(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-21
(45)【発行日】2024-11-29
(54)【発明の名称】駆動状態識別装置、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20241122BHJP
【FI】
H02P27/08
(21)【出願番号】P 2021010634
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】塚越 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】河井 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕喜
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-107438(JP,A)
【文献】特開2020-114084(JP,A)
【文献】特開2011-050214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流す電流を調整するための電流の指令値と、前記電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のデータで示し、
静止座標平面にマッピングされた前記電流の指令値の軌跡と前記電流の検出値の軌跡との違いに基づいて前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部
を備える駆動状態識別装置。
【請求項2】
前記静止座標平面にマッピングされる前記電流の検出値のデータは、前記電動機の機械角における少なくとも360°以上の角度範囲のデータを含む、
請求項1に記載の駆動状態識別装置。
【請求項3】
ベクトル制御によって電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のベクトルで示し、
静止座標平面上で、3相交流の特定の相の軸方向を基準にして、前記特定の相のベクトルを所定の角度回転した結果を他の相のベクトルの方向と比較して、前記特定の相のベクトルを所定の角度回転した結果の方向と、前記他の相のベクトルの方向との差が予め定められた範囲外になる場合に、前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部
を備える駆動状態識別装置。
【請求項4】
前記所定の角度が30度であり、
前記予め定められた範囲が60度である
請求項3に記載の駆動状態識別装置。
【請求項5】
ベクトル制御によって電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のデータで示し、
静止座標平面にマッピングされた前記電流の検出値の軌跡を用いた学習によって、前記スイッチング素子の稼働状態の識別に用いるモデルのパラメータを決定する学習処理部と
前記パラメータが特定されたモデルと前記電流の検出値の軌跡を用いて、前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部と、
を備える駆動状態識別装置。
【請求項6】
前記学習処理部は、
前記平時とは異なる稼働状態を含む前記スイッチング素子の稼働状態を示す第1学習用データを前記モデルの機械学習に用いる、
請求項5に記載の駆動状態識別装置。
【請求項7】
前記学習処理部は、
2相静止座標系であるαβ座標系の平面(αβ座標平面という。)に関わる所定の規則に従って、前記第1学習用データを回転変換した第2学習用データを生成して、前記第2学習用データを前記モデルの機械学習に用いる、
請求項6に記載の駆動状態識別装置。
【請求項8】
前記状態識別部は、
前記モデルを用いて前記電動機の駆動状態を識別する、
請求項7に記載の駆動状態識別装置。
【請求項9】
前記αβ座標平面に正6角形の単位格子がハニカム状に配置されていて、
前記状態識別部は、
前記αβ座標系への座標変換の結果が示す位置が前記単位格子内に含まれることを検出して、前記検出の結果を用いて前記電動機の巻線に流す電流を調整するスイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する
請求項7に記載の駆動状態識別装置。
【請求項10】
前記モデルを構成する人工ニューラルネットの入力層のニューロンが、前記ハニカム状に配置された6角形の前記単位格子に対応付けられていて、
前記学習処理部は、
前記ハニカム状に配置された6角形の第1単位格子と、前記第1単位格子を囲む位置にある複数の第2単位格子を演算の対象に含むように定義されたフィルタを用いて、プーリング処理を実施する、
請求項9に記載の駆動状態識別装置。
【請求項11】
前記電力変換器は、複数のスイッチング素子を含み、前記電動機の巻線に夫々電流を流して前記電動機を駆動して、
前記
平時とは異なる稼働状態に前記複数のスイッチング素子が流す電流のバランスが崩れた状態
が含まれる、
請求項5又は6に記載の駆動状態識別装置。
【請求項12】
前記第1学習用データは、前記平時とは異なる稼働状態を模擬するように前記電動機を駆動するインバータの複数のスイッチング素子を夫々駆動する駆動信号のパターンを含む、
請求項6に記載の駆動状態識別装置。
【請求項13】
電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流す電流を調整するための電流の指令値と、前記電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のデータで示し、
静止座標平面にマッピングされた前記電流の指令値の軌跡と前記電流の検出値の軌跡との違いに基づいて前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部と、
前記識別結果に基づいて、前記電動機を駆動させるインバータと
を備える電力変換装置。
【請求項14】
ベクトル制御によって電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のベクトルで示し、
静止座標平面上で、3相交流の特定の相の軸方向を基準にして、前記特定の相のベクトルを所定の角度回転した結果を他の相のベクトルの方向と比較して、前記特定の相のベクトルを所定の角度回転した結果の方向と、前記他の相のベクトルの方向との差が予め定められた範囲外になる場合に、前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部と、
前記識別結果に基づいて、前記電動機を駆動させるインバータと
を備える電力変換装置。
【請求項15】
ベクトル制御によって電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のデータで示し、
静止座標平面にマッピングされた前記電流の検出値の軌跡を用いた学習によって、前記スイッチング素子の稼働状態の識別に用いるモデルのパラメータを決定する学習処理部と、
前記パラメータが特定されたモデルと前記電流の検出値の軌跡を用いて、前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する状態識別部と、
