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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20241122BHJP
   G01N 21/91 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/91 A
G01N21/91 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020217507
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102651
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐太
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106493(JP,A)
【文献】特開2020-057623(JP,A)
【文献】特開2010-086884(JP,A)
【文献】特開2019-105785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、前記紫外線照射装置は紫外線LED光源と、該紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、
前記被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、該X軸方向に直交する前記被照射領域上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと前記紫外線LED光源が前記被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、前記紫外線LED光源と、前記紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する前記被照射領域との間に設けられ、
また前記2つのリニアフレネルレンズ及び前記スリットは、Z軸と直交するXY仮想平面上乃至その近傍に位置しており、
前記スリットは、前記紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、前記2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、
前記2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、
また前記2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、
更に前記2つのリニアフレネルレンズは、複数の前記分割領域の各々において、前記紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて前記被照射領域のX軸方向における全域を照射させる機能を有して形成されることを特徴とする、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は2つのリニアフレネルレンズのZ軸正方向側に位置し、前記紫外線LED光源から照射された光を、前記リニアフレネルレンズの端部に向けて垂下させるように反射するよう設けられることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は前記2つのリニアフレネルレンズのZ軸負方向側に位置し、前記紫外線LED光源から照射され前記2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、前記被照射領域のX軸方向において全域を照らすように反射されるように設けられることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、前記紫外線照射装置は紫外線LED光源と、該紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、
前記被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、該X軸方向に直交する前記被照射領域上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと前記紫外線LED光源が前記被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、前記紫外線LED光源と、前記紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する前記被照射領域との間に設けられ、
また前記2つのリニアフレネルレンズそれぞれフレネル面が形成され、
各前記フレネル面は、Y軸方向においては傾きを有さず、X軸方向においては軸負方向側に傾くように形成され、
前記スリットは、前記紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、前記2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、
前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は2つのリニアフレネルレンズの縁のZ軸正方向側に位置し、
更に前記反射板は、前記紫外線LED光源から照射され前記2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、前記被照射領域照らすように反射されるように設けられ、
前記2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、
また前記2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、
