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特許7591927100μm以下の厚さを有する熱可塑性ポリマーを含侵した繊維材料、およびその生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】100μm以下の厚さを有する熱可塑性ポリマーを含侵した繊維材料、およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/10 20060101AFI20241122BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20241122BHJP
【FI】
B29B15/10
B29K105:06
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020550677
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2019050620
(87)【国際公開番号】W WO2019180370
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】1852551
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
(72)【発明者】
【氏名】サヴァール, ティボー
(72)【発明者】
【氏名】バボー, アルテュール ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フロレンシー, アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ガイヤール, パトリス
(72)【発明者】
【氏名】サリニエ, アクセル
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027956(JP,A)
【文献】特表2015-505879(JP,A)
【文献】国際公開第2012/140785(WO,A1)
【文献】特開2016-216654(JP,A)
【文献】特開2003-181832(JP,A)
【文献】特開2013-203941(JP,A)
【文献】特開2016-011403(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163408(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/011495(WO,A1)
【文献】特表2017-507045(JP,A)
【文献】特開2008-221833(JP,A)
【文献】volume resistivity of ultra-thin chopped CF tape reinforced thermoplastics,Composites,Part A 90,2016年,p.598-605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16,15/08-15/14,C08J5/04-5/10,5/24,B29C41/00-41/36,41/46-41/52,70/00-70/88,B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維からなる少なくとも1つの繊維材料、及び以下:
- 少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーマトリックス、又は
- 鎖延長剤と場合により混合されている、前記非反応性熱可塑性ポリマーの前駆体である、少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマー
を含む含浸繊維材料であって、
前記少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマー又は前記反応性プレポリマーが、Tg≧80℃のガラス転移温度を有するアモルファスポリマー若しくはプレポリマーであるか、又は溶融温度Tm≧150℃を有する半結晶性ポリマー若しくはプレポリマーであり、体積基準の繊維の含有率が、含浸繊維材料の体積の少なくとも90%で一定であり、前記含浸繊維材料の平均厚さが、含浸前の前記繊維材料中に存在する繊維数とは無関係に、100μm以下であり、ポリアミド6が、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性プレポリマーの定義から除外されることを特徴とする、
含浸繊維材料。
【請求項2】
平均厚さが、10μm~100μmの間であることを特徴とする、請求項1に記載の含浸繊維材料。
【請求項3】
前記繊維材料中の繊維数が、炭素繊維の場合、12K以上であり、ガラス繊維の場合、坪量が、1,200Tex以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の含浸繊維材料。
【請求項4】
繊維材料の繊維がサイジングされていない繊維であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項5】
前記含浸繊維材料における多孔度レベルが、10%未満であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項6】
前記含浸繊維材料が単層であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項7】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、PEKK、PEI、及びPEKKとPEIの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項8】
前記ポリアミドが、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド及び半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)から選択されることを特徴とする、請求項に記載の含浸繊維材料。
【請求項9】
前記脂肪族ポリアミドが、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、ポリアミド11/1010、ポリアミド12/1010、又はそれらの混合物若しくはそれらのコポリアミド、及びブロック共重合体から選択され、前記半芳香族ポリアミドが、尿素単位により修飾され得る半芳香族ポリアミド、又は式A/XTである半芳香族ポリアミド[Aは、アミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位、及び式(Caジアミン).(Cb二酸)[「a」は、ジアミンの炭素原子数を表し、「b」は、二酸の炭素原子数を表し、「a」及び「b」はそれぞれ、4~36の間である]に対応する単位の中から選択され、単位(Caジアミン)は、直鎖状又は分岐状の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及びアルキル芳香族ジアミンから選択され、単位(Cb二酸)が、直鎖状又は分岐状脂肪族二酸、脂環式二酸及び芳香族二酸から選択され、
X.Tは、Cxジアミン及びテレフタル酸の重縮合から得られる単位[xは、Cxジアミンの炭素原子数を表し、xは、6~36の間を表す]であることを特徴とする、請求項に記載の含浸繊維材料。
【請求項10】
前記繊維材料が、炭素、ガラス、炭化ケイ素、玄武岩又は玄武岩をベースとするシリカ、天然繊維、あるいは前記ポリマー若しくは前記ポリマー混合物のガラス転移温度Tgよりも高いTgを有するアモルファス熱可塑性繊維、あるいは前記ポリマー若しくは前記ポリマー混合物のTgよりも高い溶融温度Tmを有する半結晶性熱可塑性繊維、あるいは前記繊維のうちの2種以上の混合物から選択される連続繊維を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料であって、
前記ポリマー混合物がアモルファスである、含浸繊維材料。
【請求項11】
前記繊維材料が、炭素、ガラス、炭化ケイ素、玄武岩又は玄武岩をベースとするシリカ、天然繊維、あるいは前記ポリマー若しくは前記ポリマー混合物のTmよりも高いガラス転移温度Tgを有するアモルファス熱可塑性繊維、あるいは前記ポリマー若しくは前記ポリマー混合物の溶融温度Tmよりも高いTmを有する半結晶性熱可塑性繊維、あるいは前記繊維のうちの2種以上の混合物から選択される連続繊維を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の含浸繊維材料であって、
前記ポリマー混合物が半結晶である、含浸繊維材料。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマーが、炭素系充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項13】
前記熱可塑性プレポリマーが、添加剤として、液晶ポリマー若しくは環式ポリ(ブチレンテレフタレート)、又は前記液晶ポリマー若しくは前記環式ポリ(ブチレンテレフタレート)を含有する混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項14】
ストリップに相当することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項15】
前記含浸繊維材料が、薄層テープに相当することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の含浸繊維材料。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に定義されている含浸繊維材料を調製する方法であって、少なくとも1つの支持部分(E)が設けられている少なくとも1つの加熱システムにより予備含浸繊維材料を加熱する工程、及び含浸を終了する工程、並びに場合により、含浸繊維材料のロービング又は前記平行なロービングを成形及び較正する工程を含むことを特徴とする、含浸繊維材料を調製する方法。
【請求項17】
成形及び較正工程が、予備含浸繊維材料を加熱する前記工程及び含浸を終了する前記工程の後に行われることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予備含浸繊維材料を加熱する工程、及び含浸を終了する工程が、同じ加熱システムを用いて行われることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
予備含浸繊維材料を加熱する工程、及び含浸を終了する工程が、2つの個別の加熱システムを用いて行われることを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
予備含浸繊維材料を加熱する工程、及び含浸を終了する工程が、繊維材料を予備含浸する工程の後に行われることを特徴とする、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
以下の工程:
i) 予備含浸繊維材料を得るため、繊維材料を予備含浸する工程、
ii) 前記予備含浸繊維材料を加熱し、含浸を終了して、100μm以下の平均厚さを有するストリップの形態のテープからなる含浸繊維材料を得る工程、
iii) 場合により、前記含浸繊維材料のロービング又は前記平行なロービングを成形及び較正して、100μm以下の平均厚さを有する薄層テープの形態のテープからなる含浸繊維材料を得る工程、
を含むことを特徴とする、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも10m/分の速度で行われることを特徴とする、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ロボットによるテープの自動配置によって三次元コンポジット部品を製造するのに好適なテープを調製するための、請求項1から15のいずれか一項に定義されている含浸繊維材料の使用。
【請求項24】
熱成形シートを調製するための、請求項1から15のいずれか一項に定義されている含浸繊維材料の使用。
【請求項25】
含浸繊維材料が、小片へと予め切込みが入れられており、前記小片が、熱成形シートを調製するため、無作為に結合又は配向されていることを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーを含浸した平均厚さが100μm以下の繊維材料、特に単層材料に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、熱可塑性ポリマーを含浸した繊維材料、特に単層材料であって、特に、炭素繊維の繊維数が、12K以上であるか、またはガラス繊維の坪量が1,200Tex以上であり、上記の単層材料の体積基準での繊維含有率が特に一定であり、具体的には、体積基準での繊維含有率が一定であり、含浸繊維材料の体積の少なくとも70%である、単層材料に関する。
【0003】
本発明はまた、特に平均厚さ100μm以下の単層繊維材料を調製する方法、および特にロボットによる自動配置、またはフィラメントワインディング法によって、コンポジット部品を製造するためのその使用に関する。
【0004】
本開示では、「繊維材料」とは、個々の強化繊維の集成体を指す。樹脂を含浸した後、テープの形態で提供される。
【0005】
用語「テープ」とは、幅および厚さが較正されていない、厚さの小さな半完成品であるストリップであって、繊維の単一ロービング、または厚さおよび幅が較正されている1つもしくは複数の繊維ロービングから構成されている薄層テープから構成されている、ストリップを指す。
【0006】
すべての例において、テープの厚さは、100μm以下、好ましくは10~100μmの間である。
【0007】