前記識別結果に基づいて、前記電動機を駆動させるインバータと
を備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駆動状態識別装置、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、備える複数のスイッチング素子のスイッチングによって多相交流電力を生成する。駆動状態識別装置は、電力変換装置が駆動する電動機の駆動状態を識別する。このような駆動状態識別装置は、複数のスイッチング素子に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別することが要求されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、複数のスイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別することができる駆動状態識別装置、及び電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の駆動状態識別装置は、状態識別部を備える。状態識別部は、電力変換器のスイッチング素子を制御して3相交流用の電動機の巻線に流す電流を調整するための電流の指令値と、前記電動機の巻線に流れる電流の検出値を静止座標系のデータで示し、静止座標平面にマッピングされた前記電流の指令値の軌跡と前記電流の検出値の軌跡との違いに基づいて前記スイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】実施形態の電力変換装置を含む電動機ドライブシステムを示す構成図。
【
図1B】実施形態の電力変換装置内の逆変換装置の構成図。
【
図2A】実施形態の平時の状態における3相信号と2相信号の関係を説明するための図。
【
図2B】実施形態の平時の状態における2相信号と、これに対応する指令値の関係を説明するための図。
【
図2C】実施形態の平時の状態における検出結果の画像を説明するための図。
【
図3A】意図的に特定のゲートパルスを歪ませたときの電流波形とそれに対する軌跡について説明するための図。
【
図3B】意図的に特定のゲートパルスを歪ませたときの電流波形とそれに対する軌跡について説明するための図。
【
図3C】意図的に特定のゲートパルスを歪ませたときの電流波形とそれに対する軌跡について説明するための図。
【
図4】実施形態の判定処理に関わるフローチャート。
【
図5】実施形態の判定基準の生成処理に関わるフローチャート。
【
図6】実施形態の第1判定基準とその生成方法を説明するための図。
【
図7】実施形態の電動機3の各相の電流(ベクトル)の位相関係を説明するための図。
【
図8】変形例の回転処理を実行する回路モジュールを説明するための図。
【
図9A】変形例の軌跡に対する回転処理の結果を説明するための図。
【
図9B】変形例の軌跡に対する回転処理の結果を説明するための図。
【
図10】第2の実施形態の判定処理を説明するための図。
【
図11】第2の実施形態の変形例における軌跡の回転対称性の利用について説明するための図。
【
図12】第2の実施形態の第1変形例の判定処理を説明するための図。
【
図13】第2の実施形態の変形例の判定処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の駆動状態識別装置、及び電力変換装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。
【0008】
明細書で言う「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。
【0009】
(第1の実施形態)
図1Aは、実施形態の電力変換装置2を含む電動機ドライブシステム1を示す構成図である。
図1Aには、電動機ドライブシステム1、電力変換装置2、電動機3、機械負荷4、端末装置5、及び交流電源PSが示される。
【0010】
交流電源PSは、商用電源系統や発電機などであり、例えば、3相交流電力を電力変換装置2に供給する。
【0011】
電動機ドライブシステム1は、例えば、電力変換装置2と、電動機3とを備える。
【0012】
電動機3は、例えば、誘導電動機などの可変速制御が可能な3相交流電動機(M)である。電動機3は、その巻線に3相交流電力が供給されると回転駆動力を発生して出力軸に出力し、その回転駆動力により出力軸に連結される機械負荷4を駆動する。電動機3は、電動機3の軸の回転速度を検出する回転速度センサ3Aを備えていてもよい。回転速度センサ3Aは、例えば、検出した電動機3の軸の回転速度ωrを出力する。
【0013】
電力変換装置2は、3相交流電力を生成し、生成した3相交流電力を電動機3の巻線に供給する。
【0014】
例えば、電力変換装置2は、順変換装置20(整流器)、キャパシタ30、逆変換装置50(インバータ)、制御部60、電流検出器70、及び通信インタフェースユニット80を備える。
【0015】
順変換装置20の交流側には、交流電源PSが接続され、順変換装置20の直流側には、キャパシタ30と逆変換装置50とが直流リンクを介して接続されている。順変換装置20は、交流電源PSから供給される交流電力を直流電力に変換して、キャパシタ30によって直流電力の電圧を平滑化する。
【0016】
逆変換装置50は、例えば、IGBTなどの複数のスイッチング素子50Sを含む3相インバータである。スイッチング素子50Sの種類は、IGBTに制限されることなく、他の種類のものでもよい。例えば、逆変換装置50のスイッチング素子50Sは、制御部60によってPWM(Pulse Width Modulation)制御される。逆変換装置50は、順変換装置20から供給される直流電力を交流電力に変換する。逆変換装置50は、変換した3相交流電力を、逆変換装置50の出力に接続される電動機3の巻線に供給して、電動機を駆動させる。逆変換装置50が出力する3相交流電力の各相を、U相V相W相と呼ぶ。
【0017】
図1Bは、実施形態の電力変換装置2内の逆変換装置50の構成図である。
図1Bに示すように、逆変換装置50は、上アーム50U、50V、50Wと、下アーム50X、50Y、50Zとを備える。上アーム50Uと下アーム50Xは、U相レグLUを形成する。上アーム50Vと下アーム50Yは、V相レグLVを形成する。上アーム50Wと下アーム50Zは、W相レグLWを形成する。各上アームと各下アームは、夫々1つ以上のスイッチング素子50Sを含む。以下の説明では、1つのスイッチング素子50Sを夫々備える場合を例示する。
【0018】
図1Aに戻り、電流検出器70は、例えば、逆変換装置50の出力と電動機3とを接続する負荷電力線のV相とW相に設けられ、電動機3の巻線に流れる負荷電流IvsとIwsとを検出する。
【0019】
通信インタフェースユニット80は、例えば制御部60の制御によって端末装置5と通信する。
【0020】
制御部60は、例えば、回転速度基準生成部61と、解析処理部62と、検出速度処理部63と、速度制御部64と、検出電流処理部65と、座標変換部66と、電流制御部67と、逆座標変換部68と、PWMコントローラ69とを備える。制御部60は、駆動状態識別装置の一例である。