更に前記2つのリニアフレネルレンズは、複数の前記分割領域の各々において、前記紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて、記被照射領域のX軸方向における全域を照射可能に形成されることを特徴とする、紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面状態を検査する紫外線探傷装置に関するものであり、より詳細には蛍光磁粉探傷や蛍光浸透探傷等の蛍光体の励起に用いる紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材等の被検査物の表面の探傷検査としては、非破壊検査方法の一種である、磁粉探傷試験や浸透探傷試験が知られている。磁粉探傷試験では、被検査物の表面に磁粉または磁粉を含有する磁粉溶液を適用するとともに、被検査物に磁場を印加する等して被検査物を磁化する。被検査物の表面のクラック等の欠陥には磁束が集中するため、この磁束に磁粉が引き寄せられて磁粉による指示模様が形成される。そして、この磁粉指示模様を観測することで欠陥を検査する。磁粉探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、磁粉に蛍光体を含有した蛍光磁粉を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0003】
一方で、浸透探傷試験では、まず、浸透液を被検査物の表面に適用して表面のクラック等の欠陥にこの浸透液を浸透させる。次に、表面に付着している余剰浸透液を除去し、現像剤粉末を表面に塗布して欠陥に浸透している浸透液を毛細管現象により表面に吸い出す。そして、この吸い上げられた浸透液による浸透指示模様を観察することで欠陥を検査する。浸透探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、蛍光体を含有する蛍光浸透液を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0004】
磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合には、被検査物に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させる必要がある。紫外線を照射する紫外線照射装置としては、光源に紫外線LED(Light Emitting Diode)を用いるものが知られている。
【0005】
LEDから照射される光を集光レンズで集光する場合、LEDから照射された光が集光レンズに入射したときに反射が生じてしまう。また、集光レンズを光が通過する際に、透過によるエネルギーのロスが生じることが知られている。よって、この方法で照度を確保する場合、余分なエネルギーを確保しておかなければならないという問題が生じていた。
また、磁粉探傷試験や浸透探傷試験においては、被検査物の表面に凹凸がある事があるため、光源が単一であると、影が出来てしまう場合がある。影が出来た場合に、検査で発見すべき大きさの傷を、検査者が見逃してしまうという問題がある。
【0006】
この問題を解決するため、特許文献1では、複数のLEDが対向させるように配置された基板の上に設けられ、そしてこの基板が多数設けられ、対向する基板から放たれた光がそれぞれ集光レンズで照射域の全域を照射する技術が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載された技術は、多方向から照射することにより無影化を実現しているが、無影化のために多方向からの多数のLEDを必要としている。また、すべての光源において、集光レンズを介して照射することとなり、集光レンズの入射面で起きる光の反射や、集光レンズの透過によるエネルギーのロスを軽減することは実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-281352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、紫外線LED光源によって、紫外線が照射される被照射領域において、無影化を実現し、これと同時にエネルギー効率を改善し、その結果より少ないエネルギーでで強力な紫外線放射照度を実現することが課題となっている。
【0010】
そこで、紫外線LED光源によって紫外線が照射される紫外線照射装置において、少ないLEDで無影化を実現するとともに、少ないLEDで高い紫外線放射照度を確保できる紫外線照射装置の開発が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面の傷の有無を検査する紫外線探傷装置において、より少ないLEDで被照射領域における無影化を実現し、また、より少ないエネルギーで、被照射面の照射領域における高い紫外線放射照度を実現でき、磁粉探傷試験や浸透探傷試験等の精度を向上させることができる紫外線照射装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのため本発明の紫外線照射装置は、被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、前記紫外線照射装置は紫外線LED光源と、該紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、前記被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、該X軸方向に直交する前記被照射領域上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