このような含浸繊維材料は、三次元構造を有しており、良好な機械的特性および熱的特性を有する機械部品を製造するための、軽量コンポジット材料を生産するのに特に好適である。繊維が炭素から作製されている、および/または樹脂に好適な添加物が充填されている場合、これらの繊維材料は、静電荷を放電することが可能である。難燃性ではない樹脂に難燃性樹脂または難燃性添加物を使用することにより、含浸繊維材料は火に耐性となり得る。したがって、それらは、特に、機械、航空機、船舶、自動車、油およびガス、特にオフショア(offshore)、ガス貯蔵、エネルギー、健康および医療、スポーツおよびリクレーション、ならびに電子機器の分野における部品の生産と適合性のある特性を有する。
【0008】
このような含浸繊維材料は、コンポジット材料とも呼ばれる。それらは、強化繊維、および繊維を含侵したポリマーから構成されるマトリックスから構成される繊維材料を含む。このマトリックスの第1の役割は、小型形状で強化繊維を維持すること、および所望の形状を最終製品にもたらすことである。このマトリックスはまた、繊維間の電荷移動を確実にし、したがって、コンポジットの機械的強度を整える。このようなマトリックスはまた、摩擦および侵襲的環境から強化繊維を保護するよう、表面の外観を制御するよう、および繊維間のいかなる電荷も消失させるよう働く。このマトリックスの役割は、特に、疲労およびクリープに関して、コンポジット材料の長期保持に重要である。
【背景技術】
【0009】
含浸繊維材料から生産した、良質の三次元コンポジット部品は、一般に、熱可塑性ポリマーによる強化繊維を含侵する方法、したがって、得られた含浸繊維材料の統制に従う。
【0010】
現在のところ、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーで含浸することにより強化される繊維材料のテープの製造は、ポリマーの性質、最終コンポジット材料の所望のタイプおよびその応用分野に特に応じたいくつかの方法を使用して実施され、これらの方法のいくつかは、含浸工程、次いで含浸繊維材料の熱間圧延の工程または乾燥工程、場合により、その後に熱可塑性ポリマーを溶融する工程によって構成される。
【0011】
したがって、湿式含浸技術、または液状前駆体もしくは非常に低い粘度を有する前駆体、インシチュでの重合を使用する技術は、例えば特許WO2012/066241(A2)に記載されている通り、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性ポリマーで強化繊維を含侵するために使用されることが多い。これらの技術は、液体前駆体を使用することは稀なので、一般に、熱可塑性ポリマーを含侵するために直接、適用可能ではない。
【0012】
溶融ポリマーのクロスヘッドダイ押出成形による含浸方法は、低粘度熱可塑性ポリマーの使用にしか好適ではない。熱可塑性ポリマー、特に高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマーは、溶融状態では高い粘度を有するので、繊維の満足な含浸、および良質の半完成製品または完成製品にすることができない。
【0013】
出願US2014/0005331(A1)には、ポリマー樹脂を含侵した繊維を調製する方法が記載されており、得られたテープは非対称である、すなわち、一方の面は、ポリマーに富み、反対側の面は、繊維に富む。
【0014】
この方法は、その面の一方の表面に主要含浸を可能にする装置しか使用しない溶融経路(molten route)によって行われる。
【0015】
含浸の別の公知方法は、水性ポリマー粉末分散体または水性ポリマー粒子分散体または水性ポリマーエマルションまたは懸濁液中に繊維を連続流通させることである。例えば、文献EP0324680を参照することができる。この方法では、マイクロメートルサイズの粉末の分散体が使用される(約20μm)。水溶液中でクエンチした後に、繊維はポリマー粉末によって含浸される。次に、この方法は、クエンチ中に吸収された水を蒸発させるため、第1の炉内に含浸繊維を通すことからなる乾燥工程を含む。含浸して乾燥した繊維を、高温の第2の加熱領域に通すことからなる熱処理工程は、次に、ポリマーを溶融する必要があり、その結果、ポリマーは繊維を接着し、分布されて繊維を被覆する。
【0016】
この方法の乾燥工程は、水の蒸発によって、含浸繊維中に孔を生じさせる。さらに、得られる材料は、ポリマーにより被覆されている繊維材料であり、したがって多層材料である。
【0017】
Atochemおよびフランス国の連名で出願されている文献EP0,406,067、および文献EP0,201,367は、流動床でのポリマー粉末含浸技法を記載している。繊維は密閉した流動化槽を通り、この場合、EP0,406,067に関すると、それらの繊維は、うね付きローラーまたはシリンダーを使用して互いに場合により分離され、繊維は、これらのローラーまたはシリンダーからの摩擦によって静電気を帯びる。この静電荷により、ポリマー粉末は、繊維の表面に付着し、こうして繊維を含侵することが可能となる。
【0018】
したがって、上記の通り、得られる材料は、ポリマーにより被覆されている繊維材料であり、したがって多層材料である。
【0019】
国際出願WO2016/062896は、電荷を意図的に用いる静電法による、ロービングの粉砕、およびスプレーガンまたは噴霧用ノズルの先端とロービングとの間の電位差の印加による、ロービングの粉末化を記載している。
【0020】
国際出願WO2015/121583は、流動床中で前記材料を含侵し、次に前記ロービングを熱間圧延し、これにより、前記材料に平行する前記ロービングの成形が可能になる、含浸された繊維材料を製造する方法を記載している。
【0021】
熱間圧延は、含浸装置より下流で行われ、ポリマーの分布を均一化すること、および繊維を含侵することを可能にするが、均一に含浸したリボンを得ることはできない。得られた孔は定量されていない。
【0022】
含浸繊維材料リボンの質、したがって最終コンポジット材料の質は、繊維の均一性および含浸、したがって含浸繊維材料の孔の制御および再現性、ならびにその単層外観だけではなく、寸法、より詳細には最終リボンの幅および厚さにもよる。実際に、これらの寸法パラメータを均一にして制御すると、(リボンから)生じるコンポジット材料の機械的強度が改善される。
【0023】
繊維材料の組成物に使用することができる繊維は、様々な直線坪量またはヤード法または糸番手または「tex」を有することができ、かつ/またはロービングにおける様々な数とすることができる。同様に、最も慣用的に使用されるロービングは、ガラス繊維の場合、600~4,800tex、および炭素繊維の場合、3,000(3K)、6,000(6K)、12,000(12K)、24,000(24K)、48,000(48K)、50,000(50K)または400,000(400K)から構成される。例えば、炭素繊維は、7~8μmに近似した直径を一般に有しており、ガラス繊維は、約13、15、17または20μmの直径を有する。
【0024】
ウェブを製造する最も一般的な実施は、ある体積のコンポジット材料を形成するため、ロービングおよび樹脂の集成に基づくものである。しかし、この体積は、製造されるウェブの体積よりも大きい。この体積は、所望の厚さを有する較正済み厚さを有するウェブの形態でカレンダー加工することにより実装されるが、最終ウェブよりも幅広く、不規則な縁部を一般に有する。次に、このウェブは、裁断(切込み操作)して、やはり、較正済みウェブとも称される、所望の幅に較正された最終ウェブが得られる。
【0025】
材料の割れ、繊維への損傷またはウェブの製造における追加工程のコストを回避するため、裁断操作(切込み操作)をなくすことが望ましい場合、ウェブを製造する工程がなくなり、ロービングおよび樹脂の集成体が作製され、その体積は、製造される較正済みウェブの最終体積に正確に対応する。このような方法の主要な結果は、材料の体積が、繊維の直線坪量および繊維含有率に直接、依存するであろう。この理由のため、繊維含有率が固定されている場合、材料の体積の個別の数しか生産することができず、それらは、市販ロービングの坪量の関数となる。
【0026】
言い換えると、切込みなしに製造された較正済みウェブは、任意の幅または厚さを有することができ、較正済みウェブの繊維坪量だけが、最初のロービングの坪量の整数倍に等しくなり得る。
【0027】
製造業者からの需要、例えば、密度1.29の樹脂を34重量%含有する炭素繊維の194g/m2のコンポジットに対する需要を考量すると、較正済みウェブは一般に、約190μmの厚さ、および約300mmの幅を有し、12Kである72のロービングの使用が必要となる。
【0028】
通常の方法では、ウェブは、乾燥繊維ロービングを集成することによって製造され、次に、樹脂で含浸され、次に、得られたウェブに切込み(切込みによる)が入れられる。それにもかかわらず、高い生産速度でこのウェブを製造することが望ましい場合、この厚さのウェブの含浸は、ロービングのコアにおいて正しく行われず、ロービングの均一な含浸を得ることはできない。
【0029】
繊維材料を含侵して、較正済みウェブの形態のこのような含浸繊維材料を成形する現在の技法は、他の欠点も有する。
【0030】
ウェブの長さは、一般に、乾燥繊維ロービングのリールの長さの割合に限定されるので、ウェブに切込みを入れてテープを得るには、これらのテープを繋ぐことが含まれ、これは、その重量およびこれが引き起こす取り扱いの問題による。繋ぐことにより、テープとするための追加の製造コスト、およびテープの早すぎる破損が始まる恐れがある最終コンポジット部品における製造欠陥が生じる。
【0031】
上記の欠点に加えて、ウェブの切込みにより、切断繊維および露出フィブリルの深刻な問題が発生し、その問題は、ほこりおよびロボット配置の間に電気アークを発生させる恐れがあり、ロボットの不具合および/またはコンポジットの欠陥をもたらす恐れがある。これは、ロボットの修理コスト、生産の停止および非適合製品の廃棄を潜在的に引き起こす。最後に、切込み工程の間に、無視できない量の繊維が損傷し、特性の喪失、特に、含浸繊維材料のテープの機械的強度および導電性の低下を引き起こす。
【0032】
したがって、切込みがなくかつ繋がれていない繊維材料(例えば、ほぼ最初の乾燥繊維ロービングの長さを有する)であって、高い生産速度での製造の間でさえも十分に含浸される繊維材料、特に、様々な幅および厚さのストリップの形態のテープ、または較正済みの幅および厚さを有する薄層テープが入手可能となることが必要であり、ストリップまたは薄層テープの平均厚さは、高い生産速度での製造中でさえも、含浸前の初期繊維材料のロービングに存在するフィラメントの数に関わりなく、繊維ロービングの均一なコア含浸を保証するよう、100μm以下となる。
【0033】
したがって、本発明の目的は、先行技術からの欠点の少なくとも1つを改善することであり、特にその目的は、上で定義した含浸繊維材料を生産することである。
【発明の概要】
【0034】
本発明は、炭素繊維の場合、特に、その繊維数が12K以上であるか、またはガラス繊維の場合、その坪量が1,200Tex以上、特に2,400Tex以上、4,800Tex以上となり、体積基準でのその繊維含有率が、含浸繊維材料の体積の少なくとも70%で特に一定である、単層含浸繊維材料であって、最終コンポジット部品の性能が依存する、繊維の含浸が均一であり、前記材料が、多孔度の低下、制御および再現性を伴い、かつ含浸繊維材料中の前記繊維材料の繊維の均一な分布を有する制御された寸法を有する、単層含浸繊維材料を特に提供することを特に目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】支持体の設けられた槽の例を示す。
図2】支持体が円筒形圧縮ローラーである、流動床を備える槽の例を示している。
図3】単一圧縮ローラー、粉末(32)を噴霧するためのスプレーガン(31)を備える槽(30)を用いる実施形態を示し、単一円筒形圧縮ローラー(33)が存在し、角度α“1を示す。
図4予備含浸繊維材料を加熱するための単一加熱システム、および含浸を終了するため、3つのローラーを用いて含浸を終了させる概略を示す。
図5】走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、実施例1による、およびWO2015/121583に開示されている(カレンダー加工前)、D50=108μm(D90=198μmおよびD10=48.3μm)であるPA BACT/10Tポリアミド粉末を含侵したSGL、50K炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
図6】走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、本発明の実施例2による(カレンダー加工前)、D50=108μm(D90=198μmおよびD10=48.3μm)であるPA BACT/10Tポリアミド粉末(41/59のモル比)を含侵したSGL、50K炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
図7】12.7mmの薄層テープを得るための、最後のIR加熱システム、および直列に装着されている加熱式カレンダー加工機であって、それぞれ1kWのIRシステムが装置されている加熱式カレンダー加工機の後に配置された、赤外(IR)システムの外部の第1のノッチ付き支持体(直径13mm、溝12.7mm)、2つのノッチなし支持体(直径20mm)およびノッチ付き支持体(直径13mm、溝12.7mm)を用いる、12.7mmのストリップ(図6で取得)を成形および較正する工程の実施形態を示す。
図8】光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例5による(カレンダー加工前)、D50=114μm(D90=199μmおよびD10=56μm)であるPA11/BACTポリアミド粉末(33/67)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
図9】光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例6による(カレンダー加工前)、D50=136μm(D90=225μmおよびD10=75μm)であるPA6I/6Tポリアミド粉末(45/55のモル比)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