【0021】
回転速度基準生成部61と、検出速度処理部63と、速度制御部64と、検出電流処理部65と、座標変換部66と、電流制御部67と、逆座標変換部68と、PWMコントローラ69の各部は、連携して動作して逆変換装置50を制御する。解析処理部62は、逆変換装置50の稼働状態を解析する。制御部60は、解析処理部62による逆変換装置50の稼働状態の解析結果に基づいて、上記の各部の制御を調整してもよい。上記の各部の制御を調整には、例えば電動機3の稼働停止、出力制限等が含まれる。以下、各部の詳細を説明する。
【0022】
検出速度処理部63は、回転速度センサ3Aによって検出された電動機3の軸の回転速度ωrに基づいた回転速度ω_fbkと位相θ_fbkとを生成して出力する。
【0023】
回転速度基準生成部61は、電動機3の回転速度を規定する回転速度基準ω_refを生成し、生成した回転速度基準ω_refを速度制御部64に出力する。
【0024】
速度制御部64は、回転速度基準生成部61によって生成された回転速度基準ω_refと、検出速度処理部63から出力される回転速度ω_fbkとに基づいて、電流基準Idq_refを生成する。電流基準Idq_refは、直交するdq軸を有する回転子座標系の電流基準Id_refと電流基準Iq_refとをベクトル値で示したものである。例えば、速度制御部64は、d軸とq軸の成分ごとに、回転速度基準ω_refと回転速度ω_fbkとの差がそれぞれ0になるように、電流基準Idq_refを生成する。これによって、電動機3は、回転速度基準ω_refによって規定される速度基準によって駆動される。なお、速度制御部64は、回転速度ω_fbkに基づいて、一般的な手法で弱め界磁制御を行ってもよい。
【0025】
検出電流処理部65は、電流検出器70によって検出された負荷電流に基づいた、電流値Iuvw_fbkを出力する。電流値Iuvw_fbkは、電動機3の相電流Iu_fbk、Iv_fbk、Iw_fbkを、U相V相W相に対応する3軸を有する3相座標空間のベクトル値で示したものである。この3相座標空間を規定する座標系(固定子座標系)を、3相静止座標系と呼ぶ。
【0026】
座標変換部66は、位相θ_fbkを用いて、3相静止座標系の電流値Iuvw_fbkを、dq軸を有して、2相座標系として規定される回転子座標系に変換して、電流値Idq_fbkを生成する。これをdq変換と呼ぶ。dq軸を有する回転子座標系は、例えば、3相静止座標系のU相方向の軸とd軸が成す角が位相θ_fbkに等しくなる位置に回転している。
【0027】
電流制御部67は、速度制御部64によって生成された電流基準Idq_refと、座標変換部66から出力される電流値Idq_fbkとに基づいて、電流基準Idq_refと電流値Idq_fbkの各軸の成分の差が0になるように、電圧基準Vdq_refを生成する。
【0028】
逆座標変換部68は、電流制御部67が生成した電圧基準Vdq_refを、回転子座標系から3相静止座標系に、位相θ_fbkを用いて変換して、電圧基準Vuvw_refを生成する。換言すれば逆座標変換部68は、電圧基準Vdq_refに対して前述のdq変換の逆変換(dq逆変換)を行い、電圧基準Vuvw_refを生成する。
【0029】
PWMコントローラ69は、逆座標変換部68によって生成された電圧基準Vuvw_refを、所定の周波数のキャリア信号carと比較して、逆変換装置50を構成する各アームのPWM信号を生成する。PWMコントローラ69は、各アームのPWM信号を逆変換装置50に供給して各アームのスイッチング素子50Sのスイッチングを制御する。
【0030】
次に、
図1Cを参照してPWMコントローラ69の一例について説明する。
図1Cは、実施形態のPWMコントローラ69の構成図である。
【0031】
PWMコントローラ69は、例えばキャリア信号生成部691と、比較器692U、692V、692Wと、ゲートパルス生成部693U、693V、693W、693X、693Y、693Zと、NOT回路694X、694Y、694Zとを備える。
【0032】
キャリア信号生成部691は、所定の周期の三角波を生成して、これをPWM制御のキャリア信号carとして出力する。例えば、このキャリア信号carは各相に共通であってよい。
【0033】
まず、U相について説明する。比較器692Uは、電圧基準Vuvw_refのU相成分(電圧基準Vu_ref)の振幅を、そのキャリア信号carの振幅を基準にして比較する。ゲートパルス生成部693Uは、比較器692の判定結果に基づいて、上アーム50Uに対するゲートパルスを生成する。ゲートパルス生成部693Xは、NOT回路694Xによって論理が反転された比較器692の判定結果に基づいて、下アーム50Xに対するゲートパルスを生成する。
【0034】
V相についてもU相と同様に、比較器692Vは、V相成分(電圧基準Vv_ref)の振幅を、そのキャリア信号carの振幅を基準にして比較する。ゲートパルス生成部693Vは、比較器692の判定結果に基づいて、上アーム50Vに対するゲートパルスを生成する。ゲートパルス生成部693Yは、NOT回路694Yによって論理が反転された比較器692の判定結果に基づいて、下アーム50Yに対するゲートパルスを生成する。
【0035】
W相についてもU相と同様に、比較器692Wは、W相成分(電圧基準Vw_ref)の振幅を、そのキャリア信号carの振幅を基準にして比較する。ゲートパルス生成部693Wは、比較器692の判定結果に基づいて、上アーム50Wに対するゲートパルスを生成する。ゲートパルス生成部693Zは、NOT回路694Zによって論理が反転された比較器692の判定結果に基づいて、下アーム50Zに対するゲートパルスを生成する。
【0036】
例えば、ゲートパルス生成部693Uは、入力されるパルスを予め定められた所定の時間遅延させる遅延回路と、AND回路を含む。ゲートパルス生成部693Uは、入力された正のパルスの立ち上がりを、遅延回路によって上記の所定の時間遅らせて、AND回路を用いて上アーム50UをONにさせる期間を短縮させることで、デッドタイムを確保する。他のゲートパルス生成部も、ゲートパルス生成部693Uと同様の方法でデッドタイムが確保されたゲートパルスを生成する。
【0037】
なお、PWMコントローラ69は、各相のデッドタイムの長さを揃えることで、各相のバランスを確保する。これに対し、何らかの要因で、各相のスイッチング素子50SのON状態の時間が不揃いになると、各相のバランスが崩れることがある。解析処理部62は、このような状態を検出可能に構成される。
【0038】
次に、
図1Dを参照して解析処理部62について説明する。
図1Dは、実施形態の解析処理部62の構成図である。
【0039】
解析処理部62は、例えば、記憶部621と、電流値取得部622、座標変換部623と、マッピング処理部624と、状態識別部625と、出力処理部626と、判定基準生成部627とを備える。
【0040】
記憶部621は、例えば、電流値取得部622によって検出された負荷電流に基づいた電流値I_fbkの電流検出値データ621a、電流基準値データ621b、マッピング画像データ621c、判定基準データ621d、解析処理のプログラムなどのデータを格納する。記憶部621は、上記の電流検出値データを、時系列データとして格納する。上記の各データの詳細は後述する。