前記光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと前記紫外線LED光源が前記被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、前記紫外線LED光源と、前記紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する前記被照射領域との間に設けられ、また前記2つのリニアフレネルレンズ及び前記スリットは、Z軸と直交するXY仮想平面上乃至その近傍に位置しており、前記スリットは、前記紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、前記2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、前記2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、また前記2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、更に前記2つのリニアフレネルレンズは、複数の前記分割領域の各々において、前記紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて前記被照射領域のX軸方向における全域を照射させる機能を有して形成されることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の紫外線照射装置では、前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は2つのリニアフレネルレンズのZ軸正方向側に位置し、前記紫外線LED光源から照射された光を、前記リニアフレネルレンズの端部に向けて垂下させるように反射するよう設けられることを特徴とする。
【0014】
前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は前記2つのリニアフレネルレンズのZ軸負方向側に位置し、前記紫外線LED光源から照射され前記2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、前記被照射領域のX軸方向において全域を照らすように反射されるように設けられることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の紫外線照射装置では、被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、前記紫外線照射装置は紫外線LED光源と、該紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、前記被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、該X軸方向に直交する前記被照射領域上の方向をY軸方向、前記X軸方向及び前記Y軸方向と直交する前記紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、前記光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと前記紫外線LED光源が前記被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、前記紫外線LED光源と、前記紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する前記被照射領域との間に設けられ、また前記2つのリニアフレネルレンズそれぞれフレネル面が形成され、各前記フレネル面は、Y軸方向においては傾きを有さず、X軸方向においては軸負方向側に傾くように形成され、前記スリットは、前記紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、前記2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、前記紫外線照射装置は、更に前記光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、該反射板は2つのリニアフレネルレンズの縁のZ軸正方向側に位置し、更に前記反射板は、前記紫外線LED光源から照射され前記2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、前記被照射領域照らすように反射されるように設けられ、前記2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、また前記2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、更に前記2つのリニアフレネルレンズは、複数の前記分割領域の各々において、前記紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて、記被照射領域のX軸方向における全域を照射可能に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の紫外線照射装置は、被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、紫外線照射装置は紫外線LED光源と、紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、X軸方向に直交する被照射領域上の方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向と直交する紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと紫外線LED光源が被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、紫外線LED光源と、紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する被照射領域との間に設けられ、また2つのリニアフレネルレンズ及びスリットは、Z軸と直交するXY仮想平面上乃至その近傍に位置しており、スリットは、紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、また2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、更に2つのリニアフレネルレンズは、複数の分割領域の各々において、紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて被照射領域のX軸方向における全域を照射させる機能を有して形成されることを特徴とするので、紫外線LED光源からの光がスリットを通過する光によって直接照射をすることができるとともに、多方向からの照射も実現され、1つの紫外線LED光源からの照射のみで、無影化が可能な紫外線照射装置を提供することができる。