図10】光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例7による(カレンダー加工前)、D50=157μm(D90=301μmおよびD10=58μm)であるPA MPMDT/10Tポリアミド粉末(41/59のモル比)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この目的のため、本発明の目的は、連続繊維からなる少なくとも1つの繊維材料、および:
- 少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーマトリックス、または
- 鎖延長剤と場合により混合されている、少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマー、すなわち前記非反応性熱可塑性ポリマーの前駆体
を含む含浸繊維材料であって、
前記少なくとも1種の非反応性熱可塑性ポリマーまたは前記反応性プレポリマーが、Tg≧80℃、とりわけTg≧100℃、特に、≧120℃、とりわけ≧140℃のようなガラス転移温度を有するアモルファスポリマーもしくはプレポリマーであるか、または溶融温度Tm≧150℃を有する半結晶性ポリマーもしくはプレポリマーであり、前記含浸繊維材料における繊維含有率が、45~65体積%の間、好ましくは、50~60体積%の間、とりわけ54~60%の間であり、前記含浸繊維材料の平均厚さが、含浸前の前記繊維材料中に存在する繊維数とは無関係に、100μm以下である、
含浸繊維材料である。
【0037】
有利には、PA6は、熱可塑性ポリマーまたは熱可塑性プレポリマーの定義から除外される。
【0038】
有利には、前記含浸繊維材料の平均厚さは、10μm~100μmの間である。
【0039】
前記含浸繊維材料の平均厚さおよび幅の測定は、WO2016/062896に記載されているレーザー測定によって行うことができる。
【0040】
本開示では、用語「ストリップ」とは、100μm以下の平均厚さを有する、未較正幅および厚さの含浸繊維材料を表すために使用される。
【0041】
本開示の全体にわたり、ストリップの幅は、平均幅に相当し、ストリップの厚さは、平均厚さ、すなわちストリップの全長にわたる平均幅および厚さに相当する。これは、幅および厚さが、ストリップに沿って変わり得るが、厚さは、平均で、100μm以下であることを意味する。平均厚さが、ストリップの全長にわたり、100μm未満であることを確認する方法は、非破壊的測定手段によって、ストリップの統計学的な代表試料に関する測定を行うことである。
【0042】
表現「未較正幅」は、ストリップの幅が、一定ではなく、その幅が、可能性として、l+/-20%、特に、l+/-15%、特に、l+/-10%に等しいことを意味し、この場合、lは平均幅を表す。
【0043】
表現「未較正厚さ」は、ストリップの厚さが、その全長にわたり一定ではなく、その厚さが、e+/-20%、特に、e+/-15%、特にe+/-10%に等しくなる可能性があることを意味し、この場合、eは、平均厚さを表す。
【0044】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-20%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-20%に等しいことを意味する。
【0045】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-20%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-15%に等しいことを意味する。
【0046】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-20%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-10%に等しいことを意味する。
【0047】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-15%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-20%に等しいことを意味する。
【0048】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-10%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-20%に等しいことを意味する。
【0049】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-15%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-15%に等しいことを意味する。
【0050】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-10%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-15%に等しいことを意味する。
【0051】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-15%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-10%に等しいことを意味する。
【0052】
有利には、表現「未較正幅」および「未較正厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-10%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-10%に等しいことを意味する。
【0053】
それにもかかわらず、ストリップの平均幅は、ロービング中に存在する繊維数による。
【0054】
用語「薄層テープ」とは、100μm以下の平均厚さを有する、較正済み幅および厚さである含浸繊維材料を表すために使用される。
【0055】
本開示の全体にわたり、薄層テープの幅は、平均幅に相当し、薄層テープの厚さは、平均厚さ、すなわち薄層テープの全長にわたる平均幅および厚さに相当する。これは、幅および厚さが、薄層テープに沿って変わり得るが、厚さは、平均で、100μm以下であることを意味する。平均厚さが、ストリップの全長にわたり100μm未満であることを確認する方法は、非破壊的測定手段によって、薄層テープの統計学的な代表試料に関する測定を行うことである。表現「較正済み幅」は、薄層テープの幅が、その全長にわたり一定であり、幅は、l+/-5%、特にl+/-2%になり得、この場合、lは、平均幅を表す。
【0056】
表現「較正済み厚さ」は、薄層テープの平均厚さが、その全長にわたり一定であり、厚さは、e+/-5%に等しくなり得、特に、厚さは、e+/-2%に等しく、この場合、eは、平均厚さを表す。
【0057】
有利には、表現「較正済み幅」および「較正済み厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-5%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-5%に等しいことを意味する。
【0058】
有利には、表現「較正済み幅」および「較正済み厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-5%に等しく、厚さが、e+/-2%に等しいことを意味する。
【0059】
有利には、表現「較正済み幅」および「較正済み厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-2%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-5%に等しいことを意味する。
【0060】
有利には、表現「較正済み幅」および「較正済み厚さ」は、それぞれ、幅は、平均幅のl+/-2%に等しく、厚さが、平均厚さのe+/-2%に等しいことを意味する。
【0061】
それにもかかわらず、薄層テープの平均幅は、ロービング中に存在する繊維数による。
【0062】
有利には、前記繊維材料中の繊維数は、炭素繊維の場合、3K以上、特に6K以上、特に12K以上である。
【0063】
有利には、前記繊維材料中の繊維数は、炭素繊維の場合、12K以上であり、特に、12K、24K、48K、50Kおよび400Kから、特に、12K、24K、48Kおよび50Kから選択されるか、ガラス繊維の場合、坪量は、1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上である。
【0064】
Texは、1000mの基本糸が1gの重量であることを意味する。
【0065】
したがって、本発明者は、開始ロービングが何であろうとも、すなわち、45体積%を超える高い繊維含有率の場合、開始ロービング中のフィラメントまたは繊維数がいくらであろうと、ストリップまたは薄層テープが100μm以下の平均厚さがある場合に限り、高い生産速度で含浸が正しく行われることを見いだした。
【0066】
平均厚さおよび所望の平均幅が固定されている場合(多孔度レベルは無視できるレベルと仮定する)、ロービング中に存在する必要な繊維数を決定することが可能であることが非常に明白である。
【0067】
例えば、50体積%の炭素繊維含有率および100μmの平均厚さを有する50mmの平均幅(薄層テープ、例えばポリアミド)の場合、50Kのロービングを使用することが必要となろう。
【0068】
62体積%の炭素繊維含有率および60μmの平均厚さを有する50mmの平均幅(薄層テープ、例えばポリアミド)の場合、48Kのロービングを使用することが必要となろう。
【0069】
したがって、使用されるロービングは、多重ロービングとは反対に単一ロービングとなり、これは、次に、多重ロービングを構成するロービングの各々から生産されるテープまたは薄層ウェブの結合に相当する。
【0070】
有利には、再加熱の非存在下で、含浸繊維材料は非可撓性である。
【0071】
これは、含浸繊維材料は、常温では複雑な形状をとることができないこと、および含浸繊維材料は、樹脂のTmより高い時だけ複雑な形状をとることができることを意味する。言い換えると、含浸繊維材料はドレープ性を有していない。
【0072】
繊維材料の繊維は、サイジングされてもよく、またはサイジングされていなくてもよい。
【0073】
「サイジング」は、ノズルから出る強化繊維(織物のサイジング)、および布地(プラスチックのサイジング)に適用される表面処理を表す。
【0074】
ノズルを出るフィラメントに適用される「織物」のサイジングは、互いに関連するフィラメントの凝集力を確実にする結合剤の堆積、摩擦の低下およびその後の取り扱いを容易にする(製織)こと、および静電荷の形成を防止することからなる。サイジングは、例えば、溶液中、炭素繊維上にエポキシ樹脂を堆積することによって、繊維の表面に実施されてもよい。
【0075】
有利には、繊維材料の繊維は、サイジングされていない繊維である。
【0076】
用語「サイジングされていない」は、繊維が最初にサイジングされておらず、したがって表面処理を受けない場合、または繊維が、使用前に再サイジングされる場合のどちらか一方を意味する。
【0077】
有利には、体積基準の繊維の含有率は、含浸繊維材料の体積の少なくとも70%、特に含浸繊維材料の体積の少なくとも80%、特に含浸繊維材料の体積の少なくとも90%、とりわけ含浸繊維材料の体積の少なくとも95%で一定である。
【0078】
有利には、繊維の分布は、含浸繊維材料の体積の少なくとも95%で均一である。
【0079】
体積による繊維率は、代表要素体積(REV)に関して局所的に測定される。
【0080】
用語「一定」は、体積基準の繊維含有率が、何らかの測定不確かさの範囲内で一定であり、この不確かさは、プラスまたはマイナス1%である。
【0081】
表現「均一な」は、含浸が一様であること、および乾燥繊維、すなわち非含浸繊維が存在しないこと、および反対に、含浸繊維材料からなるテープの体積の少なくとも95%に繊維を含まない純粋な樹脂の領域が存在しないことを意味する。
【0082】
有利には、前記含浸繊維材料における多孔度レベルは、10%未満、特に5%未満、特に2%未満である。
【0083】
有利には、前記含浸繊維材料は、単一層材料である。
【0084】
用語「単層」とは、含浸は、特に含浸中に少なくとも1つの拡散を伴って、特に均一にコアに対して行われるので、繊維材料が含浸されると、前記繊維材料およびポリマーが互いに分離できないこと、および単一繊維およびポリマーをベースとする層から構成される材料を形成することを意味する。
【0085】
厚さ、繊維数、繊維含有率、サイジング、繊維分布および単層特性という様々な特性が、本発明の対象物のものと組み合わせて、1つまたは複数の他のものとそれぞれ組み合わせることができ、本発明の全体部分を形成する可能な組合せ物のできるだけ多くの実施形態の対象となり得る。
【0086】
ポリマーマトリックス
熱可塑性樹脂または熱可塑性ポリマーとは、常温で一般に固体である物質を指し、この物質は、半結晶またはアモルファスであってもよく、この物質がアモルファスである場合、特にそのガラス転移温度(Tg)まで経過した後、昇温している間、軟化して、一層高い温度では流動するか、または半結晶の場合、そのいわゆる溶解温度(Tm)を過ぎると鋭い遷移を示すことができ、温度がその結晶化温度未満(半結晶の場合)およびそのガラス転移温度未満(アモルファスの場合)まで低下すると、再度、固体になる。
【0087】
TgおよびTmは、それぞれ、規格11357-2:2013および11357-3:2013に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により決定される。
【0088】
繊維材料の予備含浸マトリックスを構成するポリマーに関して、熱可塑性ポリマー、または熱可塑性ポリマーの混合物であるのが有利である。このポリマー、または熱可塑性ポリマーの混合物は、粉末形態に粉砕され得、その結果、特に流動床または水性媒体中、槽などの装置中で使用され得る。
【0089】
有利には、PA6は、熱可塑性ポリマーの定義から除外される。
【0090】
特に流動床において、槽形態の装置は開放系または密閉系であってもよい。
【0091】
