移動による位置情報及び方位情報の変化に応じてアイコンの位置と姿勢を更新する。また、端末30は、位置情報と刈取部3の刈取幅とから既刈り地H1の外縁を算出し、既刈り地H1と未刈り地H0との境界線を更新する。作業者は、手動操舵によりコンバイン1を未刈り地H0の外縁に沿って直進させながら刈取を行い、ボタンB1、B2を操作して始点Aと終点Bを設定する。始点Aと終点Bは、直進の最初と最後の地点でもよく、その途中の2つの地点でもよい。
【0057】
始点Aと終点Bが設定されると、端末30は、設定画面を更新する(
図7A参照)。具体的には、端末30は、始点Aと終点Bとを結ぶ線分により基準走行ラインBLを表示する。
図7Bは、基準走行ラインBL設定後の第2領域A2を示す図である。端末30は、基準走行ラインBLが設定された旨と、自動刈取の開始位置への移動を促す旨と、を示すメッセージを表示させる。なお、基準走行ラインBLの取得は、前述した圃場情報取得のための回り刈りと並行して行われてもよい。
【0058】
次に、端末30は、手動操舵による移動と並行して、位置情報の取得、方位情報の取得、設定走行ラインSLの表示、作業領域WAの外縁の表示を実行する(ステップS02)。具体的には、作業者が手動操舵による移動を開始すると、端末30は、自動刈取開始位置の設定画面を表示させる。
図8Aは、開始位置への移動中に第1領域A1に表示される図形である。
図8Bは、開始位置への移動中の第2領域A2を示す図である。設定画面において、端末30は、未刈り地H0と既刈り地H1の外縁を示す図形と、コンバイン1のアイコンと、基準走行ラインBLと、設定走行ラインSLと、作業領域WAの外縁と、を表示させる。設定走行ラインSLは、基準走行ラインBLに平行、且つ、最新の位置情報が示すコンバイン1の位置を基準点とする線分である。ここで、線分の基準点は、例えば、コンバイン1の移動GPSアンテナ36であるが、コンバイン1の内部の他の点を設定走行ラインSLの基準点としてもよい。作業領域WAの外縁は、基準走行ラインBLに平行、且つ、刈取部3の左右の端部を通る線分で示される。なお、作業領域WAは、少なくとも外縁が表示されればよいが、作業領域WAの全体が着色された帯状の図形が表示されてもよい。
【0059】
端末30は、コンバイン1の移動による位置情報及び方位情報の変化に応じてアイコンの位置、姿勢及び設定走行ラインSLの位置を更新する。
図9、10は、開始位置への移動中に第1領域A1に表示される図形の拡大図である。
図11は、開始位置への移動後に第1領域A1に表示される図形の拡大図である。
図9乃至11は、コンバイン1の移動につれてアイコンと設定走行ラインSLの表示が変化する様子を示している。図示のとおり、アイコンの位置の変化に伴って、設定走行ラインSLは平行移動(並進運動)する。一方、アイコンの姿勢が変化しても、設定走行ラインSLの姿勢は変化せず、基準走行ラインBLに対して平行な姿勢が保たれる。作業者は、作業領域WAの端部(この例では、左端部)が未刈り地H0の外縁と一致するように、コンバイン1を手動操舵する。また、作業者は、アイコンの向きが設定走行ラインSLと一致するように、コンバイン1を手動操舵する。
【0060】
次に、端末30は、コンバイン1の車速が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS03)。車速が閾値以下でないと判定した場合には(ステップS03:NO)、端末30は、ステップS02以降の処理を繰り返す。一方、車速が閾値以下であると判定した場合には(ステップS03:YES)、端末30は、自動操舵開始条件が満たされたか否かを判定する(ステップS04)。なお、ステップS03は、省略されてもよい。
【0061】
自動操舵開始条件とは、第1に、設定走行ラインSLに対するコンバイン1の方位の偏差が許容値以下であること、第2に、コンバイン1の各部(走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6、排藁処理部7、動力部8)の状態が正常であること、である。コンバイン1の各部の状態は、各部に設けられているセンサ(図示省略)の検知結果等により判定される。
【0062】
