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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20241122BHJP
   H01L 31/05 20140101ALI20241122BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 570
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020217405
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102585
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山村 昌敬
(72)【発明者】
【氏名】赤池 哲
(72)【発明者】
【氏名】福田 将典
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第207909893(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第109449229(CN,A)
【文献】特開2012-191073(JP,A)
【文献】特開2019-195054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0237592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って配置される太陽電池ストリングの複数を前記第1の方向に対して交わる第2の方向にスペースを空けて配置して構成される太陽電池ストリングユニットと、該太陽電池ストリングユニットの受光面側に配置される第1板状部材と、該受光面側とは反対の裏面側に配置される第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に前記太陽電池ストリングユニットを流動しながら封止するための封止樹脂材と、を備えた太陽電池モジュールであって、
各太陽電池ストリングは、前記第1の方向における両端に電気的に接続可能な接続部を備え、
複数の前記太陽電池ストリングそれぞれの両端の接続部のうちの少なくとも一端側の接続部同士を接続する配線材を備え、
前記第2の方向で隣り合う前記太陽電池ストリング間のスペースに、前記配線材に連結され、前記第1の方向に延びる連結材を備え、
該連結材は、前記第2板状部材に固定され、
前記一端側の接続部同士を接続する一方の配線材と該一端側とは反対側の他端側の接続部同士を接続する他方の配線材と、を備え、前記連結材は、前記一方の配線材及び前記他方の配線材から電力を取り出す一対の電力取出用配線材からなり、該一対の電力取出用配線材の遊端部のそれぞれが、折り曲げられて前記第2板状部材に形成の貫通孔に挿通して固定され、
各太陽電池ストリングが、前記第1の方向に並べられた複数の太陽電池セルを電気的に接続して構成され、前記複数の太陽電池セルのうち下側に配置される太陽電池セルが有する受光面側のバスバー電極に上側に配置される太陽電池セルが有する裏面側のバスバー電極が重なるように該複数の太陽電池セルをシングリング接続することにより前記各太陽電池ストリングが構成され、前記各太陽電池ストリングの厚みのうち、前記太陽電池セルが重なった部分の最大厚みが、405μm~452μmの範囲で、かつ、重なっていない前記太陽電池セルの部分の最小厚みが、140μm~180μmの範囲であり、前記一対の電力取出用配線材の厚みが、360μm~400μmの範囲であることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
第1の方向に沿って配置される太陽電池ストリングの複数を前記第1の方向に対して交わる第2の方向にスペースを空けて配置して構成される太陽電池ストリングユニットと、該太陽電池ストリングユニットの受光面側に配置される第1板状部材と、該受光面側とは反対の裏面側に配置される第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に前記太陽電池ストリングユニットを流動しながら封止するための封止樹脂材と、を備えた太陽電池モジュールであって、
各太陽電池ストリングは、前記第1の方向における両端に電気的に接続可能な接続部を備え、
複数の前記太陽電池ストリングそれぞれの両端の接続部のうちの少なくとも一端側の接続部同士を接続する配線材を備え、