場合により、熱可塑性ポリマー、または熱可塑性ポリマーのブレンドは、炭素をベースとする充填剤、特にグラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノフィブリルもしくはそれらの混合物の中から好ましくは選択されるカーボンブラックまたは炭素をベースとするナノ充填剤をさらに含む。これらの充填剤は、電気および/または熱を伝導することが可能であり、したがって、加熱されると、ポリマーマトリックスの溶融を容易にすることができる。
【0092】
場合により、前記熱可塑性ポリマーは、特に、触媒、抗酸化剤、熱安定剤、UV安定剤、光安定剤、潤滑剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、核化剤、鎖延長剤および色素、導電体、熱伝導体またはそれらの混合物の中から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。
【0093】
有利には、前記添加剤は、難燃剤、導電体および熱伝導体中の中から選択される。
【0094】
別の変形形態によれば、熱可塑性ポリマー、または熱可塑性ポリマーの混合物は、液晶ポリマーもしくは環化ポリブチレンテレフタレート、またはCYCLICS CORPORATIONにより販売されているCBT100樹脂などの、環化ポリブチレンテレフタレートを含有する混合物をさらに含むことができる。これらの化合物により、特に、繊維のコアへの良好な浸透のために、溶融状態にあるポリマーマトリックスを流動化することが可能となる。予備含浸マトリックスを作製するために使用される、ポリマー、または熱可塑性ポリマーの混合物の性質、特にその溶融温度に応じて、これらの化合物の一方または他方が選択されよう。
【0095】
繊維材料の予備含浸マトリックスの組成物に含まれる熱可塑性ポリマーは、以下:
- 脂肪族、脂環式または半芳香族ポリアミド(PA)(ポリフタルアミド(PPA)とも呼ばれる)のファミリーからのポリマーおよび共重合体、
- ポリ尿素、特に芳香族ポリ尿素、
- ポリアクリレートなどのアクリルのファミリーからのポリマーおよび共重合体、とりわけ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはその誘導体、
- ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、もしくはポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)などのポリ(アリールエーテルケトンケトン)(PAEKK)、またはそれらの誘導体のファミリーからのポリマーおよび共重合体、
- 芳香族ポリエーテル-イミド(PEI)、
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニルスルフィド(PPS)、
- ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
- ポリオレフィン、特にポリプロピレン(PP);
- ポリ乳酸(PLA)、
- ポリビニルアルコール(PVA)、
- フッ素化ポリマー、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、
およびそれらの混合物
から選択することができる。
【0096】
有利には、PA6は、脂肪族ポリアミドの定義から除外される。
【0097】
有利には、前記ポリマーが、2種のポリマーP1とP2との混合物である場合、ポリマーP1およびP2の重合基準での比率は、1~99%と99~1%との間である。
【0098】
有利には、前記熱可塑性ポリマーが混合物であり、予備含浸方法が、乾燥粉末を使用する場合、この混合物は、予備含浸用の槽への導入前の乾式ブレンドによって、または槽中で直接行われる乾式ブレンドによって、または押出成形器で前もって作製された混合物の粉砕によって得られる粉末形態をとる。
【0099】
有利には、この混合物は、槽に導入される前に乾式ブレンドすることによって、または槽中で直接、得られる粉末から構成され、2種のポリマーP1およびP2のこのような混合物は、PEKKおよびPEIの混合物である。
【0100】
有利には、PEKK/PEI混合物は、90~10重量%から60~40重量%、特に90~10重量%から70~30重量%である。
【0101】
熱可塑性ポリマーは、繊維材料を含浸する最終の非反応性ポリマー、あるいは前記最終の非反応性ポリマーへと導くため、繊維材料をやはり含浸するが、予備含浸後、前記プレポリマーが有する鎖末端に応じて、それ自体ともしくは別のプレポリマーと反応し得る、または特に加熱式カレンダー加工機の加熱の間に鎖延長剤と反応し得る反応性プレポリマー、あるいはやはり、場合により前記鎖延長剤と部分的に重合した反応性熱可塑性プレポリマーに相当することができ、500~10,000、好ましくは4,000~8,000の範囲の数平均分子質量(Mn)を有する。前記部分的に重合した反応性熱可塑性プレポリマーは、使用したポリマーのTgおよび/またはTmに応じて、加熱することによって前記非反応性最終ポリマーに導くことが可能である。
【0102】
表現「非反応性ポリマー」は、分子量がもはや有意に変化する可能性がないこと、すなわち使用した場合、その数平均分子量(Mn)は50%未満しか変化せず、したがって、熱可塑性マトリックスの最終ポリアミドポリマーに相当することを意味する。
【0103】
反対に、表現「反応性ポリマー」は、前記反応性ポリマーの分子量は、縮合、置換により一緒に、または重付加によって鎖延長剤と共に揮発性副生物の離脱なしに反応性プレポリマーが反応するため、その実施の間に変化して、熱可塑性マトリックスの最終(非反応性)ポリアミドポリマーに至る。
【0104】
第1の可能性によれば、前記プレポリマーは、同じ鎖上(すなわち、同じプレポリマー上)に、縮合によって互いに対してそれぞれ共反応性官能基となる、2つの末端官能基X’およびY’、とりわけ、それぞれアミンおよびカルボキシ、またはカルボキシおよびアミンであるX’およびY’を有する少なくとも1つの担体反応性プレポリマー(ポリアミド)を含むことができるか、またはこれから構成され得る。
【0105】
この第1の可能性では、前記少なくとも1種の応性熱可塑性プレポリマーは、場合により前記鎖延長剤と部分的に重合することができ、500~10,000、好ましくは4,000~8,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0106】
第2の可能性によれば、前記プレポリマーは、互いに対して反応性があり、それぞれのプレポリマーが、それぞれ、2つの同一の末端官能基X’またはY’(同じプレポリマーの場合、同じであり、2つのプレポリマー間では異なる)を有する少なくとも2種のポリアミドプレポリマーを含むことができるか、またはこれらから構成することができ、プレポリマーの前記官能基X’は、特に縮合によって、他のプレポリマーの前記官能基Y’のみと反応することができ、とりわけ、X’およびY’は、それぞれ、アミンおよびカルボキシル、またはカルボキシル末端アミンである。
【0107】
この第2の可能性では、前記少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーは、場合により前記鎖延長剤と部分的に重合することができ、500~10,000、好ましくは4,000~8,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0108】
第3の可能性によれば、前記プレポリマーは、以下:-NH、-COHおよび-OH、好ましくはNHおよび-COH[nは、1~3、好ましくは1~2、より好ましくは1または2、とりわけ2である]、および好ましくは500未満、より好ましくは400未満の分子質量を有する少なくとも1種の鎖延長剤Y-A’-Y[A’は、前記プレポリマーa1)の少なくとも1つの官能基Xとの重付加による反応性を示す2つの同一の末端反応性官能基Yを有する、炭化水素二置換基である]の中から選択される、n個の末端反応性官能基Xを有する、前記熱可塑性ポリアミドポリマーの少なくとも1つのプレポリマーを含むことができるか、またはこれから構成され得る。
【0109】
この第2の可能性では、前記少なくとも1種の反応性熱可塑性プレポリマーは、場合により前記鎖延長剤と部分的に重合することができ、500~10,000、好ましくは4,000~8,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0110】
熱可塑性マトリックスの前記最終ポリマーの数平均分子量Mnは、10000~40000、好ましくは12000~30000の範囲にあるのが好ましい。これらのMn値は、溶媒を変更する(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)ことによるが、規格ISO307:2007に準拠して、m-クレゾール中で求めると、0.8以上の固有の粘度に相当し得る。
【0111】
上で与えられる2つの選択肢による前記反応性プレポリマーは、500~10000、好ましくは500~6000、特に、2500~6000の範囲の数平均分子量Mnを有する。
【0112】
Mnは、特に、溶液中での電位差滴定によって決定される末端官能基、および前記プレポリマーの官能基の割合からの計算によって決定される。質量Mnはまた、立体排除クロマトグラフィーによって、またはNMRによって、決定することもできる。
【0113】
ポリアミドを定義するために使用される命名法は、ISO規格1874-1:2011 「Plastiques - Materiaux polyamides(PA)pour moulage et extrusion - Partie1:Designation」の特に3頁(表1および2)に記載されており、当業者に周知である。
【0114】
ポリアミドは、ホモポリアミドもしくはコポリアミド、またはそれらの混合物とすることができる。
【0115】
有利には、マトリックスを構成するプレポリマーは、特に、尿素単位により場合により修飾されている脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミドおよび半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)、およびそれらの共重合体、ポリメタクリル酸メチル(PPMA)およびその共重合体、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、PVDF、ポリエーテルケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)の中から選択されるポリアミド(PA)の中から選択される。
【0116】
有利には、PA6は、脂肪族ポリアミドの定義から除外される。フッ素化ポリマーに関すると、フッ化ビニリデン(式CH=CFを有するVDF)のホモポリマー、または重量基準で、少なくとも50質量%のVDFおよびVDFと共重合可能な少なくとも1種の他のモノマーを含む、VDFの共重合体を使用することが可能である。VDF含量は、構造部品の良好な機械耐性および化学耐性を確実にするため、とりわけ、熱応力および化学応力に晒される場合、80質量%、または一層良好にはさらに90質量%より高くなければならない。コモノマーは、フッ素化モノマー、例えばフッ化ビニルでなければならない。
【0117】
高温に耐性でなければならない構造部品の場合、フッ化ポリマーの他に、本発明によれば、ポリ(エーテルケトン)PEK、ポリ(エーテルエーテルケトン)PEEK、ポリ(エーテルケトンケトン)PEKK、ポリ(エーテルケトンエーテルケトンケトン)PEKEKKなどのPAEK(ポリアリールエーテルケトン)、または高いガラス転移温度Tg)を有するPAが有利なことに使用される。
【0118】
有利には、前記熱可塑性ポリマーは、アモルファスポリマーであって、そのガラス転移温度が、Tg≧80℃、とりわけ≧100℃、特に≧120℃、とりわけ≧140℃のようなアモルファスポリマー、または半結晶性ポリマーであって、その溶融温度Tm≧150℃である半結晶性ポリマーである。
【0119】
有利には、前記少なくとも1種の熱可塑性プレポリマーは、ポリアミド、PEKK、PEI、およびPEKKとPEIとの混合物の中から選択される。
【0120】
有利には、前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミドおよび半芳香族ポリアミド(ポリフタルアミド)から選択される。
【0121】
有利には、前記脂肪族ポリアミドプレポリマーは、以下:
- ポリアミド6(PA-6)、ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、ポリアミド11/1010およびポリアミド12/1010、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリアミド、およびブロック共重合体、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)から選択され、前記半芳香族ポリアミド(これは、ウレア単位により場合により修飾されている半芳香族ポリアミドであり、特に、PA MXD6およびPA MXD10、またはEP1505099に記載されている式X/YArである半芳香族ポリアミド、特に式A/XTである半芳香族ポリアミド[Aは、少なくとも1つのアミノ酸から得られる単位、少なくとも1つのラクタムから得られる単位、および式(Caジアミン).(Cb二酸)[「a」は、ジアミンの炭素原子数を表し、「b」は、二酸の炭素原子数を表し、「a」および「b」はそれぞれ、4~36の間、有利には9~18の間である]に対応する少なくとも1つの単位から選択され、単位(Caジアミン)は、直鎖状または分岐状の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、単位(Cb二酸)は、直鎖状または分岐状の脂肪族二酸、脂環式二酸および芳香族二酸から選択される]から選択され、