【0041】
電流値取得部622、座標変換部623、マッピング処理部624、状態識別部625、出力処理部626、及び判定基準生成部627のそれぞれは、例えば、CPU(Central Processing Unit)620などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。記憶部621は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等により実現される。
【0042】
電流値取得部622は、検出電流処理部65から電流値Iuvw_fbkを取得して、取得した電流値I_fbkのデータを記憶部621の電流検出値データ621aに時系列データとして追加する。電流値取得部622は、速度制御部64から電流基準Idq_refを取得して、取得した電流基準Idq_refのデータを記憶部621の電流基準値データ621bに時系列データとして追加する。
【0043】
また、電流値取得部622は、記憶部621に格納されている電流検出値データ621aから、所定期間に対応する所定の数の電流値Iuvw_fbk(検出値)のデータを取得して座標変換部623に供給する。電流値取得部622は、記憶部621に格納されている電流基準値データ621bから、上記の所定期間に対応する所定の数の電流基準Idq_ref(指令値)のデータを取得して座標変換部623に供給する。電流値取得部622は、上記の電流値Iuvw_fbkのデータと電流値Iuvw_fbkのデータを、互いに共通する期間のデータにするとよい。
【0044】
なお、電流値取得部622は、検出電流処理部65からの電流値Iuvw_fbkの取得と、記憶部621からの電流値Iuvw_fbkのデータの読み出しとを並列に行ってもよい。電流値取得部622は、速度制御部64からの電流基準Idq_refの取得と、記憶部621からの電流基準Idq_refのデータの読み出しとを並列に行ってもよい。
【0045】
座標変換部623は、位相θ_offsetを用いて、3相静止座標系の電流値Iuvw_fbkを、αβ座標軸を有する2相静止座標系に変換して、電流値Iab_fbkを生成する。例えば、位相θ_offsetを0に定めた場合には、座標変換部623による変換処理は、クラーク変換と同等の変換処理になる。
【0046】
座標変換部623は、所定の位相θ_offsetを用いて、回転座標系の電流基準Idq_refを、上記の2相静止座標系に変換して、電流値Iab_fbkを生成する。所定の位相θ_offsetとは、例えば、0°又は60°の倍数である。座標変換部623は、上記の3相静止座標系からαβ座標系への変換にクラーク変換を用いて、電流の検出値のデータをαβ座標系のデータに変換する。
【0047】
座標変換部623による3相静止座標系の電流値Iuvw_fbkに対するクラーク変換は、3相静止座標系と2相静止座標系に共通する原点を中心にして、クラーク変換の結果を位相θ_offset分回転させる処理になる。この処理を、式(1)に定式化する。「M」はクラーク変換の行列である。
【0048】
Iab_fbk = R(M[Iuvw_fbk], θ_offset) (1)
【0049】
なお、上記の式(1)中の「R(・、θ_offset)」は、第1変数(ベクトル)を位相θ_offsetの大きさに応じて回転させる関数を示す。この座標変換部623の処理によって、3相分のスカラー値によって示された3相座標平面上の点が、αβ座標軸を含む平面(αβ座標平面という。)上の点に射影される(
図2Cを参照)。
【0050】
マッピング処理部624は、例えば、記憶部621に格納されている電流検出値データ621aから、所定期間に対応する所定の数の電流値Iuvw_fbkのデータ(検出値)を取得して、これに基づいてαβ座標平面上に射影する。例えば、上記の所定期間を電動機3が1回転する時間よりも長く、又は1回転する時間と同等の長さの時間にする。マッピング処理部624は、その1回転に対応するαβ座標平面上の画像を生成して、生成した画像のデータ(画像データと呼ぶ。)を記憶部621のマッピング画像データ621cに追加する。例えば、αβ座標平面にマッピングされる電流値Iuvw_fbk(電流の検出値)のデータは、電動機3の機械角における所定の回転角度以上の角度範囲に対応するデータを含むとよい。上記の所定の回転角度以上の角度範囲は、αβ座標の原点廻りに少なくとも360°以上であるとよい。
【0051】
より具体的には、下記の方法を実施するとよい。例えば、マッピング処理部624は、時系列データの電流値Iuvw_fbkが示す位置をαβ座標平面上に射影する。このときマッピング処理部624は、各点の位置データに、時系列データとしての時刻歴情報を引き継いで付与する。さらに、マッピング処理部624は、上記の結果に基づいて、各点(αβ座標平面上に射影された点)を、時系列データの属性情報を用いて順につないで、折れ線状の軌跡(以下、単に軌跡ということがある。)を生成する(
図2Cを参照)。
【0052】
状態識別部625は、記憶部621のマッピング画像データ621cに格納されている画像データを、予め規定された判定規則に基づいて判定する。状態識別部625は、判定の結果を、出力処理部626によって出力させる。例えば、状態識別部625は、判定の結果を、出力処理部626によって記憶部621のデータとして追加してもよく、出力処理部626によって着脱容易な記憶媒体に書き込ませてもよい。記憶部621に追加された判定結果のデータは、制御部60内の各部から参照することができる。制御部60内の各部はこの判定結果に基づいて、必要な制御を実施するとよい。
【0053】
(平時の状態における検出結果)
図2Aから
図2Cを参照して、平時の状態における検出結果について説明する。
図2Aは、実施形態の平時の状態における3相信号と2相信号の関係を説明するための図である。
図2Bは、実施形態の平時の状態における2相信号と、これに対応する指令値の関係を説明するための図である。
図2Cは、実施形態の平時の状態における検出結果の画像を説明するための図である。
【0054】
図2Aの(a)に示す波形SU、SV、SWは、U相V相W相の3相信号(電流値Iuvw_fbk)を示す。波形SU、SV、SWには、スイッチングノイズによる変動が含まれているが、主な成分による波形は概ね正弦波を成している。
図2Aの(b)に示す波形SA、SBは、3相信号(電流値Iuvw_fbk)をαβ変換して得られた2相信号(電流値Iab_fbk)を示す。波形SA、SBは、90°の位相差がある波形である。波形SA、SBには、スイッチングノイズによる変動が含まれているが、概ね正弦波を成している。
【0055】
図2Bの(a)に示す波形SA、SBは、
図2Aの(b)に示す波形SA、SBと同じものである。
図2Bの(b)に示す波形SAr、SBrは、
図2Bの(a)に示す波形SA、SBに対応する基準波形である。波形SAr、SBrは、例えば、電流基準Iab_refであってよい。
【0056】
図2Cに示す画像は、αβ座標平面と、その平面に射影された軌跡を示す。例えば、横軸にα軸を割り当てて、縦軸にβ軸を割り当てる。この
図2Cに示す軌跡は、
図2Bの(a)に示した波形SA、SBに対応する軌跡Lnと、