前記第2の方向で隣り合う前記太陽電池ストリング間のスペースに、前記配線材に連結され、前記第1の方向に延びる連結材を備え、
該連結材は、前記第2板状部材に固定され、
前記一端側の接続部同士を接続する一方の配線材と該一端側とは反対側の他端側の接続部同士を接続する他方の配線材と、を備え、前記連結材は、前記一方の配線材及び前記他方の配線材から電力を取り出す一対の電力取出用配線材からなり、該一対の電力取出用配線材の遊端部のそれぞれが、折り曲げられて前記第2板状部材に形成の貫通孔に挿通して固定され、
前記一対の電力取出用配線材は、引張強度が268.33Mpa~276.94Mpaの範囲で、かつ、降伏点が、134.40Mpa~152.80Mpaの範囲の銅を主成分とする金属材料からなることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の方向に沿って配置される太陽電池ストリングの複数を前記第1の方向に対して交わる第2の方向にスペースを空けて併設される太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
上記太陽電池モジュールでは、太陽電池ストリングが第1の方向に並べられた複数の太陽電池セルを電気的に接続して構成され、該太陽電池ストリングの複数を第1の方向と交わる第2の方向にスペースを空けて配置することによって、発電電力の出力を高めるようにしている。各ストリングの第1の方向における両端には、電気的に接続可能なワイヤを備えており、これらワイヤが配線材に接続されることで、第2の方向で隣接するストリング同士を接続して太陽電池ストリングユニットを構成している。この太陽電池ストリングユニットを、受光面側に配置される第1保護部材と、該受光面側とは反対の裏面側に配置される第2保護部材との間に配置し、第1保護部材と第2保護部材との間に配置される封止樹脂で太陽電池ストリングユニットを封止することにより太陽電池モジュールが得られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-107758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、第1保護部材と第2保護部材との間の太陽電池ストリングユニットを封止部材で封止する際には、加熱しながら加圧処理すること(ラミネート処理)によって封止部材が溶融して第1保護部材と第2保護部材との間を流動しながら太陽電池ストリングユニットを封止する。ここで、前記封止部材が流動することにより、複数の太陽電池ストリングの位置がずれ、隣接する太陽電池ストリング間が過度に近接することがある。また、配線材と、第1保護部材および第2保護部材との相対位置関係が前記封止部材の流動により、封止する前の位置からずれてしまうことを抑制することができない。このような太陽電池ストリングの位置ずれは、外観の悪化や、長期信頼性の低下を引き起こす場合があり、早期の改善が要望されている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、太陽電池ストリングや配線材の位置がずれてしまうことを抑制することができる太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る太陽電池モジュールは、第1の方向に沿って配置される太陽電池ストリングの複数を前記第1の方向に対して交わる第2の方向にスペースを空けて配置して構成される太陽電池ストリングユニットと、該太陽電池ストリングユニットの受光面側に配置される第1板状部材と、該受光面側とは反対の裏面側に配置される第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に前記太陽電池ストリングユニットを流動しながら封止するための封止樹脂材と、を備えた太陽電池モジュールであって、各太陽電池ストリングは、前記第1の方向における両端に電気的に接続可能な接続部を備え、複数の前記太陽電池ストリングそれぞれの両端の接続部のうちの少なくとも一端側の接続部同士を接続する配線材を備え、前記第2の方向で隣り合う前記太陽電池ストリング間のスペースに、前記配線材に連結され、前記第1の方向に延びる連結材を備え、該連結材は、前記第2板状部材に固定されていることを特徴としている。
【0007】