X.Tは、Cxジアミンおよびテレフタル酸[xは、Cxジアミンの炭素原子数を表し、xは、6~36の間、有利には9~18の間である]の重縮合から得られる単位、特に、式A/6T、A/9T、A/10TまたはA/11T(Aは、上で定義されている通りである)を有するポリアミド、特にポリアミドPA6/6T、PA66/6T、PA6I/6T、PA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA11/BACT、PA BACT/10T/6Tを表す。
【0122】
Tは、テレフタル酸に相当し、MXDは、m-キシリレンジアミンに相当し、MPMDは、メチルペンタメチレンジアミンに相当し、BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに相当する。
【0123】
有利には、前記脂肪族ポリアミドプレポリマーは、以下:
- ポリアミド11(PA-11)、ポリアミド12(PA-12)、ポリアミド66(PA-66)、ポリアミド46(PA-46)、ポリアミド610(PA-610)、ポリアミド612(PA-612)、ポリアミド1010(PA-1010)、ポリアミド1012(PA-1012)、ポリアミド11/1010およびポリアミド12/1010、またはそれらの混合物もしくはそれらのコポリアミド、およびブロック共重合体、特にポリアミド/ポリエーテル(PEBA)から選択され、前記半芳香族ポリアミドは、ウレア単位により場合により修飾されている半芳香族ポリアミド、特に、PA MXD6およびPA MXD10、またはEP1505099に記載されている式X/YArである半芳香族ポリアミド、特に式A/XTである半芳香族ポリアミド[Aは、少なくとも1つのアミノ酸から得られる単位、少なくとも1つのラクタムから得られる単位、および式(Caジアミン).(Cb二酸)[「a」は、ジアミンの炭素原子数を表し、「b」は、二酸の炭素原子数を表し、「a」および「b」はそれぞれ、4~36の間、有利には9~18の間である]に対応する少なくとも1つの単位から選択され、単位(Caジアミン)は、直鎖状または分岐状の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよびアルキル芳香族ジアミンから選択され、単位(Cb二酸)は、直鎖状または分岐状の脂肪族二酸、脂環式二酸および芳香族二酸から選択され、
X.Tは、Cxジアミンおよびテレフタル酸の重縮合から得られる単位[xは、Cxジアミンの炭素原子数を表し、xは、6~36の間、有利には9~18の間である]、特に、式A/6T、A/9T、A/10TまたはA/11Tを有するポリアミド(Aは、上で定義されている通りである)、特にポリアミドPA6/6T、PA66/6T、PA6I/6T、PA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA11/BACT、PA BACT/10T/6Tを表す]である。
【0124】
Tは、テレフタル酸に相当し、MXDは、m-キシリレンジアミンに相当し、MPMDは、メチルペンタメチレンジアミンに相当し、BACは、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに相当する。
【0125】
有利には、前記ポリアミドは、PA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10Tから選択される半芳香族ポリアミドである。
【0126】
繊維材料:
前記繊維材料を構成する繊維に関すると、それらは、ロービングの形態の、無機、有機または植物起源の特に連続性のある繊維である。
【0127】
有利には、前記繊維材料中の繊維数は、炭素繊維の場合、3K以上、特に、6K以上、特に12K以上である。
【0128】
有利には、前記繊維材料中の繊維数は、炭素繊維の場合、12K以上であり、特に、12K、24K、48K、50Kおよび400Kから、特に12K、24K、48および50Kから選択される。
【0129】
有利には、ガラス繊維の場合の坪量は、1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上である。
【0130】
無機繊維は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩または玄武岩をベースとする繊維、シリカ繊維または炭化ケイ素繊維を含む。有機繊維には、例えば、半芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維またはポリオレフィン繊維などの、熱可塑性または熱硬化性ポリマーをベースとする繊維が含まれる。好ましくは、それらは、アモルファス熱可塑性ポリマーをベースとしており、熱可塑性ポリマー混合物がアモルファスである場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物のガラス転移温度Tgよりも高いTgを有するか、または熱可塑性ポリマーマトリックスが半結晶である場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーまたは熱可塑性ポリマーマトリックスのTmより高いガラス転移温度Tgを有する。有利には、それらは、半結晶性熱可塑性ポリマーをベースとしており、熱可塑性ポリマー混合物がアモルファスである場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーまたは熱可塑性ポリマー混合物のTgよりも高い溶融温度Tmを有するか、または熱可塑性ポリマーマトリックスが半結晶である場合、予備含浸マトリックスを構成するポリマーまたは熱可塑性ポリマーマトリックスの溶融温度Tmよりも高いTmを有する。したがって、最終コンポジットの熱可塑性マトリックスによって含浸している間、繊維材料を構成する有機繊維の場合、溶融リスクがない。植物繊維は、自然亜麻、大麻、リグニン、竹、シルク、特に、クモの糸、シサル麻、および他のセルロース繊維、特にビスコースを含む。これらの植物繊維は、純粋に使用され得るか、または熱可塑性ポリマーマトリックスの接着性および含浸を容易にするために、コーティング層により処理またはコーティングされ得る。
【0131】
植物繊維はまた、支持糸を含む繊維にも相当し得る。
【0132】
これらの構成成分の繊維は、単独で、または混合物中で使用することができる。したがって、有機繊維は、熱可塑性ポリマーにより予備含浸させた無機繊維と混合して、予備含浸繊維材料を形成することができる。
【0133】
有機繊維ロービングは、いくつかの坪量を有することができる。有機繊維ロービングは、いくつかの幾何学形状をさらに有することができる。
【0134】
好ましくは、繊維材料は、連続炭素、ガラスもしくは炭化ケイ素繊維、またはそれらの混合物、特に炭素繊維から構成される。繊維材料は、1つのロービングまたはいくつかのロービングの形態で使用され、これらは、次に、各ロービングの繊維が添加された単一ロービングからなる。
【0135】
「使用する用意が整っている」とも呼ばれる含浸された材料では、ポリマーまたは熱可塑性含浸ポリマーの混合物は、繊維の周りに一様かつ均一に分布している。この種の材料では、熱可塑性含浸ポリマーは、最小の多孔度、すなわち繊維間に最小の空の空間が得られるよう、繊維内部にできるだけ均一に分布しなければならない。実際に、このタイプの材料における孔の存在は、例えば、機械的引張応力の間、応力集中スポットとして作用することができ、これは、次に、含浸繊維材料の亀裂発生点を形成して、この発生点を機械的に損なう。したがって、ポリマーまたはポリマーの混合物の均一な分布により、これらの含浸繊維材料から形成されるコンポジット材料の機械的強度および均一性が改善される。
【0136】
こうして、いわゆる、含浸された材料を「使用する用意が整っている」場合、前記予備含浸繊維材料中の繊維含有率は、45~65体積%、好ましくは50~60体積%、特に54~60体積%の間である。
【0137】
含浸率は、リボンの断面の画像解析により(例えば、顕微鏡、または光学もしくはデジタルカメラ装置を使用する)、ポリマーにより含浸されたリボンの表面積を製品の全表面積(含浸表面+孔の表面)で除算することによって測定され得る。質のよい画像を得るため、リボンの裁断片をその横方向に、標準艶出し用樹脂でコーティングすること、および標準プロトコルにより磨くことが好ましく、少なくとも倍率6×の顕微鏡で試料を観察することが可能となる。
【0138】
有利には、前記含浸繊維材料の多孔度レベルは、10%未満、特に5%未満、特に2%未満である。
【0139】
孔のないレベルを実現するのは困難であること、その結果、有利には、多孔度レベルは、0%より高いが、上で列挙したレベル未満であることに留意しなければならない。
【0140】
多孔度レベルは、独立多孔度レベルに相当し、電子顕微鏡によって、または本発明の実施例の項目に記載されている通り、前記含浸繊維材料の理論密度と実験密度との間の相対偏差としてのどちらか一方で決定することができる。
【0141】
別の態様によれば、本発明は、上で定義した含浸繊維材料を調製する方法であって、少なくとも1つの支持部分(E)が設けられている少なくとも1つの加熱システムにより予備含浸繊維材料を加熱する工程、および含浸を終了する工程、ならびに場合により、含浸繊維材料のロービングまたは前記平行なロービングを成形および較正する工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0142】
有利には、成形工程および較正工程は、予備含浸繊維材料を加熱する前記工程および含浸を終了する前記工程の後に行われる。
【0143】
一実施形態では、予備含浸繊維材料を加熱する工程、および含浸を終了する工程は、同じ加熱システムを用いて行われる。
【0144】
別の実施形態では、予備含浸繊維材料を加熱する工程、および含浸を終了する工程は、2つの個別の加熱システムを用いて行われる。
【0145】
有利には、予備含浸繊維材料を加熱する工程、および含浸を終了する工程は、繊維材料を予備含浸する工程の後に行われる。
【0146】
有利には、本発明の方法は、以下の工程:
i) 予備含浸繊維材料を得るため、特に、粉末堆積によって、溶融経路によって、特に引き抜き成形によって、溶融ポリマーのクロスヘッド押出成形によって、水性ポリマー粉末分散体または水性ポリマー粒子分散体または水性ポリマーエマルションまたは懸濁液中での繊維の連続流通によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない流動床によって、ノズルまたはスプレーガンによる噴霧によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない槽中での乾式経路によって、繊維材料を予備含浸する工程、
ii) 前記予備含浸繊維材料を加熱して含浸を終了し、100μm以下、特に、10μm~100μmの間の平均厚さを有するストリップの形態のテープからなる含浸繊維材料を得る工程
iii) 場合により、前記含浸繊維材料のロービングまたは前記平行なロービングを成形および較正して、100μm以下、特に、10μm~100μmの間の平均厚さを有する較正済み薄層テープの形態のテープからなる含浸繊維材料を得る工程
を含む。
【0147】
有利には、本発明の方法は、少なくとも10m/分、特に少なくとも20m/分、特に少なくとも30m/分の速度で行われる。
【0148】
ストリップまたは薄層テープの形態の含浸繊維材料を調製する方法
ストリップの形態の含浸繊維材料、特に単層材料は、2つの工程:
ポリマーマトリックスによる予備含浸である第1の工程、ならびに少なくとも1つの支持部分(E)および少なくとも1つの加熱システムにより含浸を終了するための第2の加熱工程
で調製することができる。
【0149】
薄層テープの形態の含浸繊維材料、特に単層材料は、3つの工程:
ポリマーマトリックスによる予備含浸である第1の工程、少なくとも1つの支持部分(E)および少なくとも1つの加熱システムにより含浸を終了するための第2の加熱工程、ならびに成形および較正する第3の工程
で調製することができる。
【0150】
第1の工程:予備含浸
予備含浸繊維材料を生産する予備含浸の第1の工程は、当業者に周知の技法に準拠して行うことができ、特に、上で開示されているものから選択され得る。
【0151】
したがって、それらは、粉末堆積による、溶融経路による、特に引き抜き成形による、溶融ポリマーのクロスヘッド押出成形による、水性ポリマー粉末分散体または水性ポリマー粒子分散体または水性ポリマーエマルションまたは懸濁液中での繊維の連続流通による、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない流動床による、ノズルまたはスプレーガンによる噴霧による、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない槽中での乾式経路による、予備含浸技術によって行うことができる。
【0152】
支持体は、凹形、凸形または円筒形の圧縮ローラーとすることができ、特に円筒形である。
【0153】
図1は、支持体の設けられた槽の例を示し、図2は、支持体が円筒形圧縮ローラーである、流動床を備える槽の例を示している。
【0154】
流動床が存在しない、およびスプレーガンを装備した同じ槽を使用することができる。
【0155】
予備含浸はまた、1つまたは複数の支持体(E”)が、前記システムの上流に、特に予備含浸が行われる槽の前に存在する、上で定義したものなどのシステムを用いて行うこともできる。
【0156】
支持部分(E)および(E”)は、材料または形状、およびその特徴(形状の関数としての直径、長さ、幅、高さなど)に関して関わりなく、同一とすることができるか、または異なることができることに留意すべきである。
【0157】
溶融経路:
予備含浸工程は、溶融経路によって、特に引き抜き成形によって行うことができる。
【0158】
溶融経路による予備含浸技法は、当業者よって公知であり、上記の参照文献に記載されている。
【0159】
予備含浸工程は、特に、ポリマーマトリックスをクロスヘッド押出成形し、このクロスヘッド中に前記ロービング(単数または複数)を通過させて、次に加熱ダイに通過させることによって行われ、この場合、クロスヘッドは、固定された支持体または回転式支持体を設けることができ、これらの支持体の上をロービングが通過し、こうして、前記ロービングの延伸が引き起こされて、前記ロービングの予備含浸が可能となる。
【0160】