自動操舵開始条件が満たされていないと判定した場合には(ステップS04:NO)、端末30は、ステップS02以降の処理を繰り返す。一方、自動操舵開始条件が満たされたと判定した場合には(ステップS04:YES)、端末30は、設定画面の表示を変更する(ステップS05)。具体的には、端末30は、設定走行ラインSLと作業領域WAの色を、自動操舵開始条件が満たされる前と異ならせる。例えば、自動操舵開始条件が満たされる前には、設定走行ラインSLと作業領域WAを青色で表示させ、自動操舵開始条件が満たされた後には、赤色で表示させてもよい。あるいは、自動操舵開始条件が満たされる前と後で表示の明るさを異ならせてもよい。あるいは、自動操舵開始条件が満たされた後に、設定走行ラインSLと作業領域WAを明滅させてもよい。
【0063】
次に、端末30は、自動操舵による作業を開始する操作が行われたか否かを判定する(ステップS06)。
図12Aは、自動刈取開始条件が満たされた場合に第1領域A1に表示される図形である。
図12Bは、自動刈取開始条件が満たされた場合の第2領域A2を示す図である。具体的には、端末30は、自動刈取の準備ができた旨と、自動刈取を開始するか否かを問う旨と、を示すメッセージと、自動刈取を開始するためのボタンB3と、を表示させる。ボタンB3が操作されない場合には、端末30は、自動操舵による作業を開始する操作が行われていないと判定し(ステップS06:NO)、ステップS02以降の処理を繰り返す。一方、ボタンB3が操作された場合には、端末30は、自動操舵による作業を開始する操作が行われたと判定し(ステップS06:YES)、自動操舵による作業、すなわち、自動刈取作業を開始する(ステップS07)。
【0064】
次に、端末30は、自動操舵による作業を停止する操作が行われたか否かを判定する(ステップS08)。具体的には、端末30は、表示部64に停止ボタン(図示省略)を表示させる。停止ボタンが操作されなかった場合には(ステップS08:NO)、端末30は、ステップS08の処理を繰り返す。一方、停止ボタンが操作された場合には(ステップS08:YES)、端末30は、自動操舵による作業を停止させ、手動操舵に切り替え(ステップS09)、運転を終了させる操作が行われたか否かを判定する(ステップS10)。運転を終了する操作が行われていないと判定した場合には(ステップS10:NO)、端末30は、ステップS02以降の処理を繰り返す。一方、運転を終了する操作が行われたと判定した場合には(ステップS10:YES)、端末30は、コンバイン1の制御を終了する。
【0065】
以上説明した本実施形態に係るコンバイン1によれば、圃場情報が示す未作業地の外縁と、基準走行ラインBLに平行、且つ、最新の位置情報が示す自車の位置を基準点とする設定走行ラインSLと、を表示部64に表示させる表示制御部75を備える。この構成によれば、手動操舵による走行中に表示される設定走行ラインSLが自車の移動に追従して移動する。例えば、既刈り地H1の幅のおよそ2分の1だけ、未刈り地H0の外縁から設定走行ラインSLを右側にずらすようにコンバイン1を移動させることで、刈取部3の左端部を未刈り地H0の外縁に合わせることができる。よって、本実施形態に係るコンバイン1によれば、基準走行ラインBLに平行な設定走行ラインSLを容易に設定することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るコンバイン1によれば、表示制御部75は、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた場合と条件が満たされていない場合とで、設定走行ラインSL及び作業領域WAの表示を異ならせる。この構成によれば、自動操舵の開始が可能か否かを視覚的に判断することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るコンバイン1によれば、表示制御部75は、設定走行ラインSLに基づいて自車の作業領域WAの外縁を表示させる。この構成によれば、作業領域WAと未作業地との位置関係を確認しながら自動操舵の開始位置を設定することができる。
【0068】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0069】
[第1変形例]