図2Bの(b)に示した波形SAr、SBrに対応する軌跡Lrである。波形SAr、SBrのようにそれぞれに歪がなく、互いに直交する正弦波であれば、これらに基づいた軌跡Lrは、正円になる。これに対して、軌跡Lnは、スイッチングノイズの変動が含まれている波形SA、SBに基づく軌跡であることから、正円にならない。図に示すように軌跡Lnは、PWM制御の周期に対応する細かい線分をつなぎ合わせた図形になっている。原点を中心にしたα軸からの角度により、正円から離れる幅に変化がみられるが、概ね原点を基準した対称性が保たれている。
【0057】
次に、
図3Aから
図3Cを参照して、意図的に特定のゲートパルスを歪ませたときの電流波形とそれに対する軌跡について説明する。
図3Aから
図3Cは、意図的に特定のゲートパルスを歪ませたときの電流波形とそれに対する軌跡について説明するための図である。この軌跡は、ゲートパルスのデッドタイムに生じた異常状態をモデル化したものである。
【0058】
図3Aの(a)に示す波形SAu、SBuは、上アーム50Uに対するゲートパルスのデッドタイムを意図的に長くして、他の5つのアームに対するゲートパルスのデッドタイムを、
図2Bに示したものと同じにしたときのものである。例えば、前者のデッドタイムを、後者の倍にしている。この状態は、上アーム50Uのデッドタイムに異常が生じた状態を再現している。
図3Aの(b)に示す波形SAr、SBrは、
図2Bの(b)に示す波形SAr、SBrと同じものである。
【0059】
図3Bと
図3Cに示す画像の構成は、
図2Cに示す画像と同様の構成である。これに描かれた軌跡が異なる。
図3Bと
図3Cに、デッドタイムに異常が生じた相が互いに異なる2つの例を示し、その違いについて検討する。
【0060】
例えば、
図3Bに示す軌跡は、
図3Aの(a)に示した波形SAu、SBuに対応する軌跡Luと、前述の軌跡Lrとである。ここでは軌跡Lrを正円とみなす。軌跡Luには、スイッチングノイズの変動による細かな変動によって、軌跡Lr(正円)からの偏差が含まれている。さらに、軌跡Luは、前述の平時の軌跡Lnとは異なり、軌跡の中心が原点から離れていて、原点を基準した対称性が保たれていない。この場合、目視でも読み取ることができるほどに、軌跡Lu全体が、軌跡Lr(正円)に対してα軸の負の方向に変位していることがわかる。
【0061】
図3Cに示す軌跡は、軌跡Lzと、前述の軌跡Lrとである。軌跡Lzは、下アーム50Zのデッドタイムに異常が生じた状態を再現したものである。軌跡Lz全体が、正円に対してα軸の負の方向からβ軸の負の方向によった方向に変位している。
【0062】
図3Bに示す軌跡Luと、
図3Cに示す軌跡Lzとを比較すると、正円に対して軌跡が変位している方向が互いに異なることがわかる。
【0063】
図4と
図5とを参照して、実施形態の判定処理について説明する。
図4は、実施形態の判定処理に関わるフローチャートである。
図5は、実施形態の判定基準の生成処理に関わるフローチャートである。
【0064】
まず、後述する動作中の状態を検出するための解析処理に先立ち、解析処理部62は、解析処理用の判定基準を決定して(ステップS10)、判定基準データ621dに追加する。判定基準が定まったのち、解析処理部62は、座標変換部623とマッピング処理部624とによって、動作中の状態を検出するための解析処理を実施する(ステップS20)。この解析処理には、αβ座標平面に対するマッピング処理が含まれる。
【0065】
状態識別部625は、上記の判定基準を用いて、検出値のデータのマッピング結果に基づいて異常状態が検出されたか否かを判定する(ステップS30)。異常状態が検出された場合、出力処理部626は、異常状態が検出されたことを示す検出結果を出力して(ステップS40)、一連の処理を終了する。異常状態が検出されなかった場合、解析処理部62は、例えば、異常状態の検出結果の出力を省略して、同様に一連の処理を終了する。
【0066】
上記のステップS10の判定基準を生成する処理を、
図5に示す手順に従い実施してもよい。検出される電流の大きさは、制御状態により逐次変化する。そのため、判定基準を固定することが難しい。そこで、本実施形態では、電流の検出結果に基づいて判定基準を最適化する方法について説明する。
【0067】
まず、電流値取得部622は、電流データを取得する(ステップS11)。座標変換部623は、取得した電流データ(検出値のデータと指令値のデータ)に対する座標変換処理を実施する(ステップS12)。マッピング処理部624が、座標変換処理の結果によって示される点について、判定基準の生成用に、その点の座標平面へのマッピング処理を実施する(ステップS13)。判定基準生成部627は、予め定められた判定基準の種類に従い、マッピング処理の結果に基づいて判定基準を生成して(ステップS14)、判定基準を判定基準データ621dに追加する。これにより、判定基準を生成する処理を終える。
【0068】
以下、より具体的な判定基準の生成について説明する。
判定基準には、電動機3の位相によらない基準(第1判定基準という。)と、電動機3の位相を利用する基準(第2判定基準という。)とがある。これらについて順に説明する。
【0069】
図6は、実施形態の第1判定基準とその生成方法を説明するための図である。
例えば、
図6に示す第1判定基準を用いて識別することで、座標系の原点を基準した対称性が保たれていない状態などを検出するとよい。
【0070】
例えば、制御目標を示す軌跡を所定の半径rの円と仮定する。上記の判定規則は、制御目標を示す円に対する2つの同心円(円Lr1と円Lr2)を用いて定めることができる。円Lr1は、半径rよりも長い半径r1を有している。円Lr2は、半径rよりも短い半径r2を有している。例えば、軌跡が円Lr1の周よりも外部にはみ出した場合を、又は円Lr2の周よりも内部に入り込んだ場合を、異常状態として判定することを、判定規則として利用してもよい。
【0071】
上記の実施形態によれば、この第1判定基準を用いる。座標変換部623は、電動機3の巻線に流れる電流の検出値のデータを、U相V相W相の軸を有する3相静止座標系からαβ座標系(2相静止座標系)に座標変換する。マッピング処理部624は、αβ座標変換の結果をαβ座標平面(2相静止座標平面)にマッピングする。状態識別部625は、予め定められた判定基準と、マッピング処理部624によってマッピングされた結果とを用いて電動機3の駆動状態を識別する。これにより、複数のスイッチング素子50Sの稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別することができる。
【0072】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例について説明する。上記の実施形態では、第1判定基準を用いて、電動機3の1周分の軌跡を識別する異常状態の検出について説明した。本変形例では、電動機3の特定の相に生じた異常を他の相と比較して軌跡を識別することで異常状態を検出する識別方法(第2判定基準)をとる。以下、この事例について説明する。
【0073】
図7から
図9Bを参照して、実施形態の第2判定基準とその生成方法について説明する。
【0074】