かかる構成によれば、太陽電池ストリングの接続部が配線材に接続されるとともに、隣り合う前記太陽電池ストリング間のスペースに連結材が配置されているため、熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材で配線材に対する太陽電池ストリングがずれることを抑制することができる。また、配線材に連結された連結材が第2板状部材に固定されているので、熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材により配線材の位置がずれることを抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、前記一端側の接続部同士を接続する一方の配線材と該一端側とは反対側の他端側の接続部同士を接続する他方の配線材と、を備え、前記連結材は、前記一方の配線材及び前記他方の配線材から電力を取り出す一対の電力取出用配線材からなり、該一対の電力取出用配線材の遊端部のそれぞれが、折り曲げられて前記第2板状部材に形成の貫通孔に挿通して固定されていてもよい。
【0009】
上記のように、連結材を一方の配線材及び他方の配線材から電力を取り出す一対の電力取出用配線材から構成するとともに、貫通孔を連結材の固定のために用いることができるため、部品点数を減らすことができる。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、各太陽電池ストリングが、前記第1の方向に並べられた複数の太陽電池セルを電気的に接続して構成され、前記複数の太陽電池セルのうち下側に配置される太陽電池セルが有する受光面側のバスバー電極に上側に配置される太陽電池セルが有する裏面側のバスバー電極が重なるように該複数の太陽電池セルをシングリング接続することにより前記各太陽電池ストリングが構成され、前記各太陽電池ストリングの厚みのうち、前記太陽電池セルが重なった部分の最大厚みが、405μm~452μmの範囲で、かつ、重なっていない前記太陽電池セルの部分の最小厚みが、140μm~180μmの範囲であり、前記一対の電力取出用配線材の厚みが、360μm~400μmの範囲であってもよい。
【0011】
上記構成によれば、複数の太陽電池セルをシングリング接続するだけで、太陽電池セル同士の電気的な接続を行えるため、太陽電池ストリングを構成しやすい。また、太陽電池ストリングの最大厚みを405μm~452μmの範囲で、かつ、最小厚みを140μm~180μmの範囲とし、一対の電力取出用配線材の厚みが、360μm~400μmの範囲とすることによって、熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材を太陽電池ストリングの最大厚みと略同等の厚みを有する一対の電力取出用配線材で確実に受け止めることができる。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池モジュールは、前記一対の電力取出用配線材が、引張強度が268.33Mpa~276.94Mpaの範囲で、かつ、降伏点が、134.40Mpa~152.80Mpaの範囲の銅を主成分とする金属材料からなっていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、一対の電力取出用配線材が、引張強度が268.33Mpa~276.94Mpaの範囲で、かつ、降伏点が、134.40Mpa~152.80Mpaの範囲の銅を主成分とする金属材料から構成することによって、導通性能の低下及び変形を招くことがない一対の電力取出用配線材により流動する封止樹脂材を確実に受け止めることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、配線材に連結され、第1の方向に延びる連結材を、第2板状部材に固定することによって、配線材および太陽電池ストリングの位置がずれてしまうことを抑制することができる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の太陽電池モジュールを構成する太陽電池ストリングクラスターを上から見た図である。
図2】同太陽電池モジュールを下から見た分解斜視図である。
図3】同太陽電池モジュールの電力取出用配線材付近の縦断面図である。
図4】電力取出用配線材の縦断面図である。
図5】複数の太陽電池セルの接続部分を示す要部の拡大縦断面図である。