上記実施形態に以下の処理が追加されてもよい。第1変形例では、上記実施形態のステップS05の次に、以下の処理が実行される。
図13は、第1変形例に係る処理の流れ図である。ステップS21、S22は、表示制御工程の一例である。
図14Aは、第1変形例に係る設定画面の第1領域A1に表示される図形である。
図14Bは、第1変形例に係る設定画面の第2領域A2を示す図である。ステップS05に続いて、端末30は、圃場情報が示す未刈り地H0の外縁に対して作業領域WAの外縁がずれているか否かを判定する(ステップS21)。
図14Aの例では、作業領域WAの左外縁が右にずれている例が示されている。端末30は、作業領域WAの左右の外縁のうち未刈り地H0の外縁に近い方の外縁(この例では、左外縁)と、未刈り地H0の外縁との距離を算出し、算出した距離が閾値以上である場合に、作業領域WAの外縁がずれていると判定する。
【0070】
作業領域WAの外縁がずれていると判定した場合には(ステップS21:YES)、端末30は、作業領域WAのずれを示す情報を表示させ(ステップS22)、ステップS06の処理に移行する。この例では、作業領域WAのずれを示す情報として、作業領域WAがずれている旨のメッセージが表示されている。一方、作業領域WAの外縁がずれていないと判定した場合には(ステップS21:NO)、端末30は、ステップS06の処理に移行する。ステップS06以降は、上記実施形態と同様である。
【0071】
本変形例によれば、自動操舵の開始に必要な条件が満たされた後、圃場情報が示す未作業地の外縁に対して作業領域WAの外縁がずれている場合に、作業領域WAのずれを示す情報を表示させるから、作業領域WAのずれを認識しやすくすることができる。
【0072】
また、本変形例によれば、表示制御部75が作業領域WAのずれを示す情報を表示させた後、自動操舵による走行を許可する操作を操作部63が受け付けた場合に、設定走行ラインSLに沿って自動操舵により自車を走行させるから、作業者が作業領域WAのずれを容認できると判断した場合に自動操舵による走行を開始させることができる。
【0073】
[第2変形例]
上記実施形態に以下の処理が追加されてもよい。第2変形例では、上記実施形態のステップS02の次に、以下の処理が実行される。
図15は、第2変形例に係る処理の流れ図である。ステップS31乃至S33は、表示制御工程の一例である。
図16A、17Aは、第2変形例に係る設定画面の第1領域A1に表示される図形である。
図16B、17Bは、第2変形例に係る設定画面の第2領域A2を示す図である。ステップS02に続いて、端末30は、推奨走行ラインRLを表示させる(ステップS31)。推奨走行ラインRLは、例えば、未刈り地H0の外縁と作業領域WAの外縁(この例では、左外縁)とを重ねた場合の設定走行ラインSLに相当する。
【0074】
次に、端末30は、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なったか否かを判定する(ステップS32)。
図16Aの例では、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なっていない。この場合、端末30は、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なっていないと判定し(ステップS32:NO)、ステップS32の処理を繰り返す。一方、
図17Aの例では、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なっている。この場合、端末30は、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なったと判定し(ステップS32:YES)、自車が推奨走行ラインRLに到達した旨のメッセージを表示させる。ステップS03以降は、上記実施形態と同様である。
【0075】
本変形例によれば、未作業地の外縁と自車の作業領域WAとから求められる推奨走行ラインRLを表示させ、設定走行ラインSLが推奨走行ラインRLに重なった場合に、自車が推奨走行ラインRLに到達した旨を表示させるから、推奨走行ラインRLに設定走行ラインSLを接近させることで、自動操舵の開始位置を容易に設定することができる。
【0076】
[第3変形例]
