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特許7591920スパイクソール及びこれを備えたスパイクシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】スパイクソール及びこれを備えたスパイクシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43C 15/02 20060101AFI20241122BHJP
   A43B 13/26 20060101ALI20241122BHJP
【FI】
A43C15/02 101
A43B13/26 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020212499
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098858
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高増 翔
(72)【発明者】
【氏名】小島 優俊
(72)【発明者】
【氏名】大原 正貴
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-019843(JP,A)
【文献】特開2012-050815(JP,A)
【文献】実公昭50-031144(JP,Y1)
【文献】特開2019-092847(JP,A)
【文献】特開2015-229114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0257491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43C 15/02
A43B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面が設けられた樹脂製のアウトソールと、
前記接地面に設けられた複数のスパイク金具とを備え、
前記スパイク金具の各々は、上部が前記アウトソールに埋め込まれ、かつ下部が前記接地面から突出するスタッド部と、前記スタッド部の上端部に連なって形成され、前記アウトソールに埋め込まれるアンカー部とを備え、
前記スタッド部は、第1の面及び第2の面を有する板状のブレード部と、前記ブレード部の両脇に設置され前記第1の面側に曲げられたウィング部とを備え、
前記アンカー部は、前記ブレード部の上端部から前記第2の面側に延びるセンターアンカーと、それぞれの前記ウィング部の上端部から前記第1の面側に延びるサイドアンカーとを有し、
前記サイドアンカーの先端同士の間に隙間が設けられており、
前記ブレード部に垂直な方向における前記サイドアンカーの先端と前記ブレード部との距離は、前記ブレード部に垂直な方向における前記センターアンカーの先端とブレード部との距離と概ね等しい、スパイクソール。
【請求項2】
前記スタッド部は、前記ブレード部と前記ウィング部とが30°から45°の角度をなすように屈曲している、請求項1に記載のスパイクソール。
【請求項3】
前記センターアンカーに貫通穴が形成されている、請求項1又は2に記載のスパイクソール。
【請求項4】
複数の前記スパイク金具は、着用者の足のMP関節を支持する部分よりも前方に配置される前方金具を含み、
前記前方金具は、前記第2の面を前方に向けて設置されている、請求項1からのいずれか1項に記載のスパイクソール。
【請求項5】
前記前方金具を複数備え、
足幅方向における内足側の半面に配置された前記前方金具の数が、足幅方向における外足側の半面に配置された前記前方金具の数よりも多い、請求項に記載のスパイクソール。
【請求項6】
複数の前記スパイク金具は、着用者の足のMP関節を支持する部分とリスフラン関節を支持する部分との間に配置される中間金具を含み、
前記中間金具は、前記第1の面を前方に向けて設置されている、請求項4又は5に記載のスパイクソール。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のスパイクソールと、前記スパイクソールの上方に位置するアッパーとを備えた、スパイクシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイクソール及びこれを備えたスパイクシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツでは、競技者の靴が地面で滑ってしまうと、競技者は十分な推進力及び制動力を得ることができない。このため、芝生又は土の上で行われるスポーツでは、地面とのグリップ性を高めたスパイクシューズが用いられる。スパイクシューズは、アウトソールと、アウトソールから突出するスタッドとを備えたスパイクソールを有している。スパイクシューズは、スタッドが地面に食い込むため、スタッドを備えない靴よりも地面を捉える力が高い。
【0003】
近年、耐久性を高めるために、アウトソールを樹脂製としたスパイクシューズが用いられている。また、着用者の疲労軽減などの観点から、スパイクシューズは軽量化が要求されている。アウトソールが樹脂製のスパイクシューズは、アウトソールにスパイク金具を埋め込んで固定し、スパイク金具のうちアウトソールから突出した部分をスタッドとすることができる。各スタッドとなるスパイク金具を個別にアウトソールに埋め込んで固定する構造とすることにより、スタッド同士を連結する部分をスパイク金具に設ける必要がなくなり、軽量化を図ることできる。また、スタッド同士を連結する部分が存在しないことにより、走行時に足の底屈に追従して変形しやすくなるため、着用者に違和感を与えにくくなる。