予備含浸は、US2014/0005331(A1)に記載されている通りに特に行うことができ、樹脂の供給が前記ロービングの2つの側面で行われること、および表面の接触がなく、2つの表面のうちの一方の表面に樹脂の部分がなくなるという差異を伴う。
【0161】
有利には、予備含浸工程は、高速度で、すなわち、少なくとも10m/分、特に少なくとも20m/分、特に少なくとも30m/分の前記ロービングの通過速度で溶融経路により行われる。
【0162】
流動床:
予備含浸工程は、流動床で行われ得る。
【0163】
少なくとも1つの支持部分を使用する、加熱工程のない製造方法を行うための例となるユニットが、国際出願WO2015/121583に記載されている。
【0164】
このシステムは、予備含浸工程を行うための流動床を備える槽の使用を記載しており、本発明の文脈において使用することができる。
【0165】
有利には、流動床を備える槽には、圧縮ローラーとすることができる少なくとも1つの支持部分(E’)(図1)が設けられている(図2)。
【0166】
支持部分(E’)は、任意のシステムを意味することが理解されなければならず、そのシステム上を、ロービングが槽中で移動することができる。支持部分(E’)は、ロービングが支持部分を通り過ぎることができる限り、任意の形状を有することができる。
【0167】
支持部分(E’)の例が、本発明をそれに限定しないで、図1に詳細に開示されている。
【0168】
支持部分(E)および(E’)は、材料または形状、およびその特徴(形状に応じて、直径、長さ、幅、高さなど)に関して関わりなく、同一とすることができるか、または異なることができる。
【0169】
しかし、支持部分(E’)は、加熱しないし、加熱もされない。
【0170】
繊維材料を予備含浸する工程は、少なくとも1つの支持部分(E’)が設けられている槽(10)を備えおよび前記ポリマーマトリックスの粉末流動床(12)を備える連続予備含浸装置中に、1つまたは複数のロービングを通すことにより行われる。
【0171】
前記ポリマーマトリックスまたはポリマーの粉末は、槽に導入されたガスG(例えば、空気)中で懸濁され、ホッパー(11)から槽(10)に循環する。ロービングは、この流動床(12)中で循環される。
【0172】
槽は、任意の形状、特に円筒形または平行六面体、特に直方体、または立方体、有利には、直方体を有することができる。
【0173】
槽(10)は、開放槽または密閉槽とすることができる。
【0174】
槽が密閉されている事象では、次に、槽は、封止システムを装備しており、その結果、前記ポリマーマトリックスの粉末は、前記槽から出ることができない。
【0175】
したがって、この予備含浸工程は、乾式経路によって行われ、すなわち、熱可塑性ポリマーマトリックスは、ガス中、特に空気中で特に懸濁した粉末形態にあるが、溶媒または水中で分散し得ない。
【0176】
予備含浸されることになるロービングはそれぞれ、シリンダー(図示されていない)によって生じる牽引力下で、リールを備える装置からほどかれる。
【0177】
リールはそれぞれ、各繊維のロービングに張力を適用するよう、ブレーキ(図示されていない)が設けられている。この場合、アライメントモジュールにより、繊維ロービングを互いに平行に配置することが可能となる。このように、繊維ロービングは、互いに接触することができず、これによって、互いに対する摩擦による、繊維への機械的損傷を回避することが可能となる。
【0178】
次に、図2の場合、繊維ロービングまたは平行な繊維ロービングは、特に、圧縮ローラー(24)である支持部分(E’)が設けられている流動床(12)を備える槽(10)に入る。繊維ロービングまたは平行な繊維ロービングは、次に、場合により粉末での滞留時間を確認した後の予備含浸後に槽を出る。
【0179】
表現「粉末での滞留時間」は、ロービングが、流動床において前記粉末に接触している間の時間を意味する。
【0180】
ガラスまたは炭素繊維のロービングなどの繊維材料がサイジングを有する場合、繊維材料が槽内を通過する前に、サイズ変更という任意選択の工程が行われてもよい。
【0181】
有利には、使用される槽は、支持体を備える流動床を備え、前記予備含浸工程は、前記流動床を備える槽への入り口とここからの出口との間で、前記ロービング(単数または複数)を同時に延伸させながら行われる。
【0182】
表現「槽の入り口」は、流動床を備える槽の縁部の垂直接線に相当する。
【0183】
表現「槽の出口」は、流動床を備える槽の他の縁部の垂直接線に相当する。
【0184】
延伸は、前記ロービングを構成する各繊維を、そこに最も近い空間に前記ロービングを取り囲む他の繊維からできる限り隔離することからなる。それは、ロービングを横方向に延伸することに相当する。
【0185】
言い換えると、ロービングの横方向の隔離または幅は、流動床を備える槽への入り口と流動床を備える槽からの出口の間で増大し、こうして、繊維材料の予備含浸の改善が可能となる。
【0186】
したがって、予備含浸工程において、少なくとも1つの支持体(E’)、特に円筒形圧縮ローラーを使用すると、先行技術からの方法と比べると、予備含浸を改善することが可能となる。
【0187】
表現「圧縮ローラー」は、通過するロービングが、前記圧縮ローラーの表面上に一部、または全体に位置していることを意味し、これにより、前記ロービングの延伸が引き起こされる。
【0188】
有利には、前記少なくとも1つの圧縮ローラーは、円筒形であり、前記流動床の槽の入り口と出口との間での前記ロービングの延伸率は、1%~1000%、好ましくは100%~800%、好ましくは200%~800%、好ましくは400%~800%の間である。
【0189】
延伸率は、ロービングの初期幅に対するロービングの最終幅の比に100を乗算したものに等しい。
【0190】
前記少なくとも1つの圧縮ローラーの直径は、3mm~500mm、好ましくは10mm~100mm、特に20mm~60mmである。
【0191】
3mm未満では、圧縮ローラーによって引き起こされる繊維の変形が大きすぎる。
【0192】
有利には、圧縮ローラーは、円筒形であり、うねりはなく、特に金属製である。
【0193】
支持部分(E’)が、第1の変形形態により、少なくとも1つの圧縮ローラーである場合、単軸圧縮ローラーが、流動床に存在し、前記予備含浸は、前記圧縮ローラーの入り口と前記圧縮ローラーにおける垂直接線との間の前記ロービングにより形成される角度αで行われる。
【0194】
前記圧縮ローラーの入り口と前記圧縮ローラーに対する垂直接線との間の前記ロービングにより形成される角度αにより、粉末が濃縮される領域の形成が可能となり、こうして、前記圧縮ローラーによるロービングの同時延伸を伴って、より大きなロービング幅全体への予備含浸、したがって、改善された背景技術の技法に比べて予備含浸の改善を可能にする「コーナー効果」がもたらされる。
【0195】
本記載の全体にわたり、提示されている角度の値のすべてが、絶対値で表されている。
【0196】
有利には、角度αは、0~89°、好ましくは5°~85°、好ましくは5°~45°、好ましくは5°~30°を含む。
【0197】
それにもかかわらず、0~5°を含む角度αは、機械応力のリスクを引き起こす可能性があり、これは、繊維の破壊をもたらし、85°~89°を含む角度αは、「コーナー効果」を生じるための十分な機械力を生じない。
【0198】
したがって、角度αの値は、0°に等しく、垂直繊維に相当する。円筒形圧縮ローラーの高さは、調節可能であり、したがって、繊維を垂直方向に位置付けることが可能であることは明白である。
【0199】
有利には、槽(23a)の入り口縁部は、特に円筒形および回転式のローラーを備えており、このローラーの上を前記ロービングが通り、こうして、予備含浸前に延伸がもたらされる。
【0200】
角度αによって引き起こされる「コーナー効果」は、1つの面の表面での予備含浸を有利にするが、圧縮ローラーにより得られる前記ロービングの延伸もやはり、前記ロービングのもう一方の面の表面に予備含浸をもたせることが可能となることが明白である。言い換えると、前記予備含浸は、前記少なくとも1つの圧縮ローラーR1への入り口と圧縮ローラーR1への垂直接線との間の前記ロービング(単数または複数)によって形成される角度αの近傍で前記ロービング(単数または複数)の一方の面の表面で増強されるが、延伸はまた、もう一方の面の予備含浸も可能にする。
【0201】
角度αは、上で定義されている通りである。
【0202】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末の粒子の体積直径D90は、30~500μm、有利には80~300μmである。
【0203】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末の粒子の体積直径D10は、5~200μm、有利には15~100μmである。
【0204】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末の粒子の体積直径は、D90/D10の比に、または1.5~50、有利には2~10にある。
【0205】
有利には、熱可塑性ポリマー粉末の粒子の平均体積直径D50は、10~300μm、特に30~200μm、とりわけ45~200μmである。
【0206】
粒子(D10、D50およびD90)の体積直径は、規格ISO9276:2014によって定義される。
【0207】
「D50」は、体積基準での平均径、すなわち、試験した粒子集団を正確に半分に分割する粒子サイズの値に相当する。
【0208】
「D90」は、体積基準の粒子サイズ分布の累積曲線の90%における値に相当する。
【0209】
「D10」は、粒子の体積の10%のサイズに相当する。
【0210】
他の変形形態によれば、2つ、3つまたはそれより多いローラーが、流動床に存在し得る。
【0211】
スプレーガンによる噴霧:
繊維材料の予備含浸の工程もまた、入り口のローラーにおける繊維材料上にポリマー粉末を噴霧する1つもしくは複数のノズルまたは1つもしくは複数のガンを備える槽を備える、噴霧による連続予備含浸のための装置に1つまたは複数のロービングを送り込むことによって行うことができる。
【0212】
ポリマー由来の粉末またはポリマーが、特に圧縮ローラー(入り口にある)の支持部分近傍のノズルまたはスプレーガンによって、槽中で、前記繊維材料の表面に噴霧される。ロービングは、この槽中で循環される。
【0213】
スプレーガンを用いる例は、それに限定されず、図3に示されている。
【0214】
流動床に関して詳述されている、支持体、特に圧縮ローラー、延伸、およびコーナー効果を引き起こす角度αの特徴はすべて、スプレーガンによる噴霧にやはり有効である。
【0215】
他の変形形態によれば、2つ、3つまたはそれより多いローラーが存在し、その各々は、スプレーガンを有する。
【0216】
一実施形態では、予備含浸は、粉末堆積によって、水性ポリマー粉末分散体または水性ポリマー粒子分散体または水性ポリマーエマルションまたは懸濁液中での繊維の連続流通によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない流動床によって、ノズルまたはスプレーガンによる噴霧によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない槽中での乾式経路によって行われる。
【0217】
別の実施形態では、予備含浸は、水性ポリマー粉末分散体または水性ポリマー粒子分散体または水性ポリマーエマルションまたは懸濁液中での繊維の連続流通によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない流動床によって、ノズルまたはスプレーガンによる噴霧によって、少なくとも1つの支持体(E’)を装備したまたは装備していない槽中での乾式経路によって行われる。
【0218】
第2の工程:予備含浸繊維材料の加熱、および含浸の終了
したがって、予備含浸の工程は、少なくとも1つの支持体(E’)が設けられるか、または設けられない任意の手段によって行うことができる。
【0219】
支持体が存在することにより、ロービングの延伸が可能となり、予備含浸が改善される。しかし、この支持体の存在は、少なくとも1つの支持部分(E)が設けられている加熱システムが、含浸を終了する予備含浸工程後に存在する限り、必須のものではない。
【0220】
表現「支持部分(E)」は、任意のシステムであって、その上をロービングが通過することができる任意のシステムを指す。支持部分(E)は、ロービングが支持部分を通り過ぎることができる限り、任意の形状を有することができる。支持部分は、固定式または回転式とすることができる。
【0221】
有利には、加熱式カレンダー加工機は、支持部分(E)の定義から除外される。
【0222】
加熱システムは、支持部分(E)を加熱することが可能な、熱を発生する任意のシステム、または照射線を発生する任意のシステムである。
【0223】
この加熱システムは、赤外線ランプ、UVランプ、対流加熱、マイクロ波加熱、レーザー加熱および高周波(HF)加熱から選択することができる。
【0224】
したがって、支持部分(E)は、導電性であり、熱により発生する照射線を吸収する。
【0225】
表現「熱伝導性支持部分(E)」は、支持部分(E)が、熱を吸収および伝導することが可能な材料から構成されることを意味する。
【0226】
それは、高周波、マイクロ波またはレーザーを使用する加熱システムとすることもできる。
【0227】
この場合、支持部分は、熱を伝導しないし、熱により発生する照射線も吸収しない。
【0228】
表現「非熱伝導性支持部分(E)」は、支持部分(E)が、熱を吸収および伝導することができない材料から構成されることを意味する。
【0229】
前記少なくとも1つの支持部分(E)は、加熱システムの環境に配置されているか、またはこの中に備えられており、すなわち、加熱システムの外側にはない。
【0230】
有利には、前記加熱システムは、前記少なくとも1つの支持部分(E)の上に装着されている。この加熱システムは、十分なレベルを有しており、その結果、ロービング表面に存在するポリマーは、溶融することができるが、前記ポリマーを破壊しない。
【0231】