図7は、実施形態の電動機3の各相の電流(ベクトル)の位相関係を説明するための図である。この
図7の上方に向かう軸を電動機3のU相に割り当てると、時計回りに60°単位で、X相、V相、Y相、W相、Z相の各相の電流(ベクトル)が配置される。
【0075】
逆変換装置50から各相に流れる電流に現れる特徴は、3相、さらに6個のスイッチング素子50Sの動作によるものであり、これが6つのベクトルの方向に関連する特徴が含まれる。つまり、6個のスイッチング素子50S夫々の異常によって、軌跡上に生ずる特徴は、60°ずつ回転させると、他の半導体スイッチで生じた異常と同様の傾向の軌跡になる。言い換えると、得られた軌跡を60°回転させて、他の相の範囲の軌跡と比較する等の処理により、他の相における状態との違いを識別できる。
【0076】
例えば、前述の
図4のステップS30において異常状態が検出されたか否かを判定する際に、状態識別部625は、特定の方向の軌跡を60°ずつ回転させて、他の相の軌跡と比較する等の処理により、他の相の状態との違いを識別するとよい。特定の方向を、例えば、U相方向に定めて、所定の範囲の軌跡として、U相方向の軸を中心にした±30°範囲内の軌跡を選択する。これを、第2判定基準に定めて、他の相の軌跡との比較に利用する。
【0077】
各相に異常がなければ、第2判定基準に定められた範囲の軌跡は、他の相の軌跡に対する類似性が高い。何れかの相に異常があれば、第2判定基準を用いた識別処理の中で、他の相の軌跡に対する類似性が低いと判定される方向が生じる。
【0078】
状態識別部625は、上記の第2判定基準を用いた識別処理の結果から、異常状態が検出されたか否かを判定してもよい。なお、軌跡の比較結果に、特定の相などに差異がみられた場合(相関が低い相がある場合)には、その相に関係する異常状態があると識別してもよい。
【0079】
図8は、変形例の回転処理を実行する回路モジュールを説明するための図である。例えば、状態識別部625は、回転処理を実行する回路モジュールを備える。この回路モジュールの変換式は、所謂dq変換用のものと等価であり、基準位相を固定値にしている点が異なる。
【0080】
例えば、
図8中の(a)に、基準にする相(例えばU相)の軸を基準にした軌跡を得るための回路モジュールを示す。この回路モジュールの入力には、3相交流の各相の電流値Iuvw_fbkが供給される。この回路モジュールの出力は、直交するα軸成分とβ軸成分に変換された電流値Iab_fbkが出力される。
図8中の(a)に示す構成では、この回路モジュールの基準位相は、0°に固定されている。
図8中の(b)に示す構成では、この回路モジュールの基準位相は、60°単位で、60°の倍数の角度が設定により入力される。このように回路モジュールの基準位相を調整することにより、異なる角度に変換することができる。これは一例であり、算術的な方法で、回転処理を行ってもよい。
【0081】
図9Aと
図9Bは、変形例の軌跡に対する回転処理の結果を説明するための図である。
図9Aと
図9Bの各段の左側の列に配置する(a1)から(f1)の図は、軌跡に対する回転処理を施す前の軌跡であり、それぞれにU相、X相、V相、Y相、W相、Z相に夫々異常があることを模擬した場合の軌跡を示す。
図9Aと
図9Bの各段の右側の列に配置する(a2)から(f2)の図は、相ごとに定められた所定の角度の回転処理を、(a1)から(f1)の各図に示す軌跡に施した結果を示す。例えば、上記の所定の角度は、時計回りに0°、60°、120°、180°、240°、300°の大きさである。
【0082】
上記の(a1)から(f1)の各図において、異常状態を示す特徴個所に丸印をつけてその位置を示す。上記の(a1)から(f1)の各図に示された丸印の位置は、原点を基準にすると様々な方向にある。これに対し、上記の(a2)から(f2)の各図に示された丸印の位置は、原点から共通する方向に揃っていることがわかる。
【0083】
上記の実施形態において、クラーク変換によって得られるαβ座標系のデータを利用して解析する事例を示したが、これに制限されず、解析の目的により所謂dq変換後の回転子座標系のデータを利用してもよい。
【0084】
ただし、αβ座標系のデータを利用する場合には、所謂dq変換とは異なり回転磁界の方向を示す基準位相を必要としないことにより、基準位相の精度に影響されずに、解析することができる。例えば、基準位相を用いた逆dq変換後の電圧基準をPWMして得られた巻線電流は、逐次生成される基準位相の精度が影響することがある。αβ座標系のデータを利用すれば、このような基準位相の精度に影響されずに解析することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、想定される異常に対する判定基準の生成方法がユーザによって予め定められ、これに基づいた判定基準を用いて異常状態を検出する事例について説明した。第2の実施形態では、異常状態を検出することに、機械学習によって最適化されたモデルを用いる事例について説明する。
【0086】
本実施形態の電力変換装置2は、第1の実施形態の電力変換装置2における状態識別部625と判定基準生成部627とに代えて、状態識別部625Aと学習処理部627Aとを備える。
【0087】
実施形態の状態識別部625Aは、画像認識の手法を適用して、軌跡に現れた特徴を検出する。
図10は、第2の実施形態の判定処理を説明するための図である。
【0088】
例えば、状態識別部625Aは、2次元の画像認識処理を実行するディープニューラルネットワーク(DNNという。)を含む。DNNは、人工ニューラルネットの一例である。
【0089】
図10に示す状態識別部625A内のDNNは、手書き文字を認識するなどの比較例に適用される画像処理用の構成と同様の構成を有する。このDNNは、例えば、入力画像IMG0に対する画像認識処理を実施して、入力画像IMG0内の手書き文字を認識して分類することを可能する。なお、このDNNのパラメータの調整は、本実施形態に適用する場合と、手書き文字の認識に適用する場合と異なる。
【0090】
例えば、このDNNは、入力層ILAと、プーリング層PLAと、中間層MLと、出力層OLを備える。入力層ILAと、プーリング層PLAと、中間層MLと、出力層OLの夫々は、複数の人工ニューロン(単にニューロンと言う。)を夫々備える。
【0091】
入力層ILAのニューロンは、入力画像IMG1を構成する各ピクセルに対応付けられていて、各ピクセルのデータを入力データとする。この
図10に示す各ピクセルは、四角い形状を有していて、格子状に配列されたものである。
【0092】
入力層ILAの後段には、例えばプーリング層PLAが設けられている。プーリング層PLAは、入力画像IMG1に対応する2次元構成を保持したまま、フィルタFLAを用いてプーリングする。このプーリングに用いられるフィルタFLAは、中心とその上下左右の計5ピクセルの構成にしてもよく、中心とその周囲の計9ピクセルの構成にしてもよい。
図10に示すフィルタFLAの構成は、計9ピクセルの構成のものである。プーリング層PLAの個数は、1つに制限されることなく、用いるフィルタFLAの種類の数に対応させて適宜設けてよい。フィルタFLAの特性は、フィルタFLA内のピクセルの値によってパターン化される。フィルタFLAの種類の数とは、互いに異なる特性を規定するパターンの個数に相当する。