【0004】
特許文献1には、基板から垂直に立ち上がる突片を備えたスパイク金具を樹脂製のアウトソールにインサート成形したスパイクシューズが開示されている。
【0005】
スタッドが推進力の向上に寄与するか、制動力の向上に寄与するかは、アウトソールへの設置位置によって定まる。したがって、特許文献1に開示されるスパイク金具は、推進力の向上目的で設置する場合には、推進力の反力で脱落しないように基板を後方に向けてアウトソールに設置され、制動力の向上目的で設置する場合には、制動力の反力で脱落しないように基板を前方に向けてアウトソールに設置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-254264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、実際には、推進力の向上目的でアウトソール設置するスパイク金具に対しても制動力の反力が加わり、制動力の向上目的でアウトソールに設置するスパイク金具に対しても推進力の反力が加わる。特許文献1に開示されるスパイク金具は、基板が設けられていない側から突片に外力が加わると、アウトソールに外力がそのまま伝わってしまう。このため、特許文献1に開示されるスパイク金具を用いたスパイクソールは、走行時及び制動時に地面からスタッドに加わる反力によって、アウトソールにひびが生じてしまい、スパイク金具が脱落しやすくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アウトソールに埋め込まれたスパイク金具がアウトソールから脱落しにくいスパイクソールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るスパイクソールは、接地面が設けられた樹脂製のアウトソールと、接地面に設けられた複数のスパイク金具とを備える。スパイク金具の各々は、上部がアウトソールに埋め込まれ、かつ下部が接地面から突出するスタッド部と、スタッド部の上端部に連なって形成され、アウトソールに埋め込まれるアンカー部とを備える。スタッド部は、第1の面及び第2の面を有する板状のブレード部と、ブレード部の両脇に設置され第1の面側に曲げられたウィング部とを備える。アンカー部は、ブレード部の上端部から第2の面側に延びるセンターアンカーと、それぞれのウィング部の上端部から第1の面側に延びるサイドアンカーとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るスパイクソールは、アウトソールに埋め込まれたスパイク金具がアウトソールから脱落しにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係るスパイクシューズの斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係るスパイクソールの下面図である。
図3図3は、実施の形態1に係るスパイクソールの内足側側面図である。
図4図4は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の斜視図である。
図5図5は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の下面図である。
図6図6は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の正面図である。
図7図7は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の背面図である。
図8図8は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の側面図である。
図9図9は、実施の形態1に係るスパイクシューズのアウトソールのうちスパイク金具が埋め込まれた部分の拡大図である。
図10図10は、実施の形態1に係るスパイク金具に第1の面側から外力が加わった際に脱落を防止する効果を示す図である。
図11図11は、実施の形態1に係るスパイク金具に第2の面側から外力が加わった際に脱落を防止する効果を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態2に係るスパイク金具の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るスパイクソール及びスパイクシューズの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、以下に示す実施の形態においては、同一の部分又は共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
以下において示す実施の形態においては、スパイクシューズを平面視した状態において靴底の踵中心を通る垂線であるヒールセンター軸が延在する方向を前後方向と称し、スパイクシューズを平面視した状態において上記前後方向と直交する方向を足幅方向と称する。
【0014】