【0017】
本発明の紫外線照射装置では、紫外線照射装置は、更に光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、反射板は2つのリニアフレネルレンズのZ軸正方向側に位置し、紫外線LED光源から照射された光を、リニアフレネルレンズの端部に向けて垂下させるように反射するよう設けられることを特徴とするので、リニアフレネルレンズへの入射角が大きく、リニアフレネルレンズで屈折し、被照射領域を照らすことが難しい光線についても、反射板に反射させることで入射角を減らして、被照射領域への照射を容易とすることができる。また、被照射領域と紫外線LED光源との距離を短く形成することも可能になる。
【0018】
紫外線照射装置は、更に光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、反射板は2つのリニアフレネルレンズのZ軸負方向側に位置し、紫外線LED光源から照射され2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、被照射領域のX軸方向において全域を照らすように反射されるように設けられることを特徴とするので、リニアフレネルレンズへの入射角が大きく、リニアフレネルレンズで屈折するだけでは、被照射領域を照らすことが難しい光線について、リニアフレネルレンズレンズの下側に設けた反射板によって、リニアフレネルレンズによる屈折率が少なくても、被照射領域へと光を照射することが可能となる。
【0019】
更に、本発明の紫外線照射装置は、被検査物表面に紫外線を照射して傷の有無を検知する磁粉探傷試験用の紫外線照射装置において、紫外線照射装置は紫外線LED光源と、紫外線LED光源から照射された光を被照射領域へと集光するための光学機構を備え、
被照射領域上の任意の一方向に平行な方向をX軸方向、X軸方向に直交する被照射領域上の方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向と直交する紫外線LED光源の光軸に平行な方向をZ軸方向、としたXYZ三次元直交座標系を用いたときに、
光学機構は、2つのリニアフレネルレンズと紫外線LED光源が被照射領域を直接照射するためのスリットを備えて、紫外線LED光源と、紫外線LED光源の照射方向であるZ軸負方向に位置する被照射領域との間に設けられ、また2つのリニアフレネルレンズそれぞれフレネル面が形成され、各前記フレネル面は、Y軸方向においては傾きを有さず、X軸方向においては軸負方向側に傾くように形成され、スリットは、紫外線LED光源から照射された光の光軸近傍に、2つのリニアフレネルレンズの有する縁同士に囲まれてY軸方向に伸びるように形成され、紫外線照射装置は、更に光学機構のX軸方向において両側に反射板を備え、反射板は2つのリニアフレネルレンズの縁のZ軸正方向側に位置し、更に前記反射板は、紫外線LED光源から照射され2つのリニアフレネルレンズにより屈折された光が、被照射領域照らすように反射されるように設けられ、2つのリニアフレネルレンズは主にX軸方向において集光するレンズであり、また2つのリニアフレネルレンズは、それぞれ、任意の位置で、X軸方向において複数に領域を分割された分割領域を備え、更に2つのリニアフレネルレンズは、複数の分割領域の各々において、紫外線LED光源から入射した光線を屈折させて、照射領域のX軸方向における全域を照射可能に形成されることを特徴とするので、1つの紫外線LED光源からの照射のみで、無影化が可能な紫外線照射装置を提供することができるとともに、リニアフレネルレンズへの光の入射角が少なくなり、より簡易な構成のリニアフレネルレンズによる紫外線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る紫外線照射装置1の概略断面図である。
図2】本実施形態に係る紫外線照射装置1を側面方向から見た概略断面図である。
図3図1の紫外線照射装置1に入射する光線のうち、分割領域13、14を通過する光線、A、B、C、Dを取り出して照射方法を説明した説明図である。
図4図1の紫外線照射装置1に入射する光線のうち、分割領域12、15を通過する光線、E、F、G、Hを取り出して照射方法を説明した説明図である。
図5図1の紫外線照射装置1に入射する光線のうち、スリット6を通過する光線、I、Jを取り出して照射方法を説明した説明図である。
図6】(X)はリニアフレネルレンズ4の正面図、(Y)はリニアフレネルレンズ3の正面図、(Z)は(X)のX領域拡大図である。
図7図6(X)のリニアフレネルレンズ4の斜視図である。
図8】被検査物5への光の照射を示した図であり、(X)はVWXYZの5方向から、(Y)はYのみの1方向から照射していることを示す図である。