図6】同太陽電池モジュールの電力の取り出し部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールについて、図面を参照しつつ説明する。なお、図1の紙面において、用紙の長手方向を左右方向(横方向、第2の方向)Xとし、用紙の短手方向を上下方向(縦方向、第1の方向)Yとして説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、太陽電池モジュールは、第2の方向Xに配置された2個の太陽電池ストリングユニット1,1からなる太陽電池ストリングクラスター2を備え、この太陽電池ストリングクラスター2の受光面側(上側)に配置される第1板状部材3と、該受光面側とは反対側(裏面側、下側)に配置される第2板状部材4と、第1板状部材3と第2板状部材4との間に太陽電池ストリングクラスター2を流動しながら(流動により)封止するための一対の封止樹脂材5,6と、を備えている。
【0018】
図2では、下側から第1板状部材3、第1封止樹脂材5、太陽電池ストリングクラスター2、第2封止樹脂材6、第2板状部材4を重ね合わせて、熱と圧力とが加えられるラミネート処理によって2枚の封止樹脂材5,6が溶融して、第1板状部材3と第2板状部材4との間を流動しながら太陽電池ストリングクラスター2を第1板状部材3と第2板状部材4との間に封止する。
【0019】
左側の太陽電池ストリングユニット1は、Y方向に長い第1太陽電池ストリング7の3つを第2の方向Xに並べた状態で並列に接続して構成されている。右側の太陽電池ストリングユニット1は、左側の第1太陽電池ストリングユニット1と同様に、Y方向に長い第2太陽電池ストリング8の3つを第2の方向Xに並べた状態で並列に接続して構成されている。
【0020】
左側に配置された3個の第1太陽電池ストリング7のうちの左から2番目と3番目の第1太陽電池ストリング7,7は、それぞれ同一形状(図2では第2の方向Xに長い長方形)で同一面積を有する複数(図2では10個)の第1太陽電池セル7Aで構成される第1太陽電池ストリング7から構成されている。
【0021】
また、左端の第1太陽電池ストリング7は、同一形状(隅に面取り部7R,7Rのある台形状)で同一面積を有し、かつ、第1太陽電池セル7Aの面積よりも小さな面積を有する複数(第1太陽電池ストリング7を構成する第1太陽電池セル7Aと同数であり、図1では10個)の第2太陽電池セル7Bで構成される第1太陽電池ストリング7から構成されている。
【0022】
右側に配置された3個の第2太陽電池ストリング8のうちの左から1番目と2番目の第2太陽電池ストリング8,8は、それぞれ同一形状(図2では第2の方向Xに長い長方形)で同一面積を有する複数(図1では10個)の第1太陽電池セル8Aで構成される第2太陽電池ストリング8から構成されている。
【0023】
また、右端の第2太陽電池ストリング8は、同一形状(隅に面取り部8R,8Rのある台形状)で同一面積を有し、かつ、第1太陽電池セル8Aの面積よりも小さな面積を有する複数(第1太陽電池ストリング7を構成する第1太陽電池セル7Aと同数であり、図2では10個)の第2太陽電池セル8Bで構成される第2太陽電池ストリング8から構成されている。
【0024】
第1の方向Yで隣り合う第1太陽電池セル7A,7A、8A,8A同士が直列接続されている。また、第1の方向Yで隣り合う第2太陽電池セル7B,7B、8B,8B同士が直列接続されている。これらの接続は、後述するシングリング接続によりなされる。各第1太陽電池セル7A,8Aの幅(第2の方向X)の寸法は、同一に構成され、また、各第2太陽電池セル7B,8Bの幅(第2の方向X)の寸法は、同一に構成されている。この実施形態では、第1太陽電池セル7A,8Aの幅(第2の方向X)の寸法と第2太陽電池セル7B,8Bの幅(第2の方向X)の寸法とを同一に構成し、かつ、第1太陽電池セル7A,8Aの縦(第1の方向Y)の寸法と第2太陽電池セル7B,8Bの縦(第1の方向Y)の寸法とを同一に構成している。これは、1枚の太陽電池セルを短冊状に切断することで第1太陽電池セル7A,8A及び第2太陽電池セル7B,8Bが製造されるからである。一般的に、前記太陽電池セルは、四隅に面取り部を有する略矩形状(八角形状)であるため、第2太陽電池セル7B,8Bに面取り部7R,8Rが形成される(図1参照)。
【0025】
本実施形態における第1太陽電池ストリング7を構成する複数の第1太陽電池セル7Aのシングリング接続を、図5に示している。つまり、下側に位置する第1太陽電池セル7Aが有するバスバー電極9に上側に位置する第1太陽電池セル7Aが有する裏面バスバー電極10が重なるように配置し、各電極9,10が重なった部分は、導電性部材11を介して電気的に接続される。このように配置することで、複数の第1太陽電池セル7A(又は複数の第2太陽電池セル7B、図5では、第1太陽電池セル7Aのみ図示している)がそれぞれ直列接続され、第1太陽電池ストリング7を構成する。また、図示していないが、複数の第1太陽電池セル8A(又は複数の第2太陽電池セル8B)がそれぞれ直列接続され、第2太陽電池ストリング8を構成する。