また、前後方向のうち、靴底の足の後足部を支持する部分が位置する側の末端から、靴底の足の前足部を支持する部分が位置する側の末端を向く方向を前方と称し、前後方向のうち、靴底の足の前足部を支持する部分が位置する側の末端から、靴底の足の後足部を支持する部分が位置する側の末端を向く方向を後方と称する。
【0015】
また、足のうちの解剖学的正位における正中側を内足側と称し、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側を外足側と称する。すなわち、解剖学的正位における正中に近い側を内足側と称し、解剖学的正位における正中に遠い側を外足側と称する。
【0016】
さらには、高さ方向とは、他に特段の記載がない限り、前後方向及び足幅方向の両方向に直交する方向を意味し、厚さとは、他に特段の記載がない限り、高さ方向の寸法を意味する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るスパイクシューズの斜視図である。スパイクシューズ1Aは、アッパー10と、スパイクソール20Aとを備えている。アッパー10は、挿入された足の甲側の部分の全体を覆う形状を有している。スパイクソール20Aは、アッパー10の下方に位置し足裏を覆う。
【0018】
アッパー10は、アッパー本体11と、シュータン12とを含んでいる。シュータン12は、アッパー本体11に固定されている。また、アッパー本体11には、シューレース16が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
アッパー本体11は、足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が上部に設けられている。アッパー本体11の上側開口部の周縁には、複数の孔部13が設けられている。シュータン12は、アッパー本体11に設けられた上側開口部のうち、足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体11に縫製、溶着、接着又はこれらの組み合わせによって固定されている。アッパー本体11及びシュータン12としては、織地、編地、合成皮革又は樹脂が用いられる。なお、アッパー本体11及びシュータン12の材料は、例示したものに限定されない。
【0020】
シューレース16は、紐状の部材であり、アッパー本体11の複数の孔部13に挿通されている。複数の孔部13に挿通されたシューレース16は、アッパー本体11の上側開口部の周縁を足幅方向において互いに引き寄せる。アッパー本体11に足が挿入された状態においてシューレース16を締め付けることにより、アッパー本体11を足に密着させることが可能になる。
【0021】
なお、アッパー本体11を足に密着させるためにシューレース16の代わりに面ファスナーを用いる構造であってもよい。面ファスナーを用いてアッパー本体11を足に密着させる場合、アッパー本体11に孔部13は形成されない。
【0022】
図2は、実施の形態1に係るスパイクソールの下面図である。図3は、実施の形態1に係るスパイクソールの内足側側面図である。スパイクソール20Aは、接地面21bが設けられた樹脂製のアウトソール21と、接地面21bに設けられた複数のスパイク金具22,23とを備えている。アウトソール21は、下面が地面に接地する接地面21bとなっている。スパイク金具22,23は、一部がアウトソール21に埋め込まれており、スパイク金具22,23のうちアウトソール21から突出した部分がスタッドとなっている。スパイクソール20Aは、アウトソール21の形状の金型内にスパイク金具22,23を配置し、インサート成形することにより、スパイク金具22,23の一部がアウトソール21に埋め込まれる。
【0023】
スパイク金具22は、着用者の足のMP関節を支持する部分よりも前方に配置される前方金具22aと、着用者の足のMP関節を支持する部分とリスフラン関節を支持する部分との間に配置される中間金具22bとを含んでいる。前方金具22aは、着用者が前方へ走行する際の推進力を向上させる。中間金具22bは、前方へ走行中に着用者が減速する際の制動力を向上させる。また、着用者の足の踵を支持する部分に埋め込まれたスパイク金具23は、静止時の安定性を向上させる後金具として機能する。後金具となるスパイク金具23には、走行時及び制動時には負荷がかからないため、スタッド部全体が平板状の公知のスパイク金具が適用されている。
【0024】
前方金具22aは、アウトソール21に複数設置されており、足幅方向における内足側の半面に配置された前方金具22aの数が、足幅方向における外足側の半面に配置された前方金具22aの数よりも多い。着用者が前方へ走行する際には、母趾球の部分に体重をかけて地面を蹴り出すため、足幅方向において内足側の半面の前方金具22aの数を多くすることで、同数の前方金具を内足側と外足側とに均等に配置した構造と比較して、前方への走行時の推進力を向上させる効果が高められている。
【0025】
また、スパイクソール20Aは、アッパー本体11の下側開口部を覆う不図示の中底を備えている。中底は、スパイクソール20Aの上面に接着又は溶着によって固定される。また、中底は、上述したアッパー本体11の下縁に縫製によって固定される。なお、スパイクソール20Aは、中底を省略した構造であってもよい。
【0026】