【0093】
例えば、プーリング層PLAは、入力画像IMG1の左上の9ピクセルのデータに対して、フィルタFLAによるプーリングによってデータFDA00を生成する。プーリング層PLAは、演算対象の範囲をずらしながら各範囲のデータに対するプーリングをフィルタFLAを用いてそれぞれ実施する。例えば、入力画像IMG1全体に対する処理の最後に、プーリング層PLAは、入力画像IMG1の右下の9ピクセルのデータに対して、フィルタFLAによるプーリングによってデータFDAmnを生成する。
【0094】
プーリング層PLAによって算出された各データは、次段の中間層MLの入力データになる。中間層MLは、例えば中間層ML1、ML2などの複数の層を有する。これらの層のニューロンの個数、中間層ML内の層数などは適宜決定してよく、中間層ML内の各層間は、全結合層で構成されているとよい。
【0095】
例えば、前段のプーリング層PLAのニューロンは、中間層ML1のニューロンに対して、結合先が所定の範囲に制限される部分結合層になっている。プーリング層PLAを設けることにより、画像内の検出対象物の位置ずれによる影響を低減することができる。
【0096】
中間層MLによって算出された各データは、次段の出力層OLの入力データになる。出力層のニューロンの個数は適宜決定してよく、中間層MLは、全結合層で構成されている。
【0097】
なお、上記に関する他の構成例として、プーリング層を設けずに構成することも可能である。例えば、この場合、各ピクセルのデータを1次元に配列された入力層IMのニューロンに対応付ける。入力層IMのニューロンは、後段の中間層MLのニューロンにそれぞれ接続された全結合層を成す。以下の説明では、プーリング層PLを設けた事例について説明する。
【0098】
比較例の用途の場合には、入力される画像IMG0に描かれた文字(数字)を識別する。例えば、数字の5を手で書いた二値化画像又は濃淡画像の濃淡をピクセルごとに数値化して各ピクセルに対応付ける。学習されたDNNは、文字「5」について他の数字との違いを識別して、出力層OLの5番目のニューロンの出力を活性化する。
【0099】
本実施形態の状態識別部625Aは、
図10に示すように手書き文字認識用の構成と同様の構成を応用して、例えば、出力層のニューロンを6個で構成して、画像内の軌跡の特徴を識別させることで、演算の結果を6つの相に区分して出力することを可能にする。
【0100】
なお、このDNNが識別する結果は、上記のように6つの相ごとに識別することに制限されない。DNNは、少なくとも1つ軌跡が描かれた画像のデータに基づいて1種類以上の異常状態の有無、又は異常状態に至り得る確率などを算出するように構成されていてもよい。
【0101】
例えばαβ座標平面に描かれた軌跡には、異常状態に関する要因によって異なる傾向が表れる。状態識別部625AのDNNは、この傾向を検出することで、異常状態の有無、又は異常状態に至る確率が高まっていることを検出することができる。
【0102】
このように、機械学習の手法を利用して判定基準を生成することにより、様々な要因による異常状態を検出することが可能になる。例えば、学習処理部627Aは、機械学習の手法を利用して、判定基準を生成する。教師データとして、例えばαβ座標平面に描かれた軌跡を示す画像のデータ(画像データ)を入力データとし、この軌跡が示す状態の情報を出力データとする組のデータを利用する。
【0103】
例えば、この解析において、軌跡に基づいて、以下に示す事象の中の何れか又は複数の事象を識別するとよい。
・電動機3の駆動状態として、「異常なし」と「異常あり」の2通りに識別する。
・電動機3の駆動状態として、「異常なし」の確率、又は「異常あり」の確率を推定する。
・電動機3の駆動状態として、6つの相のそれぞれについて「異常なし」と「異常あり」の2通りに識別する。
・電動機3の駆動状態として、6つの相のそれぞれの「異常なし」の確率、又は「異常あり」の確率を推定する。
・電動機3の駆動状態として、6つの相のうち、「異常あり」の尤度が高いものを推定する。
【0104】
このように、DNNの出力層OLなどの構成は、上記の事象に応じて決定するとよい。なお、教師データは、軌跡を示す画像を入力データとし、上記の事象に関連する出力データとの組を複数含むものとする。
【0105】
学習処理部627Aは、上記の教師データを利用して、DNN(モデル)の特性を決定するパラメータの最適化を、機械学習により行うことで、判定基準として利用するモデルを決定する。DNNの学習手法、及び機械学習時の最適化に関する手法は、一般的な手法を適用してよい。DNNの特性を決定するパラメータは、各ニューロンに入力されるデータに対する重み値、各ニューロンの演算結果に加算するオフセットなどを総称したものである。
【0106】
上記の実施形態によれば、機械学習の手法を適用して異常状態の検出を行うことができる。
【0107】
例えば、上記のようにαβ座標平面に正方形の単位格子がハニカム状に配置されている場合、状態識別部625Aは、座標変換の結果が示す位置が上記の単位格子内に含まれることを検出して、この検出の結果を用いて電動機3の駆動状態を識別するとよい。
【0108】
状態識別部625Aは、電動機3の駆動状態が第1状態と第2状態に変化する傾向を識別するための判定基準として、パラメータが特定された学習済みのモデルを利用する。例えば、平時の動作状態は、第1状態の一例である。異常な状態が発生した動作状態は、第2状態の一例である。上記の第2状態には、複数のスイッチング素子50Sが流す電流のバランスが崩れた状態が含まれる。状態識別部625Aは、このモデルを利用して、電動機3の駆動状態に異常な状態が生じていないか、又は異常な状態が発生し得る状態にないかを識別するとよい。
【0109】
この場合、学習処理部627Aは、上記の第1状態と第2状態との何れかを示す第1学習用データを、モデルの機械学習に用いるとよい。第1学習用データは、上記の第1状態示す学習用データと第2状態示す学習用データの両方を含むことにより、効率よく学習させることができる。
【0110】
この第1学習用データには、上記の第2状態を模擬するように電動機3を駆動する逆変換装置50の複数のスイッチング素子を夫々駆動する駆動信号のパターンが含まれていてもよい。なお、αβ座標平面に描かれた軌跡に現れた特徴には、前述の第1の実施形態に示したように特定の方向に軌跡が変位する事象が含まれる。第2状態の事象として検出する事象は、これに制限されず、他の要因により生じた異常状態が含まれていてよい。
【0111】
(第2の実施形態の第1変形例)
第2の実施形態の第1変形例について説明する。
電動機3が制御対象である場合、αβ座標平面に描かれた軌跡は、原点を中心にした回転対称性を有している。その軌跡の回転対称性の特徴は、無方向性ではなく、各相の方向に対する相関性がある。これは、前述の
図9Aと
図9Bに示したとおりである。
【0112】
そこで、この軌跡の回転対称性を利用して、機械学習の効率を高める手法を提案する。
図11は、変形例における軌跡の回転対称性の利用について説明するための図である。
図11の(a)は、前述の
図10における画像IMG1において各ピクセルに割り付ける場合を示す。これに対して、