図9】(X)(Y)ともに本実施形態に係る紫外線照射装置の実施形態の他の一例を表す概略正面図であり、Z軸よりもX軸正方向側のみを図示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。図1は本実施形態に係る紫外線照射装置1の一例が示された、光軸を基準とした幅方向(X軸方向)の概略断面図であり、図2図1の紫外線照射装置1の幅方向と直交する長手方向(Y軸方向)の断面側面図である。図3は、図1の紫外線照射装置1に入射し屈折して被検査物5を照射する光のうち、A、B、C、Dに着目した図であり、図4は同様に幅方向からみて、図1の紫外線照射装置1に入射し屈折して被検査物5を照射する光のうちE,F,G,Hに着目した図であり、図5図1の紫外線照射装置1のスリット6を通過して被検査物5を直接照射する光のうちI、Jに着目した図である。図6の(X)はリニアフレネルレンズ4の正面図を示し(Y)はリニアフレネルレンズ3の正面図を示し、(Z)は(X)のX領域を拡大した拡大図である。図7図6(X)に示されるリニアフレネルレンズ4を図6(X)において下方から斜視した斜視図であり、図8(X)は被検査物5に対し、5方向から光が照射された場合を、(Y)は1方向から光が照射された場合をそれぞれ示した図である。図9(X)は本実施形態に係る紫外線照射装置の実施形態の他の一例を表す概略正面図であり、反射板30を用いた紫外線照射装置1のZ軸よりもX軸正方向側のみを図示した正面図であり、(Y)は本実施形態に係る紫外線照射装置の実施形態の他の一例を表す概略正面図であり、反射板31を用いた紫外線照射装置1のZ軸よりもX軸正方向側のみを図示した正面図である。なお、本開示においてX軸方向とは図1に示されるように図1の横方向であり、X軸方向で正方向とは図1の右側で+Xとして示され、負方向とは-Xとして示される。幅方向とはX軸方向のことであり、幅方向が示された図とはX軸方向が横軸にとられた図である。Y,Z軸方向についても同様である。なお、これらXYZ軸の原点は紫外線LED光源2の中心Oであり、図1図5に示されている。
【0022】
まず紫外線照射装置1は、磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合に、被検査物5に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させるために被検査物5の表面に紫外線を照射するものであり、被検査物5の被照射面である被照射領域を紫外線により照射する紫外線LED光源2と、主に被照射領域上の任意の一方向(幅方向)に集光するリニアフレネルレンズ3、4とを備える。また、リニアフレネルレンズ3、4はそれぞれ縁22、23を有し、縁22、23に囲まれてスリット6が形成されている。
【0023】
紫外線照射装置1は、紫外線LED光源2とリニアフレネルレンズ3、4とを取り囲み、紫外線LED光源2から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する図示しない筐体を更に備えてもよい。紫外線出射口には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタを配置することが好ましい。この紫外線透過フィルタは、紫外線LED光源2から発せられる僅かな可視光を可視光の波長範囲である、概ね400nm~700nmの範囲でカットするものであり、被検査物から検出された欠陥がグラインダー等で切削された被検査物表面の金属光沢面を検査する際に、金属光沢面に可視光が反射して作業員が眩しくなることを防止することで検査作業を改善することができる。
【0024】
図1に示すように、リニアフレネルレンズ3、4は、X軸方向に集光するレンズであり、紫外線LED光源2の中心である原点ОからみてZ軸負方向に、紫外線LED光源2と被検査物5との間に位置し、被検査物5の被照射領域は、Z軸負方向にリニアフレネルレンズ3、4から検査者の視野確保のため一定の距離以上離れて位置すると好ましい。
【0025】
リニアフレネルレンズ3、4は、蒲鉾形状のレンズ(例えばシリンドリカルレンズ)の表面を複数の直線で区分けし、それら区分けされた各区間(フレネル面)の高さを概ね一様にするために、隣り合う区間の間に段差がつけられたレンズにおいて、各フレネル面のフレネル角度を特別に調整して形成したものである。また、リニアフレネルレンズ3、4には、フレネル面および段差を付けるためのライズ面が交互に形成されている。なお、上記フレネル角度を調整する構成については後記で詳細に説明する。
【0026】
このようなフレネル面およびライズ面を形成するために、リニアフレネルレンズ3、4の一方の面である鋸歯状の面21は、複数本の溝が、直線状に互いに平行に(かつ、Y軸方向に平行に)形成される。そして、各溝は、1つのフレネル面と1つのライズ面の組によって構成されている。
【0027】
このフレネル面のそれぞれは、非球面レンズの形状に一致する面になっており、ライズ面のそれぞれは、リニアフレネルレンズ3、4の上面である平滑面24に対してにほぼ垂直に切り立った略平面になっている。
【0028】
また、リニアフレネルレンズ3、4は、YZ平面を対称面として面対称な形状となっている。YZ平面は、リニアフレネルレンズ3、4の上面に対して垂直かつ溝と平行な面である。
【0029】
リニアフレネルレンズ3、4が、YZ平面を対称面として面対称となっているので、YZ平面から一方側に配置される各溝の向きは、リニアフレネルレンズ3と4では、各溝の向きは逆になっている。より具体的には、図6(X)(Y)に示すように、リニアフレネルレンズ3では、(X軸正の方向)に向かって下がるように各フレネル面が傾斜しているが、リニアフレネルレンズ4では、左側(X軸負の方向)に向かって下がるよう各フレネル面が傾斜している。
【0030】
図1を用いてより詳細に紫外線照射装置1を説明する。まずOの紫外線LED光源2を光源として光線が出射され、図6に示されるようなリニアフレネルレンズ3、4によって集光される。この集光された光線を入射光線とする。この入射光線は、図1~5等に示されるように、リニアフレネルレンズ3、4の分割線10、11により分けられた分割領域12、13、14、15にそれぞれ入射し、それぞれに入射した光は、それぞれ被検査物5の幅方向全域を照射する。これにつき、以下で図を用いて更に詳述する。
【0031】
図2は紫外線照射装置1の左側面を示した図である。Y軸方向においては、あまり光を集光しないリニアフレネルレンズ3、4となっているため、被照射領域としてはY軸方向に長い縦長の照射を行うこととなる。