【0026】
第1板状部材3は、長方形状で板状の透明なガラス(例えば高透過(フロート)未強化ガラス)から構成されているが、ガラス以外の透明な材料から構成してもよい。また、第2板状部材4は、第1板状部材3と略同一の大きさで、かつ、略同一の厚みを有する透明なガラス(例えば高透過(フロート)未強化ガラス)から構成されているが、ガラス以外の材料で構成してもよい。また、この第2板状部材4は、透明でなくてもよい。また、第2板状部材4は、後述する2組の電力取出用配線材19,20,21,22を挿通させるための2個の貫通孔4K,4K(図2参照)が形成されている。尚、貫通孔4K,4Kは、円形状に形成されているが、角形状、楕円形状、多角形状等、どのような形状であってもよい。
【0027】
第1封止樹脂材5は、第1板状部材3と略同一の大きさでシート状に構成された透明な封止樹脂材から構成されている。また、第2封止樹脂材6は、第1封止樹脂材5と同様に、第2板状部材4と略同一の大きさでシート状に構成された透明な封止樹脂材から構成されている。第1封止樹脂材5及び第2封止樹脂材6は、同一の材料から構成され、その材料としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、POE(ポリオレフィンエラストマー)、PVB(ポリビニルブチラール)、アイオノマー等が挙げられる。
【0028】
各太陽電池ストリング7又は8は、第1の方向Yにおける一端に電気的に接続可能な導電性を有する複数(図1では5本)の金属材料でなる複数の接続部12又は13を備えている。これら接続部12又は13は、線状(又は帯状でもよい)に形成されているが、どのような形態であってもよい。左側の3個の太陽電池ストリング7における一端側(図1の上側)の複数(図1では15個)の接続部12が、第2の方向に延びる帯状の第1配線材14で接続されている。また、右側の3個の太陽電池ストリング8における一端側(図1の上側)の複数(図1では15個)の接続部13が、第2の方向に延びる帯状で第1配線材14と略同一長さでかつ略同一厚みの第2配線材15で接続されている。また、6個の太陽電池ストリング7,8における他端側(図1の下側)の複数(図1では全部で30個)の接続部16,17が、第2の方向に延びる帯状で第1配線材14の略2倍の長さでかつ略同一厚みの第3配線材18で接続されている。尚、接続部12,13,16,17と配線材14,15,18との接続は、半田付け、導電性接着剤による接着、導電性フィルムによる接着等を用いることになる。
【0029】
図1に示すように、左側から2番目の太陽電池ストリング7とこれに隣り合う左側から3番目の太陽電池ストリング7との間のスペースに、第1連結材19及び第2連結材20を備えている。第1連結材19は、一端が第1の方向Yの一端側(図1では上側)の第1配線材14に連結され、かつ、他端が第1の方向Yの他端側(図1では下側)へ向かって延びている。第2連結材20は、一端が第1の方向Yの他端側(図1では下側)の第3配線材18に連結され、かつ、他端が第1の方向Yの一端側(図1では上側)へ向かって延びている。
【0030】
また、左側から4番目の太陽電池ストリング8とこれに隣り合う左側から5番目の太陽電池ストリング8との間のスペースに、第3連結材21及び第4連結材22を備えている。第3連結材21は、一端が第1の方向Yの一端側(図1では上側)の第2配線材15に連結され、かつ、他端が第1の方向Yの他端側(図1では下側)へ向かって延びている。第4連結材22は、一端が第1の方向Yの他端側(図1では下側)の第3配線材18に連結され、かつ、他端が第1の方向Yの一端側(図1では上側)へ向かって延びている。
【0031】