図11の(b)は、画像IMG2をDNNに画像を取り込む際に、各ピクセルの配置を規定する格子を、軌跡の回転対称性の特徴に基づいて決定した方向に、所定の角度回転させる場合を例示する。例えば、画像IMG1は、U相に生じた異常状態を特徴づける軌跡を含む。画像IMG2は、Z相に生じた異常状態を特徴づける軌跡を含む。このように、格子を所定の方向に回転させて画像をDNNに取り込むことで、軌跡の回転対称性の特徴を利用した学習用データを生成することができる。
【0113】
図12は、第2の実施形態の第1変形例の判定処理を説明するための図である。
図12に示す状態識別部625AのDNNは、前述の
図10に示したものに相当する。この
図12の場合、DNNの入力データに利用する画像データのピクセル分割の方法と、これを学習用データとして利用する方法とが異なる。この点を中心に説明する。
【0114】
学習処理部627Aは、このDNNの学習用データに、画像IMG1と画像IMG2を用いる。画像IMG1と画像IMG2は、学習用データの一例であり、他の学習用データを組み合わせてよい。学習処理部627Aは、画像IMG1については、これに対する回転処理を行わずにそのまま学習用データとして利用して、画像IMG2については、これに対する60°の回転処理を行った結果を学習用データとして利用する。
【0115】
例えば、学習処理部627Aは、αβ座標平面に関わる所定の規則に従って、上記の画像IMG2(第1学習用データ)を回転変換した画像データ(第2学習用データ)を生成して、その画像データ(第2学習用データ)を、上記のモデルの機械学習に用いるとよい。例えば、上記の所定の規則には、回転の中心の位置、異常状態が発生した相に対応付けられた回転角度などを含む。より具体的には、学習処理部627Aは、例えば、Z相に異常がみられる画像IMG2の場合、格子を反時計回りに60°回転させる。相と角度の関係は、予め定めることができる。
【0116】
上記のようにモデルが機械学習されたのちに、状態識別部625Aは、そのモデルを用いて電動機3の駆動状態を識別するとよい。
【0117】
本変形例によれば、学習処理部627Aは、DNNによる識別対象の入力画像(例えば、画像IMG2。)に対し、これを所定の角度回転させる回転処理をDNNの前段に加えることで、特定の方向に生じた異常を模擬する学習用データを生成できる。学習処理部627Aは、このような方法の学習処理を、特定の一方向に対し実施してもよく、各相の方向に対して夫々実施してもよい。
【0118】
(第2の実施形態の第2変形例)
第2の実施形態の第2変形例について説明する。第2の実施形態では、DNNの入力画像を、4角形(正方形)のピクセルに分割する事例について説明した。本変形例では、DNNの入力画像を、6角形(正6角形)のピクセルに分割する事例について説明する。
【0119】
先に、
図11の(c)と(d)を参照して、DNNの入力画像を、6角形のピクセルに分割する場合について説明する。
図11の(c)と(d)に示す画像(IMG1,IMG2)は、前述の
図11の(a)と(b)に示した画像と同じものであるが、これをピクセルに分割する格子の形状が異なる。
図11の(a)と(b)の場合は、4角形(正方形)であるが、
図11の(c)と(d)は、6角形(正6角形)である。このように格子(単位格子)を密に配置する場合、つまりハニカム状に配置する場合、単位格子の形は、三角形、正方形、正六角形に限られる。
【0120】
例えば、格子が4角形(正方形)の場合には、回転して格子が重なる角度は90°毎であるが、正6角形の場合には、回転して格子が重なる角度は60°毎である。回転の中心を適当に選べば、正6角形の格子を60°回転させたのちの格子は、回転前の格子と同じになる。4角形(正方形)の格子を60°ごとに回転させた場合には、格子が重ならない領域が生じるため、軌跡が存在するか否かを識別する際に、情報がある範囲で失われてしまう。6角形の格子を60°ごとに回転させた場合には、それが生じない。
【0121】
図13は、第2の実施形態の変形例の判定処理を説明するための図である。
本変形例における電力変換装置2は、前述の状態識別部625Aに代えて、状態識別部625Bを備える。
【0122】
実施形態の状態識別部625Bは、ピクセルの形状とフィルタの構成以外は、前述の状態識別部625Aと同様であってよい。これに伴い、入力層ILAと、プーリング層PLAと、フィルタFLAの夫々が、入力層ILBと、プーリング層PLBと、フィルタFLBとに代わる。入力層ILBと、プーリング層PLBと、フィルタFLBとに関連する画像のピクセルの形状は、6角形である。
【0123】
例えば、入力層IMBのニューロンが、ハニカム状に配置された6角形の単位格子に対応付けられている。プーリング層PLBのプーリング処理に用いられるフィルタFLBは、ハニカム状に配置された6角形の第1単位格子と、第1単位格子を囲む位置にある6つ(複数)の第2単位格子を演算の対象に含むように定義されている。プーリング層PLBによるプーリング処理は、上記のフィルタFLBを用いて実施する。
【0124】
上記のようにαβ座標平面に正6角形の単位格子がハニカム状に配置されている場合、状態識別部625Bは、座標変換の結果が示す位置が上記の単位格子内に含まれることを検出して、この検出の結果を用いて電動機3の駆動状態を識別するとよい。
【0125】
上記のように、6つのスイッチング素子50Sを用いた逆変換装置50の場合には、前述のとおり方向性は、比較的強い意味を持つ。この方向に係る特徴は、60°ごとに現れるため、この方向性を利用すれば、60°を1単位にして扱うことができる。
【0126】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実施形態の駆動状態識別装置は、座標変換部623と、マッピング処理部624と、状態識別部625とを備える。座標変換部623は、3相交流用の電動機の巻線に流れる電流の検出値のデータを、3相静止座標系から2相静止座標系に座標変換する。マッピング処理部624は、前記座標変換の結果を2相静止座標平面にマッピングする。状態識別部625は、判定基準と前記マッピングされた結果とを用いて電動機3の駆動状態を識別する。これにより、複数のスイッチング素子の稼働状態に平時とは異なる稼働状態が発生したことを識別することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、上記のDNNに代えて、プーリング層の前段に畳み込み処理を行う畳み込み層を備えるCNN(Convolutional Neural Network)を用いて構成してもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…電動機ドライブシステム、2…電力変換装置、3…電動機、4…機械負荷、50逆変換装置、60…制御部、61…回転速度基準生成部、62…解析処理部、64…速度制御部、65…検出電流処理部、69…PWMコントローラ、70電流検出器、621…記憶部、622…電流値取得部、623…座標変換部、624…マッピング処理部、625…状態識別部、626…出力処理部、627…判定基準生成部、621a…電流検出値データ、621b…電流基準値データ、621c…マッピング画像データ、621d…判定基準データ