【0032】
次に図3を示しながら分割領域13、14に入射した光線A、B、C、Dの軌跡についてより詳細に説明する。図3はXZ平面における断面図である。リニアフレネルレンズ3、4のフレネル面やライズ面については省略している。まず、リニアフレネルレンズ3は分割線10により、分割領域12、13に分割されている。分割領域12と分割領域13においては、分割領域12を通過する光のみで被照射領域を照射するように構成されており、分割領域13においても、分割領域13を通過する光のみで被照射領域の幅方向全域を照射するように構成されているため、リニアフレネルレンズ3は分割線10を挟んでフレネル角の構成が異なることとなっている。また、リニアフレネルレンズ4においても同様で、分割線11により、分割領域14、15に分割されている。分割領域14と分割領域15においては、分割領域14を通過する光のみで被照射領域の幅方向全域を照射するように構成されており、分割領域15においても、分割領域15を通過する光のみで被照射領域を照射するように構成されているため、リニアフレネルレンズ4も分割線11を挟んでフレネル角の構成が異なることとなっている。
【0033】
図3を示しながら分割領域13、14に入射した光線A、B、C、Dの軌跡について詳述する。分割領域13のX軸負方向側の端に入射した光を光線Aとする。そして、分割領域13のX軸正方向側の端に入射した光を光線Bとする。光線Aと光線Bに囲まれた光はそれぞれ、被検査物5の被照射面の一方の端部から他方の端部までをまんべんなく照射している。分割領域13のフレネル角は、このように照射するために、被照射領域までの距離や広さに応じて適宜設計される。
【0034】
分割領域14についても同様である。分割領域14のX軸負方向側の端に入射した光を光線Cとする。そして、分割領域14のX軸正方向側の端に入射した光を光線Dとする。光線Cと光線Dに囲まれた光はそれぞれ、被検査物5の被照射面の一方の端部から他方の端部までをまんべんなく照射している。分割領域14のフレネル角は、このように照射するために、被照射領域までの距離や広さに応じて適宜設計される。
【0035】
次に、図4を示しながら、分割領域12、15に入射した光線E,F,G,Hの軌跡について詳述する。図4は、図1に示される光線A~Jのうち、光線E,F,G,Hが照射している部分のみを抽出した図である。分割領域12のX軸負方向側の端に入射した光を光線Eとする。そして、分割領域12のX軸正方向側の端に入射した光を光線Fとする。光線Eと光線Fに囲まれた光はそれぞれ、被検査物5の被照射面の一方の端部から他方の端部までをまんべんなく照射している。分割領域12のフレネル角は、このように照射するために、被照射領域までの距離や広さに応じて適宜設計される。
【0036】
次に、分割領域15に入射した光について詳述する。分割領域15のX軸負方向側の端に入射した光を光線Gとする。そして、分割領域15のX軸正方向側の端に入射した光を光線Hとする。光線Gと光線Hに囲まれた光はそれぞれ、被検査物5の被照射面の一方の端部から他方の端部までをまんべんなく照射している。分割領域15のフレネル角は、このように照射するために、被照射領域までの距離や広さに応じて適宜設計される。
【0037】
次に、図5を示しながら、紫外線LED光源2からスリット6を通過し、被検査物5を直接照射する光の軌跡について詳述する。スリット6はリニアフレネルレンズ3の縁22と、リニアフレネルレンズ4の縁23との間に形成されている。スリット6の範囲にはレンズや障害物は設けられていない。従って、紫外線LED光源2から照射された光は被検査物5の被照射領域へと、レンズ等を介することなく直接照射されている。紫外線LED光源2からスリット6を通過して被検査物5を直接照射する光のうち、X軸負方向側の端の光をI、X軸正方向側の端の光をJとする。IとJとに囲まれた光は被検査物5の一方の端から他方の端までを照射するように、スリット6が形成されていることが好ましいが、これに限定されるものではなく、被検査物5の一定の被照射領域の一部のみが直接照射されていても構わない。
【0038】
次に、図6を用いてリニアフレネルレンズ3、4の構成について詳述する。まず、リニアフレネルレンズ4は図6(X)に示されるように、ライズ面と右上がりの面であるライズ面を交互に繰り返すことにより形成されている。このライズ面の角度を調整することにより、光線の屈折率を調整するように適宜設計する。分割線11は位置については図示するのは中央付近であるが、必ずしも中央に限定されるものではない。また分割線が2つ設けられて、リニアフレネルレンズ4に分割領域が3つ存在し、それぞれの領域が被照射領域の端から他の端までを照射するように屈折率を調整して形成されてもよい。分割線が3つでも4つ以上でも同様である。
【0039】
次に、リニアフレネルレンズ3についても同様であるが詳述する。リニアフレネルレンズ3は図6(Y)に示されるように、ライズ面と左上がりの面であるフレネル面を交互に繰り返すことにより形成されている。リニアフレネルレンズ3と4とは対称に形成されている。このフレネル面の角度を調整することにより、光線の屈折率を調整するように適宜設計する。分割線10は位置については図示するのは中央付近であるが、必ずしも中央に限定されるものではない。また分割線が2つ設けられて、リニアフレネルレンズ3に分割領域が3つ存在し、それぞれの領域が被照射領域の端から他の端までを照射するように屈折率を調整して形成されてもよい。分割線が3つでも4つ以上でも同様である。
次に図6(Z)を用いてフレネル角αについて詳述する。フレネル角とは、図6(Z)に示すようにフレネル面と、ライズ面の付け根を通り、Z軸方向に伸びる水平面とのなす角である。本発明のような照射範囲とするために、一例として、分割領域14においては、フレネル角αは、端部が約52度であり、中央に行くにつれて約0.07度ずつ上昇して設けられ、中央で約57度であり、その後約0.07度ずつ下がり、約52度で形成される。分割領域15においては、分割線11に最も近いフレネル角においては、約70度に形成され、ここからX軸正方向の端部にいくにつれて、約0.035度ずつ上がり、中央で約72.5度となる。ここから約0.08度ずつ下がり、端部のフレネル角度αは約67度となるように形成される。