また、スパイクシューズ1Aは、中敷きを備えていてもよい。スパイクシューズ1Aが中敷きを備える場合、中敷きは、アッパー10の内部でスパイクソール20Aの上に設置される。
【0027】
図4は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の斜視図である。図5は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の下面図である。図6は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の正面図である。図7は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の背面図である。図8は、実施の形態1に係るスパイクシューズのスパイク金具の側面図である。スパイク金具22の各々は、上部がアウトソール21に埋め込まれ、かつ下部が接地面21bから突出するスタッド部221と、スタッド部221の上端部に連なって形成され、アウトソール21に埋め込まれるアンカー部222とを備えている。スタッド部221は、第1の面31a及び第2の面31bを有する板状のブレード部31と、ブレード部31の両脇に設置され第1の面31a側に曲げられたウィング部32とを備えている。アンカー部222は、ブレード部31の上端部から第2の面31b側に延びるセンターアンカー41と、それぞれのウィング部32の上端部から第1の面31a側に延びるサイドアンカー42とを備えている。センターアンカー41には、貫通穴41aが形成されている。
【0028】
図5に示すように、ブレード部31とウィング部32とは、角度θをなして屈曲している。実施の形態1においては、角度θは45°である。サイドアンカー42は、ブレード部31に対して第1の面31a側に曲がっているウィング部32の上端から延びているため、ウィング部32が延びる方向は、ブレード部31に垂直な方向に対して斜め方向になるが、ブレード部31に垂直な方向におけるセンターアンカー41の先端41tとブレード部31との距離L1と、ブレード部31に垂直な方向におけるサイドアンカー42の先端42tとブレード部31との距離L2とは、概ね等しい。
【0029】
また、図5に示すように、ブレード部31の厚さ方向及び幅方向の中央の点Aを中心とし、センターアンカー41の長さを半径とする仮想円Cをブレード部31に垂直な面に描くと、サイドアンカー42は、仮想円Cの内側に配置される。実施の形態1に係るスパイク金具22は、スタッド部全体が平板状であるスパイク金具と比較すると、ブレード部31に垂直な面において、サイドアンカー42同士の隙間の面積が小さくなる。このため、アウトソール21を厚くしてアンカー部222を埋め込むために必要な樹脂の量を低減することができ、スパイクソール20Aの軽量化を実現できる。
【0030】
なお、ここでは、ブレード部31とウィング32部とがなす角度θが45°である構造を例としたが、ブレード部31とウィング部32とのなす角度θは、30°から45°の間であれば、上記同様にアウトソール21の樹脂量を低減してスパイクソール20Aを軽量化する効果が得られる。
【0031】
上記の形状のスパイク金具22は、板状の金属部材にプレス加工を施すことにより、容易に量産することができる。なお、プレス加工により板状の金属部材に曲げ加工を施してスパイク金具22を作成する場合には、ブレード部31とセンターアンカー41との境界の谷折りとなる部分に予めV溝を形成しておくことで、ブレード部31とセンターアンカー41との境界部分の曲率を大きくし、ブレード部31及びセンターアンカー41の面積を減らすことなく、スパイク金具22を小型化できる。同様に、ウィング部32とサイドアンカー42との境界の谷折りとなる部分に予めV溝を形成しておくことで、ウィング部32とサイドアンカー42との境界部分の曲率を大きくし、ウィング部32及びサイドアンカー42の面積を減らすことなく、スパイク金具22を小型化できる。
【0032】
図9は、実施の形態1に係るスパイクシューズのアウトソールのうちスパイク金具が埋め込まれた部分の拡大図である。図9に示すように、スタッド部221の上部及びアンカー部222は、アウトソール21に埋め込まれており、スタッド部221の下部のみがアウトソール21から突出している。スタッド部221のうちアウトソール21から突出した部分は、着用者が走行又は制動する際に地面に貫入される。スパイク金具22は、ウィング部32がブレード部31の第1の面31a側に屈曲しているため、地面に貫入したスタッド部221が地面を捉える力は、第1の面31a側の地面を捉える力の方が、第2の面31b側の地面を捉える力よりも大きい。したがって、図2に示したように、前方への推進力を向上させる前方金具22aとするスパイク金具22は、第2の面31bを前方に向けてアウトソール21に設置することにより、スタッド部221で第1の面31a側の地面を捉えて大きな推進力を発生させることができる。また、前方への走行中の制動力を向上させる中間金具22bとするスパイク金具22は、第1の面31aを前方に向けてアウトソール21に設置することにより、スタッド部221で第1の面31a側の地面を捉えて大きな制動力を発生させることができる。
【0033】
着用者が競技中に不特定の方向への走行又は制動を行うことにより、スパイク金具22のスタッド部221には、第1の面31a側及び第2の面31b側の両方から外力が加わる。