第1連結材19及び第2連結材20は、第1の方向の一端と他端とに備えた配線材14,18から電力を取り出すべく、配線材14,18に電気的に接続された一対の電力取出用配線材から構成され、図6に示すように、一対の電力取出用配線材19,20の遊端部のそれぞれが、外側に90°折り曲げられて第2板状部材4に形成の貫通孔4Kに下方から挿通され、貫通孔4Kを閉じる蓋部材23に形成の貫通孔23K,23Kを更に貫通して外側に90°折り曲げられて蓋部材23の上面に当接することで固定されている。また、第3連結材21及び第4連結材22は、第1連結材19及び第2連結材20と同様に、第1の方向Yの一端と他端とに備えた配線材15,18から電力を取り出すべく、配線材15,18に電気的に接続された一対の電力取出用配線材から構成され、一対の電力取出用配線材21,22の遊端部のそれぞれが、前記同様に外側に90°折り曲げられて第2板状部材4に形成の貫通孔4Kに下方から挿通し、貫通孔4Kを閉じる蓋部材23に形成の貫通孔23K,23Kを更に貫通して外側に90°折り曲げられて蓋部材23の上面に当接することで固定されている。蓋部材23には、一対の電力取出用配線材19,20又は21,22を挿通させるための一対の貫通孔23K,23Kが形成され、第2板状部材4の外側表面(図6では上面)4Aに接着剤等により固定されており、溶けた封止樹脂材5,6が貫通孔4Kから外部(図6では、上方)へ漏れることがないようにしている。そして、溶けた封止樹脂材5,6が貫通孔4Kを塞いで太陽電池モジュールが完成した後は、蓋部材23は、取り外してもよいし、残しておいてもよい。図6に示す一対の電力取出用配線材19,20又は21,22の遊端部の隙間は、両者が接触しない隙間であればよい。また、一方の電力取出用配線材19,21が、他方の電力取出用配線材20,22に比べて長さが短くなっているのは、貫通孔4K,4Kの位置が第2板状部材4の配線材14,15寄りに形成されているからである。つまり、貫通孔4K,4Kの位置に応じて一方の電力取出用配線材19,21の長さと他方の電力取出用配線材20,22の長さが決定されることになる。尚、一対の電力取出用配線材19,20又は21,22(一方が正極で、他方が負極)の遊端部は、図示していないケーブル等を介して電力変換装置へ接続される。
【0032】
電力取出用配線材19,20,21,22は、同一構成であり、1つの電力取出用配線材19を図3及び図4に基づいて説明する。電力取出用配線材19は、銅でなる配線材本体部19Aと、配線材本体部19Aの両面を覆う一対のハンダメッキからなる導電層19B,19Bと、を備えている。実際には、図3に示すように、電力取出用配線材19の幅寸法Wが6mmである。また、図5に示すように、シングリング接続して2枚の太陽電池セル7A,7Aが重なり合った部分の厚み(最大厚み)D1が、405μm~452μmの範囲で、かつ、重なっていない1枚の太陽電池セル7Aの厚み(最小厚み)D2が、140μm~180μmの範囲である。尚、最大厚みD1は、2枚の太陽電池セル7A,7Aの厚み320μm~360μmと、下側に位置する第1太陽電池セル7Aが有するバスバー電極9の厚みと、上側に位置する第1太陽電池セル7Aが有する裏面バスバー電極10の厚みと、導電性部材11の厚みと、が合計された厚みである。また、電力取出用配線材19の厚みD3が、360μm~400μmの範囲であり、各導電層19Bの厚みD4(図4参照)が30μm~50μmで、配線材本体部19Aの厚みD5(図4参照)が300μm±20μmである。また、図3において、電力取出用配線材19と左側の太陽電池セル7Aとの隙間L1及び電力取出用配線材19と右側の太陽電池セル7Aとの隙間L2が同一の3mmとなっている。上記のように厚みを設定することによって、熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材5,6の過度の流動を太陽電池ストリングの最大厚みと略同等の厚みを有する一対の電力取出用配線材19,20,21,22で緩和することができる。尚、配線材本体部19Aは、無酸素銅99.96%からなる。また、導電層19Bは、Sn60%とPb40%とからなる。第1太陽電池セル7Aと配線材の関係は、1枚の第1太陽電池セル7Aの厚みD2<電力取出用配線材19の厚みD3<2枚の第1太陽電池セル7A,7Aが重なり合った部分の厚みD1となる。尚、第2太陽電池セル8Aも第1太陽電池セル7Aと同様である。
【0033】
また、一対の電力取出用配線材19,20、21,22は、引張強度が268.33Mpa~276.94Mpaの範囲で、かつ、降伏点が、134.40Mpa~152.80Mpaの範囲の銅を主成分とする金属材料からなっている。このように構成することによって、導通性能の低下及び変形を招くことがない一対の電力取出用配線材により、封止樹脂材5,6の過度の流動を緩和することができる。
【0034】