それにもかかわらず、前記加熱システムは、前記少なくとも1つの支持部分(E)しか備えていないか、または前記支持システム(E)の外側に、ロービングの一部をやはり備えることができるかのどちらかであり、前記ロービング部分は、前記支持システム(E)の前および/または後に位置している。
【0232】
加熱システム、ならびにR’、R’およびR’に対応する3つの支持体(E)の例示は、図4に示されているが、それらに決して限定されない。
【0233】
第2の加熱システムは、支持体の下に存在することができ、したがって、ロービングの2つの表面に前記ポリマーの一様な溶融が可能となることは明白である。
【0234】
図4に示されている加熱システムは、水平型システムである。しかし、加熱システムは垂直方向に位置することができ、やはりロービングは、支持体を垂直方向に通過する。
【0235】
その結果、この加熱工程は、予備含浸工程の間に、事前に行われたロービングの含浸を完了すること、および特にコアへの均一な含浸を得ることが可能となる。
【0236】
効果的なことに、予備含浸工程に使用されるシステムがなんであれ、特に、予備含浸工程が、上記の通り、少なくとも1つの支持体を備える流動床などにおいて、支持部分(E’)の使用により行われる場合、第1の延伸は、上記の工程の間に行われる。
【0237】
前記ロービングが前記支持部分(E’)の上の一部または全体を通過するので、ローピングの第1の延伸は、「コーナー効果」により、支持部分(E’)に対応する前記圧縮ローラーで行われ、前記ロービングが前記支持部分(E)の上の一部または全体を通過するので、第2の延伸は、支持部分(E)に対応する前記圧縮ローラーにおいて、加熱工程の間に行われる。
【0238】
加熱システムは、2つに分割することができ、したがって、2つの加熱システム、すなわち前記支持部分(E)の前の第1の加熱システム、および前記支持部分を備える第2の加熱システムからなる。次に、2つの加熱システムの間の距離は、ポリマーが溶融状態のままであるのに十分であることは非常に明白である。
【0239】
2つの加熱システムは、同じ性質または異なる性質であってもよく、同一または異なる出力であってもよい。
【0240】
前記ロービング表面でポリマーが溶融するので、前記支持体(E)の上の一部または全部をロービングが通過する前にロービングが加熱システム中を通過している間、この第2の延伸の前にロービングの収縮が起こる。
【0241】
加熱システムおよびロービングの収縮による前記ポリマーマトリックスの溶融と組み合わされたこの第2の延伸により、予備含浸を均一にすること、したがって、含浸を終了すること、およびこうしてコアへの含浸を有すること、および体積基準で高い繊維含有率、特に、テープの体積の少なくとも70%、特にテープの体積の少なくとも80%、特にテープの体積の少なくとも90%、とりわけテープの体積の少なくとも95%となる一定値を有すること、ならびに多孔度を低下させることが可能となる。
【0242】
したがって、予備含浸前に幅lであるロービングは、予備含浸後、幅l>lを有し、ポリマーを溶融して、前記溶融ポリマーを予備含浸した前記繊維材料を収縮させた後には、幅l<l>lを有する。
【0243】
支持部分の上を通過した後、前記溶融ポリマーを含む繊維材料の第2の膨張により、lにほぼ等しい平均幅lを有しており、かつ100μm以下の平均厚さeを有する材料になる。
【0244】
次に、この含浸繊維材料は、未較正の平均幅であるが、平均厚さが100μm以下である、ストリップの形態のテープを構成する。
【0245】
有利には、第1の圧縮ローラーR’の入り口と最後の圧縮ローラーR’の出口との間の加熱工程中の延伸率は、約0~300%、特に、0~50%である。
【0246】
前記加熱工程中の熱可塑性ポリマーの溶融およびロービングの収縮と組み合わせた加熱工程の間の様々な延伸により、加熱工程後に、45体積%~65体積%、好ましくは50~60体積%、特に54~60%(溶融経路による従来の技法により到達することができない繊維含有率)の含浸繊維含有率を生じさせることが可能となり、この場合、体積基準での繊維含有率および繊維の分布は、前記繊維材料の全長にわたり、繊維材料の中央面の一方の側面の平均値に実質的に等しく、こうして、特に単一層の繊維材料が取得される。
【0247】
45%未満の繊維では、強化は、機械特性に関して、興味深いものではない。
【0248】
65%を超えると、本方法の境界値に到達し、機械特性が再度、失われる。
【0249】
平均厚さeは、含浸繊維の含有率により、平均厚さは、45~65体積%の間の含浸繊維の含有率の場合、特に100μm以下であることはきわめて明白である。
【0250】
有利には、前記含浸繊維材料中の多孔度レベルは、10%未満、特に5%未満、特に2%未満である。
【0251】
成形工程および較正工程:薄層テープの取得
ロービングまたは前記平行なロービングを成形する工程、および前記含浸繊維材料を較正する工程は、第2の加熱システムを出た後に行われる。
【0252】
この工程は、第2の加熱システムを出た後に直接行うことができ、この場合、ロービングの進行速度は、第2および第3の加熱システムにおいて同じであるか、または遅延され、これは、ロービングの進行速度が、第2の加熱システムと第3の加熱システムとの間で異なり得ることを意味する。
【0253】
この工程は、以下の実施形態のうちの1つにより行われ得る:
1) 1つまたは複数の支持体((E)と定義されている)のうちの少なくとも1つの支持体がノッチ付き(溝付き)である、1つまたは複数の支持体の上にストリップを通過させることであって、前記ストリップの平均幅が、ノッチ付き(または溝付き)支持体未満である、ストリップを通過させること。
【0254】
前記支持体のうちの少なくとも1つは、第3の加熱システム、特にIR、マイクロ波、高周波またはレーザー加熱システム、特に、0.1W~10kWの間、より好ましくは0.1~6kWの間、より好ましくは0.1~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~1.8kWの間の出力(各テープまたは平行なテープの積層)を有するIR加熱システム下に置かれている。有利には、前記少なくとも1つのノッチ付きローラー(41)が最初に配置されており、第3の加熱システム(45)の外側に存在する。有利には、第2のノッチ付き支持体(44)は、出口、および第3の加熱システムの外側に存在する。
【0255】
ノッチなし支持体(42)および(43)の上を通ることにより、ストリップは、ノッチ付き支持体の幅まで再度、膨張することが可能となる。
【0256】
ノッチ付き支持体(単数または複数)(41)および(44)の直径は、12mm~50mmの間、特に12mm~30mmの間である。
【0257】
ノッチなし支持体(単数または複数)(42)および(43)の直径は、10mm~50mmの間、特に10mm~30mmの間である。
【0258】
ストリップは、第3の加熱システムの下を通過した後、第3の加熱システムの出口においてノッチ付き支持体の幅まで成形され、直列で装着されており、かつそれぞれが1kWのIRシステムであって、送られるその出力が可変である1kWのIRシステムが装備されている加熱式カレンダー加工機(46)であって、第3の加熱システムの外側にある加熱式カレンダー加工機(46)のレベルで通過し、100μm未満の厚さの薄層テープが得られる。幅が12.7mmで較正する場合、テープの理論厚さは、55体積%の繊維含有率の場合、66μmであり、60体積%の繊維含有率の場合、61μmになろう。
【0259】
図7は、例示的な実施形態を開示しており、その実施形態に限定されない。
【0260】
支持体は、同じレベルで図7に示されているが、それらは、異なる高さで第2の加熱システムと同様になり得る。ノッチ付き支持体はまた、ノッチなし支持体と同じまたは異なる直径を有してもよい。
【0261】
2) 1つまたは複数の支持体((E)に関して定義されている)のうちの少なくとも1つの支持体はノッチ付き(溝付き)である、1つまたは複数の支持体の上にストリップを通過させることであって、前記ストリップの平均幅がノッチ付き(または溝付き)支持体より大きな、ストリップを通過させること。
【0262】
前記支持体は、第3の加熱システム、特にIR、マイクロ波、高周波またはレーザー加熱システム、特に、0.1W~10kWの間、より好ましくは0.1~6kWの間、より好ましくは0.1~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~1.8kWの間の出力(各テープまたは平行なテープの積層)を有するIR加熱システム下に置かれている。
【0263】
有利には、前記少なくとも1つのノッチ付きローラーが最初に配置される。
【0264】
第1のノッチ付き支持体の上を通過すると、ストリップの幅をノッチ付き溝の幅未満にまで小さくすることが可能である。有利には、第2のノッチ付き支持体は、ストリップの幅より大きな幅の溝を有する、出口、および第3の加熱システムの外側に存在する。
【0265】
ストリップは、第3の加熱システムの下を通過した後、第3の加熱システムの出口において、ノッチ付き支持体の幅に成形され、直列で装着されており、かつそれぞれが1kWのIRシステムが装備されている加熱式カレンダー加工機であって、第3の加熱システムの外側にある加熱式カレンダー加工機のレベルで通過し、100μm未満の厚さの薄層テープが得られる。
【0266】
幅が12.7mmで較正する場合、テープの理論厚さは、55体積%の繊維含有率の場合、66μmであり、60体積%の繊維含有率の場合、61μmになろう。
【0267】
WO2015/121583に開示されている通りに管理されている圧力およびロールギャップを有するカレンダー加工システムは、両方の実施形態に使用することができる。
【0268】
前記含浸繊維材料を正しい幅に集めるために、支持体は、特に、固定式または回転式ノッチ付きローラーであるか、または逆回転式ローラーとなることさえあり、特に、固定式ローラーである。
【0269】
ノッチ付きローラーはまた、薄層テープの縁部において繊維を損傷するのを回避するため、支持体との横方向の接触点において、角の丸い縁部を有してもよい。
【0270】
表現「角の丸い縁部」は、ノッチの底部が、凹面または凸面の形状であることを意味する。
【0271】
次に、カレンダー加工機システムの上を通過した後に含浸した繊維材料は、I未満の最終平均幅を有する薄層テープの形態のテープからなる。
【0272】
有利には、成形工程および較正工程という第1の実施形態が好ましい。
【0273】
前記薄層テープは、45~65体積%の間となる含浸繊維の含有率の場合、100μm以下の平均厚さを有する。
【0274】
有利には、前記薄層テープは、45~65体積%の間となる含浸繊維の含有率の場合、I未満の最終平均幅、および10μm~100μmの間の平均厚さを有する。
【0275】
したがって、これにより、高い移動速度での作業が可能となり、こうして生産コストを削減することが可能となる。
【0276】
有利には、本発明による方法は、少なくとも10m/分、特に少なくとも20m/分、特に少なくとも30m/分の速度で行われる。
【0277】
別の態様によれば、本発明は、熱成形シートの調製の場合、上で定義した通り、含浸繊維材料の使用に関する。
【0278】
熱成形は、アモルファス熱可塑性ポリマーの場合、Tg超で、および半結晶性熱可塑性ポリマーの場合、TgとTmの間で行われるが、半結晶性熱可塑性ポリマーの場合、Tm超で行うこともできる。
【0279】
含浸繊維材料は、前記繊維材料の最初の幅に等しい幅、および5~50mmの間、特に、20~30mmの間の長さを有する小片へと予め切込みが入れられており、前記小片は、熱成形シートを調製するため、無作為に結合または配向されている。
【0280】
繊維材料は、ストリップまたは薄層テープのどちらか一方とすることができる。
【0281】
本発明の方法の有利な実施形態
有利には、繊維材料は、特に、12K以上の、特に、12K、24K、48、50Kおよび400K、特に12K、24K、48および50Kから選択される炭素繊維ロービング、および特にその坪量が1,200Tex以上、特に2,400Tex以上、4,800Tex以上であるガラス繊維から選択される。
【0282】
有利には、炭素繊維を含侵するために使用される熱可塑性プレポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0283】
有利には、ガラス繊維を含侵するために使用される熱可塑性プレポリマーは、ポリアミド、特にPA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0284】
有利には、繊維材料は、12K以上、特に、12K、24K、48、50Kおよび400K、特に、12K、24K、48および50Kから選択される炭素繊維ロービングを含み、炭素繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0285】
有利には、繊維材料は、12K以上、特に、12K、24K、48、50Kおよび400K、特に、12K、24K、48および50Kから選択される炭素繊維ロービングから構成され、炭素繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0286】
有利には、繊維材料は、その坪量が1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上であるガラス繊維ロービングを含み、ガラス繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPE、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0287】
有利には、繊維材料は、その坪量が1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上であるガラス繊維ロービングから構成され、ガラス繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択される。
【0288】
有利には、繊維材料は、12K以上、特に、12K、24K、48、50Kおよび400K、特に、12K、24K、48および50Kから選択される炭素繊維ロービングを含み、炭素繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択され、前記熱可塑性ポリマーのTgは、≧80℃、とりわけ≧100℃、特に、≧120℃、とりわけ≧140℃であるか、またはTmは、≧150℃である。