【0034】
図10は、実施の形態1に係るスパイク金具に第1の面側から外力が加わった際に脱落を防止する効果を示す図である。スパイク金具22のスタッド部221に第1の面31a側から外力F1が加わる時、センターアンカー41の先端部の支点P1回りにモーメントM1が発生するため、サイドアンカー42を押さえる力R1がアウトソール21から加わることによりスパイク金具22の脱落が抑制される。図11は、実施の形態1に係るスパイク金具に第2の面側から外力が加わった際に脱落を防止する効果を示す図である。スパイク金具22のスタッド部221に第2の面31b側から外力F2が加わる時、サイドアンカー42の先端部の支点P2回りにモーメントM2が発生するため、センターアンカー41を押さえる力R2がアウトソール21から加わることによりスパイク金具22の脱落が防止される。センターアンカー41に貫通穴41aが形成されていることにより、貫通穴41aの中にアウトソール21を形成する樹脂が流れ込む。このため、アウトソール21がセンターアンカー41を押さえる力を強めることができる。
【0035】
着用者が前方に走行する際には、前方金具22aとするスパイク金具22のスタッド部221に第1の面31a側から外力F1が加わり、中間金具22bとするスパイク金具22のスタッド部221に第2の面31b側から外力F2が加わる。一方、前方に走行中の着用者が制動する際には、前方金具22aとするスパイク金具22のスタッド部221に第2の面31b側から外力F2が加わり、中間金具22bとするスパイク金具22のスタッド部221に第1の面31a側から外力F1が加わる。スパイク金具22は、外力F1,F2のどちらが加わってもアウトソール21からの脱落が防止されるため、前方金具22a及び中間金具22bのどちらにも用いることができる。
【0036】
実施の形態1に係るスパイクシューズ1Aは、ブレード部31に垂直な方向におけるセンターアンカー41の先端とブレード部31との距離L1と、ブレード部31に垂直な方向におけるサイドアンカー42の先端とブレード部31との距離L2とが概ね等しいため、スパイク金具22のスタッド部221に第1の面31a側から加わる外力に対するアウトソール21の耐久性と、第2の面31b側から加わる外力に対するアウトソール21の耐久性とが同等であり、特定の方向から加わる力に対してアウトソール21の耐久性が低くはならない。また、ブレード部31に垂直な方向におけるセンターアンカー41の先端とブレード部31との距離L1と、ブレード部31に垂直な方向におけるサイドアンカー42の先端とブレード部31との距離L2とが概ね等しいスパイク金具22は、曲げ加工によって作成する場合には、板状の金属部材から曲げ加工前のスパイク金具22を打ち抜く際に生じる廃材を少なくできる。したがって、スパイク金具22作成時の材料歩留まりを高め、材料コストを低減することができる。
【0037】
このように、実施の形態1に係るスパイクシューズ1Aは、スパイク金具22のスタッド部221に特定の方向から外力が加わった時にアウトソール21が破損しやすくなることがないため、野球及びソフトボールなどの競技者が不特定の方向に走行及び制動する競技に適している。
【0038】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2に係るスパイク金具の上面図である。実施の形態2に係るスパイク金具22は、サイドアンカー42が拡幅されて貫通穴42aが形成されている点で、実施の形態1に係るスパイク金具22と相違する。
【0039】
実施の形態2に係るスパイク金具22は、インサート成形でアンカー部222がアウトソール21に埋め込まれる際に、アウトソール21の樹脂が貫通穴42aに入り込んで固化する。したがって、サイドアンカー42に貫通穴が形成されていない実施の形態1に係るスパイク金具22と比較すると、実施の形態2に係るスパイク金具22は、アウトソール21がサイドアンカー42を押さえる力が強くなる。このため、実施の形態2に係るスパイク金具22は、スタッド部221に第1の面31a側から外力が加わった時に、アウトソール21から脱落しにくい。
【0040】
上記の説明において、ブレード部31は平板状であったが、ブレード部31は、第1の面31a側に凸又は第2の面31b側に凸の曲面形状であってもよい。またブレード部31は、屈曲部を持ち2以上の面で構成された構造であってもよい。例えば、ブレード部31は、下面視V字状であってもよい。また、スパイク金具22の平面視の形状は、左右対称でなくてもよい。例えば、左右のサイドアンカー42の長さが異なってもよい。また、左右のウィング部32の大きさが異なってもよい。
【0041】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1A スパイクシューズ、10 アッパー、11 アッパー本体、12 シュータン、13 孔部、16 シューレース、20A スパイクソール、21 アウトソール、21b 接地面、22,23 スパイク金具、22a 前方金具、22b 中間金具、31 ブレード部、31a 第1の面、31b 第2の面、32 ウィング部、41 センターアンカー、41a,42a 貫通穴、41t,42t 先端、42 サイドアンカー、221 スタッド部、222 アンカー部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12