上記実施形態に以下の処理が追加されてもよい。第3変形例では、上記実施形態のステップS07の次に、以下の処理が実行される。
図18は、第3変形例に係る処理の流れ図である。ステップS41乃至S46は、補正工程の一例である。
図19Aは、第3変形例に係る設定画面の第1領域A1に表示される図形である。
図19Bは、第3変形例に係る設定画面の第2領域A2を示す図である。ステップS07に続いて、端末30は、パスオフセットの指示が受付部に受け付けられたか否かを判定する(ステップS41)。バスオフセットとは、自動操舵による走行中に設定走行ラインSLを所定距離だけ平行移動させる処理である(
図19A参照)。バスオフセットの指示が受け付けられなかった場合には(ステップS41:NO)、端末30は、ステップS08の処理に移行する。一方、バスオフセットの指示が受け付けられた場合には(ステップS41:YES)、端末30は、所定距離だけ設定走行ラインSLを並行移動させて走行するように、制御装置45に指示を送る(ステップS42)。
【0077】
次に、端末30は、自動操舵による作業を停止する操作が行われたか否かを判定する(ステップS43)。具体的には、端末30は、表示部64に停止ボタン(図示省略)を表示させる。停止ボタンが操作されなかった場合には(ステップS43:NO)、端末30は、ステップS41以降の処理を繰り返す。一方、停止ボタンが操作された場合には(ステップS43:YES)、端末30は、作業を停止させ、手動操舵に切り替え(ステップS44)、基準走行ラインBLを補正する操作が行われたか否かを判定する(ステップS45)。具体的には、基準走行ラインBLを補正するか否かを問うメッセージと、基準走行ラインBLを補正するためのボタンB4と、を表示させる(
図19B参照)。ボタンB4が操作されなかった場合には、端末30は、基準走行ラインBLを補正する操作が行われなかったと判定し(ステップS45:NO)、ステップS10の処理に移行する。一方、ボタンB4が操作された場合には、端末30は、基準走行ラインBLを補正する操作が行われたと判定し(ステップS45:YES)、直前の自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線CLに平行になるように基準走行ラインBLの方向を補正し(ステップS46)、ステップS10の処理に移行する。なお、ステップS45の処理は省略されてもよい。
【0078】
本変形例によれば、自動操舵による走行中に設定走行ラインSLに交差する方向に自車の位置が変更された場合に、自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線CLに平行になるように基準走行ラインBLの方向を補正する補正部76を備えるから、基準走行ラインBLの方向を容易に補正することができる。
【0079】
上記実施形態では、設定走行ラインSLに加えて作業領域WAを表示させる例が示されたが、設定走行ラインSLだけを表示させてもよく、設定走行ラインSLに代えて作業領域WAを表示させてもよい。
【0080】
第1変形例では、作業領域WAがずれている場合に作業領域WAがずれている旨のメッセージを表示させる例が示されたが、これに加えて、作業領域WAのずれ量を表示させてもよい。この構成によれば、作業領域WAのずれを修正する作業が容易になる。
【0081】
第2変形例では、設定走行ラインSLと推奨走行ラインRLを表示させる例が示されたが、これに加えて、設定走行ラインSLと推奨走行ラインRLとのずれ量を表示させてもよい。この構成によれば、設定走行ラインSLを推奨走行ラインRLに重ねる作業が容易になる。
【0082】
上記実施形態では、コンバイン1に本発明を適用した例が示されたが、コンバイン1以外の作業車両、例えば、田植機、耕運機等に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 コンバイン
45 制御装置(走行制御部)
63 操作部
64 表示部
71 基準走行ライン取得部
72 位置情報取得部
74 圃場情報取得部
75 表示制御部
76 補正部
BL 基準走行ライン
SL 設定走行ライン
WA 作業領域
RL 推奨走行ライン
CL 自動操舵による走行の始点と終点とを結ぶ直線