【0040】
図7を示しながらリニアフレネルレンズ4について更に述べる。図7図6(X)の下方向からリニアフレネルレンズ4を斜視した斜視図である。鋸歯状の面21が上にきており、平滑面20が下側に示されている。図1等においては、平滑面20が上側であり、紫外線LED光源2からの光線の入射面である。そして、鋸歯状の面21は平滑面20に入射した光線の出射する面である。なお、図6~7のリニアフレネルレンズ3、4のフレネル面とライズ面の数はあくまで説明のための例示であり、これに限定されるものではない。
【0041】
次に、図8を示しながら、本発明における被検査物5の被照射領域の無影化について詳述する。被検査物5の図1等には図示していない凹部41において、傷40がある場合について述べる。本発明の、紫外線LED光源2と、リニアフレネルレンズ3、4を備え、リニアフレネルレンズ3、4は更に分割領域12、13、14,15が備えられている紫外線照射装置1により光が照射された場合、図3のように2方向から、また図4のように別の2方向から、図5のように1方向からの、計5方向からの光が照射されることとなる。そうすると、図8(X)に示されるように光線V、W、X、Y、Zの5方向からの光線により、凹部41の内部に存在する傷40を照射することとなる。図8(X)に示されるように5方向からの照射のうち、V、Y、Zは凹部の縁に遮られてしまうが、鉛直方向に近い光線W、Xについては傷40を照射することができている。これに対し、従来の単光源からの光を照射した場合を示す、図8の(Y)の場合においては、Y軸方向からの光線であるYは、凹部41の縁に遮られて傷40に届かない。本発明のような5方向以上からの光を照射し、無影化を実現している場合、傷40を見逃す可能性はより少なくなると言える。
【0042】
次に本発明の実施形態の他の一例を、図9を示しながら詳述する。図9(X)は図1等に示される紫外線照射装置1に、更に反射板30、30を備えたものであり、図9(Y)は図1に示される紫外線照射装置1に、更に反射板31、31を備えたものである。
図9(X)に示される反射板30は、リニアフレネルレンズ4の上側に備えられ、紫外線LED光源2から照射される光を反射し、リニアフレネルレンズ4の端部に垂下させるように設けられている。リニアフレネルレンズ4は入射角が大きくなると、リニアフレネルレンズ4の表面で反射されてしまう場合や、紫外線LED光源2から照射された光を被検査物5へと屈折して照射するための屈折率を、リニアフレネルレンズ4において確保できない場合が出てきてしまう。反射板30を用いることで、そのままリニアフレネルレンズ4に入射するには必要な屈折率が大きすぎる光線についても、反射板30で垂下するように反射されるため使用可能となり、原点Оからみて水平付近の、従来使われていないような角度の光も使用可能となる。
このため、紫外線LED光源2とリニアフレネルレンズ4の間の間隔や、リニアフレネルレンズ4と被検査物5の被照射領域との間隔を短く形成することができる。そのため、紫外線LED光源2から被検査物5までの距離Lを短く形成することができることとなる。
【0043】
図9(X)において図示を省略されている左側における反射板30についても全く同様である。2つの反射板30は、リニアフレネルレンズ3、4が面対称の場合、光軸と同位置のZ軸を挟んでZY平面を基準として面対称の位置に設けられる。リニアフレネルレンズ3の上側に備えられ、紫外線LED光源2から照射される光を反射し、リニアフレネルレンズ3の端部に垂下させるように設けられている。リニアフレネルレンズ3は入射角が大きくなると、リニアフレネルレンズ3の表面で反射されてしまう場合や、紫外線LED光源2から照射された光を被検査物5へと屈折して照射するための屈折率を、リニアフレネルレンズ4において確保できない場合が出てきてしまうから、図示していない側においても、反射板30を用いることで、そのままリニアフレネルレンズ3に入射するには必要な屈折率が大きすぎる光線についても、図示しない反射板30で垂下するように反射されるため使用可能となり、原点Оからみて水平付近の、従来使われていないような角度の光も使用可能となることも同様である。
このため、紫外線LED光源2とリニアフレネルレンズ3の間の間隔や、リニアフレネルレンズ3と被検査物5の被照射領域との間隔を短く形成することができる。そのため、紫外線LED光源2から被検査物5までの距離Lを短く形成することができることとなる。
【0044】
リニアフレネルレンズ3、4と被検査物の間の距離Lを短く形成することができると、光の減衰を少なくすることができ、より強い紫外線強度を確保することができることから、検査方法によっては好適となる場合があり、好ましい。
【0045】
図9(Y)に示されるのは本発明に係る実施形態の他の一例である。図9(Y)に示される反射板31は、リニアフレネルレンズ4の下側に内向きに備えられ、紫外線LED光源2から照射される光をリニアフレネルレンズ4が屈折させ、その光をさらに反射板31で反射させ、これにより分割領域15に入射した光が反射板31により反射されたものも併せて被検査物5の被照射領域全域を照射するように形成されている。リニアフレネルレンズ4は入射角が大きくなると、リニアフレネルレンズ4の表面で反射されてしまう場合や、紫外線LED光源2から照射された光を被検査物5へと屈折して照射するための屈折率を、リニアフレネルレンズ4において確保できない場合が出てきてしまう。そのため、反射板31を用いることで、そのままリニアフレネルレンズ4に入射するには必要な屈折率が大きすぎる光線についても、リニアフレネルレンズ4で屈折させた後に、更に反射板31で反射されるため、使用可能となり、原点Оからみて水平付近の、従来使われていないような角度の光も使用可能となる。