【0289】
有利には、繊維材料は、12K以上、特に、12K、24K、48、50Kおよび400K、特に、12K、24K、48および50Kから選択される炭素繊維ロービングからなり、炭素繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択され、前記熱可塑性ポリマーのTgは、≧80℃、とりわけ≧100℃、特に、≧120℃、とりわけ≧140℃であるか、またはTmは、≧150℃である。
【0290】
有利には、繊維材料は、その坪量が1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上であるガラス繊維ロービングを含み、ガラス繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKK、PEEKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択され、前記熱可塑性ポリマーのTgは、≧80℃、とりわけ≧100℃、特に、≧120℃、とりわけ≧140℃であるか、またはTmは、≧150℃である。
【0291】
有利には、繊維材料は、その坪量が1,200Tex以上、特に、2,400Tex以上、4,800Tex以上であるガラス繊維ロービングからなり、ガラス繊維を予備含浸するために使用される熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、特に、PA11、PA12、PA11/1010およびPA12/1010、半芳香族ポリアミド、特にPA MPMDT/6T、PA PA11/10T、PA11/BACT、PA11/6T/10T、PA MXDT/10T、PA MPMDT/10T、PA BACT/10T、PA BACT/6T、PA BACT/10T/6T、PA11/BACT/6T、PA11/MPMDT/10T、PA11/BACT/10T、PA11/MXDT/10T、PEKKおよびPEI、またはそれらの混合物などの脂肪族ポリアミドから選択され、前記熱可塑性ポリマーのTgは、≧80℃、とりわけ≧100℃、特に、≧120℃、とりわけ≧140℃であるか、またはTmは、≧150℃である。
【0292】
図1は、支持部分を備える流動床(12)を備える槽(10)を記載しており、その高さ(22)は、調節可能である。槽の入り口の縁部は、回転式ローラー23aが装備されており、この回転式ローラー23aの上を、ロービング21aが通過し、槽出口の縁部は、回転式ローラー23bが装備されており、この回転式ローラー23bの上を、ロービング21bが通過する。
【0293】
図2は、単一圧縮ローラー、流動床(12)を備える槽(10)を用いる実施形態を記載しており、この場合、単一円筒形圧縮ローラー(24)が存在し、角度αを示している。
【0294】
繊維の矢印は、繊維の通過方向を示している。
【0295】
図3は、単一圧縮ローラー、粉末(32)を噴霧するためのスプレーガン(31)を備える槽(30)を用いる実施形態を示しており、この場合、単一円筒形圧縮ローラー(33)が存在し、角度α”を示している。
【0296】
繊維の矢印は、繊維の通過方向を示している。
【0297】
図4は、予備含浸繊維材料を加熱するための単一加熱システム、および含浸を終了するため、3つのローラーを用いて含浸を終了させる概略を示している。
【0298】
図5は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、実施例1による、およびWO2015/121583に開示されている(カレンダー加工前)、D50=108μm(D90=198μmおよびD10=48.3μm)であるPA BACT/10Tポリアミド粉末を含侵したSGL、50K炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【0299】
WO2015/121583による方法は、厚すぎる(181μm)繊維材料をもたらし、含浸済みロービングのいくつかの領域およびさらにまた大きな孔の均一性、および繊維の不良な分布を欠いている。
【0300】
繊維の直径は、7μmを表す。
【0301】
図6は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した、本発明の実施例2による(カレンダー加工前)、D50=108μm(D90=198μmおよびD10=48.3μm)であるPA BACT/10Tポリアミド粉末(41/59のモル比)を含浸したSGL、50K炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【0302】
繊維の直径は、7μmを表す。
【0303】
得られたストリップは、55体積%の繊維含有率を有する、88μm未満の平均厚さを有する。
【0304】
図7は、12.7mmの薄層テープを得るための、最後のIR加熱システム、および直列に装着されている加熱式カレンダー加工機であって、それぞれ1kWのIRシステムが装置されている加熱式カレンダー加工機の後に配置された、赤外(IR)システムの外部の第1のノッチ付き支持体(直径13mm、溝12.7mm)、2つのノッチなし支持体(直径20mm)およびノッチ付き支持体(直径13mm、溝12.7mm)を用いる、12.7mmのストリップ(図6で取得)を成形および較正する工程の実施形態を示している。
【0305】
図8は、光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例5による(カレンダー加工前)、D50=114μm(D90=199μmおよびD10=56μm)であるPA11/BACTポリアミド粉末(33/67)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【0306】
繊維の直径は、7μmを表す。
【0307】
図9は、光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例6による(カレンダー加工前)、D50=136μm(D90=225μmおよびD10=75μm)であるPA6I/6Tポリアミド粉末(45/55のモル比)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【0308】
繊維の直径は、7μmを表す。
【0309】
図10は、光学顕微鏡で撮影した、本発明の実施例7による(カレンダー加工前)、D50=157μm(D90=301μmおよびD10=58μm)であるPA MPMDT/10Tポリアミド粉末(41/59のモル比)を含侵したT700 12k 31E炭素繊維ロービングの断面図の写真を示す。
【0310】
繊維の直径は、7μmを表す。
【0311】
以下の実施例は、本発明の範囲の非限定的な例示を提示する。
【0312】
実施例1(比較例):
SGLのロービングである50K炭素繊維に、WO2015/121583に記載されているようなPA BACT/10Tを含侵した。
D50=108μm、D90=198μmおよびD10=48.3μm
【0313】
結果:
これらの結果は、図5に示されており、含浸したロービングの領域のいくつかに均一性の欠如、やはりまた大きな孔および繊維の不良な分布があることを示している。
【0314】
実施例2:BACT/10T(41/59のモル比)を含浸した単層繊維材料(SGL、50K炭素繊維)
以下の手順を行った:
8cmの直径を有する4つの円筒形および固定ローラーが、流動床を備える槽の上流に存在し、この流動床の上をロービングが移動する。
【0315】
ローラーは、54cmの間隔(第1のローラーの中心軸と最後のローラーの中心軸との間の距離)である。
【0316】
流動床による予備含浸工程
図2に示されている、槽(L=500mm、l=500mm、H=600mm)、直径25mm中の円筒形圧縮ローラーR
- 粉末で0.3秒間の滞留時間
- 角度αは25°
- BACT/10T粉末の場合、D50=108μm(D10=48.3μm、D90=198μm)。
- 固定式ローラーを装備した槽の縁部。
【0317】
予備含浸繊維材料の加熱および含浸を終了する工程
図4に開示されている加熱システムを使用するが、直径8mmを有する、8つの固定式円筒形ローラーR’~R’を用いる。
【0318】
ロービングの進行速度は、10m/分である。
【0319】
使用される赤外線発生装置(infrared)は、25kWの全出力を有しており、赤外線発生装置と上部ローラーとの間の高さは4cmであり、赤外線発生装置と下部ローラーとの間の高さは9cmである。
【0320】
角度α’~α’は同じであり、25°である。
【0321】
高さhは、20mmである。
【0322】
長さlは、1,000mmである。
【0323】
これらの8つのローラーは、それぞれ、43mm離されている。
【0324】
図6は、厚さ88μmを有する、得られた含浸繊維材料(ストリップ)を示す。
【0325】
得られた繊維材料は、単層材料であり、この材料は、含浸均一性、および繊維の非常に良好な分布を有する低い多孔度を有する。
【0326】
薄層テープを得るための成形工程および較正工程
ロービングまたは前記平行なロービングを成形する工程、および前記含浸繊維材料を較正する工程は、例えば図4に記載されている第2の加熱システムを出た後に、13mmの直径(溝は12.7mmである)の第1のノッチ付き支持体の上に、88μmのストリップ(前の工程で取得)を通し、次に、第3の加熱システム、特にIR、マイクロ波またはレーザー加熱システム、特に、0.1W~10kWの間、より好ましくは0.1~6kWの間、より好ましくは0.1~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~3kWの間、さらにより好ましくは0.6~1.8kWの間の出力(それぞれのテープまたは平行なテープの積層体の場合)を有するIR加熱システムの下で、20mmの直径の2つのノッチなしローラーの上、および最後に、第1の直径と同じ直径および同じ溝寸法のノッチ付きローラーの上を通すことによって行われる。
【0327】
第3の加熱システムの下を通過させた後に、12.7mmに成形したストリップを、第3の加熱システムの外側にある、直列に装着した加熱式カレンダー加工機であって、それぞれが1kWのIRシステムを装備した加熱式カレンダー加工機のレベルに通過させて、100μm未満の厚さを有する、12.7mmに較正された薄層テープを得る。繊維含有率は55体積%であり、多孔度レベルが<2%であり、薄層テープの厚さは、66μmである。
【0328】
図7は、この例示的な実施形態を記載する。
【0329】
実施例3:画像解析による多孔度レベルの決定
多孔度は、流動床中、BACT/10T(41/59のモル比)を含浸し、次いで上記などの加熱工程によるSGL 50K炭素繊維のロービングに関する画像解析により決定した。
【0330】
多孔度は、5%未満である。
【0331】
実施例4:理論密度と実験密度との間の多孔度レベルの相対偏差の決定(一般法)
a) 必要なデータは、以下の通りである:
- 熱可塑性マトリックスの密度
- 繊維の密度
- 強化の坪量:
・ 例えば、1/4インチのテープ(単一ロービングに由来)の場合の直線質量
・ 例えば、一層幅広いテープまたは布地の場合の表面密度(g/m
b) 行われる測定:
試料数は、結果が検討材料の代表となるため、少なくとも30にしなければならない:
行った測定は、以下の通りである:
- 採取した試料のサイズ:
○ 長さ(直線質量は既知の場合)。
○ 長さおよび幅(表面密度が既知の場合)。
- 採取した試料の実験密度:
〇 空気中および水中での質量測定。
- 繊維レベルの測定は、例えば、文献B.Benzler、Applikationslabor、Mettler Toledo、Giesen、UserCom1/2001で決定される、ISO1172:1999に準拠するか、または熱重量分析(TGA)によって決定する。
【0332】
炭素繊維レベルの測定は、ISO14127:2008に準拠して決定することができる。
【0333】
理論質量繊維レベルの決定:
a)理論質量繊維レベルの決定:
(式中、
は、テープの直線質量であり、
Lは、試料の長さであり、
Meairは、空気中で測定した試料の質量である)
【0334】
質量の繊維レベルのばらつきは、強化時における繊維量のばらつきを考慮しない場合、マトリックスレベルのばらつきに直接、関連すると考えられる。
【0335】
b)理論密度の決定:
(式中、dおよびdは、それぞれ、マトリックスおよび繊維の密度である)
【0336】
こうして計算される理論密度は、試料中に孔が存在しない場合、利用可能な密度である。
【0337】
c) 多孔度の評価:
次に、多孔度は、理論密度と実験密度との間の相対偏差である。
【0338】
実施例5:11/BACT(33/67のモル比)を含浸した単層繊維材料(Toray T700 12k 31E炭素繊維)
実施例2と同じ手順を使用して、D50=114μm(D10=56μm、D90=199μm)である11/BACT粉末で繊維材料(直径7μmのToray T700 12k 31E炭素繊維)を含侵した。
【0339】
図8は、得られた結果を示す。
【0340】
実施例6:PA6I/6T(45/55モル比)を含浸した単層繊維材料(Toray T700 12k 31E炭素繊維)
実施例2と同じ手順を使用して、D50=136μm(D90=225μmおよびD10=75μm)であるPA6I/6T粉末で繊維材料(直径7μmのToray T700 12k 31E炭素繊維)を含侵した。
【0341】
図9は、得られた結果を示す。
【0342】
実施例7:MPMDT/10T(41/59のモル比)を含浸した単層繊維材料(Toray T700 12k 31E炭素繊維)
実施例2と同じ手順を使用して、D50=157μm(D90=301μmおよびD10=58μm)であるPA MPMDT/10T粉末で繊維材料(直径7μmのToray T700 12k 31E炭素繊維)を含侵した。
【0343】
図10は、得られた結果を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10