上記のように構成された部材(図1参照)を真空加熱プレス装置に配置して太陽電池モジュールを作成する。つまり、真空加熱プレス装置は、真空中で前記部材を加熱するラミネート処理を実施する。ラミネート処理では、真空状態で140℃から150℃の温度で8分程度加熱した後、140℃から150℃の温度で37.8kpa程度の圧力で加圧して太陽電池モジュールを得る。このようにして製造された(得られた)太陽電池モジュールでは、前述したように、太陽電池ストリング7,8の接続部12,13,16,17が配線材14,15,18に接続されているため、前記熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材5,6で配線材14,15,18に対する太陽電池ストリング7,8がずれることを抑制することができることが確認できた。また、配線材14,15,18に連結された連結材19,20,21,22が第2板状部材4に蓋部材23を介して固定されているので、熱と圧力を受けて流動する封止樹脂材5,6により配線材14,15,18がずれることを抑制することができることが確認できた。また、連結材19,20,21,22を配線材14,15,18から電力を取り出す電力取出用配線材から構成するとともに、貫通孔4Kを連結材19,20,21,22の固定のために用いることができるため、部品点数を減らすことができる。
【0035】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0036】
前記実施形態では、連結材19,20,21,22を電力取出用配線材から構成したが、連結材19,20,21,22を、第2板状部材4に固定するだけの部材から構成してもよい。この場合、連結材を、非導電性を有する合成樹脂からなる絶縁材から構成してもよい。この場合、連結材を、第2板状部材4の内面に固定するようにしてもよい。また、電力の取り出しを第2板状部材4の貫通孔を通して外部へ取り出すのではなく、配線材14,15,18に接続された別の配線材を第2板状部材4の側面から外部へ取り出すようにしてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、6個の太陽電池ストリング7,8を配置した太陽電池モジュールを示したが、2個以上の任意の個数の太陽電池ストリングを配置した太陽電池モジュールであってもよい。2個の太陽電池ストリングを第2の方向に配置した場合には、第2の方向で隣り合う太陽電池ストリング間のスペースに、一端側の接続部同士を接続する配線材に連結された連結材を配置し、その連結材を第2板状部材4に形成の貫通孔に固定する、又は第2板状部材4に直接固定することになる。
【0038】
また、前記実施形態では、複数(6個)の太陽電池ストリング7,8を太陽電池セルの接続方向に対して垂直の方向(直交する方向)に並べて電気的に接続したが、6個のうちの任意の個数の太陽電池ストリングを太陽電池セルの接続方向に対して交わる方向に並べて電気的に接続してもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、第1の方向に並べた複数の第1太陽電池セル7A又は複数の第2太陽電池セル8Aを電気的に接続して第1太陽電池ストリング7又は第2太陽電池ストリング8を構成したが、第1の方向に長い一枚のセルから太陽電池ストリングを構成してもよい。また、複数の太陽電池セルをシングリング接続したが、シングリング接続以外の接続、つまり第1の方向に並べた複数の太陽電池セルの導電部同士を導電性ワイヤにて接続してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…太陽電池ストリングユニット、2…太陽電池ストリングクラスター、3…第1板状部材、4…第2板状部材、4A…外側表面(上面)、4K…貫通孔、5…第1封止樹脂材、6…第2封止樹脂材、7…第1太陽電池ストリング、7A…第1太陽電池セル、7B…第2太陽電池セル、7R…面取り部、8…第2太陽電池ストリング、8A…第1太陽電池セル、8B…第2太陽電池セル、8R…面取り部、9…バスバー電極、10…裏面バスバー電極、11…導電性部材、12,13,16,17…接続部、14…第1配線材、15…第2配線材、18…第3配線材、19…第1連結材(電力取出用配線材)、20…第2連結材(電力取出用配線材)、21…第3連結材(電力取出用配線材)、22…第4連結材(電力取出用配線材)、19A…配線材本体部、19B…導電層、23…蓋部材、23K…貫通孔、D1,D2,D3,D4,D5…厚み、L1,L2…隙間、W…幅寸法、X…第2の方向、Y…第1の方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6