このため、紫外線LED光源2とリニアフレネルレンズ4の間の間隔や、リニアフレネルレンズ4と被検査物5の被照射領域との間隔を短く形成することができる。そのため、紫外線LED光源2から被検査物5までの距離Lを短く形成することができることとなる。
【0046】
図示しないが、リニアフレネルレンズ3側についても同様である。図9(Y)に示される反射板31は、リニアフレネルレンズ3の下側に内向きに備えられ、紫外線LED光源2から照射される光をリニアフレネルレンズ4が屈折させ、その光をさらに反射板31で反射させ、これにより分割領域15に入射した光が反射板31により反射されたものも併せて被検査物5の被照射領域全域を照射するように形成されている。リニアフレネルレンズ3も、入射角が大きくなると、リニアフレネルレンズ3の表面で反射されてしまう場合や、紫外線LED光源2から照射された光を被検査物5へと屈折して照射するための屈折率を、リニアフレネルレンズ3において確保できない場合が出てきてしまう。そのため、反射板31を用いることで、そのままリニアフレネルレンズ3に入射するには必要な屈折率が大きすぎる光線についても、リニアフレネルレンズ3で屈折させた後に、更に反射板31で反射されるため、使用可能となり、原点Оからみて水平付近の、従来使われていないような角度の光も使用可能となる。
このため、紫外線LED光源2とリニアフレネルレンズ4の間の間隔や、リニアフレネルレンズ4と被検査物5の被照射領域との間隔を短く形成することができる。そのため、紫外線LED光源2から被検査物5までの距離Lを短く形成することができることとなる点も、同様である。
【0047】
なお、ここまで説明してきたリニアフレネルレンズ3及び4の形状や機能は、原点をOとした場合だけではなく、図2のY軸方向に原点が移動した場合であっても同様である。例えば、原点OよりY軸正方向側にずれた位置であっても、リニアフレネルレンズ3乃至4の分割領域12~15は同様に設けられており、これはY軸負方向側においても同様である。図9の反射板についても、同様に、Y軸負方向側にずれた位置においても設けられている。Y軸正方向側についても同様となる。
【0048】
ここで、本発明のリニアフレネルレンズ3、4の典型的な寸法及び材質について説明する。リニアフレネルレンズ3における各溝のX軸方向の一辺の長さは、約0.3mmである。各フレネル面およびライズ面のサイズは、フレネル面のX軸方向の長さが約0.25mm~0.40mmであり、ライズ面のZ軸方向の高さが約0.05mm~0.15mmである。この場合、リニアフレネルレンズ3にはフレネル面およびライズ面がそれぞれ約162個形成される。なお、これらの寸法は限定されるものではなく、適宜設計することができる。
【0049】
リニアフレネルレンズ3、4の材質としては、従来用いられる透明な樹脂を用いることができ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリルスチレン共重合樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、シリコン樹脂等が用いられ、これらの樹脂と、フレネルレンズの逆形状を有する金型を用いて、プレス成形法、重合成形法等の方法により成形すればよい。
【実施例
【0050】
実施例1の紫外線照射装置1に用いられるリニアフレネルレンズ3は、アクリル樹脂製であり、改良型リニアフレネルレンズから600mmの離れた距離に位置する被照射面のX軸方向の照射幅200mmの照射範囲における高い紫外線放射照度の確保を目的として、面長50mm、厚さt=1.0mm、ピッチ=0.3mmであり、フレネル角度が14.047度~47.192度で連続的に変化するように構成し、加工によって作製した。なお、紫外線LED光源2は、ピーク波長が365nmであるものが用いられた。
【0051】
<評価方法>
(紫外線放射照度分布試験)
実施例1の紫外線照射装置1を用いた場合における被照射面の紫外線放射照度分布が測定された。実施例1は、本発明に係る光学機構、すなわち、リニアフレネルレンズ3、4及びスリット6を備えた機構により、紫外線LED光源2から照射された光を集光するよう設けられた。リニアフレネルレンズ3、4から600mmの離れた距離に位置する被照射面のX軸方向の照射幅200mmの領域における紫外線放射照度を測定し、紫外線放射照度の改善度合いを測定した。改善度合いの測定方法としては、照射幅全域においての照度を比較することとした。
【0052】
比較例では、紫外線LED光源2を備えていたが、集光方法としてはシリンドリカルレンズを使用した。そのため、スリット6を有するような構成や、分割領域を有するような構成は、備えていなかった。
【0053】
この紫外線放射照度測定試験により照度を比較した結果、以下の結果が得られた。すなわち、比較例による紫外線放射照度の結果を100%とすると、実施例では被検査物5の被照射領域においておおむね105~115%前後の紫外線放射照度が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び紫外線照射装置を備える紫外線探傷装置に好適に利用することができる。しかしながら、本開示は、上述された実施形態、及び実施例に限定されるものではない。本開示の紫外線照射装置は、紫外線を利用する、コンタミネーションチェック、漏洩検査、脱脂洗浄の確認等のいるあらゆる試験や検査に有用である。また、本開示の紫外線探傷装置は、蛍光磁粉探傷装置に限定されるものではなく、蛍光浸透液を用いて被検査物の表面の欠陥を探傷する浸透探傷装置であっても良く、紫外線を利用して欠陥を探傷するあらゆる紫外線探傷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 紫外線照射装置
2 紫外線LED光源
3、4 リニアフレネルレンズ
5 被検査物
6 スリット
10、11 分割線
12、13、14、15 分割領域
20 平滑面
21 鋸歯状の面
22、23 縁
30、31 反射板
40 傷
41 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9